説明

札入れ

【課題】同一の種類の紙幣について20〜50枚重ねて入れても、その大きさが十分に小さく携帯に優れ、かつ紙幣を取り出し易い札入れを提供する。
【解決手段】特定の種類の紙幣専用の札入れ(1)として構成する。札入れ(1)は、不織布、ビニールクロス、天然皮革、あるいは合成皮革の1枚のシート(2)から二つ折りして形成し、シート(2)の重ね合わされた縁部のうち、長方形の一方の短辺(4)とこれに連続する長辺の一部(6a)に対応する縁部には線ファスナ(8)を設ける。他の縁部はシートの端面どうし突き合わして、縫合によって、あるいは接着剤による接着によって、あるいは熱加工による融着によって、結合代が存在しないよう結合する。長方形の長辺と短辺は、特定の種類の紙幣の長辺と短辺よりも、それぞれ12〜20mmだけ大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣のみを入れる札入れに関し、限定するものではないが旅行時に携帯するのに適し、単一の種類の紙幣のみが複数枚入れられるようになっている札入れに関するものである。
【背景技術】
【0002】
財布には色々な種類がある。例えば硬貨のみを入れるようになっている小銭入れ、紙幣と硬貨とを入れることができる財布、これらに加えてカードを収納できる財布、さらにキーホルダーが設けられて鍵も収納できる財布、等が周知である。これらは用途に応じて、あるいは使用者の好みによって選定され使用されている。このような財布の他に紙幣のみを入れることができる紙幣専用の財布、いわゆる札入れも周知であり、色々な形状の物が市販されている。一般的な札入れは、長辺にあたる一辺が開口した長方形の袋状を呈している。この開口部から紙幣を出し入れできるようになっているが、どのような種類の紙幣でも入れることができるように札入れの大きさは比較的大きい。このような札入れは紙幣が入れられた状態で二つ折りして携帯される。このような従来の札入れの他に、例えば特許文献1、2において札入れが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−44143号公報
【特許文献2】実昭開63−187920号公報
【0004】
特許文献1に記載の札入れは、1枚の皮革もしくはビニールクロスから2つ折りにして縫製され、長方形の封筒状を呈している。この札入れにおいては長方形の一方の短辺が開口しており、ここから紙幣を出し入れできるようになっている。また札入れの一方の側面には、この開口部に近接した位置に所定の大きさの切れ込みが入れられ、この切れ込みにはシート状の小片である滑止材が貼られている。従って札入れに紙幣が入れられた状態で、この切れ込みに親指を当てて押圧しながら横方向にスライドさせると、滑止材に接している紙幣1枚をスライドさせることができ、これによって複数枚の紙幣の中から1枚だけ引き出すことができるようになっている。
【0005】
特許文献2に記載の札入れは、広げた状態においては長方形状を呈し、長方形の一方の短辺が開口しており、この開口部から紙幣を入れることができるようになっている。そして札入れは紙幣を入れた状態で二つ折りに畳むことができ、畳んだ状態で紙幣を抜き出すことができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来周知の札入れによっても、あるいは特許文献1、2に記載の札入れによっても、札入れとしての機能には格別に問題はない。しかしながら特定の用途においては改善の余地が見受けられ、具体的には海外旅行のような旅行時に携帯する場合に使い勝手の点で問題が見受けられる。海外においては、クレジットカードが店舗によらずに使用できる国は一部に限られており、多くの国ではクレジットカードが使用できない店舗も多い。従って海外旅行の際にはある程度の金額の現地通貨の紙幣を携帯する必要がある。そうすると例えばポンドであれば最高額紙幣である50ポンド紙幣を、ユーロであれば比較的高額で使い勝手に優れた50ユーロ紙幣あるいは100ユーロ紙幣等のいずれか1種類の紙幣を、それぞれ十数枚〜数十枚まとめて携帯することが多い。また近年は海外においても日本円を使用することができ、例えば支払に一万円札を渡せば現地通貨でお釣りをもらえることも多いので、海外旅行時には不測の事態に備えて現地通貨とは別に20〜50万円程度の一万円札を携帯している旅行者も見受けられる。従って旅行者は補助的な札入れを用意して、各国の通貨の最高額紙幣、あるいは高額紙幣を所定の枚数入れておき、必要に応じて紙幣を数枚ずつ補助的な札入れから抜き出して普段使用している財布に移すようにすれば便利である。ところで大量の高額紙幣を携帯していると盗難に遭いやすいのでこのような補助的な札入れは上着の内ポケット等に入れておくことが好ましい。また紙幣は、通貨の種類毎に分けて管理したいので、複数個の札入れを用意することが好ましい。しかしながら従来の札入れをこのような用途の札入れとして採用すると、二つ折りされて厚みが生じるので嵩張って内ポケットがふくらんでしまう。特許文献1に記載の札入れは、一枚の皮革もしくはビニールクロスから二つ折りにして形成されているので札入れの厚さは薄い。しかしながらこの札入れも、大きさに関する工夫は格別に考慮されていない。つまり札入れはどのような種類の紙幣でも入れられるように汎用的な大きさに形成されているので、特定の種類の紙幣の専用札入れとして使用すると不必要に大きい。さらには縫合部分には所定の幅の縫い代があり、その分だけ札入れが大きい。従って上着の内ポケットに入れると邪魔になってしまう。特許文献2に記載の札入れについては、二つ折りされているので従来の札入れと同様に嵩張ってしまうし、小さくする工夫も格別に考慮されていないので、上着の内ポケットに入れると邪魔になってしまう。
【0007】
本発明は、上記したような従来の問題点あるいは課題を解決した札入れを提供することを目的としている。具体的には、薄い素材から形成されていると共に十分に小さく携帯に優れた札入れであって、紙幣の種類毎に専用の札入れが用意され、特定の種類の紙幣を20〜50枚重ねて入れたときに必要最小限の大きさになるような札入れを提供することを目的としている。そして、紙幣を取り出し易い札入れを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、不織布、ビニールクロス、天然皮革、あるいは合成皮革からなる1枚のシートから札入れを形成する。そしてシートは略長方形状に二つ折りし、シートの重ね合わされた縁部のうち、長方形の一方の短辺とこれに連続する長辺の一部に対応する縁部には開閉可能なファスナを設け、他の縁部は互いに結合して袋状にする。この互いに結合する縁部はシートの端面どうし突き合わして、縫合によって、あるいは接着剤による接着によって、あるいは熱加工による融着によって、結合代が形成されないよう結合する。そして、札入れの長方形の長辺と短辺は、特定の種類の紙幣の長辺と短辺よりも、それぞれ13〜25mm、10〜15mmだけ大きくなるように、必要最小限の大きさにする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、不織布、ビニールクロス、天然皮革、あるいは合成皮革からなる1枚のシートが略長方形状に二つ折りされ、前記シートの重ね合わされた縁部のうち、前記長方形の一方の短辺とこれに連続する長辺の一部に対応する縁部には開閉可能なファスナが設けられ、他の縁部は互いに結合されて袋状に形成されている札入れであって、前記互いに結合されている縁部は、前記シートの端面どうしが突き合わされて結合代無しで結合されていることを特徴とする札入れとして構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の札入れにおいて、前記長方形の長辺と短辺は、特定の種類の紙幣の長辺と短辺よりも、それぞれ13〜25mm、10〜15mmだけ大きいことを特徴とする札入れとして構成される。
そして請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の札入れにおいて、前記結合されている縁部は、縫合によって結合されていると共に、該縫合部にはあて布が貼られるように、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の札入れにおいて、前記結合されている縁部は、接着剤による接着によって、もしくは熱加工による融着によって結合されるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によると、札入れは、不織布、ビニールクロス、天然皮革、あるいは合成皮革からなる1枚のシートが略長方形状に二つ折りされ、シートの重ね合わされた縁部のうち、長方形の一方の短辺とこれに連続する長辺の一部に対応する縁部には開閉可能なファスナが設けられ、他の縁部は互いに結合されて袋状に形成されているので、札入れ自体の厚さは薄い。従って紙幣を入れても厚さは薄い。そして、ファスナを開くと一方の短辺とこれに連続する長辺の一部が開口して紙幣を出し入れすることができるので、後で詳しく説明するように開口部分は斜めに開くことができる。そうすると容易に紙幣を取り出しやすくなる。そして長辺全体が開かれる従来の札入れにおいては、紙幣を取り出すときに札入れの内側が見開き状に開かれるので紙幣が露出して目立ってしまうが、本発明に係る札入れにおいては、短辺とこれに連続する長辺の一部だけが開口するので、紙幣を取り出すときにも目立たずに紙幣を取り出すことができる。すなわち悪意のある第三者に見られる危険を防止する効果もある。そして本発明によると、互いに結合されている縁部は、シートの端面どうしが突き合わされて結合代無しで結合されている。つまり結合代が無いのでそれだけ札入れの大きさは小さくなる。すなわちコンパクトなので、紙幣を入れても嵩張ることはない。さらに他の発明によると長方形の長辺と短辺は、特定の種類の紙幣の長辺と短辺よりも、それぞれ13〜25mm、10〜15mmだけ大きい。換言すると特定の種類の紙幣に対して必要最小限の大きさに形成されている。従って特定の種類の紙幣専用の札入れ、例えば1万円札専用の札入れとして使用することができ、必要最小限の大きさになる。またこの大きさに形成されているので、使い勝手を損なわうこともない。札入れは小さくコンパクトなので、嵩張ることが無く容易に上着の内ポケットに入れて携帯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る札入れを模式的に示す図であり、その(ア)は札入れの正面図、その(イ)は(ア)において札入れをX−Xで切断した断面図、その(ウ)は(イ)において札入れのY部分を拡大した拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る札入れの作用を模式的に示す図で、その(ア)は紙幣が入れられた状態の札入れの正面図、その(イ)は(ア)において札入れをZ−Zで切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る札入れ1を説明する。本実施の形態に係る札入れ1はフェルト、すなわち不織布からなるシートであって、略正方形の1枚のシート2から形成されている。シート2は図1の(ア)に示されているように2つ折りされ、それによって札入れ1は長方形状に形成されている。この長方形の短辺のうち、一方の短辺4とこの短辺4に連続する長辺6の一部6aに対応する部分には、ジッパー(登録商標)すなわち線ファスナ8が設けられている。そして、長辺6の残りの部分6bと他方の短辺9に対応する部分は、シート2のそれぞれの縁部が縫合され、すなわち結合され、札入れ1は袋状に形成されている。このように形成されているので、線ファスナ8を開いてシート2の頂点11をつまんで開くと、図1の(ア)に示されているように、札入れ1の一方の短辺4とこれに連続している長辺の一部6aは斜めに開くことができる。ところで、本実施の形態においては、線ファスナ8は、開閉するスライダー部分は金属からなるが、噛み合わされる歯の部分、すなわち務歯については樹脂から形成されている。従って金属探知機には検出されにくいので、空港における手荷物検査の際にも携帯したままでゲートを通過することができる。また線ファスナ8はコーナー部分10は半径10mm程度の曲率で滑らかに設けられているので開閉は容易にできるようになっている。さらには線ファスナ8が設けられている長辺の一部6aの長さは長辺6の長さの1/2よりも1cm程度短い。従って札入れ1を点線で示されている谷折り線13で二つ折りするときに、線ファスナ8が妨げになることはない。
【0013】
本実施の形態に係る札入れ1は、特定の種類の紙幣専用の札入れ、例えば1万円札専用の札入れになっており、この特定の種類の紙幣が20〜50枚入れられたときに、使い勝手が損なわれない程度に十分に小さくなるように工夫されている。このようにするために、本実施の形態においては、長辺の部分6bと短辺9の縫合方法と、札入れ1の大きさに特徴がある。
【0014】
縫合方法を説明する。図1の(イ)には、札入れ1をX−Xにおいて切断した断面が示されており、図1の(ウ)には、図1の(イ)において符号Yで示されている部分を拡大した拡大断面が示されているが、シート2のそれぞれの端面2a、2b、は互いに突き合わされている。換言するとシート2は重ね代が生じないように、かつ端面2a、2bにおいて滑らかにシート2が連続するように並べられている。この突き合わされているシート2の端面2a、2b近傍が、糸15によって縫合されている。そしてシート2の縫合部分18には、内側からあて布16が接着剤、あるいは熱融着によって貼り付けられている。これによって縫合部分18の弛みを防止して、シート2の端面2a、2bの突き合わせ状態がずれるのを防いでいる。本実施の形態においてはこのように縫合されているので、シート2には縫い代、すなわち結合代が形成されることはなく、札入れ1はそれだけ小型になっている。また縫合部分18は図1の(イ)に示されているように緩やかな曲率で結合されるので、作用のところで説明するように紙幣が入れられたときに札入れ1内に無駄な隙間が生じにくい。
【0015】
札入れ1の大きさは次のようになっている。すなわち本実施の形態においては札入れ1の長方形の長辺と短辺は、それぞれ特定の種類の紙幣の長辺と短辺よりも、それぞれ13〜25mm、10〜15mmだけ大きい。例えば1万円札専用の札入れの場合には、1万円札が159mm×77mmであるのに対して、札入れの長辺は172〜184mm、短辺は87〜92mmになっている。従って特定の種類の紙幣を20〜50枚入れたとしても札入れ1の大きさは十分にコンパクトである。なお紙幣の大きさに対して、札入れ1の短辺よりも長辺の方に、より余裕が設けられているのは、札入れ1が谷折り線13で二つ折りされることを考慮しているからである。線ファスナ8は、シート2の端面に設けられているように説明したが、シート2の端面から若干内側寄りに設けられていてもよい。しかしながら札入れ1に紙幣が入れられるとき、紙幣との間には8mm以上、好ましくは13mm以上の余裕が設けられるようにする必要がある。
【0016】
本実施の形態に係る札入れ1が1万円札専用の札入れとして形成されているものとして、作用を説明する。線ファスナ8を開き頂点11をつまんで札入れ1を開く。この開口部分から図2の(ア)に示されているように1万円札を20〜50枚入れる。図2の(イ)に示されているように、札入れ1の内側に形成される、紙幣の束20との隙間21はわずかしかないが、札入れ1の縫合部分18はシート2の端面が接合されていて緩やかな曲率で結合されているので、1万円札は途中で引っかかることなく容易に入れることができる。線ファスナ8を閉じる。札入れ1は十分に小さくコンパクトであり、上着の内ポケット等に入れても嵩張ることはない。1万円札を取り出すときには、図2の(ア)に示されているように、線ファスナ8を開き頂点11をつまんで札入れ1を開く。必要な枚数だけ1万円札を取り出して線ファスナ8を閉じる。本実施の形態においては札入れ1を開いて、入れられている紙幣の枚数を確認するのも容易である。この場合にも、不必要に札入れ1が開かれないので、紙幣の枚数は他人には見られにくい。従って盗難に遭いにくい。また本実施の形態においては、札入れ1は2つ折りしないで使用されることが多いが、前記したように谷折り線13において2つ折りして携帯することも可能である。
【0017】
本実施の形態に係る札入れ1は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えばシート2はフェルトからなるように説明したが、ビニールクロスから、あるいは合成皮革や天然皮革から構成するようにしてもよい。また本実施の形態においては、重ね合わされたシート2は縫合されているように説明したが、シート2の端面に接着剤を塗布して、端面どうしを接着するようにしてもよい。さらにはシート2が熱によって溶融する素材からなる場合には、熱加工して端面どうしを融着するようにしてもよい。また線ファスナに関しても変形が可能であり、面ファスナから、あるいは他の開閉手段から構成することもできる。
【符号の説明】
【0018】
1 札入れ 2 シート
4 一方の短辺 6 長辺
6a 長辺の一部 8 線ファスナ
9 他方の短辺 11 頂点
13 谷折り線 15 糸
16 あて布 18 縫合部分
20 紙幣の束 21 隙間
2a、2b 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布、ビニールクロス、天然皮革、あるいは合成皮革からなる1枚のシートが略長方形状に二つ折りされ、前記シートの重ね合わされた縁部のうち、前記長方形の一方の短辺とこれに連続する長辺の一部に対応する縁部には開閉可能なファスナが設けられ、他の縁部は互いに結合されて袋状に形成されている札入れであって、
前記互いに結合されている縁部は、前記シートの端面どうしが突き合わされて結合代無しで結合されていることを特徴とする札入れ。
【請求項2】
請求項1に記載の札入れにおいて、前記長方形の長辺と短辺は、特定の種類の紙幣の長辺と短辺よりも、それぞれ13〜25mm、10〜15mmだけ大きいことを特徴とする札入れ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の札入れにおいて、前記結合されている縁部は、縫合によって結合されていると共に、該縫合部にはあて布が貼られていることを特徴とする札入れ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の札入れにおいて、前記結合されている縁部は、接着剤による接着によって、もしくは熱加工による融着によって結合されていることを特徴とする札入れ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−55528(P2012−55528A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202528(P2010−202528)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(595068634)
【Fターム(参考)】