説明

木質系複合材料およびその用途

【課題】耐衝撃性に優れ、割れや破断等の異常を招来しにくく、変形し難い木質系複合材料を提供する。
【解決手段】上記木質系複合材料を、スギとヒノキの細長い木質片を少なくとも10重量%含有する木質材料片と、結合剤とを含む材料からなり、長手方向にほぼ配向された状態で積み重ねられた木質材料片がその積み重ね方向に圧縮、加熱され、結合剤により木質材料片同士が結合されてなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系複合材料およびその用途に関し、さらに詳しくは耐衝撃性に優れ、割れや破断等の異常を招来しにくく、変形し難い木質系複合材料およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築解体材等の木質廃材のリサイクルのため、該廃材をチップ化等小片化して得られる細長い木質片と接着剤等の結合剤とを含んでなり、該木質片が長手方向に配向された状態で積まれ、木質片がその長手方向に対して垂直方向に圧縮され、結合剤により木質材料片同士が結合されてなる木質系複合材料が知られているが(特許文献1参照)、このものは木質片の材質や形状によっては所望の強度を発現しにくい、耐衝撃性に劣るなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3520077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、このような事情の下、耐衝撃性に優れ、割れや破断等の異常を招来しにくく、変形し難い木質系複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記したような木質系複合材料における細長い木質片として特定の材質のものを組み合わせることにより、上記課題解決に資する木質系複合材料となることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、スギとヒノキの細長い木質片を少なくとも10重量%含有する木質材料片と、結合剤とを含む材料からなり、長手方向にほぼ配向された状態で積み重ねられた木質材料片がその積み重ね方向に圧縮、加熱され、結合剤により木質材料片同士が結合されてなることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、圧縮が、木質材料片の断面積が平均70%以下になるように行われることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、木質材料片が、さらに細長い解体材木質片を含有することを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、木質材料片が、スギとヒノキの細長い木質片のみからなることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、スギおよび/またはヒノキが間伐材であることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる構造材が提供される。
【0012】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる準構造材が提供される。
【0013】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる造作材が提供される。
【0014】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる造作芯材が提供される。
【0015】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる面材が提供される。
【0016】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる軸組材が提供される。
【0017】
また、本発明の第12の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる木軸が提供される。
【0018】
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜5のいずれかの木質系複合材料を用いてなる壁芯材が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の木質系複合材料によれば、耐衝撃性に優れ、割れや破断等の異常を招来しにくく、変形し難いし、また、原材料に、建築解体材由来の木質片を多少用いても所期の効果をある程度充足でき、全体としてコストダウンを図れるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の木質系複合材料は、所定材質の細長い木質片を含有する木質材料片と、結合剤とを含む材料からなり、長手方向にほぼ配向された状態で積まれた木質材料片がその長手方向に対して垂直方向に圧縮、加熱され、結合剤により木質材料片同士が結合されてなることで特徴付けられるものである。
木質材料片となる原料材としては、その樹種が、スギとヒノキであるものを併用するのがよく、原料材に利用できる形態としては、特に限定されないが、例えば、上記樹種の丸太、間伐材等の生材料、工場や住宅建築現場で発生する端材、部材輸送後に廃棄される廃パレット材等が挙げられる。
木質材料片は、スギとヒノキの細長い木質片を少なくとも10重量%、中でも30重量%以上含むもの、とりわけ樹種がスギとヒノキのみからなるものが好ましく、その他木質片については、特に制限されず、建築解体材由来の木質片も使用することができる。
木質材料片におけるスギ木質片とヒノキ木質片との含量比は質量基準で10:90〜90:10の範囲であるのが好ましい。
また、スギおよび/またはヒノキは、間伐材であるのが好ましく、特にスギおよびヒノキとも間伐材であるのが好ましい。
【0021】
上記原料材を木質材料片にする加工方法としては、ロータリーカッターによってベニア加工したものを割り箸状に切断してスティックにする方法、フレーカーの回転刃によって丸太を切削してストランドにする方法、一軸破砕機の表面に刃物のついたロールを回転させて木材を破砕する方法等を用いることができる。破砕機とは、一般的に粉砕機と呼ばれる機械も含まれる。また、一般にパーティクルボードに使用されているような切削を要素とした小片製造機の使用も可能であるが、小片が薄く削られた物になり強度が比較的でにくく、破砕を要素とする破砕機により作製された破砕チップ等の破砕片は紡錘状等長細い形状になり強度がでやすく、こちらの方がより好ましい。
【0022】
そして、破砕された木質材料片は、その厚さが不揃いの場合は、一定範囲の厚さの木質材料片に分級される。分級方法は、一定範囲の厚さで分級できるものであれば特に限定されないが、例えば、ウェーブローラー方式等の分級機を用いて分級する方法が挙げられる。なお、ウェーブローラー方式の分級機は、チップの厚さを基準に連続的に分級する装置である。
【0023】
本発明の木質系複合材料において、使用される木質材料片は、その比重が0.3〜0.6、その長さが20mm〜150mmであり、その厚さ(短辺)が1mm〜11mmであることが好ましい。
木質材料片の比重が0.3未満であると、木質が腐敗しているなどのため十分な強度が得られなかったり、成形時の圧密処理を十分に行うことができず、十分な強度が得られないし、また0.6を越えると、木質材料片が固く、所望する構造材等としての成形が難しくなる。
【0024】
木質材料片の厚さが1mm未満であると、構成材料片が小さくなりすぎ、多くの結合材が必要となり、十分な強度が発現されないし、また、11mmを越えると、木質系複合材料の厚さ方向への木質片の積層数が少なくなってしまい、応力伝達が十分に行われず、木質片の継ぎ目に応力集中を起こしやすく、十分な強度が得られにくくなる。
また、木質材料片の長さが20mm未満であると、構造材等として使用する場合、軸方向の強度が不十分となるし、また、150mmを越えると、木質材料片を積層したとき、1本の木質材料片の積層交点が増えてしまい、十分に圧密化しにくくなる。
なお、木質材料片は、その長さについて完全には分別できるものではないため、その重量比で、70%以上、好ましくは80%以上に、所定長さのものが含有されていれば十分効果が発揮される。
【0025】
また、木質材料片の長さと厚さとの比は、特に限定されないが、長さが厚さの10倍以上となることが好ましい。長さが厚さの10倍未満であると、木質系複合材料の軸方向の強度が不十分となる恐れがある。
【0026】
また、木質材料片は、含水率を一定にすることが好ましい。含水率を一定にすることで生産時の木質系複合材料の品質バラツキがなくなる。好ましい含水率としては、0〜10%である。含水率を一定にする方法としては、例えば、温調したオーブン中に一定時間木質材料片を放置する方法が挙げられる。因みに、50℃のオーブンに24時間放置すると、含水率はほぼ5%程度に保たれる。
【0027】
本発明の木質系複合材料は、嵩密度が0.6以上であることが好ましい。、嵩密度が0.6未満では木質材料片の十分な結合が得られず、構造材として用いる場合、十分な強度を得ることができない恐れがある。さらに、空隙率は、特に限定されないが、10%以下であることが好ましい。空隙率が10%を越えると、木質系複合材料中の各木質材料片同士の結合が不十分となり、十分な強度を発現しなくなる恐れがある。
【0028】
本発明で用いられる結合剤としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の熱硬化型樹脂や熱可塑型樹脂系の接着剤や、天然物成分もしくは天然物から精製、抽出、変性等によって得られる天然物由来の接着剤のような合板やパーティクルボード等に用いられる木材工業用の接着剤が挙げられる。
天然物由来の接着剤としては、具体的には、ゼラチン、カゼイングルー、大豆グルー、にかわ、アルブミン等のタンパク質系接着剤、でんぷん、デキストリン、米糊、グルコマンナンなどのデンプン系接着剤、キチン・キトサンなどの動物系接着剤、セルロース系接着剤、リグニン系接着剤、タンニン系接着剤などが挙げられる。
これらの結合剤は、一種単独で用いてもよいし、また、又は複数種を併用してもよい。
また、結合剤は、液状でも粉末状でも構わないが、液状の場合は一般に木質材料片に噴霧したり、木質材料片と撹拌混合して予め木質材料片に担持させた状態でフォーミング型に供給され、粉末状の場合は、一般に木質材料片と均一に混合した状態で、フォーミング型に供給される。
特に、タンニン系接着剤は、天然木材からの抽出成分であるので木質材料片との親和性が良く、また、適度の粘着性を有し、更に、硬化すると高強度になるので好ましい。タンニン系接着剤はタンニン単独使用で加熱等によって硬化させてもよいが、耐久性が要求される用途においては、アルデヒド系化合物やイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物などの架橋剤を併用することが好ましい。タンニン系接着剤を抽出する樹種は特に限定されないが、ラジアータパインやブラックワトル、ミモザ、ケブラチョ、チェスナッツから採取されるものが好ましい。木材から抽出したタンニンが固体の場合には、必要に応じて水や有機溶媒に溶解又は分散させて使用することができる。
結合剤は、木質材料片に対し、質量基準で1〜20%の範囲で用いるのが好ましい。この結合剤の用量が少なすぎると接着が不十分となるし、また、多すぎても材料コストが嵩む割に接着性能が上がらず、外観や釘打ち性能が低下する、外観が木質的でなくなるなどの問題がある。
【0029】
上記のようにして得られた結合剤付き木質材料片をフォーミング型に投入する方法としては、オリエンテッド・ストランド・ボード(OSB)等の既存の木質系成形材料の製造装置で用いられるディスクオリエンター等の公知の配向手段をフォーミング型の上方に配置し、この配向手段により配向させながら投入する方法が使用できるが、上部の投入口から結合剤付き木質材料片が投入されスリット状の排出口に向かって幅が縮小する内面形状(嘴形状)の配向部を有するホッパをその排出口が各分割枠部の上部開口を臨むようにフォーミング型の上方に配置し、ホッパを介して投入する方法を用いることが好ましい。その他、幅方向に樋状体を並設させて、凹凸溝形状として、溝を流れることで並べる方法を用いることが可能である。
【0030】
すなわち、上記のようなホッパを用いることによって、フォーミング型の各分割枠部に効率よく、すなわち、ロスなく結合剤付き木質材料片を供給することが可能になる。ホッパの内面形状はフォーミング型の形状により決まってくるが、結合剤付き木質材料片が詰まらない形状であれば良い。具体的には、排出口のスリット幅を15mm以上で分割枠部の内幅より小さい形状であることが好ましい。
【0031】
フォーミング型の形状は、得ようとする木質系複合材料によって適宜決定されるが、例えば、1000×500×30mmの板形状の木質系複合材料を得る場合は、フォーミング型により1000×500×100mm程度の積層マットを形成させるのが好ましい。すなわち、積層マットの縦、横の寸法は、得ようとする木質系複合材料の縦、横と同じ寸法或いは、少し大きめで作製しておき、積層マットの厚さは少なくとも得ようとする木質系複合材料の3倍以上の厚さとすることが好ましい。
【0032】
また、フォーミング型に一定間隔の分割枠部を形成する方法としては、特に規定されるものではないが、得ようとする木質系複合材料の縦、横と同じ寸法或いは、少し大きめの枠状をした型本体内部を厚さ数mmの金属板を用いて仕切る程度でよい。分割する方向については、木質材料片を配向させた方向と配向と直角方向では強度特性が異なるため、必要な成形品により決まる。因みに、上記のような1000×500×30mmの板形状の木質系複合材料を得る場合なら、1000×500×100mmの枠状をしたフォーミング型本体内を高さ100mmの19枚の仕切り板を用いて、幅方向(500mm側)に20mmの一定間隔で仕切ったようなフォーミング型を用いることが好ましい。また、仕切り板は、フォーミング型本体に固定されていても構わないし、着脱自在になっていても構わない。
【0033】
また、木質材料片の厚さと分割枠部の内幅には、高強度の木質系複合材料を得るためにより好ましい関係があり、例えば、木質材料片の厚さが1mm〜11mmである場合、フォーミング型の分割枠部の内幅を20mm〜40mmとすることが好ましく、木質材料片の厚さが3mm〜5mmである場合、フォーミング型の分割枠部の内幅を20mm〜30mmとすることが好ましい。
【0034】
すなわち、分割枠部の内幅が狭過ぎると、分割枠部内にきれいに木質材料片が落ちず、自動で生産する場合トラブルになりやすく、分割枠部の内幅が広過ぎると、木質材料片が配向しにくくなり、配向方向での必要強度がでなくなる恐れがある。フォーミング型で配向された木質材料片からなるマットは、フォーミング型全体を取り外すか、フォーミング型本体を残し仕切り壁となる仕切り板のみを取り外した状態で加圧・加熱可能なプレス機へ投入されてプレスされるが、仕切り板やフォーミング型を取り外した時に、木質材料片の積層状態が崩れる場合には、予め、フォーミング型に崩れ防止シートを配置しておき、そのシートごとプレス成形することも可能である。即ち、例えば、崩れ防止シートとして新聞紙をフォーミング型内に敷いておき、フォーミング型を取り外す際、マットを新聞紙でくるみ、紐や粘着テープで固定した状態でプレス成形してもよい。
【0035】
圧縮については、特に限定されないが、通常、プレス機による機械的加圧、例えば油圧等により行われる。例えば、プレス機であれば、既存の木質系材料成形用の縦型プレス機や連続プレス機を垂直方向動作にしたものを用いることができる。プレス機の温度条件は、通常100〜250℃の範囲が好ましい。圧力条件は、1〜10MPaの範囲が好ましい。プレス時間は、結合剤が硬化する時間であればよい。1MPa未満であると、充分に圧縮できないし、また、10MPaを越えると、プレスのための設備が高価になる。プレス時間は、結合剤が硬化する時間の加熱と圧力を加えればよい。
【0036】
加熱は、通常100〜250℃の範囲が好ましい。加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、熱盤のように木質材料片の表面から伝熱により内部に熱を伝える方法や、蒸気噴射や高周波加熱等のように内部を直接加熱する方法が挙げられる。加熱と加圧とは、同時に行ってもよいし、加圧をした後に加熱をしてもよいし、加熱した後に加圧してもよい。蒸気で加熱する場合は、0.05〜2MPaの圧力で蒸気を噴射する。0.05MPa未満では、木質材料片が軟化せずに、圧縮できないし、2MPaを越えると、設備が大型化しすぎて現実的ではないためである。
【0037】
さらに、本発明の木質系複合材料を製造する場合、プレス成形後、得られる木質系複合材料の寸法精度や表面性を向上させるために、アニール処理や、切削、サンディング加工を行うことが好ましい。
【0038】
本発明の木質系複合材料として、好ましくは、重量比70%以上が、密度0.3〜0.6g/cm、厚さ1〜11mm、長さ20〜150mmの範囲にある多数のスギとヒノキの木質材料片と、これらの木質材料片同士を結合させるための結合剤とを含む材料を、木質材料片の長さ方向の向きをほぼ同一方向に配向させた状態で積み重ね、加熱および積み重ね方向に圧縮して、前記木質材料片同士を結合させて得られる嵩密度0.6g/cm以上の複合材料であるのが好ましい。
木質系複合材料は、更には、木質材料片の配向方向と圧縮方向とに垂直な方向を厚さ方向となるようにするのが好ましい。
【0039】
本発明の木質系複合材料は、種々の用途に用いられ、例えば、柱、梁、土台等の構造材、間柱(壁芯材)、根太、胴縁、大引、垂木、野縁等の準構造材、建具、階段、枠、框等の造作材、造作芯材(造作材の芯材)、床材、壁材、天井材等の面材(表面材という場合もある。)、その他、軸組材、木軸、壁芯材等に好適に用いられる。
【0040】
本発明の木質系材料を用いた間柱は、長手方向と圧縮方向にそれぞれ垂直な方向を壁面と垂直となるように設置するため、接合具の通りがよく、かつ接合具の保持力が大きく、水分の吸収による膨張が小さいことから、壁面材を強固に固定でき、壁内水分の上昇による間柱の膨張が壁面に与える影響が少なく、安定した壁面を維持できる。
根太として用いる場合は、長手方向と圧縮方向にそれぞれ垂直な方向を上下方向とすると、上下方向が左右方向より木質材料が均一に配置されており、めり込みに対する耐力が大きく、結合具の通りがよく、結合具の保持力が大きく、水分の吸収による膨張が小さいことから、床下からの水分による変形が小さく、大引き、及び床下地材や床材との結合力が大きい床組ができる。
天井野縁、野縁受けとして用いる場合は、長手方向と圧縮方向にそれぞれ垂直な方向を上下方向とすることが好ましいが、床に比べて水分の影響が少ないため、長手方向と圧縮方向にそれぞれ垂直な方向を水平方向としてもよい。
建具芯材として用いる場合も、間柱と同様の方向で用いるとよい。
水分の吸収による膨張が圧縮方向とそれに垂直な方向で異なる理由は、成形体の圧縮方向に圧密化しており、木質材料片を構成する木質繊維も圧縮方向につぶされている。よって、成形体に水分が入るとつぶされている木質繊維の一部が回復し、圧縮方向の膨張が大きくなる。よって、圧縮方向と垂直な方の膨張が小さくなる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例および比較例により、本発明を具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例1−2、比較例1−3(表層壁パネルの衝撃強度試験)
本発明の木質系材料及び比較のための対照木質系材料を木軸とする表層壁パネルを試験体として下記のとおり作製し、これについて、下記の衝撃強度試験および耐変形性能試験を行った。
(1)試験体
以下の木軸と石膏ボードを、酢酸ビニル系接着剤による接合とタッカー固定とにより組み付けて表層壁パネルとした。
木軸:木質チップの種類が異なる各種木質材であって、次のようにして作製されたもの
細長く破砕された木質チップ100質量部と結合剤(イソシアネート系接着剤)7質量部との混和物を、木質チップを長手方向にほぼ配向させて積層させ、木質チップがその長手方向に対して垂直方向に扁平されて木質材料片の断面積を圧縮させ、結合剤により木質材料片同士を結合させる(密度:0.6〜0.7g/cm)。
石膏ボード:長さ2,310または2,670mm、幅910mm、厚さ9.5mm
(2)試験方法:(「内装壁ユニット」BLT WU−02:2005」参照)
(財)ベターリビングの優良住宅部品性能試験方法書を参照し、衝撃強度試験を行い、目視と残留変形量測定により評価した。
試験体(表層壁パネル)の上下と高さ方向のほぼ中央とを、鉄骨で組んだユニット枠に組み込んだ矩形状の木枠の上下端部と左右側部に取り付けた横桟とで固定し、パネル高さの下側から約1/4の位置の木軸上に、吊り元から重心までの距離が1000mmになるように紐で吊るした15kgの砂袋を、45°の角度から自然落下させて衝撃を与えた。
これを繰り返し行い、割れや破断等の異常の有無の確認と変形量を測定した。
間仕切り壁のBL規格に準じ、衝撃を5回繰り返した後でも割れや破断等の異常がないこと、及び変形による変位量が高さの1/120以下であることを、合格点とし、割れや破断等の異常の有無については、以下の基準で評価した。
s:スギ(100%)
h:ヒノキ(100%)
k:解体材(100%)
s/h:スギ(50%)/ヒノキ(50%)
s/h/k:スギ(25%)/ヒノキ(25%)/解体材(50%)
スギ、ヒノキは和歌山県産間伐材
解体材は建築解体材(ユキ工業)
◎:10回目まで割れや破断なし
○:5回目まで割れや破断なし
×:5回目までに割れや破断あり
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例3−4、比較例4−5(天井載荷試験)
本発明の木質材及び比較のための対照木質材を木軸とする天井(軸組パネル)を試験体として下記のとおり作製し、これについて、下記の耐変形性能試験を行った。
(1)試験体
以下の木軸と石膏ボードを、酢酸ビニル系接着剤による接合とタッカー固定とにより組み付けて天井(軸組パネル)とした。
木軸:木質チップの種類が異なる各種木質材であって、次のようにして作製された、木質系複合材料からなる。
細長く破砕された木質チップ100質量部と結合剤(イソシアネート系接着剤)7質量部との混和物を、木質チップを長手方向にほぼ配向させて積層させ、木質チップがその長手方向に対して垂直方向に扁平されて木質材料片の断面積を圧縮させ、結合剤により木質材料片同士を結合させる。
野縁は長さ2750mm、幅40mm、厚さ27mmと幅30mm、厚さ20mmの2種類でピッチ303mmで野縁受けに固定する。野縁受けの寸法は長さ1845mm、幅40mm、厚さ27mmでピッチ910mmである。
天井の寸法は2730mm×1820mmである。
石膏ボード:長さ1820mm、幅910mm、厚さ9.5mm
<試験方法>
試験体(天井軸組パネル)を、4本の吊束(27mm×40mm)で支持する天井軸組(パネル)の中央の野縁位置にフック付きネジ(ネジ長さ=35mm)を取り付けてフック先端に掛けた吊下げ金具に以下のように載荷を行い、変位をダイヤルゲージで0.01mm単位で測定する。
載荷点および測定点
載荷は4本の吊束で支持する天井軸組の中央の野縁に行う。変位測定点は載荷点及び載荷する野縁と野縁を支持する野縁受の交差部とする。
1.強度試験
載荷する荷重を98N(10kgf)、196N(20kgf)、245N(25kgf)と順次変えて、載荷後の変位を測定する。
2.経時的耐変形性能試験
147N(15kgf)の荷重を載荷し、載荷直後、1日後、3日後、5日後、7日後、14日後の変位を測定する。
結果を表2、3に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

s/h/k:スギ(25%)/ヒノキ(25%)/解体材(50%)
スギ、ヒノキは和歌山県産間伐材
解体材は建築解体材(ユキ工業社製)
これらの試験において、本発明の木質系材料を用いてなる野縁は、良好とされる変位量4.5mm以下の評価基準をクリアーした。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の木質系複合材料は、耐衝撃性に優れ、割れや破断等の異常を招来しにくく、変形し難いし、また、原材料に、建築解体材由来の木質片を多少用いても所期の効果をある程度充足でき、全体としてコストダウンを図れるので、柱、梁、土台等の構造材、間柱(壁芯材)、根太、胴縁、大引、垂木、野縁等の準構造材、建具、階段、枠、框等の造作材、造作芯材(造作材の芯材)、床材、壁材、天井材等の(表)面材、軸組材、木軸、壁芯材等に好適に用いることができ、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スギとヒノキの細長い木質片を少なくとも10重量%含有する木質材料片と、結合剤とを含む材料からなり、長手方向にほぼ配向された状態で積み重ねられた木質材料片がその積み重ね方向に圧縮、加熱され、結合剤により木質材料片同士が結合されてなることを特徴とする木質系複合材料。
【請求項2】
圧縮が、木質材料片の断面積が平均70%以下になるように行われることを特徴とする、請求項1に記載の木質系複合材料。
【請求項3】
木質材料片が、さらに細長い解体材木質片を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の木質系複合材料。
【請求項4】
木質材料片が、スギとヒノキの細長い木質片のみからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の木質系複合材料。
【請求項5】
スギおよび/またはヒノキが間伐材であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の木質系複合材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる構造材。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる準構造材。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる造作材。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる造作芯材。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる面材。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる軸組材。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる木軸材。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質系複合材料を用いてなる壁芯材。