説明

有機蛍光色素及びそれを用いた樹脂組成物

【課題】400nm付近で強い発光を示し、さらに樹脂に添加した場合にその蛍光特性が優れている有機蛍光色素を提供すること。
【解決手段】2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなど下記一般式のベンゾトリアゾール誘導体とする。なお式中Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシル基を表す。式中Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機蛍光色素及び樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、400nm付近で強い発光を示す有機蛍光色素及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機蛍光色素は照射された光のエネルギーを吸収して発光する色素であり、また高効率でエネルギーの変換が出来ることから、色素単体や有機溶媒中又は樹脂中に分散された状態で幅広い分野で使用されている。
【0003】
紙幣や重要な証明書には、紫外線感度の高い有機蛍光色素のインクでマークが記されていることが多く、紫外線を照射したときのみそのマークが光を発して浮き上がって見えるため、偽造防止に役立っている。また、道路柵、道路標識、建築物の内外装など、視認性を高める目的で塗料に有機蛍光色素が使われている。また、白地の衣類に青色蛍光色素で染色等を行うと、青の補色である黄ばみを目立たなくすることが出来るため、蛍光増白剤として有機蛍光色素が衣類の染色又は洗剤に使用されている。また、分子生物学の研究分野において、蛍光による標的分子や細胞の可視化は必要不可欠な技術であり、種々の細胞や分子の動態を追跡するマーカーとして有機蛍光色素が使用されている。
【0004】
太陽電池の表面に有機蛍光色素を添加した膜を貼り、紫外線を長波長の可視光に変換することで効率よくエネルギーに変換することができる。また、ビニールハウスのビニールに有機蛍光色素を添加することで、特定の波長を多く植物に当てることができ、植物の生育を促進できる。
【0005】
有機EL素子の基本構造は、発光層をホール輸送層と電子輸送層で挟み込む構造になっている。これに電界をかけて、ホールと電子を注入し、発光層で電荷を再結合させて電気エネルギーを発生させ、発光層が発光する。この発光層に使われる発光材料として有機蛍光色素が使用されている。
【0006】
上記の各用途では、使用される有機蛍光色素が、紫外線又は可視光を十分吸収し、強い光を発することが求められている。すなわち、物質が光を吸収する程度を示す指標であるモル吸光係数が高く、吸収された光子数に対する放出された光子数の比で表される蛍光量子効率が高い有機蛍光色素が求められており、モル吸光係数と蛍光量子効率が高いほど蛍光強度は高くなる。また、有機蛍光色素は色素単体や有機溶媒中だけでなく樹脂中で使用されることが多く、樹脂中でもその蛍光特性が優れていることが求められている。
【0007】
これまで使用されてきた有機蛍光色素は、モル吸光係数が大きいものは多いが、蛍光量子効率が十分大きいものは少なく、蛍光強度を高めるためにモル吸光係数及び蛍光量子効率の双方が大きい有機蛍光色素が開発されてきており、例えば非特許文献1に記載されているように、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ファインケミカル2011年2月号 vol.40 No.2 p52
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの化合物のモル吸光係数は大きいと言えるが、蛍光量子効率は十分大きいと言えず、400nm付近で発光する青色有機蛍光色素では特に小さい。結果として、上記の各用途で十分に満足できる発光を得ることが出来ず、また、蛍光強度を高めるために有機蛍光色素の添加量を増やした場合に濃度消光が起こったり、樹脂に添加する場合はブリードアウトが生じやすくなる問題がある。そこで本発明における課題は、400nm付近で強い発光を示し、さらに樹脂に添加した場合にその蛍光特性が優れている有機蛍光色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、下記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を、有機蛍光色素及び蛍光性樹脂組成物として用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】


一般式(1)
[式中Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシル基を表す。式中Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。]
【0011】
上記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物は、好ましくはRが水素原子であり、Rが炭素数1〜8のアルキル基で表される化合物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機蛍光色素に用いる一般式(1)のベンゾトリアゾール誘導体は、400nm付近で発光を示し、モル吸光係数が約26000であり、蛍光量子効率が約90%であるため、従来技術の課題を解決し得る有機蛍光色素及び樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は有機蛍光色素及び樹脂組成物として、下記一般式(1)によって示す化合物を用いたものである。以下に上記一般式(1)において表される化合物について説明する。
【0014】
【化1】


一般式(1)
【0015】
一般式(1)中、該任意の置換基の例としてRは、水素原子; フッ素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの置換されても良い炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基が挙げられる。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−エイコシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。
【0016】
本発明の有機蛍光色素に用いるベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)としては、例えば、次に示すものを挙げることができる。2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−メトキシフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール、5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール、2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−メトキシ−2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール、2−(4−エイコシルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−エイコシルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−エイコシルオキシフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−エイコシルオキシフェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−エイコシルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール等。
【0017】
上記の置換基の中でも、好ましくはRが水素原子であり、Rが炭素数1〜8のアルキル基である。Rが水素原子でありRが炭素数1のアルキル基である2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと、Rが水素原子であり、Rが炭素数8のアルキル基である2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールについては、高い蛍光量子効率を有することが実施例で実証されている。
【0018】
本発明の有機蛍光色素は、前記ベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)に含まれる1の化合物のみ使用することもできるし、また前記化合物一般式(1)に含まれる2以上の化合物を混合して用いることもできる。またその他の蛍光性有機化合物と混合して用いることもできる。
【0019】
本発明の有機蛍光色素に用いるベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)は、従来公知の方法によって合成することができる。すなわち、下記(化2〜化6)に示した反応式のように、ニトロアニリン類をジアゾ化し、常法によりパラヒドロキシ安息香酸とカップリングし、得られるニトロフェニルアゾ化合物を還元してベンゾトリアゾール誘導体とし、さらにハロゲン化アルキル又は硫酸エステルを用いてアルコキシ化して目的とするベンゾトリアゾール誘導体を合成できる。
【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
有機蛍光色素は樹脂中に添加されて使用されることが多く、本発明の有機蛍光色素に用いるベンゾトリアゾール誘導体化合物も同様に樹脂中に添加して用いられる。前記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を配合可能な樹脂は特に限定されるわけではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ-3−メチルブチレン、ポリメチルペンテンなどのα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリエチレン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑性ポリ塩化ビニルなどの含ハロゲン合成樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、スチレンと他の単量体(無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリアミドイミド、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、水溶性樹脂、粉体塗料用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0026】
前記ベンゾトリアゾール誘導体化合物は、樹脂に対して0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%の範囲で使用されることが好ましい。添加量が少なすぎると十分な発光が得られず、また、多すぎるとブリードアウトや濃度消光が起こるからである。
【実施例】
【0027】
以下に本発明で用いたベンゾトリアゾール誘導体化合物の合成法及び化合物の特性を示す。ただし合成方法はこれに限定されるものではない。
【0028】
(製造例)
[中間体;4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールの合成]
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、オルソニトロアニリン30.4g(0.220モル)、62.5%硫酸50.8g(0.324モル)を入れて溶解させ、撹拌させながら170mlの水を加えた。これに36%亜硝酸ナトリウム水溶液43.4g(0.226モル)を3〜7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を290g得た。2000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、水470ml、水酸化ナトリウム10.0g(0.250モル)、炭酸ナトリウム11.5g(0.109モル)、パラヒドロキシ安息香酸31.3g(0.227モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、4−(2−ニトロフェニルアゾ)フェノールを49.2g得た。
【0029】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4−(2−ニトロフェニルアゾ)フェノール49.2g(0.202モル)、イソプロピルアルコール175ml、水200ml、水酸化ナトリウム17.6g(0.440モル)、ハイドロキノン0.4gを入れて溶解させ、60%ヒドラジン水和物18.4g(0.220モル)を70〜75℃で滴下し、同温度で2時間撹拌させ、62.5%硫酸でpH3に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール−N−オキシドを30.9g得た。
【0030】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体30.9g(0.136モル)、メチルイソブチルケトン300ml、水150ml、亜鉛末14.9g(0.228モル)を入れて混合し、62.5%硫酸53.6g(0.342モル)を70〜75℃を保って滴下し、同温度で1時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水150mlで洗浄し、活性炭1.0gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時ろ過し、ろ液からメチルイソブチルケトンを回収した後にイソプロピルアルコール150mlを加え、25℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した後に乾燥し、4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールを21.3g得た。収率46%(オルソニトロアニリンから)であった。
【0031】
[化合物(a);2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの合成]
【化7】


化合物(a)
【0032】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール12.0g(0.0568モル)、メチルイソブチルケトン60ml、炭酸カリウム9.4g(0.0680モル)、ポリエチレングリコール400 1.2ml、ヨウ化カリウム2.4g、ジメチル硫酸16.5g(0.1308モル)を入れて、120℃で12時間還流撹拌した。水80mlを加え、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去し、温水40mlで洗浄し、活性炭0.5gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時ろ過し、ろ液からメチルイソブチルケトンを回収した後にイソプロピルアルコール40mlを加え、20℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄して乾燥し、白色結晶を8.4g得た。この白色結晶をトルエンで再結晶して乾燥し、2−(4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを4.3g得た。収率34%(4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールから)であった。融点は111℃。
【0033】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 6.0×150mm 5μm
カラム温度:40℃
移動相: メタノール/水=95/5
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:99.5%
なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0034】
[化合物(b);2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの合成]
【化8】


化合物(b)
【0035】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール46.6g(0.221モル)、メチルイソブチルケトン470ml、炭酸カリウム18.9g(0.137モル)、ポリエチレングリコール400 4.7ml、ヨウ化カリウム9.3g、n−オクチルクロライド37.4g(0.252モル)を入れて、120℃で12時間還流脱水した。水200mlを加え、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去し、温水200mlで洗浄し、活性炭2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時ろ過し、ろ液からメチルイソブチルケトンを回収した後にイソプロピルアルコール200mlを加え、20℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄して乾燥し、白色結晶を66.0g得た。この白色結晶をイソプロピルアルコールで再結晶して乾燥し、2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを52.7g得た。収率74%(4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールから)であった。融点75℃、HPLC面百純度99.8%であった。
【0036】
(実施例1,2)
[光学特性]
上記合成で得られた化合物(a)(実施例1)および化合物(b)(実施例2)のクロロホルム中での吸収特性、また、ポリスチレン中及びポリプロピレン中の蛍光特性を表1に示す。
【0037】
(比較例)
従来の有機蛍光色素である化合物(c);4,4‘−ビス(2−メトキシスチリル)ビフェニル(東京化成工業(株)製)についても上記実施例1,2同様に吸収特性及び蛍光特性を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、実施例1,2では有機蛍光色素として有用とされる10000をはるかに越える高いモル吸光係数を示し、また、400nm付近で発光を示す従来品より高い蛍光量子効率を示し、さらに各種樹脂中において、幅広い濃度で高い蛍光量子効率を示すことから、優れた有機蛍光色素であることがわかる。なお実施例および比較例の吸収スペクトル、蛍光スペクトル、樹脂フィルム成形の条件は次の通りである。
【0040】
<吸収スペクトル>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜 450nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0041】
<蛍光スペクトル>
装置:FP−6500(日本分光(株)製)
励起波長:化合物(a),(b) 320nm,化合物(c) 370nm
【0042】
<ポリスチレンキャストフィルム成形>
ポリスチレン原料:重合度約2000(和光純薬工業(株)製)
溶媒:ジクロロメタン
フィルム厚:0.1mm
【0043】
<ポリプロピレン熱プレスフィルム成形>
[混練]
ポリプロピレン原料:サンアロマー(株)製 PX600N 4kg
化合物:8g
押し出し機:(株)テクノベル製 二軸押出機 KZW31−42MG−01R
温度:180℃
[熱プレス]
射出成型機:東洋機械金属(株)製 S80IV
温度:210℃
フィルム厚:1mm
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の有機蛍光色素は、モル吸光係数と蛍光量子効率が高く、優れた光学特性を示すことから、有機蛍光色素として、好適に利用できる。各種樹脂中でも同様に優れた光学特性を示すことから、特に樹脂に分散した状態で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール誘導体を含む有機蛍光色素。
【化1】


一般式(1)
[式中Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシル基を表す。式中Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。]
【請求項2】
上記一般式(1)におけるRが水素原子であり、Rが炭素数1〜8のアルキル基である請求項1記載の有機蛍光色素。
【請求項3】
樹脂に、請求項1、2のいずれかの項に記載の有機蛍光色素を配合した蛍光性樹脂組成物。