説明

材料の評価方法

【課題】材料のアウトガス特性を短期間で評価できる材料の評価方法を提供すること。
【解決手段】ケミカル汚染物質が含まれたアウトガスを発生する材料の評価方法において、評価対象となる材料の試験体が封入された容器に評価対象となるケミカル汚染物質と同一の物質を含んだ空気を供給し、供給された空気に含まれる物質の濃度と試験体を通過した空気に含まれるケミカル汚染物質の濃度とから試験体から発生したアウトガスの発生速度を求めるようにしたので、短期間でアウトガス特性を評価できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトガスを発生する材料の評価方法に関するものであって、特に、クリーンルームの建設や設備に用いられる材料の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶デバイスの生産・開発用クリーンルームでは、各種の分子状・ガス状汚染物質(以下、「ケミカル汚染物質」という。)の室内空気中濃度の低減が必要とされている。ケミカル汚染物質としては、ガス状有機物質、アルカリ性ガス(アンモニア、アミン等)、酸性ガス(SOx,NOx,HCl,酢酸,蟻酸等)、ガス状金属物質などが挙げられる。
【0003】
濃度低減の方法として、クリーンルームの建設や設備用に使用される各種材料・部材からのケミカル汚染物質の発生速度や発生量を測定し、それらの少ない材料・部材を選定し使用することが有効である。ケミカル汚染物質の発生特性は、「アウトガス特性」と称され、この測定評価方法は、社団法人日本空気清浄協会の指針にまとめられている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0004】
この指針には、適当な大きさの試験体を一定容積のチャンバー内に静置し、清浄な空気で満たして一定期間放置後、その内部のケミカル汚染物質量を測定する方法や、清浄空気を流通させながら、流通後の空気を一定量サンプリングし、その中のアウトガス量を測定する方法などが示されている。これらの方法は、一回のみの測定で終了することは少なく、アウトガスの経時変化を調べるために、ある間隔で数回の測定をすることが多い。この結果、図10に示すようなデータが得られ、測定時期においてガス発生速度:R,減衰傾向の大小(時間−発生速度の減衰傾向)(これが大きいと早期に発生が少なくなる),長期間において総発生量(発生速度の回帰式を長期材令時まで積分することにより推定が可能)を知ることができる。
【0005】
これらの情報を元に、アウトガスの発生速度が小さく、減衰も速く、総発生量も少ない材料が適切なものとして、材料選定・施工、研究開発が行われることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社団法人 日本空気清浄協会 クリーンルーム構成材料から発生する分子状汚染物質の測定方法指針
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10に示すように、アウトガスの測定期間は、試験体によって異なり、試験体によっては数日から数週間という長期に亘る場合もある。一方、建設現場における材料の選定作業では早急な対応が要求される場合も多い。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、材料のアウトガス特性を短期間で評価できる材料の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ケミカル汚染物質が含まれたアウトガスを発生する材料の評価方法において、評価対象となる材料の試験体が封入された容器に評価対象となるケミカル汚染物質と同一の物質を含んだ空気を供給し、供給された空気に含まれる物質の濃度と試験体を通過した空気に含まれるケミカル汚染物質の濃度とから試験体から発生したアウトガスの発生速度を求めることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記材料の評価方法において、前記アウトガスの発生速度は、下記の数式1を用いて求めることを特徴とする。
【数1】

【0011】
また、本発明は、上記材料の評価方法において、供給する空気に含まれる物質の濃度を段階的に変更し、アウトガスの発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれる物質の濃度からケミカル汚染物質の総発生量を評価することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記材料の評価方法において、供給する空気に含まれる物質の濃度を段階的に変更し、供給する空気に含まれる物質の濃度の変化度合いに対するアウトガスの発生速度の変化度合いからアウトガス発生速度の減衰の速さを評価することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記材料の評価方法において、評価対象となるケミカル汚染物質と同一の物質を含んだ空気は、評価対象となる材料から発生したケミカル汚染物質を含む空気であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記材料の評価方法において、評価対象となるケミカル汚染物質がアンモニアであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる材料の評価方法は、評価対象となる材料の試験体が封入された容器に評価対象となるケミカル汚染物質と同一の物質を含んだ空気を供給し、供給された空気に含まれる物質の濃度と試験体を通過した空気に含まれるケミカル汚染物質の濃度とから試験体から発生したアウトガスの発生速度を求める。
【0016】
また、本発明は、供給する空気に含まれる物質の濃度を段階的に変更し、アウトガスの発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれる物質の濃度からケミカル汚染物質の総発生量を評価するので、短期間でケミカル汚染物質の総発生量を評価できる。
【0017】
また、本発明は、供給する空気に含まれる物質の濃度を段階的に変更し、供給する空気に含まれる物質の濃度の変化度合いに対するアウトガスの発生速度の変化度合いからアウトガス発生速度の減衰の速さを評価するので、短期間でアウトガス発生速度の減衰の速さを評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実験に用いた装置の構成を示す概念図であって、評価対象となるケミカル汚染物質がアンモニアである場合の構成を示す図である。
【図2】図2は、供給された空気に含まれたアンモニアの濃度と各試験体から発生したアンモニアの発生速度との関係を示す図である。
【図3】図3は、清浄な空気を各試験体に供給し、各試験体から発生するアンモニアの発生速度の経時変化を調べ、その結果を指数関数モデル式にあてはめた近似曲線で示した図である。
【図4】図4は、回帰式のX切片とアンモニアの総発生量との関係を示す図である。
【図5】図5は、供給された空気に含まれるアンモニアの濃度とガス状有機物質の発生速度との関係を示す図である。
【図6】図6は、供給された空気に含まれるアンモニアの濃度と試験体から発生したアンモニアの発生速度との関係を示す図である。
【図7】図7は、X切片とアウトガス総発生量との関係を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2である材料の評価方法に用いる装置の構成を示す概念図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態2である材料の評価方法によって得られた供給濃度と発生速度との関係を示す図である。
【図10】図10は、従来の材料の評価方法によって得られた空気流通時間とアンモニア発生速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる材料の評価方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
まず、本発明の起因となった部材への供給空気中のアンモニア濃度とアウトガスとの関係についての実験および検討結果について説明する。ここで、アンモニアを主な対象として実験したのは、アンモニアはクリーンルームで特に制御が必要とされているからである。
【0021】
アウトガス測定試験体は、クリーンルーム構成用として利用される表1に示す材料(作製後3〜4ヶ月経過)を使用した。
【0022】
【表1】

【0023】
図1に示すように、ここで使用する実験装置は、評価対象となる試験体が封入されるデシケータ1と、アンモニアが希釈された空気をデシケータ1に供給するアンモニア希釈空気供給手段2と、デシケータ1に供給される空気に含まれるアンモニアの濃度を測定する通過前濃度測定手段3と、デシケータ1に供給され、試験体を通過した空気に含まれるアンモニアの濃度を測定する通過後濃度測定手段4とを備えている。
【0024】
図1に示すように、アンモニア希釈空気供給手段2は、アンモニアガスが封入されたガスボンベ(NH:1150ppb,Nバランス)21と、ガスボンベ21から容量を制御するコントローラ22を経由してアンモニアガスが供給されるガスブレンダ23と、活性炭24、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタ25を通過した清浄な空気をガスブレンダ23に供給するポンプ26とを備え、ガスボンベ21からのアンモニアを清浄空気で希釈し、濃度を0〜20μg/mの範囲で調整するようになっている。
【0025】
図1に示すように、通過前濃度測定手段3と通過後濃度測定手段4は、デシケータ1の前後の空気をインピンジャー31,41により純水中で捕集し、イオンクロマトグラフを用いてアンモニアの濃度を分析するようになっている。または、マイクロ化学チップを利用したアンモニアモニタリング装置5により気中アンモニア濃度を直接測定するようになっている。
【0026】
この実験により得られた値と下記の数式2を用いて発生速度Rをμg/mhとして算出した。ガス状有機物質は固体吸着剤TenaxGRで空気を捕集後、ガスクロマトグラフでTVOC量を求め、同様にμgC/mh(Cは炭素量)として発生速度を算出した。
【0027】
【数2】

【0028】
ところで、一般に部材表面から流体空気層への物質移動は下記の数式3で示され、周辺空気と表面濃度の差に比例する。
【0029】
【数3】

【0030】
図2に示すように、供給された空気に含まれるアンモニアの濃度が濃くなるほど部材から発生するアンモニアの発生速度が小さくなり、C0=Cvと仮定すると上記の数式3に従う結果となる。
【0031】
変化の大きさは直線回帰式の傾きの絶対値で表され、耐火塗料>ケイカル板>エポキシ塗料>塗床材の順であった。これは、各試験体が示す清浄空気(アンモニアの濃度≒0)中でのアンモニア発生速度の大きさと同じ順列であり、発生速度が元々大きいほど減少の割合も大きくなった。
【0032】
ところで、供給された空気に含まれるアンモニアの濃度と部材表面のアンモニアの濃度とが等しくなると(Cs=Cv)、発生速度は見かけ上0となり、直線回帰式のX切片がこのときのアンモニアの濃度を示すことになる。ここで、部材表面のアンモニアの濃度は、試験体から発生するアンモニアの総発生量と正の相関性を有する。
【0033】
図3は、清浄な空気を各試験体に供給し、各試験体から発生するアンモニアの発生速度の経時変化を調べ、その結果を指数関数モデル式にあてはめた近似曲線で示した図である。これにより、アンモニアの総発生量を55週までの発生量として試算し、回帰式のX切片との関係を調べた結果、図4に示すように、両者には良い相関が見られた。
【0034】
以上より、部材に供給される空気に含まれる化学物質の濃度と発生速度の変化の関係を考察することは、アウトガス特性の評価において有効であると考えられる。
【0035】
図5に示すように、アンモニアの発生速度と比較すると、ガス状有機物質発生速度の変化の程度は小さかった。このことから、供給される空気に含まれるアンモニアの濃度は、部材から発生するガス状有機物質の発生速度に大きな影響を与えないと考えられる。
【0036】
(実施の形態1)
つぎに、本発明の実施の形態1である材料の評価方法について説明する。ここで説明する材料の評価方法は、上述した実験および検討結果と同様に、クリーンルームで特に制御が必要とされているアンモニアをケミカル汚染物質とした例で説明する。
【0037】
本発明の実施の形態1である材料の評価方法で使用する装置は、上述した実験に使用したものと同様のもので、図1に示すように、評価対象となる試験体が封入されるデシケータ1と、アンモニアが希釈された空気をデシケータ1に供給するアンモニア希釈空気供給手段2と、デシケータ1に供給される空気に含まれるアンモニアの濃度を測定する通過前濃度測定手段3と、デシケータ1に供給され、試験体を通過した空気に含まれるアンモニアの濃度を測定する通過後濃度測定手段4とを備えている。
【0038】
図1に示すように、アンモニア希釈空気供給手段2は、アンモニアガスが封入されたガスボンベ(NH:1150ppb,Nバランス)21と、ガスボンベ21から容量を制御するコントローラ22を経由してアンモニアガスが供給されるガスブレンダ23と、活性炭24、ULPAフィルタ25を通過した清浄な空気をガスブレンダ23に供給するポンプ26とを備え、ガスボンベ21からのアンモニアを清浄空気で希釈し、濃度を0〜20μg/mの範囲で調整するようになっている。
【0039】
図1に示すように、通過前濃度測定手段3と通過後濃度測定手段4は、デシケータ1の前後の空気をインピンジャー31,41により純水中で捕集し、イオンクロマトグラフを用いてアンモニアの濃度を分析するようになっている。または、マイクロ化学チップを利用したアンモニアモニタリング装置5により気中アンモニア濃度を直接測定するようになっている。
【0040】
まず、本発明の実施の形態1である材料の評価方法は、供給する空気に含まれるアンモニアの濃度を段階的に変更し、各段階において供給された空気に含まれるアンモニアの濃度と試験体を通過した空気に含まれるアンモニアの濃度とを測定する。そして、上述した数式2を用いてアンモニア(アウトガス)の発生速度を求める。すると、図6に示すように、供給された空気に含まれるアンモニアの濃度とアンモニアの発生速度との関係が求められる。
【0041】
つぎに、本発明の実施の形態1である材料の評価方法は、アンモニアの発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれるアンモニアの濃度(X切片)を求める。求めたアンモニアの濃度(X切片)は、試験体表面のアンモニアの濃度と相関があり、図7に示すように、アンモニアの総発生量とも相関関係を有している。したがって、アンモニアの発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれるアンモニアの濃度(X切片)を求めれば、アンモニアの総発生量について試験体を相対的に評価できる。
【0042】
つづいて、本発明の実施の形態1である材料の評価方法は、供給する空気に含まれるアンモニアの濃度の変化度合いに対するアンモニアの発生速度の変化度合い(傾き)を求める。清浄な空気が試験体に供給された場合に同程度の発生速度を示す複数の試験体において、総発生量が少ない場合にはX切片も小さくなり、変化度合い(傾きの絶対値)は大きくなる。すなわち、求めた変化度合い(傾きの絶対値)が大きいほどアンモニア発生速度の減衰が速く終了する。したがって、求めた変化度合い(傾きの絶対値)からアンモニア発生速度の減衰の速さを相対的に評価できる。
【0043】
上述した本発明の実施の形態1である材料の評価方法は、供給する空気に含まれるアンモニアの濃度を段階的に変更し、各段階において供給された空気に含まれるアンモニアの濃度と試験体を通過した空気に含まれるアンモニアの濃度とを測定する。そして、試験体から発生したアンモニアの発生速度を求める。
【0044】
また、アンモニアの発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれるアンモニアの濃度からアンモニアの総発生量を評価するので、短期間(たとえば、1日)でアンモニアの総発生量を相対的に評価できる。
【0045】
また、供給する空気に含まれるアンモニアの濃度の変化度合いに対するアンモニアの発生速度の変化度合いからアンモニアの発生速度の減衰の速さを評価するので、短期間(たとえば、1日)でアンモニアの発生速度の減衰の速さを相対的に評価できる。
【0046】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2である材料の評価方法について説明する。ここでは、ガス状有機物質(TVOC)をケミカル汚染物質とした場合を例として説明する。
【0047】
上述した本発明の実施の形態1である材料の評価方法は、アンモニアをケミカル汚染物質とし、デシケータに供給する空気に含まれるアンモニアをガスボンベから供給するようにしていた。しかしながら、ケミカル汚染物質はアンモニアに限られるものではなく、ケミカル汚染物質ごとにガスボンベを用意することは容易ではない。
【0048】
本発明の実施の形態2である材料の評価方法は、このことに鑑みたものである。図8に示すように、本発明の実施の形態2である材料の評価方法で使用する装置は、評価対象となる試験体が封入されるデシケータ6と、評価対象となるガス状有機物質が含まれる空気をデシケータ6に供給するガス状有機物質希釈空気供給手段7と、供給される空気に含まれるガス状有機物質の濃度を測定する通過前濃度測定手段8と、デシケータ6に供給され、試験体を通過した空気に含まれるガス状有機物質の濃度を測定する通過後濃度測定手段9とを備えている。
【0049】
図8に示すように、ガス状有機物質希釈空気供給手段7は、評価対象となる試験体と同一の材料が封入されたデシケータ71と、活性炭74、ULPAフィルタ75を通過した清浄な空気をデシケータ71に供給するポンプ76とを備え、デシケータ71に封入された材料から発生したガス状有機物質を清浄な空気で希釈し、ガス状有機物質が含まれる空気を評価対象となる試験体が封入されたデシケータ6に供給するようになっている。ガス状有機物質が含まれる空気の濃度は、材料の量、供給する清浄化された空気の量で調整することができるようになっている。
【0050】
図8に示すように、通過前濃度測定手段8と通過後濃度測定手段9は、デシケータ6の前後の空気をガス捕集管(固体吸着剤)で捕集し、ガスクロマトグラフを用いて濃度を分析するようになっている。または、マイクロ化学チップを利用したガスモニタリング装置10により気中のガス状有機物質濃度を直接測定するようになっている。
【0051】
本発明の実施の形態2である材料の評価方法は、上述した実施の形態1である材料の評価方法と同様に、供給する空気に含まれるガス状有機物質の濃度を段階的に変更し、各段階において供給された空気に含まれるガス状有機物質の濃度と試験体を通過した空気に含まれるガス状有機物質の濃度とを測定する。そして、上述した数式2を用いてガス状有機物質(アウトガス)の発生速度を求める。すると、図9に示すように、供給された空気に含まれるガス状有機物質の濃度とガス状有機物質(アウトガス)の発生速度との関係が求められる。
【0052】
同様に、本発明の実施の形態2である材料の評価方法は、ガス状有機物(アウトガス)の発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれるガス状有機物の濃度(X切片)を求める。求めたガス状有機物の濃度(X切片)は、試験体表面のガス状有機物の濃度と相関があり、ガス状有機物の総発生量とも相関関係を有している。したがって、ガス状有機物の発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれるガス状有機物の濃度(X切片)を求めれば、ガス状有機物の総発生量について試験体を相対的に評価できる。
【0053】
同様に、本発明の実施の形態2である材料の評価方法は、供給する空気に含まれるガス状有機物の濃度の変化度合いに対するガス状有機物の発生速度の変化度合い(傾き)を求める。清浄な空気が試験体に供給された場合に同程度の発生速度を示す複数の試験体において、総発生量が少ない場合にはX切片も小さくなり、変化度合い(傾きの絶対値)は大きくなる。すなわち、求めた変化度合い(傾きの絶対値)が大きいほどガス状有機物の発生速度の減衰が速く終了する。したがって、求めた変化度合い(傾きの絶対値)からガス状有機物の発生速度の減衰の速さを相対的に評価できる。
【0054】
上述した本発明の実施の形態2である材料の評価方法は、供給する空気に含まれるガス状有機物の濃度を段階的に変更し、各段階において供給された空気に含まれるガス状有機物の濃度と試験体を通過した空気に含まれるガス状有機物の濃度とを測定する。そして、試験体から発生したガス状有機物の発生速度を求める。
【0055】
また、ガス状有機物の発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれるガス状有機物の濃度からガス状有機物の総発生量を評価するので、短期間(たとえば、1日)でガス状有機物の総発生量を相対的に評価できる。
【0056】
また、供給する空気に含まれるガス状有機物の濃度の変化度合いに対するガス状有機物の発生速度の変化度合いからガス状有機物の発生速度の減衰の速さを評価するので、短期間(たとえば、1日)でガス状有機物の発生速度の減衰の速さを相対的に評価できる。
【0057】
上述したように、ケミカル汚染対策が必要とされるクリーンルームの建設では、ケミカル汚染物質の発生速度が小さいこと、早期に発生速度が減衰すること、総発生量も少ないことが材料に要求される。本発明の実施の形態である材料の評価方法によれば、上記の評価作業を従来法に比べて短期間(たとえば、従来法は数日〜数週間、本方法は1日)で実施することが可能となる。これによって、現場の生産性向上および客先からの迅速な対応に大きく貢献できる。
【符号の説明】
【0058】
1 デシケータ
2 アンモニア希釈空気供給手段
3 通過前濃度測定手段
4 通過後濃度測定手段
5 アンモニアモニタリング装置
6 デシケータ
7 ガス状有機物質希釈空気供給手段
8 通過前濃度測定手段
9 通過後濃度測定手段
10 ガスモニタリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカル汚染物質が含まれたアウトガスを発生する材料の評価方法において、
評価対象となる材料の試験体が封入された容器に評価対象となるケミカル汚染物質と同一の物質を含んだ空気を供給し、供給された空気に含まれる物質の濃度と試験体を通過した空気に含まれるケミカル汚染物質の濃度とから試験体から発生したアウトガスの発生速度を求めることを特徴とする材料の評価方法。
【請求項2】
前記アウトガスの発生速度は、下記の数式1を用いて求めることを特徴とする請求項1に記載の材料の評価方法。
【数1】

【請求項3】
供給する空気に含まれる物質の濃度を段階的に変更し、アウトガスの発生速度が0となった場合に供給された空気に含まれる物質の濃度からケミカル汚染物質の総発生量を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の材料の評価方法。
【請求項4】
供給する空気に含まれる物質の濃度を段階的に変更し、供給する空気に含まれる物質の濃度の変化度合いに対するアウトガスの発生速度の変化度合いからアウトガス発生速度の減衰の速さを評価することを特徴とする請求項1または2に記載の材料の評価方法。
【請求項5】
評価対象となるケミカル汚染物質と同一の物質を含んだ空気は、評価対象となる材料から発生したケミカル汚染物質を含む空気であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の材料の評価方法。
【請求項6】
評価対象となるケミカル汚染物質がアンモニアであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の材料の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−27637(P2011−27637A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175767(P2009−175767)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第27回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集,発行日 平成21年4月14・15日
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】