木造住宅用CADデータの変換方法及びそのシステム
【課題】木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行うことができるとともに、データ修正後の再変換も簡単に行うことができる木造住宅用CADデータの変換方法及びそのシステムを提供する。
【解決手段】(1)第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力し、(2)第二のCADに必要な全てのデータ項目を第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、対応データ項目と、不足データ項目と、不要データ項目とを特定し、(3)対応データ項目のデータを第二のCADのルールに従って計算して第二のCADのデータに変換し、(4)不足項目のデータを内蔵アルゴリズムに従って計算して第二のCAD用のデータを生成し、(5)変換したデータ及び生成したデータとともに不要データ項目を保管フォルダに保存し、(6)保管フォルダ内のデータを第二のCADに出力する方法。
【解決手段】(1)第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力し、(2)第二のCADに必要な全てのデータ項目を第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、対応データ項目と、不足データ項目と、不要データ項目とを特定し、(3)対応データ項目のデータを第二のCADのルールに従って計算して第二のCADのデータに変換し、(4)不足項目のデータを内蔵アルゴリズムに従って計算して第二のCAD用のデータを生成し、(5)変換したデータ及び生成したデータとともに不要データ項目を保管フォルダに保存し、(6)保管フォルダ内のデータを第二のCADに出力する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行うことができるとともに、データ修正後の再変換も簡単に行うことができる木造住宅用CADデータの変換方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工務店が建築する木造住宅の設計はほとんど意匠CADにより作成されており、プレカット工場が製造する木造住宅用のプレカット材の設計は構造CADにより作成されており、また木造住宅の強度計算は構造計算CADにより行われている。しかしこれらのCADはそれぞれ違ったデータ形式で開発されているので、互換性が全くない。そのため、例えば意匠CADのデータを構造CADに用いる場合には、キーボードによりデータ入力を行っているのが現状である。特に在来工法の場合使用するプレカット材の種類が極めて多いので、データ入力は煩雑であり、また誤入力のおそれも大きい。
【0003】
意匠CADデータ、構造CADデータ及び構造計算CADデータの連携のために、木造住宅CAD/CAMデータ連携標準化委員会が組織化され、木造住宅CAD/CAMデータ連携標準化仕様としてCEDXMが提案された。CEDXMはXML(Extensible Markup Language)で記述されており、タグ化されているので、内容の理解が容易である。しかもCEDXMは、部品のメーカーや型番まで表現できるので、単に意匠CADとプレカットCADのリンクだけでなく、住宅生産関係者の間の標準データ仕様として利用できる。
【0004】
工務店がCEDXMフォーマット形式でプレカット工場に送ったCADデータから、プレカット工場がCAMデータを生成できれば、プレカット業務の合理化と効率化が可能になると期待される。さらにプレカット工場のCAD/CAMデータを工務店の意匠CADに戻せれば、施工管理データとして活用できると考えられる。しかし、工務店の意匠CADデータをCEDXMフォーマット形式でプレカット工場のCAD/CAMに入れても、そのまま使える伏図にはならないことがほとんどである。というのも、工務店が作成した意匠CADデータは、見た目にはしっかりした伏図のように見えるが、実際は壁が重なっていたり、柱が何本も重なっていたり、梁が一部重なっていたりすることが多いからである。そのため、工務店の意匠CADデータからプレカット工場用の構造CADデータを生成する場合に、プレカット材に必要なデータ(例えば梁などの横架材の端部処理の仕方)を計算したり、構造安全上のチェックしたりする必要がある。
【0005】
しかしながら、現在数多くの意匠CAD、構造CAD及び構計算CADがそれぞれ別個に市販されており、それらの間には互換性がない。従って、CADデータの変換をしようとすると個々のCAD同士の変換ソフトを作成しなければならない。しかし、工務店及びプレカット工場のほとんどは零細であり、多数の変換ソフトを保持することは実質的に不可能である。そのため意匠CADと構造CADとの間や構造CADと構造計算CADとの間でのデータの電子交換は行われておらず、キーボードを介した手入力で行っているのが現状である。この不便さのために設計コストが高くなり、ユーザに過大な負担を負わせてきた。
【0006】
その上、例えばある意匠CADと構造CADとでデータを変換する場合、構造CADに必要なデータを意匠CADが全て有することはなく、また一方のCADにあるデータが全て他のCADに必要である訳ではない。例えば図18に示すように、意匠CADには通常構造CADに必要ないデータ項目があると同時に、構造CADに必要なデータ項目の幾つかを有さない。すなわち、両CADに共通するデータ項目と、不要データ項目と、不足データ項目とがある。そのため、意匠CADのデータを構造CADのデータに従来の変換システムにより変換する場合、不足データ項目については手入力等によりデータを生成できるが、不要データ項目は消失し、変換された構造CADに含まれないことになる。その結果、意匠CADから構造CADへの変換は一方向であり、逆方向の変換(再変換)をするときには不要データ項目として消失したデータ項目は不足データ項目となり、再度手入力等によりデータを生成する必要がある。実際の木造住宅の設計では意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間を複数回行き来して修正を繰り返すことが多いので、不要データ項目を無視すると再変換にも手間がかかることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行うことができるとともに、データ修正後の再変換も簡単に行うことができる木造住宅用CADデータの変換方法、及びそのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行う場合、(1) 共通データとともに不足データ及び不要データがあること、(2) 従来の変換方式では不要データは無視されてしまうこと、(3) 従って逆方向に再変換する際には無視された不要データが不足データとなって、入力及び再計算の必要が生じることに注目し、不要データを特定する工程を設けるとともに、特定した不要データを変換データ及び生成データとともに保存することにより、逆方向に再変換する際にそのまま利用でき、もって無視された不要データの入力及び再計算の必要がなくなることを発見し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換する本発明の方法は、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力し、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定し、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換し、(4) 前記不足項目のデータを内蔵アルゴリズムに従って計算して前記第二のCAD用のデータを生成し、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保管フォルダに保存し、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力することを特徴とする。
【0010】
前記第一のCADのデータ項目のリストから前記対応データ項目を順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目として特定するのが好ましい。
【0011】
まず前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とするのが好ましい。
【0012】
前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較するのが好ましい。
【0013】
前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータは手入力し、計算可能なデータは前記内蔵アルゴリズムに従って生成するのが好ましい。
【0014】
第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換する本発明のシステムは、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する手段と、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定する手段と、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換する手段と、(4) 前記不足項目のデータに対応する前記第二のCADのデータを生成するための計算アルゴリズムを内蔵する手段と、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保存する保管フォルダと、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力する手段とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の変換システムは、前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成する手段と、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とする手段とを有するのが好ましい。
【0016】
本発明の変換システムにおいて、前記計算用ファイルは前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含み、前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較するのが好ましい。
【0017】
本発明の変換システムは、前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータを手入力する手段を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では全ての木造住宅設計用CADに共通するCEDXMフォーマット形式を用いるので、いかなるCAD間の変換も行うことができる。その上、変換前CADと変換後CADとの間に必然的に存在する不足データ項目及び不要データ項目を特定し、不足データ項目のデータについては内蔵アルゴリズムに従って新規に生成するので変換作業を自動化でき、かつ不要データ項目を消失させずに保存しておくので、逆方向に再変換する時に不要データ項目が不足データ項目になることがない。
【0019】
そのため、例えば意匠CADのデータを構造CADのデータに変換し、構造材の設計を修正し、構造計算CADにより木造住宅の強度が十分であることを確認した後、修正した構造CADのデータを意匠CADに反映させるために意匠CADのデータに再変換する場合でも、不要データが保存されているためにデータ不足を生じることなく簡単に意匠CADに変換することができる。このように、本発明の変換システムにより、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間でデータ不足の問題を生じることなく確実にデータ変換を行うことができる。その結果、関連なく存在している現在の木造住宅用意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間でのスムーズなデータ変換が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の変換システムにより変換し得るCADの関係を例示する概略図である。
【図2】本発明のCADデータ変換方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートにおける工程4及び工程5の具体例を示すフローチャートである。
【図4】本発明のCADデータ変換方法の別の例を示すフローチャートである。
【図5】意匠CADのデータを構造CADに変換する方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】構造CADのデータを構造計算CADに変換する方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートにおける工程5の具体例を示すフローチャートである。
【図8】木造住宅の意匠CADデータの一例を示す平面図である。
【図9】図8に対応する構造CADデータを示す平面図である。
【図10】2本の構造材の接合状態を示す部分図であって、(A) は意匠CADデータを示し、(B) は(A) の意匠CADデータから変換された構造CADデータを示し、(C) は最終的な構造CADデータを示す。
【図11】木造住宅の別の例を示す平面図であって、(A) は意匠CADデータを示し、(B) は構造CADデータを示す。
【図12】図11の(B) の部分Xに対応する部分拡大立面図である。
【図13】2本の構造材の接合状態に関する構造CADデータを構造計算CADデータに変換する様子を示す部分図であって、(A) は仕口の変換を示し、(B) は継ぎ手の変換を示す。
【図14】木造住宅を示す概略図であって、(A) は平面図であり、(B) は見付け面積を示す正面図である。
【図15】火打ち土台の一例を示す部分平面図である。
【図16】鎌継ぎ手の例を示す部分図である。
【図17】蟻仕口の例を示す部分図である。
【図18】意匠CADのデータ、構造CADのデータ及び構造計算CADのデータの間における過不足を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の変換システムは、市販されている任意の意匠CAD-A,CAD-B,CAD-C・・・と任意の構造CAD-A,CAD-B・・・との間,任意の構造CAD-A,CAD-B・・・と任意の構造計算CAD-A・・・との間、任意の構造CAD-A,CAD-B・・・と任意の構造CAD-A,CAD-B・・・との間などで、データ変換を自由に行うことができる。各CADは別々のフォーマット形式で構成されているので、共通のフォーマット形式としてCEDXMを用いる。CEDXMでは各データがタグ化された形式で表現される。
【0022】
第一のCADを変換前CADと呼び、第二のCADを変換後CADと呼ぶと、木造住宅設計用の(変換前)CADの邸宅ファイルには非常に多数のデータが含まれているだけでなく、例えば表1に簡略化して示すように、変換後CADに必要なデータ項目に対応するデータ項目B(1)、B(3)、B(5)、B(6)、B(8)及びB(9)と、変換後CADに不要なデータ項目B(2)、B(4)、B(7)及びB(10)と、不足したデータ項目とがある。本発明では、対応データ項目B(1)、B(3)、B(5)、B(6)、B(8)及びB(9)を変換後CADのルールに従って計算し、変換データを作成する。不足データ項目については、変換すべきデータがないので、施工主の好み等により異なるデータを必要に応じてキーボードにより入力した後、内蔵アルゴリズムに従って計算し、変換後CAD用のデータを生成する。不要なデータ項目B(2)、B(4)、B(7)及びB(10)については、単なる変換処理では変換後CADに含まれないが、本発明では保管フォルダに保存するので、変換前CADに逆方向に変換する場合に不足データ項目となることがない。
【0023】
【表1】
【0024】
図2は本発明の変換システムの原理を示すフローチャートである。まず第一のCAD(変換前CAD)のファイルBのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する(工程1及び2)。ファイルBのデータ項目数をmとし、その種類をB(m)とする。木造住宅用CADはいずれもCEDXMへの変換機能を有するので、そのデータをCEDXMフォーマット形式で出力できるとともに、CEDXMフォーマット形式で入力したデータを自己の形式に変換することもできる。従って、全てのCAD間のデータのやり取りをCEDXMフォーマット形式で行うことができる。
【0025】
次に第二のCAD(変換後CAD)を選択する(工程2)。変換後CADのデータ項目数をnとし、その種類をA(n)とする。
【0026】
不要データ項目を特定するために、ファイルBの全てのデータ項目B(m)を含む計算用ファイルB1を作成する(工程3)。計算用ファイルB1のデータ項目数をm1とし、その種類をB1(m1)とする。ここでは、m1=m、及びB1(m1)=B(m)である。
【0027】
変換後CADの各データ項目A(1),A(2),A(3)・・・A(n)を計算用ファイルB1の全データ項目B1(1),B1(2),B1(3)・・・B1(m1)と順次比較する(工程4)。図3は工程4の具体的な手順の一例を示す。変換後CADの任意のデータ項目をA(c)とし、計算用ファイルB1の任意のデータ項目をB1(d)とすると、まずA(1)をB1(1),B1(2),B1(3)・・・B1(m1)と順次比較する。表1に示す例ではA(1)はB1(1)(B(1)に対応)に対応するので、B1(1)のデータをA(1)のルールに従って計算して変換データB1’(1)とし、それを変換後CADのA(1)のデータとする。この変換を行うとともに、計算用ファイルB1のデータ項目リストからB1(1)を削除し、かつデータ項目数をm1−1とする。この手順をc=1,2,3・・・nについて順次行う。その結果、B1(3),B1(5)・・・B1(9)も変換されるとともに、計算用ファイルB1のデータ項目リストから削除される。
【0028】
c=nになったとき、データ項目数m1が0より大きいかをチェックする。m1>0の場合、計算用ファイルB1の一部のデータ項目が変換されずに残っている。すなわち、計算用ファイルB1にあって変換後CADにないデータ項目があることになる。これらのデータ項目は変換する必要がないので、不要データ項目と呼ぶことができる。工程5が終了した時点でのm1の値は不要データ項目の数を示す。不要データ項目は逆方向の変換、すなわちA(n)→B(m)の変換の時に必要であるので、保管フォルダFに保存する(工程5)。またm1=0の場合、計算用ファイルB1の全データ項目が変換されたので、計算用ファイルB1には不要データ項目がないことになる。
【0029】
例えば表1に示すA(11)のように、変換後CADの任意のデータ項目A(c)に対応するデータ項目が計算用ファイルB1にない場合、すなわち変換前CADに不足データがある場合、その不足データが施工主の好み等により変動し得る任意性のあるデータか否かを判定する。もし不足データが任意性のあるデータの場合、不足を補うデータをキーボードにより入力する。また不足データが計算により求められる性質のものである場合、内蔵アルゴリズムに従ってA(c)のデータを新規に生成する。
【0030】
内蔵アルゴリズムは、構造材の種類及び接合の態様等に応じて決められている。例えば直角に接合する2本の構造材がある場合、意匠CADでは接合態様まで特定されていないので、それを蟻仕口として必要なサイズデータを作成する。なお、詳細は後述するが、蟻仕口の具体的な形状及びサイズは各構造CAD(特定の加工装置の工具のサイズに関連している。)ごとに異なるので、意匠CAD→構造CADの変換により蟻仕口の形状及びサイズまで決めるよりも、蟻仕口の長さ(例えば図10の(B) に示すD)だけを決め、それから各構造CAD内で蟻仕口の具体的な形状及びサイズを決めるほうが効率的である。というのも蟻仕口の具体的な形状及びサイズは構造CADから個々のプレカット材を加工するときに必要であるが、構造計算のときには不要であるからである。
【0031】
変換後CADのデータは、変換データと、生成データと、不要データとからなる。これらのデータは邸別保管フォルダFに保存するとともに、CEDXMフォーマット形式で出力する。
【0032】
図2のフローチャートは、第一のCADから第二のCADに最初に変換する場合を示すが、本発明の変換システムは第一のCAD→第二のCADの変換の後に、第二のCAD→第一のCADの逆方向の変換(再変換)も簡単に行うことができ、さらに第一のCAD→第二のCADの再変換も簡単に行うことができる。図4は再変換を含むフローチャートである。再変換の場合邸別保管フォルダFが既にあるので、邸別保管フォルダFからファイルBの全てのデータ項目B(m)とともに不足データ項目F(p)を取得し、計算用ファイルB1を作成する。後は図2のフローチャートと同様に変換データ及び生成データを作成し、不要データを特定する。
【0033】
本発明の以下の具体例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。構造材情報は極めて多数あるので以下の具体例では実際に行う計算等の一例を示すが、他の計算等も同様に行うものとする。
【0034】
具体的1
例えば図1で意匠CAD-BのファイルBのデータを構造CAD-Aのデータに変換する場合について、図5を参照して以下具体的に説明する。
【0035】
選択した意匠CAD-BのファイルBが有する邸宅の意匠データは、例えば図8に示すように、単に構造材が連結した状態を示し、連結部の形状(仕口、継ぎ手等)を特定していない。この意匠CADデータに対応する構造CADデータは図9に示される。ただし図示の関係上、構造材の太さは図8と図9で一致しておらず、また図9では構造材は分離した状態で示されている。
【0036】
意匠CAD-BのファイルBが有するデータの中には全ての構造材に関するデータがあり、例えば柱に関するデータも多数ある。1本の柱のデータは、例えば以下のように示される。
柱1
始点 終点
X 100 100
Y 100 100
Z 540 3285
幅 105×105
【0037】
このように多数の構造材の情報を有する意匠CADデータをCEDXMフォーマット形式に変換する。構造材として1本の柱材及び1本の横架材を例にとってCEDXMフォーマット形式で表すと、下記の通りとなる。
<構造材情報>
<柱材>
<層>1</層>
<種類>
<コード>1</コード>
</種類>
<形状>
<コード>1</コード>
</形状>
<寸法>
<寸法1>105</寸法1>
<寸法2>105</寸法2>
</寸法>
<樹種>檜</樹種>
<等級>1等</等級>
<配置点 点=”17750.000154, 19820.000476”/>
<偏心/>
<回転角度>0</回転角度>
<上端>
<Z>3285</Z>
</上端>
<下端>
<Z>540</Z>
</下端>
</柱材>
<横架材>
<層>2</層>
<種類>
<コード>4</コード>
</種類>
<形状>
<コード>1</コード>
</形状>
<寸法>
<寸法1>105</寸法1>
<寸法2>150</寸法2>
</寸法>
<樹種>R.W集成</樹種>
<等級>KD</等級>
<始端3D点=”17093.90, 25951.80, 4491.00”>
<補正値>−21.00</補正値>
<形状>
<コード>2</コード>
</形状>
</始端3D>
<終端3D点=”19003.90, 25951.80, 4491.00”>
<補正値>−21.00</補正値>
<形状>
<コード>2</コード>
</形状>
</終端3D>
<偏心値>0.00</偏心値>
</横架材>
【0038】
例えば第一の構造材1の側面に第二の構造材2が直角に接合する場合、意匠CADのデータは、図10の(A) に示すように第二の構造材2の一端が第一の構造材1の側面に接した状態を示すが、構造CADのデータは、図10の(C) に示すように第二の構造材2の一端に設けられた蟻2bが第一の構造材1の蟻穴に収容された状態を示す。しかし、蟻2bの形状及びサイズは構造CADごとに異なるので、意匠CADデータから変換された構造CADデータは図10の(B) に示すように第二の構造材2の端部2aが第一の構造材1の穴に収容された状態とし、図10の(C) に示す蟻2bの形状及びサイズは個々の構造CADにより設定する。従って、本発明の変換システムにより意匠CADデータから変換した構造CADデータは、図10の(B) に示すように第二の構造材2の端部2aが深さDまで第一の構造材1の穴に収容された状態とする。
【0039】
一回目の変換の場合邸別保管フォルダFがないので、計算用ファイルB1のデータ項目は意匠CAD-BのファイルBのデータ項目と全く同じである。すなわち、m1=m、及びB1(m1)=B(m)である。二回目以降の変換の場合、本発明の変換システムでは既変換のデータ等が邸別保管フォルダFに保存されているので、それらを計算用ファイルB1のデータ項目とすると計算を省略することができる。この場合、m1=m+p、及びB1(m1)=B(m)+F(p)である。ただし、F(p)は不足データ項目である。
【0040】
構造CAD-Aのデータ項目と計算用ファイルB1のデータ項目との比較の結果対応関係が認められたデータは、例えば図10の(A) に示す意匠データと(C) に示す構造データである。そこで、第二の構造材2の一端のX座標をDだけ移動させる(第二の構造材2をDだけ長くする)。このような変換を接合する全ての構造材について行い、図10の(B) に示す構造データに変換する。既に述べたように、(B) から(C) への変換は構造CAD自身で行う。
【0041】
例えば図11の(A) に示すように意匠CADは通常意匠に関係ない筋交いを表示しないので、意匠CAD-BのファイルBのデータを納めた計算用ファイルB1には筋交いのデータが不足している。そのため、図11の(B) 及び図12に示すように筋交いのデータ(幅、長さ及び位置)を構造CADに追加する必要がある。図12では、筋交い13は柱材11,11’と横架材12,12’とで囲まれた四角形の2つの対角線に設けられている。筋交いのデータは構造CADの筋交いに関する内蔵アルゴリズムに従って生成する。この内蔵アルゴリズムによれば、下記の優先順位により筋交いを設ける位置を決める。
(1) 開口部を避ける。
(2) 外壁のコーナー部に優先的に筋交いを設ける。
(3) 1モジュールを超える柱間に筋交いを設ける。
(4) これらの条件下で各筋交いの形状及びサイズを決める。
・
・
・
【0042】
内蔵アルゴリズムは構造材ごとに異なるので、本発明の変換システムは構造材の全ての種類に対するアルゴリズムを内蔵する必要がある。内蔵アルゴリズムは基本的には建築基準に従う。
【0043】
構造CAD-Aに不要なデータは、変換した全てのデータ及び内蔵アルゴリズムにより生成した全てのデータとともに、邸別保管フォルダFに保存する。
【0044】
具体的2
構造CAD-Aのデータを構造計算CAD-Aのデータに変換する場合、図6に示すように、まず構造CAD-AのファイルAのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する(工程1)。ファイルAのデータ項目数をnとし、その種類をA(n)とする。次に構造計算CAD-Aを選択する(工程2)。構造計算CAD-Aのデータ項目数をxとし、その種類をC(x)とする。
【0045】
不要データ項目を特定するために、ファイルAの全てのデータ項目A(n)を含む計算用ファイルA1を作成する(工程4)。計算用ファイルA1のデータ項目数をn1とし、その種類をA1(n1)とする。一回目の変換の場合n1=n、及びA1(n1)=A(n)であり、二回目以降の変換の場合n1=n+q、及びA1(n1)=A(n)+F(q)である。ただし、F(q)は不足データ項目である。
【0046】
構造計算CAD-Aの各データ項目C(1),C(2),C(3)・・・C(x)を計算用ファイルA1の全データ項目A1(1),A1(2),A1(3)・・・A1(n1)と順次比較する(工程5)。図7は工程5の具体的な手順の一例を示す。構造計算CAD-Aのデータ項目と計算用ファイルA1のデータ項目との比較として、例えば耐力壁の場合、構造材のデータが計算用ファイルA1にあるか否か、階高のデータが計算用ファイルA1にあるか否か、耐力壁の種類、使用箇所及び使用方法が計算用ファイルA1にあるか否か等をチェックし、ない場合にはデータをキーボードにより入力する。上記はチェック項目の例であり、これら以外にも必要な項目は全てチェックする。さらに例えば仕口及び継ぎ手がある場合、図13の(A) 及び(B) に示すように、仕口及び継ぎ手がない構造に変換する。このように構造計算では構造材の接合態様は無視し、一体構造として扱う。
【0047】
住宅は一般に横長であるので、図14の(A) においてL方向から見た場合の面積の方がD方向から見た場合の面積より大きい。そこで図14の(B) に示すようにL方向から見た場合の面積(ハッチング部10aで示す)を見付け面積と呼ぶ。L方向の風の方がD方向の風より大きな力を住宅に与えるので、見付け面積は住宅の耐風力を評価するときに重要である。しかし計算用ファイルA1には見付け面積のデータはないので、内蔵アルゴリズムに従って計算しなければならない。すなわち、見付け面積は不足データであり、計算した見付け面積は生成データである。例えば見付け面積に対する耐力が建築基準法に従って不十分である場合、見付け面積を算出する構造CADのデータの幾つかを変更し、再度構造計算CADに変換して見付け面積に対する耐力を再計算し、評価する。
【0048】
図15に示すように、構造CADには横架材1,2に設けられた火打ち土台3のデータがあるが、火打ち土台3の上に合板等の補強材が取り付けられるので、耐荷重を評価する場合に火打ち土台3のデータは不要である。従って、構造CADから構造計算CADへの変換の場合に、火打ち土台3のデータは不要データとして扱う。
【0049】
以上不足データ及び不要データを例示したが、勿論その他にも多数の不足データ及び不要データがあるので、それらを上記と同様に処理する。
【0050】
具体例3
構造CAD同士でも変換する必要があることがある。というのは、各構造CADはNC加工機に対応しているので、プレカットに用いるNC加工機が変更されると、構造CADも変更しなければならない。例えば構造材の各部の寸法はNC加工機の属性に依存するので、NC加工機の変更(構造CADの変更)に応じて構造材の各部の寸法を変更しなければならない。図16に示す例では、(A) は構造CAD-Aの鎌を示し、(B) は構造CAD-Bの鎌を示す。鎌のサイズ及び形状は異なるので、構造CAD-Aの鎌データを構造CAD-Bの鎌データに変換するに際して、構造材1及び2の接合線とグリッド線との間隔をDAからDBに変更する。このように各構造CADのルールに従った変換をすることにより、第一の構造CADのデータを第二の構造CADのデータに変換することができる。同様に、図17に示すように仕口の形状も構造CADごとに異なるので、距離DAをDBに変更する変換を行う必要がある。
【0051】
以上本発明を添付図面を参照して説明したが、本発明はそれに限定されず、技術的思想の範囲内で種々の変更をすることができる。
【符号の説明】
【0052】
A(n)・・・第二のCAD(変換後CAD)の全データ項目
n・・・第二のCADのデータ項目数
A(c)・・・第二のCAD(変換後CAD)の任意のデータ項目
c・・・第二のCADの任意のデータ項目の順番
A1・・・第二のCADの計算用ファイル
B・・・第一のCAD(変換前CAD)のファイル
B1・・・第一のCADの計算用ファイル
B(m)・・・第一のCADの全データ項目
m・・・第一のCADのデータ項目数
B1(m1)・・・第一のCADの計算用ファイルの全データ項目
m1・・・第一のCADの計算用ファイルのデータ項目数
B1(d)・・・第一のCADの計算用ファイルの任意のデータ項目
d・・・第一のCADの任意のデータ項目の順番
C(x)・・・構造計算CADの全データ項目
x・・・構造計算CADのデータ項目数
C(q)・・・構造計算CADの任意のデータ項目
q・・・構造計算CADの任意のデータ項目の順番
F・・・邸別保管フォルダ
F(p)・・・不足データ項目
p・・・不足データ項目の数
1,2・・・構造材
2a・・・一方の構造材の穴に進入した他方の構造材の端部(意匠CADから構造CADに変換したときの状態)
2b・・・蟻
2c・・・鎌
3・・・火打ち土台
10a・・・見付け面積部
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行うことができるとともに、データ修正後の再変換も簡単に行うことができる木造住宅用CADデータの変換方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工務店が建築する木造住宅の設計はほとんど意匠CADにより作成されており、プレカット工場が製造する木造住宅用のプレカット材の設計は構造CADにより作成されており、また木造住宅の強度計算は構造計算CADにより行われている。しかしこれらのCADはそれぞれ違ったデータ形式で開発されているので、互換性が全くない。そのため、例えば意匠CADのデータを構造CADに用いる場合には、キーボードによりデータ入力を行っているのが現状である。特に在来工法の場合使用するプレカット材の種類が極めて多いので、データ入力は煩雑であり、また誤入力のおそれも大きい。
【0003】
意匠CADデータ、構造CADデータ及び構造計算CADデータの連携のために、木造住宅CAD/CAMデータ連携標準化委員会が組織化され、木造住宅CAD/CAMデータ連携標準化仕様としてCEDXMが提案された。CEDXMはXML(Extensible Markup Language)で記述されており、タグ化されているので、内容の理解が容易である。しかもCEDXMは、部品のメーカーや型番まで表現できるので、単に意匠CADとプレカットCADのリンクだけでなく、住宅生産関係者の間の標準データ仕様として利用できる。
【0004】
工務店がCEDXMフォーマット形式でプレカット工場に送ったCADデータから、プレカット工場がCAMデータを生成できれば、プレカット業務の合理化と効率化が可能になると期待される。さらにプレカット工場のCAD/CAMデータを工務店の意匠CADに戻せれば、施工管理データとして活用できると考えられる。しかし、工務店の意匠CADデータをCEDXMフォーマット形式でプレカット工場のCAD/CAMに入れても、そのまま使える伏図にはならないことがほとんどである。というのも、工務店が作成した意匠CADデータは、見た目にはしっかりした伏図のように見えるが、実際は壁が重なっていたり、柱が何本も重なっていたり、梁が一部重なっていたりすることが多いからである。そのため、工務店の意匠CADデータからプレカット工場用の構造CADデータを生成する場合に、プレカット材に必要なデータ(例えば梁などの横架材の端部処理の仕方)を計算したり、構造安全上のチェックしたりする必要がある。
【0005】
しかしながら、現在数多くの意匠CAD、構造CAD及び構計算CADがそれぞれ別個に市販されており、それらの間には互換性がない。従って、CADデータの変換をしようとすると個々のCAD同士の変換ソフトを作成しなければならない。しかし、工務店及びプレカット工場のほとんどは零細であり、多数の変換ソフトを保持することは実質的に不可能である。そのため意匠CADと構造CADとの間や構造CADと構造計算CADとの間でのデータの電子交換は行われておらず、キーボードを介した手入力で行っているのが現状である。この不便さのために設計コストが高くなり、ユーザに過大な負担を負わせてきた。
【0006】
その上、例えばある意匠CADと構造CADとでデータを変換する場合、構造CADに必要なデータを意匠CADが全て有することはなく、また一方のCADにあるデータが全て他のCADに必要である訳ではない。例えば図18に示すように、意匠CADには通常構造CADに必要ないデータ項目があると同時に、構造CADに必要なデータ項目の幾つかを有さない。すなわち、両CADに共通するデータ項目と、不要データ項目と、不足データ項目とがある。そのため、意匠CADのデータを構造CADのデータに従来の変換システムにより変換する場合、不足データ項目については手入力等によりデータを生成できるが、不要データ項目は消失し、変換された構造CADに含まれないことになる。その結果、意匠CADから構造CADへの変換は一方向であり、逆方向の変換(再変換)をするときには不要データ項目として消失したデータ項目は不足データ項目となり、再度手入力等によりデータを生成する必要がある。実際の木造住宅の設計では意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間を複数回行き来して修正を繰り返すことが多いので、不要データ項目を無視すると再変換にも手間がかかることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行うことができるとともに、データ修正後の再変換も簡単に行うことができる木造住宅用CADデータの変換方法、及びそのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間の変換を行う場合、(1) 共通データとともに不足データ及び不要データがあること、(2) 従来の変換方式では不要データは無視されてしまうこと、(3) 従って逆方向に再変換する際には無視された不要データが不足データとなって、入力及び再計算の必要が生じることに注目し、不要データを特定する工程を設けるとともに、特定した不要データを変換データ及び生成データとともに保存することにより、逆方向に再変換する際にそのまま利用でき、もって無視された不要データの入力及び再計算の必要がなくなることを発見し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換する本発明の方法は、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力し、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定し、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換し、(4) 前記不足項目のデータを内蔵アルゴリズムに従って計算して前記第二のCAD用のデータを生成し、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保管フォルダに保存し、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力することを特徴とする。
【0010】
前記第一のCADのデータ項目のリストから前記対応データ項目を順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目として特定するのが好ましい。
【0011】
まず前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とするのが好ましい。
【0012】
前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較するのが好ましい。
【0013】
前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータは手入力し、計算可能なデータは前記内蔵アルゴリズムに従って生成するのが好ましい。
【0014】
第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換する本発明のシステムは、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する手段と、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定する手段と、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換する手段と、(4) 前記不足項目のデータに対応する前記第二のCADのデータを生成するための計算アルゴリズムを内蔵する手段と、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保存する保管フォルダと、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力する手段とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の変換システムは、前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成する手段と、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とする手段とを有するのが好ましい。
【0016】
本発明の変換システムにおいて、前記計算用ファイルは前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含み、前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較するのが好ましい。
【0017】
本発明の変換システムは、前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータを手入力する手段を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では全ての木造住宅設計用CADに共通するCEDXMフォーマット形式を用いるので、いかなるCAD間の変換も行うことができる。その上、変換前CADと変換後CADとの間に必然的に存在する不足データ項目及び不要データ項目を特定し、不足データ項目のデータについては内蔵アルゴリズムに従って新規に生成するので変換作業を自動化でき、かつ不要データ項目を消失させずに保存しておくので、逆方向に再変換する時に不要データ項目が不足データ項目になることがない。
【0019】
そのため、例えば意匠CADのデータを構造CADのデータに変換し、構造材の設計を修正し、構造計算CADにより木造住宅の強度が十分であることを確認した後、修正した構造CADのデータを意匠CADに反映させるために意匠CADのデータに再変換する場合でも、不要データが保存されているためにデータ不足を生じることなく簡単に意匠CADに変換することができる。このように、本発明の変換システムにより、木造住宅用の任意の意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間でデータ不足の問題を生じることなく確実にデータ変換を行うことができる。その結果、関連なく存在している現在の木造住宅用意匠CAD、構造CAD及び構造計算CADの間でのスムーズなデータ変換が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の変換システムにより変換し得るCADの関係を例示する概略図である。
【図2】本発明のCADデータ変換方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートにおける工程4及び工程5の具体例を示すフローチャートである。
【図4】本発明のCADデータ変換方法の別の例を示すフローチャートである。
【図5】意匠CADのデータを構造CADに変換する方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】構造CADのデータを構造計算CADに変換する方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートにおける工程5の具体例を示すフローチャートである。
【図8】木造住宅の意匠CADデータの一例を示す平面図である。
【図9】図8に対応する構造CADデータを示す平面図である。
【図10】2本の構造材の接合状態を示す部分図であって、(A) は意匠CADデータを示し、(B) は(A) の意匠CADデータから変換された構造CADデータを示し、(C) は最終的な構造CADデータを示す。
【図11】木造住宅の別の例を示す平面図であって、(A) は意匠CADデータを示し、(B) は構造CADデータを示す。
【図12】図11の(B) の部分Xに対応する部分拡大立面図である。
【図13】2本の構造材の接合状態に関する構造CADデータを構造計算CADデータに変換する様子を示す部分図であって、(A) は仕口の変換を示し、(B) は継ぎ手の変換を示す。
【図14】木造住宅を示す概略図であって、(A) は平面図であり、(B) は見付け面積を示す正面図である。
【図15】火打ち土台の一例を示す部分平面図である。
【図16】鎌継ぎ手の例を示す部分図である。
【図17】蟻仕口の例を示す部分図である。
【図18】意匠CADのデータ、構造CADのデータ及び構造計算CADのデータの間における過不足を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の変換システムは、市販されている任意の意匠CAD-A,CAD-B,CAD-C・・・と任意の構造CAD-A,CAD-B・・・との間,任意の構造CAD-A,CAD-B・・・と任意の構造計算CAD-A・・・との間、任意の構造CAD-A,CAD-B・・・と任意の構造CAD-A,CAD-B・・・との間などで、データ変換を自由に行うことができる。各CADは別々のフォーマット形式で構成されているので、共通のフォーマット形式としてCEDXMを用いる。CEDXMでは各データがタグ化された形式で表現される。
【0022】
第一のCADを変換前CADと呼び、第二のCADを変換後CADと呼ぶと、木造住宅設計用の(変換前)CADの邸宅ファイルには非常に多数のデータが含まれているだけでなく、例えば表1に簡略化して示すように、変換後CADに必要なデータ項目に対応するデータ項目B(1)、B(3)、B(5)、B(6)、B(8)及びB(9)と、変換後CADに不要なデータ項目B(2)、B(4)、B(7)及びB(10)と、不足したデータ項目とがある。本発明では、対応データ項目B(1)、B(3)、B(5)、B(6)、B(8)及びB(9)を変換後CADのルールに従って計算し、変換データを作成する。不足データ項目については、変換すべきデータがないので、施工主の好み等により異なるデータを必要に応じてキーボードにより入力した後、内蔵アルゴリズムに従って計算し、変換後CAD用のデータを生成する。不要なデータ項目B(2)、B(4)、B(7)及びB(10)については、単なる変換処理では変換後CADに含まれないが、本発明では保管フォルダに保存するので、変換前CADに逆方向に変換する場合に不足データ項目となることがない。
【0023】
【表1】
【0024】
図2は本発明の変換システムの原理を示すフローチャートである。まず第一のCAD(変換前CAD)のファイルBのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する(工程1及び2)。ファイルBのデータ項目数をmとし、その種類をB(m)とする。木造住宅用CADはいずれもCEDXMへの変換機能を有するので、そのデータをCEDXMフォーマット形式で出力できるとともに、CEDXMフォーマット形式で入力したデータを自己の形式に変換することもできる。従って、全てのCAD間のデータのやり取りをCEDXMフォーマット形式で行うことができる。
【0025】
次に第二のCAD(変換後CAD)を選択する(工程2)。変換後CADのデータ項目数をnとし、その種類をA(n)とする。
【0026】
不要データ項目を特定するために、ファイルBの全てのデータ項目B(m)を含む計算用ファイルB1を作成する(工程3)。計算用ファイルB1のデータ項目数をm1とし、その種類をB1(m1)とする。ここでは、m1=m、及びB1(m1)=B(m)である。
【0027】
変換後CADの各データ項目A(1),A(2),A(3)・・・A(n)を計算用ファイルB1の全データ項目B1(1),B1(2),B1(3)・・・B1(m1)と順次比較する(工程4)。図3は工程4の具体的な手順の一例を示す。変換後CADの任意のデータ項目をA(c)とし、計算用ファイルB1の任意のデータ項目をB1(d)とすると、まずA(1)をB1(1),B1(2),B1(3)・・・B1(m1)と順次比較する。表1に示す例ではA(1)はB1(1)(B(1)に対応)に対応するので、B1(1)のデータをA(1)のルールに従って計算して変換データB1’(1)とし、それを変換後CADのA(1)のデータとする。この変換を行うとともに、計算用ファイルB1のデータ項目リストからB1(1)を削除し、かつデータ項目数をm1−1とする。この手順をc=1,2,3・・・nについて順次行う。その結果、B1(3),B1(5)・・・B1(9)も変換されるとともに、計算用ファイルB1のデータ項目リストから削除される。
【0028】
c=nになったとき、データ項目数m1が0より大きいかをチェックする。m1>0の場合、計算用ファイルB1の一部のデータ項目が変換されずに残っている。すなわち、計算用ファイルB1にあって変換後CADにないデータ項目があることになる。これらのデータ項目は変換する必要がないので、不要データ項目と呼ぶことができる。工程5が終了した時点でのm1の値は不要データ項目の数を示す。不要データ項目は逆方向の変換、すなわちA(n)→B(m)の変換の時に必要であるので、保管フォルダFに保存する(工程5)。またm1=0の場合、計算用ファイルB1の全データ項目が変換されたので、計算用ファイルB1には不要データ項目がないことになる。
【0029】
例えば表1に示すA(11)のように、変換後CADの任意のデータ項目A(c)に対応するデータ項目が計算用ファイルB1にない場合、すなわち変換前CADに不足データがある場合、その不足データが施工主の好み等により変動し得る任意性のあるデータか否かを判定する。もし不足データが任意性のあるデータの場合、不足を補うデータをキーボードにより入力する。また不足データが計算により求められる性質のものである場合、内蔵アルゴリズムに従ってA(c)のデータを新規に生成する。
【0030】
内蔵アルゴリズムは、構造材の種類及び接合の態様等に応じて決められている。例えば直角に接合する2本の構造材がある場合、意匠CADでは接合態様まで特定されていないので、それを蟻仕口として必要なサイズデータを作成する。なお、詳細は後述するが、蟻仕口の具体的な形状及びサイズは各構造CAD(特定の加工装置の工具のサイズに関連している。)ごとに異なるので、意匠CAD→構造CADの変換により蟻仕口の形状及びサイズまで決めるよりも、蟻仕口の長さ(例えば図10の(B) に示すD)だけを決め、それから各構造CAD内で蟻仕口の具体的な形状及びサイズを決めるほうが効率的である。というのも蟻仕口の具体的な形状及びサイズは構造CADから個々のプレカット材を加工するときに必要であるが、構造計算のときには不要であるからである。
【0031】
変換後CADのデータは、変換データと、生成データと、不要データとからなる。これらのデータは邸別保管フォルダFに保存するとともに、CEDXMフォーマット形式で出力する。
【0032】
図2のフローチャートは、第一のCADから第二のCADに最初に変換する場合を示すが、本発明の変換システムは第一のCAD→第二のCADの変換の後に、第二のCAD→第一のCADの逆方向の変換(再変換)も簡単に行うことができ、さらに第一のCAD→第二のCADの再変換も簡単に行うことができる。図4は再変換を含むフローチャートである。再変換の場合邸別保管フォルダFが既にあるので、邸別保管フォルダFからファイルBの全てのデータ項目B(m)とともに不足データ項目F(p)を取得し、計算用ファイルB1を作成する。後は図2のフローチャートと同様に変換データ及び生成データを作成し、不要データを特定する。
【0033】
本発明の以下の具体例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。構造材情報は極めて多数あるので以下の具体例では実際に行う計算等の一例を示すが、他の計算等も同様に行うものとする。
【0034】
具体的1
例えば図1で意匠CAD-BのファイルBのデータを構造CAD-Aのデータに変換する場合について、図5を参照して以下具体的に説明する。
【0035】
選択した意匠CAD-BのファイルBが有する邸宅の意匠データは、例えば図8に示すように、単に構造材が連結した状態を示し、連結部の形状(仕口、継ぎ手等)を特定していない。この意匠CADデータに対応する構造CADデータは図9に示される。ただし図示の関係上、構造材の太さは図8と図9で一致しておらず、また図9では構造材は分離した状態で示されている。
【0036】
意匠CAD-BのファイルBが有するデータの中には全ての構造材に関するデータがあり、例えば柱に関するデータも多数ある。1本の柱のデータは、例えば以下のように示される。
柱1
始点 終点
X 100 100
Y 100 100
Z 540 3285
幅 105×105
【0037】
このように多数の構造材の情報を有する意匠CADデータをCEDXMフォーマット形式に変換する。構造材として1本の柱材及び1本の横架材を例にとってCEDXMフォーマット形式で表すと、下記の通りとなる。
<構造材情報>
<柱材>
<層>1</層>
<種類>
<コード>1</コード>
</種類>
<形状>
<コード>1</コード>
</形状>
<寸法>
<寸法1>105</寸法1>
<寸法2>105</寸法2>
</寸法>
<樹種>檜</樹種>
<等級>1等</等級>
<配置点 点=”17750.000154, 19820.000476”/>
<偏心/>
<回転角度>0</回転角度>
<上端>
<Z>3285</Z>
</上端>
<下端>
<Z>540</Z>
</下端>
</柱材>
<横架材>
<層>2</層>
<種類>
<コード>4</コード>
</種類>
<形状>
<コード>1</コード>
</形状>
<寸法>
<寸法1>105</寸法1>
<寸法2>150</寸法2>
</寸法>
<樹種>R.W集成</樹種>
<等級>KD</等級>
<始端3D点=”17093.90, 25951.80, 4491.00”>
<補正値>−21.00</補正値>
<形状>
<コード>2</コード>
</形状>
</始端3D>
<終端3D点=”19003.90, 25951.80, 4491.00”>
<補正値>−21.00</補正値>
<形状>
<コード>2</コード>
</形状>
</終端3D>
<偏心値>0.00</偏心値>
</横架材>
【0038】
例えば第一の構造材1の側面に第二の構造材2が直角に接合する場合、意匠CADのデータは、図10の(A) に示すように第二の構造材2の一端が第一の構造材1の側面に接した状態を示すが、構造CADのデータは、図10の(C) に示すように第二の構造材2の一端に設けられた蟻2bが第一の構造材1の蟻穴に収容された状態を示す。しかし、蟻2bの形状及びサイズは構造CADごとに異なるので、意匠CADデータから変換された構造CADデータは図10の(B) に示すように第二の構造材2の端部2aが第一の構造材1の穴に収容された状態とし、図10の(C) に示す蟻2bの形状及びサイズは個々の構造CADにより設定する。従って、本発明の変換システムにより意匠CADデータから変換した構造CADデータは、図10の(B) に示すように第二の構造材2の端部2aが深さDまで第一の構造材1の穴に収容された状態とする。
【0039】
一回目の変換の場合邸別保管フォルダFがないので、計算用ファイルB1のデータ項目は意匠CAD-BのファイルBのデータ項目と全く同じである。すなわち、m1=m、及びB1(m1)=B(m)である。二回目以降の変換の場合、本発明の変換システムでは既変換のデータ等が邸別保管フォルダFに保存されているので、それらを計算用ファイルB1のデータ項目とすると計算を省略することができる。この場合、m1=m+p、及びB1(m1)=B(m)+F(p)である。ただし、F(p)は不足データ項目である。
【0040】
構造CAD-Aのデータ項目と計算用ファイルB1のデータ項目との比較の結果対応関係が認められたデータは、例えば図10の(A) に示す意匠データと(C) に示す構造データである。そこで、第二の構造材2の一端のX座標をDだけ移動させる(第二の構造材2をDだけ長くする)。このような変換を接合する全ての構造材について行い、図10の(B) に示す構造データに変換する。既に述べたように、(B) から(C) への変換は構造CAD自身で行う。
【0041】
例えば図11の(A) に示すように意匠CADは通常意匠に関係ない筋交いを表示しないので、意匠CAD-BのファイルBのデータを納めた計算用ファイルB1には筋交いのデータが不足している。そのため、図11の(B) 及び図12に示すように筋交いのデータ(幅、長さ及び位置)を構造CADに追加する必要がある。図12では、筋交い13は柱材11,11’と横架材12,12’とで囲まれた四角形の2つの対角線に設けられている。筋交いのデータは構造CADの筋交いに関する内蔵アルゴリズムに従って生成する。この内蔵アルゴリズムによれば、下記の優先順位により筋交いを設ける位置を決める。
(1) 開口部を避ける。
(2) 外壁のコーナー部に優先的に筋交いを設ける。
(3) 1モジュールを超える柱間に筋交いを設ける。
(4) これらの条件下で各筋交いの形状及びサイズを決める。
・
・
・
【0042】
内蔵アルゴリズムは構造材ごとに異なるので、本発明の変換システムは構造材の全ての種類に対するアルゴリズムを内蔵する必要がある。内蔵アルゴリズムは基本的には建築基準に従う。
【0043】
構造CAD-Aに不要なデータは、変換した全てのデータ及び内蔵アルゴリズムにより生成した全てのデータとともに、邸別保管フォルダFに保存する。
【0044】
具体的2
構造CAD-Aのデータを構造計算CAD-Aのデータに変換する場合、図6に示すように、まず構造CAD-AのファイルAのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する(工程1)。ファイルAのデータ項目数をnとし、その種類をA(n)とする。次に構造計算CAD-Aを選択する(工程2)。構造計算CAD-Aのデータ項目数をxとし、その種類をC(x)とする。
【0045】
不要データ項目を特定するために、ファイルAの全てのデータ項目A(n)を含む計算用ファイルA1を作成する(工程4)。計算用ファイルA1のデータ項目数をn1とし、その種類をA1(n1)とする。一回目の変換の場合n1=n、及びA1(n1)=A(n)であり、二回目以降の変換の場合n1=n+q、及びA1(n1)=A(n)+F(q)である。ただし、F(q)は不足データ項目である。
【0046】
構造計算CAD-Aの各データ項目C(1),C(2),C(3)・・・C(x)を計算用ファイルA1の全データ項目A1(1),A1(2),A1(3)・・・A1(n1)と順次比較する(工程5)。図7は工程5の具体的な手順の一例を示す。構造計算CAD-Aのデータ項目と計算用ファイルA1のデータ項目との比較として、例えば耐力壁の場合、構造材のデータが計算用ファイルA1にあるか否か、階高のデータが計算用ファイルA1にあるか否か、耐力壁の種類、使用箇所及び使用方法が計算用ファイルA1にあるか否か等をチェックし、ない場合にはデータをキーボードにより入力する。上記はチェック項目の例であり、これら以外にも必要な項目は全てチェックする。さらに例えば仕口及び継ぎ手がある場合、図13の(A) 及び(B) に示すように、仕口及び継ぎ手がない構造に変換する。このように構造計算では構造材の接合態様は無視し、一体構造として扱う。
【0047】
住宅は一般に横長であるので、図14の(A) においてL方向から見た場合の面積の方がD方向から見た場合の面積より大きい。そこで図14の(B) に示すようにL方向から見た場合の面積(ハッチング部10aで示す)を見付け面積と呼ぶ。L方向の風の方がD方向の風より大きな力を住宅に与えるので、見付け面積は住宅の耐風力を評価するときに重要である。しかし計算用ファイルA1には見付け面積のデータはないので、内蔵アルゴリズムに従って計算しなければならない。すなわち、見付け面積は不足データであり、計算した見付け面積は生成データである。例えば見付け面積に対する耐力が建築基準法に従って不十分である場合、見付け面積を算出する構造CADのデータの幾つかを変更し、再度構造計算CADに変換して見付け面積に対する耐力を再計算し、評価する。
【0048】
図15に示すように、構造CADには横架材1,2に設けられた火打ち土台3のデータがあるが、火打ち土台3の上に合板等の補強材が取り付けられるので、耐荷重を評価する場合に火打ち土台3のデータは不要である。従って、構造CADから構造計算CADへの変換の場合に、火打ち土台3のデータは不要データとして扱う。
【0049】
以上不足データ及び不要データを例示したが、勿論その他にも多数の不足データ及び不要データがあるので、それらを上記と同様に処理する。
【0050】
具体例3
構造CAD同士でも変換する必要があることがある。というのは、各構造CADはNC加工機に対応しているので、プレカットに用いるNC加工機が変更されると、構造CADも変更しなければならない。例えば構造材の各部の寸法はNC加工機の属性に依存するので、NC加工機の変更(構造CADの変更)に応じて構造材の各部の寸法を変更しなければならない。図16に示す例では、(A) は構造CAD-Aの鎌を示し、(B) は構造CAD-Bの鎌を示す。鎌のサイズ及び形状は異なるので、構造CAD-Aの鎌データを構造CAD-Bの鎌データに変換するに際して、構造材1及び2の接合線とグリッド線との間隔をDAからDBに変更する。このように各構造CADのルールに従った変換をすることにより、第一の構造CADのデータを第二の構造CADのデータに変換することができる。同様に、図17に示すように仕口の形状も構造CADごとに異なるので、距離DAをDBに変更する変換を行う必要がある。
【0051】
以上本発明を添付図面を参照して説明したが、本発明はそれに限定されず、技術的思想の範囲内で種々の変更をすることができる。
【符号の説明】
【0052】
A(n)・・・第二のCAD(変換後CAD)の全データ項目
n・・・第二のCADのデータ項目数
A(c)・・・第二のCAD(変換後CAD)の任意のデータ項目
c・・・第二のCADの任意のデータ項目の順番
A1・・・第二のCADの計算用ファイル
B・・・第一のCAD(変換前CAD)のファイル
B1・・・第一のCADの計算用ファイル
B(m)・・・第一のCADの全データ項目
m・・・第一のCADのデータ項目数
B1(m1)・・・第一のCADの計算用ファイルの全データ項目
m1・・・第一のCADの計算用ファイルのデータ項目数
B1(d)・・・第一のCADの計算用ファイルの任意のデータ項目
d・・・第一のCADの任意のデータ項目の順番
C(x)・・・構造計算CADの全データ項目
x・・・構造計算CADのデータ項目数
C(q)・・・構造計算CADの任意のデータ項目
q・・・構造計算CADの任意のデータ項目の順番
F・・・邸別保管フォルダ
F(p)・・・不足データ項目
p・・・不足データ項目の数
1,2・・・構造材
2a・・・一方の構造材の穴に進入した他方の構造材の端部(意匠CADから構造CADに変換したときの状態)
2b・・・蟻
2c・・・鎌
3・・・火打ち土台
10a・・・見付け面積部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換する方法であって、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力し、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定し、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換し、(4) 前記不足項目のデータを内蔵アルゴリズムに従って計算して前記第二のCAD用のデータを生成し、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保管フォルダに保存し、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第一のCADのデータ項目のリストから前記対応データ項目を順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目として特定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、まず前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータは手入力し、計算可能なデータは前記内蔵アルゴリズムに従って生成することを特徴とする方法。
【請求項6】
第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換するシステムであって、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する手段と、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定する手段と、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換する手段と、(4) 前記不足項目のデータに対応する前記第二のCADのデータを生成するための計算アルゴリズムを内蔵する手段と、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保存する保管フォルダと、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力する手段とを有することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の変換システムにおいて、前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成する手段と、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とする手段とを有することを特徴とする変換システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の変換システムにおいて、前記計算用ファイルが前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含み、前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較することを特徴とする変換システム。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の変換システムにおいて、前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータを手入力する手段を有することを特徴とする変換システム。
【請求項1】
第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換する方法であって、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力し、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定し、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換し、(4) 前記不足項目のデータを内蔵アルゴリズムに従って計算して前記第二のCAD用のデータを生成し、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保管フォルダに保存し、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第一のCADのデータ項目のリストから前記対応データ項目を順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目として特定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、まず前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含む計算用ファイルを作成し、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータは手入力し、計算可能なデータは前記内蔵アルゴリズムに従って生成することを特徴とする方法。
【請求項6】
第一のCADにより作成された木造住宅設計用のデータを第二のCAD用のデータに変換するシステムであって、(1) 前記第一のCADのデータをCEDXMフォーマット形式で入力する手段と、(2) 前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記第一のCADの全てのデータ項目と比較することにより、(a) 前記第二のCADのデータ項目に対応する前記第一のCADのデータ項目(以下、対応データ項目という)と、(b) 前記第二のCADに変換するのに不足した前記第一のCADのデータ項目(以下、不足データ項目という)と、(c) 前記第二のCADのデータ項目に対応しない前記第一のCADのデータ項目(以下、不要データ項目という)とを特定する手段と、(3) 前記対応データ項目のデータを前記第二のCADのデータ項目のルールに従って計算して前記第二のCADのデータに変換する手段と、(4) 前記不足項目のデータに対応する前記第二のCADのデータを生成するための計算アルゴリズムを内蔵する手段と、(5) 前記第二のCAD用に変換したデータ及び生成したデータとともに前記不要データ項目を保存する保管フォルダと、(6) 前記保管フォルダ内のデータを前記第二のCADに出力する手段とを有することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の変換システムにおいて、前記第一のCADの全てのデータ項目を含む計算用ファイルを作成する手段と、前記対応データ項目を前記計算用ファイル内のデータ項目リストから順次削除し、最後に残ったデータ項目を前記不要データ項目とする手段とを有することを特徴とする変換システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の変換システムにおいて、前記計算用ファイルが前記第一のCADの全てのデータ項目とともに前記不足データ項目を含み、前記第一のCADのデータを前記第二のCADに再度変換する場合に、前記第二のCADに必要な全てのデータ項目を前記計算用ファイルのデータ項目と比較することを特徴とする変換システム。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の変換システムにおいて、前記不足データ項目のデータうち任意性のあるデータを手入力する手段を有することを特徴とする変換システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−258148(P2011−258148A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134530(P2010−134530)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(510164636)株式会社MoNOplan (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(510164636)株式会社MoNOplan (1)
【Fターム(参考)】
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