説明

未利用資源からの金属回収方法及び金属回収装置

【課題】従来有効に利用されていない未利用資源中の金属を容易且つ迅速にそして高純度で回収することができる未利用資源からの金属回収方法及び金属回収装置を提供する。
【解決手段】ペトロコークPなどの石油系未利用資源から、ニッケルNiなどの金属を回収する未利用資源からの金属回収装置1であって、酸素供給部2と、酸素供給部2から所定量の酸素を導入してペトロコークPを燃焼させて、このペトロコークPに含まれる有機物と結合しているニッケルNiを部分酸化させる部分酸化炉4を備え、部分酸化により生じた無機化合物の堆積物である灰分TからニッケルNiを回収するべく灰分Tを部分酸化炉4から取り出し可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ペトロコークやオイルサンドなどの炭素を多く含む石油系の未利用資源からニッケルなどの金属を回収するのに用いられる未利用資源からの金属回収方法及び金属回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなペトロコークなどの炭素を多く含む石油系の未利用資源は、有価金属であるニッケルやバナジウムを含んでいるほか、燃焼時に悪影響を及ぼす硫黄も多く含んでいるので、ペトロコークなどの石油系未利用資源を単純に燃焼させてその熱を有効利用するのには無理がある。
例えば、反応器を用いてオイルサンドを分解する場合には、その反応の副産物としてコーク(ペトロコークの一つ)が生じるが、このコークのうちの反応器作動用燃料として使用される一部のコークを除く大半の残渣コークは、ニッケルやバナジウムを含んでいるにもかかわらず、上記した理由により未燃焼のまま放置されているのが現状である。
【0003】
近年において、上記したような石油系未利用資源からニッケルなどの有価金属を回収しようとする試みが成されており、一例として、石油系未利用資源を部分酸化するガス化炉本体から排出される未反応物と気相からの析出物をポーラスフィルタで分離し、別置きの燃焼/ガス化炉へ導いて熱又は高カロリーガスとしてエネルギを回収し、燃焼/ガス化炉からの排ガスを通過させる水浴をこの燃焼/ガス化炉の下方に設けて未燃焼分に含まれていた金属を分離するようにしたガス化装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7-150148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したガス化装置では、燃焼/ガス化炉からの排ガスが水浴を通過するように成すことで、未燃焼分に含まれていた金属を回収するようにしているので、重金属類やアルカリ金属類を主成分とする化合物を回収することはできるものの、特定の金属を分離して回収することはできない。
また、複数種の金属が混在した状態で回収される化合物から特定の金属を分離して取り出すには多大な手間隙を要することから、このガス化装置を用いたとしても、特定の金属の回収までには至らないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、従来において有効に利用されていない未利用資源、とくに、石油系未利用資源から高濃度の金属を容易且つ迅速に回収することができ、加えて、回収した金属が有価金属である場合には、その売却益の一部で回収費用を賄い得る未利用資源からの金属回収方法及び金属回収装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、未利用資源、例えば、石油系未利用資源に含まれる有機物と結合したニッケルやバナジウムを部分酸化させると、無機の化合物ができることを利用したものであり、本発明の請求項1に係る未利用資源からの金属回収方法は、酸素の供給量を制御しつつ前記未利用資源を燃焼させて、この未利用資源に含まれる有機物と結合している金属を部分酸化させ、これで生じる無機化合物から金属を回収する構成としたことを特徴としており、この未利用資源からの金属回収方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
本発明の請求項2に係る未利用資源からの金属回収方法は、前記未利用資源に含まれる炭素を部分酸化させて、燃料もしくは化学原料として利用可能なガスを生じさせる構成としている。
本発明の請求項3に係る未利用資源からの金属回収方法は、回収金属が、ニッケル及びバナジウムの有価金属である構成としている。
一方、本発明の請求項4に係る発明は、未利用資源から重金属を回収する未利用資源からの金属回収装置であって、酸素供給部と、この酸素供給部から所定量の酸素を導入して前記未利用資源を燃焼させて、この未利用資源に含まれる有機物と結合している金属を部分酸化させる部分酸化炉を備え、前記部分酸化により生じた前記金属を含む無機化合物の堆積物から金属を回収するべく前記堆積物を前記部分酸化炉から取り出し可能とした構成としている。
【0008】
本発明の請求項5に係る発明は、前記未利用資源に含まれる炭素を部分酸化させて生じる燃料もしくは化学原料として利用可能なガスを前記部分酸化炉から回収可能とした構成としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る未利用資源からの金属回収方法及び請求項4に係る金属回収装置では、未利用資源、例えば、石油系未利用資源を燃焼させるに際して、酸素の供給量を制御して完全燃焼させるのに必要な量の半分程度の酸素を供給すると、石油系未利用資源に含まれる有機物と結合した重金属が部分酸化して無機の化合物となる。
つまり、従来成す術なく放置されていた石油系未利用資源中の金属を容易且つ迅速にそして高純度で回収することができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る未利用資源からの金属回収方法及び請求項5に係る金属回収装置では、上記した構成としているので、資源のより一層の有効利用が可能になる。
さらに、本発明の請求項3に係る未利用資源からの金属回収方法では、上記した構成としたから、重金属が部分酸化してなる無機化合物を集めれば、高濃度の有価金属を回収し得ることとなり、加えて、回収した有価金属を売却して得た利益の一部で金属回収コストを賄うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による未利用資源からの金属回収装置を示しており、この実施形態では、石油系の未利用資源としてのペトロコークからニッケル及びバナジウムの二種類の金属を回収する場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、この金属回収装置1は、酸素供給部2と、この酸素供給部2から酸素が供給されると共に資源供給部3から未利用資源としてのペトロコークPが供給される部分酸化炉4を備えている。
【0012】
酸素供給部2では、部分酸化炉4に対する酸素供給量の制御が可能となっており、部分酸化炉4では、酸素供給部2から制御された所定量の酸素(完全燃焼させるのに必要な量の半分程度の酸素)を導入してペトロコークPを燃焼させ、このペトロコークPに含まれる有機物と結合しているニッケル及びバナジウムを部分酸化させるようになっている。
この場合、上記部分酸化により生じた灰分(無機化合物の堆積物)Tを部分酸化炉4から取り出し可能としており、この部分酸化炉4から取り出した灰分Tは灰分収容部5に収容され、この灰分収容部5においてニッケル及びバナジウムの回収が成されるようになっている。
【0013】
また、この金属回収装置1では、ペトロコークPに含まれる炭素を部分酸化させて生じる燃料もしくは化学原料として利用可能なガスを部分酸化炉4から回収可能としており、この部分酸化炉4から回収したガスはガス収容部6に収容されるようになっている。
この金属回収装置1では、部分酸化炉4に対して酸素供給部2から所定量の酸素を導入すると共に資源供給部3から未利用資源としてのペトロコークPを導入して燃焼を開始すると、図2に示すように、ペトロコークPに含まれる有機物と結合しているニッケルNi及びバナジウムVや炭素Cが部分酸化される。
【0014】
そして、この部分酸化により生じた灰分Tを部分酸化炉4から取り出して灰分収容部5に収容し、この灰分収容部5において灰分TからニッケルNi及びバナジウムVを回収する。
この際、部分酸化炉4内では、炭素の部分酸化により燃料もしくは化学原料として利用可能な一酸化炭素等のガスGが生じており、このガスGをガス収容部6に収容する。この炭素の部分酸化において、炭素が一酸化炭素まで分解する反応には発熱を伴うので、部分酸化に必要な温度が保たれることとなる。
【0015】
上記のようにして金属回収装置1を作動させたところ、図3の白抜き部分に示すように、バナジウムVが約20%ガス化すると共にニッケルNiが約5%ガス化し、炭素Cの大半が燃料として利用可能なガスGとして回収された。
すなわち、部分酸化炉4内においてガス化されずに残った灰分Tから、図3の斜線部分に示すように、バナジウムVが約80%回収され、ニッケルNiが約95%回収された。
したがって、この実施形態における金属回収装置1を用いた金属回収方法によれば、従来成す術なく放置されていたペトロコークP中のニッケルNi及びバナジウムVを容易且つ迅速にそして高純度で回収可能なことが実証できた。
【0016】
また、この実施形態では、炭素Cを部分酸化炉4において部分酸化するようにしているので、炭素Cのより一層の有効利用が可能になる。
なお、上記した実施形態では、未利用資源として石油系未利用資源であるペトロコークからニッケル及びバナジウムの二種類の金属を回収する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る未利用資源からの金属回収装置の一実施形態を示す概略構成説明図である。
【図2】図1における未利用資源からの金属回収装置の作用を簡略的に示すブロック図である。
【図3】図1における未利用資源からの金属回収装置による有価金属の回収率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0018】
1 金属回収装置
2 酸素供給部
4 部分酸化炉
C 炭素
G 燃料として利用可能なガス
Ni ニッケル(有価金属)
P ペトロコーク(未利用資源)
T 無機化合物である灰分
V バナジウム(有価金属)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未利用資源から重金属を回収する未利用資源からの金属回収方法であって、
酸素の供給量を制御しつつ前記未利用資源を燃焼させて、この未利用資源に含まれる有機物と結合している金属を部分酸化させ、これで生じる無機化合物から金属を回収する
ことを特徴とする未利用資源からの金属回収方法。
【請求項2】
前記未利用資源に含まれる炭素を部分酸化させて、燃料もしくは化学原料として利用可能なガスを生じさせる請求項1に記載の未利用資源からの金属回収方法。
【請求項3】
回収金属が、ニッケル及びバナジウムの有価金属である請求項1又は2に記載の未利用資源からの金属回収方法。
【請求項4】
未利用資源から重金属を回収する未利用資源からの金属回収装置であって、
酸素供給部と、
この酸素供給部から所定量の酸素を導入して前記未利用資源を燃焼させて、この未利用資源に含まれる有機物と結合している金属を部分酸化させる部分酸化炉を備え、
前記部分酸化により生じた無機化合物の堆積物から金属を回収するべく前記堆積物を前記部分酸化炉から取り出し可能とした
ことを特徴とする未利用資源からの金属回収装置。
【請求項5】
前記未利用資源に含まれる炭素を部分酸化させて生じる燃料もしくは化学原料として利用可能なガスを前記部分酸化炉から回収可能とした請求項4に記載の未利用資源からの金属回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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