説明

服用物容器

【課題】服用物容器の複室の連通を阻止し、長期にわたり内容物の性能を維持する。
【解決手段】服用物容器10は、服用物袋20と、挟み具22とを備える。服用物袋20は、複数の空間130,134を有する。挟み具22は服用物袋20を挟む。隣り合う2つの空間の間は、服用物袋20の外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されている。服用物袋20は、挟み具22によって挟まれることにより弾性変形するものである。空間のうち少なくとも1つである嚥下補助物質収容室130に嚥下補助物質140が収容されている。空間のうち少なくとも1つである服用物収容室134に服用物180が収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服用物容器に関し、さらに詳しくは、長期にわたり性能を維持できる服用物容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複室型容器を開示する。この複室型容器は、複数の空間を互いに連通可能に区画したものである。これらの空間は、外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されている。これらの空間のいずれかに粉粒状剤が密封状態で収容されている。他の空間には濃厚流動物質が密封状態で収容されている。各空間を互いに連通させて、粉粒状剤と濃厚流動物質とを集合させ混合したのち、いずれかの空間に設けた取出し口より混合物を取出し可能である。
【0003】
特許文献1に開示された容器によれば、極めて簡単な操作で粉粒状剤を服用することができる。しかも、特許文献1に開示された複室型容器によれば、服用に対する患者の抵抗感を大幅に減じることができる。
【0004】
特許文献2は、弱シールにより仕切られた複数の空間を有する容器を開示する。この容器は、収容室と区画室とを有する。この容器の外周は密封されている。この容器は、強シール部と弱シール部とを有する。強シール部は、複数の区画室を区画するように容器内部に形成されている。それらの区画室には収容室と連通する開口部が設けられている。弱シール部は、液が漏れないようその開口部を閉塞する。弱シール部は剥離可能である。弱シール部の帯幅の少なくとも一部は、弱シール部がない状態で剥離圧を負荷して測定される開口部中間部分の対向する容器壁間の距離以下である。
【0005】
特許文献2に開示された容器によれば、製造時や保存時に、各収容室を確実に隔離状態で維持できる。特許文献2に開示された容器によれば、使用時にすべての収容室を容易に連通させることができる。しかも特許文献2に開示された容器は製造が容易である。
【0006】
【特許文献1】特開平10−234820号公報
【特許文献2】特開2002−191673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に開示された容器では、長期にわたる保存が容易でないという問題点がある。保存期間があまりに長期にわたると、弱シール部がシール能力を喪失することがあるためである。
【0008】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、長期にわたり性能を維持できる服用物容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図面を参照して本発明の服用物容器を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、服用物容器10は、服用物袋20と、挟み具22とを備える。服用物袋20は、複数の空間130,132,134を有する。挟み具22は服用物袋20を挟む。隣り合う2つの空間の間170,171,172,173は、服用物袋20の外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されている。服用物袋20は、挟み具22によって挟まれることにより弾性変形するものである。空間のうち少なくとも1つである嚥下補助物質収容室130に嚥下補助物質140が収容されている。空間のうち少なくとも1つである服用物収容室134に服用物180が収容されている。挟み具22が、挟み部210と、付勢部32とを有する。挟み部210は、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134との間を挟む。付勢部32が、挟み部210が服用物袋20を挟む力を付勢する。「付勢」は、力を増加させることを意味する。
【0011】
嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134との間を挟み部210が挟んでいるので、そこが挟まれていない場合に比べ、隣り合う2つの空間の間170,171,172,173の閉塞能力が劣化したときに、嚥下補助物質140が服用物収容室134内に漏れる可能性が低くなる。さらに、挟み部210が服用物袋20を挟む力を付勢部32増加させるので、付勢部32によって付勢されていない場合に比べ、挟み部210が挟む力は大きくなる。その力が大きくなるので、付勢部32によって付勢されていない場合に比べ、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134との間を挟むための力を挟み部210が失うまでの期間は長くなる。その期間が長くなるので、長期にわたり性能を維持できる。
【0012】
また、上述した室間部分400が折り曲げられていることが望ましい。室間部分400は、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134との間である。この場合、挟み部210が、折り曲げられた室間部分400を挟む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期にわたり性能を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる服用物容器10の一部破断図である。図2は、本実施形態にかかる服用物袋20の一部破断図である。図3は、本実施形態にかかるクリップ30の斜視図である。図4は、本実施形態にかかる服用物容器10の製造手順を示す図である。図5は、本実施形態にかかる服用物容器10の使用方法を示す図である。
【0017】
図1を参照しつつ、服用物容器10について説明する。本実施形態にかかる服用物容器10は、服用物袋20と、挟み具22とを備える。服用物袋20は、薬剤180とゼリー140とを収容する。挟み具22は、二つ折りにされた服用物袋20を挟む。
【0018】
図2を参照しつつ、服用物袋20について説明する。本実施形態にかかる服用物袋20は、1枚の樹脂製シート120(ただし、低密度ポリエチレンなどのように、折り畳みなどが可能な程度に柔らかいもの。)を二つ折りにし、その外周部分を互いに貼り合わせることで構成される。本実施形態にかかる服用物袋20には、嚥下補助物質収容室130と、空室132と、服用物収容室134とが形成されている。嚥下補助物質収容室130には、嚥下補助物質の一種として、ゼリー140が収容されている。空室132は空室である。服用物収容室134には、服用物の一種として、散剤や顆粒剤といった薬剤180が収容されている。
【0019】
嚥下補助物質収容室130と空室132と服用物収容室134とは、外部空間に対して気密性を保つように構成されている。嚥下補助物質収容室130と空室132と服用物収容室134とは、一列に並んでいる。
【0020】
なお、嚥下補助物質収容室130と空室132と服用物収容室134とには、薬剤180やゼリー140に影響を与えない気体(例えば窒素ガス)が、必要に応じて封入してある。
【0021】
本実施形態において、嚥下補助物質収容室130と、空室132と、服用物収容室134とは、外周シール部分174と、第1密封シール部分176と、第2密封シール部分178とによって囲まれている。これらは、樹脂製シート120が貼り合された部分である。これらは、貼り合わせ強度が同一である。ただし、後述するように、本実施形態においては、第1密封シール部分176および第2密封シール部分178よりも、外周シール部分174の方が先に貼り合わされる。
【0022】
嚥下補助物質収容室130と空室132との間は、第1仕切部分170によって仕切られている。空室132と服用物収容室134との間は、第2仕切部分172によって仕切られている。第1仕切部分170と第2仕切部分172とは、樹脂製シート120の貼り合せ部分のうち、隣り合う2つの空間の間にあたる部分である。第1仕切部分170と第2仕切部分172との強度は、外周シール部分174、第1密封シール部分176、あるいは第2密封シール部分178との強度よりも低くなっている。これは、樹脂製シート120を貼り合せる際、接着剤として用いる素材を別のものとすることで可能になる。その結果、第1仕切部分170は、嚥下補助物質収容室130を服用物袋20の外から押したとき、嚥下補助物質収容室130にゼリー140が与える力によって容易に剥離する。第2仕切部分172は、第1仕切部分170が剥離し、かつ、ゼリー140が空室132の中に充填された後、空室132を服用物袋20の外から押すと、空室132にゼリー140が与える力によって容易に開く。すなわち、嚥下補助物質収容室130と空室132との間、および、空室132と服用物収容室134との間は、服用物容器10の外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されている。
【0023】
本実施形態においては、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134との間が室間部分400である。本実施形態において室間部分400に含まれるのは、第1仕切部分170と、空室132と、第2仕切部分172とである。
【0024】
服用物収容室134の側には、V字形の切り口からなる切込部150が形成されている。服用物収容室134のうち、切込部150がせん断力を受けることによって開口となる部分が、開口形成予定部160である。
【0025】
再び図1を参照しつつ、挟み具22について説明する。挟み具22は、クリップ30と、付勢部材32とを有する。本実施形態にかかるクリップ30は、合成樹脂により一体形成されたものである。付勢部材32は、クリップ30の一端に挟まれる。クリップ30の他端が上述した室間部分400を挟む。付勢部材32がクリップ30の一端に挟まれることによって、クリップ30の一端に付勢部材32からの反力がかかる。これにより、クリップ30が室間部分400を挟む力は増加する。
【0026】
付勢部材32について説明する。本実施形態において、付勢部材32の形状は錐台の一端に突起40が設けられたものである。「錐台」とは、先端部分が切り取られた錐体のことである。付勢部材32がこのような形状をしているので、クリップ30に付勢部材32をはめ込み始めた時には、はめ込みが容易である。付勢部材32が十分はめ込まれると、付勢部材32はクリップ30にしっかり挟まれる。
【0027】
突起40は、クリップ30の端からはみ出している。クリップ30から付勢部材32を取り外そうとする際、突起40を押すと、付勢部材32はクリップ30から容易に外れる。
【0028】
図3を参照しつつ、クリップ30について説明する。クリップ30は、挟み部210と、支点部212とを有する。挟み部210は、服用物袋20のうち室間部分400を挟む。支点部212は、挟み部210同士の間に設けられる。支点部212は、てこの支点となる。なお、図1から明らかなように、付勢部材32は、挟み部210のうち、支点部212に対して、室間部分400を挟んでいる箇所とは反対側の箇所で挟まれる。これにより、付勢部材32がクリップ30に反力を与えるので、室間部分400を挟む力の低下は防止される。
【0029】
図4を参照しつつ、本実施形態にかかる服用物容器10の製造手順を説明する。まず、樹脂製シート120を二つ折りにし、外周シール部分174と第1仕切部分170と第2仕切部分172とを貼り合わせる(S300)。
【0030】
外周シール部分174と第1仕切部分170と第2仕切部分172とが貼り合わされると、その樹脂製シート120は、さらに二つ折りにされる。その結果、素材となった樹脂製シート120は四つ折りにされることとなる。その樹脂製シート120は、クリップ30で挟まれる(S302)。挟まれるのは、上述した室間部分400である。クリップ30が上述したような構造となっているので、クリップ30で挟まれた樹脂製シート120を、クリップ30を下にし、かつ、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134とを上にするよう、立てることが可能になる。
【0031】
四つ折りにされた樹脂製シート120がクリップ30で挟まれると、クリップ30を下にし、かつ、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134とを上にするよう、それを立てる。それが立てられると、上から、嚥下補助物質収容室130にゼリー140を充填し、服用物収容室134に薬剤180を充填する。充填終了後、第1密封シール部分176と第2密封シール部分178とを貼り合わせる(S304)。
【0032】
第1密封シール部分176と第2密封シール部分178とが貼り合わされると、クリップ30の間に付勢部材32を挟む(S306)。これにより、服用物容器10が完成する。
【0033】
図5を参照しつつ、薬剤180を服用物容器10から取り出して服用するための手順を説明する。
【0034】
最初に、クリップ30から付勢部材32が外される。付勢部材32が外されると、服用物袋20からクリップ30が外される。クリップ30が外されると、介護者などが嚥下補助物質収容室130を服用物袋20の外部から押して、その嚥下補助物質収容室130の内圧により第1仕切部分170を開く。第1仕切部分170が開かれると、ゼリー140が空室132に押し出される。押し出されたゼリー140は、空室132の中に拡がる。
【0035】
ゼリー140が空室132に押し出された後、介護者などが、嚥下補助物質収容室130から空室132の方へ服用物袋20をしごく。これにより、ゼリー140に圧力が加えられ、第2仕切部分172が開かれる。第2仕切部分172が開かれると、ゼリー140が服用物収容室134に押し出される。ゼリー140が服用物収容室134に押し出されると、介護者などが、切込部150にせん断力を加え、服用物収容室134に開口を設ける。開口が設けられると、介護者などが患者490の口をそこにあて、嚥下補助物質収容室130から空室132の方向へ服用物袋20をしごく。これにより、ゼリー140と薬剤180とが患者490の口の中に入る。図5は、患者490が服用物袋20をしごいている状況を示す。
【0036】
以上のようにして、本実施形態にかかる服用物容器10によれば、薬剤180を容易に嚥下することができる。また、長期にわたり性能を維持できる。すなわち、服用物容器10の製造後(たとえば、服用物容器10の保管中や輸送中)の、劣化速度(たとえば、第1仕切部分170や第2仕切部分172が劣化する速度)が低下する。さらに、従来の容器に比べ、持ち運びが容易になる。クリップ22を容易に掴み得るためである。
【0037】
さらに、本実施形態にかかる服用物容器10を用いれば、薬剤の安定性を懸念する必要がなくなる。薬剤は化学物質である。化学物質同士が接触すると、多くの場合に化学反応が生じる。化学反応が生じることにより、薬剤は薬効を失う。このため、多くの場合、複数の薬剤を混合状態で保存することはできない。混合状態でそれらを保存する場合、それらの薬効が失われないか予め調べる必要がある。本実施形態にかかる服用物容器10には複数の空間が設けられている。それらの空間に1種類ずつ薬剤を収容することと、複数の薬剤を別々に保存することとは実質上同一である。これが、本実施形態にかかる服用物容器10を用いれば薬剤の安定性を懸念する必要がなくなる理由である。薬剤の安定性を懸念する必要がなくなると、複数の薬剤の薬効が失われていないか予め調べる必要もなくなる。
【0038】
なお、本実施形態にかかる服用物容器10において、付勢部材32の形態は特に限定されない。例えば、付勢部材32の形状は円柱や角柱であってもよい。
【0039】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0040】
図6は、本実施形態にかかる服用物容器12の一部破断図である。本実施形態にかかる服用物容器12は、服用物袋23と、挟み具25とを備える。服用物袋23は、薬剤180とゼリー140とを収容する。挟み具25は、後述する仕切部分171を挟む。
【0041】
服用物袋23には、嚥下補助物質収容室130と、服用物収容室134とが形成されている。嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134とは、外部空間に対して気密性を保つように構成されている。なお、第1実施形態と異なり、空室132は形成されていない。
【0042】
本実施形態において、嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134とは、外周シール部分174と、第1密封シール部分176と、第2密封シール部分178とによって囲まれている。第1実施形態と同様に、第1密封シール部分176および第2密封シール部分178よりも、外周シール部分174の方が先に貼り合わされる。
【0043】
嚥下補助物質収容室130と服用物収容室134との間は、仕切部分171によって仕切られている。仕切部分171の強度は、外周シール部分174、第1密封シール部分176、あるいは第2密封シール部分178との強度よりも低くなっている。その結果、仕切部分171は、嚥下補助物質収容室130を服用物袋23の外から押したとき、嚥下補助物質収容室130にゼリー140が与える力によって容易に開く。
【0044】
上述した挟み具25は、挟み部材31と、付勢部材35とを有する。本実施形態にかかる挟み部材31は、U字のような形状をしている。本実施形態にかかる付勢部材35は、ゴム輪である。付勢部材35は、挟み部材31の一端にはめ込まれる。これにより、挟み部材31が仕切部分171を挟む力は増加する。
【0045】
なお、その他の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、ここではその詳細な説明を繰り返さない。
【0046】
薬剤180を服用物容器12から取り出して服用するための手順を説明する。最初に、挟み部材31から付勢部材35が外される。付勢部材35が外されると、服用物袋23から挟み部材31が外される。挟み部材31が外されると、介護者などが嚥下補助物質収容室130を服用物袋23の外部から押して、その嚥下補助物質収容室130の内圧により仕切部分171を開く。仕切部分171が開かれると、ゼリー140が服用物収容室134内に押し出される。押し出されたゼリー140は、服用物収容室134の中に拡がる。これ以降の手順は第1実施形態と同様である。
【0047】
以上のようにして、本実施形態にかかる服用物容器12によれば、薬剤180を容易に嚥下することができる。また、長期にわたり性能を維持できる。
【0048】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0049】
図7は、本実施形態にかかる服用物容器14の一部破断図である。本実施形態にかかる服用物容器14は、服用物袋29と、挟み具27とを備える。挟み具27は、二つ折りにされた服用物袋29を挟む。服用物袋29は、後述する第1仕切部分173の真ん中付近で2つ折にされ、挟み具27で挟まれる。
【0050】
図8を参照しつつ、服用物袋29について説明する。本実施形態にかかる服用物袋29も、1枚の樹脂製シート120を二つ折りにし、その外周部分を互いにはり合わせることで構成される。本実施形態にかかる服用物袋29には、服用物収容室134と、第1袋固定室136と、第2袋固定室138とが形成されている。服用物収容室134には、薬剤180が収容されている。第1袋固定室136と第2袋固定室138との境界に、第2仕切部分175が形成されている。第2仕切部分175と後述する第1密封シール部分176とによって、第1袋固定室136と第2袋固定室138とを貫通するように、補助物質袋40が固定されている。補助物質袋40には、嚥下補助物質の一種として、ゼリー140が収容されている。
【0051】
服用物収容室134と、第1袋固定室136と、第2袋固定室138とは、外部空間に対して気密性を保つように構成されている。服用物収容室134と、第1袋固定室136と、第2袋固定室138とは、一列に並んでいる。
【0052】
服用物収容室134と、第1袋固定室136と、第2袋固定室138とには、薬剤180やゼリー140に影響を与えない気体(例えば窒素ガス)が、必要に応じて封入してある。
【0053】
本実施形態において、服用物収容室134と、第1袋固定室136と、第2袋固定室138とは、外周シール部分174と、第1密封シール部分176と、第2密封シール部分178とによって囲まれている。これらは、樹脂製シート120が貼り合された部分である。これらは、貼り合わせ強度が同一である。ただし、本実施形態においては、第1密封シール部分176および第2密封シール部分178よりも、外周シール部分174の方が先に貼り合わされる。
【0054】
服用物収容室134と第1袋固定室136との間は、第1仕切部分173によって仕切られている。第1仕切部分173と上述した第2仕切部分175とは、樹脂製シート120の貼り合せ部分のうち、隣り合う2つの空間の間にあたる部分である。第1仕切部分173の強度は、外周シール部分174、第1密封シール部分176、あるいは第2密封シール部分178との強度よりも低くなっている。これは、樹脂製シート120を貼り合せる際、接着剤として用いる素材を別のものとすることで可能になる。その結果、第1仕切部分173は、第1袋固定室136あるいは第2袋固定室138を服用物袋29の外から押したとき、ゼリー140が与える力によって容易に剥離する。本実施形態においては、第1仕切部分173が室間部分にあたる。
【0055】
これに対し、本実施形態においては、第2仕切部分175の強度は、外周シール部分174、第1密封シール部分176、あるいは第2密封シール部分178とほぼ同様の強度である。
【0056】
なお、本実施形態においては、第1仕切部分173が室間部分を兼ねている。このため、第1仕切部分173の真ん中が二つ折りにされ、挟み具27がそこを挟む。
【0057】
再び図7を参照しつつ、挟み具27について説明する。挟み具27は、クリップ30と、付勢部材37とを有する。本実施形態にかかる付勢部材37は、第1実施形態に係る付勢部材32と同様に、クリップ30の一端に挟まれる。これにより、クリップ30が室間部分400を挟む力は増加する。
【0058】
なお、その他の構成と薬剤180を服用物容器14から取り出して服用するための手順とは、第1実施形態と同様である。したがって、ここではその詳細な説明を繰り返さない。
【0059】
以上のようにして、本実施形態にかかる服用物容器14によれば、薬剤180を容易に嚥下することができる。また、長期にわたり性能を維持できる。また、第1実施形態に係る服用物容器10と同様、従来の容器に比べ、持ち運びが容易になる。
【0060】
上述した服用物容器10,12,14は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。これらは、樹脂製シート120の材質を上述した実施形態に限定するものではない。これらは、樹脂製シート120の形状、各空間の形状、開口の形状、それらの寸法、それらの構造、およびそれらの配置などを上述した実施形態に限定するものでもない。本実施形態で説明した服用物容器10,12,14は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0061】
また、服用物袋20,23,29は、1枚の樹脂製シート120を2つ折りにして貼り合わせたものに限定されない。例えば、2枚の樹脂製シート120を貼り合わせて構成したものであってもかまわない。1本のチューブの所々を貼り合わせて構成したものであってもかまわない。さらに、クリップ30に挟まれた際の室間部分400の形態は、図1に示したものに限定されない。たとえば、室間部分400は4度以上折られていてもよい。室間部分400はロールケーキ(英語で言う” Swiss roll”のこと)のように巻かれてもよい。また、樹脂製シート120に代えて、表面と裏面とに合成樹脂の層が形成されているアルミのフィルムが用いられてもよい。
【0062】
また、上述した服用物袋20,23,29では、切込部150をV字形の切り口で構成したが、本発明の切込部はV字以外の形状であってもよい。
【0063】
また上記の実施形態では、服用物が散剤や顆粒剤などの薬剤180であり、嚥下補助物質がゼリー140である場合について説明したが、本発明に適用される服用物や嚥下補助物質が他のものであってもよいことは、いうまでもない。たとえば、薬剤180以外の服用物の例には、いわゆるプラセボ(プラシーボとも言う)や、粉末状になった食物がある。嚥下補助物質の例には、精製水や水溶液などといった物質がある。なお、嚥下補助物質が滅菌された状態で収容されていることが望ましいのは言うまでもない。
【0064】
また、上述した実施形態では挟み部がクリップと付勢部材とに分かれていたが、これらは一体となっていてもよい。これらが一体となっているものの具体例には、クリップ30の中に芯材として付勢部材が仕込まれているものがある。
【0065】
また、図4に示すS304のステップとS306のステップとの順序は入れ替えられてもよい。
【0066】
また、隣り合う2つの空間の間170,171,172,173の構造は、上述したものと異なっていてもよい。例えば、隣り合う2つの空間の間170,171,172,173の間には、薄い膜が形成されていてもよい。このような膜は、樹脂製シート120に膜となる部材を挟み、それらを貼り合わせることで形成できる。ただし、隣り合う2つの空間の間170,171,172,173の構造は、服用物袋20,23の外部から加えられる力によってそれらが連通可能な状態で閉塞される構造でなくてはならない。この「服用物袋20,23の外部から加えられる力」は、隣り合う2つの空間の間170,171,172,173に直接かかる力であってもよいし、それらのいずれかに間接的にかかる力であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる服用物容器の一部破断図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる服用物袋の一部破断図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるクリップの斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる服用物容器の製造手順を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる服用物容器の使用状況を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる服用物容器の一部破断図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる服用物容器の一部破断図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる服用物袋の一部破断図である。
【符号の説明】
【0068】
10,12,14 服用物容器
20,23 服用物袋
22,25,27 挟み具
30 クリップ
31 挟み部材
32,35,37 付勢部材
40 補助物質袋
120 樹脂製シート
130 嚥下補助物質収容室
132 空室
134 服用物収容室
136 第1袋固定室
138 第2袋固定室
140 ゼリー
150 切込部
160 開口形成予定部
170,173 第1仕切部分
171 仕切部分
172,175 第2仕切部分
174 外周シール部分
176 第1密封シール部分
178 第2密封シール部分
180 薬剤
210 挟み部
212 支点部
400 室間部分
490 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間を有する服用物袋と、
前記服用物袋を挟む挟み具とを備え、
隣り合う2つの前記空間の間は、前記服用物袋の外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されており、
前記服用物袋が、前記挟み具によって挟まれることにより弾性変形する服用物容器であって、
前記空間のうち少なくとも1つである嚥下補助物質収容室に嚥下補助物質が収容されており、
前記空間のうち少なくとも1つである服用物収容室に服用物が収容されており、
前記挟み具が、
前記嚥下補助物質収容室と前記服用物収容室との間を挟む挟み部と、
前記挟み部が前記服用物袋を挟む力を付勢する付勢部とを有することを特徴とする、服用物容器。
【請求項2】
前記嚥下補助物質収容室と前記服用物収容室との間である室間部分が折り曲げられており、
前記挟み部が、折り曲げられた前記室間部分を挟むことを特徴とする、請求項1に記載の服用物容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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