説明

有機ELパネル

【課題】パッシブマトリクス型の有機ELパネルにおいて、発光画素毎の輝度ムラを抑制し、表示品質を向上させることが可能な有機ELパネルを提供する。
【解決手段】支持基板1と、支持基板1上にライン状に複数形成される第一電極21と、第一電極21上に形成される有機発光層と、前記有機発光層上に第一電極21と交差するようにライン状に複数形成される第二電極25と、を備え、第一電極21と第二電極25との交差個所からなる発光部を含む複数の発光画素を支持基板1上にマトリクス状に配置してなり、第一,第二電極21,25の何れか一方を信号電極とし他方を走査電極としてパッシブ駆動を行う有機ELパネルである。前記各発光画素は、前記走査電極の前記発光部までの長さに応じて発光面積を異ならせてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた有機ELパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子として、ガラス材料からなる透光性の支持基板上に、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明電極と、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層等からなる有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等からなる非透光性の背面電極と、を順次積層形成して構成される有機EL素子が知られている(例えば特許文献1参照)。有機EL素子を用いた有機ELパネルは、自発光型平面表示装置として近年脚光を浴びており、液晶表示装置と比較して視野角依存性が少ない、コントラスト比が高い、薄膜化が可能であるなどの利点から各所で研究開発が行われている。
【0003】
また、従来知られるパッシブマトリクス型の有機ELパネルは、透光性基板上に第一電極を複数のライン状に形成し、第二電極を第一電極と交差するように複数のライン状に形成して、第一電極と第二電極との交差個所からなる発光部を含む発光画素をマトリクス状に複数配置し、例えば第一電極を信号電極とし、第二電極を走査電極としてパッシブ駆動を行い画像を表示するものである(例えば特許文献2参照)。また、第二電極はライン状に複数形成される隔壁によって分離形成されるのが一般的である。パッシブマトリクス型の有機ELパネルは、TFTを用いるアクティブマトリクス型と比較して製造が容易であるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−194393号公報
【特許文献2】特開平8−315981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マトリクス状に配置される各発光画素は、一定の発光面積(発光部の面積)で形成されるのが通常である。全ての発光画素の発光面積を同一とすると、全ての発光画素において電流密度は同一となり制御上は輝度も同一となる。しかしながら、パッシブマトリクス型の有機ELパネルにおいては、各発光画素の配置位置によって配線抵抗値が異なり、電圧降下量に差が生じて輝度ムラが生じるという問題点があった。すなわち、同一の走査電極と接続され同時に発光制御される発光画素の各ラインのうち、走査電極の電源と接続される端部から近い発光画素においては配線を構成する走査電極が短いため配線抵抗値が小さく、走査電極の電源と接続される端部から遠い発光画素においては配線を構成する走査電極が発光画素の個数分長くなるためその分配線抵抗値が大きくなる。その結果、各発光画素で電圧降下量に差が生じて同じ電流制御値でも駆動波形のなまりなどが起因して実際の輝度が異なり、発光画素の各ラインに走査電極の電源接続側端部に近い発光画素の輝度が高く、遠い発光画素の輝度が低い輝度勾配が発生して表示品質が低下する。特に、走査電極の電源と接続する端部が走査電極毎に千鳥状に2方向(例えば左右)で入れ替わる場合、両端に位置する発光画素の輝度の高低が各ライン毎に交互に入れ替わるため特に輝度ムラが認識されやすい傾向にあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、パッシブマトリクス型の有機ELパネルにおいて、発光画素毎の輝度ムラを抑制し、表示品質を向上させることが可能な有機ELパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、支持基板と、前記支持基板上にライン状に複数形成される第一電極と、前記第一電極上に形成される有機発光層と、前記有機発光層上に前記第一電極と交差するようにライン状に複数形成される第二電極と、を備え、前記第一電極と前記第二電極との交差個所からなる発光部を含む複数の発光画素を前記支持基板上にマトリクス状に配置してなり、前記第一,第二電極の何れか一方を信号電極とし他方を走査電極としてパッシブ駆動を行う有機ELパネルであって、前記各発光画素は、前記走査電極の前記発光部までの長さに応じて発光面積を異ならせてなることを特徴とする。
【0008】
また、前記支持基板上に形成され前記各走査電極を分断する複数の隔壁部を備え、隣り合う前記各隔壁部は互いに平行でないことを特徴とする。また、前記各走査電極は、電源と接続される一端側が最も幅が広く、他端側が最も幅が細くなるように形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明はパッシブマトリクス型の有機ELパネルにおいて、発光画素毎の輝度ムラを抑制し、表示品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である有機ELパネルを示す概観図。
【図2】同上の有機ELパネルを示す要部断面図。
【図3】同上の有機ELパネルにおける発光画素を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施形態であるパッシブマトリクス型の有機ELパネルAを示す図である。有機ELパネルAは、支持基板1の一方の面上(図2における上面)に発光表示部2と封止部材3とが配設されてなるものである。有機ELパネルAは発光表示部2からの光Lを支持基板1側から出射して表示像を表示するいわゆるボトムエミッション型有機ELパネルである。
【0012】
支持基板1は、長方形形状の透明ガラス材料からなり、電気絶縁性の基板である。
【0013】
発光表示部2は、図2及び図3に示すように、ライン状に複数形成される第一電極21と、絶縁膜22と、隔壁部23と、有機層24と、ライン状に複数形成される第二電極25と、から主に構成される。すなわち、有機ELパネルAは、発光表示部2の表示単位として支持基板1上に第一電極21と第二電極25とが有機層24を挟んで交差する個所からなる発光部(有機EL素子)を含む複数の発光画素Pをマトリクス状に配置してなる。
【0014】
第一電極21は、ITO、IWZOまたはAZO等の透光性の導電材料からなり、スパッタリング法等の手段によって支持基板1上に前記導電材料を層状に形成した後、フォトリソグラフィー法等によって互いに略平行となるようにライン状に複数形成される。本実施形態において、第一電極21は陽極であり、また、パッシブ駆動における信号電極となる。第一電極21は、一端(図1における下端)が電源と接続される。
【0015】
絶縁膜22は、例えばポリイミド系の電気絶縁性材料から構成され、第一電極21と第二電極25との間に位置するように第一電極21を部分的に覆うように形成され、第一電極21を露出させる開口部22aを有するものである。絶縁膜22は、両電極21,25の短絡を防止するとともに、前記各発光部の輪郭を明確にするものである。また、開口部22aによって前記各発光部の面積を調整し、各発光画素Pの発光面積を調整することができる。また、絶縁膜22は、接続配線26と第二電極25との間にも延設されており、接続配線26と第二電極25とを接続させるコンタクトホール22bを有する。
【0016】
隔壁部23は、例えばフェノール系の電気絶縁性材料からなり、絶縁膜22上に形成される。隔壁部23は、その断面が絶縁膜22に対して逆テーパー形状等のオーバーハング形状となるようにフォトリソグラフィー法等の手段によって形成されるものである。また、隔壁部23は、第一電極21と交差する方向に複数形成される。隔壁部23は、その上方から蒸着法やスパッタリング法等によって有機層24及び第二電極25を形成する場合にオーバーハング形状によって有機層24及び第二電極25がライン状に分離される構造を得るものである。
【0017】
有機層24は、少なくとも有機発光層を有する複数層からなり第一電極21上に形成される。有機層24は、例えば、正孔注入層,正孔輸送層,有機発光層,電子輸送層及び電子注入層を蒸着法等の手段によって順次積層形成してなり、任意の発光色を示す。なお、前記有機発光層は複数層であってもよい。
【0018】
第二電極25は、アルミニウム(Al)や銀(Ag)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、金(Au)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)あるいはこれらの合金等の第一電極21よりも導電率が高い金属性導電材料を蒸着法等の手段により層状に形成して金属膜を形成し、隔壁部23によって分断してライン状に複数形成してなるものである。第二電極25の各ラインは第一電極21の各ラインと交差するように形成される。本実施形態において、第二電極25は陰極であり、また、パッシブ駆動における走査電極となる。また、第二電極25は、絶縁膜22に設けられるコンタクトホール22bを介して接続配線26と接続され、この接続配線26を介して前記電源と接続される。
【0019】
接続配線26は、例えば第一電極21と同材料であるITO、クロム(Cr)あるいはアルミニウム(Al)等の導電材料またはこれら導電材料の積層体からなるものである。接続配線26は、コンタクトホール22bを介して第二電極25と接続可能とするべく少なくとも第二電極25との接続個所となる一端が絶縁膜22を介して第二電極25の下方に位置するように形成されている。なお、図1に示すように、コンタクトホール22b及び接続配線26は第二電極25の両端側(図1における左右端側)に千鳥状に形成されており、第二電極25はその両端がライン毎に接続配線26と交互に接続される。すなわち、第二電極25のn行目(nは整数)は一端側(図1における左端側)で接続配線26と接続され、第二電極25のn+1行目は他端側(図1における右端側)で接続配線26と接続される。
【0020】
封止部材3は、例えば透明ガラス材料から構成されるもので、本実施形態においては凹形状となるように形成される。封止部材3は、紫外線硬化型の接着剤3aを介して支持基板1と接着固定され、発光表示部2を気密的に収納する収納空間を構成する。なお、封止部材3の発光表示部2との対向面には吸湿部材(図示しない)が塗布されている。
【0021】
有機ELパネルAは、各発光画素Pが走査電極である第二電極25の前記発光部までの長さに応じて発光面積が異なることを特徴とするものである。
【0022】
図3は、有機ELパネルAにおいて異なる発光面積で形成された発光画素Pを簡略化して示すものである。なお、図3においては説明を簡略化するために隔壁部23,有機層24及び第二電極25を省略して図示している。発光画素Pは、各列において前記電源と接続される一端(コンタクトホール22bが形成される端部)に最も近い側においては開口部22aから露出する第一電極21の面積(すなわち前記発光部の面積)が最も大きく、他端(コンタクトホール22bが形成されない端部)に向かって徐々に開口部22aから露出する第一電極21の面積が小さくなるように形成されている。このように、各発光画素Pを第二電極25の電源接続側端部から前記発光部までの長さが短いほど発光面積を大きく、長いほど発光面積を小さく形成することによって、発光面積の大きい発光画素Pにおいては電流密度が低くなることで輝度が低くなり、発光面積の小さい発光画素Pにおいては電流密度が高くなることで輝度が高くなる。その結果、走査電極25の長さに起因して輝度が高かった位置の発光画素Pは輝度を低くする調整がなされ、輝度が低かった位置の発光画素Pは輝度を高くする調整がなされ、従来発生していた輝度勾配を打ち消す調整が可能となり有機ELパネルA全体の輝度ムラを抑制することができる。
【0023】
また、信号電極である第一電極21を部分的に覆う絶縁膜22を形成し、絶縁膜22の開口部22aによって各発光画素Pの発光面積を規定することによって、開口部22aの大きさを変更するのみで容易に発光画素Pの発光面積を変化させることができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、各発光画素Pは、その発光面積が第二電極25と平行方向に1個毎に徐々に変化するものであったが、発光画素Pの数や輝度勾配の程度によって発光画素Pの複数個毎に発光面積を変化させるものであってもよい。
【0025】
また、有機ELパネルAにおいては、発光画素Pの前記発光部の形状は正方形のまま発光面積を調整しているが、前記発光部の形状は正方形に限定されるものではなく、後述する第二電極25の形状に応じて台形としてもよい。このほか、長方形、平行四辺形、菱形あるいは四角形以外の多角形やこれらの角に曲率を有する図形または円形、楕円形などであってもよい。
【0026】
また、さらに有機ELパネルAは、発光画素Pの発光面積の変化によって生じるスペースを利用し、第二電極25をライン状に分離形成する隔壁部23を互いに隣り合う隔壁部23同士が非平行となるように形成することを特徴とする。
【0027】
従来より、一定の幅で形成される各走査電極においては電源接続側端部に最も近い発光画素付近を通過する電流が電源接続側端部に最も遠い発光画素付近を通過する電流に対して接続される発光画素数分倍増し、電圧降下量に差が生じていた。例えば走査電極1ラインに5個の発光画素が接続される場合には、電源接続側端部に最も近い発光画素付近と電源接続側端部に最も遠い発光画素付近とでは走査電極の単位幅あたりの電圧降下量に5倍の差が生じる。その結果、パネル全体としての電圧降下量が大きくなり、発光輝度が低下するという問題がある。これに対し、本実施形態の有機ELパネルAのように、隣り合う隔壁部23同士を非平行とし、それによって各第二電極25を前記電源と接続される一端側が最も幅が広く、他端側が最も幅が細くなるくさび形状に形成することによって、電流が集中する電源接続側端部に近い発光画素P付近では配線幅を広く、電流が集中しない電源接続側端部から遠い発光画素P付近では配線幅を狭くし、第二電極25における配線抵抗を最適化しパネル全体の電圧降下量を低減させ、発光輝度を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明はボトムエミッション型有機ELパネルに限定されず、トップエミッション型の有機ELパネルにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、パッシブマトリクス型の有機ELパネルに好適である。
【符号の説明】
【0030】
A 有機ELパネル
1 支持基板
2 発光表示部
3 封止部材
21 第一電極
22 絶縁膜
22a 開口部
22b コンタクトホール
23 隔壁部
24 有機層
25 第二電極
26 接続配線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板上にライン状に複数形成される第一電極と、前記第一電極上に形成される有機発光層と、前記有機発光層上に前記第一電極と交差するようにライン状に複数形成される第二電極と、を備え、前記第一電極と前記第二電極との交差個所からなる発光部を含む複数の発光画素を前記支持基板上にマトリクス状に配置してなり、前記第一,第二電極の何れか一方を信号電極とし他方を走査電極としてパッシブ駆動を行う有機ELパネルであって、
前記各発光画素は、前記走査電極の前記発光部までの長さに応じて発光面積を異ならせてなることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記各発光画素は、前記走査電極の前記発光部までの長さが短いほど前記発光面積が大きく、前記走査電極の前記発光部までの長さが長いほど前記発光面積が小さいことを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記各発光画素は、前記発光面積が前記走査電極と平行方向に1個毎に徐々に変化するあるいは複数個毎に変化することを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
前記信号電極を部分的に覆う絶縁膜を備え、前記各発光画素の前記発光面積は前記絶縁膜によって規定されることを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項5】
前記支持基板上に形成され前記各走査電極を分断する複数の隔壁部を備え、隣り合う前記各隔壁部は互いに平行でないことを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項6】
前記各走査電極は、電源と接続される一端側が最も幅が広く、他端側が最も幅が細くなるように形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の有機ELパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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