説明

本態性振戦症が強化されたマウスモデル及びその製造方法

【課題】本態性振戦症(essential tremor)が誘発されたα1/CaV3.1二重ノックアウトマウスまたはα1−/−;Emx1−Creマウス及びそれらを用いた本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】本発明が提供するα1/CaV3.1二重ノックアウトマウスまたはα1−/−;Emx1−Creマウスは、α1ノックアウトマウスと比較して、肉眼で確認することができる程度に強く明白な本態性振戦症の兆候を示すので、本態性振戦症に対する治療剤開発に有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本態性振戦症(essential tremor)(または手震症)が強化されたマウスモデルを用いた治療剤のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本態性振戦症は、動作時振戦または姿勢振戦を示す代表的な病気である。動作時振戦または姿勢振戦というのは、動いたり(throughout active movement)、“コップを持ったり”または“前にならえ”などのようにある姿勢を維持している時(during posturing)に、ひどくなる形態の振戦症を言う。これとは反対に、動かないで休息を取っている時にひどくなる振戦症を、安定型振戦症(resting tremor)といい、これはパーキンソン病でよく現れる。本態性振戦症は、一種の遺伝病であり、常染色体優性遺伝で遺伝するので、家族の中に振戦症がある場合が多い。したがって、本態性振戦症を家族性振戦症とも言う。本態性振戦症の診断的特性は、ほとんどの場合、震えの振動数が、正常生理活動による生理的振戦症より若干遅くてさらに粗い。しかし、振戦の様相だけでは、他の形態の振戦と容易に区別することができない。歳をとるほど振戦の様相は、振動数が減少して振幅が大きくなる傾向がある。振戦は、上肢にのみ限って現れることもあり、頭に振戦があることもある。振戦がひどい場合には、あご、唇、舌、そして声帯にまで振戦が現れ、声帯に振戦が現れる場合は、音を出す時に震えた音を出すようになる。本態性振戦症の結果は、比較的良好な方であるが、人毎に多様で微細な震えが一方または両方で始まって、その震えの程度が徐々に進行する。体位や運動性変化にしたがって現れ、ひどく進行する場合でなければ、安定期にはみられない。全身性または神経系疾患と係わった他の神経学的異常はなく、家族歴があるという点が診断に役に立ち、たまに飲酒などが一時的に震えを緩和させることができる。
【0003】
本態性振戦症を治療する方法は、薬物を用いる治療を原則とする。飲酒を通じてアルコールあるいはアルコール系列の化合物(octanol)を摂取する方法、抑制性神経伝達物質であるGABAの受容体拮抗剤などの抑制性薬物を服用する方法などが用いられてきた。抑制性薬物としては、プリミドン(Primidone)やベータ遮断剤の一種であるプロプラノロール(Propranolol)という薬物が一次的に用いられる。前記薬物は、約60〜70%の患者に効果を示すが完治は難しい。期待しただけの効果がなければ、2次治療剤を使用したり物理的手術を受けたりする。しかし、前記GABAの受容体拮抗剤またはアルコール系列の化合物は、振戦症の他に多様な神経系機能を阻害するので、睡眠誘導などの副作用がひどく、視床破壊術(thalamectomy)または脳深部刺激療法(deep−brain stimulation)は、最後の手段であり、危険な脳手術を施行しなければならない。また、最近、脳深部刺激療法は、比較的安全で効果が確かな方法として脚光を浴びているが、費用が多少多くかかるという短所がある。
【0004】
GABA(gamma−aminobutyric acid type A)受容体スーパーファミリーは、主要抑制性神経伝達物質であるγ−アミノブチル酸(GABA)と相互作用する受容体である。広範囲的には、哺乳動物の脳全般に不均一に分布しているが、GABAは、GABA受容体を通じてGABA作用の大部分を調節することで、塩素イオン伝導度及び膜の分極が変更される。前記GABAのような神経伝達物質以外にも、抗不安剤及び鎮静剤に使用されるベンゾジアゼピンを含む様々な薬物が前記受容体に結合される。一般的に、GABA受容体は、GABAに対する反応を開始する塩素チャンネルを含むことで塩素を細胞内に流入させる。これによって、順次に細胞膜電位の過分極による神経活性が鈍化される。
【0005】
GABA受容体は、5個のタンパク質サブユニットで構成されていて、各サブユニットは、2個のα、2個のβ及び1個のγからなっている。各サブユニットには、α1−6、β1−3及びγ1−3が存在する(非特許文献1)。従来、前記GABA受容体のα1サブユニットをノックアウトさせて、遺伝的に17−22Hzの本態性振戦症を示すマウスモデル(GABA受容体α1−/−マウス)が開発されたことがあるが(非特許文献2)、振戦の強さが微弱で本態性振戦症の研究及び治療剤開発に使用するのに限界があった(非特許文献3)。
【0006】
電圧依存性カルシウムチャンネルは、神経細胞の活性によって細胞内カルシウム濃度を増加させる役割をするが(非特許文献4)、電圧依存度によって高電圧依存性及び低電圧依存性チャンネルに分類される(非特許文献5)。T−タイプカルシウムチャンネルは、代表的な低電圧依存性カルシウムチャンネルであり、哺乳類では、α1サブユニットに対する遺伝子型によって、Cav3.1(α1G)、3.2(α1H)、3.3(α1I)の三つの種類が存在する(非特許文献6)。α1Gカルシウムチャンネルは、視床核で神経細胞のバースト発火の生成に関与し、最近、重要な病理学的機能が解明された(非特許文献7、 非特許文献8)。従来、本発明者等は、α1G T−タイプカルシウムチャンネルが欠乏したマウスが、薬物で誘導される本態性振戦症に対して抵抗性を有することを解明したことがある。
【0007】
そこで、本発明者等は、本態性振戦症症状を示すGABA受容体α1−/−マウスと本態性振戦症に対する抵抗性を有する、α1G T−タイプカルシウムチャンネルをノックアウトさせたマウスを交配して、二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を製作し、前記二重ノックアウトマウスの本態性振戦症の兆候を研究中、本態性振戦症が好転するだろうという予想とは異なり、既存のGABA受容体α1−/−マウスより震えの強さが肉眼で確認することができる程度にひどくなって、本態性振戦症の治療剤開発モデルに使用できることを確認することによって本発明を完成した。
【0008】
また、本発明者等は、GABA受容体α1F/FマウスをEmx1−Creマウスと交配して、α1F/+;Emx1−Creマウスを得た。また、これら同士交配して、α1−/−;Emx1−Creマウスを製作した。前記α1−/−;Emx1−Creマウスが、GABA受容体α1−/−マウスより本態性振戦症の強さが強化されたことを確認することによって、本態性振戦症研究及び薬物スクリーニングに有用で、本態性振戦症の病因と関連して大脳皮質の役割を研究するモデルに使用できることを確認して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Mohler,H.等,Neuroch.Res,1995年,第20巻,p.631−636
【非特許文献2】Vicini,S.等,The Journal of Neuroscience,2001年,第21巻,p.3009−3016
【非特許文献3】Kralic,J.E.等,The Journal of Clinical Investigation,2005年,第115巻,p.774−779
【非特許文献4】Tsien,R.W.,Annu Rev Physiol,1983年,第45巻,p.341−358
【非特許文献5】Tsien,R.W.等,Trends Neurosci,1995年,第18巻,p.52−54
【非特許文献6】Perez−Reyes,E.,Physiol Rev,2003年,第83巻,p.117−161
【非特許文献7】Kim,D.等,Science,2003年,第302巻,p.117−119
【非特許文献8】Kim,D.等,Neuron,2001年,第31巻,p.35−45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、本態性振戦症が強化されたマウスモデルを提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、前記本態性振戦症が強化されたマウスから由来した、マウス受精卵を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、前記本態性振戦症が強化されたマウスの製造方法を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、前記本態性振戦症が強化されたマウスを用いて本態性振戦症治療剤をスクリーニングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために本発明は、GABA受容体α1サブユニット(GABA receptor α1 subunit,α1)及びT−類型Ca2+チャンネル(T−type Ca2+ channel,CaV3.1)がノックアウトされた、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記二重ノックアウトマウスに由来した、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウスの受精卵を提供する。
【0016】
また、本発明は、
1)GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−)をT−類型Ca2+チャンネルノックアウトマウス(CaV3.1−/−)と交配する工程と、
2)前記工程1)の子孫の中で前記二つの遺伝子を異形接合体(heterozygote)状態で有しているマウス(α1+/−/CaV3.1+/−)を選別する工程と、
3)前記選別された成体α1+/−/CaV3.1+/−マウス同士交配する工程、及び
4)前記工程3)の子孫の中から前記工程1)の二つの遺伝子が両方欠乏した二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を選別する工程とを含む、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウスの製造方法を提供する。
【0017】
同時に、本発明は、
1)前記本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)に被検化合物を投与する工程と、
2)前記処理されたマウス(実験群)が動いたり姿勢を維持している時に、振動数または震動の強さを測定する工程、及び
3)被検化合物を未処理したマウス(対照群)と比較して振動数または震動の強さを減少させた被検化合物を選別する工程とを含む、本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、大脳皮質のみで特異的にGABA受容体α1サブユニット(GABA receptor α1 subunit,α1)遺伝子がノックアウトされた、本態性振戦症が誘発されたマウス(α1−/−;Emx1−Creマウス)を提供する。
【0019】
また、本発明は、α1−/−;Emx1−Creマウスに由来した、本態性振戦症が誘発された受精卵を提供する。
【0020】
また、本発明は、
1)GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1F/F)をEmx1−Creマウスと交配する工程と、
2)前記工程1)の子孫の中で前記二つの遺伝子を異形接合体(heterozygote)状態で有しているマウス(α1F/+;Emx1−Cre)を選別する工程と、
3)前記選別された成体α1F/+;Emx1−Creマウス同士交配する工程、及び、
4)前記工程3)の子孫の中からα1−/−及びEmx1−Cre遺伝子を両方含むマウスを選別する工程とを含む、本態性振戦症が誘発されたα1−/−;Emx1−Creマウスの製造方法を提供する。
【0021】
同時に、本発明は、
1)前記本態性振戦症が誘発されたα1−/−;Emx1−Creマウスに被検化合物を投与する工程と、
2)前記処理されたマウス(実験群)が動いたり姿勢を維持している時に、振動数または震動の強さを測定する工程、及び
3)被検化合物を未処理したマウス(対照群)と比較して振動数または震動の強さを減少させた被検化合物を選別する工程とを含む、本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のα1/CaV3.1二重ノックアウトマウスまたはα1−/−;Emx1−Creマウスは、α1ノックアウトマウスと比較して、肉眼で確認することができる程度に強くて明確な本態性振戦症兆候を示すので、本態性振戦症に対する治療剤開発に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】30週齢のα1+/+/CaV3.1+/+及びα1−/−/CaV3.1−/−において、加速度センサー測定法で振戦の程度を測定した結果を示した図である。
【図2】30週齢のα1+/+/CaV3.1+/+、α1−/−/CaV3.1+/+及びα1−/−/CaV3.1−/−において、加速度センサー測定法で振戦の程度を測定した結果を示した図である。
【図3】30週齢のα1+/+/CaV3.1+/+、α1−/−/CaV3.1+/+及びα1−/−/CaV3.1−/−において、加速度センサー測定法で振戦の強さを測定した結果を示したグラフである。
【図4】20週齢のα1+/+/Emxl−Cre、α1+/−/Emxl−Cre及びα1−/−/Emxl−Creにおいて、加速度センサー測定法で 振戦の強さを測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0025】
本発明は、GABA受容体α1サブユニット(GABA receptor α1 subunit,α1)及びT−類型Ca2+チャンネル(T−type Ca2+ channel,CaV3.1)がノックアウトされた、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を提供する。
【0026】
本発明の具体的な実施例で、GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−)とCaV3.1チャンネルノックアウトマウス(CaV3.1−/−)を交配して二つの遺伝子を異形接合体の形態で有するマウス(α1+/−/CaV3.1+/−)を得て、これらの間の交配で、GABA受容体α1サブユニット(α1−/−)とCaV3.1チャンネル(CaV3.1−/−)が二重ノックアウトされたマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を得た。
【0027】
前記二重ノックアウトマウスの振戦の震動の強さは、GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウスより3〜12倍以上、好ましくは、5〜10倍以上強い。
【0028】
また、前記振戦の震動強さは、加速度センサーを用いて測定することができる。
【0029】
また、本発明は、前記二重ノックアウトマウスに由来した、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウスの受精卵を提供する。
【0030】
また、本発明は、
1)GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−)をT−類型Ca2+チャンネルノックアウトマウス(CaV3.1−/−)と交配する工程と、
2)前記工程1)の子孫の中から前記二つの遺伝子を異形接合体状態で有しているマウス(α1+/−/CaV3.1+/−)を選別する工程と、
3)前記選別されたα1+/−/CaV3.1+/−の成体マウス同士を交配する工程、及 び
4)前記工程3)の子孫の中から前記工程1)の二つの遺伝子が両方欠乏した二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を選別する工程とを含む、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウスの製造方法を提供する。
【0031】
本発明の具体的な実施例で、GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−)とCaV3.1チャンネルノックアウトマウス(CaV3.1−/−)を交配して、二つの遺伝子を異形接合体の形態で有するマウス(α1+/−/CaV3.1+/−)を得て、これらの間の交配によってGABA受容体α1サブユニット(α1−/−)とCaV3.1チャンネル(CaV3.1−/−)が両方ノックアウトされた二重ノックアウトマウスを得た。
【0032】
また、本発明の具体的な実施例では、α1−/−/CaV3.1+/+及びα1−/−/CaV3.1−/−マウスの本態性振戦症を比較することによって、α1−/−/CaV3.1+/+マウスにおいてCaV3.1チャンネル遺伝子のノックアウトが及ぼす影響を確認した。加速度センサーを用いた分析の結果、α1−/−/CaV3.1−/−マウスとα1−/−/CaV3.1+/+マウスで20〜25Hzの振戦症が測定されたが(図2参照)、α1−/−/CaV3.1−/−マウスにおいて震動の強さが5〜10倍さらに強く測定され(図3参照)、ビデオ判読の結果によると、α1−/−/CaV3.1+/+マウスでは、特異的な振戦症関連震えが弱く観察された。したがって、CaV3.1チャンネル遺伝子のノックアウト導入によって、既存のGABA受容体α1サブユニットノックアウトによる本態性振戦症がさらに強化された。
【0033】
前記工程に、追加で本態性振戦症誘発の有無を判定する工程を含むことができる。
【0034】
前記判定方法は、ビデオ分析において動いたり姿勢を維持している時、正常マウスと比較して姿勢が不安定であるとかひどく震える症状が示されたことを確認する方法または加速度センサーで測定した結果、振動数及び/または震動の強さの増加有無を確認する方法で遂行することができる。本発明のα1−/−/CaV3.1−/−マウスは、ひどい振戦症の症状を示すが、この症状はマウスがじっとしている時は(resting)示されないで、主に動く時のみ(postural/kinetic)に現れる本態性振戦症の特性を有している。
【0035】
同時に、本発明は、
1)前記本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)に被検化合物を投与する工程と、
2)前記処理されたマウス(実験群)が動いたり姿勢を維持している時に、振動数または震動の強さを測定する工程と、
3)被検化合物を未処理したマウス(対照群)と比較して振動数または震動の強さを減少させた被検化合物を選別する工程とを含む、本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0036】
本発明のマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)は、従来のα1−/−/CaV3.1+/+マウスよりさらに強い本態性振戦症の兆候を示すので(図2参照)、本態性振戦症治療剤開発のためのマウスモデルとして使用することができる。
【0037】
前記工程1)の被検化合物は、天然化合物、合成化合物、RNA、DNA、ポリペプチド、酵素、タンパク質、リガンド、抗体、抗原、バクテリアまたは真菌の代謝産物及び生活性分子からなる群から選択されるいずれか一つであることができる。
【0038】
また、前記工程1)の投与方法は、経口投与または非経口投与を通じて遂行することができ、前記非経口投与時、皮内注射、皮下注射、静脈注射、腹腔注射、筋肉注射からなる群から選択されるいずれか一つの注射投与、直腸投与、局所塗付、パッチテスト、及びイオントフォレーシス(Iontophoresis)からなる群から選択されるいずれか一つの方法で遂行することができる。
【0039】
GABA受容体α1−/−マウスは、振戦症の強さが弱く、年齢が充分に高くなければ(>8ヶ月)目で観察可能な程度にならないという短所があるので、振戦症研究及び薬物スクリーニングなどに使用するのに不便さがあった。本発明で製造されたα1−/−/CaV3.1−/−マウスは、幼い年齢から克明な振戦症を示してその強さも強いので、このような短所を克服できる重要なモデルになることができる。
【0040】
また、本発明は、大脳皮質でのみ特異的にGABA受容体α1サブユニット(GABA receptor α1 subunit,α1)遺伝子がノックアウトされた、本態性振戦症が誘発されたマウス(α1−/−;Emx1−Creマウス)を提供する。
【0041】
また、本発明は、α1−/−;Emx1−Creマウスに由来した、本態性振戦症が誘発された受精卵を提供する。
【0042】
本発明者等は、GABA受容体α1サブユニット(subunit)遺伝子の大脳皮質特異的除去を通じて本態性振戦症が強化されたモデルを製造した。具体的に、Cre−loxP組換え技術を用いてマウス脳の特定地域(Dorsal telencephalon)でのみGABA受容体α1サブユニットをノックアウトさせたマウス(α1−/−;Emx1−Cre)を製造した。前記製造されたα1−/−;Emx1−Creマウスは、振戦症症状を示し、この症状は、マウスがじっとしている時は(resting)示されないで、主に動く時のみ(postural/kinetic)に現われる本態性振戦症の特性を有していることを確認した。
【0043】
本発明者等は、α1−/−;Emx1−Creマウスを加速度センサーで測定してみた結果、25〜30Hzの振戦症の強さを示し、前記振戦症の強さは、GABA受容体α1−/−マウスと比較して、類似かまたは1.5〜2倍程度強かった。発病は、約3週齢から発生し、GABA受容体α1−/−マウスと比較して、発病時期がずっと早いことを確認した。
【0044】
したがって、α1−/−;Emx1−Creマウスは、GABA受容体α1−/−マウスと比較して、発病時期が早くて振戦症の強さがさらに強いので、振戦症研究及び薬物スクリーニングなどに容易に使用することができ、本態性振戦症の病因と関連して、今まで相対的に進展していない大脳皮質(cortex)の役割を研究するにおいて重要なモデルとして使用ができることが分かる。
【0045】
また、本発明は、
1)GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1F/F)をEmx1−Creマウスと交配する工程と、
2)前記工程1)の子孫の中で前記二つの遺伝子を異形接合体(heterozygote)状態で有しているマウス(α1F/+;Emx1−Cre)を選別する工程と、
3)前記選別された成体α1F/+;Emx1−Creマウス同士交配する工程、及び、
4)前記工程3)の子孫の中からα1−/−及びEmx1−Cre遺伝子を両方含むマウスを選別する工程とを含む、本態性振戦症が誘発されたα1−/−;Emx1−Creマウスの製造方法を提供する。
【0046】
同時に、本発明は、
1)前記本態性振戦症が誘発されたα1−/−;Emx1−Creマウスに被検化合物を投与する工程と、
2)前記処理されたマウス(実験群)が動いたり姿勢を維持している時に、振動数または震動の強さを測定する工程、及び
3)被検化合物を未処理したマウス(対照群)と比較して振動数または震動の強さを減少させた被検化合物を選別する工程とを含む、本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
【0048】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0049】
実施例1.二重ノックアウトマウスの製造及び選別
<1−1>α1−/−マウス及びCaV3.1−/−マウスの製造
本発明者等は、参考文献(Vicini等,The Journal of Neuroscience.2001年,第21巻,p.3009)に記載された方法で製造されたGABA受容体α1−/−マウスを、G.Homanics(Department of Anaesthesiology and Pharmacology,University of Pittsburgh,Pittsburgh,PA 15261,米国)から供給を受けた。
【0050】
一方、本発明者等は、参考文献8(Kim,D.等,Neuron,2001年,第31巻,p.35−45)に記載された方法で製造されたCaV3.1チャンネルノックアウトマウスを保有している。具体的に、C57BL/6Jマウスの脳組織から得たmRNAをRT−PCRしてマウスCaV3.1cDNAを得た後、これをプローブに使用して、129/svマウスのcDNAをlamdaGT11ベクターに挿入して製造したゲノムライブラリで、CaV3.1位置を含むCaV3.1遺伝子(cacna1G)ゲノム断片を選別した。選別されたゲノム断片に、二重選別マーカー(neo及びTK)を挿入して、11.7kbの相同化断片を含む標的ベクター(targeting vector)を製造した。標的ベクターをJ1胚芽幹細胞株(Dr.R Jeanisch,Whitehead Institute,Cambridge,Massachusetts 02142,米国.jeanisch@wi.mit.edu)に形質導入させた。前記標的ベクターが導入されたESクローンをサザンブロット分析を通じて選別して、生殖系列キメラの製造に使用した。オス生殖系列キメラを、F1異形接合体(CaV3.1+/−)形質のメスのC57BL/6Jと交配した後、その子孫同士交配して同型接合体(CaV3.1−/−)形質のマウスを製造した。前記同型接合体形質のマウスの遺伝子型は、PCRを通じて確認した。
【0051】
<1−2>α1−/−/CaV3.1−/−二重ノックアウトマウスの製造及び選別
前記GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−)とCaV3.1チャンネルノックアウトマウス(CaV3.1−/−)を交配した後、生まれた子孫の尾から得たゲノムDNAを鋳型にして、ゲノムPCRを遂行した後、電気泳動で遺伝子型を確認した。α1遺伝子は、配列番号1(5’−TCTGCATGTGGGACAAAGAC−3’)及び配列番号2(5’−ACGCATACCCTCTCTTGGTG−3’)で表わされるプライマー対を用いたPCRで正常対立遺伝子を確認し、配列番号1及び配列番号3(5’−TGATTGCTTTTCTGAGATAGGG−3’)で表わされるプライマー対を用いたPCRでノックアウト対立遺伝子を確認した。前記PCRは、95℃で5分間変性させて、95℃で30秒、62℃で30秒、72℃で40秒の条件で29サイクルを繰り返した後、72℃で3分間延長させた後、4℃で冷却する手順で遂行した。また、CaV3.1遺伝子は、配列番号4(5−ATACGTGGTTCGAGCGAGTC−3)及び配列番号5(5−CGAAGGCCTGACGTAGAAAG−3)で表わされるプライマー対を用いたPCRで正常対立遺伝子を確認し、配列番号4及び配列番号6(5−CTGACTAGGGGAGGAGTAGAAG−3)で表わされるプライマー対を用いたPCRでノックアウト対立遺伝子を確認した。前記PCRは、94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、58℃で30秒、72℃で30秒の条件で40サイクル繰り返した後、72℃で5分間延長させた後、4℃で冷却する手順で遂行した。前記確認の結果、α1遺伝子及びCaV3.1遺伝子それぞれに対して、正常対立遺伝子及びノックアウト対立遺伝子をすべて有している子孫を異型接合体として選別した。前記選別された異型接合体同士交配した後、生まれた子孫の尾から得たゲノムDNAを鋳型に、前記と同じ方法でゲノムDNA PCRを遂行し、α1遺伝子及びCaV3.1遺伝子それぞれでノックアウト対立遺伝子のみを有している子孫を同型接合体として選別した。
【0052】
このようにして、GABA受容体α1サブユニット(α1−/−)とCaV3.1チャンネル(CaV3.1−/−)が両方ノックアウトされた二重ノックアウトマウスを得た。
【0053】
実施例2.α1−/−/CaV3.1−/−マウスでの振戦症測定
α1−/−/CaV3.1−/−マウスで示される振戦症を定量定性的に分析するために、加速度センサー(accelerometer)測定法とビデオ録画方法を使用した。実験群として、30週齢になったα1−/−/CaV3.1−/−マウス2匹、対照群として30週齢になった正常マウス(α1+/+/CaV3.1+/+)2匹を用いた。
【0054】
底に加速計を付着した不透明な円筒(直径10cm×高さ15cm)を空中にぶら下げて測定プラットホームとして使用した。前記円筒にマウスを入れて動くようにしながら前記動きを加速度センサーを通じて電子信号で認識した。前記電子信号を増幅して記録することでマウスの振戦症有無、程度及び振動数などを定量的に判断した。また、前記プラットホーム上側にビデオカメラを設置してマウスがどのような状態(姿勢、動きなど)で振戦症を見せるのか定性的に確認した。マウスを測定プラットホームの中に入れた後、10分間ビデオ録画と加速度センサーによる記録を行なった。
【0055】
ビデオ分析の結果、α1−/−/CaV3.1−/−マウスはプラットホーム内での姿勢が不安定だったり(postural)動く時(kinetic)にひどく震える振戦症の症状を示した。一方、同じ場所にじっと静止している時(resting)には、振戦症が弱いか、ほとんど示されなかった。このことから、α1−/−/CaV3.1−/−マウスで示される振戦症の特性が、本態性振戦症の特性と定性的に一致することを確認した。一方、正常マウスでは、いかなる振戦症関連の症状も現れなかった。
【0056】
加速度センサーを用いた分析の結果、図1で示されたように正常マウスでは、動きによる5Hz未満の振動数のみ測定された。一方、α1−/−/CaV3.1−/−マウスでは、それとともに20〜25Hzの震動数帯が測定されたが、ビデオ判読データと比較分析した結果、マウスが振戦症の症状を見せた時間の区間内でのみ、特徴的に測定されることが分かった。これを通じて、α1−/−/CaV3.1−/−マウスは、20〜25Hzの本態性振戦症を有することを確認した。
【0057】
実施例3.α1−/−マウスのCaV3.1ノックアウトの影響分析
GABA受容体α1−/−マウスで示される本態性振戦症にCaV3.1チャンネルが及ぼす影響を確認するため、GABA受容体α1−/−マウス(α1−/−/CaV3.1+/+)及びα1−/−/CaV3.1−/−マウスで示される振戦症を測定して比較した。
【0058】
GABA受容体α1−/−マウスで示される振戦症は、マウスの年令と比例関係にあり、特に30週齢以上になったマウスで強く示されることが知られている。したがって、すべての実験は、30週齢のマウスを用いて行なった。
【0059】
対照群には、30週齢になった正常マウス(α1+/+/CaV3.1+/+)3匹、実験群1には、GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1+/+)4匹、実験群2には、二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)3匹を対象にビデオ録画、振戦周波数測定及び振戦の強さ測定を実施した。
【0060】
ビデオ判読結果によると、α1−/−/CaV3.1−/−マウスを除いた残り二つの群のマウスでは、特異的な振戦症関連の震えが観察されなかった。
【0061】
加速度センサーを用いた分析の結果、図2及び図3に示されたように、α1−/−/CaV3.1−/−マウスとα1−/−/CaV3.1+/+マウスでのみ20〜25Hzの振戦症が測定されたが、α1−/−/CaV3.1−/−マウスで、震動の強さが5〜10倍さらに強く測定された。
【0062】
実施例4.GABA受容体α1サブユニット遺伝子の大脳皮質特異的除去を通じて本態性振戦症が強化されたマウスの製造
<4−1>α1−/−;Emx1−Creマウスの製造
本発明者等は、参考文献(Vicini等,The Journal of Neuroscience.2001年5月,第21巻,p.3009 )に記載された方法で製造されたGABA受容体α1F/FマウスをG.Homanicsから供給受けた。
【0063】
一方、本発明者等は、参考文献(Takuji等,Genesis.2004年,第38巻,p.130 )に記載された方法で製造されたEmx1−CreマウスをItohara Shigeyoshiから供給受けた。
【0064】
本発明者等は、Cre−loxP組換え技術を用いてマウス大脳皮質(Dorsal telencephalon)でのみGABA受容体α1サブユニット(subunit)をノックアウトさせたマウス(α1−/−;Emx1−Cre)を製造した。詳細には、前記GABA受容体α1F/FマウスをEmx1−Creマウスと交配して、α1F/+;Emx1−Creマウスを得た。さらに、これら同士交配して、α1−/−;Emx1−Creマウスを製造した。
【0065】
<4−2>α1−/−;Emx1−Creマウスの製造及び選別
GABA受容体α1サブユニットFloxedマウス(α1F/F)とEmx1−Creトランスジェニックマウスを交配した後、生まれた子孫の尾から得たゲノムDNAを鋳型にして、ゲノムPCRを遂行した後、電気泳動で遺伝子型を確認した。α1遺伝子は、配列番号1(5’−TCTGCATGTGGGACAAAGAC−3’)及び配列番号2(5’−ACGCATACCCTCTCTTGGTG−3’)で表わされるプライマー対を用いたPCRで異型接合体遺伝子(α1F/+)を確認した。前記PCRは、95℃で5分間変性させて、95℃で30秒、62℃で30秒、72℃で40秒の条件で29サイクル繰り返した後、72℃で3分間延長させた後、4℃で冷却する手順で遂行した。また、Emx1−Cre遺伝子は、配列番号7(5’−ACCTGATGGACATGTTCAGGGATCG−3’)及び配列番号8(5’−TCCGGTTATTCAACTTGCACCATGC−3’)で表わされるプライマー対を用いたPCRでトランスジェニック遺伝子を確認した。前記PCRは、94℃で3分間変性させて、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で60秒の条件で35サイクル繰り返した後、72℃で5分延長させた後、4℃で冷却する手順で遂行した。前記確認の結果、α1遺伝子に対してFloxed対立遺伝子及び正常対立遺伝子を両方有していて、同時にEmx1−Creトランスジェニック遺伝子も有している子孫(α1F/+;Emx1−Cre)を選別した。前記選別されたマウス同士交配した後、生まれた子孫の尾から得たゲノムDNAを鋳型に、前記と同一方法でゲノムDNA PCRを遂行した。α1遺伝子の場合、配列番号1及び配列番号3(5’−TGATTGCTTTTCTGAGATAGGG−3’)で表わされるプライマー対を用いたPCRも遂行してノックアウト対立遺伝子を確認した。これを通じて、α1ノックアウト対立遺伝子とEmx1−Cre遺伝子を有している子孫(α1−/−;Emx1−Cre)を選別した。
【0066】
このようにして、GABA受容体α1サブユニット(α1−/−)が大脳皮質でのみノックアウトされたマウス(α1−/−;Emx1−Cre)を得た。
【0067】
実施例5.α1−/−;Emx1−Creマウスでの振戦症測定
前記α1−/−;Emx1−Creマウスで示される振戦症を定量定性的に分析するため、前記実施例2と同一方法で加速度センサー測定法とビデオ録画方法を使用した。実験群として、20週齢になったα1−/−;Emx1−Creマウス2匹、対照群として同腹仔(littermate)の20週齢になった他のマウス(α1+/+;Emx1−Creまたはα1+/−;Emx1−Cre)5匹を用いて振戦症測定をした。
【0068】
ビデオ分析の結果、α1−/−;Emx1−Creマウスは、プラットホーム内での姿勢が不安定だったり(postural)動く時(kinetic)震える振戦症の症状がみられた。一方、同じ場所にじっと静止している時(resting)には、振戦症が弱いか、ほとんど示されなかった。このことから、α1−/−;Emx1−Creマウスで示される振戦症の特性が、本態性振戦症の特性と定性的に一致することを確認した。一方、他のマウスでは、いかなる振戦症に関連する症状も現われなかった。
【0069】
加速度センサーを用いた分析の結果、α1−/−;Emx1−Creマウスでのみ25〜30Hzの震動数帯が測定されたが、ビデオ判読データと比較分析した結果、マウスが振戦症症状を示した時間の区間内でのみ特徴的に測定されることが分かった。このことから、α1−/−;Emx1−Creマウスは、25〜30Hzの振戦症を遺伝的に有することを確認した。α1−/−;Emx1−Creマウスの振戦症の強さは、GABA受容体α1−/−マウスと比較して類似かまたは1.5〜2倍程度強かった。また、発病時期は、GABA受容体α1−/−マウスと比較してずっと早かった(約3週齢から)。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のα1/CaV3.1二重ノックアウトマウスまたはα1−/−;Emx1−Creマウス及びこれらを用いた用途発明は、本態性振戦症に対する治療剤開発に有用に使用することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0071】
配列番号1:GAB2 a1フォワードプライマー
配列番号2:GAB2 a1リバースプライマー
配列番号3:GAB2 a1リバースプライマー2
配列番号4:F1 a1Gフォワードプライマー
配列番号5:F1 a1Gリバースプライマー
配列番号6:PGK22 a1Gリバースプライマー
配列番号7:Emx1‐Creフォワードプライマー
配列番号8:Emx1‐Creリバースプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GABA受容体α1サブユニット(GABA receptor α1 subunit,α1)及びT−類型Ca2+チャンネル(T−type Ca2+ channel,CaV3.1)がノックアウトされた、本態性振戦症(essential tremor)が誘発された二重ノックアウトマウス。
【請求項2】
前記振戦症の震動の強さが、GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウスより3〜12倍以上強いことを特徴とする請求項1に記載のマウス。
【請求項3】
前記振戦症の震動の強さが、GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウスより5〜10倍以上強いことを特徴とする請求項2に記載のマウス。
【請求項4】
請求項1の二重ノックアウトマウスに由来した、本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウスの受精卵。
【請求項5】
1)GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1−/−)をT−類型Ca2+チャンネルノックアウトマウス(CaV3.1−/−)と交配する工程と、
2)前記工程1)の子孫の中で前記二つの遺伝子を異形接合体(heterozygote)状態で有しているマウス(α1+/−/CaV3.1+/−)を選別する工程と、
3)前記選別された成体α1+/−/CaV3.1+/−マウス同士交配する工程、及び
4)前記工程3)の子孫の中で前記工程1)の二つの遺伝子が両方欠乏した二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)を選別する工程とを含む本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウスの製造方法。
【請求項6】
追加で本態性振戦症誘発の有無を判定する工程を含む請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記判定が、ビデオ分析によって、動いたり姿勢を維持したりしている時に、正常マウスと比較して姿勢が不安定だったり(postural)ひどく震える症状が示されたことを確認する方法で遂行されることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記判定が、加速度センサーで測定した結果、振動数及び/または震動の強さの増加有無を確認する方法で遂行されることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
1)請求項1の本態性振戦症が誘発された二重ノックアウトマウス(α1−/−/CaV3.1−/−)に被検化合物を投与する工程と、
2)前記処理されたマウス(実験群)が動いたり姿勢を維持している時に、振動数または震動の強さを測定する工程、及び
3)被検化合物を未処理したマウス(対照群)と比較して振動数または震動の強さを減少させた被検化合物を選別する工程とを含む本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記工程1)の被検化合物が、天然化合物、合成化合物、RNA、DNA、ポリペプチド、酵素、タンパク質、リガンド、抗体、抗原、バクテリアまたは真菌の代謝産物及び生活性分子からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
大脳皮質でのみ特異的にGABA受容体α1サブユニット(GABA receptor α1 subunit,α1)遺伝子がノックアウトされた、本態性振戦症が誘発されたマウス(α1−/−;Emx1−Creマウス)。
【請求項12】
前記振戦症の震動の強さがGABA受容体α1サブユニットノックアウトマウスより1〜2倍以上強いことを特徴とする請求項11に記載のマウス。
【請求項13】
請求項11のα1−/−;Emx1−Creマウスに由来した、本態性振戦症が誘発された受精卵。
【請求項14】
1)GABA受容体α1サブユニットノックアウトマウス(α1F/F)をEmx1−Creマウスと交配する工程と、
2)前記工程1)の子孫の中で前記二つの遺伝子を異形接合体(heterozygote)状態で有しているマウス(α1F/+;Emx1−Cre)を選別する工程と、
3)前記選別された成体α1F/+;Emx1−Creマウス同士交配する工程、及び、
4)前記工程3)の子孫の中からα1−/−及びEmx1−Cre遺伝子を両方含むマウスを選別する工程とを含む、本態性振戦症が誘発されたα1−/−;Emx1−Creマウスの製造方法。
【請求項15】
1)請求項11の前記本態性振戦症が誘発されたα1−/−;Emx1−Creマウスに被検化合物を投与する工程と、
2)前記処理されたマウス(実験群)が動いたり姿勢を維持している時に、振動数または震動の強さを測定する工程、及び
3)被検化合物を未処理したマウス(対照群)と比較して振動数または震動の強さを減少させた被検化合物を選別する工程とを含む、本態性振戦症治療剤のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−246536(P2010−246536A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86628(P2010−86628)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】