説明

木管楽器用消音器

【課題】演奏者に実際の演奏の場合と練習の演奏の場合とで違和感を与えることを抑え、かつ楽器の姿勢の安定性が向上する。
【解決手段】楽器2の音孔を内包する左右に開閉可能な筐体3を有し、筐体3の外側から演奏者が右手と左手を入れて楽器2のキイを操作できる入手口を備えるリード23を使って音を出す木管楽器用消音器1であり、筐体3は楽器2を包むように長く延び、筐体3の長手方向の一方側にリード23を取り出すためのリード取出部13を備え、一方の入手口と他方の入手口とを筐体3の長手方向に分けて左右に配置し、リード取出部13と反対側に離間して入手口40が配置される部分に対向する部分が、平坦面5aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木管楽器用消音器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の木管楽器用消音器として、出願人は消音器内部で鳴っている大音量の音が外部に漏れ出てないようにして消音性能が向上し、しかも自然な吹奏感覚の改善、十分な水分対策を施された新しい木管楽器用消音器の提供した(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−162715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような木管楽器用消音器を用いて演奏の練習を行う際には、演奏者が筐体の外側から右手と左手を内部に入れ、筐体をやや斜めにして膝の上にあてがい、楽器のキイを操作し、リードを使って音を出すが、木管楽器用消音器を用いないで実際に楽器で演奏する場合と比較して筐体を有する分楽器の姿勢が異なる。したがって、演奏者に実際の演奏の場合と練習の演奏の場合とで違和感を与えることがある。
【0004】
また、このような木管楽器用消音器では、筐体をやや斜めにして膝の上にあてがって、演奏者が筐体の内部に右手と左手を入れて楽器のキイを操作し、演奏時に筐体の姿勢が不安定な状態になるから極力動かないように安定させる必要がある。
【0005】
この発明は、かかる点に鑑みなされたもので、演奏者に実際の演奏の場合と練習の演奏の場合とで違和感を与えることを抑え、かつ楽器の姿勢の安定性が向上する木管楽器用消音器の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0007】
請求項1に記載の発明は、楽器の音孔を内包する左右に開閉可能な筐体を有し、
前記筐体の外側から演奏者が右手と左手を入れて前記楽器のキイを操作できる入手口を備えるリードを使って音を出す木管楽器用消音器であり、
前記筐体は前記楽器を包むように長く延び、
前記筐体の長手方向の一方側に前記リードを取り出すためのリード取出部を備え、
前記一方の入手口と他方の入手口とを前記筐体の長手方向に分けて左右に配置し、
前記リード取出部と反対側に離間して前記入手口が配置される部分に対向する部分が、平坦面であることを特徴とする木管楽器用消音器である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記リード取出部と反対側に離間して前記入手口が配置される部分が、凸面であることを特徴とする請求項1に記載の木管楽器用消音器である。
【発明の効果】
【0009】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0010】
請求項1に記載の発明では、筐体をやや斜めにして膝の上にあてがうが、この筐体の膝の上にあてがう部分が平坦面であるから、筐体が斜めになることを軽減でき、練習の演奏の楽器の姿勢を実際の演奏の楽器の姿勢に近づけることができ、演奏者に実際の演奏の場合と練習の演奏の場合とで違和感を与えることを抑えることが可能になる。また、筐体の膝の上にあてがう部分が平坦面であるから、演奏の練習を行う際には、筐体をやや斜めにして膝の上にあてがっても筐体の姿勢が安定する。
【0011】
請求項2に記載の発明では、リード取出部と反対側に離間して入手口が配置される部分が、凸面であり、筐体の内部空間の容積を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の木管楽器用消音器の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0013】
図1乃至図7はこの発明の木管楽器用消音器を示すものであり、図1は斜視図、図2は正面図、図3は背面図、図4は右側面図、図5は左側面図、図6は平面図、図7は底面図である。
【0014】
木管楽器用消音器1は、楽器2の音孔を内包する左右に開閉可能な筐体3を有し、この筐体3は右シェル4と左シェル5により構成されている。右シェル4と左シェル5の開口部の一部には蝶板10が2個設けられ、また一部にはパッチン錠11が5個設けられている。さらに、左シェル5の開口部には、前後にストラップリング12がそれぞれ設けられている。
【0015】
右シェル4と左シェル5は楽器2を内部空間に保持可能であり、パッチン錠11を開錠することで蝶板10を支点にして開くことができ、楽器2としてテナーサクソフォン20を収納して閉じてパッチン錠11を施錠することで内部空間に保持する。
【0016】
右シェル4と左シェル5にはネックパッキン13が設けられ、テナーサクソフォン20のリード21がリード取出部13としてのネックパッキンから突出する。このリード21にはリガチャー22が設けられ、さらにリガチャー22にはマウスピース23が設けられている。テナーサクソフォン20には音孔が設けられている。
【0017】
筐体3は演奏時の姿勢において鉛直方向において、右シェル4には下方位置に入手口40を備え、左シェル5には上方位置に入手口41を備え、筐体3の外側から演奏者が右手と左手を入れて楽器2のキイを操作し、リード21を使って音を出す。入手口40,41は、独立発泡EPDM等でできているため伸縮自在である。従って密閉可能な状態で、演奏者が右手と左手を入れて直接楽器のキイを操作できる。
【0018】
右シェル4には下方位置に電子モジュール35が備えられ、この電子モジュール35にイヤホンを接続することで、筐体3の内部の音をマイクでピックアップし、演奏者に返還出力できるようになっている。また、電子モジュール35に残響回路や外部入出力機構を付加すれば、カラオケ演奏やモニタリングなども可能となり、演奏する楽しさが増加する。
【0019】
この実施の形態の木管楽器用消音器1は、テナーサクソフォン用消音器として実施した場合を示しており、この場合、木管楽器用消音器1の高さHは、例えば720mm、幅Wは320mmである。
【0020】
このように、筐体3は楽器2を包むように長く延び、筐体3の長手方向の一方側にリード23を取り出すためのリード取出部13を備え、そして、一方の入手口41と他方の入手口40とを筐体3の長手方向に分けて左右に配置している。筐体3はリード取出部13と反対側に離間して入手口40が配置される部分に対向する部分が、平坦面5aであり、この平坦面5aの上側にはリード取出部13に向かって連続した凸面5bを有する。
【0021】
また、筐体3はリード取出部13と反対側に離間して入手口40が配置される部分が、凸面4aであり、この凸面4aの上側にはリード取出部13に向かって連続した緩やかに傾斜する傾斜面4bを有する。
【0022】
次に、この木管楽器用消音器1を用いて演奏の練習を行う場合について説明する。演奏者は、楽器2を筐体3の内部空間に保持した状態で、右シェル4の入手口41から左手を入れ、左シェル5の入手口40から右手を入れる。そして、右利きの演奏者は、筐体3をやや斜めにして左シェル5の平坦面5aを右の足81の膝の上にあてがい、右手と左手で楽器2のキイを操作し、リード21を使って音を出す。
【0023】
このようにして演奏者は演奏するが、この筐体3の左シェル5は、右の足81の膝の上にあてがう部分が平坦面5aであるから、演奏時の鉛直方向L1に対して、リード取出部13と平坦面5aが右の足81の膝の上に接する点Oを結ぶ線L2の角度θが小さくなり、筐体3が斜めになることを軽減できる。したがって、練習の演奏の楽器の姿勢を実際の演奏の楽器の姿勢に近づけることができ、演奏者に実際の演奏の場合と練習の演奏の場合とで違和感を与えることを抑えることが可能になる。
【0024】
また、筐体3の左シェル5は、右の足81の膝の上にあてがう部分が平坦面5aであるから、演奏の練習を行う際に筐体3をやや斜めにして右の足81の膝の上にあてがって、右手と左手で楽器2のキイを操作しても筐体3の姿勢が安定する。
【0025】
また、リード取出部13と反対側に離間して入手口40が配置される部分が、凸面4aであり、この凸面4aの外周側には入手口40が設けられ、キイの操作を行う部分である。このため、右シェル4の凸面4aによって内部空間の容積を確保することができる。
【0026】
この実施の形態では、左シェル5に平坦面5aを設け、右シェル4に凸面4aを設けたが、楽器2によっては左シェル5に凸面を設け、右シェル4に平坦面を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、木管楽器用消音器に適用可能であり、演奏者に実際の演奏の場合と練習の演奏の場合とで違和感を与えることを抑え、かつ楽器の姿勢の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】木管楽器用消音器の斜視図である。
【図2】木管楽器用消音器の正面図である。
【図3】木管楽器用消音器の背面図である。
【図4】木管楽器用消音器の右側面図である。
【図5】木管楽器用消音器の左側面図である。
【図6】木管楽器用消音器の平面図である。
【図7】木管楽器用消音器の底面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 木管楽器用消音器
2 楽器
3 筐体
4 右シェル
4a 凸面
4b 傾斜面
5 左シェル
5a 平坦面
5b 凸面
20 テナーサクソフォン
21 リード
40,41 入手口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器の音孔を内包する左右に開閉可能な筐体を有し、
前記筐体の外側から演奏者が右手と左手を入れて前記楽器のキイを操作できる入手口を備えるリードを使って音を出す木管楽器用消音器であり、
前記筐体は前記楽器を包むように長く延び、
前記筐体の長手方向の一方側に前記リードを取り出すためのリード取出部を備え、
前記一方の入手口と他方の入手口とを前記筐体の長手方向に分けて左右に配置し、
前記リード取出部と反対側に離間して前記入手口が配置される部分に対向する部分が、平坦面であることを特徴とする木管楽器用消音器。
【請求項2】
前記リード取出部と反対側に離間して前記入手口が配置される部分が、凸面であることを特徴とする請求項1に記載の木管楽器用消音器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−268584(P2008−268584A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111898(P2007−111898)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【特許番号】特許第4069985号(P4069985)
【特許公報発行日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(300024818)有限会社 ベストブラス (9)