説明

有機電界発光素子

【課題】 燐光を利用した高輝度で長寿命の有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】 少なくとも一対の電極間に配置された発光層と、該発光層と直接に接する少なくとも一つの正孔阻止層を有する有機電界燐光発光素子であって、該正孔阻止層として蛍光の青色発光ホスト材料として用いることができる化合物を用いることを特徴とする有機電界燐光発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関し、より詳しくは燐光を利用した高輝度で長寿命の有機電界発光素子(以下、燐光発光素子と略記する)に関する。
【背景技術】
【0002】
多層積層構造からなる燐光発光素子は既に知られている(特許文献1参照)。蛍光のみを利用して発光させる場合、励起一重項状態を利用するため、内部量子効率の理論上の限界値は25%であるが、燐光発光素子は三重項状態の励起エネルギーが発光に寄与するため、内部量子効率の理論的限界値は100%と考えられている。従って、燐光発光素子は発光効率、即ち、駆動電流密度に対する発光輝度の比率を向上させることができるため、蛍光発光素子に比べて優れている。
【0003】
また、有機電界発光素子の発光効率の向上と駆動安定性の向上を両立させるために、発光層と陰極の間に、発光層からの正孔の移動を制限する正孔阻止層を設けることが提案されている。この正孔阻止層によって正孔を発光層中に蓄積させ、電子との再結合確率を向上させ、発光の高効率化を達成することができる。正孔阻止材料としてフェナントロリン誘導体(特許文献2参照)、トリアゾール誘導体(特許文献3参照)が有効であると報告されている。また、燐光発光素子においてもフェナントロリン誘導体(非特許文献1参照)やBAlq等のアルミキレート(非特許文献2参照)が正孔阻止層として用いられている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6097147号明細書
【特許文献2】特開平10−79297号公報
【特許文献3】特開平10−233284号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.75,4(1999)
【非特許文献2】Proc.SPIE、Vol.4105,P175−182(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの正孔阻止材料を燐光発光素子に用いても、必ずしも十分な発光効率と長寿命を有する燐光発光素子は得られていない。フェナントロリン誘導体を用いた場合、燐光発光素子の効率は高まるが、駆動安定性は低いとされている。一方、BAlqを用いると、駆動安定性は高まるが、効率は低下する傾向にあり、駆動安定性と効率の向上の両立が望まれている。本発明は、正孔阻止層に特定の化合物を用いることにより、上述した課題を解決し、発光効率が大きく、長寿命の燐光発光素子を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討を続けた結果、正孔阻止材料として蛍光青色発光材料として用いることができる化合物、特に特定のアントラセン誘導体を用いることにより、上述した課題を解決することが可能であることをみいだし本発明に到達した。即ち、本発明は下記の構成よりなる。
【0007】
1.少なくとも一対の電極間に配置された発光層と、該発光層と直接に接する少なくとも一つの正孔阻止層を有する燐光発光素子であって、該正孔阻止層として蛍光の青色発光ホスト材料として用いることができる化合物を用いることを特徴とする燐光発光素子。
【0008】
2.少なくとも一対の電極間に配置された電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を有する項1に記載の燐光発光素子。
【0009】
3.青色発光ホスト材料として用いることができる化合物が少なくとも1種の式(F11)で表され、且つ分子量が340以上である化合物である項1または2に記載の燐光発光素子。
【化1】

【0010】
ここで、Antはt価のアントラセン環であり、tは1〜10の整数であり、各Aは独立に、下記(a1)〜(a6)の何れかである。ただし、(a6)は(a1)〜(a5)のうちの少なくとも1つの基と共存するものとする。
(a1)炭素数6〜130の置換若しくは非置換の非縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含まない1価の基
(a2)炭素数6〜130の置換非縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含む1価の基
(a3)炭素数10〜130の置換若しくは非置換の縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含まない1価の基
(a4)炭素数10〜130の置換縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含む1価の基
(a5)1価の炭素数1〜130の置換若しくは非置換の複素環式基であって、アントラセン環に直結する原子が窒素原子以外の原子である複素環式基
(a6)1価の炭素数1〜50の非環式炭化水素基
【0011】
4.式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a1)で示される基である、項3に記載の燐光発光素子。
【0012】
5.式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a2)で示される基である、項3に記載の燐光発光素子。
【0013】
6.式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a3)で示される基である、項3に記載の燐光発光素子。
【0014】
7.式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a4)で示される基である、項3に記載の燐光発光素子。
【0015】
8.式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a5)で示される基である、項3に記載の燐光発光素子。
【0016】
9.式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a6)で示される基であり、少なくとも1つのAが(a1)〜(a5)で示される基の何れかである項3に記載の燐光発光素子。
【0017】
10.(a1)が1〜10個の置換若しくは非置換のベンゼン環を含む基である項4に記載の燐光発光素子。
【0018】
11.(a3)が置換若しくは非置換のナフタレン環、アントラセン環、フェナントロレン環、ピレン環、およびフルオレン環から選択される1〜10個の環を含む基である項6に記載の燐光発光素子。
【0019】
12.(a5)が置換若しくは非置換の下記複素環から選択される1〜10個の環を含む基である項8に記載の燐光発光素子。
【化2】

ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜18のアリールである。
【0020】
13.Aの置換基が置換若しくは非置換のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントロレン環、ピレン環、、フルオレン環、及び置換若しくは非置換の下記環
【化3】

ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜18のアリールである。
並びにフェニルエテニル及びジフェニルエテニルから選択される1〜10個の環または基を含む基である項10〜12の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0021】
14.Aの置換基の置換基が、炭素数1〜12のアルキルであって、このアルキルにおける任意のメチレンが−O−で置き換えられてもよく、1位のメチレン以外の任意のメチレンは炭素数6〜12のアリーレンまたは炭素数3〜12のシクロアルキレンで置き換えられてもよい基である項10〜12の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0022】
15.Aの置換基の置換基が、炭素数1〜12のアルキル、フェニルエテニルまたはジフェニルエテニルであって、このアルキルにおける任意のメチレンが−O−で置き換えられてもよく、1位のメチレン以外の任意のメチレンは炭素数6〜12のアリーレンまたは炭素数3〜12のシクロアルキレンで置き換えられてもよい基である項13に記載の燐光発光素子。
【0023】
16.Aが(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)及び(a6)から選択される少なくとも2種の基からなる項3〜15の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0024】
17.Aが(a1)のみからなる項4または10に記載の燐光発光素子。
【0025】
18.Aが(a3)のみからなる項6または11に記載の燐光発光素子。
【0026】
19.Aが(a1)と(a3)のみからなる項4、6、10、11または16に記載の燐光発光素子。
【0027】
20.2個のAがAntの9及び10位に結合している項3〜19の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0028】
21.t=2である項3〜20の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0029】
22.t=3である項3〜20の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0030】
23.t=4〜10である項3〜20の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0031】
24.式(F11)において、t=1であり、Aが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された少なくとも1個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0032】
25.式(F11)において、t=1であり、Aがナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0033】
26.置換基の数が1〜3個である項24または25に記載の燐光発光素子。
【0034】
27.式(F11)において、t=1であり、Aが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された4個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0035】
28.式(F11)において、t=1であり、Aがナフチル、アントリルまたはフェナントリルから選択された1つの基の水素の任意に選択された4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0036】
29.アントラセン環の置換基の位置が9位または10位である項24〜28の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0037】
30.式(F11)において、t=2であり、一方のAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された少なくとも1個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されて得られる基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0038】
31.式(F11)において、t=2であり、一方のAがナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0039】
32.置換基の数が1〜3個である項30または31に記載の燐光発光素子。
【0040】
33.式(F11)において、t=2であり、一方のAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された4個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0041】
34.式(F11)において、t=2であり、一方のAがナフチル、アントリルまたはフェナントリルから選択された1つの基の水素の任意に選択された4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル若しくはピリジルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0042】
35.アントラセン環の置換基の位置が9位及び10位である項30〜34の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0043】
36.式(F11)において、t=3であり、一つのAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された少なくとも1個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されて得られる基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0044】
37.式(F11)において、t=3であり、一つのAがナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0045】
38.置換基の数が1〜3個である項36または37に記載の燐光発光素子。
【0046】
39.式(F11)において、t=3であり、一つのAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された4個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0047】
40.式(F11)において、t=3であり、一つのAがナフチル、アントリルまたはフェナントリルから選択された1つの基の水素の任意に選択された4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である項3に記載の燐光発光素子。
【0048】
41.アントラセン環の置換基の位置が9位及び10位である項36〜40の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0049】
42.2個のAの各々が1または2個の置換基を有し、その置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである項30〜35の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0050】
43.3個のAの各々が1または2個の置換基を有し、その置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである項36〜41の何れか1項に記載の燐光発光素子。
【0051】
44.式(F11)において、t=2であり、2個のAの各々が1または2個の置換基を有し、Aが独立にフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル、フルオレニルまたはピレニルであり、置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである項3に記載の燐光発光素子。
【0052】
45.式(F11)において、t=3であり、3個のAの各々が1または2個の置換基を有し、Aが独立にフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル、フルオレニルまたはピレニルであり、置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである項3に記載の燐光発光素子。
【発明の効果】
【0053】
本発明は正孔阻止層に青色発光材料、特に特定の構造を有するアントラセン誘導体を用いることにより発光効率が大きく、長寿命の燐光発光素子を与えることを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の燐光発光素子は、少なくとも一対の電極間に配置された発光層と、これと直接に接する少なくとも一つの正孔阻止層を有する燐光発光素子であって、好ましくは陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層及び陽極の順に積層された燐光発光素子である。
【0055】
本発明は、上述した正孔阻止層に蛍光の青色発光ホスト材料として用いることができる化合物、特に、前記式(F11)で表されるアントラセン誘導体を含有させることを特徴とする。
式(F11)で表されるアントラセン誘導体は置換基Aによって1〜10個の置換基を有することができる。Aは(a1)〜(a6)の6種類の基に大別される。これらのうち(a1)〜(a5)は環式基であり、(a6)のみは非環式炭化水素基である。しかし、(a6)は必ず(a1)〜(a5)のうちの少なくとも1つの基とともに存在するためにアントラセン環の置換基の少なくとも1つは環式炭化水素基である。
【0056】
(a1)は炭素数6〜130の置換若しくは非置換の非縮合環式炭化水素基である。非縮合環式炭化水素基としては置換若しくは非置換のベンゼン環、シクロアルカン環、架橋環式炭化水素等がある。これらの内でベンゼン環が好ましい。アントラセン環に直結する基は更に置換基を持つことができる。それらの置換基としては複素環式基以外には制約はない。(a1)としての炭素数が6〜130の範囲に入りさえすればよい。従って、上述した非縮合環式炭化水素基、後述する縮合環式炭化水素基または後述する非環式炭化水素基(複素環式基を含む場合を除く)でもよい。その置換基が更に置換基を持ってもよい。また、複数の置換基を持ってもよい。この様な思想は特に断らなくても(a1)〜(a6)に共通するものである。
【0057】
さらに炭素数6〜130の置換若しくは非置換の非縮合環式炭化水素基の好ましい具体例としてはフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2−ビフェニルイル、3−ビフェニルイル、4−ビフェニルイル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジt−ブチルフェニル、2,4,6−トリt−ブチルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、3−(2−フェニルエテニル)フェニル、4−(2―フェニルエテニル)フェニル、3−(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル、4−(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル、m−ターフェニル−2’−イル、m−ターフェニル−4’−イル、m−ターフェニル−5’−イル、o−ターフェニル−3’−イル、o−ターフェニル−4’−イル、p−ターフェニル−2’−イル、m−タ−フェニル−2−イル、m−ターフェニル−3−イル、m−ターフェニル−4−イル、o−ターフェニル−2−イル、o−ターフェニル−3−イル、o−ターフェニル−4−イル、p−ターフェニル−2−イル、p−ターフェニル−3−イル、p−ターフェニル−4−イル、5’−フェニル−m−ターフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−ターフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−ターフェニル−4−イル、m−クアテルフェニル、3,5−ジ(1−ナフチル)−フェニル、3,5−ジ(2−ナフチル)−フェニル等である。
【0058】
(a2)は(a1)が置換基として後述する複素環式基を有する場合である。置換基としての複素環式基が必須であって、置換基として複素環式基以外に非縮合環式炭化水素基、縮合環式炭化水素基及び非環式炭化水素基の何れを有してもよい。ただアントラセン環に直結する基は(a1)の場合と同様に非縮合環式炭化水素基が必須である。複素環式基としては任意の複素環式基を用いることができるが、好ましくは式HT−1〜HT−8で表される8つの環を挙げることができる。
【0059】
さらに複素環式基における好ましい具体例としては4−メチル―1,2,4−トリアゾール−3−イル、4−フェニル―1,2,4−トリアゾール−3−イル、5−フェニル-1,2,4−オキサジアゾール−2−イル、5−(4−ビフェニル)-1,2,4−オキサジアゾール−2−イル、3−メチル−ベンゾイミダゾール−2−イル、3−フェニル−ベンゾイミダゾール−2−イル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル、1−カルバゾリル、2−カルバゾリル、3−カルバゾリル、4−カルバゾリル、9−カルバゾリル、1−ジベンゾチエニル、2−ジベンゾチエニル、3−ジベンゾチエニル、4−ベンゾチエニル等が挙げられる。
【0060】
(a3)は炭素数10〜130の置換若しくは非置換の縮合環式炭化水素基である。縮合環式炭化水素基としては任意の縮合環式炭化水素環を用いることができるが、好ましくは置換若しくは非置換のナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等を挙げることができる。これらの基はアントラセン環に直結する基の置換基としても用いることができる。それ以外の置換基として非縮合環式炭化水素基(ただし、複素環式基を含む場合を除く)を挙げることができる。
【0061】
さらに炭素数10〜130の置換若しくは非置換の縮合環式炭化水素基の好ましい具体例は、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル、1−ピレニル、2−ピレニル、4−ピレニル、2−フルオレニル、4−メチル−1−ナフチル、4−t−ブチル−1−ナフチル、6−メチル−2−ナフチル、6−t−ブチル−2−ナフチル、4−メチル−1−アントリル、4−t−ブチル−1−アントリル、10−メチル−9−アントリル、10−t−ブチル−9−アントリル、9,9−ジメチル−2−フルオレニル、4−フェニル−1−ナフチル、6−フェニル−2−ナフチル、6−(2−ナフチル)−2−ナフチル、6−(1−ナフチル)−2−ナフチル、4−(2−ナフチル)−1−ナフチル、4−(1−ナフチル)−1−ナフチル、9,9−ジフェニル−2−フルオレニル等である。
また置換基として用いられる非縮合環式炭化水素基は(a1)で述べた基が好ましく用いられる。
【0062】
(a4)はアントラセン環に直結する基は(a3)の場合と同様であるが、その置換基として複素環式基、非縮合環式炭化水素基、縮合環式炭化水素基及び非環式炭化水素基の何れを有してもよい。複素環式基、非縮合環式炭化水素基及び縮合環式炭化水素基の好適な具体例は(a1)〜(a3)で挙げられたとおりであり、非環式炭化水素基の好適な具体例は後述する。
【0063】
(a5)は炭素数1〜130の置換若しくは非置換の複素環式基であって、アントラセン環に直結する原子が窒素原子以外の原子である複素環式基である。アントラセン直結基としては以上の制約以外に複素環としての制約は特にないが、好ましくは(a2)で挙げられた環である。更に、これらの基の置換基としては非縮合環式炭化水素基、複素環式基及び非環式炭化水素基から選択される。これらの基の好適な具体例としては(a1)から(a3)で挙げられた基を例示することができる。
【0064】
(a6)は炭素数が1〜50の非環式炭化水素基である。非環式とはアントラセン環に直結する原子が環式基を構成する原子ではないということであり、その連鎖の途中に環式基があってもよい。従って、アルキル、アルキレンのみならず、アラルキルでもよいし、シクロアルキル環を含んでいてもよい。更に任意のメチレンは−O−で置き換えてもよい。1位のメチレン以外の任意のメチレンはフェニレンまたはシクロアルキレンで置き換えられてもよい。また、フェニルエテニルまたはジフェニルエテニル等の二重結合含有基であってもよい。非環式炭化水素基として、好ましくは炭素数1〜12のアルキルであり、このアルキルにおける任意のメチレンが−O−で置き換えられてもよく、1位のメチレン以外の任意のメチレンは炭素数6〜12のアリーレンまたは炭素数3〜12のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、並びにフェニルエテニル及びジフェニルエテニルである。
【0065】
またこれらの基の置換基としては非縮合環式炭化水素基、複素環式基及び非環式炭化水素基から選択される。これらの基の好適な具体例として、(a1)〜(a3)で挙げられた基を例示することができる。
【0066】
さらに好ましい炭素数が1〜50の非環式炭化水素基の具体例は、メチル、エチル、ノルマルプロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、t−ブチル、2―フェニルエテニル、2,2―フェニルエテニル、ベンジル、ジフェニルメチル、ジメチルベンジル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、o−トリルオキシ、m−トリルオキシ、p−トリルオキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ、2,4−ジメチルフェノキシ、2,6−ジメチルフェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、2,4−ジt−ブチルフェノキシ、2,4,6−トリt−ブチルフェノキシ、2−フェニルエトキシ、2−(4−メチルフェニル)エトキシ、シクロプロピル、シクロブチル、シクロぺンチル、シクロヘキシル等である。
【0067】
アントラセン環直結基と前述したその置換基は単結合によって連結される。また、置換基とその置換基も単結合によって連結される。非縮合環式炭化水素基、非環式炭化水素基及び複素環式基が上述した一定の制約のもと縦横に単結合を介して連結することによって式(F11)のAが形成される。Aは1〜10個である。複数のAが存在する場合には互いに同一でも、異なってもよい。アントラセン環には置換可能な位置は1〜10位まであるが、置換基の位置は特に限定されない。
【0068】
本発明で用いられるアントラセン誘導体の具体例を以下に例示する。
【0069】
【化4】

【0070】
【化5】

【0071】
【化6】

【0072】
【化7】

【0073】
【化8】

【0074】
【化9】

【0075】
【化10】

【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
【化14】

【0080】
【化15】

【0081】
【化16】

【0082】
【化17】

【0083】
【化18】

【0084】
【化19】

【0085】
【化20】

【0086】
【化21】

【0087】
【化22】

【0088】
【化23】

上記の具体例の中でも化合物(3)、(6)、(8)、(10)、(12)、(16)、(20)、(23)、(32)、(36)、(42)、(43)、(52)、(53)、(62)、(64)および(71)が好ましい。
【0089】
本発明で用いられるアントラセン誘導体は、鈴木カップリング反応のような既知の合成法を利用して合成することができる。鈴木カップリング反応は、塩基の存在下パラジウム触媒を用いて、芳香族ハライドと芳香族ボロン酸とをカップリングする方法である。その1例として式(8)で表される化合物の反応例を以下に示す。
【0090】
【化24】

【0091】
この反応で用いられるパラジウム触媒の具体例は、Pd(PPh34、PdCl2(PPh32、Pd(OAc)2等である。この反応で用いられる塩基の具体例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、酢酸ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等である。さらに、この反応で用いられる溶媒の具体例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等である。これらの溶媒は、反応させる芳香族ハライドおよび芳香族ボロン酸の構造に応じて適宜選択できる。溶媒は単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0092】
本発明の燐光発光素子に使用される発光層はホスト材料と燐光を放射するドーパントとからなる。ホスト材料およびドーパントとしては、化学工業2004年6月号13ページおよび、それにあげられた参考文献などに記載された化合物などが挙げられる。
【0093】
本発明の燐光発光素子に使用される正孔注入材料および正孔輸送材料については、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機電界発光素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾール等)、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミンを主鎖あるいは側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル(以下、NPDと略記する。)、4,4’,4”−トリス{N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ}トリフェニルアミン、スターバーストアミン誘導体等)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニン等)、ポリシラン等である。
【0094】
本発明の燐光発光素子に使用される電子輸送材料および電子注入材料は、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機電界発光素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
【0095】
このような電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体等である。
【0096】
中でもピリジン誘導体(例えば、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(以下、PyPySPyPyと略記する)、9,10−ジ(2’,2”−ビピリジル)アントラセン、2,5−ジ(2’,2”−ビピリジル)チオフェン、2,5−ジ(3’,2”−ビピリジル)チオフェン、6’6”−ジ(2−ピリジル)2,2’:4’,3”:2”,2”−クアテルピリジン等)、フェナントロリン誘導体(例えば、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチルー4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9’−ジフルオル−ビス(1,10−フェナントロリン−5−イル)等)、キノリノール系金属錯体(例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以下、Alq3と略記する。)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−(4−フェニルフェノール)アルミニウム等)が好適である。
【0097】
特にピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体を電子輸送層または電子注入層に用いると、低電圧、高効率を実現できる。
【0098】
本発明の燐光発光素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法等の方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造等により異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度50〜400℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0099】
次に、本発明の正孔阻止材料を用いて燐光発光素子を作成する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光ホスト材料とドーパントからなる発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極からなる燐光発光素子の作成法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法等により形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上に発光ホスト材料とドーパントを共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に正孔阻止層、電子輸送層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法等により形成させて陰極とすることにより、目的の燐光発光素子が得られる。なお、上述の燐光発光素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0100】
このようにして得られた燐光発光素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明又は半透明の電極側(陽極又は陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この燐光発光素子は、交流電圧を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【実施例1】
【0101】
ガラス基板上にITOを150nmの厚さに蒸着したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置の基板ホルダーに固定し、銅フタロシアニン(以下記号CuPcで表記する)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、NPDを入れたモリブデン製蒸着用ボート、トリス[2−(2−ピリジニル)フェニル−C,N]−イリジウム(以下記号Ir(ppy)3で表記する)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−ビフェニルを入れたモリブデン製蒸着用ボート(以下記号CBPで表記する)、化合物(8)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Alq3を入れたモリブデン製蒸着用ボート、弗化リチウムを入れたモリブデン製蒸着用ボート、およびアルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
【0102】
真空槽を1×10-3Paまで減圧し、CuPcが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚20nmになるように蒸着して正孔注入層を形成し、ついで、NPDが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、Ir(ppy)3が入ったボートとCBPの入ったボートを同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。次に、化合物(8)の入ったボートを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔阻止層を得た。Ir(ppy)3とCBPの重量比がおよそ8対92になるように蒸着速度を調節した。その後、Alq3を入れた蒸着用ボートを加熱して膜厚35nmになるように加熱して電子輸送層を形成した。
【0103】
各層の蒸着速度は0.001〜3.0nm/秒であった。その後、弗化リチウム入りの蒸着用ボートを加熱して膜厚0.5nmになるように0.003〜0.01nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウム入りの蒸着用ボートを加熱して膜厚100nmになるように0.1〜1nm/秒の蒸着速度で蒸着することにより、燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.3Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約14.0Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3700cd/m2で、輝度半減時間は、約300時間であった。
【0104】
[比較例1]
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりにビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラート)−アルミニウムを用いた以外は、実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.7Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約2900cd/m2、発光効率は約10.5Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約2900cd/m2で、輝度半減時間は、約300時間であった。
【0105】
[比較例2]
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりに2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを用いた以外は、実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.3Vの直流電圧を印加すると、約9.8mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約14.3Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また9.8mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3700cd/m2で、輝度半減時間は、約50時間であった。
【実施例2】
【0106】
実施例1の電子輸送層においてAlq3の代わりに、2,5−ビス(6’−(2’、2’−ビピリジル))−1,1−ジメチルー3,4−ジフェニルシロールを用いたことと、正孔阻止層として、実施例1の化合物(8)の代わりに化合物化合物(3)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.3Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約15.9Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3700cd/m2で、輝度半減時間は、約290時間であった。
【実施例3】
【0107】
実施例1の正孔阻止層として実施例1の化合物(8)の代わりに化合物(24)を用いた以外は、実施例1と同様にして燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.8Vの直流電圧を印加すると、約11.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約13.5Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また11mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3700cd/m2で、輝度半減時間は、約350時間であった。
【実施例4】
【0108】
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりに、化合物(6)を用いた以外は実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0109】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.0Vの直流電圧を印加すると、約10.5mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約13.8Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3600cd/m2で、輝度半減時間は、約310時間であった。
【実施例5】
【0110】
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりに、化合物(23)を用いた以外は実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0111】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.6Vの直流電圧を印加すると、約9.5mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約14.2Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3800cd/m2で、輝度半減時間は、約310時間であった。
【実施例6】
【0112】
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりに、化合物(16)を用いた以外は実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0113】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.3Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約14.0Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3700cd/m2で、輝度半減時間は、約310時間であった。
【実施例7】
【0114】
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりに、化合物(42)を用いた以外は実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0115】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.8Vの直流電圧を印加すると、約11.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約13.5Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3600cd/m2で、輝度半減時間は、約340時間であった。
【実施例8】
【0116】
実施例1の正孔阻止層において化合物(8)の代わりに、化合物(52)を用いた以外は実施例1と全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0117】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約8.0Vの直流
電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約3700cd/m2、発光効率は約14.5Lm/Wで、波長510nmをピークとするスペクトルを有する緑色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約3700cd/m2で、輝度半減時間は、約320時間であった。
【実施例9】
【0118】
ガラス基板上にITOを150nmの厚さに蒸着したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置の基板ホルダーに固定し、CuPcを入れたモリブデン製蒸着用ボート、NPDを入れたモリブデン製蒸着用ボート、ビス[(4,6―ジフルオロフェニル)―ピリジネート-N,C2’]ピナコレートイリジウム(以下記号FIrpicで表す)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、CBPを入れたモリブデン製蒸着用ボート、化合物(62)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Alq3を入れたモリブデン製蒸着用ボート、弗化リチウムを入れたモリブデン製蒸着用ボート、およびアルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
【0119】
真空槽を1×10-3Paまで減圧し、CuPcが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚20nmになるように蒸着して正孔注入層を形成し、ついで、NPDが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、FIrpicが入ったボートとCBPの入ったボートを同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。その次に、化合物(62)の入ったボートを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔阻止層を得た。FIrpicとCBPの重量比がおおよそ8対92になるように蒸着速度を調節した。次に、その後、Alq3を入れた蒸着用ボートを加熱して膜厚35nmになるように加熱して電子輸送層を形成した。
各層の蒸着速度は0.01〜3.0nm/秒であった。その後、弗化リチウム入りの蒸着用ボートを加熱して膜厚0.5nmになるように0.003〜0.01nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウム入りの蒸着用ボートを加熱して膜厚100nmになるように0.1〜1nm/秒の蒸着速度で蒸着することにより、燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.49Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約816cd/m2、発光効率は約3.42Lm/Wで、青色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約816cd/m2で、輝度半減時間は、約300時間であった。
【0120】
[比較例3]
実施例9において、正孔阻止層のおいて化合物(62)の代わりに、下記構造を有するトリアゾール誘導体を用いた以外は、全く同様にして燐光発光素子を得た。
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.73Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約758cd/m2、発光効率は約3.08Lm/Wで、青色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約758cd/m2で、輝度半減時間は、約100時間であった。
【実施例10】
【0121】
【化25】

【0122】
実施例9において、正孔阻止層において化合物(62)の代わりに、化合物(71)を用いた以外は、全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0123】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.55Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約830cd/m2、発光効率は約3.45Lm/Wで、青色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約830cd/m2で、輝度半減時間は、約320時間であった。
【実施例11】
【0124】
実施例9において、正孔阻止層において化合物(62)の代わりに、化合物(12)を用いた以外は、全く同様にして燐光発光素子を得た。
【0125】
ITO電極を陽極、弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、約7.60Vの直流電圧を印加すると、約10.0mA/cm2の電流が流れ、輝度は約820cd/m2、発光効率は約3.39Lm/Wで、る青色発光を得た。また10mA/cm2直流で印加し、連続駆動すると、初期輝度約820cd/m2で、輝度半減時間は、約295時間であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極間に配置された発光層と、該発光層と直接に接する少なくとも一つの正孔阻止層を有する有機電界燐光発光素子であって、該正孔阻止層として蛍光の青色発光ホスト材料として用いることができる化合物を用いることを特徴とする有機電界燐光発光素子。
【請求項2】
少なくとも一対の電極間に配置された電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を有する請求項1に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項3】
青色発光ホスト材料として用いることができる化合物が少なくとも1種の式(F11)で表され、且つ分子量が340以上である化合物である請求項1または2に記載の有機電界燐光発光素子。
【化1】

ここで、Antはt価のアントラセン環であり、tは1〜10の整数であり、各Aは独立に、下記(a1)〜(a6)の何れかである。ただし、(a6)は(a1)〜(a5)のうちの少なくとも1つの基と共存するものとする。
(a1)炭素数6〜130の置換若しくは非置換の非縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含まない1価の基
(a2)炭素数6〜130の置換非縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含む1価の基
(a3)炭素数10〜130の置換若しくは非置換の縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含まない1価の基
(a4)炭素数10〜130の置換縮合環式炭化水素基であって、置換基が複素環式基を含む1価の基
(a5)1価の炭素数1〜130の置換若しくは非置換の複素環式基であって、アントラセン環に直結する原子が窒素原子以外の原子である複素環式基
(a6)1価の炭素数1〜50の非環式炭化水素基
【請求項4】
式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a1)で示される基である、請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項5】
式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a2)で示される基である、請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項6】
式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a3)で示される基である、請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項7】
式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a4)で示される基である、請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項8】
式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a5)で示される基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項9】
式(F11)において、少なくとも1つのAが、(a6)で示される基であり、少なくとも1つのAが(a1)〜(a5)で示される基の何れかである請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項10】
(a1)が1〜10個の置換若しくは非置換のベンゼン環を含む基である請求項4に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項11】
(a3)が置換若しくは非置換のナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、およびフルオレン環から選択される1〜10個の環を含む基である請求項6に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項12】
(a5)が置換若しくは非置換の下記複素環から選択される1〜10個の環を含む基である請求項8に記載の有機電界燐光発光素子。
【化2】

ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜18のアリールである。
【請求項13】
Aの置換基が置換若しくは非置換のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環、及び置換若しくは非置換の下記環
【化3】

ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜18のアリールである。
並びにフェニルエテニル及びジフェニルエテニルから選択される1〜10個の環または基を含む基である請求項10〜12の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項14】
Aの置換基の置換基が、炭素数1〜12のアルキルであって、このアルキルにおける任意のメチレンが−O−で置き換えられてもよく、1位のメチレン以外の任意のメチレンは炭素数6〜12のアリーレンまたは炭素数3〜12のシクロアルキレンで置き換えられてもよい基である請求項10〜12の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項15】
Aの置換基の置換基が、炭素数1〜12のアルキル、フェニルエテニルまたはジフェニルエテニルであって、このアルキルにおける任意のメチレンが−O−で置き換えられてもよく、1位のメチレン以外の任意のメチレンは炭素数6〜12のアリーレンまたは炭素数3〜12のシクロアルキレンで置き換えられてもよい基である請求項13に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項16】
Aが(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)及び(a6)から選択される少なくとも2種の基からなる請求項3〜15の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項17】
Aが(a1)のみからなる請求項4または10に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項18】
Aが(a3)のみからなる請求項6または11に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項19】
Aが(a1)と(a3)のみからなる請求項4、6、10、11または16に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項20】
2個のAがAntの9及び10位に結合している請求項3〜19の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項21】
t=2である請求項3〜20の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項22】
t=3である請求項3〜20の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項23】
t=4〜10である請求項3〜20の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項24】
式(F11)において、t=1であり、Aが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された少なくとも1個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項25】
式(F11)において、t=1であり、Aがナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項26】
置換基の数が1〜3個である請求項24または25に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項27】
式(F11)において、t=1であり、Aが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された4個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項28】
式(F11)において、t=1であり、Aがナフチル、アントリルまたはフェナントリルから選択された1つの基の水素の任意に選択された4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項29】
アントラセン環の置換基の位置が9位または10位である請求項24〜28の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項30】
式(F11)において、t=2であり、一方のAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された少なくとも1個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されて得られる基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項31】
式(F11)において、t=2であり、一方のAがナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項32】
置換基の数が1〜3個である請求項30または31に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項33】
式(F11)において、t=2であり、一方のAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された4個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項34】
式(F11)において、t=2であり、一方のAがナフチル、アントリルまたはフェナントリルから選択された1つの基の水素の任意に選択された4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他方のAがフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル若しくはピリジルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項35】
アントラセン環の置換基の位置が9位及び10位である請求項30〜34の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項36】
式(F11)において、t=3であり、一つのAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された少なくとも1個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されて得られる基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項37】
式(F11)において、t=3であり、一つのAがナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された少なくとも1個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項38】
置換基の数が1〜3個である請求項36または37に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項39】
式(F11)において、t=3であり、一つのAが置換フェニルであり、その置換フェニルはフェニルの水素の任意に選択された4個がフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項40】
式(F11)において、t=3であり、一つのAがナフチル、アントリルまたはフェナントリルから選択された1つの基の水素の任意に選択された4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基であり、他の二つのAが独立にフェニル、ナフチル、アントリル若しくはフェナントリルであるか、またはこれらの基から選択された1つの基の水素の任意に選択された1〜4個がメチル、エチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、ベンジル、ピリジル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾール、キノリル及びキノキサリニルから選択される少なくとも1種の基で置換されている基である請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項41】
アントラセン環の置換基の位置が9位及び10位である請求項36〜40の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項42】
2個のAの各々が1または2個の置換基を有し、その置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである請求項30〜35の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項43】
3個のAの各々が1または2個の置換基を有し、その置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである請求項36〜41の何れか1項に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項44】
式(F11)において、t=2であり、2個のAの各々が1または2個の置換基を有し、Aが独立にフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル、フルオレニルまたはピレニルであり、置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。
【請求項45】
式(F11)において、t=3であり、3個のAの各々が1または2個の置換基を有し、Aが独立にフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル、フルオレニルまたはピレニルであり、置換基が独立にビフェニル、ターフェニル、フェニルエテニル、ジフェニルエテニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニルまたはピレニルである請求項3に記載の有機電界燐光発光素子。