説明

材料均し装置及びこれを備えるフェルト材の製造装置

【課題】材料密度の均一化が図られた高品質のフェルト材を得ることができる材料均し装置を提供する。
【解決手段】本材料均し装置3は、型(下型5)内に供給される少なくとも繊維材を含む材料を均す材料均し装置であって、型を振動させる振動部20を備えることを特徴とする。上記振動部は、型を水平から傾けた状態で上下(水平)振動させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料均し装置及びこれを備えるフェルト材の製造装置に関し、さらに詳しくは、材料密度の均一化が図られた高品質のフェルト材を得ることができる材料均し装置及びこれを備えるフェルト材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用の防音材等のフェルト材として、例えば、車両内装材の破砕物等の繊維材を含むリサイクル材料を用いてなるものが一般に知られている。このフェルト材の製造装置としては、例えば、図7に示すように、材料Sを供給する材料供給ダクト108を有する材料供給装置102と、この材料供給ダクト108から供給された材料Sを用いてマット材124を予備成形する第1プレス装置103と、この第1プレス装置103で成形されたマット材124を搬送する第1コンベア104と、この第1コンベア104により搬送されたマット材124を用いてフェルト材125を本成形する第2プレス装置105と、を備える製造装置101が知られている。
なお、上記第2プレス装置105で成形されたフェルト材125は、第2コンベア106によりトリム装置107に搬送されて端部がトリムされる。また、上記材料供給装置としては、マニピュレータのアーム先端側に設けられた供給口から型内に材料を供給するものが一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−280151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のフェルト材の製造装置101では、材料供給装置102の材料供給ダクト108から第1プレス装置103の型内に材料Sを単純に吹き込み充填するようにしているので、最終的に得られるフェルト材の材料密度を十分に均一化させ難い。また、上記従来のフェルト材の製造装置101では、マット材124を予備成形してからフェルト材125を本成形するようにしているので、材料供給装置102と第2プレス装置105(本成形装置)との間に、第1プレス装置103(予備成形装置)及び第1コンベア104の2設備を設ける必要があり、設備コストが高くなり設備スペースが大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、材料密度の均一化が図られた高品質のフェルト材を得ることができる材料均し装置及びこれを備えるフェルト材の製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、上記目的に加えて、設備コスト及び設備スペースを低減することができる材料均し装置及びこれを備えるフェルト材の製造装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.型内に供給される少なくとも繊維材を含む材料を均す材料均し装置であって、
前記型を振動させる振動部を備えることを特徴とする材料均し装置。
2.前記振動部は、前記型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させる上記1.記載の材料均し装置。
3.前記振動部は、前記型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させた後に、前記型を水平状態にして上下及び/又は水平振動させる上記1.又は2.に記載の材料均し装置。
4.前記振動部は、マニピュレータと、該マニピュレータのアーム先端側に設けられ且つ前記型を保持する型保持部と、該マニピュレータを駆動制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記マニピュレータを駆動制御して前記型保持部で保持された前記型を振動させる均し制御部と、前記マニピュレータを駆動制御して前記型保持部で保持された前記型を搬送させる搬送制御部と、を有する上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の材料均し装置。
5.前記制御部は、前記マニピュレータを駆動制御して前記型保持部で保持された前記型を材料供給口に対向させた状態で水平移動させる受取り制御部を更に有する上記4.記載の材料均し装置。
6.型内に少なくとも繊維材を含む材料を供給する材料供給装置と、
前記材料供給装置により前記型内に供給された材料を均す、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の材料均し装置と、
前記材料均し装置により材料が均された前記型を用いて該材料を加熱成形するプレス装置と、を備えることを特徴とするフェルト材の製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の材料均し装置によると、振動部により型が振動されて型内に供給された材料が均される。これにより、この材料が均された型を用いて加熱成形を行えば、材料密度の均一化が図られた高品質のフェルト材を得ることができる。
また、前記振動部が、前記型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させる場合は、型内の所定部位に偏って供給された材料が更に均等に均される。そのため、フェルト材の材料密度の更なる均一化を図ることができる。
また、前記振動部が、前記型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させた後に、前記型を水平状態にして上下及び/又は水平振動させる場合は、傾斜状態での型の上下及び/又は水平振動により型内の所定部位に偏って供給された材料が均等に均され、その後、水平状態での型の上下及び/又は水平振動により型内の材料が更に均等に均される。そのため、フェルト材の材料密度の更なる均一化を図ることができる。
また、前記振動部が、マニピュレータと、型保持部と、制御部と、を有し、前記制御部が、均し制御部と、搬送制御部と、を有する場合は、均し制御部によりマニピュレータが駆動制御されて型保持部で保持された型が振動され、搬送制御部によりマニピュレータが駆動制御されて型保持部で保持された型が搬送される。これにより、振動部に材料の均し機能及び搬送機能を持たせることができ、フェルト材を得るための設備コスト及び設備スペースを低減することができる。
さらに、前記制御部が、受取り制御部を更に有する場合は、受取り制御部によりマニピュレータが駆動制御されて型保持部で保持された型が材料供給口に対向された状態で水平移動される。これにより、振動部に材料の受取り機能を更に持たせることができ、フェルト材を得るための設備コスト及び設備スペースを更に低減することができる。
【0008】
本発明のフェルト材の製造装置によると、材料供給装置により型内に材料が供給され、材料均し装置により型内に供給された材料が均され、プレス装置により型内の均された材料が加熱成形され、フェルト材が得られる。この材料均し装置では、振動部により型が振動されて型内に供給された材料が均される。これにより、この材料が均された型を用いて加熱成形を行えば、材料密度の均一化が図られた高品質のフェルト材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るフェルト材の製造装置を模式的に示す側面図である。
【図2】上記フェルト材の製造装置を模式的に示す平面図である。
【図3】実施例に係るマニピュレータを示す斜視図である。
【図4】上記マニピュレータの駆動制御を示すフローチャート図である。
【図5】上記マニピュレータによる下型の受取り動作を説明するための説明図である。
【図6】上記マニピュレータによる下型の均し動作を説明するための説明図であり、(a)は受取り位置での下型の材料の受取り状態を示し、(b)は均し位置で下型を傾斜状態で上下振動させる状態を示し、(c)は均し位置で下型を水平状態で上下振動させる状態を示す。
【図7】従来のフェルト材の製造装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.材料均し装置
本実施形態1.に係る材料均し装置は、型内に供給される少なくとも繊維材を含む材料を均す材料均し装置であって、この型を振動させる振動部を備えることを特徴とする(例えば、図3参照)。この型は、通常、後述するプレス装置で用いられる。
【0012】
上記振動部としては、例えば、(1)型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させる形態、(2)型を水平状態で上下及び/又は水平振動させる形態等を挙げることができる。これら(1)(2)形態のうちの一方の形態のみを実施してもよいし、両方の形態を所定の順序又は同時に実施してもよい。特に、上記振動部は、型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させた後に、型を水平状態にして上下及び/又は水平振動させることが好ましい(例えば、図6(b)(c)参照)。型内の所定部位に偏って供給される材料をより確実に均し得るためである。また、上記(1)(2)形態では、例えば、振動部による型の振幅は50〜200mm(好ましくは100〜200mm)であることができる。さらに、上記(1)形態では、例えば、振動部による型の水平からの傾斜角(θ)は5〜30度(好ましくは10〜20度、特に15度)であることができる(例えば、図6(b)参照)。
【0013】
上記振動部は、例えば、マニピュレータと、このマニピュレータのアーム先端側に設けられ且つ型を保持する型保持部と、このマニピュレータを駆動制御する制御部と、を有し、この制御部は、マニピュレータを駆動制御して型保持部で保持された型を振動させる均し制御部と、マニピュレータを駆動制御して型保持部で保持された型を搬送させる搬送制御部と、を有することができる(例えば、図3及び図4参照)。この場合、上記制御部は、マニピュレータを駆動制御して型保持部で保持された記型を材料供給口に対向させた状態で水平移動させる受取り制御部を更に有することが好ましい(例えば、図4参照)。
【0014】
上記均し制御部は、通常、上述の振動部による型の振動形態を実施する手段である。また、上記搬送制御部は、例えば、後述する材料供給装置とプレス装置との間で型を搬送させることができる。
【0015】
なお、上記制御部の制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。また、上記マニピュレータとは、多関節を有するロボットアームの他に、クレーン機構、スライド機構、コンベア機構等を含むものとする。
【0016】
なお、上記材料は、例えば、チップ状固形物と熱可塑性バインダとを含んでいることができる。このチップ状固形物としては、例えば、車両の廃材から抽出したウレタン及び繊維を主とする良質のシュレッダーダストであることができる。この場合、チップ状固形物は、ウレタンフォーム等のプラスチックフォームの断片が過半量を占め、その他繊維とで主体をなす。この繊維とは、車両のシート表皮等を構成していた織物の断片や繊維屑等が混入したものである。また、上記材料中には、後述するフェルト材の品質を阻害しない限度において、金属、ガラス等の微小な断片が若干混入することも許される。また、上記熱可塑性バインダの形状として、例えば、繊維状、粉末、エマルジョン等を挙げることができる。この熱可塑性バインダは、例えば、後述する加熱成形時に溶融する低融点の鞘部と溶融しない高融点の芯部とからなる芯鞘構造を有することができる。
【0017】
2.フェルト材の製造装置
本実施形態2.に係るフェルト材の製造装置は、型内に少なくとも繊維材を含む材料を供給する材料供給装置と、この材料供給装置により型内に供給された材料を均す、上記実施形態1.の材料均し装置と、この材料均し装置により材料が均された型を用いて材料を加熱成形するプレス装置と、を備えることを特徴とする(例えば、図1参照)。なお、上記フェルト材は、通常、通気性を有している。このフェルト材としては、例えば、ダッシュサイレンサー、フロアサイレンサー等に用いられる車両防音材を挙げることができる。
【0018】
上記材料供給装置は、例えば、材料を貯留するホッパと、一端側がホッパに連絡され且つ他端側が材料供給口となる材料供給通路と、この材料供給通路に設けられる送風手段(例えば、ブロア、ファン等)と、を備えることができる(例えば、図1参照)。この場合、送風手段によりホッパ内の材料が材料供給通路を介して材料供給口から供給される。なお、上記材料としては、例えば、実施形態1.の材料均し装置で説明した材料の構成を適用することができる。
【0019】
上記プレス装置は、例えば、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生器と、この過熱蒸気発生器で発生された過熱蒸気を型ホルダに装着された型内の材料に供給する過熱蒸気供給通路と、を有することができる。これにより、一度の加熱成形で所望形状のフェルト材を得ることができる。そのため、従来のようにマット材を予備成形してからフェルト材を本成形する、即ち2度の加熱成形を経るものに比べて、設備コスト及び設備スペースを極めて低減することができる。この場合、上記型が、縦断面凹状の箱状に形成され、その底壁がメッシュ状とされていることが好ましい。過熱蒸気を型の底壁から上方に通過させて型内の材料に効率よく供給できるためである。なお、上記プレス装置は、通常、上記型を装着可能な型ホルダを有している。
【実施例】
【0020】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0021】
(1)フェルト材の製造装置の構成
本発明に係るフェルト材の製造装置1は、図1及び図2に示すように、所定のタイミング及び供給量で材料を供給する材料供給装置2と、この材料供給装置2により下型5(本発明に係る「型」として例示する。)内に供給された材料を均す材料均し装置3と、下型5を装着可能な下型ホルダ6を有し、材料均し装置3により均された材料を加熱成形するプレス装置4と、を備えている。
【0022】
上記材料供給装置2は、材料を貯留するホッパ7と、一端側がホッパ7に連絡され且つ他端側が材料供給口8aとなる材料供給ダクト8と、この材料供給ダクト8の途中に設けられるブロア9と、を備えている。このブロア9によりホッパ7内の材料が材料供給ダクト8を介して材料供給口8aから供給される。
【0023】
なお、本実施例では、上記材料として、車両の廃材から抽出したウレタン及び繊維を主とする良質のシュレッダーダストであるチップ状固形物と熱可塑性バインダとの混合物を例示する。この材料(混合物)は、解繊手段(例えば、周面に針状突起を有する回転シリンダ等)により解繊されていることが好ましい。材料の均一化を図り得るためである。また、本実施例では、本発明に係る「フェルト材」として、ダッシュサイレンサー又はフロアサイレンサー等に用いられる車両用防音材を例示する。
【0024】
上記プレス装置4は、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生器12と、この過熱蒸気発生器12で発生された過熱蒸気を下型ホルダ6に装着された下型5内に供給する過熱蒸気供給通路13と、を有している。したがって、このプレス装置4では、過熱蒸気を用いて材料の加熱成形が行われる。また、このプレス装置4は、下型ホルダ6に装着された下型5に対向する上型14を有しており、下型5に対する上型14の近接・離反移動により上型14及び下型5が型締め・型開きされる。これら上型14及び下型5は、縦断面凹状の箱状に形成され、その底壁5aがメッシュ状とされている(図3参照)。
【0025】
なお、上記下型5は、後述するマニピュレータにより受取り位置A、取出し位置B、均し位置C、及び成形位置Dの間で搬送される。この受取り位置Aに位置するとき下型5は材料供給口8aに対向している。また、この取出し位置Bに位置するとき下型5は材料供給装置2の後方に配置された支持台10上に載置されている。また、この成形位置Dに位置するとき下型5はプレス装置4の下型ホルダ6にセットされている。さらに、受取り位置Aと成形位置Dとの略中間に均し位置C(図2参照)が設定されている。
【0026】
上記材料均し装置3は、上記プレス装置4で用いられる下型5を振動させる振動部20を備えている。この振動部20は、図3に示すように、6軸の垂直多関節ロボットアームであるマニピュレータ21と、このマニピュレータ21のアーム先端側21aに設けられ且つ下型5を保持する略U字状の型保持部22と、このマニピュレータ21を駆動制御する制御部23と、を有している。
【0027】
上記制御部23は、図示しないCPU、ROM及びRAMを有しており、ROMに保存された制御プログラムに従ってCPUが各種処理動作を実行し、またRAMはデータの一時保存等に使用される。そして、この制御部23では、図4に示すように、プレス装置4において加熱成形が終了したか否かが判断され(ステップS1)、加熱成形が終了した場合(ステップS1でYES判定)には、マニピュレータ21を駆動制御して型保持部22で成形位置Dの下型5を保持させて下型5を成形位置Dから取出し位置Bまで搬送させる(ステップS2)。
【0028】
次に、上記制御部23は、マニピュレータ21を駆動制御して下型5を取出し位置Bから受取り位置Aまで搬送させ(ステップS3)、この受取り位置Aで下型5に受取り動作を行わせる(ステップS4)。この受取り動作では、図5に示すように、下型5は、材料供給口8aに対向された状態で水平移動される。
【0029】
次いで、上記制御部23は、マニピュレータ21を駆動制御して下型5を受取り位置Aから均し位置Cまで搬送させ(ステップS5)、この均し位置Cで下型5に均し動作を行わせる(ステップS6)。この均し動作では、下型5は、先ず、水平から傾けた状態で上下振動され(図6(b)参照)、その後、水平状態で上下振動される(図6(c)参照)。その後、上記制御部23は、マニピュレータ21を駆動制御して下型5を均し位置Cから成形位置Dまで搬送させ(ステップS7)、この成形位置Dで型保持部22による保持を解除させる。
【0030】
なお、上記実施例の制御部23の制御処理において、上記ステップS6によって本発明に係る「均し制御部」が構成されている。また、上記ステップS2、S3、S5及びS7によって本発明に係る「搬送制御部」が構成されている。さらに、上記ステップS4によって本発明に係る「受取り制御部」が構成されている。
【0031】
(2)フェルト材の製造装置の作用
次に、上記構成のフェルト材の製造装置1の作用について説明する。先ず、プレス装置4において加熱成形が終了すると、マニピュレータ21によりプレス装置4にセットされた下型5が型保持部22で保持されて取出し位置Bまで搬送される。この取出し位置Bで下型5内のフェルト材が作業者により取り出される(図1参照)。
【0032】
次いで、マニプレータ21により下型5が受取り位置Aまで搬送されて受取り動作が行われる(図5参照)。この受取り動作では、下型5は、材料供給口8aに対向された状態で水平移動され(図5中に仮想線及び矢印で示す。)、材料供給口8aから供給される材料Sが下型5の底壁5aの全域にわたって受け取られる。このとき、材料供給口8aからの材料Sの供給開始タイミング、供給停止タイミング、及び供給量等によっては下型5内の所定部位に偏って材料Sが供給されることとなる(図6(a)参照)。
【0033】
その後、マニピュレータ21により下型5が均し位置Cまで搬送されて均し動作が行われる。この均し動作では、下型5は、水平から所定の傾斜角θ(例えば、約15度)で傾けた状態で上下振動されて下型5内の所定部位に偏って供給された材料が均される(図6(b)参照)。次に、下型5を、水平状態にして上下振動されて下型内で材料が更に均される(図6(c)参照)。次いで、マニピュレータ21により下型5が成形位置Dまで搬送されてプレス装置4にセットされる。その後、プレス装置4において、上型14及び下型5を型締めして過熱蒸気を用いた加熱成形が行われてフェルト材が加熱成形されることとなる。
【0034】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のフェルト材の製造装置1によると、材料供給装置2により材料Sが供給され、材料均し装置3により下型5内に供給された材料が均され、プレス装置4により下型5内の均された材料Sが加熱成形され、フェルト材が得られる。そして、上記材料均し装置3では、振動部20により下型5が振動されて下型5内に供給された材料Sが均される。これにより、この材料Sが均された下型5を用いて加熱成形を行えば、材料密度の均一化が図られた高品質のフェルト材を得ることができる。
【0035】
また、本実施例では、振動部20を、下型5を水平から傾けた状態で上下振動させた後に、下型5を水平状態にして上下振動させるようにしたので、傾斜状態での下型5の上下振動により下型5内の所定部位に偏って供給された材料Sが均等に均され、その後、水平状態での下型5の上下振動により下型5内の材料Sが更に均等に均される。そのため、フェルト材の材料密度の更なる均一化を図ることができる。
【0036】
また、本実施例では、振動部20を、マニピュレータ21と、型保持部22と、制御部23と、を有して構成し、制御部23によって、マニピュレータ21が駆動制御されて型保持部22で保持された下型5を振動させるとともに、マニピュレータ21が駆動制御されて型保持部22で保持された下型5を搬送させるようにしたので、振動部20(マニピュレータ21)に材料の均し機能及び搬送機能を持たせることができ、フェルト材を得るための設備コスト及び設備スペースを低減することができる。
【0037】
さらに、本実施例では、制御部23によって、マニピュレータ21が駆動制御されて型保持部22で保持された下型5を材料供給口8aに対向させた状態で水平移動させるようにしたので、振動部20(マニピュレータ21)に材料Sの受取り機能を更に持たせることができ、フェルト材を得るための設備コスト及び設備スペースを更に低減することができる。
【0038】
さらに、本実施例では、過熱蒸気を用いて加熱成形するプレス装置4を採用したので、一度の加熱成形で所望形状のフェルト材を得ることができる。そのため、従来のようにマット材を予備成形してからフェルト材を本成形する、即ち2度の加熱成形を経るものと比べて、設備コスト及び設備スペースを極めて低減することができる。特に、本実施例では、下型5として、縦断面凹状の箱状に形成され、その底壁5aがメッシュ状としたものを採用したので、過熱蒸気を下型5の底壁5aから上方に通過させて下型5内の材料Sに効率よく供給でき、一度の加熱成形でフェルト材をより確実に得ることができる。
【0039】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、振動部20(マニピュレータ21)に型の振動機能及び搬送機能を持たせるようにしたが、これに限定されず、例えば、材料供給装置2の近傍に型の振動機能を有する振動部を設け、この振動部とプレス装置4との間に型の搬送機能を有する搬送部を設けるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施例において、型保持部22に設けられ且つ下型5の両側面を把持・解除可能な可動部と、この可動部を駆動させるシリンダ等の駆動源と、この駆動源を駆動制御する制御部と、を有して材料均し装置3を構成するようにしてもよい。また、上記実施例では、振動部20を、下型5を水平から傾けた状態で上下振動させているが、水平方向(前後左右)に振動させてもよく、また、下型5を水平から傾けた状態で振動させた後に、下型5を水平状態にして上下振動させているが、水平方向に振動させてもよい。更に振動動作を上下、水平を混在させてもよい。
【0041】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0042】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
フェルト材を製造する技術として広く利用される。特に、ダッシュサイレンサー、フロアサイレンサー等の車両用防音材を得る技術として好適に利用される。
【符号の説明】
【0044】
1;フェルト材の製造装置、2;材料供給装置、3;材料均し装置、4;プレス装置、5;下型、6;下型ホルダ、8a;材料供給口、20;振動部、21;マニピュレータ、22;型保持部、23;制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内に供給される少なくとも繊維材を含む材料を均す材料均し装置であって、
前記型を振動させる振動部を備えることを特徴とする材料均し装置。
【請求項2】
前記振動部は、前記型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させる請求項1記載の材料均し装置。
【請求項3】
前記振動部は、前記型を水平から傾けた状態で上下及び/又は水平振動させた後に、前記型を水平状態にして上下及び/又は水平振動させる請求項1又は2に記載の材料均し装置。
【請求項4】
前記振動部は、マニピュレータと、該マニピュレータのアーム先端側に設けられ且つ前記型を保持する型保持部と、該マニピュレータを駆動制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記マニピュレータを駆動制御して前記型保持部で保持された前記型を振動させる均し制御部と、前記マニピュレータを駆動制御して前記型保持部で保持された前記型を搬送させる搬送制御部と、を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の材料均し装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記マニピュレータを駆動制御して前記型保持部で保持された前記型を材料供給口に対向させた状態で水平移動させる受取り制御部を更に有する請求項4記載の材料均し装置。
【請求項6】
型内に少なくとも繊維材を含む材料を供給する材料供給装置と、
前記材料供給装置により前記型内に供給された材料を均す、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の材料均し装置と、
前記材料均し装置により材料が均された前記型を用いて該材料を加熱成形するプレス装置と、を備えることを特徴とするフェルト材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157650(P2011−157650A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19401(P2010−19401)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】