有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法
【課題】有機EL素子内の水分を積極的に吸収することができ、有機EL素子の劣化を効果的に抑制して安定した発光特性を維持することができる長寿命の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】基板12と、該基板上に、陽極14、有機EL層16、及び陰極18を積層して構成される有機EL素子20と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材26を含む有機ELパネルであって、前記有機EL素子と接する乾燥剤層22と、該乾燥剤層と接する発熱層24とをさらに有することを特徴とする有機ELパネル10。好ましくは、前記有機EL素子を初めて発光させる前に、前記発熱層を発熱させる。
【解決手段】基板12と、該基板上に、陽極14、有機EL層16、及び陰極18を積層して構成される有機EL素子20と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材26を含む有機ELパネルであって、前記有機EL素子と接する乾燥剤層22と、該乾燥剤層と接する発熱層24とをさらに有することを特徴とする有機ELパネル10。好ましくは、前記有機EL素子を初めて発光させる前に、前記発熱層を発熱させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を備えた有機EL表示パネル及び有機ELパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を用いた表示装置等が開発されている。図7は、有機EL素子1の構成を概略的に示している。ガラス等の基板2上に、陽極3、有機EL層8(正孔輸送層4、発光層5、及び電子輸送層6)、陰極7等が形成されている。有機EL素子1を保護するため、ガラス等の封止部材(図示せず)により封止される。そして、引出配線(端子)9を介して外部の配線と接続し、両極3,7に電界を印加することにより、電極3,7間に挟まれた領域の発光層5が励起状態となって発光する。
【0003】
このような有機EL素子を用いた表示パネルは、自発光型であるため、液晶表示装置のようにバックライトを必要とせず、軽量化や薄型化を図ることができ、また、視野角が広いなどの利点がある。
【0004】
しかし、有機EL素子は水分や酸素によって劣化し易く、封止しても時間の経過とともに画素が縮退して輝度が低下するなどの問題が生じる。有機EL素子の劣化を防ぐため、封止部材の内側に乾燥剤を設けることや、有機EL素子上に酸素吸収層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−169567号公報
【特許文献2】特開平9−148066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、有機EL素子内の水分を積極的に吸収することができ、有機EL素子の劣化を効果的に抑制して安定した発光特性を維持することができる長寿命の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では以下の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法が提供される。
【0008】
<1> 基板と、該基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材とを含む有機ELパネルであって、前記有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とをさらに有することを特徴とする有機ELパネル。
【0009】
<2> 前記乾燥剤層が、前記有機EL素子上に形成されていることを特徴とする<1>に記載の有機ELパネル。
【0010】
<3> 前記乾燥剤層が、2種以上の乾燥剤を積層した構造であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の有機ELパネル。
【0011】
<4> 前記発熱層に開口部が形成されており、前記開口部から前記乾燥剤層が露出していることを特徴とする<1>ないし<3>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0012】
<5> 前記発熱層が、電磁波を照射することにより発熱するものであることを特徴とする<1>ないし<4>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0013】
<6> 前記発熱層が、電流による抵抗加熱により発熱するものであることを特徴とする<1>ないし<4>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0014】
<7> 前記有機EL素子と接する乾燥剤層とは別に、前記有機EL素子と離間した別の乾燥剤層が設けられていることを特徴とする<1>ないし<6>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0015】
<8> 有機ELパネルを製造する方法であって、基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とを形成し、前記有機EL素子を初めて発光させる前に、前記発熱層を発熱させることにより前記有機EL素子に含まれている水分を低減させることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機EL素子内の水分を積極的に吸収することができ、有機EL素子の劣化を効果的に抑制して安定した発光特性を維持することができる長寿命の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法について説明する。
本発明に係る有機ELパネルは、基板と、該基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材を含み、さらに有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とを有することを特徴とする。このように有機EL素子の近傍に乾燥剤層を配置するだけでなく、発熱層を設けることで、例えば、有機ELパネルの製造時に有機EL素子の近傍にある乾燥剤層を発熱層の加熱により酸素及び水分を積極的に吸収できる活性化した状態にしておくことができる。
【0018】
[第1の態様]
図1は、本発明に係る有機ELパネルの一例(第1の態様)を概略的に示している。この有機ELパネル10は、透明基板12、有機EL素子20、封止部材26等により構成されている。
有機EL素子20は、基板12上に、陽極14、有機EL層16、陰極18が順次積層されて構成されている。さらに、陰極18上に、乾燥剤層22と、発熱層24とが順次積層されている。なお、図1では、隔壁、絶縁膜等は省略されている。
【0019】
<基板>
基板12は、有機EL素子等を支持することができる強度、光透過性等を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
【0020】
例えば、基板12としてガラスを用いる場合、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。
【0021】
また、有機材料からなる基板を用いる場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。また、特にプラスチック製の基板を用いる場合には、水分や酸素の透過を抑制するため、基板12の片面又は両面に透湿防止層又はガスバリア層を設けることが好ましい。透湿防止層又はガスバリア層の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物を好適に用いることができる。透湿防止層又はガスバリア層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0022】
基板12の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板12の形状としては、取り扱い性、有機EL素子20の形成容易性等の観点から、板状であることが好ましい。基板12の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、基板12は、単一部材で構成されていてもよいし、2つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0023】
基板12は、無色透明であっても有色透明であってもよいが、有機EL素子20から発せられる光の散乱、減衰等を防止することができる点で無色透明であることが好ましい。
【0024】
<有機EL素子>
基板12上には発光素子として有機EL素子20が形成されている。有機EL素子20は、基板12の厚さ方向に積層された陽極14と陰極18とからなる一対の電極間に有機EL層16を有していれば層構成は特に限定されない。例えば以下のような層構成を採用することができる。但し、素子20の層構成はこれらに限定されず、目的等に応じて適宜決めればよい。
【0025】
・陽極/発光層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0026】
<陽極及び引出配線>
基板12上には、例えば陽極14がストライプ状に形成され、一端部には引出配線が形成される。
陽極14は、有機EL層16に正孔を供給する電極としての機能を有するものであれば、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて公知の電極材料から適宜選択することができる。ただし、有機EL素子20の性質上、陽極14及び陰極18のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましく、通常は、透明な陽極14が形成される。
【0027】
陽極14を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。具体例として、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0028】
陽極14を形成する方法としては、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。陽極14を構成する材料との適性等を考慮して適宜選択した方法に従って基板12上に陽極14を形成することができる。例えば、陽極材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って陽極14を形成することができる。
陽極14を形成する位置は特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて適宜選択することができ、基板12の一方の表面上の全体に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。
【0029】
陽極14を形成する際のパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0030】
陽極14用の引出配線も陽極14と同様の材料を用いて同様の方法により形成することができるが、陽極14を形成する際、陽極14に接続する引出配線を同時に形成してもよい。このとき、さらに陰極18用の引出配線を同時に形成することもできる。
【0031】
陽極14及び引出配線の厚みは、陽極14を構成する材料等に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
また、陽極14及び引出配線の抵抗値は、有機EL層16に確実に正孔を供給するために、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
【0032】
透明な陽極14とする場合、無色透明であっても有色透明であってもよいが、透明陽極14側から発光を取り出すためには、その光透過率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透明陽極14については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載されている事項を本発明でも適用することができる。例えば、耐熱性の低いプラスチック基板12を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0033】
<有機EL層>
有機EL素子20は、陽極14と陰極18との間に少なくとも発光層を含む有機EL層16を有している。有機EL層16を構成する発光層以外の層としては、前述したように、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。好ましい層構成として、陽極14側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が挙げられ、さらに、例えば正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間に、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極14と正孔輸送層との間に正孔注入層を有してもよく、陰極18と電子輸送層との間には電子注入層を有してもよい。また、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
これらの有機EL層16を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0034】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極14、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極18、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0035】
発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。
蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0036】
燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0037】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, PergamonPress社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0038】
燐光発光材料は、発光層中に0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0039】
また、発光層に含有されるホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。
ホスト材料の具体例としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0040】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0041】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極14又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層及び正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、フェニルアゾールやフェニルアジンを配位子に有するIr錯体に代表される各種金属錯体等を含有する層であることが好ましい。
【0042】
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜200nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜200nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0043】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層及び電子輸送層は、陰極18又は陰極側から電子を受け取り、陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層及び電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0044】
電子注入層及び電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0045】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。発光層と陰極側で隣接する正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0046】
<陰極及び引出配線>
有機EL層16上には、例えば陽極14と直交するように陰極18がストライプ状に形成される。
陰極18は、通常、有機EL層16に電子を注入する電極としての機能を有し、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極18を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点から、2種以上を好適に併用することができる。
【0047】
これらの中でも、陰極18を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点でアルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極18の材料については、例えば、特開平2−15595号公報及び特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は本発明においても適用することができる。
【0048】
陰極18の形成方法については特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陰極18を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極18の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って陰極18を形成することができる。
【0049】
陰極18を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等によって行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0050】
陰極用の引出配線も陰極18と同様の材料を用いて同様の方法により形成することができ、陰極18を形成する際に同時に形成することができる。
【0051】
陰極18の形成位置は特に制限はなく、有機EL層16上の全体に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0052】
また、陰極18と有機EL層16との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで形成してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と解することもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0053】
陰極18の厚みは、陰極18を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極18は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極18とする場合は、陰極18の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、特にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0054】
<乾燥剤層>
本発明の有機ELパネル10では、乾燥剤層22が有機EL素子20と接する位置に設けられる。図1に示した有機ELパネル10では、有機EL素子20の陰極18上に乾燥剤層22が形成されている。
乾燥剤層22としては、水分を吸着し、吸湿しても固体状態を維持するものであれば、化学吸着性のものでも物理吸着性のものでもよい。乾燥剤層22を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩、有機物、モレキュラーシーブ、ゼオライト、五酸化燐等が挙げられる。
【0055】
上記アルカリ金属酸化物としては、酸化ナトリウム(Na2 O)、酸化カリウム(K2 O)などが挙げられる。また、アルカリ土類金属酸化物としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられる。
【0056】
上記硫酸塩としては、硫酸リチウム(Li2 SO4 )、硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )、硫酸カルシウム(CaSO4 )、硫酸マグネシウム(MgSO4 )、硫酸コバルト(CoSO4 )、硫酸ガリウム(Ga2 (SO4 )3 )、硫酸チタン(Ti(SO4 )2 )、硫酸ニッケル(NiSO4 )などが挙げられ、特に無水塩が好適である。
【0057】
上記金属ハロゲン化物としては、塩化カルシウム(CaCl2 )、塩化リチウム(LiCl)、塩化マグネシウム(MgCl2 )、塩化ストロンチウム(SrCl2 )、塩化イットリウム(YCl3 )、塩化銅(CuCl2 )、ふっ化セシウム(CsF)、ふっ化タンタル(TaF5 )、ふっ化ニオブ(NbF5 )、臭化カルシウム(CaBr2 )、臭化セリウム(CeBr3 )、臭化セレン(SeBr4 )、臭化バナジウム(VBr2 )、臭化マグネシウム(MgBr2 )、よう化バリウム(BaI2 )、よう化マグネシウム(MgI2 )などが挙げられ、特に無水塩が好適である。
【0058】
上記過塩素酸塩としては、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4 )2 )、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4 )2 )が挙げられ、特に無水塩が好適である。
【0059】
乾燥剤層22を形成する方法としては、上記のような吸湿性を有する材料を用い、有機EL素子20と接触するように成膜することができれば特に限定されず、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。
【0060】
乾燥剤層22の厚みは、乾燥剤層22を構成する材料に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常は、1nm〜1mm程度であり、10nm〜1μmが好ましい。
【0061】
また、乾燥剤層22は、2種以上の乾燥剤を積層した構造としてもよい。複数構造の乾燥剤層22とすれば、吸湿容量、吸湿力、吸湿速度などの乾燥剤の異なる性能を組み合わせることできる。例えば、製造してから初期の乾燥のために吸湿容量が小さくても吸湿速度の大きい乾燥剤と、長期保存性のために吸湿速度は小さくでも吸湿容量の大きい乾燥剤を組み合わせて、初期劣化・長期劣化を減少させることが可能になる、といった利点がある。
【0062】
<発熱層>
本発明では、発熱層24が、乾燥剤層22と接するように形成される。発熱層24は、外部からエネルギーを加えることで発熱する材料により構成すればよい。例えば、光等の電磁波を照射することにより発熱する材料を用いることができ、具体的には、Cr等の金属蒸着膜、カーボンブラック、クロムブラック(クロム酸化物)、紫外線などを吸収して発熱する半導体を含有する層、赤外吸収色素等を光熱変換材料として含有する層、により発熱層24を構成することができる。
【0063】
発熱層24を形成する方法としては、上記のような材料を用い、乾燥剤層22と接触するように成膜することができれば特に限定されず、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。
【0064】
発熱層24の厚みは、発熱層24を構成する材料に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常は、1nm〜10μm程度であり、10nm〜1μmが好ましい。
【0065】
<封止>
有機EL素子20、乾燥剤層22、及び発熱層24を形成した後、封止を行う。封止部材26は、気密性が高いものであれば特に限定されず、ガラス、樹脂フィルム、金属などからなる公知の封止部材26を用いることができる。例えば、基板12上の有機EL素子20の周囲に紫外線硬化型エポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、封止部材26を貼り合わせて有機EL素子20を封止する。
【0066】
封止部材26の内側には不活性ガス又は不活性液体を充填することで酸素や水分による有機EL素子20の劣化を抑制することができる。不活性ガスとしては、例えばアルゴン、窒素等が挙げられ、不活性液体としては、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0067】
封止用の接着剤が乾燥することで、封止部材26の内側は気密となり、有機EL素子20が空気中の酸素や水分と接触することを防ぐことができる。但し、封止部材26の内側への水分等の侵入を完全に防ぐことはできず、特に、支持基板12として樹脂基板12を用いた場合には、酸素や水分が透過し易い。そこで、封止部材26の内側には、有機EL素子20と接する乾燥剤層(第1の乾燥剤層)22とは別に、有機EL素子20と離間した別の乾燥剤層(第2の乾燥剤層)28を設けることが好ましい。
【0068】
このような第2の乾燥剤層28としては、封止部材26の内側に存在する水分を吸着して固体状態を維持するものであれば、化学吸着性のものでも物理吸着性のものでもよく、第1の乾燥剤層22で例示した材料を用いることができる。ただし、第1の乾燥剤層22から放出された水分を第2の乾燥剤層28で積極的に吸収させるために、第2の乾燥剤層28は、第1の乾燥剤層22よりも吸湿能力が高いものが好ましい。なお、第2の乾燥剤層28の位置や形状は、封止部材26の内側で有機EL素子20から離間していれば特に限定されず、図1に示すように封止部材26の内側側壁のほか、有機EL素子20と対向する位置でもよいし、有機EL素子20の周辺の基板12上に設けてもよい。
【0069】
封止を行うことで図1に示したような構成の有機ELパネル10を得ることができる。さらに、各電極14,18に外部の配線を接続し、電極間に電界を印加することで電極間の有機EL層16を発光させることができる。なお、有機EL素子20の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0070】
上記のような有機ELパネル10では、乾燥剤層22と接するように発熱層24を設けられているため、光照射又は有機EL素子20の発光により、発熱層24が光熱変換して発熱する。そして、発熱層24からの熱により、有機EL素子20内の水分を乾燥剤層22が効果的に吸湿することができ、さらに、乾燥剤層22に一旦吸収された水分が発散され、封止部材側の乾燥剤層28に吸収されることになる。これにより、第1の乾燥剤層22の吸水力が回復し、素子20側から積極的に水を吸収できる状態となる。このような作用により、有機EL素子20は、水分による画素の縮退が効果的に抑制され、長寿命化を図ることができる。
【0071】
なお、有機EL素子20の形成後、封止するまでの間に有機EL素子20内に水分が吸収されることも考えられる。そこで、有機EL素子20を初めて発光させる前に、発熱層24を発熱させることにより有機EL素子20中に含まれている水分を低減させることが好ましい。
【0072】
有機EL素子20上には乾燥剤層22と発熱層24が形成されているため、例えば、封止後、発熱層24に向けて光を照射して発熱させる。これにより、有機EL素子20から第1の乾燥剤層22に吸収された水分が積極的に放出され、第2の乾燥剤層28に吸収されることになる。このように、有機EL素子20を初めて発光させる前に、発熱層24を発熱させて有機EL素子20中に含まれている水分を減じておけば、いわゆる初期落ちやダークスポットの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
また、封止の前に発熱層24を発熱させて有機EL素子20内の水分量を減少させることもできる。図2は有機EL素子20内の水分量の変化をモデル化したものである。図2のラインAは、乾燥剤層22と発熱層24を設けた場合であり、ラインBは、乾燥剤層22又は発熱層24だけを設けた場合を示している。
例えば図6に示すように有機EL素子20上に乾燥剤層22だけを設けた場合や、発熱層だけを設けた場合では、発光開始後、素子内の水分量を低下させる効果が得られたとしても(ラインB)、発光開始時における水分量が高ければ素子の劣化が進みやすい。
【0074】
一方、本発明のように乾燥剤層22と発熱層24を設ければ(ラインA)、素子形成後、封止を行う前に、発熱層24の発熱と乾燥剤層22の吸湿により、有機EL素子20に含まれる水分量を大幅に減少させることができる。このように有機EL素子20内の水分量を減少させた上で封止を行えば、有機EL素子20中の水分量が極めて少ない有機ELパネル10を製造することができる。
【0075】
発光開始後は、有機EL素子20が自ら発光するため、この場合も、発熱層24の発熱により、乾燥剤層22に吸収されている水分が積極的に放出され、有機EL素子20から離れた乾燥剤層28に吸収されるとともに、乾燥剤層22が再生されることになる。
【0076】
図3〜図5は、本発明に係る有機ELパネルの他の態様を示している。
[第2の態様]
図3に示す有機ELパネル30では、乾燥剤層22が有機EL層16に隣接するように形成されており、乾燥剤層22上に発熱層24が形成されている。このような構成でも、乾燥剤層22が有機EL素子20と接するとともに、発熱層24が乾燥剤層22と接しているため、発熱層24の発熱により、乾燥剤層22は積極的に吸湿できる状態となり、有機EL素子20内の水分を極めて効果的に除去することができる。
【0077】
なお、この態様では、有機EL層16が発熱層24や乾燥剤層22と重ならないため、例えば発熱層24として例えばカーボンブラックを用いた場合でも有機EL層16の発光を遮らず、トップエミッション型の有機ELパネルとすることもできる。
【0078】
[第3の態様]
図4に示す有機ELパネル40では、有機EL素子20の陰極18上に乾燥剤層22が形成されており、乾燥剤層22上には、発熱層24が開口部25を有し、この開口部25から乾燥剤層22が露出するように形成されている。このような構成の有機ELパネル40でも、発熱層24の発熱により乾燥剤層22が積極的に有機EL素子20から水分を吸湿する状態となり、乾燥剤層22に吸湿された水分はさらに発熱層24の開口部25から再度放出され易い。従って、乾燥剤層22から再度放出された水分は、有機EL素子20と離間した別の乾燥剤(第2の乾燥剤層28)に効果的に吸収され易くなる。
【0079】
[第4の態様]
図5に示す有機ELパネル50では、外部配線27と通じて電流による抵抗加熱により発熱する発熱層34が形成されている。なお、発熱層34は、電極14,18との接触を避けるため、有機EL層16及び乾燥剤層22上に形成されている。
【0080】
抵抗加熱により発熱する発熱層34を構成する材料としては、Ni−Cr合金、Cu−Ni合金、Fe−Cr合金などの高抵抗材料が挙げられる。これらの材料を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により発熱層34を形成することができる。
このように抵抗加熱により発熱する発熱層34を設けた場合でも、通電により発熱層34を発熱させることで乾燥剤層22を素子側から積極的に水分を吸収できる状態とすることができ、有機ELパネル50の長寿命化を図ることができる。
【0081】
以上本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る有機ELパネルは、パッシブマトリクス型でもよいし、アクティブマトリクス型でもよい。
また、本発明に係る有機ELパネルの用途は特に限定されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る有機ELパネルの一例(第1の態様)を示す概略図である。
【図2】有機EL素子の水分量の変化をモデル化した図である。
【図3】本発明に係る有機ELパネルの他の例(第2の態様)を示す概略図である。
【図4】本発明に係る有機ELパネルの他の例(第3の態様)を示す概略図である。
【図5】本発明に係る有機ELパネルの他の例(第4の態様)を示す概略図である。
【図6】有機EL素子上に乾燥剤層を設けた有機ELパネルを示す概略図である。
【図7】有機EL素子の構成の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0083】
10 有機ELパネル
12 基板
14 陽極
16 有機EL層
18 陰極
20 有機EL素子
22 乾燥剤層
24 発熱層
25 開口部
26 封止部材
28 乾燥剤層
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を備えた有機EL表示パネル及び有機ELパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を用いた表示装置等が開発されている。図7は、有機EL素子1の構成を概略的に示している。ガラス等の基板2上に、陽極3、有機EL層8(正孔輸送層4、発光層5、及び電子輸送層6)、陰極7等が形成されている。有機EL素子1を保護するため、ガラス等の封止部材(図示せず)により封止される。そして、引出配線(端子)9を介して外部の配線と接続し、両極3,7に電界を印加することにより、電極3,7間に挟まれた領域の発光層5が励起状態となって発光する。
【0003】
このような有機EL素子を用いた表示パネルは、自発光型であるため、液晶表示装置のようにバックライトを必要とせず、軽量化や薄型化を図ることができ、また、視野角が広いなどの利点がある。
【0004】
しかし、有機EL素子は水分や酸素によって劣化し易く、封止しても時間の経過とともに画素が縮退して輝度が低下するなどの問題が生じる。有機EL素子の劣化を防ぐため、封止部材の内側に乾燥剤を設けることや、有機EL素子上に酸素吸収層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−169567号公報
【特許文献2】特開平9−148066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、有機EL素子内の水分を積極的に吸収することができ、有機EL素子の劣化を効果的に抑制して安定した発光特性を維持することができる長寿命の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では以下の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法が提供される。
【0008】
<1> 基板と、該基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材とを含む有機ELパネルであって、前記有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とをさらに有することを特徴とする有機ELパネル。
【0009】
<2> 前記乾燥剤層が、前記有機EL素子上に形成されていることを特徴とする<1>に記載の有機ELパネル。
【0010】
<3> 前記乾燥剤層が、2種以上の乾燥剤を積層した構造であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の有機ELパネル。
【0011】
<4> 前記発熱層に開口部が形成されており、前記開口部から前記乾燥剤層が露出していることを特徴とする<1>ないし<3>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0012】
<5> 前記発熱層が、電磁波を照射することにより発熱するものであることを特徴とする<1>ないし<4>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0013】
<6> 前記発熱層が、電流による抵抗加熱により発熱するものであることを特徴とする<1>ないし<4>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0014】
<7> 前記有機EL素子と接する乾燥剤層とは別に、前記有機EL素子と離間した別の乾燥剤層が設けられていることを特徴とする<1>ないし<6>のいずれかに記載の有機ELパネル。
【0015】
<8> 有機ELパネルを製造する方法であって、基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とを形成し、前記有機EL素子を初めて発光させる前に、前記発熱層を発熱させることにより前記有機EL素子に含まれている水分を低減させることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機EL素子内の水分を積極的に吸収することができ、有機EL素子の劣化を効果的に抑制して安定した発光特性を維持することができる長寿命の有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法について説明する。
本発明に係る有機ELパネルは、基板と、該基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材を含み、さらに有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とを有することを特徴とする。このように有機EL素子の近傍に乾燥剤層を配置するだけでなく、発熱層を設けることで、例えば、有機ELパネルの製造時に有機EL素子の近傍にある乾燥剤層を発熱層の加熱により酸素及び水分を積極的に吸収できる活性化した状態にしておくことができる。
【0018】
[第1の態様]
図1は、本発明に係る有機ELパネルの一例(第1の態様)を概略的に示している。この有機ELパネル10は、透明基板12、有機EL素子20、封止部材26等により構成されている。
有機EL素子20は、基板12上に、陽極14、有機EL層16、陰極18が順次積層されて構成されている。さらに、陰極18上に、乾燥剤層22と、発熱層24とが順次積層されている。なお、図1では、隔壁、絶縁膜等は省略されている。
【0019】
<基板>
基板12は、有機EL素子等を支持することができる強度、光透過性等を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
【0020】
例えば、基板12としてガラスを用いる場合、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。
【0021】
また、有機材料からなる基板を用いる場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。また、特にプラスチック製の基板を用いる場合には、水分や酸素の透過を抑制するため、基板12の片面又は両面に透湿防止層又はガスバリア層を設けることが好ましい。透湿防止層又はガスバリア層の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物を好適に用いることができる。透湿防止層又はガスバリア層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0022】
基板12の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板12の形状としては、取り扱い性、有機EL素子20の形成容易性等の観点から、板状であることが好ましい。基板12の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、基板12は、単一部材で構成されていてもよいし、2つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0023】
基板12は、無色透明であっても有色透明であってもよいが、有機EL素子20から発せられる光の散乱、減衰等を防止することができる点で無色透明であることが好ましい。
【0024】
<有機EL素子>
基板12上には発光素子として有機EL素子20が形成されている。有機EL素子20は、基板12の厚さ方向に積層された陽極14と陰極18とからなる一対の電極間に有機EL層16を有していれば層構成は特に限定されない。例えば以下のような層構成を採用することができる。但し、素子20の層構成はこれらに限定されず、目的等に応じて適宜決めればよい。
【0025】
・陽極/発光層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0026】
<陽極及び引出配線>
基板12上には、例えば陽極14がストライプ状に形成され、一端部には引出配線が形成される。
陽極14は、有機EL層16に正孔を供給する電極としての機能を有するものであれば、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて公知の電極材料から適宜選択することができる。ただし、有機EL素子20の性質上、陽極14及び陰極18のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましく、通常は、透明な陽極14が形成される。
【0027】
陽極14を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。具体例として、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0028】
陽極14を形成する方法としては、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。陽極14を構成する材料との適性等を考慮して適宜選択した方法に従って基板12上に陽極14を形成することができる。例えば、陽極材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って陽極14を形成することができる。
陽極14を形成する位置は特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて適宜選択することができ、基板12の一方の表面上の全体に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。
【0029】
陽極14を形成する際のパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0030】
陽極14用の引出配線も陽極14と同様の材料を用いて同様の方法により形成することができるが、陽極14を形成する際、陽極14に接続する引出配線を同時に形成してもよい。このとき、さらに陰極18用の引出配線を同時に形成することもできる。
【0031】
陽極14及び引出配線の厚みは、陽極14を構成する材料等に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
また、陽極14及び引出配線の抵抗値は、有機EL層16に確実に正孔を供給するために、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
【0032】
透明な陽極14とする場合、無色透明であっても有色透明であってもよいが、透明陽極14側から発光を取り出すためには、その光透過率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透明陽極14については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載されている事項を本発明でも適用することができる。例えば、耐熱性の低いプラスチック基板12を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0033】
<有機EL層>
有機EL素子20は、陽極14と陰極18との間に少なくとも発光層を含む有機EL層16を有している。有機EL層16を構成する発光層以外の層としては、前述したように、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。好ましい層構成として、陽極14側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が挙げられ、さらに、例えば正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間に、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極14と正孔輸送層との間に正孔注入層を有してもよく、陰極18と電子輸送層との間には電子注入層を有してもよい。また、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
これらの有機EL層16を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0034】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極14、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極18、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0035】
発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。
蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0036】
燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0037】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, PergamonPress社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0038】
燐光発光材料は、発光層中に0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0039】
また、発光層に含有されるホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。
ホスト材料の具体例としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0040】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0041】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極14又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層及び正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、フェニルアゾールやフェニルアジンを配位子に有するIr錯体に代表される各種金属錯体等を含有する層であることが好ましい。
【0042】
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜200nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜200nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0043】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層及び電子輸送層は、陰極18又は陰極側から電子を受け取り、陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層及び電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0044】
電子注入層及び電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0045】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。発光層と陰極側で隣接する正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0046】
<陰極及び引出配線>
有機EL層16上には、例えば陽極14と直交するように陰極18がストライプ状に形成される。
陰極18は、通常、有機EL層16に電子を注入する電極としての機能を有し、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機ELパネル10の用途、目的等に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極18を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点から、2種以上を好適に併用することができる。
【0047】
これらの中でも、陰極18を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点でアルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極18の材料については、例えば、特開平2−15595号公報及び特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は本発明においても適用することができる。
【0048】
陰極18の形成方法については特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陰極18を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極18の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って陰極18を形成することができる。
【0049】
陰極18を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等によって行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0050】
陰極用の引出配線も陰極18と同様の材料を用いて同様の方法により形成することができ、陰極18を形成する際に同時に形成することができる。
【0051】
陰極18の形成位置は特に制限はなく、有機EL層16上の全体に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0052】
また、陰極18と有機EL層16との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで形成してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と解することもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0053】
陰極18の厚みは、陰極18を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極18は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極18とする場合は、陰極18の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、特にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0054】
<乾燥剤層>
本発明の有機ELパネル10では、乾燥剤層22が有機EL素子20と接する位置に設けられる。図1に示した有機ELパネル10では、有機EL素子20の陰極18上に乾燥剤層22が形成されている。
乾燥剤層22としては、水分を吸着し、吸湿しても固体状態を維持するものであれば、化学吸着性のものでも物理吸着性のものでもよい。乾燥剤層22を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩、有機物、モレキュラーシーブ、ゼオライト、五酸化燐等が挙げられる。
【0055】
上記アルカリ金属酸化物としては、酸化ナトリウム(Na2 O)、酸化カリウム(K2 O)などが挙げられる。また、アルカリ土類金属酸化物としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられる。
【0056】
上記硫酸塩としては、硫酸リチウム(Li2 SO4 )、硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )、硫酸カルシウム(CaSO4 )、硫酸マグネシウム(MgSO4 )、硫酸コバルト(CoSO4 )、硫酸ガリウム(Ga2 (SO4 )3 )、硫酸チタン(Ti(SO4 )2 )、硫酸ニッケル(NiSO4 )などが挙げられ、特に無水塩が好適である。
【0057】
上記金属ハロゲン化物としては、塩化カルシウム(CaCl2 )、塩化リチウム(LiCl)、塩化マグネシウム(MgCl2 )、塩化ストロンチウム(SrCl2 )、塩化イットリウム(YCl3 )、塩化銅(CuCl2 )、ふっ化セシウム(CsF)、ふっ化タンタル(TaF5 )、ふっ化ニオブ(NbF5 )、臭化カルシウム(CaBr2 )、臭化セリウム(CeBr3 )、臭化セレン(SeBr4 )、臭化バナジウム(VBr2 )、臭化マグネシウム(MgBr2 )、よう化バリウム(BaI2 )、よう化マグネシウム(MgI2 )などが挙げられ、特に無水塩が好適である。
【0058】
上記過塩素酸塩としては、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4 )2 )、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4 )2 )が挙げられ、特に無水塩が好適である。
【0059】
乾燥剤層22を形成する方法としては、上記のような吸湿性を有する材料を用い、有機EL素子20と接触するように成膜することができれば特に限定されず、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。
【0060】
乾燥剤層22の厚みは、乾燥剤層22を構成する材料に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常は、1nm〜1mm程度であり、10nm〜1μmが好ましい。
【0061】
また、乾燥剤層22は、2種以上の乾燥剤を積層した構造としてもよい。複数構造の乾燥剤層22とすれば、吸湿容量、吸湿力、吸湿速度などの乾燥剤の異なる性能を組み合わせることできる。例えば、製造してから初期の乾燥のために吸湿容量が小さくても吸湿速度の大きい乾燥剤と、長期保存性のために吸湿速度は小さくでも吸湿容量の大きい乾燥剤を組み合わせて、初期劣化・長期劣化を減少させることが可能になる、といった利点がある。
【0062】
<発熱層>
本発明では、発熱層24が、乾燥剤層22と接するように形成される。発熱層24は、外部からエネルギーを加えることで発熱する材料により構成すればよい。例えば、光等の電磁波を照射することにより発熱する材料を用いることができ、具体的には、Cr等の金属蒸着膜、カーボンブラック、クロムブラック(クロム酸化物)、紫外線などを吸収して発熱する半導体を含有する層、赤外吸収色素等を光熱変換材料として含有する層、により発熱層24を構成することができる。
【0063】
発熱層24を形成する方法としては、上記のような材料を用い、乾燥剤層22と接触するように成膜することができれば特に限定されず、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。
【0064】
発熱層24の厚みは、発熱層24を構成する材料に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常は、1nm〜10μm程度であり、10nm〜1μmが好ましい。
【0065】
<封止>
有機EL素子20、乾燥剤層22、及び発熱層24を形成した後、封止を行う。封止部材26は、気密性が高いものであれば特に限定されず、ガラス、樹脂フィルム、金属などからなる公知の封止部材26を用いることができる。例えば、基板12上の有機EL素子20の周囲に紫外線硬化型エポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、封止部材26を貼り合わせて有機EL素子20を封止する。
【0066】
封止部材26の内側には不活性ガス又は不活性液体を充填することで酸素や水分による有機EL素子20の劣化を抑制することができる。不活性ガスとしては、例えばアルゴン、窒素等が挙げられ、不活性液体としては、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0067】
封止用の接着剤が乾燥することで、封止部材26の内側は気密となり、有機EL素子20が空気中の酸素や水分と接触することを防ぐことができる。但し、封止部材26の内側への水分等の侵入を完全に防ぐことはできず、特に、支持基板12として樹脂基板12を用いた場合には、酸素や水分が透過し易い。そこで、封止部材26の内側には、有機EL素子20と接する乾燥剤層(第1の乾燥剤層)22とは別に、有機EL素子20と離間した別の乾燥剤層(第2の乾燥剤層)28を設けることが好ましい。
【0068】
このような第2の乾燥剤層28としては、封止部材26の内側に存在する水分を吸着して固体状態を維持するものであれば、化学吸着性のものでも物理吸着性のものでもよく、第1の乾燥剤層22で例示した材料を用いることができる。ただし、第1の乾燥剤層22から放出された水分を第2の乾燥剤層28で積極的に吸収させるために、第2の乾燥剤層28は、第1の乾燥剤層22よりも吸湿能力が高いものが好ましい。なお、第2の乾燥剤層28の位置や形状は、封止部材26の内側で有機EL素子20から離間していれば特に限定されず、図1に示すように封止部材26の内側側壁のほか、有機EL素子20と対向する位置でもよいし、有機EL素子20の周辺の基板12上に設けてもよい。
【0069】
封止を行うことで図1に示したような構成の有機ELパネル10を得ることができる。さらに、各電極14,18に外部の配線を接続し、電極間に電界を印加することで電極間の有機EL層16を発光させることができる。なお、有機EL素子20の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0070】
上記のような有機ELパネル10では、乾燥剤層22と接するように発熱層24を設けられているため、光照射又は有機EL素子20の発光により、発熱層24が光熱変換して発熱する。そして、発熱層24からの熱により、有機EL素子20内の水分を乾燥剤層22が効果的に吸湿することができ、さらに、乾燥剤層22に一旦吸収された水分が発散され、封止部材側の乾燥剤層28に吸収されることになる。これにより、第1の乾燥剤層22の吸水力が回復し、素子20側から積極的に水を吸収できる状態となる。このような作用により、有機EL素子20は、水分による画素の縮退が効果的に抑制され、長寿命化を図ることができる。
【0071】
なお、有機EL素子20の形成後、封止するまでの間に有機EL素子20内に水分が吸収されることも考えられる。そこで、有機EL素子20を初めて発光させる前に、発熱層24を発熱させることにより有機EL素子20中に含まれている水分を低減させることが好ましい。
【0072】
有機EL素子20上には乾燥剤層22と発熱層24が形成されているため、例えば、封止後、発熱層24に向けて光を照射して発熱させる。これにより、有機EL素子20から第1の乾燥剤層22に吸収された水分が積極的に放出され、第2の乾燥剤層28に吸収されることになる。このように、有機EL素子20を初めて発光させる前に、発熱層24を発熱させて有機EL素子20中に含まれている水分を減じておけば、いわゆる初期落ちやダークスポットの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
また、封止の前に発熱層24を発熱させて有機EL素子20内の水分量を減少させることもできる。図2は有機EL素子20内の水分量の変化をモデル化したものである。図2のラインAは、乾燥剤層22と発熱層24を設けた場合であり、ラインBは、乾燥剤層22又は発熱層24だけを設けた場合を示している。
例えば図6に示すように有機EL素子20上に乾燥剤層22だけを設けた場合や、発熱層だけを設けた場合では、発光開始後、素子内の水分量を低下させる効果が得られたとしても(ラインB)、発光開始時における水分量が高ければ素子の劣化が進みやすい。
【0074】
一方、本発明のように乾燥剤層22と発熱層24を設ければ(ラインA)、素子形成後、封止を行う前に、発熱層24の発熱と乾燥剤層22の吸湿により、有機EL素子20に含まれる水分量を大幅に減少させることができる。このように有機EL素子20内の水分量を減少させた上で封止を行えば、有機EL素子20中の水分量が極めて少ない有機ELパネル10を製造することができる。
【0075】
発光開始後は、有機EL素子20が自ら発光するため、この場合も、発熱層24の発熱により、乾燥剤層22に吸収されている水分が積極的に放出され、有機EL素子20から離れた乾燥剤層28に吸収されるとともに、乾燥剤層22が再生されることになる。
【0076】
図3〜図5は、本発明に係る有機ELパネルの他の態様を示している。
[第2の態様]
図3に示す有機ELパネル30では、乾燥剤層22が有機EL層16に隣接するように形成されており、乾燥剤層22上に発熱層24が形成されている。このような構成でも、乾燥剤層22が有機EL素子20と接するとともに、発熱層24が乾燥剤層22と接しているため、発熱層24の発熱により、乾燥剤層22は積極的に吸湿できる状態となり、有機EL素子20内の水分を極めて効果的に除去することができる。
【0077】
なお、この態様では、有機EL層16が発熱層24や乾燥剤層22と重ならないため、例えば発熱層24として例えばカーボンブラックを用いた場合でも有機EL層16の発光を遮らず、トップエミッション型の有機ELパネルとすることもできる。
【0078】
[第3の態様]
図4に示す有機ELパネル40では、有機EL素子20の陰極18上に乾燥剤層22が形成されており、乾燥剤層22上には、発熱層24が開口部25を有し、この開口部25から乾燥剤層22が露出するように形成されている。このような構成の有機ELパネル40でも、発熱層24の発熱により乾燥剤層22が積極的に有機EL素子20から水分を吸湿する状態となり、乾燥剤層22に吸湿された水分はさらに発熱層24の開口部25から再度放出され易い。従って、乾燥剤層22から再度放出された水分は、有機EL素子20と離間した別の乾燥剤(第2の乾燥剤層28)に効果的に吸収され易くなる。
【0079】
[第4の態様]
図5に示す有機ELパネル50では、外部配線27と通じて電流による抵抗加熱により発熱する発熱層34が形成されている。なお、発熱層34は、電極14,18との接触を避けるため、有機EL層16及び乾燥剤層22上に形成されている。
【0080】
抵抗加熱により発熱する発熱層34を構成する材料としては、Ni−Cr合金、Cu−Ni合金、Fe−Cr合金などの高抵抗材料が挙げられる。これらの材料を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により発熱層34を形成することができる。
このように抵抗加熱により発熱する発熱層34を設けた場合でも、通電により発熱層34を発熱させることで乾燥剤層22を素子側から積極的に水分を吸収できる状態とすることができ、有機ELパネル50の長寿命化を図ることができる。
【0081】
以上本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る有機ELパネルは、パッシブマトリクス型でもよいし、アクティブマトリクス型でもよい。
また、本発明に係る有機ELパネルの用途は特に限定されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る有機ELパネルの一例(第1の態様)を示す概略図である。
【図2】有機EL素子の水分量の変化をモデル化した図である。
【図3】本発明に係る有機ELパネルの他の例(第2の態様)を示す概略図である。
【図4】本発明に係る有機ELパネルの他の例(第3の態様)を示す概略図である。
【図5】本発明に係る有機ELパネルの他の例(第4の態様)を示す概略図である。
【図6】有機EL素子上に乾燥剤層を設けた有機ELパネルを示す概略図である。
【図7】有機EL素子の構成の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0083】
10 有機ELパネル
12 基板
14 陽極
16 有機EL層
18 陰極
20 有機EL素子
22 乾燥剤層
24 発熱層
25 開口部
26 封止部材
28 乾燥剤層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材とを含む有機ELパネルであって、前記有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とをさらに有することを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記乾燥剤層が、前記有機EL素子上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記乾燥剤層が、2種以上の乾燥剤を積層した構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
前記発熱層に開口部が形成されており、前記開口部から前記乾燥剤層が露出していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項5】
前記発熱層が、電磁波を照射することにより発熱するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項6】
前記発熱層が、電流による抵抗加熱により発熱するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項7】
前記有機EL素子と接する乾燥剤層とは別に、前記有機EL素子と離間した別の乾燥剤層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項8】
有機ELパネルを製造する方法であって、基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とを形成し、前記有機EL素子を初めて発光させる前に、前記発熱層を発熱させることにより前記有機EL素子に含まれている水分を低減させることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項1】
基板と、該基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該基板上で該有機EL素子を封止する封止部材とを含む有機ELパネルであって、前記有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とをさらに有することを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記乾燥剤層が、前記有機EL素子上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記乾燥剤層が、2種以上の乾燥剤を積層した構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
前記発熱層に開口部が形成されており、前記開口部から前記乾燥剤層が露出していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項5】
前記発熱層が、電磁波を照射することにより発熱するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項6】
前記発熱層が、電流による抵抗加熱により発熱するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項7】
前記有機EL素子と接する乾燥剤層とは別に、前記有機EL素子と離間した別の乾燥剤層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の有機ELパネル。
【請求項8】
有機ELパネルを製造する方法であって、基板上に、陽極、有機EL層、及び陰極を積層して構成される有機EL素子と、該有機EL素子と接する乾燥剤層と、該乾燥剤層と接する発熱層とを形成し、前記有機EL素子を初めて発光させる前に、前記発熱層を発熱させることにより前記有機EL素子に含まれている水分を低減させることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−251450(P2008−251450A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93708(P2007−93708)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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