説明

木質ペレットの燃焼方法及び燃焼機

【課題】クリンカの成長を抑制して燃焼障害の発生を防止する。
【解決手段】多孔板4の上にセラミック粒子30を敷き詰めて火床3を形成し、火床に木質ペレット31を分散させるとともに、多孔板の下側から燃焼用空気を噴出させて燃焼させ、燃焼により発生する灰を燃焼用空気又は燃焼ガスの気流によって下流の二次燃焼空間に排出するにあたり、火床のセラミック粒子及び木質ペレットの層を掻き混ぜ手段21,22により掻き混ぜて、火床で形成される燃焼灰のクリンカを砕くことにより、クリンカの成長を抑制して燃焼障害の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質ペレットの燃焼方法及び燃焼機に係り、特に、セラミック粒子層により形成した火床で木質ペレットを燃焼する燃焼方法及び燃焼機に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の環境問題に対応するため、燃料のライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない、つまり燃焼時に発生する二酸化炭素と植物の成長過程で光合成により吸収する二酸化炭素が同量であるバイオマス燃料が注目されている。中でも木質ペレットは、一般に、主伐材や間伐材などから発生する廃材や林地残材等を粉砕して圧縮成型した固形燃料であり、形状や含水率等の品質が安定している。そのため、他のバイオマス燃料に比較して取り扱い易いことから、木質ペレットは、温水ボイラ、蒸気ボイラ、ハウス栽培の熱源、給湯機、暖房機器、あるいは吸収式冷凍サイクルの再生器等の各種の熱源用の燃料として、用途の開発が広く検討されている。
【0003】
ところで、木質ペレットは比較的多量の燃焼灰が発生することから、安定燃焼のために燃焼灰の排出が課題になる。例えば、特許文献1には、多数の空気噴出孔を有する多孔板上にセラミック粒子を敷き詰めて火床を形成し、セラミック粒子層の火床に木質ペレットを分散して、多孔板の下側からセラミック粒子層に燃焼用空気を吹き込んで木質ペレットを流動させて燃焼させる燃焼装置が提案されている。これによれば、燃焼灰は、セラミック粒子層を流通する燃焼用空気及び燃焼ガスに同伴して下流の二次燃焼室に飛散し、二次燃焼室にて沈降して堆積し、適宜炉外に排出される。一方、二次燃焼室に沈降しない灰は燃焼ガスに同伴してサイクロン等により捕集されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−275301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、木質ペレットが密集するなどの何らかの理由により、火床に高温域が形成されると、堆積した灰が溶融及び焼結して燃焼灰クリンカ(以下、クリンカという。)が生成される場合がある。このようなクリンカは、通常の燃焼用空気の気流では吹き飛ばせないから、徐々にクリンカが大きくなり、燃焼不良などの燃焼障害を引き起こすので、火床に堆積しないようにする必要がある。
【0006】
一旦、燃焼障害を起こすと、燃焼装置を停止してクリンカや堆積灰を人力により除去する必要があり、保守管理のための時間及び人員が必要なだけでなく、燃焼装置の運転効率が低下する問題がある。
【0007】
一方、火床に堆積したクリンカを気流により吹き飛ばすために、燃焼用空気などの吹き込み量を増やすと、燃焼が終了していない未燃の木質ペレットを飛散させることがあり、木質ペレットの燃焼率が低下することになる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、クリンカの成長を抑制して燃焼障害の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、多孔板の上にセラミック粒子を敷き詰めて火床を形成し、前記火床に木質ペレットを分散させるとともに前記多孔板の下側から燃焼用空気を噴出させて燃焼させ、燃焼により発生する灰を燃焼用空気又は燃焼ガスの気流によって下流の二次燃焼空間に排出する木質ペレットの燃焼方法において、前記火床のセラミック粒子及び木質ペレットの層を掻き混ぜ部材により掻き混ぜて、前記火床で形成される燃焼灰のクリンカを砕くことを特徴とする。この場合、セラミック粒子のサイズは、多孔板の孔径よりも大きいことはいうまでもない。
【0010】
すなわち、火床のセラミック粒子及び木質ペレットの層を掻き混ぜ部材によりクリンカが細かく粉砕されるとともに、セラミック粒子あるいは木質ペレットの上下あるいは左右の運動によりクリンカが細かく砕かれる。その結果、通常の燃焼用空気の流れあるいは燃焼ガスの流れによって灰が飛散して火床から排出されるから、火床におけるクリンカの成長を抑制することができ、これにより燃焼障害の発生を防止することができる。
【0011】
なお、運転開始時に火床を掻き混ぜると木質ペレットが平らに均され、着火バーナの炎が木質ペレットに当たらないことがあり、着火性が悪くなることから、運転開始時は火床の掻き混ぜを行なわないことが好ましい。
【0012】
本発明の木質ペレットの燃焼方法を直接実施する燃焼機は、多数の孔を有する多孔板と、該多孔板の上にセラミック粒子を層状に敷き詰めて形成された火床と、前記火床に木質ペレットを供給する燃料供給手段と、前記多孔板の孔から前記火床に燃焼用空気を噴出させる空気供給手段と、前記火床における前記木質ペレットの燃焼を補助する助燃バーナと、前記火床から発生する燃焼ガスを導いて燃焼させる二次燃焼空間とを備えてなる木質ペレットの燃焼機において、前記多孔板の板面に沿って移動する部材により前記火床の前記セラミック粒子の層を掻き混ぜる掻き混ぜ手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
ここで、掻き混ぜ手段の一態様として、前記多孔板に沿って移動可能に支持して前記セラミック粒子の層内に設けられた直状の移動部材と、該移動部材に直交させて固定され前記多孔板に沿って設けられた掻き混ぜ部材と、前記火床の外部に引き出された前記移動部材の一端に連結された駆動部を備えて構成することができる。
【0014】
このように構成することにより、駆動部を操作して移動部材を直線状に往復移動すると、これに伴って掻き混ぜ部材が火床内を移動してセラミック粒子及び木質ペレットを掻き混ぜることになる。この掻き混ぜ部材を移動させることによりクリンカが細かく粉砕されるとともに、セラミック粒子あるいは木質ペレットの上下あるいは左右の運動によりクリンカが細かく砕かれる。その結果、通常の燃焼用空気の流れあるいは燃焼ガスの流れによって灰が飛散して火床から排出されるから、灰の堆積を減らして火床におけるクリンカの成長を抑制することができ、これにより燃焼障害の発生を防止することができる。
【0015】
この場合において、掻き混ぜ部材を、前記移動部材に直交させて固定され棒状部材と、該棒状部材から前記火床の上方に向けて起立して設けられたピン部材とから形成することができる。これにより、セラミック粒子あるいは木質ペレットがピン部材によりクリンカが一層細かく砕かれる。この場合において、ピン部材は、少なくとも表面が耐熱性材料で形成されていることが好ましい。
【0016】
また、掻き混ぜ手段の他の態様として、前記火床が、前記多孔板に対して鉛直に配置された一対の側板と、該側板の両端に配置された前面板と後面板とにより囲まれた領域内に前記セラミック粒子を層状に敷き詰めて形成され、前記多孔板が、前記火床の前面板と後面板に形成されたスリットに前端と後端を挿入して前後に移動可能に支持されて形成される場合、前記掻き混ぜ手段は、前記火床の一対の側板に対向させて該側板の前後方向に間隔をあけて形成された複数の鉛直方向の長孔と、該長孔に挿入して前記一対の側板に渡して設けられた複数の掻き混ぜ棒と、前記多孔板を前後に移動する駆動部を備えて構成することができる。
【0017】
これによれば、多孔板を前後に移動することにより、セラミック粒子が多孔板の空気噴出孔に引っ掛かって上下方向に振動的に運動する。このときのセラミック粒子の上下運動は、一対の側板に対向させて形成された長孔に渡して設けられた複数の掻き混ぜ棒により制限されて複雑な動きになる。このセラミック粒子の複雑な運動によりクリンカが細かく粉砕されるとともに、セラミック粒子あるいは木質ペレットの上下あるいは左右の運動によりクリンカが細かく砕かれる。なお、掻き混ぜ棒は長孔内を上下することにより、セラミック粒子の上下運動を許容して、多孔板や掻き混ぜ棒にかかる力を緩和することができる。
【0018】
この場合、セラミック粒子は球形(ボール)であることが好ましく、セラミック粒子の径は多孔板の孔径よりも大きいことが好ましい。これにより、セラミック粒子の下部が多孔板の孔に埋没した状態になり、多孔板の前後の移動に追従してセラミック粒子が移動しようとしても、隣接する他のセラミック粒子により移動が妨げられて、多孔板の孔から飛び出す上下方向の振動的な動きとなる。このようなセラミック粒子の動きにより、クリンカが細かく砕かれるとともに、セラミック粒子層の上に堆積した灰が掻き混ぜられて飛散する。なお、掻き混ぜ棒の多孔板からの高さは特に制限はないが、例えば、セラミック粒子の2.5個分程度が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、クリンカの成長を抑制して燃焼障害の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の木質ペレットの燃焼方法を実施する燃焼機の実施形態を説明する。
(実施形態1)
図1乃至図6に、本発明の燃焼機の実施形態1の構成図を示す。図1は本実施形態の燃焼炉の断面構成図、図2は燃焼炉を下から見た下面図、図3は図1の燃焼炉を右から見た側面図を示す。なお、図3では燃焼炉の図において左側の部材は、図を簡単化するために、図示を省略している。図4は本実施形態の特徴部の掻き混ぜ手段が組み込まれた火床を上から見た断面図、図5は掻き混ぜ手段の構成を示す図、図6は図4の矢印VI-VIから見た矢視断面図である。
【0021】
本実施形態の木質ペレット燃焼機に用いられる燃焼炉1は、図1乃至図3に示すように、円筒状の燃焼室2の底部に火床3が形成されている。火床3は、底部に設けられた多孔板4に対して鉛直に配置された一対の側板5、5と、側板5、5の両端に配置された前面板6と後面板7とにより囲まれた領域内に、図示していないセラミックボールを層状に敷き詰めて形成される。図3に示すように、一対の側板5、5の上端から燃焼室2の上部の内壁に向けて、一対の耐熱材8、8が充填されている。
【0022】
このように形成される燃焼室2の図において右端は、フランジ9を介して図示していない二次空気室に連結されるようになっている。また、燃焼室2の左端の前壁面10の上部には、木質ペレットのシュータ11の先端が挿入され、シュータ11の上部開口には図示していない供給装置から木質ペレットが供給されるようになっている。また、燃焼室2の前壁面10の下部には、図示していない着火バーナが装着されるフランジを有するバーナ筒12が取付けられている。着火バーナは、火床3の上面に火炎を吹付けるように装着される。さらに、多孔板4の下方に一次空気流通路13が形成され、図示していない、送風機から燃焼用空気が供給されるようになっている。
【0023】
次に、本実施形態の特徴部である火床3の掻き混ぜ手段について、図4乃至図6を参照して説明する。図4は、火床3を上面から見た図である。図示のように、火床4は、多孔板4の上面に鉛直に配置された一対の側板5、5と、一対の耐熱材8、8と、これらの両端に配置された前面板6と後面板7とにより囲まれた矩形の領域内に、セラミック粒子を層状に敷き詰めて形成されている。火床3を形成するセラミック層に中に位置させて多孔板4に沿って移動可能に支持して直状の移動部材21が設けられている。また、図5に示すように、移動部材21に直交させて固定され、多孔板4に沿って複数の棒状部材からなる掻き混ぜ部材22が設けられている。移動部材21の一端は火床3の前面板6に支持されて外部に引き出され、その端部に駆動部であるハンドル23が取付けられている。
【0024】
このように構成される実施形態の動作について、図6を参照しながら説明する。多孔板4の上にセラミックボール30を層状に敷き詰めて火床3を形成する。そして、シュータ11から火床3の上に木質ペレット31を分散して供給し、多孔板4の下側から燃焼用一次空気を噴出させ、着火バーナを点火して木質ペレット31を燃焼させる。その燃焼により発生する灰は、燃焼用空気又は燃焼ガスの気流によって下流の図示していない二次燃焼室に排出される。
【0025】
この燃焼過程で、木質ペレット31が密集するなどの何らかの理由により、火床3内に高温域が形成される場合がある。火床3内に高温域が形成されると、燃焼灰が溶融及び焼結してクリンカが生成される。このようなクリンカは、通常の燃焼用空気の気流では吹き飛ばせないから、徐々にクリンカが大きくなり、燃焼不良などの燃焼障害を引き起こし、運転効率が低下する問題がある。
【0026】
そこで、本実施形態では、適宜、燃焼炉1の運転中に間欠的又は連続的に、ハンドル23を操作して、移動部材21を図4の図示矢印24の前後方向に移動させ、複数の掻き混ぜ部材22を火庄3内の前後に移動させて、セラミックボール30の層を掻き混ぜる。セラミックボール30の掻き混ぜ作用により、木質ペレット31が掻き混ぜられ、発生した燃焼灰は燃焼用空気及び燃焼ガスの気流に同伴して二次空気室へ飛散される。さらに、燃焼によりクリンカが形成された場合は、複数の掻き混ぜ部材22によりクリンカが細かく粉砕されるとともに、セラミックボール30あるいは木質ペレット31の上下あるいは左右の運動によりクリンカが細かく砕かれる。
【0027】
したがって、本実施形態によれば、通常の燃焼用空気の流れあるいは燃焼ガスの流れによって灰が飛散して火床3から排出されるから、火床3におけるクリンカの成長を抑制することができ、これにより燃焼障害の発生を防止することができる。
【0028】
なお、セラミックボール30のサイズは、多孔板4の孔径よりも大きいことはいうまでもない。また、移動部材21と掻き混ぜ部材22の多孔板4からの高さ位置はセラミックボール30の1層分よりも高く、かつ2〜3層分よりも低く設定することが好ましい。
【0029】
また、本実施形態では、1本の直状の移動部材21の両側に、複数の掻き混ぜ部材22を櫛の歯状に固定する例について示したが、本発明はこれに限らず、一対の側板5、5に平行に2本の直状の移動部材を配置して枠型に形成し、その2本の移動部材に渡して複数の掻き混ぜ部材22を固定した枠型の掻き混ぜ手段を構成することができる。この場合、枠型の移動部材の前後方向の移動範囲を確保するため、枠型の移動部材の全長を火床3の前後方向の長さよりも移動範囲だけ短く形成し、枠型の移動部材の長手方向の両端に直状の1本の移動部材をそれぞれ固定して、前面板6及び後面板7に移動可能に支持させるようにすることができる。
(実施形態2)
図7乃至図9を参照して、本発明の特徴部に係る火床3の掻き混ぜ手段の他の実施形態を説明する。
【0030】
本実施形態が実施形態1の掻き混ぜ手段と異なる点は、図7に示すように、複数の棒状部材からなる掻き混ぜ部材22に、火床3の上方に向けて起立して複数のピン部材25を設けたことにある。その他の点は、実施形態1と同一であることから説明を省略する。
【0031】
ピン部材25は、耐熱性を持たせるために、図8に示すように、溶融アルミメッキ又はセラミック溶射などの耐熱耐腐食コーティングを施すことが好ましい。あるいは、これに代えて、図9に示すように、ピン部材25にセラミック製の筒部材からなる耐熱カバー26を被せることが好ましい。
【0032】
本実施形態によれば、実施形態1の効果に加えて、ピン部材25の掻き混ぜ効果が加わるから、一層、火床3におけるクリンカの成長を抑制することができ、これにより燃焼障害の発生を防止することができる。
(実施形態3)
図10、図11に、本発明の特徴部に係る火床3の掻き混ぜ手段のさらに他の実施形態の構成を示す。図10(a)は火床3周りの断面図、同(b)は火床3の一部を断面にして示した側面図、同(c)は火床3を下から見た下面図である。図11は、図4矢印VI-VIから見たと同様の本実施形態の矢視断面図である。
【0033】
それらの図に示すように、多孔板40は、火床3の前面板6と後面板7に形成された一対のスリット41、41に前端と後端を挿入されている。また、前面板6と後面板7の下端と、図には表れていないが一対の側板5、5の下端に支持枠板42が取付けられている。支持枠板42は、同図(c)に示すように、火床3の下面から燃焼用空気が多孔板40の孔を通って流通するように、全面に開口が形成されている。これらのスリット41、41と、支持枠板42とにより、多孔板40が、図示矢印43の方向、つまり火床3の前後方向に移動可能に支持されている。多孔板40を移動させる駆動部は、図示していないが、実施形態1と同様に、多孔板40の一方の端部に棒状部材を連結して燃焼炉1の外部に引き出し、人力により、又は電動機により矢印43の方向に移動するように形成されている。
【0034】
さらに、同図(b)に示すように、多孔板40に対して鉛直に配置された一対の側板5、5には、互いに対向する位置に側板5、5の前後方向に間隔をあけて複数の鉛直方向の長孔44が形成されている。一対の側板5、5の対向する各長孔44には、それぞれ掻き混ぜ棒45の両端を挿入して渡して設けられている。このように、一対の側板5、5と、前面板6と後面板7とにより囲まれた領域内にセラミックボール30を層状に敷き詰めて火床3が形成されている。
【0035】
このように構成されることから、多孔板40を前後に移動すると、セラミックボール30の下部が多孔板40の一次空気噴出孔47に引っ掛かって上下方向に振動的に運動する。このときのセラミックボール30の上下運動は、複数の掻き混ぜ棒45により制限されて複雑な動きになる。このセラミックボール30の複雑な運動によりクリンカが細かく粉砕されるとともに、セラミックボール30あるいは木質ペレットの上下あるいは左右の運動によりクリンカが細かく砕かれる。
【0036】
なお、掻き混ぜ棒45は長孔44内を上下することにより、セラミックボール30の上下運動を許容して、多孔板40や掻き混ぜ棒45にかかる力を緩和することができる。
【0037】
この場合、セラミックボール30の径は多孔板40の一次空気噴出孔47の孔径よりも大きいことが好ましい。例えば、セラミックボール30の外径を5mmφ、一次空気噴出孔47の孔径を3mmφとする。これにより、セラミックボール30の下部が一次空気噴出孔47に埋没した状態になり、多孔板40の前後の移動に追従してセラミックボール30が移動しようとしても、隣接する他のセラミックボール30により移動が妨げられて、空気噴出孔47から飛び出す上下方向の動きとなる。このようなセラミックボール30の動きにより、クリンカが細かく砕かれるとともに、セラミックボール30の層の上に堆積した灰が掻き混ぜられて飛散する。なお、掻き混ぜ棒45の下面から多孔板40までの高さHは特に制限はないが、例えば、セラミックボール30の2.5個分程度以上の高さとすることができる。また、掻き混ぜ棒45の径は、例えば4mmφとすることができる。
【0038】
本実施形態によれば、多孔板40を前後に移動させることにより、セラミックボール30に前後方向の動きだけでなく、上下方向の振動的な動きを加えることができ、クリンカを細かく砕くことができる。その結果、クリンカの成長を抑制して燃焼障害の発生を防止することができる。
【0039】
因みに、実施形態1の掻き混ぜ手段によれば、掻き混ぜ部材22を火庄3内の前後に移動させるとき、掻き混ぜ部材22と前面板6又は後面板7の間に挟まったセラミックボール30の整列された層が形成されると、掻き混ぜ部材22の動きが拘束されて掻き混ぜが困難になる場合があるが、本実施形態によればそのような問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の燃焼機に適用する実施形態1の燃焼炉の断面構成図である。
【図2】図1の燃焼炉を下から見た下面図である。
【図3】図1の燃焼炉を右から見た側面図である。
【図4】実施形態1の特徴部の掻き混ぜ手段が組み込まれた火床を上から見た断面図である。
【図5】実施形態1の掻き混ぜ手段の構成を示す図である。
【図6】図4の矢印VI-VIから見た矢視断面図である。
【図7】本発明の燃焼機に適用する実施形態2の掻き混ぜ手段の特徴部を示す断面図である。
【図8】実施形態2の掻き混ぜ手段のピン部材の構成を説明する図である。
【図9】実施形態2のピン部材の変形例を説明する図である。
【図10】本発明の燃焼機に適用する実施形態3の掻き混ぜ手段の構成を示す図である。
【図11】図4矢印VI-VIから見たと同様の実施形態3の矢視断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 燃焼炉
2 燃焼室
3 火床
4 多孔板
5 側板
5 側板
6 前面板
7 後面板
8 耐熱材
11 シュータ
12 バーナ筒
21 移動部材
22 掻き混ぜ部材
25 ピン部材
26 耐熱カバー
30 セラミックボール
31 木質ペレット
40 多孔板
41 スリット
42 支持枠板
44 長孔
45 掻き混ぜ棒
47 一次空気噴出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔板の上にセラミック粒子を敷き詰めて火床を形成し、前記火床に木質ペレットを分散させ、前記多孔板の下側から燃焼用空気を噴出させて前記木質ペレットを燃焼させ、燃焼により発生する灰を燃焼用空気又は燃焼ガスの気流によって下流の二次燃焼空間に排出する木質ペレットの燃焼方法において、
前記火床のセラミック粒子及び木質ペレットの層を掻き混ぜ部材により掻き混ぜて、前記火床で形成される燃焼灰のクリンカを砕くことを特徴とする木質ペレットの燃焼方法。
【請求項2】
多数の孔を有する多孔板と、該多孔板の上にセラミック粒子を層状に敷き詰めて形成された火床と、前記火床に木質ペレットを供給する燃料供給手段と、前記多孔板の孔から前記火床に燃焼用空気を噴出させる空気供給手段と、前記木質ペレットに着火する着火バーナと、前記火床から発生する燃焼ガスを導いて燃焼させる二次燃焼空間とを備えてなる木質ペレットの燃焼機において、
前記多孔板の板面に沿って移動する部材により前記火床の前記セラミック粒子の層を掻き混ぜる掻き混ぜ手段を設けたことを特徴とする木質ペレットの燃焼機。
【請求項3】
請求項2において、
前記掻き混ぜ手段は、前記多孔板に沿って移動可能に支持して前記セラミック粒子の層内に設けられた直状の移動部材と、該移動部材に直交させて固定され前記多孔板に沿って設けられた掻き混ぜ部材と、前記火床の外部に引き出された前記移動部材の一端に連結された駆動部を備えてなることを特徴とする木質ペレットの燃焼機。
【請求項4】
請求項3において、
前記掻き混ぜ部材は、前記移動部材に直交させて固定され棒状部材と、該棒状部材から前記火床の上方に向けて起立して設けられたピン部材とから形成されてなることを特徴とする木質ペレットの燃焼機。
【請求項5】
請求項2において、
前記火床は、前記多孔板に対して鉛直に配置された一対の側板と、該側板の両端に配置された前面板と後面板とにより囲まれた領域内に前記セラミック粒子を層状に敷き詰めて形成され、
前記多孔板は、前記火床の前面板と後面板に形成されたスリットに前端と後端を挿入して前後に移動可能に支持され、
前記掻き混ぜ手段は、前記火床の一対の側板に対向させて該側板の前後方向に間隔をあけて形成された複数の鉛直方向の長孔と、該長孔に挿入して前記一対の側板に渡して設けられた複数の掻き混ぜ棒と、前記多孔板を前後に移動する駆動部を備えてなることを特徴とする木質ペレットの燃焼機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−25463(P2010−25463A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188485(P2008−188485)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】