説明

木材チップの乾燥方法

【課題】廃棄物ガス化溶融炉に投入する木材チップの水分含有量のばらつきを抑え、木材チップの投入による吹き抜け現象の抑制効果及びコークス使用量の低減効果を確実に得ることができるように、木材チップを乾燥させる方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物ガス化溶融炉3からの排ガスを燃焼室5で燃焼させ、ボイラ6により熱回収を行うと共に、ボイラ6で発生した蒸気を蒸気復水器13により復水させる廃棄物処理設備において、廃棄物ガス化溶融炉3に投入する木材チップ14を蒸気復水器13で発生する排熱を利用して乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をガス化溶融処理する廃棄物処理設備において、廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物と共に、あるいは単独で投入する木材チップを乾燥させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物や産業廃棄物などの廃棄物を処理する方法として、例えばコークス等を燃焼剤に用いて廃棄物を溶融する方法がある。溶融による廃棄物処理方法は、これまで埋め立てによって最終処分されていた焼却灰や不燃性ごみをスラグにして再資源化することができる。
【0003】
廃棄物の溶融処理としては、焼却炉で焼却し、その焼却灰や不燃成分を溶融炉で加熱溶融する方法がある。しかし近年においては、例えば廃棄物中の可燃成分の燃焼・ガス化、及び廃棄物中の灰分の加熱溶融を一つの炉内で行うことのできる廃棄物ガス化溶融炉が注目されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、CO排出量の低減を目標として、化石燃料に由来するコークスに代えて、木材炭化物などのバイオマス燃料を使用することが検討されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0004】
ところで、廃棄物は、一般廃棄物や産業廃棄物など、その種類が異なれば水分、可燃分、灰分などの成分比が異なる。さらに、同種であっても、廃棄物を回収する場所や時期などによって成分比に変動がある。そのため、廃棄物中の成分比によっては炉内に形成される充填物層(すなわち、廃棄物等の投入物や炉内生成物(乾留残渣等)による堆積層)において、炉内ガス(すなわち、燃焼用に吹き込んだ空気や炉内で発生する乾留ガスなど)の吹き抜け現象が発生する場合がある。
【0005】
充填物層に吹き抜け現象が発生した場合、炉内ガスと廃棄物の熱交換効率が悪化し、熱源となるコークス等の使用量が増加する。また、吹き抜け現象が発生すると、廃棄物の処理量の増減や、排ガス量や蒸気量の変動が大きくなるという問題が発生する。
【0006】
これに対して本願出願人は、先に特願2009−242046にて、廃棄物ガス化溶融炉に木材チップを投入して、炉内に形成される充填物層中に炭化物粒子層を形成する技術を提案した。木材チップは、投入後、炉下部のコークスベッド上面に降下するまでに炭化(乾燥・乾留)されることで炭化物粒子層を形成し、炉内のガス流れを整流化する効果を奏する。これにより、ガスの吹き抜け現象が抑制され、炉内での廃棄物とガスとの熱交換効率が向上し、乾燥・乾留熱源としてのコークス使用量を削減することができる。
【0007】
ところが、本願発明者らが上記技術に基づき数々の操業を行ったところ、木材チップを投入しても炭化物粒子層の形成が不十分で上記効果が小さい場合があり、その原因の一つとして、投入する木材チップの水分含有量のばらつきが影響していることがわかった。すなわち、木材チップの水分含有量が高いと炉内での炭化が不十分となり、炭化物粒子層が十分に形成されずに、吹き抜け現象の抑制効果及びコークス使用量の低減効果が得られない場合があった。そこで、水分含有量の高い木材チップについて、事前に乾燥させる方法の検討が必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−263410号公報
【特許文献2】特開2008−25929号公報
【特許文献3】特開2008−104973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようする課題は、廃棄物ガス化溶融炉に投入する木材チップの水分含有量のばらつきを抑え、木材チップの投入による吹き抜け現象の抑制効果及びコークス使用量の低減効果を確実に得ることができるように、木材チップを乾燥させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、廃棄物ガス化溶融炉からの排ガスを燃焼室で燃焼させ、ボイラにより熱回収を行うと共に、ボイラで発生した蒸気を蒸気復水器により復水させる廃棄物処理設備において、前記廃棄物ガス化溶融炉に投入する木材チップを前記蒸気復水器で発生する排熱を利用して乾燥させることを特徴とする。
【0011】
本発明において、蒸気復水器ではファンによって送風される空気との熱交換により蒸気を復水させ、熱交換により加温された空気を利用して木材チップを乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃棄物ガス化溶融炉に投入する木材チップの水分含有量のばらつきを抑えることができ、木材チップを炉内で確実に炭化させることができる。これにより、炉内に炭化物粒子層を十分に形成することができ、その炭化物粒子層によるガス整流効果が確実に得られることで、ガスの吹き抜け現象を抑制することができる。また、炉内での廃棄物とガスとのでの熱交換効率が向上し、乾燥・乾留熱源としてのコークス使用量を削減することができる。
【0013】
さらに、本発明において木材チップの乾燥は、廃棄物処理設備に元々ある蒸気復水器で発生する排熱を利用して行うので、新たに乾燥熱源を追加して準備することなく、木材チップを効率的に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した廃棄物処理設備を概念的に示す。
【図2】本発明の乾燥方法を実施するための乾燥装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明を適用した廃棄物処理設備を概念的に示す。
【0017】
廃棄物ピット1に貯留された廃棄物は、廃棄物クレーン2により廃棄物ガス化溶融炉(以下、単に「溶融炉」という。)3に炉上部より投入される。
【0018】
溶融炉3は、シャフト炉式の溶融炉であり、円筒状のシャフト部3aと、その下部の朝顔部3b、さらにその下部の炉底部3cとを備えてなる。一般的に、シャフト部3aの上部側は、主として廃棄物が乾燥及び予熱される乾燥・予熱帯を構成し、シャフト部3aの下部側から朝顔部3bの上部側は、主として廃棄物中の可燃分が熱分解・ガス化される熱分解ガス化帯を構成し、コークスベッド3gが形成される炉底部3cは、主として灰分や乾留残渣等が燃焼・溶融される燃焼溶融帯を構成する。
【0019】
炉底部3cには下段羽口3dが周方向に複数配置されている。この下段羽口3dからは空気又は酸素富化空気を供給し、コークスベッド3gを形成するコークス及び廃棄物の可燃性乾留残渣(固定炭素)を燃焼させて、これを溶融熱源とする。一方、上段羽口3eからは空気を供給し、主に廃棄物を燃焼させる。溶融した廃棄物は、出滓口3fより排出される。
【0020】
ガス化により生成した可燃性ガスは、溶融炉1の上部に接続されたガス管4を経由して燃焼室5へ導入されて燃焼される。燃焼後の高温の燃焼排ガスはボイラ6へ送られ、熱回収が行われる。熱回収後の燃焼排ガスは、減温塔7で温度を調整して集じん機8に通し、さらには触媒反応塔9で公害物質を除去した後、煙突10から排出される。
【0021】
ボイラ6で発生した蒸気は、蒸気タービン11に導入され、付帯する発電機12により発電する。蒸気タービン11で仕事を取り出した後の蒸気(低圧蒸気)は、蒸気復水器13により冷却され復水する。
【0022】
本発明では、蒸気復水器13で発生する排熱を利用して、溶融炉1に投入する木材チップを乾燥させる。図1の例では木材チップ14はチップピット15に保管されており、この木材チップ14を蒸気復水器13で発生する排熱を利用して乾燥させる。乾燥後の木材チップ14は、溶融炉1に直接投入されるか、あるいは廃棄物ピット1に一旦保管されて廃棄物と共に溶融炉1に投入される。溶融炉1には、廃棄物と木材チップのほか、コークスや石灰石などの副原料が投入される。
【0023】
溶融炉1に投入された木材チップは、炉内を降下するにしたがい、対向して流れる高温ガスにより廃棄物と共に乾燥・熱分解(乾燥・乾留)される。木材チップ及び廃棄物が熱分解・ガス化することによる乾留残渣は、図1に模式的に示すように、灰分や不燃成分とともにコークスベッド3gの上面に堆積して炭化物粒子層3hを形成する。炭化物粒子層3hは通気抵抗層として機能し、下段羽口3dから吹き込まれる空気や乾留ガスなどの炉内ガスが局所的に吹き抜けることを妨げ、ガスの流れを整流化する。
【0024】
図2は、木材チップを蒸気復水器で発生する排熱を利用して乾燥させる本発明の乾燥方法を実施するための乾燥装置の一例を示す。
【0025】
図2に示す蒸気復水器13は、ヘッド13aに供給された蒸気タービン11からの蒸気(低圧蒸気)を細管13bに流し、その下方に配置されたファン13cによって送風される空気との熱交換により蒸気を冷却し復水させる。この蒸気復水器13は、図2において紙面に垂直な方向に沿って所定の長さを有し、これに合わせてファン13cも所定の間隔をおいて複数台配置されている。
【0026】
蒸気復水器13の上方にネットコンベア16が配置されている。ネットコンベア16のコンベア面(コンベアベルト)16aは通気性のあるネット材で形成されており、コンベア面16a上に木材チップ14が載せられて搬送される。コンベアベルト16aによる搬送方向は、蒸気復水器13の長手方向と同じ、図2において紙面に垂直な方向である。
【0027】
蒸気復水器13においてファン13cによって送風される空気は、細管13bを流れる蒸気と熱交換して50℃程度に加温される。その加温された空気は、ネットコンベア16のコンベア面16aを通過し、コンベア面16a上の木材チップ14を乾燥させる。乾燥後の木材チップ14は、先に説明したように、溶融炉1に直接投入されるか、あるいは廃棄物ピット1に一旦保管されて廃棄物と共に溶融炉1に投入される。
【0028】
本発明者らの実験によると、水分含有量の多い木材チップの一種である間伐材(生木)の水分含有量は50〜60質量%程度であり、これをそのまま溶融炉に投入すると炉内での炭化が不十分となる場合があった。そこで、間伐材を雨等の影響を受けない場所で自然乾燥させたところ、24時間で水分含有量は20質量%まで低下し、その後ほぼ一定となった。この乾燥後の間伐材を木材チップとして溶融炉に投入したところ、炉内で十分に炭化され、炭化物粒子層の形成に寄与した。
【0029】
この実験結果から、溶融炉に投入する木材チップは、その水分含有量が20質量%程度となるまで乾燥させれば良いと言えるが、図2の乾燥装置を使用した本発明の乾燥方法によれば、50℃程度に加熱した空気にて1〜1.5時間程度で、水分含有量が50〜60質量%程度の木材チップを水分含有量が20質量%程度まで乾燥できることが確認された。すなわち、図2の乾燥装置において、蒸気復水器13上に配置されたネットコンベア16による木材チップ14の搬送時間を1〜1.5時間程度になるように調整すれば、木材チップ14を連続的に乾燥させることができる。なお、この搬送時間は、乾燥装置の大きさ、木材チップの量や性状などに応じて適宜設定する。
【0030】
本発明において使用する木材チップの形状及び大きさは、特に限定されないが、好ましい一例として、長さ(最長部)が100mm以下、幅が30mm以下、厚さが10mm以下である。木材チップの種類も特に限定されない。
【符号の説明】
【0031】
1 廃棄物ピット
2 廃棄物クレーン
3 廃棄物ガス化溶融炉(溶融炉)
3a シャフト部
3b 朝顔部
3c 炉底部
3d 下段羽口
3e 上段羽口
3f 出滓口
3g コークスベッド
3h 炭化物粒子層
4 ガス管
5 燃焼室
6 ボイラ
7 減温塔
8 集じん機
9 触媒反応塔
10 煙突
11 蒸気タービン
12 発電機
13 蒸気復水器
13a ヘッド
13b 細管
13c ファン
14 木材チップ
15 チップピット
16 ネットコンベア
16a コンベア面(コンベアベルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物ガス化溶融炉からの排ガスを燃焼室で燃焼させ、ボイラにより熱回収を行うと共に、ボイラで発生した蒸気を蒸気復水器により復水させる廃棄物処理設備において、前記廃棄物ガス化溶融炉に投入する木材チップを前記蒸気復水器で発生する排熱を利用して乾燥させることを特徴とする木材チップの乾燥方法。
【請求項2】
蒸気復水器ではファンによって送風される空気との熱交換により蒸気を復水させ、熱交換により加温された空気を利用して木材チップを乾燥させる請求項1に記載の木材チップの乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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