説明

木材改質装置

【目的】熱風を用いて、安定な操業ができて品質の優れた改質木材を高能率で生産することができる改良された木材改質装置を提供する。
【構成】密閉可能な木材収容室1と、燃焼用空気導入路4を有する燃焼ガス発生炉2と、該炉の少なくとも上部から該木材収容室1の上部に通ずる燃焼ガス供給路3と、該木材収容室1の底部から煙突に通ずるガス排出路6と、該木材収容室1の底部の複数位置からそれぞれ該燃焼用空気導入路4の複数位置に通ずる複数のガス回収路5とを備えて木材改質装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は木材乾燥装置に関し、特に伐採した木材を短期間で含有水分の安定した乾燥木材に転化させるための加熱乾燥装置に関する。
【0002】
【従来の技術】伐採したままの木材は水分を多量に含有しており、また昆虫やその卵等が付いているため、乾燥したり薬剤処理したりして殺虫、殺卵を行ったうえ、建材や家具用材として商品化されるのが普通であった。こうした木材の乾燥は、従来自然乾燥の手段がとられていたので、3〜5年という長期間、木材の積替えなどを行いながら放置しておく必要があり、資金の回転効率が悪いばかりでなく新たな虫害の発生などの恐れもあった。
【0003】そこで木材を短期間で乾燥する方法が種々提案され、例えば真空乾燥する方法や木材を収容した乾燥室内に熱風を送る方法などが実施されている。しかしこのような急速乾燥方法によって得られた木材は、従来の自然乾燥法による乾燥木材と同様に、割れを生じたりまた水分の再吸収により歪を生ずるなどの欠点はそのまま残されていた。
【0004】これに対して、かかる欠点を改良する木材乾燥法として、木材を収容した乾燥室内に木材等の燃料を燃焼させて得たガスを直接に導入し、燃焼ガスの温度とその中に含まれる各種の煙成分との協働作用によって乾燥と殺虫、殺卵とを同時に行い、薬剤処理を省略するとともに歪の発生しにくい乾燥木材を得る方法が提案されている。
【0005】この種の方法の一つとして、例えば特開昭59−129373号や特開昭60−103281号には、木材を収容した処理室の上部に熱風を通過させるとともに処理室の下部に冷風を通過させて木材を乾燥する方法が提案され、またこの方法を実施するための装置も開示されているが、かかる方法では木材の処理効率が低く、また処理効率を高めるために処理室内に多量の木材を積み込むと処理木材の乾燥度のばらつきが多く、品質が不均一となるという問題があった。
【0006】本発明者はかかる問題を解決するために種々研究した結果、従来の木材乾燥装置より多量の木材を効率よく均一に乾燥することを可能とする、改良された木材乾燥装置を発明し、特許出願している(特開平4−148184号)。この装置は、密閉可能な木材収容室と、燃焼用空気導入路を備えた燃焼ガス発生炉と、該炉の上部から該木材収容室の上部に通ずる燃焼ガス供給路と、該木材収容室の底部から煙突に通ずるガス排出路と、該木材収容室の底部から該炉に通ずるガス回収路とを有し、該ガス排出路または該ガス回収路の少なくとも何れか一方にガス流量制御装置を設けたことを特徴とする木材乾燥装置である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】かかる木材乾燥装置は優れた木材乾燥効率を有しているが、燃焼ガス発生炉での燃料の燃焼の制御が必ずしも容易とは言えなかった。そこで本発明は、上記の先に本発明者によって発明された木材乾燥装置(以下、先発明装置と呼ぶ。)を更に改良し、安定な乾燥操業ができて品質の優れた乾燥木材を高能率で生産することができる改良された木材乾燥装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる改良された木材乾燥装置は、密閉可能な木材収容室と、燃焼用空気導入路を有する燃焼ガス発生炉と、該炉の少なくとも上部から該木材収容室の上部に通ずる燃焼ガス供給路と、該木材収容室の底部から煙突に通ずるガス排出路と、該木材収容室の底部の複数位置からそれぞれ該燃焼用空気導入路の複数位置に通ずる複数のガス回収路とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】本発明の木材乾燥装置は、先発明装置と主な構成が類似しており、密閉可能な木材収容室と、燃焼用空気導入路を有する燃焼ガス発生炉と、該炉の上部から該木材収容室の上部に通ずる燃焼ガス供給路と、該木材収容室の底部から煙突に通ずるガス排出路とを備えていることは共通している。
【0010】そして先発明装置における木材収容室の底部から燃焼ガス発生炉に通ずるガス回収路が、本発明においては木材収容室の底部の複数位置からそれぞれ燃焼用空気導入路の複数位置に通ずるように複数個設けて構成されている点が改良されている。更に、本発明の木材乾燥装置におけるガス回収路には、先発明装置のようなガス流量制御装置を設けない代わりに、例えばダンパーのような半固定のガス流量調整手段を設けてもよい。このようなガス流量調整手段を設けるときは木材収容室内の温度分布をより均一にすることができるが、一旦設定すれば先発明装置におけるように操業中にガス流量制御を必要とすることは殆どなく、燃焼ガスの発生が安定状態を維持し、安定な操業ができるものである。
【0011】
【作用】本発明の木材乾燥装置において、燃焼ガス発生炉内で木材屑などの燃料を燃焼させると、煙を含む燃焼ガスが燃焼ガス供給路を通じて木材収容室の上部へ流入する。高温の燃焼ガスは木材収容室内に積み込まれた木材の間を通り、木材を加熱乾燥させながら下方へ流れて木材収容室の底部から流出しガス排出路を通って煙突から放出される。その際、木材収容室内部のガスの大部分は木材収容室の底部の複数位置から複数のガス回収路によって燃焼用空気導入路の複数位置に導かれ、新鮮な燃焼用空気と混合して燃焼ガス発生炉へ戻り、再び燃焼ガス発生炉から木材収容室へと循環する。
【0012】このように循環する燃焼ガスは木材収容室内の温度分布を均一化するのに有効であり、また燃焼ガス中の酸素含有量は非常に低くなるから木材を変質させることなく効果的に乾燥することができる。そして木材が乾燥する際に発生する水分や揮発性成分などは一旦燃焼ガス発生炉に戻って分解燃焼したのち煙突から放出されるので、直接に外部に放出される量は少なく、大気汚染が軽減されるものである。
【0013】
【実施例】本発明の木材乾燥装置は、図1に示すように乾燥すべき木材を積み込んで密閉することができる木材収容室1と燃焼ガス発生炉2とが隣接して設けられており、それらの上部が複数の燃焼ガス供給路3によって連通している。これらの燃焼ガス供給路3にはそれぞれガス流量を調節するためのゲート31が設けられ、木材収容室1内のガスの流れを平均化できるようにしてある。また燃焼ガス発生炉2の底部には廃木材などの燃料を投入して燃焼できる火室21が形成され、燃焼用空気導入路4が接続している。この燃焼用空気導入路4の開口端部には、外気の吸入量を制限できるダンパ41が設けられている。
【0014】木材収容室1の底部の複数位置には複数のガス回収路5が接続されていて、それぞれ燃焼用空気導入路4の複数位置に通じている。そしてこれらのガス回収路5にはそれぞれダンパ51が設けられている。また木材収容室1の底部の、燃焼ガス供給路3から最も遠い位置にはガス排出路6が接続され、煙突7に通じている。このガス排出路6の途中には、煙突7へ排出されるガス量を調節するためのダンパ61が設けられている。
【0015】このように構成された木材乾燥装置において、台車などに積載した木材を木材収容室1の中に搬入したのち扉を閉じて密閉し、次いで燃焼ガス発生炉2内に投入した例えば木材屑などの燃料に着火すると、燃焼ガスは燃焼ガス発生炉2の上部からそれぞれの燃焼ガス供給路3を経て木材収容室1内に流入する。この際ダンパ61を閉じておくと、木材収容室1内が上部から高温の燃焼ガスで満たされるにつれて木材収容室1内の空気は複数のガス回収路5から燃焼用空気導入路4を経て燃焼ガス発生炉2に吸入され、木材収容室1内が全て高温の燃焼ガスで満たされるまでガスの循環が継続する。
【0016】こうして装置内の空気が燃焼ガス発生炉2で高温の燃焼ガスに転化するにつれて、木材収容室1内の雰囲気は高温となるとともに酸素濃度も低下して燃焼ガス発生炉2内の燃料の燃焼速度が遅くなるので、木材収容室1内の温度も上昇しなくなる。このときにダンパ61を少し開いて木材収容室1内のガスの一部をガス排出路6を通じて煙突7に逃がすようにすると、ガスの排出量に対応する量の新鮮な空気が燃焼用空気導入路4を通じて吸入され、燃料の燃焼速度が遅くなり過ぎないように自動的に調節されることになる。
【0017】この際、それぞれガス回収路5のダンパ51を調節して木材収容室1内のガスが平均して燃焼用空気導入路4に吸入されるようにすると、木材収容室1内の温度分布を更に平均化することができる。こうして高温で低酸素濃度の均一な雰囲気で満たされた木材収容室1内では、積み込まれた木材の乾燥が均一に進み、効率よく乾燥と殺虫、殺卵とが行われて品質のよい乾燥木材が生産される。そして乾燥中に木材から発生する揮発分もその大部分が燃焼ガス発生炉2に吸入されて燃焼分解して装置内を循環するので、煙突7から排出されるガスによる環境汚染は著しく軽減される。
【0018】
【発明の効果】本発明の木材乾燥装置によれば、木材収容室内を均一な低酸素濃度の高温雰囲気に保つのに簡単な調整のみで済み、安定した操業ができるので、品質の揃った乾燥木材を高能率かつ高収率で経済的に生産できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の木材乾燥装置の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
1 木材収容室
2 燃焼ガス発生炉
21 火室
3 燃焼ガス供給路
31 ゲート
4 燃焼用空気導入路
41 ダンパ
5 ガス回収路
51 ダンパ
6 ガス排出路
61 ダンパ
7 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉可能な木材収容室と、燃焼用空気導入路を有する燃焼ガス発生炉と、該炉の少なくとも上部から該木材収容室の上部に通ずる燃焼ガス供給路と、該木材収容室の底部から煙突に通ずるガス排出路と、該木材収容室の底部の複数位置からそれぞれ該燃焼用空気導入路の複数位置に通ずる複数のガス回収路とを備えたことを特徴とする木材乾燥装置。
【請求項2】 ガス回収路にガス流量調整手段を設けてなる請求項1記載の木材乾燥装置。
【請求項3】 複数の燃焼ガス供給路を備え、該燃焼ガス供給路の少なくとも一つには燃焼ガスの流通量を調節するゲートを設けてなる請求項1又は2記載の木材乾燥装置。

【図1】
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