有機薄膜太陽電池素子、太陽電池モジュールおよび有機薄膜太陽電池素子の製造方法
【課題】有機半導体層からなる光電位誘起層の水分に起因する劣化を抑制でき、長寿命で信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子、太陽電池モジュールおよび有機薄膜太陽電池素子の製造方法を提供する。
【解決手段】有機薄膜太陽電池素子1は、導電性を有する線条体11と、線条体の表面に形成された光電位誘起層とを夫々含む複数の線状の有機太陽電池コア10と、一方の表面に複数の溝21,31を夫々有し、表面全体を覆うように透明導電膜41,42が夫々形成された第1,第2のガラス基板20,30と、透明導電膜41上に形成された補助電極50とを備える。有機太陽電池コア10を両ガラス基板の溝で挟み込んだ状態で、両ガラス基板が接着剤により貼り合わされて一体化されている。水分に起因する光電位誘起層の劣化を抑制できる。
【解決手段】有機薄膜太陽電池素子1は、導電性を有する線条体11と、線条体の表面に形成された光電位誘起層とを夫々含む複数の線状の有機太陽電池コア10と、一方の表面に複数の溝21,31を夫々有し、表面全体を覆うように透明導電膜41,42が夫々形成された第1,第2のガラス基板20,30と、透明導電膜41上に形成された補助電極50とを備える。有機太陽電池コア10を両ガラス基板の溝で挟み込んだ状態で、両ガラス基板が接着剤により貼り合わされて一体化されている。水分に起因する光電位誘起層の劣化を抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池素子、太陽電池モジュールおよび有機薄膜太陽電池素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機半導体を用いた太陽電池として、導体繊維表面に高分子光電位誘起層を形成し、有機導電性繊維としたものがある。この場合、高分子光電位誘起層の外側に透明導電膜を形成することによって導体繊維との間に電位が発生し、太陽電池として動作する。
しかし、この構成においては、次のような問題点がある。
(1)透明導電膜は長手方向の電気抵抗が大きく、電極間の距離により効率が低下する。
(2)有機半導体膜は水分で劣化しやすく、水分透過防止のためのバリア膜が必要になる。
(3)繊維上の透明導電膜は微細構成を有するため、電極の取り出しが難しい。
【0003】
これに対して、有機導電性繊維と導電性繊維を格子状編むことによって織物を構成する高分子太陽電池や太陽電池繊維が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの太陽電池では、有機導電性繊維を電気的に、長手方向に細分化することで上記(1)、(3)の問題を解決しつつ、全体を樹脂でラミネートすることで上記(2)の問題が解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−36999号公報
【特許文献2】特表2005−516370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に開示された太陽電池には次のようないくつかの問題点がある。
(1)有機導電体繊維と導電性繊維による織物を作成するため、製造が面倒である。
(2)織物は柔軟性を有する半面、有機導電体繊維の表面にある有機半導体膜がむき出しになっているため、使用時に導電性繊維とこすれあうために、摩耗しやすく寿命が短くなる。
(3)樹脂でラミネートしただけでは、ガスバリア性が不十分で有機半導体膜が劣化しやすい。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、有機半導体層からなる光電位誘起層の水分に起因する劣化を抑制でき、長寿命で信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子、太陽電池モジュールおよび有機薄膜太陽電池素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、導電性を有する線条体と、該線条体の表面に形成され、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層とをそれぞれ含む複数の線状の有機太陽電池コアと、表面全体を覆うように透明導電膜がそれぞれ形成された第1および第2のガラス基板と、を備え、前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1および第2のガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板の少なくとも一方の表面には溝が形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記導電性線条体が変形することにより前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着するように構成されている。
【0008】
請求項4に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着しており、前記有機太陽電池コアと前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板とは導電性高分子を介して接触するように構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面で接着剤により接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面でハーメチックシールにより接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板の周囲全体を樹脂でラミネートすることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記線条体は前記光電位誘起層の端面から突出していることを特徴とする。
請求項9に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部には、前記線条体の通る複数の孔の開いたガラス部材が接着されていることを特徴とする。
【0011】
請求項10に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記光電位誘起層は、電子供与材料であるp型有機半導体からなる電子供与体層と電子受容材料であるn型有機半導体からなる電子受容体層を有するpn構造、或いは、前記電子供与体層と、前記p型有機半導体と前記n型有機半導体からなる中間層と、前記電子受容体層とを有するpin構造の有機半導体層からなることを特徴とする。
請求項11に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記線状の有機太陽電池コアは、前記線条体の表面と前記光電位誘起層との間に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層と、前記光電位誘起層の表面に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項12に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、断面形状が長方形の溝であることを特徴とする。
請求項13に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が長方形の溝であることを特徴とする。
請求項14に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、互いに平行な複数のV溝であることを特徴とする特徴とする。
【0013】
請求項15に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が半円形の溝であることを特徴とする。
請求項16に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上と、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上との少なくとも一方には補助電極が形成されていることを特徴とする。
請求項17に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記補助電極が、前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上に形成されており、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上には、該透明導電膜の全面に裏面電極が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項18に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記補助電極が、前記ガラス基板の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されていることを特徴とする。
請求項19に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記線条体が円形の断面を有し、前記有機太陽電池コアの外径が0.1〜0.3mmであることを特徴とする。
請求項20に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記ガラス基板の厚さが0.1〜0.2mmであることを特徴とする。
請求項21に記載の発明に係る太陽電池モジュールは、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の前記有機薄膜太陽電池素子が複数並べて配置され、隣接する2つの前記有機薄膜太陽電池素子間を電気的に接続したことを特徴とする。
【0015】
請求項22に記載の発明に係る太陽電池モジュールは、複数の前記有機薄膜太陽電池素子がマトリックス状に配置されており、行方向と列方向の一方に並べて配置された複数の前記有機薄膜太陽電池素子が電気的に並列に接続されており、かつ、電気的に並列に接続された複数の前記有機薄膜太陽電池素子群同士が電気的に直列に接続されていることを特徴とする。
【0016】
請求項23に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子の製造方法は、導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、第1の長尺のガラス基板を作製する工程と、前記長尺のガラス基板を第3の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜して、第2の長尺のガラス基板を作製する工程と、複数の前記長尺の有機太陽電池コアを前記第1および第2の長尺のガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、前記第1および第2の長尺のガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項24に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子の製造方法は、導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を含む線状の有機太陽電池コアの各層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、長尺の補助電極付きガラス基板を作製する工程と、複数の前記有機太陽電池コアを、一対の前記補助電極付きガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、一対の前記補助電極付きガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、(1)有機太陽電池コアの光電位誘起層を両側のガラス基板でほぼ完全に密封できるため、水分に起因する光電位誘起層の劣化を抑制することができる。その結果、信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。また、(2)上記特許文献1,2等に記載された従来技術のような編物と比べ、導電体繊維によってこすれて膜(光電位誘起層)が損傷するといった懸念がなく、信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子が得られる。
請求項21に記載の発明によれば、信頼性の高い長寿命の太陽電池モジュールが得られる。
請求項23或いは請求項24に記載の発明によれば、全ての工程を大気圧プロセスで行うことができ、高い量産性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す斜視図。
【図2】図1のX−X線に沿った断面図。
【図3】図1に示す有機薄膜太陽電池素子の有機太陽電池コアを示す斜視図。
【図4】図3に示す有機太陽電池コアの縦断面図。
【図5】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図6】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図7】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図8】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、図2と同様の断面図。
【図10】図9に示す有機薄膜太陽電池素子の使用状態を示す図で、補助電極の外面を覆う樹脂の一部が剥がされた状態を示す断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、図2と同様の断面図。
【図12】図11に示す第3の実施形態において補助電極を省略した有機薄膜太陽電池素子を示す断面図。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、補助電極の外面を覆う樹脂の一部が剥がされた使用状態を示す断面図。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、補助電極および裏面電極の外面を覆う樹脂の一部が剥がされた使用状態を示す断面図。
【図15】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略構成を示す平面図。
【図16】断面形状が長方形の溝を用いた一つの変形例に係る有機薄膜太陽電池素子の主要部を示す断面図。
【図17】断面形状が半円形の溝を用いた別の変形例に係る有機薄膜太陽電池素子の主要部を示す断面図。
【図18】本発明の第6の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子の概略構成を示す図で、図2と同様の断面図。
【図19】本発明の第7の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子の概略構成を示す図で、図2と同様の断面図。
【図20】端部封止ガラスの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において、同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
<有機薄膜太陽電池素子の第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1を図1乃至図4に基づいて説明する。
有機薄膜太陽電池素子1は、図1および図2に示すように、導電性を有する線条体11と、線条体11の表面に形成され、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層13(図4参照)とをそれぞれ含む複数の線状の有機太陽電池コア10と、表面全体を覆うように透明導電膜41,42がそれぞれ形成された第1および第2のガラス基板20,30と、を備えている。また、この有機薄膜太陽電池素子1では、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、第1および第2のガラス基板20,30が一体化されている。
【0021】
第1のガラス基板20は、直方体形状を有する。また、第1のガラス基板20は、一方の表面に互いに平行な複数の溝21を有し、これらの溝21の表面を含む表面全体を覆うように透明導電膜41が形成されている。この透明導電膜41上には、補助電極50が、第1のガラス基板の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されている(図1参照)。補助電極50は、銀ペーストなどを用いて形成される。このように、第1のガラス基板20は、「補助電極付きのガラス基板」である。
第2のガラス基板30は、第1のガラス基板20と同様の寸法および形状を有する。また、第2のガラス基板30は、一方の表面に互いに平行な複数の溝31を有し、これらの溝31の表面を含む表面全体を覆うように透明導電膜42が形成されている。このように、第2のガラス基板30は、「補助電極無しのガラス基板」である。
【0022】
溝21,31は、それぞれV溝である。
なお、本実施形態では、溝21,31は、一例としてそれぞれ4つずつ設けられている。各溝21,31は略平行に形成され、各溝21,31のサイズは、片側の溝に断面が円形の有機太陽電池コア10の半円部分が入る程度の大きさに形成される。溝21,溝31のピッチY(図2参照)は、それぞれ約0.2mm〜0.5mm程度である。
また、各ガラス基板20,30の厚さは0.1〜0.2mm程度である。
ガラス基板の厚さが0.1〜0.2mmであれば柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子に適する。
【0023】
線状の有機太陽電池コア10は、図3および図4に示すように、導電性を有する線条体11と、線条体11の表面に順に積層されたバッファ層12、光電位誘起層13およびバッファ層14とをそれぞれ有する。
線条体11は、銅線等の高い導電性を有する金属線、或いは、カーボン繊維などのような導電性を有する材料(導電性繊維)で構成されている。線条体11は円形の断面を有し、外径が100μm〜200μm程度である。また、線条体11は、外部の配線との電気的接続を容易にするために、図1および図3に示すように、線状の有機太陽電池コア10の端面から突出しているのが好ましい。なお、線条体11は、有機太陽電池コア10の端面から突出していない構成であってもよい。
【0024】
有機太陽電池コア10の外径は0.1〜0.3mm程度である。有機太陽電池コア10の厚さが0.1〜0.3mmであれば柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子に適する。
バッファ層12,14は、表面の凹凸を緩和するための層であり、導電性高分子材料、例えばPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドーパントに用いたPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PSS等からなる。
このように、線状の有機太陽電池コア10は、導電性を有する線条体11と、線条体11の表面と光電位誘起層13との間に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層12と、光電位誘起層13の表面に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層14とを有する。
【0025】
光電位誘起層13は、電子供与材料であるp型有機半導体からなる電子供与体層(p層)15と、p型有機半導体と電子受容材料であるn型有機半導体からなる中間層(i層)16と、n型有機半導体からなる電子受容体層(n層)17とを有するpin構造の有機半導体層からなる。
ここで、「電子供与材料」は、電子を放出する性質を持つ有機半導体材料であり、「電子受容材料」は電子を受け取る性質を持つ有機半導体材料である。また、光電位誘起層13の厚さは、100nm〜数百nm程度である。
【0026】
電子供与体層(p層)15と電子受容体層(n層)17は、例えば、テトラベンゾボルフィリン前駆体やテトラベンゾボルフィリン等からなる。
なお、光電位誘起層13は、p-i-n層が明確に分かれていても良いし、それぞれが混成されていても良い。例えば、光電位誘起層13は、電子供与体層(p層)と電子受容体層(n層)とを有するpn構造の有機半導体層からなる構成であってもよい。
【0027】
透明導電膜41,42は、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)などの透明導電酸化物(Transparent Conductive Oxide; TCO)からなる。
【0028】
有機薄膜太陽電池素子1は、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、複数の導電性を有する線条体11が変形することにより第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とが密着するように構成されている。以下の他の実施形態においても同様である。
【0029】
また、有機薄膜太陽電池素子1は、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、第1及び第2のガラス基板20,30が密着しており、各有機太陽電池コア10と第1及び第2のガラス基板20,30とが導電性高分子を介して接触するように構成されている。
本例では、第1のガラス基板20の透明導電膜41と第2のガラス基板30の透明導電膜42とが密着している。また、各有機太陽電池コア10と第1及び第2のガラス基板20,30(透明導電膜41、42)とが、上述した導電性高分子材料からなる表面の凹凸を緩和するための層であるバッファ層14を介して接触するように構成されている。
【0030】
また、有機薄膜太陽電池素子1は、第1および第2のガラス基板20,30が、複数の有機太陽電池コア10の外側の接触面で接着剤40により接合されることで両ガラス基板20,30が一体化されている。
つまり、有機薄膜太陽電池素子1は、図1および図2に示すように、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20の複数の溝21と、第2のガラス基板30の複数の溝31とで挟み込んだ状態で、第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とを接着剤40により貼り合わせて一体化されている。接着剤40としては、例えば、UV硬化接着剤を使用する。
このように、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20の複数の溝21と第2のガラス基板30の複数の溝31とで両側から挟み込んで両ガラス基板20,30が固定され、有機薄膜太陽電池素子1が形成されている。
【0031】
この有機薄膜太陽電池素子1では、各有機太陽電池コア10のバッファ層14が、第1のガラス基板20の各溝21上の透明導電膜41と、第2のガラス基板30の各溝31上の透明導電膜42とにそれぞれ電気的に接触した状態が確保されている。これにより、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13が、バッファ層14を介して各透明導電膜41,42と電気的に接続されている。
【0032】
次に、上記構成を有する有機薄膜太陽電池素子1の動作を説明する。
太陽光が図1の矢印で示すように第1のガラス基板20および第2のガラス基板30に両側から入射すると、この光は各溝21上の透明導電膜41および各溝31上の透明導電膜42をそれぞれ通って各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する。これにより、光電位誘起層13では、光の吸収による内部光電効果( HYPERLINK "http://www.aist.go.jp/aist#j/press#release/pr2005/pr20050127/pr20050127.html" \l "g" 光起電力効果)によってキャリアが発生し、発生したキャリア(電子と正孔)が光電位誘起層13のpin構造の界面に存在する内蔵電場によって拡散する。これにより、電子が電子供与体層15から電子受容体層17へ移動し、さらにバッファ層14を介して透明導電膜41,42へ移動して、補助電極50に集電されると共に、正孔が電子供与体層15からバッファ層12を介して導電性を有する線条体11へ移動する。これにより、発電された電力が外部に取り出される。
【0033】
以上の構成を有する第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)有機薄膜太陽電池素子1は、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20の複数の溝21と、第2のガラス基板30の複数の溝31とで挟み込んだ状態で、複数の導電性を有する線条体11が変形することにより第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とが密着するように構成されている。また、その挟み込んだ状態で、第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とが接着剤40により貼り合わせて一体化されている。このような構成により、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13を両側のガラス基板20,30および接着剤40でほぼ完全に密封できるため、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を抑制することができる。その結果、信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
【0034】
(2)上記特許文献1,2等に記載された従来技術のような編物と比べ、導電体繊維によってこすれて膜(光電位誘起層13)が損傷するといった懸念がなく、信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子が得られる。
(3)各有機太陽電池コア10を両ガラス基板20,30の各溝21,31で挟み込んだ状態で、複数の線条体11が変形することにより両ガラス基板20,30が密着するように構成されている。このため、有機太陽電池コア10の外表面と透明導電膜41,42とを確実に接触させることができ、信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子が得られる。
(4)両ガラス基板20,30が接着剤40により貼り合わせて一体化されているため、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を接着剤40により抑制することができる。
(5)線条体11は有機太陽電池コア10の端面から突出しているので、外部との電気的接続が容易になる。
(6)第1のガラス基板20の溝21と、第2のガラス基板30の溝31をそれぞれV溝にしているので、溝加工が容易になる。
(7)有機太陽電池コアの外径が0.1〜0.3mm程度であるので、柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子を実現することができる。
【0035】
(8)各ガラス基板20,30の厚さが0.1〜0.3mm程度であるので、柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子を実現することができる。
(9)補助電極50が第1のガラス基板20を覆う透明導電膜41上に設けられているので、透明導電膜41の長手方向の電気抵抗を小さくして、電流を取り出し易くなり、変換効率を高めることができる。
また、補助電極付きのガラス基板である第1のガラス基板20にあっては、補助電極50のある部分が光を遮り非発電領域となる。しかし、補助電極50は、第1のガラス基板20表面の透明導電膜41上において、第1のガラス基板20の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されているので、補助電極50により光を遮る面積が少なくなる。このため、変換効率の高い有機薄膜太陽電池素子1が得られる。このような効果は、多数の有機薄膜太陽電池素子1を電気的に接続して太陽電池モジュールを作製する際に有効となる。
(10)線条体11の表面と光電位誘起層13との間に表面の凹凸を緩和するためのバッファ層12が形成されており、かつ、光電位誘起層13の表面に表面の凹凸を緩和するためのバッファ層14が形成されている。バッファ層12,14により表面の凹凸が緩和されることで、光電位誘起層10で発生したキャリアが界面の凹凸により捕捉されるのが抑制され、変換効率が向上する。
【0036】
<有機薄膜太陽電池素子の製造方法>
次に、上記有機薄膜太陽電池素子1の製造方法を、図5乃至図8に基づいて説明する。
この製造方法は、以下の工程を備える。
(工程1)
導電性を有する長尺の線条体11Aを供給装置61から巻取り装置62へ送りつつ、線条体11Aの表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層13を順次形成して、線状かつ長尺の有機太陽電池コア10Aを作製する(図5参照)。
この(工程1)では、上記線条体11(図3、図4参照)の母材となる導電性を有する長尺の線条体11A、例えば、外径が100μm〜200μm程度の長尺の銅線を予め作製して、ボビン等の供給装置61(図5参照)に巻き取っておく。
この線条体11Aを、図5に示すように、供給装置61からボビン等の巻取り装置62へ送りつつ、線条体11Aの表面に、上記有機太陽電池コア10の各層の材料を、コーティングダイス(樹脂塗布ダイス)63乃至67によって順次塗布し、塗布された各層の材料を乾燥機68乃至72によって順次焼結し、作製された長尺の有機太陽電池コア10Aを巻取り装置62に巻き取る(図5参照)。
【0037】
また、この(工程1)では、コーティングダイス63と乾燥機68によりバッファ層12が、コーティングダイス64と乾燥機69により電子供与体層(p層)15が、コーティングダイス65と乾燥機70により中間層(i層)16が、コーティングダイス66と乾燥機71により電子受容層(n層)17が、コーティングダイス67と乾燥機72によりバッファ層14がそれぞれ形成される。
【0038】
(工程2)
あらかじめ一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された平板状の母材ガラス板75を、リドロー法によって加熱溶融・線引きすることで、長尺でかつ帯状のガラス基板(図1に示す第1のガラス基板20となる長尺のガラス基板)20Aを作製する(図6参照)。
この(工程2)では、所定の大きさを有する平板状の母材ガラス板75を用意する。次に、母材ガラス板75をリドロー法などによって延伸する。つまり、母材ガラス板75を加熱炉76にセットし、図示しないカーボンヒータ等の加熱手段により母材ガラス板75を加熱し、軟化させて所定の幅と厚さを有する長尺のガラス基板20Aに延伸する。ガラス基板20Aの幅と厚さの調整は、延伸速度の調整により適宜行うことができる。
【0039】
ガラス基板20Aの厚さは、0.1mm〜0.2mm程度が好ましい。その厚さが0.1mmより薄いガラスは、基本的に製造が困難である上、あまりに薄くしすぎると十分な強度が得られない。逆に、その厚さが0.2mmより厚いガラスは、十分なフレキシブル性を有しない。
【0040】
(工程3)
長尺のガラス基板20Aを第2の巻取り装置77へ送りつつ、溝21の表面を含むガラス基板20Aの表面全体に透明導電膜41を成膜し、さらに、透明導電膜41上に補助電極50を形成して、第1の長尺のガラス基板20Bを作製する。
この(工程3)では、長尺のガラス基板20Aを第2の巻取り装置77へ送りつつ、溝21(図1参照)の表面を含むガラス基板20Aの表面全体に透明導電膜41(図1参照)を熱CVD(Thermal Chemical Vapor Deposition)法などによって成膜装置78により成膜する。
成膜装置78による透明導電膜41の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)や、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)が利用できる。しかし、リドロー法などによる母材ガラス板75の延伸と連続して透明導電膜41の成膜を大気圧プロセスで行い、量産性を向上させるためには、熱CVD法や大気圧プラズマを用いた成膜方法が好ましい。
【0041】
この後、透明導電膜41上に帯状の補助電極50(図1参照)、例えば銀ペーストからなる補助電極を補助電極形成装置79により形成し、補助電極付きガラス基板である第1の長尺のガラス基板20Bを第2の巻取り装置77に巻き取る(図6参照)。
なお、図6で符号「80」はキャプスタンである。
【0042】
(工程4)
上記(工程2)と同様に、あらかじめ一方の表面に互いに平行な複数の溝31が形成された平板状の母材ガラス板75を、リドロー法によって加熱溶融・線引きすることで、長尺でかつ帯状のガラス基板(図1に示す第2のガラス基板30となる長尺のガラス基板)30Aを形成する(図7参照)。
(工程5)
長尺のガラス基板30Aを第3の巻取り装置81へ送りつつ、溝31の表面を含むガラス基板30Aの表面全体に透明導電膜42を成膜して、第2の長尺のガラス基板30Bを作製する(図7参照)。
この(工程5)では、上記(工程4)で作製した長尺のガラス基板30Aを第3の巻取り装置81へ送りつつ、溝31(図1参照)の表面を含むガラス基板30Aの表面全体に透明導電膜42(図1参照)を熱CVD法などによって成膜装置78により成膜する。この後、作製された補助電極無しガラス基板である第2の長尺のガラス基板30Bを第3の巻取り装置81に巻き取る(図7参照)。
【0043】
(工程6)
次に、上記(工程1)で作製し巻取り装置62に巻き取った長尺の有機太陽電池コア10Aを長尺のガラス基板20Bの各溝21と長尺のガラス基板30Bの各溝31とで挟み込んだ状態で、長尺のガラス基板20B,30Bを貼り合わせて一体化し、長尺の有機薄膜太陽電池2を作製する(図8参照)。
この(工程6)では、図8に示すように、長尺のガラス基板20B,30Bのどちらかの短手方向の両端部における貼り合わせ面43(図1参照)に接着剤40を塗布する。この塗布を行いながら、長尺のガラス基板20B,30Bの各溝21,31が長尺の有機太陽電池コア10Aを挟み込むように、長尺のガラス基板20B,30Bおよび有機太陽電池コア10を長手方向(図8で左方向)へ送りつつ、上下のローラ82,83間に通す。これにより、長尺のガラス基板20B,30Bの各溝21,31が長尺の有機太陽電池コア10Aを挟み込んだ状態で、両ガラス基板20B,30Bがローラ82,83により加圧される。
この加圧により、各有機太陽電池コア10の外表面と透明導電膜41,42とが確実に接触し、さらに各有機太陽電池コア10(線条体11)が変形することにより、両ガラス基板20B,30Bが密着できる。
この後、接着剤40を硬化させることにより両ガラス基板20B,30Bを貼り合わせる。これにより、長尺の両ガラス基板20B,30Bが貼り合わされて一体化され、長尺の有機薄膜太陽電池2(図8参照)が出来上がる。
【0044】
(工程7)
この後、長尺の有機薄膜太陽電池2を所定の長さに切断する。
これにより、図1に示す一つの有機薄膜太陽電池素子1が完成する。
上述した有機薄膜太陽電池素子の製造方法によれば、全ての工程を大気圧プロセスで行うことができ、高い量産性を有する。
【0045】
<有機薄膜太陽電池素子の第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1Aを図9および図10に基づいて説明する。
図9に示す有機薄膜太陽電池素子1Aの特徴は、図1および図2に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とを接着剤40により貼り合わせると共に、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートして両ガラス基板を一体化している点にある。有機薄膜太陽電池素子1Aのその他の構成は、上記有機薄膜太陽電池素子1と同様である。
この有機薄膜太陽電池素子1Aでは、図9に示すように、補助電極50の外面および両ガラス基板20,30の周囲全体が樹脂44でラミネートされている。なお、樹脂44としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン等が使用される。
【0046】
また、有機薄膜太陽電池素子1Aでは、その使用状態において、図10に示すように、補助電極50の外面全体を覆う樹脂44の一部、つまり、補助電極50の外部配線と電気的に接続される部分を覆う樹脂44の一部を剥がしたり、孔を開けたりして補助電極50を露出させる。補助電極50の露出した部分に配線を半田付けする。
この有機薄膜太陽電池素子1Aによれば、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13を、両側のガラス基板20,30、接着剤40および樹脂44でほぼ完全に密封できるため、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を更に抑制することができる。その結果、より信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
また、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートすることで、貼り合わせた両ガラス基板20,30を固定することができると共に、両ガラス基板20,30および透明導電膜41,42を保護することができる。
【0047】
<有機薄膜太陽電池素子の第3の実施形態>
図11に示す有機薄膜太陽電池素子1Bの特徴は、図1および図2に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、両ガラス基板20,30を接着剤40により貼り合わせる代わりに、両ガラス基板20,30の周囲全体をハーメチックシールして両ガラス基板を一体化している点にある。図11で、符号「60」は、ハーメチックシール部である。
ハーメチックシールの方法としては、例えば、リドロー時にガラス基板20,30の溝部21,31の外側に溝(例えば半円形の溝61)をそれぞれ形成し、大気圧マイクロプラズマジェット等を用いて、溝61内に選択的にTiやNiを成膜しておく。貼り合せの際にCuワイヤーを溝61の中に入れ、貼り合せ後にレーザーを当ててCuを溶かしてハーメチックシール部60とすることができる。この場合、ハーメチックシール部60が補助電極を兼ねることにもなるので、図12に示すように、図11に示す有機薄膜太陽電池素子1Bにおいて、補助電極50をなくすこともできる。
この有機薄膜太陽電池素子1Bによれば、両ガラス基板20,30の周囲全体をハーメチックシール部60によりハーメチックシールして、両ガラス基板20,30を貼り合わせているので、より確実に密封ができ、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を更に抑制することができる。その結果、より信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
【0048】
<有機薄膜太陽電池素子の第4の実施形態>
図13に示す有機薄膜太陽電池素子1Cの一つの特徴は、図1および図2に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、補助電極50が、第1のガラス基板20表面の透明導電膜41上と、第2のガラス基板30表面の透明導電膜42上とにそれぞれ形成されている点にある。もう一つの特徴は、上記有機薄膜太陽電池素子1において、両ガラス基板20,30を接着剤40により貼り合わせると共に、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートして両ガラス基板を一体化している点にある。有機薄膜太陽電池素子1Cのその他の構成は、上記有機薄膜太陽電池素子1と同様である。
【0049】
この有機薄膜太陽電池素子1Cによれば、補助電極50が、透明導電膜41上と透明導電膜42上とに形成されているので、各透明導電膜41,42の長手方向の電気抵抗をそれぞれ小さくして、電流を取り出し易くなり、変換効率を更に高めることができる。また、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を更に抑制することができる。その結果、より信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
さらに、この有機薄膜太陽電池素子1Cを作製する際には、上記有機薄膜太陽電池素子1の製造方法のように、補助電極付き長尺のガラス基板20Bと補助電極無し長尺のガラス基板30Bの2種類のガラス基板を作製する必要がない。つまり、上記(工程2)と(工程3)により、補助電極付きの長尺のガラス基板のみを作製すれば良いので、上記(工程4)と(工程5)が不要になり、工程を削減でき、製造時間を短縮することができる。
【0050】
<有機薄膜太陽電池素子の第5の実施形態>
図14に示す有機薄膜太陽電池素子1Dの一つの特徴は、図1に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、第2のガラス基板30表面の透明導電膜42上に、該透明導電膜42の全面に裏面電極51が形成されている点にある。
つまり、上記有機薄膜太陽電池素子1は、両ガラス基板20,30の両面から太陽光が入射する全面受光型の太陽電池である。これに対し、有機薄膜太陽電池素子1Dは、ガラス基板20側からのみ太陽光が入射し、その入射光の一部が裏面電極51で反射されて有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する裏面反射型の太陽電池である。
有機薄膜太陽電池素子1Dのもう一つの特徴は、上記有機薄膜太陽電池素子1において、両ガラス基板20,30を接着剤40により貼り合わせると共に、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートして両ガラス基板を一体化している点にある。有機薄膜太陽電池素子1Dのその他の構成は、上記有機薄膜太陽電池素子1と同様である。
【0051】
この有機薄膜太陽電池素子1Dでは、第1のガラス基板20側から入射する太陽光の一部は、透明導電膜41、ガラス基板20および透明導電膜41を通って各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する。これと共に、第1のガラス基板20側から入射する太陽光の一部は、透明導電膜41、ガラス基板20、透明導電膜41,42およびガラス基板30を通って裏面電極51に入射し、裏面電極51で反射された後、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する。
これにより、上記有機薄膜太陽電池素子1のような全面受光型の太陽電池と同等の変換効率を有する裏面反射型の太陽電池が得られる。
【0052】
<太陽電池モジュール>
図15は、図1に示す一つの有機薄膜太陽電池素子1が複数並べて配置され、隣接する2つの有機薄膜太陽電池素子1間を電気的に接続した太陽電池モジュール100の一例を示している。
この太陽電池モジュール100は、図15に示すように、マトリックス状に配置された複数(m×n個)の有機薄膜太陽電池素子1を備えている。つまり、行方向にはm個の有機薄膜太陽電池素子1が並べて配置されていると共に、列方向にはn個の有機薄膜太陽電池素子1が並べて配置されている。なお、図15では、簡略化のために6個((m=3)×(n=2)個)の有機薄膜太陽電池素子1がマトリックス状に配置された太陽電池モジュール100を示している。
【0053】
この太陽電池モジュール100では、列方向に並べて配置されたn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に並列に接続されている。また、各列方向に並べて配置されたn個の有機薄膜太陽電池素子1が、電気的に直列に接続されている。
具体的には、第1列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各線条体11は、配線901により電極951と電気的に接続している。第2列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各線条体11は、配線902より電極952と電気的に接続している。第3列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1(図示省略)の各線条体11は、配線903により、電極953と電気的に接続している。同様に、第m列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各線条体11は、配線901、配線902と同様の配線90m(図示省略)により、電極95m(図示省略)と電気的に接続している。
【0054】
また、第1列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各補助電極50は、配線91乃至93により電極952と電気的に接続されている。これにより、第1列目と第2列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に直列に接続されている。第2列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各補助電極50は、配線91乃至93により電極953と電気的に接続されている。これにより、第2列目と第3列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に直列に接続されている。同様にして、隣接するn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に直列に接続されている。
上記構成を有する太陽電池モジュール100によれば、マトリックス状に配置された複数(m×n個)の各有機薄膜太陽電池素子1で発生した電圧を積算して取り出すことができるので、電圧値を大きくすることができる。
【0055】
なお、図1に示す有機薄膜太陽電池素子1において、上記溝21,31はV溝に限らない。
例えば、図16に示すように、断面形状が長方形(両側で断面正方形)の溝21A,31Aであってもよい。この場合、各溝21A,31Aは、第1および第2のガラス基板20,30を貼り合わせて一体化した状態で、有機太陽電池コア10が透明導電膜41,42と3箇所で接触する大きさを有し、かつ溝21Aと溝31Aで断面正方形になるようにするのが望ましい。
【0056】
また、図1に示す有機薄膜太陽電池素子1において、上記溝21,31は、図17に示すように、断面形状が半円形の溝21A,31Aであってもよい。この場合、半円形の溝21A,31Aの半径と有機太陽電池コア10の半径を略一致させることで、非常に高い電気的接触性を確保することができ、電池の高効率化に貢献する。
【0057】
図18は、第6の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1Dの概略構成を示している。この有機薄膜太陽電池素子1Dでは、第1および第2のガラス基板20,30に、断面形状が長方形の溝21C,31Cがそれぞれ設けられている。各溝21C,31Cは略平行に形成され、各溝21C,31Cのサイズは、複数の有機太陽電池コア10が入る大きさに形成されている。
この有機薄膜太陽電池素子1Dは、上記各実施形態と同様に、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、両ガラス基板が一体化されるように構成されている。また、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、各有機太陽電池コア10が各溝21C,31Cの内面で押されて変形することにより、両ガラス基板20,30が密着するように構成されている。
なお、図18では、簡略化のために、ガラス基板20,30及び複数個の有機太陽電池コア10のみを示し、その他の構成は省略してある。
【0058】
図19は、第7の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1Eの概略構成を示している。この有機薄膜太陽電池素子1Eでは、第1のガラス基板20の表面が平坦面20aになっており、第2のガラス基板30にのみ、複数の有機太陽電池コア10が入る大きさを有し、断面形状が長方形の溝31Dが設けられている。
この有機薄膜太陽電池素子1Eも、上記各実施形態と同様に、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、両ガラス基板が一体化されるように構成されている。また、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、各有機太陽電池コア10が第1のガラス基板20の平坦面20aと第2のガラス基板30の溝31Dとで押されて変形することにより、両ガラス基板20,30が密着するように構成されている。
この有機薄膜太陽電池素子1Eのように、第1および第2のガラス基板の一方の表面には溝が形成されている有機薄膜太陽電池素子にも本発明は適用可能である。
【0059】
図20は、上記各実施形態における第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部(両端面)に接着される端部封止ガラス(ガラス部材)200を示している。この端部封止ガラス200には、複数個の有機太陽電池コア10の各線条体11が通る複数の孔201が設けられている。
この端部封止ガラス200を用いた有機薄膜太陽電池素子は、上記各実施形態における第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部に端部封止ガラス200をそれぞれ接着する。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,1C,1D:有機薄膜太陽電池
2:長尺の有機薄膜太陽電池
10:有機太陽電池コア
11:導電性を有する線条体
11A:導電性を有する長尺の線条体
12:バッファ層
13:光電位誘起層
14:バッファ層
15:電子供与体層(p層)
16:中間層(i層)
17:電子受容体層(n層)
20:第1のガラス基板
20A:補助電極付き長尺のガラス基板
20B:第1の長尺のガラス基板
30A:補助電極無し長尺のガラス基板
30B:第2の長尺のガラス基板
21,21A,21B,21C:溝
30:第2のガラス基板
31,31A,31B,31C:溝
41,42:透明導電膜
44:樹脂44
50:補助電極
51:裏面電極
75:母材ガラス板
100:太陽電池モジュール
200:端部封止ガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池素子、太陽電池モジュールおよび有機薄膜太陽電池素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機半導体を用いた太陽電池として、導体繊維表面に高分子光電位誘起層を形成し、有機導電性繊維としたものがある。この場合、高分子光電位誘起層の外側に透明導電膜を形成することによって導体繊維との間に電位が発生し、太陽電池として動作する。
しかし、この構成においては、次のような問題点がある。
(1)透明導電膜は長手方向の電気抵抗が大きく、電極間の距離により効率が低下する。
(2)有機半導体膜は水分で劣化しやすく、水分透過防止のためのバリア膜が必要になる。
(3)繊維上の透明導電膜は微細構成を有するため、電極の取り出しが難しい。
【0003】
これに対して、有機導電性繊維と導電性繊維を格子状編むことによって織物を構成する高分子太陽電池や太陽電池繊維が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの太陽電池では、有機導電性繊維を電気的に、長手方向に細分化することで上記(1)、(3)の問題を解決しつつ、全体を樹脂でラミネートすることで上記(2)の問題が解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−36999号公報
【特許文献2】特表2005−516370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に開示された太陽電池には次のようないくつかの問題点がある。
(1)有機導電体繊維と導電性繊維による織物を作成するため、製造が面倒である。
(2)織物は柔軟性を有する半面、有機導電体繊維の表面にある有機半導体膜がむき出しになっているため、使用時に導電性繊維とこすれあうために、摩耗しやすく寿命が短くなる。
(3)樹脂でラミネートしただけでは、ガスバリア性が不十分で有機半導体膜が劣化しやすい。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、有機半導体層からなる光電位誘起層の水分に起因する劣化を抑制でき、長寿命で信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子、太陽電池モジュールおよび有機薄膜太陽電池素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、導電性を有する線条体と、該線条体の表面に形成され、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層とをそれぞれ含む複数の線状の有機太陽電池コアと、表面全体を覆うように透明導電膜がそれぞれ形成された第1および第2のガラス基板と、を備え、前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1および第2のガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板の少なくとも一方の表面には溝が形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記導電性線条体が変形することにより前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着するように構成されている。
【0008】
請求項4に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着しており、前記有機太陽電池コアと前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板とは導電性高分子を介して接触するように構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面で接着剤により接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面でハーメチックシールにより接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板の周囲全体を樹脂でラミネートすることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記線条体は前記光電位誘起層の端面から突出していることを特徴とする。
請求項9に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部には、前記線条体の通る複数の孔の開いたガラス部材が接着されていることを特徴とする。
【0011】
請求項10に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記光電位誘起層は、電子供与材料であるp型有機半導体からなる電子供与体層と電子受容材料であるn型有機半導体からなる電子受容体層を有するpn構造、或いは、前記電子供与体層と、前記p型有機半導体と前記n型有機半導体からなる中間層と、前記電子受容体層とを有するpin構造の有機半導体層からなることを特徴とする。
請求項11に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記線状の有機太陽電池コアは、前記線条体の表面と前記光電位誘起層との間に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層と、前記光電位誘起層の表面に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項12に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、断面形状が長方形の溝であることを特徴とする。
請求項13に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が長方形の溝であることを特徴とする。
請求項14に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、互いに平行な複数のV溝であることを特徴とする特徴とする。
【0013】
請求項15に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が半円形の溝であることを特徴とする。
請求項16に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上と、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上との少なくとも一方には補助電極が形成されていることを特徴とする。
請求項17に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記補助電極が、前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上に形成されており、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上には、該透明導電膜の全面に裏面電極が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項18に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記補助電極が、前記ガラス基板の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されていることを特徴とする。
請求項19に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記線条体が円形の断面を有し、前記有機太陽電池コアの外径が0.1〜0.3mmであることを特徴とする。
請求項20に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子は、前記ガラス基板の厚さが0.1〜0.2mmであることを特徴とする。
請求項21に記載の発明に係る太陽電池モジュールは、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の前記有機薄膜太陽電池素子が複数並べて配置され、隣接する2つの前記有機薄膜太陽電池素子間を電気的に接続したことを特徴とする。
【0015】
請求項22に記載の発明に係る太陽電池モジュールは、複数の前記有機薄膜太陽電池素子がマトリックス状に配置されており、行方向と列方向の一方に並べて配置された複数の前記有機薄膜太陽電池素子が電気的に並列に接続されており、かつ、電気的に並列に接続された複数の前記有機薄膜太陽電池素子群同士が電気的に直列に接続されていることを特徴とする。
【0016】
請求項23に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子の製造方法は、導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、第1の長尺のガラス基板を作製する工程と、前記長尺のガラス基板を第3の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜して、第2の長尺のガラス基板を作製する工程と、複数の前記長尺の有機太陽電池コアを前記第1および第2の長尺のガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、前記第1および第2の長尺のガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項24に記載の発明に係る有機薄膜太陽電池素子の製造方法は、導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を含む線状の有機太陽電池コアの各層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、長尺の補助電極付きガラス基板を作製する工程と、複数の前記有機太陽電池コアを、一対の前記補助電極付きガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、一対の前記補助電極付きガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、(1)有機太陽電池コアの光電位誘起層を両側のガラス基板でほぼ完全に密封できるため、水分に起因する光電位誘起層の劣化を抑制することができる。その結果、信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。また、(2)上記特許文献1,2等に記載された従来技術のような編物と比べ、導電体繊維によってこすれて膜(光電位誘起層)が損傷するといった懸念がなく、信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子が得られる。
請求項21に記載の発明によれば、信頼性の高い長寿命の太陽電池モジュールが得られる。
請求項23或いは請求項24に記載の発明によれば、全ての工程を大気圧プロセスで行うことができ、高い量産性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す斜視図。
【図2】図1のX−X線に沿った断面図。
【図3】図1に示す有機薄膜太陽電池素子の有機太陽電池コアを示す斜視図。
【図4】図3に示す有機太陽電池コアの縦断面図。
【図5】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図6】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図7】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図8】有機薄膜太陽電池素子の製造工程の一部を示す説明図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、図2と同様の断面図。
【図10】図9に示す有機薄膜太陽電池素子の使用状態を示す図で、補助電極の外面を覆う樹脂の一部が剥がされた状態を示す断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、図2と同様の断面図。
【図12】図11に示す第3の実施形態において補助電極を省略した有機薄膜太陽電池素子を示す断面図。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、補助電極の外面を覆う樹脂の一部が剥がされた使用状態を示す断面図。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子を示す図で、補助電極および裏面電極の外面を覆う樹脂の一部が剥がされた使用状態を示す断面図。
【図15】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略構成を示す平面図。
【図16】断面形状が長方形の溝を用いた一つの変形例に係る有機薄膜太陽電池素子の主要部を示す断面図。
【図17】断面形状が半円形の溝を用いた別の変形例に係る有機薄膜太陽電池素子の主要部を示す断面図。
【図18】本発明の第6の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子の概略構成を示す図で、図2と同様の断面図。
【図19】本発明の第7の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子の概略構成を示す図で、図2と同様の断面図。
【図20】端部封止ガラスの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において、同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
<有機薄膜太陽電池素子の第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1を図1乃至図4に基づいて説明する。
有機薄膜太陽電池素子1は、図1および図2に示すように、導電性を有する線条体11と、線条体11の表面に形成され、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層13(図4参照)とをそれぞれ含む複数の線状の有機太陽電池コア10と、表面全体を覆うように透明導電膜41,42がそれぞれ形成された第1および第2のガラス基板20,30と、を備えている。また、この有機薄膜太陽電池素子1では、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、第1および第2のガラス基板20,30が一体化されている。
【0021】
第1のガラス基板20は、直方体形状を有する。また、第1のガラス基板20は、一方の表面に互いに平行な複数の溝21を有し、これらの溝21の表面を含む表面全体を覆うように透明導電膜41が形成されている。この透明導電膜41上には、補助電極50が、第1のガラス基板の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されている(図1参照)。補助電極50は、銀ペーストなどを用いて形成される。このように、第1のガラス基板20は、「補助電極付きのガラス基板」である。
第2のガラス基板30は、第1のガラス基板20と同様の寸法および形状を有する。また、第2のガラス基板30は、一方の表面に互いに平行な複数の溝31を有し、これらの溝31の表面を含む表面全体を覆うように透明導電膜42が形成されている。このように、第2のガラス基板30は、「補助電極無しのガラス基板」である。
【0022】
溝21,31は、それぞれV溝である。
なお、本実施形態では、溝21,31は、一例としてそれぞれ4つずつ設けられている。各溝21,31は略平行に形成され、各溝21,31のサイズは、片側の溝に断面が円形の有機太陽電池コア10の半円部分が入る程度の大きさに形成される。溝21,溝31のピッチY(図2参照)は、それぞれ約0.2mm〜0.5mm程度である。
また、各ガラス基板20,30の厚さは0.1〜0.2mm程度である。
ガラス基板の厚さが0.1〜0.2mmであれば柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子に適する。
【0023】
線状の有機太陽電池コア10は、図3および図4に示すように、導電性を有する線条体11と、線条体11の表面に順に積層されたバッファ層12、光電位誘起層13およびバッファ層14とをそれぞれ有する。
線条体11は、銅線等の高い導電性を有する金属線、或いは、カーボン繊維などのような導電性を有する材料(導電性繊維)で構成されている。線条体11は円形の断面を有し、外径が100μm〜200μm程度である。また、線条体11は、外部の配線との電気的接続を容易にするために、図1および図3に示すように、線状の有機太陽電池コア10の端面から突出しているのが好ましい。なお、線条体11は、有機太陽電池コア10の端面から突出していない構成であってもよい。
【0024】
有機太陽電池コア10の外径は0.1〜0.3mm程度である。有機太陽電池コア10の厚さが0.1〜0.3mmであれば柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子に適する。
バッファ層12,14は、表面の凹凸を緩和するための層であり、導電性高分子材料、例えばPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドーパントに用いたPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PSS等からなる。
このように、線状の有機太陽電池コア10は、導電性を有する線条体11と、線条体11の表面と光電位誘起層13との間に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層12と、光電位誘起層13の表面に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層14とを有する。
【0025】
光電位誘起層13は、電子供与材料であるp型有機半導体からなる電子供与体層(p層)15と、p型有機半導体と電子受容材料であるn型有機半導体からなる中間層(i層)16と、n型有機半導体からなる電子受容体層(n層)17とを有するpin構造の有機半導体層からなる。
ここで、「電子供与材料」は、電子を放出する性質を持つ有機半導体材料であり、「電子受容材料」は電子を受け取る性質を持つ有機半導体材料である。また、光電位誘起層13の厚さは、100nm〜数百nm程度である。
【0026】
電子供与体層(p層)15と電子受容体層(n層)17は、例えば、テトラベンゾボルフィリン前駆体やテトラベンゾボルフィリン等からなる。
なお、光電位誘起層13は、p-i-n層が明確に分かれていても良いし、それぞれが混成されていても良い。例えば、光電位誘起層13は、電子供与体層(p層)と電子受容体層(n層)とを有するpn構造の有機半導体層からなる構成であってもよい。
【0027】
透明導電膜41,42は、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)などの透明導電酸化物(Transparent Conductive Oxide; TCO)からなる。
【0028】
有機薄膜太陽電池素子1は、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、複数の導電性を有する線条体11が変形することにより第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とが密着するように構成されている。以下の他の実施形態においても同様である。
【0029】
また、有機薄膜太陽電池素子1は、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、第1及び第2のガラス基板20,30が密着しており、各有機太陽電池コア10と第1及び第2のガラス基板20,30とが導電性高分子を介して接触するように構成されている。
本例では、第1のガラス基板20の透明導電膜41と第2のガラス基板30の透明導電膜42とが密着している。また、各有機太陽電池コア10と第1及び第2のガラス基板20,30(透明導電膜41、42)とが、上述した導電性高分子材料からなる表面の凹凸を緩和するための層であるバッファ層14を介して接触するように構成されている。
【0030】
また、有機薄膜太陽電池素子1は、第1および第2のガラス基板20,30が、複数の有機太陽電池コア10の外側の接触面で接着剤40により接合されることで両ガラス基板20,30が一体化されている。
つまり、有機薄膜太陽電池素子1は、図1および図2に示すように、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20の複数の溝21と、第2のガラス基板30の複数の溝31とで挟み込んだ状態で、第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とを接着剤40により貼り合わせて一体化されている。接着剤40としては、例えば、UV硬化接着剤を使用する。
このように、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20の複数の溝21と第2のガラス基板30の複数の溝31とで両側から挟み込んで両ガラス基板20,30が固定され、有機薄膜太陽電池素子1が形成されている。
【0031】
この有機薄膜太陽電池素子1では、各有機太陽電池コア10のバッファ層14が、第1のガラス基板20の各溝21上の透明導電膜41と、第2のガラス基板30の各溝31上の透明導電膜42とにそれぞれ電気的に接触した状態が確保されている。これにより、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13が、バッファ層14を介して各透明導電膜41,42と電気的に接続されている。
【0032】
次に、上記構成を有する有機薄膜太陽電池素子1の動作を説明する。
太陽光が図1の矢印で示すように第1のガラス基板20および第2のガラス基板30に両側から入射すると、この光は各溝21上の透明導電膜41および各溝31上の透明導電膜42をそれぞれ通って各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する。これにより、光電位誘起層13では、光の吸収による内部光電効果( HYPERLINK "http://www.aist.go.jp/aist#j/press#release/pr2005/pr20050127/pr20050127.html" \l "g" 光起電力効果)によってキャリアが発生し、発生したキャリア(電子と正孔)が光電位誘起層13のpin構造の界面に存在する内蔵電場によって拡散する。これにより、電子が電子供与体層15から電子受容体層17へ移動し、さらにバッファ層14を介して透明導電膜41,42へ移動して、補助電極50に集電されると共に、正孔が電子供与体層15からバッファ層12を介して導電性を有する線条体11へ移動する。これにより、発電された電力が外部に取り出される。
【0033】
以上の構成を有する第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)有機薄膜太陽電池素子1は、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20の複数の溝21と、第2のガラス基板30の複数の溝31とで挟み込んだ状態で、複数の導電性を有する線条体11が変形することにより第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とが密着するように構成されている。また、その挟み込んだ状態で、第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とが接着剤40により貼り合わせて一体化されている。このような構成により、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13を両側のガラス基板20,30および接着剤40でほぼ完全に密封できるため、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を抑制することができる。その結果、信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
【0034】
(2)上記特許文献1,2等に記載された従来技術のような編物と比べ、導電体繊維によってこすれて膜(光電位誘起層13)が損傷するといった懸念がなく、信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子が得られる。
(3)各有機太陽電池コア10を両ガラス基板20,30の各溝21,31で挟み込んだ状態で、複数の線条体11が変形することにより両ガラス基板20,30が密着するように構成されている。このため、有機太陽電池コア10の外表面と透明導電膜41,42とを確実に接触させることができ、信頼性の高い有機薄膜太陽電池素子が得られる。
(4)両ガラス基板20,30が接着剤40により貼り合わせて一体化されているため、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を接着剤40により抑制することができる。
(5)線条体11は有機太陽電池コア10の端面から突出しているので、外部との電気的接続が容易になる。
(6)第1のガラス基板20の溝21と、第2のガラス基板30の溝31をそれぞれV溝にしているので、溝加工が容易になる。
(7)有機太陽電池コアの外径が0.1〜0.3mm程度であるので、柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子を実現することができる。
【0035】
(8)各ガラス基板20,30の厚さが0.1〜0.3mm程度であるので、柔軟性が高く、フレキシブルな有機薄膜太陽電池素子を実現することができる。
(9)補助電極50が第1のガラス基板20を覆う透明導電膜41上に設けられているので、透明導電膜41の長手方向の電気抵抗を小さくして、電流を取り出し易くなり、変換効率を高めることができる。
また、補助電極付きのガラス基板である第1のガラス基板20にあっては、補助電極50のある部分が光を遮り非発電領域となる。しかし、補助電極50は、第1のガラス基板20表面の透明導電膜41上において、第1のガラス基板20の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されているので、補助電極50により光を遮る面積が少なくなる。このため、変換効率の高い有機薄膜太陽電池素子1が得られる。このような効果は、多数の有機薄膜太陽電池素子1を電気的に接続して太陽電池モジュールを作製する際に有効となる。
(10)線条体11の表面と光電位誘起層13との間に表面の凹凸を緩和するためのバッファ層12が形成されており、かつ、光電位誘起層13の表面に表面の凹凸を緩和するためのバッファ層14が形成されている。バッファ層12,14により表面の凹凸が緩和されることで、光電位誘起層10で発生したキャリアが界面の凹凸により捕捉されるのが抑制され、変換効率が向上する。
【0036】
<有機薄膜太陽電池素子の製造方法>
次に、上記有機薄膜太陽電池素子1の製造方法を、図5乃至図8に基づいて説明する。
この製造方法は、以下の工程を備える。
(工程1)
導電性を有する長尺の線条体11Aを供給装置61から巻取り装置62へ送りつつ、線条体11Aの表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層13を順次形成して、線状かつ長尺の有機太陽電池コア10Aを作製する(図5参照)。
この(工程1)では、上記線条体11(図3、図4参照)の母材となる導電性を有する長尺の線条体11A、例えば、外径が100μm〜200μm程度の長尺の銅線を予め作製して、ボビン等の供給装置61(図5参照)に巻き取っておく。
この線条体11Aを、図5に示すように、供給装置61からボビン等の巻取り装置62へ送りつつ、線条体11Aの表面に、上記有機太陽電池コア10の各層の材料を、コーティングダイス(樹脂塗布ダイス)63乃至67によって順次塗布し、塗布された各層の材料を乾燥機68乃至72によって順次焼結し、作製された長尺の有機太陽電池コア10Aを巻取り装置62に巻き取る(図5参照)。
【0037】
また、この(工程1)では、コーティングダイス63と乾燥機68によりバッファ層12が、コーティングダイス64と乾燥機69により電子供与体層(p層)15が、コーティングダイス65と乾燥機70により中間層(i層)16が、コーティングダイス66と乾燥機71により電子受容層(n層)17が、コーティングダイス67と乾燥機72によりバッファ層14がそれぞれ形成される。
【0038】
(工程2)
あらかじめ一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された平板状の母材ガラス板75を、リドロー法によって加熱溶融・線引きすることで、長尺でかつ帯状のガラス基板(図1に示す第1のガラス基板20となる長尺のガラス基板)20Aを作製する(図6参照)。
この(工程2)では、所定の大きさを有する平板状の母材ガラス板75を用意する。次に、母材ガラス板75をリドロー法などによって延伸する。つまり、母材ガラス板75を加熱炉76にセットし、図示しないカーボンヒータ等の加熱手段により母材ガラス板75を加熱し、軟化させて所定の幅と厚さを有する長尺のガラス基板20Aに延伸する。ガラス基板20Aの幅と厚さの調整は、延伸速度の調整により適宜行うことができる。
【0039】
ガラス基板20Aの厚さは、0.1mm〜0.2mm程度が好ましい。その厚さが0.1mmより薄いガラスは、基本的に製造が困難である上、あまりに薄くしすぎると十分な強度が得られない。逆に、その厚さが0.2mmより厚いガラスは、十分なフレキシブル性を有しない。
【0040】
(工程3)
長尺のガラス基板20Aを第2の巻取り装置77へ送りつつ、溝21の表面を含むガラス基板20Aの表面全体に透明導電膜41を成膜し、さらに、透明導電膜41上に補助電極50を形成して、第1の長尺のガラス基板20Bを作製する。
この(工程3)では、長尺のガラス基板20Aを第2の巻取り装置77へ送りつつ、溝21(図1参照)の表面を含むガラス基板20Aの表面全体に透明導電膜41(図1参照)を熱CVD(Thermal Chemical Vapor Deposition)法などによって成膜装置78により成膜する。
成膜装置78による透明導電膜41の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)や、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)が利用できる。しかし、リドロー法などによる母材ガラス板75の延伸と連続して透明導電膜41の成膜を大気圧プロセスで行い、量産性を向上させるためには、熱CVD法や大気圧プラズマを用いた成膜方法が好ましい。
【0041】
この後、透明導電膜41上に帯状の補助電極50(図1参照)、例えば銀ペーストからなる補助電極を補助電極形成装置79により形成し、補助電極付きガラス基板である第1の長尺のガラス基板20Bを第2の巻取り装置77に巻き取る(図6参照)。
なお、図6で符号「80」はキャプスタンである。
【0042】
(工程4)
上記(工程2)と同様に、あらかじめ一方の表面に互いに平行な複数の溝31が形成された平板状の母材ガラス板75を、リドロー法によって加熱溶融・線引きすることで、長尺でかつ帯状のガラス基板(図1に示す第2のガラス基板30となる長尺のガラス基板)30Aを形成する(図7参照)。
(工程5)
長尺のガラス基板30Aを第3の巻取り装置81へ送りつつ、溝31の表面を含むガラス基板30Aの表面全体に透明導電膜42を成膜して、第2の長尺のガラス基板30Bを作製する(図7参照)。
この(工程5)では、上記(工程4)で作製した長尺のガラス基板30Aを第3の巻取り装置81へ送りつつ、溝31(図1参照)の表面を含むガラス基板30Aの表面全体に透明導電膜42(図1参照)を熱CVD法などによって成膜装置78により成膜する。この後、作製された補助電極無しガラス基板である第2の長尺のガラス基板30Bを第3の巻取り装置81に巻き取る(図7参照)。
【0043】
(工程6)
次に、上記(工程1)で作製し巻取り装置62に巻き取った長尺の有機太陽電池コア10Aを長尺のガラス基板20Bの各溝21と長尺のガラス基板30Bの各溝31とで挟み込んだ状態で、長尺のガラス基板20B,30Bを貼り合わせて一体化し、長尺の有機薄膜太陽電池2を作製する(図8参照)。
この(工程6)では、図8に示すように、長尺のガラス基板20B,30Bのどちらかの短手方向の両端部における貼り合わせ面43(図1参照)に接着剤40を塗布する。この塗布を行いながら、長尺のガラス基板20B,30Bの各溝21,31が長尺の有機太陽電池コア10Aを挟み込むように、長尺のガラス基板20B,30Bおよび有機太陽電池コア10を長手方向(図8で左方向)へ送りつつ、上下のローラ82,83間に通す。これにより、長尺のガラス基板20B,30Bの各溝21,31が長尺の有機太陽電池コア10Aを挟み込んだ状態で、両ガラス基板20B,30Bがローラ82,83により加圧される。
この加圧により、各有機太陽電池コア10の外表面と透明導電膜41,42とが確実に接触し、さらに各有機太陽電池コア10(線条体11)が変形することにより、両ガラス基板20B,30Bが密着できる。
この後、接着剤40を硬化させることにより両ガラス基板20B,30Bを貼り合わせる。これにより、長尺の両ガラス基板20B,30Bが貼り合わされて一体化され、長尺の有機薄膜太陽電池2(図8参照)が出来上がる。
【0044】
(工程7)
この後、長尺の有機薄膜太陽電池2を所定の長さに切断する。
これにより、図1に示す一つの有機薄膜太陽電池素子1が完成する。
上述した有機薄膜太陽電池素子の製造方法によれば、全ての工程を大気圧プロセスで行うことができ、高い量産性を有する。
【0045】
<有機薄膜太陽電池素子の第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1Aを図9および図10に基づいて説明する。
図9に示す有機薄膜太陽電池素子1Aの特徴は、図1および図2に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とを接着剤40により貼り合わせると共に、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートして両ガラス基板を一体化している点にある。有機薄膜太陽電池素子1Aのその他の構成は、上記有機薄膜太陽電池素子1と同様である。
この有機薄膜太陽電池素子1Aでは、図9に示すように、補助電極50の外面および両ガラス基板20,30の周囲全体が樹脂44でラミネートされている。なお、樹脂44としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン等が使用される。
【0046】
また、有機薄膜太陽電池素子1Aでは、その使用状態において、図10に示すように、補助電極50の外面全体を覆う樹脂44の一部、つまり、補助電極50の外部配線と電気的に接続される部分を覆う樹脂44の一部を剥がしたり、孔を開けたりして補助電極50を露出させる。補助電極50の露出した部分に配線を半田付けする。
この有機薄膜太陽電池素子1Aによれば、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13を、両側のガラス基板20,30、接着剤40および樹脂44でほぼ完全に密封できるため、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を更に抑制することができる。その結果、より信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
また、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートすることで、貼り合わせた両ガラス基板20,30を固定することができると共に、両ガラス基板20,30および透明導電膜41,42を保護することができる。
【0047】
<有機薄膜太陽電池素子の第3の実施形態>
図11に示す有機薄膜太陽電池素子1Bの特徴は、図1および図2に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、両ガラス基板20,30を接着剤40により貼り合わせる代わりに、両ガラス基板20,30の周囲全体をハーメチックシールして両ガラス基板を一体化している点にある。図11で、符号「60」は、ハーメチックシール部である。
ハーメチックシールの方法としては、例えば、リドロー時にガラス基板20,30の溝部21,31の外側に溝(例えば半円形の溝61)をそれぞれ形成し、大気圧マイクロプラズマジェット等を用いて、溝61内に選択的にTiやNiを成膜しておく。貼り合せの際にCuワイヤーを溝61の中に入れ、貼り合せ後にレーザーを当ててCuを溶かしてハーメチックシール部60とすることができる。この場合、ハーメチックシール部60が補助電極を兼ねることにもなるので、図12に示すように、図11に示す有機薄膜太陽電池素子1Bにおいて、補助電極50をなくすこともできる。
この有機薄膜太陽電池素子1Bによれば、両ガラス基板20,30の周囲全体をハーメチックシール部60によりハーメチックシールして、両ガラス基板20,30を貼り合わせているので、より確実に密封ができ、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を更に抑制することができる。その結果、より信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
【0048】
<有機薄膜太陽電池素子の第4の実施形態>
図13に示す有機薄膜太陽電池素子1Cの一つの特徴は、図1および図2に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、補助電極50が、第1のガラス基板20表面の透明導電膜41上と、第2のガラス基板30表面の透明導電膜42上とにそれぞれ形成されている点にある。もう一つの特徴は、上記有機薄膜太陽電池素子1において、両ガラス基板20,30を接着剤40により貼り合わせると共に、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートして両ガラス基板を一体化している点にある。有機薄膜太陽電池素子1Cのその他の構成は、上記有機薄膜太陽電池素子1と同様である。
【0049】
この有機薄膜太陽電池素子1Cによれば、補助電極50が、透明導電膜41上と透明導電膜42上とに形成されているので、各透明導電膜41,42の長手方向の電気抵抗をそれぞれ小さくして、電流を取り出し易くなり、変換効率を更に高めることができる。また、水分に起因する光電位誘起層13の劣化を更に抑制することができる。その結果、より信頼性の高い長寿命の有機薄膜太陽電池素子が得られる。
さらに、この有機薄膜太陽電池素子1Cを作製する際には、上記有機薄膜太陽電池素子1の製造方法のように、補助電極付き長尺のガラス基板20Bと補助電極無し長尺のガラス基板30Bの2種類のガラス基板を作製する必要がない。つまり、上記(工程2)と(工程3)により、補助電極付きの長尺のガラス基板のみを作製すれば良いので、上記(工程4)と(工程5)が不要になり、工程を削減でき、製造時間を短縮することができる。
【0050】
<有機薄膜太陽電池素子の第5の実施形態>
図14に示す有機薄膜太陽電池素子1Dの一つの特徴は、図1に示す上記有機薄膜太陽電池素子1において、第2のガラス基板30表面の透明導電膜42上に、該透明導電膜42の全面に裏面電極51が形成されている点にある。
つまり、上記有機薄膜太陽電池素子1は、両ガラス基板20,30の両面から太陽光が入射する全面受光型の太陽電池である。これに対し、有機薄膜太陽電池素子1Dは、ガラス基板20側からのみ太陽光が入射し、その入射光の一部が裏面電極51で反射されて有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する裏面反射型の太陽電池である。
有機薄膜太陽電池素子1Dのもう一つの特徴は、上記有機薄膜太陽電池素子1において、両ガラス基板20,30を接着剤40により貼り合わせると共に、両ガラス基板20,30の周囲全体を樹脂44でラミネートして両ガラス基板を一体化している点にある。有機薄膜太陽電池素子1Dのその他の構成は、上記有機薄膜太陽電池素子1と同様である。
【0051】
この有機薄膜太陽電池素子1Dでは、第1のガラス基板20側から入射する太陽光の一部は、透明導電膜41、ガラス基板20および透明導電膜41を通って各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する。これと共に、第1のガラス基板20側から入射する太陽光の一部は、透明導電膜41、ガラス基板20、透明導電膜41,42およびガラス基板30を通って裏面電極51に入射し、裏面電極51で反射された後、各有機太陽電池コア10の光電位誘起層13に入射する。
これにより、上記有機薄膜太陽電池素子1のような全面受光型の太陽電池と同等の変換効率を有する裏面反射型の太陽電池が得られる。
【0052】
<太陽電池モジュール>
図15は、図1に示す一つの有機薄膜太陽電池素子1が複数並べて配置され、隣接する2つの有機薄膜太陽電池素子1間を電気的に接続した太陽電池モジュール100の一例を示している。
この太陽電池モジュール100は、図15に示すように、マトリックス状に配置された複数(m×n個)の有機薄膜太陽電池素子1を備えている。つまり、行方向にはm個の有機薄膜太陽電池素子1が並べて配置されていると共に、列方向にはn個の有機薄膜太陽電池素子1が並べて配置されている。なお、図15では、簡略化のために6個((m=3)×(n=2)個)の有機薄膜太陽電池素子1がマトリックス状に配置された太陽電池モジュール100を示している。
【0053】
この太陽電池モジュール100では、列方向に並べて配置されたn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に並列に接続されている。また、各列方向に並べて配置されたn個の有機薄膜太陽電池素子1が、電気的に直列に接続されている。
具体的には、第1列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各線条体11は、配線901により電極951と電気的に接続している。第2列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各線条体11は、配線902より電極952と電気的に接続している。第3列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1(図示省略)の各線条体11は、配線903により、電極953と電気的に接続している。同様に、第m列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各線条体11は、配線901、配線902と同様の配線90m(図示省略)により、電極95m(図示省略)と電気的に接続している。
【0054】
また、第1列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各補助電極50は、配線91乃至93により電極952と電気的に接続されている。これにより、第1列目と第2列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に直列に接続されている。第2列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1の各補助電極50は、配線91乃至93により電極953と電気的に接続されている。これにより、第2列目と第3列目にあるn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に直列に接続されている。同様にして、隣接するn個の有機薄膜太陽電池素子1が電気的に直列に接続されている。
上記構成を有する太陽電池モジュール100によれば、マトリックス状に配置された複数(m×n個)の各有機薄膜太陽電池素子1で発生した電圧を積算して取り出すことができるので、電圧値を大きくすることができる。
【0055】
なお、図1に示す有機薄膜太陽電池素子1において、上記溝21,31はV溝に限らない。
例えば、図16に示すように、断面形状が長方形(両側で断面正方形)の溝21A,31Aであってもよい。この場合、各溝21A,31Aは、第1および第2のガラス基板20,30を貼り合わせて一体化した状態で、有機太陽電池コア10が透明導電膜41,42と3箇所で接触する大きさを有し、かつ溝21Aと溝31Aで断面正方形になるようにするのが望ましい。
【0056】
また、図1に示す有機薄膜太陽電池素子1において、上記溝21,31は、図17に示すように、断面形状が半円形の溝21A,31Aであってもよい。この場合、半円形の溝21A,31Aの半径と有機太陽電池コア10の半径を略一致させることで、非常に高い電気的接触性を確保することができ、電池の高効率化に貢献する。
【0057】
図18は、第6の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1Dの概略構成を示している。この有機薄膜太陽電池素子1Dでは、第1および第2のガラス基板20,30に、断面形状が長方形の溝21C,31Cがそれぞれ設けられている。各溝21C,31Cは略平行に形成され、各溝21C,31Cのサイズは、複数の有機太陽電池コア10が入る大きさに形成されている。
この有機薄膜太陽電池素子1Dは、上記各実施形態と同様に、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、両ガラス基板が一体化されるように構成されている。また、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、各有機太陽電池コア10が各溝21C,31Cの内面で押されて変形することにより、両ガラス基板20,30が密着するように構成されている。
なお、図18では、簡略化のために、ガラス基板20,30及び複数個の有機太陽電池コア10のみを示し、その他の構成は省略してある。
【0058】
図19は、第7の実施形態に係る有機薄膜太陽電池素子1Eの概略構成を示している。この有機薄膜太陽電池素子1Eでは、第1のガラス基板20の表面が平坦面20aになっており、第2のガラス基板30にのみ、複数の有機太陽電池コア10が入る大きさを有し、断面形状が長方形の溝31Dが設けられている。
この有機薄膜太陽電池素子1Eも、上記各実施形態と同様に、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、両ガラス基板が一体化されるように構成されている。また、複数の有機太陽電池コア10を第1のガラス基板20と第2のガラス基板30とで挟み込んだ状態で、各有機太陽電池コア10が第1のガラス基板20の平坦面20aと第2のガラス基板30の溝31Dとで押されて変形することにより、両ガラス基板20,30が密着するように構成されている。
この有機薄膜太陽電池素子1Eのように、第1および第2のガラス基板の一方の表面には溝が形成されている有機薄膜太陽電池素子にも本発明は適用可能である。
【0059】
図20は、上記各実施形態における第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部(両端面)に接着される端部封止ガラス(ガラス部材)200を示している。この端部封止ガラス200には、複数個の有機太陽電池コア10の各線条体11が通る複数の孔201が設けられている。
この端部封止ガラス200を用いた有機薄膜太陽電池素子は、上記各実施形態における第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部に端部封止ガラス200をそれぞれ接着する。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,1C,1D:有機薄膜太陽電池
2:長尺の有機薄膜太陽電池
10:有機太陽電池コア
11:導電性を有する線条体
11A:導電性を有する長尺の線条体
12:バッファ層
13:光電位誘起層
14:バッファ層
15:電子供与体層(p層)
16:中間層(i層)
17:電子受容体層(n層)
20:第1のガラス基板
20A:補助電極付き長尺のガラス基板
20B:第1の長尺のガラス基板
30A:補助電極無し長尺のガラス基板
30B:第2の長尺のガラス基板
21,21A,21B,21C:溝
30:第2のガラス基板
31,31A,31B,31C:溝
41,42:透明導電膜
44:樹脂44
50:補助電極
51:裏面電極
75:母材ガラス板
100:太陽電池モジュール
200:端部封止ガラス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する線条体と、該線条体の表面に形成され、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層とをそれぞれ含む複数の線状の有機太陽電池コアと、
表面全体を覆うように透明導電膜がそれぞれ形成された第1および第2のガラス基板と、を備え、
前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1および第2のガラス基板が一体化されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池素子。
【請求項2】
前記第1および第2のガラス基板の少なくとも一方の表面には溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項3】
前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記導電性線条体が変形することにより前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項4】
前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着しており、前記有機太陽電池コアと前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板とは導電性高分子を介して接触する ように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項5】
前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面で接着剤により接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする請求項3または4に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項6】
前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面でハーメチックシールにより接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする請求項3または4に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項7】
前記第1および第2のガラス基板の周囲全体を樹脂でラミネートすることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする請求項5または6に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項8】
前記線条体は前記光電位誘起層の端面から突出していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項9】
前記第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部には、前記線条体の通る複数の孔の開いたガラス部材が接着されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項10】
前記光電位誘起層は、電子供与材料であるp型有機半導体からなる電子供与体層と電子受容材料であるn型有機半導体からなる電子受容体層を有するpn構造、或いは、前記電子供与体層と、前記p型有機半導体と前記n型有機半導体からなる中間層と、前記電子受容体層とを有するpin構造の有機半導体層からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項11】
前記線状の有機太陽電池コアは、前記線条体の表面と前記光電位誘起層との間に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層と、前記光電位誘起層の表面に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層とを有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項12】
前記溝は、断面形状が長方形の溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項13】
前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が長方形の溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項14】
前記溝は、互いに平行な複数のV溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項15】
前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が半円形の溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項16】
前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上と、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上との少なくとも一方には補助電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項17】
前記補助電極は、前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上に形成されており、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上には、該透明導電膜の全面に裏面電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項18】
前記補助電極は、前記ガラス基板の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項19】
前記線条体は円形の断面を有し、前記有機太陽電池コアの外径が0.1〜0.3mmであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項20】
前記ガラス基板の厚さは0.1〜0.2mmであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の前記有機薄膜太陽電池素子が複数並べて配置され、隣接する2つの前記有機薄膜太陽電池素子間を電気的に接続したことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項22】
複数の前記有機薄膜太陽電池素子はマトリックス状に配置されており、行方向と列方向の一方に並べて配置された複数の前記有機薄膜太陽電池素子が電気的に並列に接続されており、かつ、電気的に並列に接続された複数の前記有機薄膜太陽電池素子群同士が電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項21に記載の太陽電池モジュール。
【請求項23】
導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、
一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、
前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、第1の長尺のガラス基板を作製する工程と、
前記長尺のガラス基板を第3の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜して、第2の長尺のガラス基板を作製する工程と、
複数の前記長尺の有機太陽電池コアを前記第1および第2の長尺のガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、前記第1および第2の長尺のガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、
前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池素子の製造方法。
【請求項24】
導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を含む線状の有機太陽電池コアの各層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、
一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、
前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、長尺の補助電極付きガラス基板を作製する工程と、
複数の前記有機太陽電池コアを、一対の前記補助電極付きガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、一対の前記補助電極付きガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、
前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池素子の製造方法。
【請求項1】
導電性を有する線条体と、該線条体の表面に形成され、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層とをそれぞれ含む複数の線状の有機太陽電池コアと、
表面全体を覆うように透明導電膜がそれぞれ形成された第1および第2のガラス基板と、を備え、
前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1および第2のガラス基板が一体化されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池素子。
【請求項2】
前記第1および第2のガラス基板の少なくとも一方の表面には溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項3】
前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記導電性線条体が変形することにより前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項4】
前記複数の有機太陽電池コアを前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで挟み込んだ状態で、前記第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着しており、前記有機太陽電池コアと前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板とは導電性高分子を介して接触する ように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項5】
前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面で接着剤により接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする請求項3または4に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項6】
前記第1および第2のガラス基板が、前記複数の有機太陽電池コアの外側の接触面でハーメチックシールにより接合されることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする請求項3または4に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項7】
前記第1および第2のガラス基板の周囲全体を樹脂でラミネートすることで該両ガラス基板が一体化されていることを特徴とする請求項5または6に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項8】
前記線条体は前記光電位誘起層の端面から突出していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項9】
前記第1および第2のガラス基板の長手方向の両端部には、前記線条体の通る複数の孔の開いたガラス部材が接着されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項10】
前記光電位誘起層は、電子供与材料であるp型有機半導体からなる電子供与体層と電子受容材料であるn型有機半導体からなる電子受容体層を有するpn構造、或いは、前記電子供与体層と、前記p型有機半導体と前記n型有機半導体からなる中間層と、前記電子受容体層とを有するpin構造の有機半導体層からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項11】
前記線状の有機太陽電池コアは、前記線条体の表面と前記光電位誘起層との間に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層と、前記光電位誘起層の表面に形成された表面の凹凸を緩和するためのバッファ層とを有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項12】
前記溝は、断面形状が長方形の溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項13】
前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が長方形の溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項14】
前記溝は、互いに平行な複数のV溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項15】
前記溝は、互いに平行な複数の断面形状が半円形の溝であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項16】
前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上と、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上との少なくとも一方には補助電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項17】
前記補助電極は、前記第1のガラス基板表面の前記透明導電膜上に形成されており、前記第2のガラス基板表面の前記透明導電膜上には、該透明導電膜の全面に裏面電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項18】
前記補助電極は、前記ガラス基板の長手方向に延びる一辺近傍にあって、該一辺に沿って帯状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項19】
前記線条体は円形の断面を有し、前記有機太陽電池コアの外径が0.1〜0.3mmであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項20】
前記ガラス基板の厚さは0.1〜0.2mmであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の前記有機薄膜太陽電池素子が複数並べて配置され、隣接する2つの前記有機薄膜太陽電池素子間を電気的に接続したことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項22】
複数の前記有機薄膜太陽電池素子はマトリックス状に配置されており、行方向と列方向の一方に並べて配置された複数の前記有機薄膜太陽電池素子が電気的に並列に接続されており、かつ、電気的に並列に接続された複数の前記有機薄膜太陽電池素子群同士が電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項21に記載の太陽電池モジュール。
【請求項23】
導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、
一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、
前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、第1の長尺のガラス基板を作製する工程と、
前記長尺のガラス基板を第3の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜して、第2の長尺のガラス基板を作製する工程と、
複数の前記長尺の有機太陽電池コアを前記第1および第2の長尺のガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、前記第1および第2の長尺のガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、
前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池素子の製造方法。
【請求項24】
導電性を有する長尺の線条体を供給装置から巻取り装置へ送りつつ、前記線条体の表面に、複数の有機半導体層からなる光電位誘起層を含む線状の有機太陽電池コアの各層を順次形成して、線状でかつ長尺の有機太陽電池コアを作製する工程と、
一方の表面に互いに平行な複数の溝が形成された母材ガラス板を、リドロー法によって加熱溶融・線引きして長尺のガラス基板を作製する工程と、
前記長尺のガラス基板を第2の巻取り装置へ送りつつ、前記溝の表面を含む前記ガラス基板の表面全体に透明導電膜を成膜し、さらに、前記透明導電膜上に補助電極を形成して、長尺の補助電極付きガラス基板を作製する工程と、
複数の前記有機太陽電池コアを、一対の前記補助電極付きガラス基板の前記複数の溝で挟み込んだ状態で、一対の前記補助電極付きガラス基板を一体化して長尺の有機薄膜太陽電池を作製する工程と、
前記長尺の有機薄膜太陽電池を所定の長さに切断する工程と、を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−243826(P2011−243826A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116007(P2010−116007)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
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