説明

有機過酸化物組成物

【課題】製造時に有機過酸化物が分解せず、貯蔵安定性に優れる有機過酸化物組成物を提供する。
【解決手段】有機過酸化物組成物は下式有機過酸化物と疎水性物質による表面処理した無機充填剤を含有し式(1)は有機過酸化物組成物中1〜70質量%、式(2)は有機過酸化物組成物中30〜99質量%。熱可塑性樹脂やゴムと混練した有機過酸化物含有マスターバッチの製造の際、熱履歴による有機過酸化物の分解がほとんど生じない。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時に有機過酸化物が分解せず、貯蔵安定性に優れる有機過酸化物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機過酸化物は、各種ビニルモノマーの重合開始剤として、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化剤として、さらには、熱可塑性樹脂及びゴムの架橋剤として等、多くの分野で工業的に広く使用されている。
一般に、熱硬化性樹脂の硬化や熱可塑性樹脂及びゴム等のエラストマーの架橋に有機過酸化物を用いる場合は、純粋な有機過酸化物を用いることが経済面から好ましいが、取扱時の安全性や樹脂及びゴムへの分散性等の問題から、有機過酸化物を炭酸カルシウムやシリカ、クレー、タルク等の安価な無機充填剤で希釈した製品形態、もしくは、予め、有機過酸化物及び無機充填剤等を基材ゴムと混練したマスターバッチが工業的に使用されている。
例えば、常温で液体の有機過酸化物、及び有機過酸化物に対して2〜10質量%の吸着能を有するシリカからなる組成物、さらにそこに軽質炭酸カルシウムなどの充填剤を含有させた組成物を、マスターバッチ用有機過酸化物組成物としてポリマーやゴムに均一に混合させた有機過酸化物含有マスターバッチが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−296330号公報(第4〜9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体の有機過酸化物はシリカに吸着された粉末状態でポリマー類に均一分散されるため、有機過酸化物が経時的に分離したり、貯蔵中にマスターバッチの凝集が起こらないという利点はあるが、有機過酸化物としてパーオキシエステルを用いた場合には、有機過酸化物含有マスターバッチを製造する際に熱履歴にて有機過酸化物が分解したり、貯蔵安定性が著しく低下するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は無機充填剤が有機過酸化物に及ぼす影響を鋭意研究した結果、疎水性シリカ等の疎水性無機充填剤に有機過酸化物を吸着させれば、マスターバッチ製造時の熱履歴で有機過酸化物の分解が促進されず、又貯蔵安定性も低下しないことを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第1の発明は、下記一般式(1)又は(2)で表される有機過酸化物と疎水性物質による表面処理した無機充填剤を含有する有機過酸化物組成物であって、前記有機過酸化物は、前記有機過酸化物組成物中1〜70質量%であり、前記疎水性無機充填剤は、前記有機過酸化物組成物中30〜99質量%であることを特徴とする。
【化3】

【化4】

【0007】
本発明の第2の発明は、第1の発明の有機過酸化物組成物にさらに疎水性物質による表面未処理の無機充填剤を疎水性物質による表面処理した無機充填剤100重量部に対して150重量部以下含有する有機過酸化物組成物である。
【0008】
本発明の第3の発明は、第1、第2の発明における疎水性物質による表面処理した無機充填剤が疎水性シリカ、疎水性炭酸カルシウム、疎水性タルク及び疎水性クレーからなる群から選択される1種以上の疎水性無機充填材である有機過酸化物組成物である。
【0009】
本発明の第4の発明は、第1〜第3の発明における有機過酸化物がt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート又はt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートのいずれかである有機過酸化物組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の発明は、特定の有機過酸化物と疎水性物質による表面処理した無機充填剤を特定の組成割合で含有するものであって、貯蔵安定性が優れた有機過酸化物組成物であるため、この有機過酸化物組成物を熱可塑性樹脂やゴムと混練した有機過酸化物含有マスターバッチを製造する際にも、熱履歴による有機過酸化物の分解がほとんど生じず、マスターバッチの貯蔵安定性も優れている。
【0011】
本発明の第2の発明は、安価な表面未処理の無機充填剤を併用することで、貯蔵安定性を低下させることなく濃度調整が可能である。
【0012】
本発明の第3の発明は、特定の疎水性無機充填剤を使用することで、前記第1の発明の効果に加えて吸油性に優れている。
【0013】
本発明の第4の発明は、特定の有機過酸化物を使用することで、表面未処理の無機充填剤で希釈した場合と比較して、貯蔵安定性を大きく改善することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の有機過酸化物組成物(以下、単に有機過酸化物組成物と略記する)は粉体状であり、前記一般式(1)又は(2)で表される特定の有機過酸化物と疎水性物質による表面処理した無機充填剤(以下、単に疎水性無機充填剤という)を含有し、前記特定の有機過酸化物は、全組成物中1〜70質量%であって、前記疎水性無機充填剤は、全組成物中30〜99質量%である。
【0015】
本発明で使用される特定の有機過酸化物(以下、単に有機過酸化物という)は、一般式(1)で表されるパーオキシエステル又は一般式(2)で表されるパーオキシモノカーボネートの骨格を有する常温(少なくとも25℃)で液状の有機過酸化物である。
その具体例としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシメタトルエート、t−ブチルパーオキシオルトトルエート等のパーオキシエステルや、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等のモノカーボネートが挙げられる。これらから選択される1種乃至2種以上が適宜使用される。
これらの中では疎水性無機充填剤と組み合わせた有機過酸化物組成物の貯蔵安定性を著しく改善できる点で、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエートが好ましく、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートがより好ましい。
なお、これら有機過酸化物を疎水性無機充填剤に混合する前には、脂肪酸エステル、炭化水素溶剤、パラフィン油、シリコーン油等の溶剤で予め希釈した形態で使用することも出来る。
【0016】
有機過酸化物組成物中の前記有機過酸化物の割合は、目的及び用途により異なるが、通常は1〜70質量%であり、好ましくは、5〜60質量%である。1質量%未満では、架橋時に多量に使用する必要があり、疎水性無機充填剤の添加量が多くなってしまうため、作業性が悪くなる。一方、70質量%を越える場合、通常の疎水性無機充填剤の吸油能を超えるため、製品外観がペースト状態もしくはスラリー状態となり、均一な粉末の混合状態を維持することが難しくなる。
【0017】
本発明で使用される疎水性無機充填剤は、疎水性物質によって表面処理した無機充填剤であれば、特に以下の化合物に限定するものではないが、シリカをチタネート系又はシラン系カップリング剤で表面処理をした疎水性シリカ;軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウムを脂肪酸で表面処理した疎水性炭酸カルシウム;ハードクレー、ソフトクレー、カオリンクレー等の含水珪酸アルミニウムを主成分とするクレーまたは焼成クレーを脂肪酸で表面処理した疎水性クレー;含水珪酸マグネシウムを主成分とするタルクを脂肪酸で表面処理した疎水性タルク;その他にも珪藻土、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム等を脂肪酸で表面処理したもの等を好ましく挙げることが出来る。
これらの中ではマスターバッチ製造時の熱履歴で前記有機過酸化物の分解量が少ないこと、有機過酸化物の吸油性及び貯蔵安定性の面から、疎水性シリカ、疎水性炭酸カルシウム、疎水性クレー及び疎水性タルクが好ましく、中でも疎水性シリカと疎水性炭酸カルシウムがより好ましく、疎水性シリカが最も好ましい。なお、これらの疎水性無機充填剤は一種または二種以上混合して使用することが出来る。
【0018】
疎水性シリカの市販品としては、Mizukasil NP-8(商品名)、Mizukasil P-802Y(商品名)、Mizukasil P-87(商品名)、Mizukasil No.30(商品名)(以上水澤化学工業(株)製)、Nipsil SS-20(商品名)、Nipsil SS−30P(商品名)、Nipsil SS−50(商品名)、Nipsil SS−50A(商品名)、Nipsil SS−70(商品名)、NIPGEL AY−451(商品名)、NIPGEL AY−460(商品名)、NIPGEL AZ−260(商品名)、NIPGEL AZ−360(商品名)(以上東ソー・シリカ(株)製)、AEROSIL R−972(商品名)、AEROSIL R−974(商品名)、AEROSIL RX200(商品名)、AEROSIL RY200(商品名)、AEROSIL R805(商品名)、AEROSIL R812(商品名)(以上、日本アエロジル(株)製)等が挙げられる。
疎水性炭酸カルシウムの市販品としては、MSK−G(商品名)、MSK−P(PP)(商品名)、カルファイン100(商品名)、MT−100(商品名)、MS−R(商品名)、シーレッツ(商品名)、MC−5(商品名)、ユニグロス1000(商品名)、MCコートS10(商品名)、MCコートP10(商品名)、スノーライト(商品名)、MC−E20(商品名)、ナノコートS25(商品名)、EC−1(商品名)(以上、丸尾カルシウム製)、ホワイトシール WS−K(商品名)、ホワイトシール WS−100(商品名)、ホワイトシール WS−810(商品名)(以上、竹原化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0019】
さらに、コスト及び性能面のバランスから、必要に応じて疎水性物質による表面未処理の無機充填剤(以下、単に表面未処理の無機充填剤という)を添加してもよい。この表面未処理の無機充填剤としては、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸マグネシウム等を挙げることが出来る。
疎水性無機充填剤と表面未処理の無機充填剤の配合比率は、通常、疎水性無機充填剤/表面未処理の無機充填剤=100/0〜150(重量比)である。配合比率が150重量比を越える場合には有機過酸化物の吸油性が低下するため好ましくない。
尚、前記特定の有機過酸化物(1〜70質量%)と疎水性無機充填剤(30〜99質量%)からなる組成物に、この表面未処理の無機充填剤を配合する三成分系においても、前記の割合はそのまま適用される。
【0020】
前記有機過酸化物及び疎水性無機充填剤を混合する場合、或いは必要に応じてそこへ未処理の無機充填剤をさらに添加して混合する場合、容器回転式混合機、機械撹拌式混合機等の通常の混合機を用いる。
混合時の温度は特に制限されないが、通常10〜30℃の範囲である。
各成分の添加手順としては従来公知のいずれの方法でも良いが、例えば、疎水性無機充填剤と有機過酸化物とを同時に混練する方法や、予め、機械撹拌式混合機の混合槽に疎水性無機充填剤を仕込んでおき、有機過酸化物を徐々に添加しながら混合する方法等が挙げられる。
【0021】
本発明の有機過酸化物組成物の用途としては、EVA(エチレン−ビニルアセテート)架橋、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等の合成ゴムなどの架橋に好ましく用いられる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、これらの例において%及び部はそれぞれ質量%及び質量部を表す。また、実施例及び比較例で使用した有機過酸化物の略記号を以下に示す。
【0023】
〔有機過酸化物〕
パーブチルE:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂(株)製、純度99%)
パーブチルI:t−ブチルオキシイソプロピルカーボネート(日本油脂(株)製、純度98%)
パーブチルZ:t−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、純度99%)
また、実施例および比較例中の貯蔵安定性試験及び有機過酸化物濃度の測定方法は以下に示す通りである。
【0024】
〔貯蔵安定性試験〕
調整した有機過酸化物組成物を40℃のインキュベーターで貯蔵し、熱履歴による有機過酸化物濃度(質量%)の経日劣化を調べた。
【0025】
〔有機過酸化物濃度の測定〕
ヨード滴定法により有機過酸化物の濃度(質量%)を測定した。
【0026】
〈実施例1〉
予め、機械撹拌式混合機の混合槽に疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)100重量部を仕込み、撹拌しながらパーブチルE100重量部を約5分間で添加し、さらに10分間撹拌した。得られた混合物は、12メッシュで篩紛をした後、再度、10分間撹拌を実施した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0027】
〈実施例2〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)を、Nipsil SS−20(東ソー・シリカ(株)製)に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0028】
〈実施例3〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)を、Mizukasil P−802Y(水澤化学工業(株)製)に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0029】
〈実施例4〉
前記実施例1において、パーブチルEをパーブチルZに代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0030】
〈実施例5〉
前記実施例1において、パーブチルEをパーブチルIに代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0031】
〈実施例6〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)100重量部を、50重量に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0032】
〈実施例7〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)100重量部の変わりに、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)70重量部と表面未処理の軽質炭酸カルシウム(商品名:軽質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム(株)製)30重量部の混合無機分散剤に変更した以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0033】
〈実施例8〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)100重量部の変わりに、表面処理した軽質炭酸カルシウム(商品名:MSK−G 丸尾カルシウム(株)製)280重量部に変更した以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0034】
〈比較例1〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)を、親水性シリカ(商品名:ゼオシール500V、多木化学(株)製)に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0035】
〈比較例2〉
前記実施例4において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)を、親水性シリカ(商品名:トクシールGU、(株)トクヤマ製)に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0036】
〈比較例3〉
前記実施例5において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)を、親水性シリカ(商品名:トクシールGU、(株)トクヤマ製)に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0037】
〈比較例4〉
前記実施例6において、表面処理した炭酸カルシウム(商品名:MSK−G、丸尾カルシウム(株)製)を、表面未処理の重質炭酸カルシウム(商品名:重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム(株)製)に代えた以外は、実施例6と同様にして有機過酸化物組成物を製造した。
そして、前記の方法に従い貯蔵安定性試験を行った。配合物の組成割合及び試験結果を表1に示した。
【0038】
〈比較例5〉
前記実施例1において、疎水性シリカ(商品名:AEROSIL R−972、日本アエロジル(株)製)100重量部を、35重量に代えた以外は実施例1と同様にして有機過酸化物組成物を製造した結果、製品外観がペースト状となり、粉末の混合状態を維持することが出来なかったため、その後の試験は中止した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示す結果より明らかなように、本発明の特定の有機過酸化物と疎水性無機充填剤を特定の組成割合で含有する実施例1〜7は、比較例1〜4と比べて、熱履歴による有機過酸化物の劣化が少なく、貯蔵安定性が優れていることが確認された。
【0041】
〈実施例9〉
予め、二本ロール機でEPDM(エチレンプロピレンゴム,商品名:EP21、JSR(株)製)100重量部を素練りした後、前記実施例1で製造した有機過酸化物組成物150重量部を添加して均一な練りを実施した。
そして、得られたゴム組成物の過酸化物濃度を前記の方法に従い測定し、原料仕込み時と混練処理後の過酸化物濃度の変化を調べた。結果を表2に示した。
【0042】
〈比較例6〉
前記実施例9において、実施例1で製造した有機過酸化物を比較例1で製造した有機過酸化物に代えた以外は実施例9と同様にして、ゴム組成物を製造した。
そして、得られたゴム組成物の過酸化物濃度を前記の方法に従い測定し、原料仕込み時と混練処理後の過酸化物濃度の変化を調べた。結果を表2に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示す結果より明らかなように、本発明の実施例9は比較例6と比べ、有機過酸化物含有マスターバッチを製造時の熱履歴による有機過酸化物の分解がほとんど生じないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で表される有機過酸化物と疎水性物質による表面処理した無機充填剤を含有する有機過酸化物組成物であって、前記有機過酸化物は、前記有機過酸化物組成物中1〜70質量%であり、前記疎水性無機充填剤は、前記有機過酸化物組成物中30〜99質量%であることを特徴とする有機過酸化物組成物。
【化1】

【化2】

(式中、R1は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。R3は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアリール基を示す。)
【請求項2】
さらに疎水性物質による表面未処理の無機充填剤を疎水性物質による表面処理した無機充填剤100重量部に対して150重量部以下含有する請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項3】
疎水性物質による表面処理した無機充填剤が疎水性シリカ、疎水性炭酸カルシウム、疎水性タルク及び疎水性クレーからなる群から選択される1種以上の疎水性無機充填材である請求項1又は2に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項4】
有機過酸化物がt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート又はt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートのいずれかである請求項1〜3のいずれか一項に記載の記載の有機過酸化物組成物。

【公開番号】特開2008−230972(P2008−230972A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68471(P2007−68471)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】