説明

木材および木材製品のための表面処理

本発明は、ビフェントリンなどの合成ピレスロイドを用いる木材の表面処理のための方法および装置、ならびにこれら表面処理を用いて製造された木材製品を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材処理、およびより詳細には、合成ピレスロイドを用いる木材の表面処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフェントリン(Bifenthrin)は、非シアノピレスロイドとして分類される合成ピレスロイド殺虫剤/ダニ駆除剤である。この活性成分は、接触および胃への作用の両方を介して、害虫を標的するのに有効である。ほとんどの合成ピレスロイド同様、ビフェントリンは、コレオプテラ(Coleoptera)、ディプテラ(Diptera)、ヘテロプテラ(Heteroptera)、ヒメノプテラ(Hymenoptera)、ホモプテラ(Homoptera)、イソプテラ(Isoptera)、レピドプテラ(Lepidoptera)、オルソプテラ(Orthoptera)を含む広範囲にわたる害虫ならびに多種のアカリナ(Acarina)に対して活性がある。ビフェントリンは、広範囲に渡る害虫の制御のために、世界中の多くの国で、現在登録されているものである。
【0003】
ビフェントリンは、多くの産業において、幅広く用いられている。例えば、綿花、穀物、芝、害虫制御、花、家庭菜園および蚊の制御など。しかし、材木産業においては、これまで用いられたことがない。
試験により、材木産業における標準的な方法を用いる場合に、オーストラリアで最も経済的に重要な影響を持つシロアリの種であるコプトテルメス・アキナキフォルミス(Coptotermes acinaciformis)、およびオーストラリアおよび世界中で最も貪欲な種であるマストテルメス・ダルウィニエンシス(Mastotermes darwiniensis)から材木を保護するのには、非常に低濃度のビフェントリンしか必要とされないことが立証されている。当該濃度は、それぞれ、5および20g/m3である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーストラリアおよび全世界における標準的な処理法において、材木へ保存剤をある程度浸透させることが現在、必要とされている。これは、処理容器および高価な末端部およびコンピュータ化された装置を必要とする、真空圧、真空-真空システムにより、達成することができる。材木を処理するのに必要とされるプロセスは、製品によって変わるが、木材を処理するのには、少なくとも45分かかる。保存剤の浸透は、散布によっても達成することができるが、このプロセスは、さほど高価でない装置を含むものであるが、もっと時間がかかり、高レベルの蓄積の維持を要する。木材の湿気含量は、散布時間を制御するのに最も重要なパラメータの一つである。湿った木材は、市場に出るまでに(within commercial expectancy)散布を達成することが必要とされる。90mm厚のラディアタ松の生の白太材の完全な浸透は、4〜8週間で達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の対象および概要
従って、ビフェントリンなどの合成ピレスロイドを用いる木材の表面処理のための方法および装置、ならびに、これらの表面処理を用いて製造された木材製品を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
本発明の最良の形態および他の具体例
本発明がなされるまで、シロアリの攻撃から材木を十分に保護することには、白太材に十分な浸透を付与する処理が必要とされていた。これは、高温および紫外線(UV)光に曝された場合に、他の利用可能な活性成分は、極めて迅速に分解してしまうという事実によるものである。浸透は、当該活性成分(「活性成分」)を、分解から保護するために必要とされた。1990年代に、材木に浸透された、最も一般的に用いられた活性成分は、ペルメトリンである。ペルメトリンは、25℃を超える温度に曝された場合に、分解することおよび、UV光に対して非常に抵抗性が低いことが示されている。つまり、ペルメトリンを用いる場合、これを材木に浸透させることが必要とされ、さもなければ、当該製剤は分解し、そして材木を保護しないことになった。同様の適用において試みられた、デルタメトリンなどの他の活性成分は、処理する側および建築する側の両方において、健康および安全性(「OH&S」)の問題を引き起こすこと、およびUV光に曝された場合に、分解することも見出された。1998年〜1999年において、デルタメトリンを用いて処理された材木を用いてされたOH&S研究において、処理された材木を扱った全作業者は、知覚異常(parasthesia)または皮膚の刺激に悩まされた。この問題は非常に重大であったので、デルタメトリンの使用を、利用性なきものにした。
【0007】
広範なOH&S試験により、ビフェントリンの化学構造のために、ビフェントリンで処理された材木に曝された場合にも、皮膚の刺激を全く生じないことが確認された。ビフェントリンを用いてなされた広範な試験により、UVまたは熱のいずれかに曝された場合の分解から当該活性成分を保護するのに、さほどの浸透は必要とされないことが示された。この高い安定性が、ビフェントリンの撥水効果と合わさって、材木の表面処理のみ−これは、さほどの浸透を要しないものである−を可能とすることになった。
【0008】
このような表面適用における使用を可能とするビフェントリンの他の利点は、材木と強い結合を形成する能力であり、ビフェントリンが水に実質上不溶性であるという事実である。ビフェントリンの結合補足効果は、ペルメトリンのものよりも、かなり大きい。結合および水不溶性のこれら2つの利点のために、温度およびUVに曝された場合の前記安定性と相まって、雨、日光、温度または作業状況下に曝された場合の材木において、当該化学物質の定着がもたらされる。過去に用いられた他の化学物質のいずれも、単なる表面処理を行うことを許容するこのような特性を有さない。
【0009】
近年の研究により、市販サイズのラディアタ松白太材にビフェントリンを非常に短時間の浸す(4秒)ないし非常に低濃度でスプレーすることにより、表面的にビフェントリンを適用することにより、シロアリの攻撃から材木が保護されることが、立証された。保護を達成するのに必要とされる濃度は、コプトテルメス・アキナキホルミス(Coptotermes acinaciformis)およびマストテルメス・ダルウィニエンシス(Mastotermes darwiniensis)それぞれに関し、35×90mmのラディア松の表面に、4および23g/m3で適用されるものである。これらの研究は、AWPAプロトコールにより記載されるドラムテスト(drum test)を用いて行った。表1は、試験標本の検査において用いた評価スケールを示す。表2および3は、マストテルメスおよびコプトテルメスそれぞれに曝した標本の検査の結果を示す。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
住宅枠建築実験を、ビフェントリン表面処理の効果を立証するための試験において、組み込んだ。サンプルの末端は、処理しなかった。試験用の枠を120,000匹のシロアリに曝した。曝した6ヶ月後、全未処理の試験用の枠は攻撃されたが、処理した枠は、枠内部でのシロアリの活動の兆候を示さなかった。
【0014】
表面処理は、例えば、ディッピング、ローリング、ブラシがけ、散布、噴霧、およびスプレーがけにより適用することができる。これらのシステムは、製材所の別の領域でインラインにて、ないし製材所とは別個のプロセスとして、設置することができる。スプレーユニットの位置は、製造ラインまたは所定の製材所のラインのレイアウトに依存する。製材所において長手方向および横断方向のスプレーユニットが企画される。スプレーがけは、例えば、ストレス等級付け(stress grading)後に、直線状のスプレー機を用いる適用により、なすことができる。材木を次いでコンベヤーに配置し、等級づけし、次いで手(または機械)でマークづけする。等級づけの間にマークされたボードを、スキャナーで検出し、次いで適当な長さへと、デッカーのこぎり(the docker saw)により切断する。横断方向のスプレーがけは、デッカーのこぎり作業の後になし得る操作である。ボードの末端を処理するために、エンディングロールを所望により用いてもよい。
【0015】
ビフェントリンは、懸濁濃縮物、乳化濃縮物、ミクロエマルジョンを含む調製物として、およびダストとして用いることができる。ビフェントリンは、濃縮形態で適用することができ、または水、有機溶媒、別個の源からの油、ディーゼル、ガソリン、ペトロレウムおよび他の非極性溶媒が含まれ得る様々なキャリア中に希釈して、適用することができる。
ビフェントリンの適用の間に、例えば、着色剤、難燃剤、撥水剤および樹脂などの添加剤を組み込むことができる。表4により、撥水剤の添加により、コプトテルメス・アキナキホルミスに対するビフェントリンの撥水効果が妨害されなかったことが示される。
【0016】
【表4】

【発明の効果】
【0017】
本発明の利点は、以下の通りである。
1.低濃度の化学物質使用が達成される。
2.本発明は、適用に際して、高価な装置を必要としない。
3.本発明は、合成ピレスリンを製材所にてインラインプロセスとして、または単独のプロセスとして、適用することを可能とする。
4.本発明は、従来の処理に伴う操作コストを削除する。
5.本発明により処理された木材は、処理後の再乾燥を必要としない。通常のプロセスは、最終的な使用が組み立てである場合に、再乾燥を必要とした。
6.最終製品に異なる特徴を付加するために、濃縮物または作用液に、添加剤を含ませることができる。これらの添加剤には、着色剤、難燃剤および撥水剤が含まれ得る。
【0018】
ここに、ラディアタ松を用いた実験を行ったが、他の松の種、他の軟質木材、硬質木材および広葉樹材木種、例えば、制限するものでなく、合板、ラミネート加工されたベニヤ板材、配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード、メディアム・デンシティ・ボード(MDF)、グルー・ラミネイティッド・ランバー(GlueLam)、フレークボードおよびプラスチック木材と称される工作および再構築木材製品を除外するものではない。
【0019】
表面処理の変更は、木材へのビフェントリンの部分的な導入である。この結果は、材木板または木材製品の断面周囲の被包、ないし部分のみの浸透である。前記同様の方法に従い行った試験は、これらのタイプの処理も、シロアリの攻撃から材木を保護するのに有効であることを、強く示唆する。表5は、ビフェントリンを部分的に浸透させた、市販サイズのラディアタ松において行った評価の結果を示す。
【0020】
【表5】

【0021】
表面の追加的保護が所望される場合、プレスされた製品を、これが冷却される前に表面にスプレーがけすることにより、処理することができる。製品の温かみが、適用された溶液を表面に深く染み込ませる暖-冷効果を生じる。表面処理は、冷却表面に対して行うこともできる。この場合、当該化学物質の浸透のための経路として、旋盤チェック(the lathe checks)によりなす。冷却表面にスプレーした場合、化学物質の浸透は、暖かい表面にスプレーする場合ほど良好ではないが、これは、化学物質の濃度を増加させること、吸収を増すこと、および表面をより湿らせること、溶液が表面にいっそうよく浸透するのを助ける界面活性剤および化学物質を添加することにより、改良および暖表面のスプレーがけにほぼ匹敵させることができる。
【0022】
表面の表面処理は、ディッピング、ローリング、ブラシがけ、浸潤、噴霧およびスプレーがけにより行うことができる。これらのシステムは、LVL、合板の別個の領域において、または工作および再構築木材製品を産生するあらゆる他の製作所において、インラインないし別個のプロセスとして、設置することができる。これは、製造ラインまたは所定の製作所のラインのレイアウトに依存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材木製品にビフェントリンの表面的処理を適用する工程を含む、材木製品の保存法。
【請求項2】
処理がスプレーがけである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
スプレーがけを製材所で行う、請求項2記載の方法。
【請求項4】
スプレーがけを、ストレス等級づけの後、直線状のスプレー機からの適用により行う、請求項3記載の方法。
【請求項5】
デッカーのこぎり作業後の、横断方向のスプレーがけによるビフェントリンの第2のスプレーがけの工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ビフェントリンを、キャリア中の調製物として適用する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ビフェントリンが、着色剤、難燃剤、撥水剤または樹脂から成る群のいずれか1種から選択される添加剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記適用を、製品を室温より高温に温めながら行う、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ディッピング、ローリング、ブラシがけ、散布または噴霧を含む群のいずれか1種により前記適用を行うものであり、ビフェントリンの濃度が製品の立方メートル当たり約4〜23gである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ビフェントリンの表面的処理を適用した材木表面を含む、殺虫/ダニ駆除特性を有する、材木製品。
【請求項11】
製品が、住宅用の材木または材料である、請求項10記載の製品。
【請求項12】
製品が、25℃を超える温度で、高い殺虫/ダニ駆除特性を保持する、請求項10記載の製品。
【請求項13】
さらに、製品立方メートル当たり約4gのビフェントリンを含む、請求項10記載の製品。
【請求項14】
さらに、ビフェントリンの適用の間に適用される添加剤を含む、請求項10記載の製品。
【請求項15】
添加剤が、着色剤、撥水剤、難燃剤または樹脂を含む群のいずれか1種から選択される、請求項14記載の製品。
【請求項16】
真空圧を用いることなくビフェントリンを適用して、浸透を成し遂げるものである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
さらに、製品の立方メートル当たり約23gまたはそれ以上のビフェントリンを含む、請求項10記載の製品。

【公表番号】特表2006−508823(P2006−508823A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555881(P2004−555881)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001621
【国際公開番号】WO2004/050316
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505211994)オズモース(オーストラリア)ピーティーワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】