杖ホルダー及び杖ホルダーセット
【課題】 簡単かつ頑丈な構造であって色々な場所に固定することができる杖ホルダーを提供すること。
【解決手段】 前面側に一対の弾性突出面が形成され弾性突出面の間に杖保持用の近接弾性対向面が形成された弾性部材からなる杖保持部材と、硬質の合成樹脂から構成され上記杖保持部材を背面側から支持するホルダー本体と、上記ホルダー本体に接合され該ホルダー本体を水平に保持する保持具とから構成され、上記保持具は上記ホルダー本体が上記保持具に対して水平位置から垂直位置に回動し得るように上記ホルダー本体を支持する回動支持部を有すると共に、固定対象物に固定するための固定部を有する杖ホルダーにより構成される。
【解決手段】 前面側に一対の弾性突出面が形成され弾性突出面の間に杖保持用の近接弾性対向面が形成された弾性部材からなる杖保持部材と、硬質の合成樹脂から構成され上記杖保持部材を背面側から支持するホルダー本体と、上記ホルダー本体に接合され該ホルダー本体を水平に保持する保持具とから構成され、上記保持具は上記ホルダー本体が上記保持具に対して水平位置から垂直位置に回動し得るように上記ホルダー本体を支持する回動支持部を有すると共に、固定対象物に固定するための固定部を有する杖ホルダーにより構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、福祉施設等において、机、ベッド、車椅子等に容易に設置でき、杖を保持することが可能な杖ホルダー及び杖ホルダーセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院、福祉施設等において、杖を必要とする患者、入所者等は、個室等においては、杖をベッドのパイプ枠に掛けたり、食事中はテーブルに立て掛けており、車椅子の患者は杖を膝の上に置いていた。
【0003】
しかしながら、これらの杖は床に落ち易いため、床に落ちた杖で躓く場合があるし、床に落ちた杖を拾う際に身体に負担を生じていた。また、車椅子で移動中に、杖が他人に当たる場合があり危険であった。
【0004】
このような事態に鑑みて、従来、杖を保持するための杖ホルダーがいくつか提案されている。
【0005】
例えば、円弧状の杖保持部を有するホルダーを壁面等に水平に固定するもの(特許文献1,2)、杖ホルダーの固定部材を複数種類設け、どこに固定するかによって使い分けを可能としたもの(特許文献3)、杖ホルダーを水平に固定した状態から壁面に平行に回動して折り畳み可能としたもの(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−82352号
【特許文献2】特開2004−57422号
【特許文献3】特開2004−313675号
【特許文献4】実用新案登録第3118957号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2の杖ホルダーは、取付面に対して水平に固定されるものであり常時取付面から突出しているため、人或いは物が杖ホルダー自体に当接することがあり危険であった。また、固定方法も埋め込み或いは接着等であるから、取り付け対象物或いは取り付け位置が非常に限定される、という課題があった。
【0008】
特許文献3の杖ホルダーは、いくつかの固定部材を使用することによってパイプ等にも取り付け可能としたものであるが、より多くの部材に確実に取り付けられる構造が望まれる。
【0009】
特許文献4の杖ホルダーは、ホルダー部を取付面に対して平行に折り畳み可能な構造が開示されているが、ホルダー自体の構造が極めて複雑であり、より低コストで実現可能な構造が望まれる。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であって低コストで製造可能であるにも拘わらず、頑丈な構造であって、色々な取り付け場所に確実に固定することができ、しかもホルダー本体を折り畳み可能とすると共に、ホルダー本体の固定対象物に対する水平方向の角度調整も可能として、確実に杖を保持し得る杖ホルダー及び杖ホルダーセットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、前面側に一対の弾性突出面が形成され、これら弾性突出面の間に杖保持用の近接弾性対向面が形成された弾性部材からなる杖保持部材と、硬質の合成樹脂から構成され、上記杖保持部材を背面側から支持するホルダー本体と、上記ホルダー本体に接合され、該ホルダー本体を水平位置に保持する保持具とから構成され、上記保持具は、上記ホルダー本体が上記保持具に対して上記水平位置から垂直位置に回動し得るように上記ホルダー本体を支持する回動支持部を有しており、かつ上記保持具は、固定対象物に固定するための固定部を有しているものであることを特徴とする杖ホルダーにより構成される。
【0012】
上記回動支持部は、例えばホルダー本体(2)の固定支持部(3)と、該固定支持部(3)を保持する保持具(5)の水平回動支持部(5b)と、該水平回動持部(5b)と上記固定支持部(3)に貫通する左右方向の水平回動軸としてのネジ(6)等により構成することができる。上記固定部は例えば上記保持具(5)に設けられた直立基板(5a)により構成することができる。このように構成すると、保持具により杖ホルダーを固定対象物に水平に固定し、杖を近接弾性対向面により確実に保持することができ、また、ホルダー本体を垂直位置に回動することにより収納することができる。また、杖を保持する際に一対の弾性突出面の存在により杖を傷付けることがない。
【0013】
第2に、上記両弾性突出面は各々前方側に突出する円弧面により形成されており、該円弧面は上記近接弾性対向面に連続するものである上記第1記載の杖ホルダーにより構成される。
【0014】
このように構成すると、弾性突出面によって杖を近接弾性対向面に案内することができ、円滑に杖を保持させることができると共に、上記弾性突出面によって杖を傷付けることもない。
【0015】
第3に、上記ホルダー本体は略凹形状をなしていると共に該略凹形状の内側に沿って内溝を形成し、上記杖保持部材の背面側の外周を上記内溝に嵌合することにより上記杖保持部材の上記外周を上記ホルダー本体で包囲するものである上記第1又は2記載の杖ホルダーにより構成される。
【0016】
このように構成すると、弾性体からなる杖保持部材の外周を硬質合成樹脂からなるホルダー本体により支持することにより、杖を近接弾性対向面により確実に保持する機能を確保しつつ、ホルダー全体形状を硬質な合成樹脂により構成することができ、耐用年数の高い頑丈な杖ホルダーを実現し得る。
【0017】
第4に、上記保持具の上記回動支持部は、左右方向の水平回動軸を以って上記ホルダー本体を軸支するものであり、固定部材を以って上記ホルダー本体を上記保持具に対して任意の角度で固定し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載の杖ホルダーにより構成される。
【0018】
上記固定部材は、例えば、ネジ(6)とナット(N)により構成することができる。このように構成すると、固定対象物が傾斜していたとしても、固定部材により杖ホルダーを水平な角度で固定することができる。
【0019】
第5に、横断面凹状の取付板を設け、該取付板の凹状の外面に上記杖ホルダーの上記保持具を接合し得るように構成し、上記取付板の両端部に各々貫通孔を設け、一対の結束バンドを上記両貫通孔の各々に挿通したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の杖ホルダーにより構成される。
【0020】
上記貫通孔は、取付板(11)の両端部に各々2個ずつの貫通孔(11d,11d,11e,11e)を設けることが好ましい。このように構成すると、固定対象物に取付板を取り付け、結束バンドで取付板を固定対象物に強固に固定することができる。また、結束バンドで取り付けるので、固定対象物の形状に拘わらず杖ホルダーを固定することができるし、取り外しも容易に行うことができる。
【0021】
第6に、上記ホルダー本体と上記取付板との接合は、上記保持具の上記固定部と上記取付板の上記外面とを前後方向の水平回動軸を以って軸支し、上記ホルダー本体は、上記前後方向の水平回動軸の周りに角度調整可能に構成したものであることを特徴とする上記第5に記載の杖ホルダーにより構成される。
【0022】
上記前後方向の水平回動軸は、例えばネジ(7)により構成することができる。このように構成すると、ホルダー本体(2)を前後方向の水平回動軸(C1)の周りに回転させることができ、固定対象物の角度に拘わらず、ホルダー本体2を水平に固定することができるし、固体対象物の角度に応じてホルダー本体を任意の角度で固定することができる。
【0023】
第7に、上記第1〜6の何れかに記載の杖ホルダーにて保持された杖の先端部を受ける先端部受カップを設け、該先端部受カップの外周面に一対の結束バンド支持部を設け、これら結束バンド支持部に一対の結束バンドを支持したものであることを特徴とする杖ホルダーセットにより構成される。
【0024】
このように構成すると、杖の上端部を杖ホルダーにて保持し、同時に杖の先端部を先端部受カップにて保持し得るので、例えば車椅子等にて使用しても杖が邪魔になることがない。
【発明の効果】
【0025】
上述のように、本発明によると、簡単な構造でありながら、杖を近接弾性対向面により確実に保持することができ、また、杖ホルダーを垂直位置に収納可能であり、しかも一対の弾性突出面の存在により杖を傷付けることのない杖ホルダーを実現することができる。
【0026】
また、弾性突出面によって杖を近接弾性対向面に案内することができ、円滑に杖を保持することができる。
【0027】
また、弾性体からなる杖保持部材の外周部を硬質合成樹脂からなるホルダー本体により支持することにより、杖を近接弾性対向面により確実に保持する機能を確保しつつ、全体形状を硬質な合成樹脂により構成することができ、耐用年数の高い頑丈な杖ホルダーを実現し得る。
【0028】
また、固定対象物が傾斜していたとしても、固定部材により杖ホルダーを適切な角度で固定することができる。
【0029】
また、固定対象物に取付板を取り付け、結束バンドで取付板を固定対象物に強固に固定する構造であるので、固定対象物の形状に拘わらず杖ホルダーを確実に固定することができるし、杖ホルダーの取り外しも容易に行うことができる。
【0030】
また、ホルダー本体を前後方向の水平回動軸の周りに回転させることができるので、固定対象物の位置、傾斜角度に拘わらず、ホルダー本体2を最適の角度に固定できる。
【0031】
また、杖の上端部を杖ホルダーにて保持し、同時に杖の先端部を先端部受カップにて保持し得るので、例えば車椅子等にて使用しても杖先端が邪魔になることがなく、車椅子等の移動体に適した杖ホルダーセットを実現し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る杖ホルダーの分解斜視図である。
【図2】(イ)は同上杖ホルダーの組み立て過程を示す斜視図、(ロ)は同上杖ホルダーの組立図である。
【図3】同上杖ホルダーの平面図である。
【図4】(イ)(ロ)は同上杖ホルダーの取付状態の側面図である。
【図5】同上杖ホルダーの取付状態の側面図である。
【図6】(イ)は先端部受カップの斜視図、(ロ)は同上カップの側面図である。
【図7】(イ)は同上杖ホルダーの側面図、(ロ)は同上杖ホルダーの取付状態の側面図である。
【図8】(イ)は同上杖ホルダーの側面図、(ロ)は同上杖ホルダーの収納状態を示す側面図である。
【図9】(イ)(ロ)は同上杖ホルダーの正面図である。
【図10】本発明に係る杖ホルダーセットの側面図である。
【図11】同上杖ホルダーを車椅子に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて本発明の杖ホルダー及び杖ホルダーセットを詳細に説明する。
【0034】
尚、以下の説明において、図1において杖保持部材1の開口1cの方向を「前方」、ホルダー本体2のネジ4の方向を「後方又は背面」、前方から後方を向いた左右方向を「左右方向」、左右方向に直交する方向を「上下方向」という。
【0035】
図1は本発明に係る杖ホルダー10の分解斜視図である。かかる図において、杖保持部材1は、その全体がゴム、ウレタン等の弾性部材から構成されており、前面側に開口1cを介して一対の弾性突出面1a,1aが形成され、これら弾性突出面1a,1aの間に、突出面1a,1aから引き続いて杖保持用の近接弾性対向面1b,1bが形成されている。この杖保持部材1は、外周1eの面が略円弧状をなし、上記近接弾性対向面1b,1bが略「U」字状をなす、全体としては一定の厚さの略凹形状を成すものである。上記弾性対向面1b,1bの間隔T1は、一般的な杖Sの直径より狭く形成されており、当該間隔T1に杖Sを挿入することにより、上記弾性対向面1b,1bの弾性力により、杖Sを確実に保持し得るように構成している。
【0036】
上記近接弾性対向面1b,1bは図3に示すように、互いに略平行な平行部1b’,1b’を有しており、これら平行部1b’,1b’によって、これら平行部1b’,1b’の前後方向の範囲T2において、杖Sを確実に保持し得るように構成している。即ち、当該平行部1b’,1b’の存在する前後方向の範囲T2において、杖Sが前後方向に多少ずれても、平行部1b’,1b’の間隔T1は略同一なので、上記平行部1b’,1b’の範囲T2のどの位置においても杖Sを確実に保持することができる。1dは上下方向の貫通孔であり、後述のホルダー本体2に固定するためのネジ4を挿通するものである。
【0037】
この杖保持部材1は、高い反発力(弾性復帰力)を有するゴム、ウレタン等の弾性体により形成されており、図3に示すように、杖Sを上記対向面1b,1b間に挿入したとき、杖Sの側面に沿って変形し(図3の2点鎖線参照)、矢印D,D方向の弾性復帰力により杖Sの側面を強固に保持するものである。この杖保持部材1の素材としてのゴムは、反発弾性、耐摩耗性、引裂強度が何れも高く、耐熱性(+60℃)、耐寒性(−20℃)の天然ゴムを使用することが好ましい。
【0038】
また、上記両弾性突出面1a,1aは各々前方側に突出する円弧面により形成されており、該円弧面は上記近接弾性対向面1b,1bに連続している。そして上記弾性突出面1a,1aは、上記開口1cから挿入される杖Sを上記対向面1b,1bに誘導案内し得るように構成されている。
【0039】
ホルダー本体2は、硬質の合成樹脂(ナイロン等の硬質合成樹脂)から構成され、上記杖保持部材1を背面側(後面側)から支持するものである。このホルダー本体2は、上記開口1cより広く開口した開口2bを有し、中央部には上記近接弾性対向面1b,1bの間隔T1よりも広い円弧状開口部2cを有しており、全体として前面側開口の略凹形状(具体的には円弧形状)を成している。上記円弧状開口部2cの水平方向の開口幅は一般的な杖Sの直径よりも十分に広い幅を有している。
【0040】
このホルダー本体2の略凹形状(円弧形状)の内周部には、上記杖保持部材1の外周1eを嵌合保持するために内側方向に開口した横断面「コ」字状の内溝2aがその内周面の全体に亘り形成されており、該内溝2aの一対の前端には、前方に向けて開口する前面開口部2a’,2a’が形成されている。2d,2d’は上記ホルダー本体2の後端部に設けられた上下方向の貫通孔であり、上記杖保持部材1を固定するためのネジ4の挿通用の孔である。また上記ホルダー本体2の上記前面開口部2a’,2a’が形成された開口2b両端部を前端部2e,2eという。
【0041】
このように、上記ホルダー本体2は全体として凹形状をなしていると共に該凹形状の内側に沿って上記内溝2aを形成し、上記杖保持部材1の後面側(背面側)の外周1eを上記内溝2aに嵌合固定したものである。このとき、図3に示すように、上記円弧状開口部2cの位置は、上記近接弾性対向面1bが杖Sにより弾性変形する幅T3より外側に位置するように構成している。即ち、近接弾性対向面1bから上記円弧状開口部2cまでの最大幅T4とすると、T3<T4(上下左右ともに同じ)となるように上記円弧状開口部2cの上記最大幅T4が形成されている。
【0042】
このように構成することにより、太さの異なる杖Sを近接弾性対向面1b,1bに挿入しても上記最大幅T4の範囲で杖Sを受け入れ保持可能であるし、硬質の合成樹脂による上記ホルダー本体2の上記内溝2aにより、弾性部材からなる上記杖保持部材1の円弧状の外周1e及び外周1eに沿う上下周面1f,1f’の全体が包囲されているので、開口1cから近接弾性対向面1b,1bの存在する円弧状開口部2c内のエリアでは、弾性部材による柔軟な杖保持部分が形成されており、この部分で杖Sを確実に保持し得ると共に、上記弾性部材による柔軟な部分(近接弾性対向面1b,1b等)を硬質合成樹脂によるホルダー10の本体2により取り囲むことにより、杖ホルダー10全体としては硬質合成樹脂による頑丈な構造とすることができ、構造簡単ではあるが、頑丈で耐用年数の高い理想的な形状の杖ホルダー10を形成することができるものである。
【0043】
尚、上記内溝2aの円弧形状は上記杖保持部材1の外周1eの円弧形状と略同一形状となるように構成されている。
【0044】
3は固定支持部であり、上記ホルダー本体2の後端部下面に固着されるものである。この固定支持部は上下方向のネジ孔3aを有しており、上記杖保持部材1を固定するためのネジ4が当該ネジ孔3aに挿通され、上記ホルダー本体2と一体化されるものである。この固定支持部3には左右方向の水平回動軸C2としてのネジ6を挿通するための左右方向の水平貫通孔3bが貫設されている。
【0045】
5は金属製の保持具であり、後述の取付板11に固定するための直立基板5aと、該直立基板5aの両側から前方に向けて突出した一対の水平回動用支持部5b,5bとから構成されている。上記直立基板5aにはその中央部に前後方向の水平回動軸C1としてのネジ7を挿通するための貫通孔5a’が貫設されており、かつ上記一対の水平回動用支持部5b,5bには左右方向の水平回動軸C2としてのネジ6を挿通するための貫通孔5b’,5b’が貫設されている。
【0046】
よって、図1に示すように、上記ホルダー本体2の後端下面に上記固定支持部3の上面3cを宛がい、上記ホルダー本体2の開口2bより、上記杖保持部材1をその背面側からホルダー本体2の内溝2a内に挿入し、上記杖保持部材1の外周1eを上記内溝2a内面に接触させ、その状態で、ネジ4を貫通孔2d,1d,2d’を介して上記固定支持部3のネジ孔3aに螺合させる。
【0047】
これにより、上記ホルダー本体2の内溝2a内に上記杖保持部材1を嵌合固定することができ、かつ上記固定支持部3を上記ホルダー本体2後部下面に固着することができる。このとき、図2、図3に示すように、杖ホルダー10の前面側に、上記杖保持部材1の一対の弾性突出面1a,1aが位置しており、硬質のホルダー本体2の一対の前面開口部2a’,2a’(前端部2e,2e)は上記弾性突出面1a,1aの外側に位置しているので、上記開口1c側から上記近接対向弾性面1b,1b内に杖Sを挿入する際、杖Sの側面は上記弾性突出面1a,1aにまず当接し、該弾性突出面1a,1aに誘導されながら上記近接対向弾性面1b,1bに挿入されていくため、杖Sを円滑に挿入し得ると共に、杖Sが硬質なホルダー本体2の前端部2e,2e等によって傷付くことはない。
【0048】
また、上記保持具5の水平回動用支持部5b,5bの間に上記固定支持部3を位置させ、水平回動軸C2としてのネジ6を上記貫通孔5b’、上記水平貫通孔3b、貫通孔5b’に挿通し、ナットNを以ってネジ6を締め付けることにより、上記保持具5を上記固定支持部3に固定することができる。
【0049】
この状態においては、図4に示すように、上記保持具5の直立基板5aを固定対象物(壁面F1、図4(イ)或いはパイプF2、図4(ロ))に接触させ、ネジ7を上記貫通孔5a’を介して上記壁面F1又はパイプF2にねじ込むことにより、当該杖ホルダー10を上記壁面F1又はパイプF2に固定することができる。
【0050】
このとき、杖ホルダー10は、図4(イ)に示すように、杖ホルダー10を水平位置に位置させた状態で使用するが、杖ホルダー10を上記保持具5の左右方向の水平回動軸C2に対して、矢印A方向に回動させることにより、不使用時は図4(イ)の二点鎖線に示すように、垂直位置に折り畳んで格納することができる。また、図4(ロ)に示すように、固定対象物(パイプF2)が傾斜していた場合であっても、上記水平回動軸C2のネジ6を緩めて杖ホルダー10を保持具5に対して回動させ(矢印A方向)、杖ホルダー10を水平とした状態で上記ネジ6を締め付けることにより、杖ホルダー10を水平の状態で固定することができる。さらに、前後方向のネジ7を中心として、ホルダー本体2を水平回動軸C1の周りに矢印E,F方向に角度調整することができる(図1、図9(ロ)参照)。この場合、上記ネジ7を緩めて、ホルダー本体2を適宜、水平回動軸C1の回りに角度調整し、その後、ネジ7を締め付けることにより、杖ホルダー10を適宜の角度に固定することができる(図9)。
【0051】
11は取付板であり、横断面凹状の金属製の板状部材により構成されている。実施形態では上記取付板11は方形板の両縁部を同一方向に浅く折り曲げた形状であるが、横断面円弧形状としても良い。尚、取付板11の凹状の内側を内面11a、凹状の外側の外面11bという。この取付板11は、図1に示すように、その板面の中央部に貫通孔11cが貫設されており、上記外面11b側に上記保持具5の直立基板5aを宛がい、前方から上記ネジ7を上記貫通孔5a’、上記貫通孔11cに挿通し、ナットNを以って上記ネジ7を締め付けることにより、上記杖ホルダー10を上記取付板11の外面11bに固定することができる。
【0052】
上記取付板11の上下の両端部には、各一対の貫通孔11d,11d,11e,11eを左右方向に同一高さに貫設し(図9(イ)(ロ)参照)、一対の結束バンド14,14を上記両端部の貫通孔11d,11d,11e,11eの各々に水平方向に挿通する。
【0053】
上記結束バンド14は、図9に示すように、一端に段部14bが形成されており、他端には係止リング14aが形成されており、上記段部14bを上記係止リング14a内に挿通することで、上記段部14bを上記係止リング14a部分にて係着することができるものである。
【0054】
上記取付板11の左右方向の両側縁11f及び凹状の内面11aの中央部には、ゴム等の弾性体からなる衝撃吸収材12,13を固定している。上記両側縁の衝撃吸収材12,12は中央に溝12aが形成されており、上記溝12a内に上記両側縁11fを挿入嵌合した状態で接着剤等により上記両側縁11f,11fに固定される。上記衝撃吸収材13は各々接着剤等を持って上記内面11aに固定される。
【0055】
図6(イ)に示すものは、上記杖ホルダー10にて保持された杖Sの先端部を受ける先端部受カップ9である。この先端部受カップ9は、円筒形状の上面開口カップにより構成されており、底面9aには複数の水抜き孔9bが貫通形成されている。この先端部受カップ9の外周面には、上下に一対の結束バンド支持部15,15が設けられており、該支持部15,15の水平孔15a,15aに水平方向に結束バンド14,14が各々挿通されている。また、上記バンド支持部15,15の両側の上記結束バンド14,14には、合成樹脂製の収縮チューブ16,16を挿通している。この収縮チューブ16,16は当該先端部受カップ9を例えば車椅子のパイプ等に上記結束バンド14,14により取り付けたとき、パイプと結束バンド14,14との摩擦力を高めて当該先端部受カップ9のパイプに対するずれを防止するものである。
【0056】
車椅子等の移動体において杖ホルダー10を使用する場合は、図11に示すように、車椅子20の取手20cにつながるパイプF2(フレーム)の上部に杖ホルダー10を固定し、当該パイプF2の下方の杖Sの先端部近傍位置に先端部受カップ9を固定し、杖Sの上部を上記杖ホルダー10に保持すると共に、杖Sの先端部を当該先端部受カップ9に載置して、杖Sの先端部を受けるように構成する。このように構成すると、杖Sの先端部が固定されて安定するため、安全に車椅子20での移動を行うことができる。尚、上記杖ホルダー10と上記先端部受カップ9を合わせて杖ホルダーセットという。また、図11中、20bは車椅子の座面、20aは車輪である。
【0057】
本発明に係る杖ホルダー10は上述のように構成されるものであるから、図2(ロ)に示すように、杖保持部材1の装着されたホルダー本体2を取付板11に水平に固定した状態で使用する場合は、図3、図5に示すように、車椅子等のパイプF2(鉛直方向とする)に取付板11の内面11a側を宛がい、上下の結束バンド14,14をパイプF2の後方にて回して当該バンド14,14を強く結束すれば良い(図3、図5の結束バンド14の二点鎖線参照)。このように構成することで、図3、図5に示すように、杖ホルダー10を上記パイプF2に固定することができる。このとき、ホルダー本体2は、パイプF2に対して直交方向、即ち水平となるように位置させる。
【0058】
この状態において、杖Sを上記杖ホルダー10の開口1cから近接弾性対向面1b,1b内に挿入すれば良い。すると、上記近接弾性対向面1b,1bにより、杖Sの側面が確実に保持されるため、杖Sを当該杖ホルダーによって確実に保持することができる(図5参照)。また、上記杖Sの側面が弾性突出面1a,1aに当接しても、当該突出面1a,1aは円弧状の弾性体であるので杖Sが傷付くこともなく、上記突出面1a,1aによって杖Sは上記近接弾性対向面1b,1bに円滑に案内される。
【0059】
このとき、パイプF2の角度が図7(ロ)に示すように、鉛直方向から傾いている場合は、ネジ6を緩めて保持具5に対してホルダー本体2を水平位置になるまで回動させ(矢印A方向)、その後、上記ネジ6を締め付けることにより、上記ホルダー本体2を水平に位置させることができる。よって、杖ホルダー10を取付板11を用いて固定対象物であるパイプF2に接続している状態において、固定対象物であるパイプF2等が傾斜していたとしても、杖ホルダー10を常時水平となるように固定することができる(図7(ロ))。尚、杖ホルダー10を取り外すときは、結束バンド14の結束を解除するか、結束バンド14を切断することにより簡単に行うことができる。
【0060】
勿論、取付板11を用いることなく、保持具5をネジ7を以って直接パイプF2に取付けることもできるが(図4(イ)(ロ)の状態)、この場合も図4(ロ)に示すように杖ホルダー10を常に水平に位置させることができる。
【0061】
また、固定対象物が左右の何れかの方向に傾斜している場合は、当該固定対象物に取付板11を以って当該杖ホルダー10を同様に固定した後、図9(ロ)に示すように、杖ホルダー10を前後方向の中心回動軸C1のネジ7を緩めて、杖ホルダー10を上記中心回動軸C1の周りに矢印E又はF方向に回動させて、当該杖ホルダー10を水平状態とした後、上記ねネジ7を締め付けることにより、杖ホルダー10を固定すればよい。
【0062】
図9(イ)(ロ)は、取付板11に対してホルダー本体2を前後方向の水平回動軸C1に対して180度回転させたものであり、このようにホルダー本体2は取付板11に対して適宜の角度で使用することができる。
【0063】
尚、勿論、杖ホルダー10を水平とすることなく、例えば傾斜したパイプF2等に直交する状態に固定して、杖Sを傾斜したパイプに平行に固定することもでき、杖ホルダー10の固定角度は適宜設定することができる。
【0064】
患者が車椅子等の移動体を使用する場合は、図10に示すように、車椅子のパイプF2の上部位置に取付板11の結束バンド14,14を以って杖ホルダー10を固定し、当該パイプF2の下方の上記杖Sの先端部近傍に上記先端部受カップ9をその一対の結束バンド14,14を以って固定する。そして、上記杖Sの上部近傍を上記杖ホルダー10にて保持し、その状態の上記杖Sの先端部を上記先端部受カップ9内に挿入して保持すれば良い。このように構成すると、上記杖Sの先端部が上記先端部受カップ9にて固定されるため、杖Sが車椅子の移動の邪魔になることはない。
【0065】
上記説明では、図2(イ)(ロ)に示すように、ホルダー本体2に対して取付板11の長手方向が直交する状態で使用する実施形態を説明したが、取付板11を90度回転させた状態で固定対象物に上記結束ベルトで固定することも可能である。
【0066】
以上のように、本発明によると、簡単な構造でありながら、杖Sを近接弾性対向面1b,1bにより確実に保持することができ、また、杖ホルダー10を垂直位置に収納可能であり、しかも一対の弾性突出面1a,1aの存在により杖Sを傷付けることのない杖ホルダー10を実現することができる。
【0067】
また、弾性突出面1a,1aによって杖Sを近接弾性対向面1b,1bに案内することができ、円滑に杖Sを保持させることができる。
【0068】
また、弾性体からなる杖保持部材1の外周1eを硬質合成樹脂からなるホルダー本体2により支持することにより、杖Sを近接弾性対向面1b,1bにより確実に保持する機能を確保しつつ、全体形状を硬質な合成樹脂により構成することができ、耐用年数の高い頑丈な杖ホルダー10を実現し得る。
【0069】
また、固定対象物が傾斜していたとしても、水平回動軸C1,C2に基づくホルダー本体2の角度調整により、杖ホルダー10を常に適切な角度で固定することができる。
【0070】
また、固定対象物に取付板11を取り付け、結束バンド14,14で取付板11を固定対象物に強固に固定する構造であるので、固定対象物の形状に拘わらず杖ホルダー10を確実に固定することができるし、杖ホルダー10の取り外しも容易に行うことができる。
【0071】
また、ホルダー本体2を前後方向の水平回動軸C1の周りに回転させることができるので、固定対象物の位置、傾斜角度に拘わらず、ホルダー本体2を最適の角度に固定できる。
【0072】
また、杖Sの上端部を杖ホルダー10にて保持し、同時に杖Sの先端部を先端部受カップ9にて保持し得るので、例えば車椅子等にて使用しても杖先端が邪魔になることがなく、車椅子等の移動体に適した杖ホルダーセットを実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る杖ホルダー及び杖ホルダーセットは、病院、老人施設、福祉施設等に限らず、杖を必要とする人が集まる場所(ホテル、ショッピングセンター等)及び自宅においても広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 杖保持部材
1a,1a 弾性突出面
1b,1b 近接弾性対向面
1e 外周
2 ホルダー本体
2a 内溝
3 固定支持部
5 保持具
5b 水平回動支持部
6,7 ネジ
9 先端部受カップ
10 杖ホルダー
11 取付板
11b 外面
11d,11e 貫通孔
14 結束バンド
15 結束バンド支持部
C1,C2 水平回動軸
F1 壁面(固定対象物)
F2 パイプ(固定対象物)
N ナット
S 杖
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、福祉施設等において、机、ベッド、車椅子等に容易に設置でき、杖を保持することが可能な杖ホルダー及び杖ホルダーセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院、福祉施設等において、杖を必要とする患者、入所者等は、個室等においては、杖をベッドのパイプ枠に掛けたり、食事中はテーブルに立て掛けており、車椅子の患者は杖を膝の上に置いていた。
【0003】
しかしながら、これらの杖は床に落ち易いため、床に落ちた杖で躓く場合があるし、床に落ちた杖を拾う際に身体に負担を生じていた。また、車椅子で移動中に、杖が他人に当たる場合があり危険であった。
【0004】
このような事態に鑑みて、従来、杖を保持するための杖ホルダーがいくつか提案されている。
【0005】
例えば、円弧状の杖保持部を有するホルダーを壁面等に水平に固定するもの(特許文献1,2)、杖ホルダーの固定部材を複数種類設け、どこに固定するかによって使い分けを可能としたもの(特許文献3)、杖ホルダーを水平に固定した状態から壁面に平行に回動して折り畳み可能としたもの(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−82352号
【特許文献2】特開2004−57422号
【特許文献3】特開2004−313675号
【特許文献4】実用新案登録第3118957号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2の杖ホルダーは、取付面に対して水平に固定されるものであり常時取付面から突出しているため、人或いは物が杖ホルダー自体に当接することがあり危険であった。また、固定方法も埋め込み或いは接着等であるから、取り付け対象物或いは取り付け位置が非常に限定される、という課題があった。
【0008】
特許文献3の杖ホルダーは、いくつかの固定部材を使用することによってパイプ等にも取り付け可能としたものであるが、より多くの部材に確実に取り付けられる構造が望まれる。
【0009】
特許文献4の杖ホルダーは、ホルダー部を取付面に対して平行に折り畳み可能な構造が開示されているが、ホルダー自体の構造が極めて複雑であり、より低コストで実現可能な構造が望まれる。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であって低コストで製造可能であるにも拘わらず、頑丈な構造であって、色々な取り付け場所に確実に固定することができ、しかもホルダー本体を折り畳み可能とすると共に、ホルダー本体の固定対象物に対する水平方向の角度調整も可能として、確実に杖を保持し得る杖ホルダー及び杖ホルダーセットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、前面側に一対の弾性突出面が形成され、これら弾性突出面の間に杖保持用の近接弾性対向面が形成された弾性部材からなる杖保持部材と、硬質の合成樹脂から構成され、上記杖保持部材を背面側から支持するホルダー本体と、上記ホルダー本体に接合され、該ホルダー本体を水平位置に保持する保持具とから構成され、上記保持具は、上記ホルダー本体が上記保持具に対して上記水平位置から垂直位置に回動し得るように上記ホルダー本体を支持する回動支持部を有しており、かつ上記保持具は、固定対象物に固定するための固定部を有しているものであることを特徴とする杖ホルダーにより構成される。
【0012】
上記回動支持部は、例えばホルダー本体(2)の固定支持部(3)と、該固定支持部(3)を保持する保持具(5)の水平回動支持部(5b)と、該水平回動持部(5b)と上記固定支持部(3)に貫通する左右方向の水平回動軸としてのネジ(6)等により構成することができる。上記固定部は例えば上記保持具(5)に設けられた直立基板(5a)により構成することができる。このように構成すると、保持具により杖ホルダーを固定対象物に水平に固定し、杖を近接弾性対向面により確実に保持することができ、また、ホルダー本体を垂直位置に回動することにより収納することができる。また、杖を保持する際に一対の弾性突出面の存在により杖を傷付けることがない。
【0013】
第2に、上記両弾性突出面は各々前方側に突出する円弧面により形成されており、該円弧面は上記近接弾性対向面に連続するものである上記第1記載の杖ホルダーにより構成される。
【0014】
このように構成すると、弾性突出面によって杖を近接弾性対向面に案内することができ、円滑に杖を保持させることができると共に、上記弾性突出面によって杖を傷付けることもない。
【0015】
第3に、上記ホルダー本体は略凹形状をなしていると共に該略凹形状の内側に沿って内溝を形成し、上記杖保持部材の背面側の外周を上記内溝に嵌合することにより上記杖保持部材の上記外周を上記ホルダー本体で包囲するものである上記第1又は2記載の杖ホルダーにより構成される。
【0016】
このように構成すると、弾性体からなる杖保持部材の外周を硬質合成樹脂からなるホルダー本体により支持することにより、杖を近接弾性対向面により確実に保持する機能を確保しつつ、ホルダー全体形状を硬質な合成樹脂により構成することができ、耐用年数の高い頑丈な杖ホルダーを実現し得る。
【0017】
第4に、上記保持具の上記回動支持部は、左右方向の水平回動軸を以って上記ホルダー本体を軸支するものであり、固定部材を以って上記ホルダー本体を上記保持具に対して任意の角度で固定し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載の杖ホルダーにより構成される。
【0018】
上記固定部材は、例えば、ネジ(6)とナット(N)により構成することができる。このように構成すると、固定対象物が傾斜していたとしても、固定部材により杖ホルダーを水平な角度で固定することができる。
【0019】
第5に、横断面凹状の取付板を設け、該取付板の凹状の外面に上記杖ホルダーの上記保持具を接合し得るように構成し、上記取付板の両端部に各々貫通孔を設け、一対の結束バンドを上記両貫通孔の各々に挿通したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の杖ホルダーにより構成される。
【0020】
上記貫通孔は、取付板(11)の両端部に各々2個ずつの貫通孔(11d,11d,11e,11e)を設けることが好ましい。このように構成すると、固定対象物に取付板を取り付け、結束バンドで取付板を固定対象物に強固に固定することができる。また、結束バンドで取り付けるので、固定対象物の形状に拘わらず杖ホルダーを固定することができるし、取り外しも容易に行うことができる。
【0021】
第6に、上記ホルダー本体と上記取付板との接合は、上記保持具の上記固定部と上記取付板の上記外面とを前後方向の水平回動軸を以って軸支し、上記ホルダー本体は、上記前後方向の水平回動軸の周りに角度調整可能に構成したものであることを特徴とする上記第5に記載の杖ホルダーにより構成される。
【0022】
上記前後方向の水平回動軸は、例えばネジ(7)により構成することができる。このように構成すると、ホルダー本体(2)を前後方向の水平回動軸(C1)の周りに回転させることができ、固定対象物の角度に拘わらず、ホルダー本体2を水平に固定することができるし、固体対象物の角度に応じてホルダー本体を任意の角度で固定することができる。
【0023】
第7に、上記第1〜6の何れかに記載の杖ホルダーにて保持された杖の先端部を受ける先端部受カップを設け、該先端部受カップの外周面に一対の結束バンド支持部を設け、これら結束バンド支持部に一対の結束バンドを支持したものであることを特徴とする杖ホルダーセットにより構成される。
【0024】
このように構成すると、杖の上端部を杖ホルダーにて保持し、同時に杖の先端部を先端部受カップにて保持し得るので、例えば車椅子等にて使用しても杖が邪魔になることがない。
【発明の効果】
【0025】
上述のように、本発明によると、簡単な構造でありながら、杖を近接弾性対向面により確実に保持することができ、また、杖ホルダーを垂直位置に収納可能であり、しかも一対の弾性突出面の存在により杖を傷付けることのない杖ホルダーを実現することができる。
【0026】
また、弾性突出面によって杖を近接弾性対向面に案内することができ、円滑に杖を保持することができる。
【0027】
また、弾性体からなる杖保持部材の外周部を硬質合成樹脂からなるホルダー本体により支持することにより、杖を近接弾性対向面により確実に保持する機能を確保しつつ、全体形状を硬質な合成樹脂により構成することができ、耐用年数の高い頑丈な杖ホルダーを実現し得る。
【0028】
また、固定対象物が傾斜していたとしても、固定部材により杖ホルダーを適切な角度で固定することができる。
【0029】
また、固定対象物に取付板を取り付け、結束バンドで取付板を固定対象物に強固に固定する構造であるので、固定対象物の形状に拘わらず杖ホルダーを確実に固定することができるし、杖ホルダーの取り外しも容易に行うことができる。
【0030】
また、ホルダー本体を前後方向の水平回動軸の周りに回転させることができるので、固定対象物の位置、傾斜角度に拘わらず、ホルダー本体2を最適の角度に固定できる。
【0031】
また、杖の上端部を杖ホルダーにて保持し、同時に杖の先端部を先端部受カップにて保持し得るので、例えば車椅子等にて使用しても杖先端が邪魔になることがなく、車椅子等の移動体に適した杖ホルダーセットを実現し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る杖ホルダーの分解斜視図である。
【図2】(イ)は同上杖ホルダーの組み立て過程を示す斜視図、(ロ)は同上杖ホルダーの組立図である。
【図3】同上杖ホルダーの平面図である。
【図4】(イ)(ロ)は同上杖ホルダーの取付状態の側面図である。
【図5】同上杖ホルダーの取付状態の側面図である。
【図6】(イ)は先端部受カップの斜視図、(ロ)は同上カップの側面図である。
【図7】(イ)は同上杖ホルダーの側面図、(ロ)は同上杖ホルダーの取付状態の側面図である。
【図8】(イ)は同上杖ホルダーの側面図、(ロ)は同上杖ホルダーの収納状態を示す側面図である。
【図9】(イ)(ロ)は同上杖ホルダーの正面図である。
【図10】本発明に係る杖ホルダーセットの側面図である。
【図11】同上杖ホルダーを車椅子に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて本発明の杖ホルダー及び杖ホルダーセットを詳細に説明する。
【0034】
尚、以下の説明において、図1において杖保持部材1の開口1cの方向を「前方」、ホルダー本体2のネジ4の方向を「後方又は背面」、前方から後方を向いた左右方向を「左右方向」、左右方向に直交する方向を「上下方向」という。
【0035】
図1は本発明に係る杖ホルダー10の分解斜視図である。かかる図において、杖保持部材1は、その全体がゴム、ウレタン等の弾性部材から構成されており、前面側に開口1cを介して一対の弾性突出面1a,1aが形成され、これら弾性突出面1a,1aの間に、突出面1a,1aから引き続いて杖保持用の近接弾性対向面1b,1bが形成されている。この杖保持部材1は、外周1eの面が略円弧状をなし、上記近接弾性対向面1b,1bが略「U」字状をなす、全体としては一定の厚さの略凹形状を成すものである。上記弾性対向面1b,1bの間隔T1は、一般的な杖Sの直径より狭く形成されており、当該間隔T1に杖Sを挿入することにより、上記弾性対向面1b,1bの弾性力により、杖Sを確実に保持し得るように構成している。
【0036】
上記近接弾性対向面1b,1bは図3に示すように、互いに略平行な平行部1b’,1b’を有しており、これら平行部1b’,1b’によって、これら平行部1b’,1b’の前後方向の範囲T2において、杖Sを確実に保持し得るように構成している。即ち、当該平行部1b’,1b’の存在する前後方向の範囲T2において、杖Sが前後方向に多少ずれても、平行部1b’,1b’の間隔T1は略同一なので、上記平行部1b’,1b’の範囲T2のどの位置においても杖Sを確実に保持することができる。1dは上下方向の貫通孔であり、後述のホルダー本体2に固定するためのネジ4を挿通するものである。
【0037】
この杖保持部材1は、高い反発力(弾性復帰力)を有するゴム、ウレタン等の弾性体により形成されており、図3に示すように、杖Sを上記対向面1b,1b間に挿入したとき、杖Sの側面に沿って変形し(図3の2点鎖線参照)、矢印D,D方向の弾性復帰力により杖Sの側面を強固に保持するものである。この杖保持部材1の素材としてのゴムは、反発弾性、耐摩耗性、引裂強度が何れも高く、耐熱性(+60℃)、耐寒性(−20℃)の天然ゴムを使用することが好ましい。
【0038】
また、上記両弾性突出面1a,1aは各々前方側に突出する円弧面により形成されており、該円弧面は上記近接弾性対向面1b,1bに連続している。そして上記弾性突出面1a,1aは、上記開口1cから挿入される杖Sを上記対向面1b,1bに誘導案内し得るように構成されている。
【0039】
ホルダー本体2は、硬質の合成樹脂(ナイロン等の硬質合成樹脂)から構成され、上記杖保持部材1を背面側(後面側)から支持するものである。このホルダー本体2は、上記開口1cより広く開口した開口2bを有し、中央部には上記近接弾性対向面1b,1bの間隔T1よりも広い円弧状開口部2cを有しており、全体として前面側開口の略凹形状(具体的には円弧形状)を成している。上記円弧状開口部2cの水平方向の開口幅は一般的な杖Sの直径よりも十分に広い幅を有している。
【0040】
このホルダー本体2の略凹形状(円弧形状)の内周部には、上記杖保持部材1の外周1eを嵌合保持するために内側方向に開口した横断面「コ」字状の内溝2aがその内周面の全体に亘り形成されており、該内溝2aの一対の前端には、前方に向けて開口する前面開口部2a’,2a’が形成されている。2d,2d’は上記ホルダー本体2の後端部に設けられた上下方向の貫通孔であり、上記杖保持部材1を固定するためのネジ4の挿通用の孔である。また上記ホルダー本体2の上記前面開口部2a’,2a’が形成された開口2b両端部を前端部2e,2eという。
【0041】
このように、上記ホルダー本体2は全体として凹形状をなしていると共に該凹形状の内側に沿って上記内溝2aを形成し、上記杖保持部材1の後面側(背面側)の外周1eを上記内溝2aに嵌合固定したものである。このとき、図3に示すように、上記円弧状開口部2cの位置は、上記近接弾性対向面1bが杖Sにより弾性変形する幅T3より外側に位置するように構成している。即ち、近接弾性対向面1bから上記円弧状開口部2cまでの最大幅T4とすると、T3<T4(上下左右ともに同じ)となるように上記円弧状開口部2cの上記最大幅T4が形成されている。
【0042】
このように構成することにより、太さの異なる杖Sを近接弾性対向面1b,1bに挿入しても上記最大幅T4の範囲で杖Sを受け入れ保持可能であるし、硬質の合成樹脂による上記ホルダー本体2の上記内溝2aにより、弾性部材からなる上記杖保持部材1の円弧状の外周1e及び外周1eに沿う上下周面1f,1f’の全体が包囲されているので、開口1cから近接弾性対向面1b,1bの存在する円弧状開口部2c内のエリアでは、弾性部材による柔軟な杖保持部分が形成されており、この部分で杖Sを確実に保持し得ると共に、上記弾性部材による柔軟な部分(近接弾性対向面1b,1b等)を硬質合成樹脂によるホルダー10の本体2により取り囲むことにより、杖ホルダー10全体としては硬質合成樹脂による頑丈な構造とすることができ、構造簡単ではあるが、頑丈で耐用年数の高い理想的な形状の杖ホルダー10を形成することができるものである。
【0043】
尚、上記内溝2aの円弧形状は上記杖保持部材1の外周1eの円弧形状と略同一形状となるように構成されている。
【0044】
3は固定支持部であり、上記ホルダー本体2の後端部下面に固着されるものである。この固定支持部は上下方向のネジ孔3aを有しており、上記杖保持部材1を固定するためのネジ4が当該ネジ孔3aに挿通され、上記ホルダー本体2と一体化されるものである。この固定支持部3には左右方向の水平回動軸C2としてのネジ6を挿通するための左右方向の水平貫通孔3bが貫設されている。
【0045】
5は金属製の保持具であり、後述の取付板11に固定するための直立基板5aと、該直立基板5aの両側から前方に向けて突出した一対の水平回動用支持部5b,5bとから構成されている。上記直立基板5aにはその中央部に前後方向の水平回動軸C1としてのネジ7を挿通するための貫通孔5a’が貫設されており、かつ上記一対の水平回動用支持部5b,5bには左右方向の水平回動軸C2としてのネジ6を挿通するための貫通孔5b’,5b’が貫設されている。
【0046】
よって、図1に示すように、上記ホルダー本体2の後端下面に上記固定支持部3の上面3cを宛がい、上記ホルダー本体2の開口2bより、上記杖保持部材1をその背面側からホルダー本体2の内溝2a内に挿入し、上記杖保持部材1の外周1eを上記内溝2a内面に接触させ、その状態で、ネジ4を貫通孔2d,1d,2d’を介して上記固定支持部3のネジ孔3aに螺合させる。
【0047】
これにより、上記ホルダー本体2の内溝2a内に上記杖保持部材1を嵌合固定することができ、かつ上記固定支持部3を上記ホルダー本体2後部下面に固着することができる。このとき、図2、図3に示すように、杖ホルダー10の前面側に、上記杖保持部材1の一対の弾性突出面1a,1aが位置しており、硬質のホルダー本体2の一対の前面開口部2a’,2a’(前端部2e,2e)は上記弾性突出面1a,1aの外側に位置しているので、上記開口1c側から上記近接対向弾性面1b,1b内に杖Sを挿入する際、杖Sの側面は上記弾性突出面1a,1aにまず当接し、該弾性突出面1a,1aに誘導されながら上記近接対向弾性面1b,1bに挿入されていくため、杖Sを円滑に挿入し得ると共に、杖Sが硬質なホルダー本体2の前端部2e,2e等によって傷付くことはない。
【0048】
また、上記保持具5の水平回動用支持部5b,5bの間に上記固定支持部3を位置させ、水平回動軸C2としてのネジ6を上記貫通孔5b’、上記水平貫通孔3b、貫通孔5b’に挿通し、ナットNを以ってネジ6を締め付けることにより、上記保持具5を上記固定支持部3に固定することができる。
【0049】
この状態においては、図4に示すように、上記保持具5の直立基板5aを固定対象物(壁面F1、図4(イ)或いはパイプF2、図4(ロ))に接触させ、ネジ7を上記貫通孔5a’を介して上記壁面F1又はパイプF2にねじ込むことにより、当該杖ホルダー10を上記壁面F1又はパイプF2に固定することができる。
【0050】
このとき、杖ホルダー10は、図4(イ)に示すように、杖ホルダー10を水平位置に位置させた状態で使用するが、杖ホルダー10を上記保持具5の左右方向の水平回動軸C2に対して、矢印A方向に回動させることにより、不使用時は図4(イ)の二点鎖線に示すように、垂直位置に折り畳んで格納することができる。また、図4(ロ)に示すように、固定対象物(パイプF2)が傾斜していた場合であっても、上記水平回動軸C2のネジ6を緩めて杖ホルダー10を保持具5に対して回動させ(矢印A方向)、杖ホルダー10を水平とした状態で上記ネジ6を締め付けることにより、杖ホルダー10を水平の状態で固定することができる。さらに、前後方向のネジ7を中心として、ホルダー本体2を水平回動軸C1の周りに矢印E,F方向に角度調整することができる(図1、図9(ロ)参照)。この場合、上記ネジ7を緩めて、ホルダー本体2を適宜、水平回動軸C1の回りに角度調整し、その後、ネジ7を締め付けることにより、杖ホルダー10を適宜の角度に固定することができる(図9)。
【0051】
11は取付板であり、横断面凹状の金属製の板状部材により構成されている。実施形態では上記取付板11は方形板の両縁部を同一方向に浅く折り曲げた形状であるが、横断面円弧形状としても良い。尚、取付板11の凹状の内側を内面11a、凹状の外側の外面11bという。この取付板11は、図1に示すように、その板面の中央部に貫通孔11cが貫設されており、上記外面11b側に上記保持具5の直立基板5aを宛がい、前方から上記ネジ7を上記貫通孔5a’、上記貫通孔11cに挿通し、ナットNを以って上記ネジ7を締め付けることにより、上記杖ホルダー10を上記取付板11の外面11bに固定することができる。
【0052】
上記取付板11の上下の両端部には、各一対の貫通孔11d,11d,11e,11eを左右方向に同一高さに貫設し(図9(イ)(ロ)参照)、一対の結束バンド14,14を上記両端部の貫通孔11d,11d,11e,11eの各々に水平方向に挿通する。
【0053】
上記結束バンド14は、図9に示すように、一端に段部14bが形成されており、他端には係止リング14aが形成されており、上記段部14bを上記係止リング14a内に挿通することで、上記段部14bを上記係止リング14a部分にて係着することができるものである。
【0054】
上記取付板11の左右方向の両側縁11f及び凹状の内面11aの中央部には、ゴム等の弾性体からなる衝撃吸収材12,13を固定している。上記両側縁の衝撃吸収材12,12は中央に溝12aが形成されており、上記溝12a内に上記両側縁11fを挿入嵌合した状態で接着剤等により上記両側縁11f,11fに固定される。上記衝撃吸収材13は各々接着剤等を持って上記内面11aに固定される。
【0055】
図6(イ)に示すものは、上記杖ホルダー10にて保持された杖Sの先端部を受ける先端部受カップ9である。この先端部受カップ9は、円筒形状の上面開口カップにより構成されており、底面9aには複数の水抜き孔9bが貫通形成されている。この先端部受カップ9の外周面には、上下に一対の結束バンド支持部15,15が設けられており、該支持部15,15の水平孔15a,15aに水平方向に結束バンド14,14が各々挿通されている。また、上記バンド支持部15,15の両側の上記結束バンド14,14には、合成樹脂製の収縮チューブ16,16を挿通している。この収縮チューブ16,16は当該先端部受カップ9を例えば車椅子のパイプ等に上記結束バンド14,14により取り付けたとき、パイプと結束バンド14,14との摩擦力を高めて当該先端部受カップ9のパイプに対するずれを防止するものである。
【0056】
車椅子等の移動体において杖ホルダー10を使用する場合は、図11に示すように、車椅子20の取手20cにつながるパイプF2(フレーム)の上部に杖ホルダー10を固定し、当該パイプF2の下方の杖Sの先端部近傍位置に先端部受カップ9を固定し、杖Sの上部を上記杖ホルダー10に保持すると共に、杖Sの先端部を当該先端部受カップ9に載置して、杖Sの先端部を受けるように構成する。このように構成すると、杖Sの先端部が固定されて安定するため、安全に車椅子20での移動を行うことができる。尚、上記杖ホルダー10と上記先端部受カップ9を合わせて杖ホルダーセットという。また、図11中、20bは車椅子の座面、20aは車輪である。
【0057】
本発明に係る杖ホルダー10は上述のように構成されるものであるから、図2(ロ)に示すように、杖保持部材1の装着されたホルダー本体2を取付板11に水平に固定した状態で使用する場合は、図3、図5に示すように、車椅子等のパイプF2(鉛直方向とする)に取付板11の内面11a側を宛がい、上下の結束バンド14,14をパイプF2の後方にて回して当該バンド14,14を強く結束すれば良い(図3、図5の結束バンド14の二点鎖線参照)。このように構成することで、図3、図5に示すように、杖ホルダー10を上記パイプF2に固定することができる。このとき、ホルダー本体2は、パイプF2に対して直交方向、即ち水平となるように位置させる。
【0058】
この状態において、杖Sを上記杖ホルダー10の開口1cから近接弾性対向面1b,1b内に挿入すれば良い。すると、上記近接弾性対向面1b,1bにより、杖Sの側面が確実に保持されるため、杖Sを当該杖ホルダーによって確実に保持することができる(図5参照)。また、上記杖Sの側面が弾性突出面1a,1aに当接しても、当該突出面1a,1aは円弧状の弾性体であるので杖Sが傷付くこともなく、上記突出面1a,1aによって杖Sは上記近接弾性対向面1b,1bに円滑に案内される。
【0059】
このとき、パイプF2の角度が図7(ロ)に示すように、鉛直方向から傾いている場合は、ネジ6を緩めて保持具5に対してホルダー本体2を水平位置になるまで回動させ(矢印A方向)、その後、上記ネジ6を締め付けることにより、上記ホルダー本体2を水平に位置させることができる。よって、杖ホルダー10を取付板11を用いて固定対象物であるパイプF2に接続している状態において、固定対象物であるパイプF2等が傾斜していたとしても、杖ホルダー10を常時水平となるように固定することができる(図7(ロ))。尚、杖ホルダー10を取り外すときは、結束バンド14の結束を解除するか、結束バンド14を切断することにより簡単に行うことができる。
【0060】
勿論、取付板11を用いることなく、保持具5をネジ7を以って直接パイプF2に取付けることもできるが(図4(イ)(ロ)の状態)、この場合も図4(ロ)に示すように杖ホルダー10を常に水平に位置させることができる。
【0061】
また、固定対象物が左右の何れかの方向に傾斜している場合は、当該固定対象物に取付板11を以って当該杖ホルダー10を同様に固定した後、図9(ロ)に示すように、杖ホルダー10を前後方向の中心回動軸C1のネジ7を緩めて、杖ホルダー10を上記中心回動軸C1の周りに矢印E又はF方向に回動させて、当該杖ホルダー10を水平状態とした後、上記ねネジ7を締め付けることにより、杖ホルダー10を固定すればよい。
【0062】
図9(イ)(ロ)は、取付板11に対してホルダー本体2を前後方向の水平回動軸C1に対して180度回転させたものであり、このようにホルダー本体2は取付板11に対して適宜の角度で使用することができる。
【0063】
尚、勿論、杖ホルダー10を水平とすることなく、例えば傾斜したパイプF2等に直交する状態に固定して、杖Sを傾斜したパイプに平行に固定することもでき、杖ホルダー10の固定角度は適宜設定することができる。
【0064】
患者が車椅子等の移動体を使用する場合は、図10に示すように、車椅子のパイプF2の上部位置に取付板11の結束バンド14,14を以って杖ホルダー10を固定し、当該パイプF2の下方の上記杖Sの先端部近傍に上記先端部受カップ9をその一対の結束バンド14,14を以って固定する。そして、上記杖Sの上部近傍を上記杖ホルダー10にて保持し、その状態の上記杖Sの先端部を上記先端部受カップ9内に挿入して保持すれば良い。このように構成すると、上記杖Sの先端部が上記先端部受カップ9にて固定されるため、杖Sが車椅子の移動の邪魔になることはない。
【0065】
上記説明では、図2(イ)(ロ)に示すように、ホルダー本体2に対して取付板11の長手方向が直交する状態で使用する実施形態を説明したが、取付板11を90度回転させた状態で固定対象物に上記結束ベルトで固定することも可能である。
【0066】
以上のように、本発明によると、簡単な構造でありながら、杖Sを近接弾性対向面1b,1bにより確実に保持することができ、また、杖ホルダー10を垂直位置に収納可能であり、しかも一対の弾性突出面1a,1aの存在により杖Sを傷付けることのない杖ホルダー10を実現することができる。
【0067】
また、弾性突出面1a,1aによって杖Sを近接弾性対向面1b,1bに案内することができ、円滑に杖Sを保持させることができる。
【0068】
また、弾性体からなる杖保持部材1の外周1eを硬質合成樹脂からなるホルダー本体2により支持することにより、杖Sを近接弾性対向面1b,1bにより確実に保持する機能を確保しつつ、全体形状を硬質な合成樹脂により構成することができ、耐用年数の高い頑丈な杖ホルダー10を実現し得る。
【0069】
また、固定対象物が傾斜していたとしても、水平回動軸C1,C2に基づくホルダー本体2の角度調整により、杖ホルダー10を常に適切な角度で固定することができる。
【0070】
また、固定対象物に取付板11を取り付け、結束バンド14,14で取付板11を固定対象物に強固に固定する構造であるので、固定対象物の形状に拘わらず杖ホルダー10を確実に固定することができるし、杖ホルダー10の取り外しも容易に行うことができる。
【0071】
また、ホルダー本体2を前後方向の水平回動軸C1の周りに回転させることができるので、固定対象物の位置、傾斜角度に拘わらず、ホルダー本体2を最適の角度に固定できる。
【0072】
また、杖Sの上端部を杖ホルダー10にて保持し、同時に杖Sの先端部を先端部受カップ9にて保持し得るので、例えば車椅子等にて使用しても杖先端が邪魔になることがなく、車椅子等の移動体に適した杖ホルダーセットを実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る杖ホルダー及び杖ホルダーセットは、病院、老人施設、福祉施設等に限らず、杖を必要とする人が集まる場所(ホテル、ショッピングセンター等)及び自宅においても広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 杖保持部材
1a,1a 弾性突出面
1b,1b 近接弾性対向面
1e 外周
2 ホルダー本体
2a 内溝
3 固定支持部
5 保持具
5b 水平回動支持部
6,7 ネジ
9 先端部受カップ
10 杖ホルダー
11 取付板
11b 外面
11d,11e 貫通孔
14 結束バンド
15 結束バンド支持部
C1,C2 水平回動軸
F1 壁面(固定対象物)
F2 パイプ(固定対象物)
N ナット
S 杖
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側に一対の弾性突出面が形成され、これら弾性突出面の間に杖保持用の近接弾性対向面が形成された弾性部材からなる杖保持部材と、
硬質の合成樹脂から構成され、上記杖保持部材を背面側から支持するホルダー本体と、
上記ホルダー本体に接合され、該ホルダー本体を水平位置に保持する保持具とから構成され、
上記保持具は、上記ホルダー本体が上記保持具に対して上記水平位置から垂直位置に回動し得るように上記ホルダー本体を支持する回動支持部を有しており、
かつ上記保持具は、固定対象物に固定するための固定部を有しているものであることを特徴とする杖ホルダー。
【請求項2】
上記両弾性突出面は各々前方側に突出する円弧面により形成されており、該円弧面は上記近接弾性対向面に連続するものである請求項1記載の杖ホルダー。
【請求項3】
上記ホルダー本体は略凹形状をなしていると共に該略凹形状の内側に沿って内溝を形成し、
上記杖保持部材の背面側の外周を上記内溝に嵌合することにより上記杖保持部材の上記外周を上記ホルダー本体で包囲するものである請求項1又は2記載の杖ホルダー。
【請求項4】
上記保持具の上記回動支持部は、左右方向の水平回動軸を以って上記ホルダー本体を軸支するものであり、固定部材を以って上記ホルダー本体を上記保持具に対して任意の角度で固定し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の杖ホルダー。
【請求項5】
横断面凹状の取付板を設け、該取付板の凹状の外面に上記杖ホルダーの上記保持具を接合し得るように構成し、
上記取付板の両端部に各々貫通孔を設け、一対の結束バンドを上記両貫通孔の各々に挿通したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の杖ホルダー。
【請求項6】
上記ホルダー本体と上記取付板との接合は、上記保持具の上記固定部と上記取付板の上記外面とを前後方向の水平回動軸を以って軸支し、
上記ホルダー本体は、上記前後方向の水平回動軸の周りに角度調整可能に構成したものであることを特徴とする請求項5に記載の杖ホルダー。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の杖ホルダーにて保持された杖の先端部を受ける先端部受カップを設け、該先端部受カップの外周面に一対の結束バンド支持部を設け、これら結束バンド支持部に一対の結束バンドを支持したものであることを特徴とする杖ホルダーセット。
【請求項1】
前面側に一対の弾性突出面が形成され、これら弾性突出面の間に杖保持用の近接弾性対向面が形成された弾性部材からなる杖保持部材と、
硬質の合成樹脂から構成され、上記杖保持部材を背面側から支持するホルダー本体と、
上記ホルダー本体に接合され、該ホルダー本体を水平位置に保持する保持具とから構成され、
上記保持具は、上記ホルダー本体が上記保持具に対して上記水平位置から垂直位置に回動し得るように上記ホルダー本体を支持する回動支持部を有しており、
かつ上記保持具は、固定対象物に固定するための固定部を有しているものであることを特徴とする杖ホルダー。
【請求項2】
上記両弾性突出面は各々前方側に突出する円弧面により形成されており、該円弧面は上記近接弾性対向面に連続するものである請求項1記載の杖ホルダー。
【請求項3】
上記ホルダー本体は略凹形状をなしていると共に該略凹形状の内側に沿って内溝を形成し、
上記杖保持部材の背面側の外周を上記内溝に嵌合することにより上記杖保持部材の上記外周を上記ホルダー本体で包囲するものである請求項1又は2記載の杖ホルダー。
【請求項4】
上記保持具の上記回動支持部は、左右方向の水平回動軸を以って上記ホルダー本体を軸支するものであり、固定部材を以って上記ホルダー本体を上記保持具に対して任意の角度で固定し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の杖ホルダー。
【請求項5】
横断面凹状の取付板を設け、該取付板の凹状の外面に上記杖ホルダーの上記保持具を接合し得るように構成し、
上記取付板の両端部に各々貫通孔を設け、一対の結束バンドを上記両貫通孔の各々に挿通したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の杖ホルダー。
【請求項6】
上記ホルダー本体と上記取付板との接合は、上記保持具の上記固定部と上記取付板の上記外面とを前後方向の水平回動軸を以って軸支し、
上記ホルダー本体は、上記前後方向の水平回動軸の周りに角度調整可能に構成したものであることを特徴とする請求項5に記載の杖ホルダー。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の杖ホルダーにて保持された杖の先端部を受ける先端部受カップを設け、該先端部受カップの外周面に一対の結束バンド支持部を設け、これら結束バンド支持部に一対の結束バンドを支持したものであることを特徴とする杖ホルダーセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−50467(P2012−50467A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192628(P2010−192628)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(510210391)株式会社サン・クリエイト (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(510210391)株式会社サン・クリエイト (1)
【Fターム(参考)】
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