説明

有機EL装置、電気光学装置及び電子機器

【課題】視覚制限の有無を比較的容易に切り替える。
【解決手段】有機EL装置(200)は、基板(210a)と、基板上に配置された発光部(240)と、発光部の上層側に、発光部から所定間隔をあけて積層されると共に、基板上で平面的に見て、発光部を少なくとも部分的に覆う遮光層(230)とを備える。発光部は、発光層(241)と、発光層の上に積層された第1透明層(242)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro−Luminescence)装置、該有機EL装置を備える電気光学装置、及び該電気光学装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば特許文献1には、有機EL素子をフロントライトとして用いた反射型液晶表示装置が開示されている。ここでは特に、有機EL素子が、格子状又はストライプ状のパターン形状の発光部を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−332066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置では、画面の覗き見を防止することを目的として、画面上に視覚制御フィルムが設けられることがある。しかしながら、視覚制御フィルムは、その着脱を切り替えることが困難である。すると、例えば、視覚制御フィルムを用いて覗き見を防止しつつ一人で画面を閲覧する場合と、会議等において一の画面を多人数で同時に閲覧する場合との両方に、一の装置で対応することが困難になるという技術的問題点がある。
【0005】
上述の特許文献1に記載の技術では、この技術的問題点を解決することが困難であるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、視覚制限の有無を比較的容易に切り替えることができる有機EL装置、電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有機EL装置は、上記課題を解決するために、基板と、前記基板上に配置された発光部と、前記発光部の上層側に、前記発光部から所定間隔をあけて積層されると共に、前記基板上で平面的に見て、少なくとも前記発光部を覆う遮光層とを備え、前記発光部は、発光層と、前記発光層の上に積層された第1透明層とを含む。
【0008】
本発明の有機EL装置によれば、発光部は、例えば透明基板等である基板上に配置されている。発光部は、発光層と、該発光層の上に積層された、例えば透明電極等である第1透明層とを含んでいる。尚、発光部は、基板上で、例えばアイランド状又はストライプ状等にパターニングされている。
【0009】
遮光層は、発光部の上層側に、該発光部から所定間隔をあけて積層されると共に、基板上で平面的に見て、少なくとも発光部を覆っている。尚、遮光層は、発光部のパターン形状に応じて、パターニングされている。具体的には例えば、発光部のパターン形状がアイランド状であれば、遮光層もアイランド状にパターニングされており、発光部のパターン形状がストライプ状であれば、遮光層もストライプ状にパターニングされている。
【0010】
ここで、当該有機EL装置により視覚制御が可能な理由を説明する。先ず、例えば液晶表示装置等の画面上に、当該有機EL装置を、当該有機EL装置における遮光層が発光部よりも視認側になるように配置する。次に、当該有機EL装置を駆動して、発光部を発光させる。
【0011】
この時、画面に対して垂直な方向に発光部から出射された光は、遮光層が少なくとも発光部を覆っているため、遮光層により遮られる。このため、画面に対して垂直な方向から(即ち、画面の正面から)画面を見た場合、光量は全く又はほとんど変化しない。他方、画面に対して斜め方向に発光部から出射された光は、遮光層により遮られることなく、画面に対して斜め方向から画面を見ている視認者の目に到達する。このため、該視認者には、光量が増加したことに起因して、コントラストの低下した画像が表示される。従って、該視認者は、画像の内容を認識することが困難になる。
【0012】
以上説明したように、当該有機EL装置により視覚(即ち、視野角)を制限することができる。尚、当該有機EL装置を駆動させなければ(即ち、発光部を発光させなければ)、当該有機EL装置により視覚は制限されない。
【0013】
本発明に係る「所定間隔」は、視覚を制限する範囲に応じて設定される値である。具体的には例えば、所定間隔は、画面の大きさ、画面と視認者との間の距離、並びに有機EL装置における発光部及び遮光層の幅に基づいて、視覚を制限する範囲を満足する値として設定される。
【0014】
以上の結果、本発明の有機EL装置によれば、上述の如く、視覚制限の有無を比較的容易に切り替えることができる。
【0015】
本発明の有機EL装置の一態様では、前記発光部は、アイランド状にパターニングされている。
【0016】
この態様によれば、当該有機EL装置を平面的に見た場合に、遮光層に起因する遮光領域を比較的少なくすることができる。この結果、当該有機EL装置を、例えば液晶表示装置等の画面上に配置した場合に、当該有機EL装置が該画面に表示される画像に与える影響を極めて少なくすることができる。尚、遮光領域は、当該有機EL装置を平面的に見た場合の面積の10%以下であることが望ましい。
【0017】
本発明の有機EL装置の他の態様では、前記発光部は、前記発光層の下に積層された反射層を更に含む。
【0018】
この態様によれば、発光部は、例えばアルミニウム等の金属を含んでなり、発光層の下に積層された反射層を含んでいる。これにより、発光部から出射された光が、当該有機EL装置が配置された、例えば透過型液晶表示装置等の画面に入射することを防止することができる。この結果、発光部から出射された光に起因して、該画面に表示された画像の品質の低下を防止することができる。
【0019】
或いは、本発明の有機EL装置の他の態様では、前記発光部は、前記発光層の下に積層された第2透明層を更に含む。
【0020】
この態様によれば、発光部は、発光層の下に積層された、例えば透明電極等である第2透明層を含んでいる。これにより、発光部から出射された光を、当該有機EL装置が配置された、例えば反射型液晶表示装置等の画面に入射させることができる。即ち、当該有機EL装置を、視覚制御だけでなく、フロントライトとしても用いることができる。
【0021】
本発明の有機EL装置の他の態様では、前記基板上で平面的に見て、前記遮光層の幅は、前記発光部の幅より2sだけ広く、前記所定間隔は、関係式:12度≦Tan−1(s/d)≦38度(但し、dは前記所定間隔)を満たす。
【0022】
この態様によれば、当該有機EL装置により、横幅が10cm以下の画面を有する装置(例えば、携帯電話機等)の覗き見を適切に防止することができる。
【0023】
尚、遮光層の幅の中心と発光部の幅の中心とは、基板上で平面的に見て一致している(即ち、遮光層と発光部とは、各々の幅の中心が、基板上で平面的に見て、一致するように形成されている)。従って、“s”は、基板上で平面的に見た場合に、発光部の一辺から、該一辺に対応する遮光層の一辺におろした垂線の長さを意味する。
【0024】
或いは、本発明の有機EL装置の他の態様では、前記基板上で平面的に見て、前記遮光層の幅は、前記発光部の幅より2sだけ広く、前記所定間隔は、関係式:13度≦Tan−1(s/d)≦55度(但し、dは前記所定間隔)を満たす。
【0025】
この態様によれば、当該有機EL装置により、横幅が20〜30cmの画面を有する装置(例えば、ノート型パーソナルコンピューター等)の覗き見を適切に防止することができる。
【0026】
或いは、本発明の有機EL装置の他の態様では、前記基板上で平面的に見て、前記遮光層の幅は、前記発光部の幅より2sだけ広く、前記所定間隔は、関係式:13度≦Tan−1(s/d)≦67度(但し、dは前記所定間隔)を満たす。
【0027】
この態様によれば、当該有機EL装置により、横幅が25〜80cmの画面を有する装置(例えば、デスクトップ型パーソナルコンピューター等)の覗き見を適切に防止することができる。
【0028】
本発明の電気光学装置は、上記課題を解決するために、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された電気光学物質と、前記一対の基板の外表面に配置された、上述した本発明の有機EL装置(但し、その各種態様を含む)とを備える。
【0029】
本発明の電気光学装置によれば、例えば液晶等である電気光学物質は、一対の基板間に挟持されている。上述した本発明の有機EL装置は、一対の基板の、視認側の外表面に配置されている。
【0030】
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明の有機EL装置を具備してなるので、視覚制限の有無を比較的容易に切り替えることができる。
【0031】
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を備える。
【0032】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、比較的容易にして、視覚制限の有無を切り替えることが可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS(Point of Sale)端末、タッチパネル等の各種電子機器を実現できる。
【0033】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る有機EL装置を該有機EL装置の視認側から見た平面図である。
【図2】図1のA−A´線断面図である。
【図3】所定間隔の設定方法を示す概念図である。
【図4】所定間隔の設定方法を示す概念図である。
【図5】所定間隔の設定方法を示す概念図である。
【図6】本発明の実施形態の第1変形例に係る有機EL装置の断面図である。
【図7】本発明の実施形態の第2変形例に係る有機EL装置の視認側から見た平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る液晶パネルを、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図である。
【図9】図8のH−H´線断面図である。
【図10】液晶装置が適用されたモバイル型のパーソナルコンピューターの斜視図である。
【図11】液晶装置が適用された携帯電話の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る有機EL装置、電気光学装置及び電子機器の各実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の図では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材毎に縮尺を異ならしめている。
【0036】
<有機EL装置>
本発明に係る有機EL装置の実施形態を、図1乃至図5を参照して説明する。
【0037】
先ず、本実施形態に係る有機EL装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る有機EL装置を該有機EL装置の視認側から見た平面図であり、図2は、図1のA−A´線断面図である。
【0038】
図1において、有機EL装置200では、透明基板210a及び210bが対向配置されている。透明基板210a及び210bは、表示領域250の周囲に位置するシール領域に配置されたシール材220により相互に接着されている。表示領域250には、複数の発光部240(図2参照)と複数の遮光部230とが設けられている。ここで、複数の発光部240及び複数の遮光部230は、夫々アイランド状にパターニングされている。
【0039】
図2において、透明基板210a上には複数の発光部240が配置されている。該複数の発光部240の上層側には、該複数の発光部240の各々に対応すると共に、対応する発光部240から所定間隔dをあけて複数の遮光部230が設けられている。該複数の遮光部230は、透明基板210a上で平面的に見て、少なくとも各々対応する発光部240を覆っている。
【0040】
発光部240は、例えばアルミニウム等を含んでなる下部電極243(陰極)と、該下部電極243の上に積層された有機EL層241と、該有機EL層241の上に積層され、例えばITO(Indium Tin Oxide)等からなる上部透明電極242(陽極)とを有している。
【0041】
ここに、本実施形態に係る「透明基板210a」、「遮光部230」、「有機EL層241」、「上部透明電極242」及び「下部電極243」は、夫々、本発明に係る「基板」、「遮光層」、「発光層」、「第1透明層」及び「反射層」の一例である。
【0042】
有機EL装置200の動作時には、有機EL層241が発光する。該有機EL層241から出射された光のうち、透明基板210bの法線方向に対して角度Θより小さい角度を有する光は、遮光部230により遮られる。他方、有機EL層241から出射された光のうち、透明基板210bの法線方向に対して角度Θより大きい角度を有する光の一部は、遮光部230に遮られることなく、透明基板210bを透過する。
【0043】
このため、透明基板210bの法線方向(即ち、有機EL装置200の正面)から有機EL装置を見た場合、図2中の目e1に入射する光量は全く又はほとんど変化しない。他方、透明基板210bの法線方向に対して角度Θより大きい角度から有機EL装置200を見た場合、図2中の目e2に入射する光量は増加する。
【0044】
この結果、例えば液晶表示装置等の画面上に、有機EL装置200を、該有機EL装置200における遮光部230が発光部240よりも視認側になるように配置すれば、目e2を持つ視認者には、光量が増加したことに起因して、コントラストの低下した画像が表示される。従って、目e2を持つ視認者は、画像の内容を認識することが困難になる。他方、目e1を持つ視認者は、画像の内容を認識することができる。
【0045】
次に、発光部240と遮光部230との間の距離である所定間隔dについて、図3乃至図5を参照して説明する。尚、図3乃至図5において、便宜上、x軸方向の縮尺とy軸方向の縮尺とを異ならしめている。
【0046】
(ディスプレイサイズ幅:10cm以下)
有機EL装置240を、10cm以下の画面を有する装置(例えば、携帯電話機、スマートフォン等)の視覚制御に適用する場合の所定間隔dについて、図3を参照して説明する。図3は、所定間隔dの設定方法を示す概念図である。
【0047】
本実施形態では、実際に、被験者が10cm以下の画面Disp1を有する装置を使用する際の被験者の目と装置との間の距離を測定し、該測定された距離の平均値を用いている。画面Disp1の位置は、被験者が画面Disp1を有する装置を使用する際の(i)最も右奥、(ii)最も左奥、(iii)最も右手前及び(iv)最も左手前である。また、被験者の両目の間隔は、6.5cmである。尚、後述する図4及び図5も同様である。
【0048】
図3(a)において、画面Disp1と被験者の頭との水平(y方向)距離は、最小で20cmであり、最大で50cmである。画面Disp1の移動幅(x方向)は、水平距離が20cmのとき最大で25cmであり、水平距離が50cmのとき最大で50cmである。
【0049】
図3(a)に示す関係より、最大可視範囲Θmaxは、次のように求められる。即ち、
a:(20−a)=25:6.5
a=15.873
最大可視範囲Θmax/2=Tan−1(12.5/a)=38°
最大可視範囲Θmax=76°
図3(b)において、画面Disp1と被験者の頭との水平距離は、最小で20cmであり、最大で50cmである。画面Disp1の移動幅は、水平距離が20cmのとき最小で10cmであり、水平距離が50cmのとき最小で15cmである。
【0050】
図3(b)に示す関係より、最小可視範囲Θminは、次のように求められる。即ち、
a´:(50−a´)=6.5:15
a´=15.116
最小可視範囲Θmin/2=Tan−1(7.5/(50−a´))=12°
最小可視範囲Θmin=24°
図2における「見える角度範囲」(即ち、光L1と光L2とがなす角度)が、上記最大可視範囲Θmaxと最小可視範囲Θminとの間になるようにすれば、画面Disp1を有する装置の使用者は、画面Disp1に表示される画像を適切に視認できることとなる。
【0051】
従って、所定間隔dは、次の関係式を満たすように決定される。即ち、
最小可視範囲Θmin/2≦Tan−1(s/所定間隔d)≦最大可視範囲Θmax
12°≦Tan−1(s/所定間隔d)≦38°
(ディスプレイサイズ幅20〜30cm)
有機EL装置240を、20〜30cmの画面を有する装置(例えば、ノート型パーソナルコンピューター等)の視覚制御に適用する場合の所定間隔dについて、図4を参照して説明する。図4は、所定間隔dの設定方法を示す概念図である。
【0052】
図4(a)において、20〜30cmの画面Disp2と被験者の頭との水平(y方向)距離は、最小で20cmであり、最大で70cmである。画面Disp2の移動幅(x方向)は、水平距離が20cmのとき最大で50cmであり、水平距離が70cmのとき最大で70cmである。
【0053】
図4(a)に示す関係より、最大可視範囲Θmaxは、次のように求められる。即ち、
a:(20−a)=50:6.5
a=17.699
最大可視範囲Θmax/2=Tan−1(25/a)=55°
最大可視範囲Θmax=110°
図4(b)において、画面Disp2と被験者の頭との水平距離は、最小で20cmであり、最大で70cmである。画面Disp2の移動幅は、水平距離が20cmのとき最小で20cmであり、水平距離が70cmのとき最小で25cmである。
【0054】
図4(b)に示す関係より、最小可視範囲Θminは、次のように求められる。即ち、
a´:(70−a´)=6.5:25
a´=14.444
最小可視範囲Θmin/2=Tan−1(12.5/(70−a´))=13°
最小可視範囲Θmin=26°
図2における「見える角度範囲」が、上記最大可視範囲Θmaxと最小可視範囲Θminとの間になるようにすれば、画面Disp2を有する装置の使用者は、画面Disp2に表示される画像を適切に視認できることとなる。
【0055】
従って、所定間隔dは、次の関係式を満たすように決定される。即ち、
最小可視範囲Θmin/2≦Tan−1(s/所定間隔d)≦最大可視範囲Θmax
13°≦Tan−1(s/所定間隔d)≦55°
(ディスプレイサイズ幅25〜80cm)
有機EL装置240を、25〜80cmの画面を有する装置(例えば、デスクトップ型パーソナルコンピューター等)の視覚制御に適用する場合の所定間隔dについて、図5を参照して説明する。図5は、所定間隔dの設定方法を示す概念図である。
【0056】
図5(a)において、25〜80cmの画面Disp3と被験者の頭との水平(y方向)距離は、最小で20cmであり、最大で80cmである。画面Disp3の移動幅(x方向)は、水平距離が20cmのとき最大で90cmであり、水平距離が80cmのとき最大で110cmである。
【0057】
図5(a)に示す関係より、最大可視範囲Θmaxは、次のように求められる。即ち、
a:(20−a)=90:6.5
a=18.652
最大可視範囲Θmax/2=Tan−1(45/a)=67°
最大可視範囲Θmax=134°
図5(b)において、画面Disp3と被験者の頭との水平距離は、最小で20cmであり、最大で80cmである。画面Disp3の移動幅は、水平距離が20cmのとき最小で25cmであり、水平距離が80cmのとき最小で30cmである。
【0058】
図5(b)に示す関係より、最小可視範囲Θminは、次のように求められる。即ち、
a´:(80−a´)=6.5:30
a´=14.247
最小可視範囲Θmin/2=Tan−1(15/(80−a´))=13°
最小可視範囲Θmin=26°
図2における「見える角度範囲」が、上記最大可視範囲Θmaxと最小可視範囲Θminとの間になるようにすれば、画面Disp3を有する装置の使用者は、画面Disp3に表示される画像を適切に視認できることとなる。
【0059】
従って、所定間隔dは、次の関係式を満たすように決定される。即ち、
最小可視範囲Θmin/2≦Tan−1(s/所定間隔d)≦最大可視範囲Θmax
13°≦Tan−1(s/所定間隔d)≦67°
<第1変形例>
次に、本実施形態に係る有機EL装置の第1変形例について、図6を参照して説明する。図6は、図2と同趣旨の、本実施形態の第1変形例に係る有機EL装置の断面図である。
【0060】
第1変形例において、発光部240は、例えばITO等からなる下部透明電極244(陰極)と、該下部透明電極244の上に積層された有機EL層241と、該有機EL層241の上に積層された上部透明電極242(陽極)とを有している。
【0061】
このように構成すれば、第1変形例に係る有機EL装置200を、視覚制御だけでなく、例えば反射型液晶表示装置等のフロントライトとしても用いることができる。
【0062】
<第2変形例>
次に、本実施形態に係る有機EL装置の第2変形例について、図7を参照して説明する。図7は、図1と同趣旨の、本実施形態の第2変形例に係る有機EL装置の視認側から見た平面図である。
【0063】
第2変形例に係る有機EL装置201において、複数の発光部240及び複数の遮光部231は、夫々ストライプ状にパターニングされている。
【0064】
<電気光学装置>
本発明の電気光学装置の実施形態を、図8及び図9を参照して説明する。ここでは、本発明に係る電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリックス駆動方式の液晶装置を挙げる。
【0065】
本実施形態に係る液晶装置の構成について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図であり、図9は、図8のH−H´線断面図である。
【0066】
図8及び図9において、液晶装置100では、本発明に係る「一対の基板」の一例としてのTFTアレイ基板10及び対向基板20が対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板等の基板からなり、対向基板20は、例えば、石英基板、ガラス基板等の基板からなる。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、本発明に係る「電気光学物質」の一例としての液晶を含んでなる液晶層50が封入されている。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に配置されたシール材52により相互に接着されている。
【0067】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。画像表示領域10a及び画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が配置されている。尚、ギャップ材を、画像表示領域10a等に配置されるものに加えて若しくは代えて、シール材52に混入するようにしてもよい。
【0068】
図8において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aを規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0069】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。この一辺に沿ったシール領域よりも内側にサンプリング回路7が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿ったシール領域の内側の額縁領域に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。
【0070】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。更に、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0071】
図9において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。複数の走査線及び複数のデータ線は、相互に交差して配線され、これら交差に対応して画素に対応する画素部がマトリックス状に設けられている。この積層構造の詳細な構成については図9では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンでアイランド状に形成されている。
【0072】
画素電極9aは、後述する対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0073】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えば直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。また、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、カラーフィルター(図示せず)が形成されている。
【0074】
遮光膜23上に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向して形成されている。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0075】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面とは反対側の面上には、上述した有機EL装置200が配置されている。本実施形態に係る液晶装置100は、上述した有機EL装置200を具備してなるので、視覚制限の有無を比較的容易に切り替えることができる。
【0076】
尚、図8及び図9に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104、サンプリング回路7等に加えて、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0077】
尚、液晶装置100における対向基板20を、上述した有機EL装置200における透明基板210aとして用いてよい。即ち、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面とは反対側の面上に、発光部240等が形成されてよい。このように構成すれば、例えば部品点数を減らすことができ、実用上非常に有利である。
【0078】
<電子機器>
続いて、図10及び図11を参照しながら、上述の液晶装置100を具備してなる電子機器の例を説明する。
【0079】
図10は、上述した液晶装置100が適用されたモバイル型のパーソナルコンピューターの斜視図である。図10において、コンピューター1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、上述した液晶装置100と同様の構成を有する液晶装置1005を含んでなる液晶表示ユニット1206とから構成されている。液晶表示ユニット1206は、液晶装置100の背面にバックライトを付加することにより構成されている。
【0080】
次に、上述した液晶装置100を携帯電話に適用した例について説明する。図11は、電子機器の一例である携帯電話の斜視図である。図11において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302と共に、半透過反射型の表示形式を採用し、且つ上述した液晶装置100と同様の構成を有する液晶装置1005を備えている。
【0081】
これらの電子機器においても、上述した液晶装置100を含んでいるため、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0082】
尚、図10及び図11を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビ、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた直視型の表示装置や、液晶プロジェクター等の投射型の表示装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0083】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う有機EL装置、電気光学装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
10…TFTアレイ、20…対向基板、50…液晶層、100…液晶装置、200、201…有機EL装置、210a、210b…透明基板、230…遮光部、240…発光部、241…有機EL層、242…上部透明電極、243…下部電極、244…下部透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された発光部と、
前記発光部の上層側に、前記発光部から所定間隔をあけて積層されると共に、前記基板上で平面的に見て、少なくとも前記発光部を覆う遮光層と
を備え、
前記発光部は、
発光層と、
前記発光層の上に積層された第1透明層と
を含む
ことを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記発光部は、アイランド状にパターニングされていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記発光部は、前記発光層の下に積層された反射層を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記発光部は、前記発光層の下に積層された第2透明層を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記基板上で平面的に見て、前記遮光層の幅は、前記発光部の幅より2sだけ広く、
前記所定間隔は、関係式
12度≦Tan−1(s/d)≦38度
但し、dは前記所定間隔
を満たす
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記基板上で平面的に見て、前記遮光層の幅は、前記発光部の幅より2sだけ広く、
前記所定間隔は、関係式
13度≦Tan−1(s/d)≦55度
但し、dは前記所定間隔
を満たす
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記基板上で平面的に見て、前記遮光層の幅は、前記発光部の幅より2sだけ広く、
前記所定間隔は、関係式
13度≦Tan−1(s/d)≦67度
但し、dは前記所定間隔
を満たす
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項8】
一対の基板と、
前記一対の基板間に挟持された電気光学物質と、
前記一対の基板の外表面に配置された、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL装置と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−82098(P2011−82098A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235285(P2009−235285)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】