説明

有機ELパネル、ガス交換装置、有機EL装置、及び電子機器

【課題】パネル内のガスを交換可能とすることによって、発光特性の向上並びに長寿命化を可能とした有機ELパネルを提供する。
【解決手段】一面に有機EL素子2が設けられた素子基板3と、素子基板3の一面に対向して配置された封止部材4とを備え、素子基板3と封止部材4との間が気密に封止されることによって、有機EL素子2が密閉された封止空間S内に配置されたものであって、封止空間S内にガスを注入するための注入バルブ11と、封止空間S内のガスを排出するための排出バルブ12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネル、ガス交換装置、有機EL装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス;electroluminescence)パネルは、発光物質を含む有機発光層を陽極と陰極との間で挟み込んだ有機EL素子を基板上に形成し、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とを有機発光層内で再結合して、励起状態から失括する際に発光する現象を利用したものである。
【0003】
ところで、有機EL素子は、大気中の水分や酸素などによって劣化し易いことが知られている。このため、有機ELパネルでは、有機EL素子が形成された素子基板を封止部材によって封止し、この有機EL素子を密閉された封止空間内に配置することが行われている。また、パネル内には、有機EL素子を保護するため、ヘリウムや窒素、アルゴンなどの不活性ガスが充填されている。さらに、パネル内の水分を除去するために封止空間内に乾燥剤を配置することも行われている。
【0004】
有機ELパネルでは、封止空間内のガス中に含まれる酸素濃度が1ppm以下、水分濃度が10ppm以下であることが好ましいとされている(特許文献1を参照。)。さらに、有機EL素子を劣化させるガスは、上述した水分や酸素以外にも化学的活性の高いものがその対象となる(以下、これらをまとめて活性ガスという。)。また、そのような活性ガスは、素子を構成する材料自身から発せられることも考えられる。
【0005】
一方、水分並びに酸素の混入を有機EL素子のダークスポットの発生と拡大速度によって検知するセンサが提案されている(特許文献2を参照。)。有機ELパネルでは、有機EL素子自体をセンサとして用いる方法が提案されるほど水分及び酸素が有機EL素子の発光特性に影響を与える大きな要因となっており、発光特性の低下を招く水分や酸素をモニタリングすることは故障や不良の原因を特定する上でも大変重要である。
【0006】
したがって、有機ELパネルでは、有機EL素子の発光特性の向上並びに長寿命化を図るために、このような活性ガスが存在しない雰囲気下に有機EL素子を配置することが重要となる。このため、有機ELパネルでは、上述した封止構造におけるバリア性の向上を図ったり、防湿バリア膜を用いてパネル内の雰囲気を確保したりするなどの手法も取られている。
【0007】
しかしながら、従来の有機ELパネルでは、その封止構造を強固なものとしたとしても、外部からのガスの混入や、駆動時の熱や化学反応等により内部でガスが発生することを避けることは困難である。例えば、封止に用いるシール剤からもアウトガスとして、ベンゼンなどの芳香族化合物やハロゲン化合物などが検出されることが知られている(非特許文献1を参照。)また、有機ELパネルの使用環境によっては、酸素や水分以外の気体が侵入することも懸念される。さらに、パネル内で新たに発生したガスや外部から侵入したガスを特定することは容易なことではない。
【特許文献1】特開平8−78159号公報
【特許文献2】特開2005−43303号公報
【非特許文献1】「有機LED素子の残された重要課題と実用化戦略」、1999年7月1日発刊、有機エレクトロニクス材料研究会編集、P.98−103
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、パネル内のガスを交換可能とすることによって、発光特性の向上並びに長寿命化を可能とした有機ELパネルを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような有機ELパネル内のガスを交換するガス交換装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような有機ELパネル及びガス交換装置を備えた有機EL装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような有機EL装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る有機ELパネルは、一面に有機EL素子が設けられた素子基板と、素子基板の一面に対向して配置された封止部材とを備え、素子基板と封止部材との間が気密に封止されることによって、有機EL素子が密閉された封止空間内に配置されたものであり、封止空間内にガスを注入するための注入バルブと、封止空間内のガスを排出するための排出バルブとを備えることを特徴する。
この構成によれば、注入バルブを通じて封止空間内にガスを注入すると共に、排出バルブを通じて封止空間内のガスを排出することが可能なことから、有機ELパネル内のガスを交換することによって、有機EL素子の発光特性の向上並びに長寿命化を図ることが可能である。
【0010】
また、本発明に係る有機ELパネルは、前記封止空間に不活性ガスが充填されていることが好ましい。
これにより、外部からのガスの侵入を防ぐことができ、有機ELパネル内に配置された有機EL素子の劣化を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係る有機ELパネルは、前記封止空間内の活性ガスを検出するセンサを備えた構成としてもよい。
この場合、有機ELパネル内に存在する活性ガスをセンサによりモニタリングすることによって、故障や不良の原因を特定したり、パネル内のガスを交換する時期を決定したりすることができる。
【0012】
一方、本発明に係るガス交換装置は、前記有機ELパネル内のガス交換を行うものであり、注入バルブを通じて封止空間内にガスを注入するガス注入機構と、排出バルブを通じて封止空間内のガスを排出するガス排出機構とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、前記有機ELパネル内のガス交換を行うことができるガス交換装置を提供することが可能である。
【0013】
また、本発明に係るガス交換装置は、注入バルブとガス注入機構との間でガス圧を調整する注入側バッファ機構と、排出バルブとガス排出機構との間でガス圧を調整する排出側バッファ機構との何れか一方又は両方を備える構成としてもよい。
この場合、バッファ機構によりガス圧の調整を行うことによって、前記有機ELパネル内のガス交換時に封止空間にガス圧が直接加わるのを防ぐことができる。
【0014】
一方、本発明に係る有機EL装置は、前記有機ELパネルと前記ガス交換装置とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、装置内で有機ELパネル内のガス交換を行うことができる有機EL装置を提供することが可能である。
【0015】
一方、本発明に係る有機EL装置は、前記有機EL装置を備えることを特徴とする。
この構成によれば、装置内で有機ELパネルのガス交換を行うことができる有機EL装置を備えた電子機器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、これらの図面に示される構造は特徴的な部分を分かり易く示すために実際の構造に対して数や寸法等を異ならせている。
【0017】
(有機ELパネル)
先ず、本発明を適用した有機ELパネルについて説明する。
本発明の実施の形態として図1に示す有機ELパネル1は、一面に有機EL素子2が設けられた素子基板3と、この素子基板3の一面に対向して配置された封止部材4とを備え、素子基板3と封止部材4との間がシール剤5により気密に封止されることによって、有機EL素子2が密閉された封止空間S内に配置された構造を有している。
【0018】
具体的に、素子基板3には、矩形状の透明なガラス基板又は透明な樹脂基板を用い、この素子基板3上に、透明なインジウム−スズ酸化物(ITO)等からなる陽極6と、発光物質を含む有機材料を用いた有機発光層7と、CaやMg等の仕事関数が小さい陰極8とを順に成膜することによって、複数の有機EL素子2が形成されている。
【0019】
また、素子基板3として透明なガラス基板を用いる場合には、例えばバリウムホウケイ酸ガラス基板や、アルミノホウケイ酸ガラスなどが適している。一方、素子基板3として透明な樹脂基板を用いる場合には、例えばポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機材料や、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂などが適している。このような樹脂基板を用いた場合には、透明なガラス基板を用いた場合よりも軽量化が可能である。また、樹脂基板を用いる場合には、その表面を酸化珪素や、窒化珪素、酸化アルミなどの無機酸化物薄膜又は無機窒化物薄膜で覆うことが好ましい。これにより、水分や酸素の透過を防ぎ、封止空間S内に配置された有機EL素子2の劣化を防ぐことができる。
【0020】
有機EL素子2を構成する有機発光層7については、単一の発光層からなる単層型、又は、複数の異なる有機材料を用いて電荷注入層、電荷輸送層、発光層、電子注入層等を機能別に順に積層した積層型の何れであってもよい。
【0021】
また、素子基板3上には、駆動素子部3aが設けられ、この駆動素子部3aには、図示を省略するが、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などのスイッチング用の駆動素子が各有機EL素子2に対応して複数配置されている。また、駆動素子部3aには、各TFTのゲート電極と電気的に接続された走査線と、各TFTのソース電極と電気的に接続された信号線とが互いに交差する方向に複数並んで設けられている。なお、これら走査線と信号線との各交差位置に配置された有機EL素子2が1つの画素を構成しており、これらの画素がマトリクス状に複数配置されることで、全体として有機ELパネル1の表示領域が形成されている。また、素子基板3の封止部材4で封止された領域の外側の領域には、各有機EL素子2に接続された駆動素子を駆動するための駆動回路(図示せず。)等が設けられている。
【0022】
封止部材4は、素子基板3上に形成された複数の有機EL素子2を覆い且つその内側に封止空間Sを形成する凹部4aを有し、例えばガラスや樹脂、金属材料などを用いて形成されている。そして、この封止部材4は、素子基板3の有機EL素子2の周囲に環状に塗布されたシール剤5によって素子基板3の一面に貼り合わされている。これにより、素子基板3と封止部材4の凹部4aとの間には、密閉された封止空間Sが形成される。また、この密閉された封止空間S内には、例えば、窒素や、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの不活性ガスが充填されている。
【0023】
シール剤5には、熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂等を用いることができ、その中でも特に酸素や水分を通しにくい材料としてエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これにより、水分や酸素の透過を防ぎ、封止空間S内に配置された有機EL素子2の劣化を防ぐことができる。なお、素子基板3と封止部材4との間をシール剤5で封止する際は、上述した不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0024】
以上のような構造を有する有機ELパネル1は、いわゆるボトムエミッション型として、有機EL素子2が発する光を素子基板3側から取り出すことができる。すなわち、この有機ELパネル1では、陽極6側から注入された正孔と、陰極8側から注入された電子とを有機発光層7内で再結合することにより有機EL素子2が発光し、透明な素子基板3を通して光が外部に放出される。また、この有機ELパネル1では、素子基板3上にマトリックス状に複数配置された有機EL素子2の各点灯を制御することにより画像表示を行うことができる。
【0025】
一方、有機ELパネル1は、有機EL素子2が発する光を封止部材4側から取り出す、いわゆるトップエミッション型であってもよい。この場合、素子基板3は透明である必要はなく、有機EL素子2の陰極8を透明な導電材料で形成し、封止部材4も透明なガラス又は樹脂材料を用いて形成すればよい。
【0026】
ところで、本発明を適用した有機ELパネル1は、図1及び図2に示すように、封止空間S内にガスを注入するための注入バルブ11と、封止空間S内のガスを排出するための排出バルブ12とを備え、これらのバルブ11,12を通じて封止空間S内のガスを交換することが可能となっている。
【0027】
具体的に、注入バルブ11及び排出バルブ12は、有機ELパネル1の一側面部において、素子基板3と封止部材4との間のシール剤5を貫通した状態で設けられている。また、これらガス交換用のバルブ11,12のうち、注入バルブ11は、ガス注入時のみ開放される逆止弁であり、排出バルブ12は、ガス排出時のみ開放される逆止弁である。
【0028】
上述したように、有機ELパネルでは、その封止構造を強固なものとしたとしても、外部から水分や酸素等を含むガスが侵入したり、駆動時の熱や化学反応等により内部で有機EL素子2を劣化させるガスが発生したりすることを避けることは困難である。したがって、本発明を適用した有機ELパネル1のように、注入バルブ11を通じて封止空間S内に新たな不活性ガスを注入すると共に、排出バルブ12を通じて封止空間S内の(活性ガスを含む)不活性ガスを排出すれば、封止空間S内を常に活性ガスを含まない不活性ガス雰囲気に保つことが可能である。
【0029】
以上のように、この有機ELパネル1では、封止空間S内のガスを交換することによって、この封止空間S内における有機EL素子2の劣化を防止し、有機EL素子2の発光特性の向上並びに長寿命化を図ることが可能である。
【0030】
また、本発明を適用した有機ELパネル1は、図1及び図2に示すように、封止空間S内の活性ガスを検出するセンサ13を備えることが好ましい。このセンサ13は、封止空間S内の任意の位置に配置することが可能であり、本実施形態では、パネル内の四隅と中央部にそれぞれセンサ13が配置されている。また、センサ13は、素子基板3と封止部材4との互いに対向する面の何れに配置してもよい。
【0031】
また、センサ13には、予め検出対象に見合ったものを配置することが好ましく、例えば、表面制御型やバルク制御型の半導体センサは、H、炭化水素、アルコール、CO、O、NH、HS、NO、NO、SO、O等の検出に好適に用いられる。また、固体電解質センサは、O、H、CO、HO、CO、NO、NO、SO、Br、Cl、HS等の検出に好適に用いられる。また、湿度センサは、HOの検出に好適に用いられる。また、FETセンサは、H、C等の検出に好適に用いられる。また、圧電体センサは、HO、SO、NH、NO等の検出に好適に用いられる。また、これらのセンサ13は、検出対象となるガスのガス濃度によっても適宜選択することが好ましい。
【0032】
本発明を適用した有機ELパネル1では、封止空間S内に存在する活性ガス(検出対象となるガスの種類又はガス濃度)をセンサ13によりモニタリングすることによって、故障や不良の原因を特定したり、封止空間S内のガスを交換する時期を決定したりすることが可能である。
【0033】
なお、本発明を適用した有機ELパネル1は、上述した図2に示す構成に限定されるものではなく、注入バルブ11及び排出バルブ12が有機ELパネル1の一側面部に配置された構成以外にも、例えば図4(a)に示すように、注入バルブ11及び排出バルブ12が有機ELパネル1の対角位置に配置された構成や、図4(b)に示すように、注入バルブ11及び排出バルブ12が有機ELパネル1の互いに対向する側面部に配置された構成、図4(c)に示すように、注入バルブ11及び排出バルブ12が有機ELパネル1に複数配置された構成とすることも可能である。
また、注入バルブ11及び排出バルブ12は、上述した素子基板3と封止部材4との間のシール剤5を貫通する構成に限らず、素子基板3と封止部材4との何れかを貫通した状態で設けることもできる。
【0034】
(ガス交換装置)
次に、本発明を適用したガス交換装置について説明する。
図2に示すガス交換装置50は、上述した有機ELパネル1内のガス交換を行うものであり、注入バルブ11を通じて封止空間S内にガスを注入するガス注入機構51と、排出バルブ12を通じて封止空間S内のガスを排出するガス排出機構52とを備えている。
【0035】
このうち、ガス注入機構51は、不活性ガスが充填されたボンベ51aと、このボンベ51aに一端が接続されたホース51bとから構成されており、このホース51bの他端を注入バルブ11に接続する仕組みとなっている。一方、ガス排出機構52は、封止空間S内に注入(排出)されるガスの注入量(排出量)を調整するための減圧器52aと、この減圧器52aに一端が接続されたホース52bとから構成されており、このホース52bの他端を排出バルブ12に接続する仕組みとなっている。
【0036】
以上のようなガス交換装置50を用いて有機ELパネル1内のガス交換を行う場合には、先ず、注入バルブ11及び排出バルブ12にそれぞれホース51b,52bを接続する。次に、ボンベ51aを開き注入バルブ11を通じて封止空間S内に新たな不活性ガスを注入すると共に、減圧器52aによるガス圧の調整を行いながら排出バルブ12を通じて封止空間S内の(活性ガスを含む)不活性ガスを排出する。以上のようにして、このガス交換装置50では、上述した有機ELパネル1内のガス交換を行うことが可能である。
【0037】
また、本発明を適用したガス交換装置50は、図3に示すように、注入バルブ11とガス注入機構51との間でガス圧を調整する注入側バッファ機構53と、排出バルブ12とガス排出機構52との間でガス圧を調整する排出側バッファ機構54とを備えた構成としてもよい。
【0038】
ガス交換装置50は、このようなバッファ機構53,54によりガス圧の調整を行うことで、有機ELパネル1内のガス交換時に封止空間Sにガス圧が直接加わるのを防ぐことができる。したがって、このガス交換装置50では、上述した有機ELパネル1内のガス交換を安定して行うことが可能となる。
【0039】
なお、本発明を適用したガス交換装置50は、上述した注入側バッファ機構53及び排出側バッファ機構54の両方を備えた構成に限らず、注入側バッファ機構53と排出側バッファ機構54との何れか一方を備えた構成とすることもできる。
【0040】
(有機EL装置)
次に、本発明を適用した有機EL装置100について説明する。
図2及び図3に示す有機EL装置100は、図2及び図3に示すように、上述した有機ELパネル1とガス交換装置50とを備えたものであり、この装置内で有機ELパネル1内のガス交換を可能としたものである。
【0041】
具体的に、この有機EL装置100では、上述した有機ELパネル1のセンサ13が封止空間S内に存在する活性ガス(検出対象となるガスの種類又はガス濃度)を検出する。そして、そのセンサ13が検出した検出結果に基づいて、封止空間S内のガスを交換する必要があると判断した場合には、ガス交換装置50が有機ELパネル1内のガス交換を行う。
【0042】
以上のように、この有機EL装置100では、有機ELパネル1内のガス交換をガス交換装置50が自動的に行うことから、この有機ELパネル1内を常に活性ガスを含まない不活性ガス雰囲気に保つことが可能である。したがって、この有機EL装置100では、有機ELパネル1内における有機EL素子2の劣化を防ぐことが可能であり、これにより、有機ELパネル1の性能向上並びに長寿命化を図ることが可能である。
【0043】
なお、本発明を適用した有機EL装置100では、上述したセンサ13による検出結果によらずに、ガス交換装置50が有機ELパネル1内のガス交換を定期的に行う構成としてもよい。また、この有機EL装置100では、有機ELパネル1から排出された不活性ガス中に含まれる水分等を除去した後に、この不活性ガスを再び有機ELパネル1内に注入する構成としてもよい。
【0044】
(電子機器)
次に、本発明を適用した電子機器の一例について説明する。
図5は、本発明を適用した電子機器の一例である薄型大画面テレビ1200を示す。
この薄型大画面テレビ1200は、上記有機EL装置100からなる表示部1201と、筐体1202と、スピーカ等の音声出力部1203とを主体として構成されている。そして、この薄型大画面テレビ1200は、上記有機EL装置100からなる表示部1201を備えることによって、表示部1201の信頼性に優れたものとなっている。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態で例示した有機ELパネル1及びガス交換装置50の各部の具体的な構成、構成材料はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
また、上記実施形態では、上記有機ELパネル1を表示装置とした例を示したが、それ以外の用途、例えば、液晶表示装置の光源や、光書き込み型のレーザープリンタ及び光通信の光源等にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を適用した有機ELパネルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明を適用した有機ELパネル、ガス交換装置及び有機EL装置を模式的に示す平面図である。
【図3】図2に示すガス交換装置の変形例を示す平面図である。
【図4】本発明を適用した有機ELパネルの変形例を示す平面図である。
【図5】本発明を適用した電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1…有機ELパネル 2…有機EL素子 3…素子基板 4…封止部材 5…シール剤 6…陽極 7…有機発光層 8…陰極 11…注入バルブ 12…排出バルブ 50…ガス交換装置 51…ガス注入機構 52…ガス排出機構 53…注入側バッファ機構 54…排出側バッファ機構 100…薄型大画面テレビ(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に有機EL素子が設けられた素子基板と、前記素子基板の一面に対向して配置された封止部材とを備え、前記素子基板と前記封止部材との間が気密に封止されることによって、前記有機EL素子が密閉された封止空間内に配置された有機ELパネルであって、
前記封止空間内にガスを注入するための注入バルブと、前記封止空間内のガスを排出するための排出バルブとを備えることを特徴する有機ELパネル。
【請求項2】
前記封止空間には、不活性ガスが充填されていることを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記封止空間内の活性ガスを検出するセンサを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の有機ELパネルの前記封止空間内のガスを交換するガス交換装置であって、
前記注入バルブを通じて前記封止空間内にガスを注入するガス注入機構と、前記排出バルブを通じて前記封止空間内のガスを排出するガス排出機構とを備えることを特徴とするガス交換装置。
【請求項5】
前記注入バルブと前記ガス注入機構との間でガス圧を調整する注入側バッファ機構と、前記排出バルブと前記ガス排出機構との間でガス圧を調整する排出側バッファ機構との何れか一方又は両方を備えることを特徴とする請求項4に記載のガス交換装置。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項に記載の有機ELパネルと、請求項4又は5に記載のガス交換装置とを備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項7】
請求項6に記載の有機EL装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−234499(P2007−234499A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57321(P2006−57321)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】