説明

条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法

【課題】大断面積の圧延材についてコブル材長さを短くできるようにした、条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法を提供すること。
【解決手段】条鋼圧延設備における上流側の圧延機列2とその直ぐ下流側の圧延機列3との間に設置された走間切断機10により、当該走間切断機下流側でのミスロール発生時に、前記上流側の圧延機列2からの圧延材を連続切断するコブリング処理を行なうに際し、前記上流側の圧延機列2による圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
条鋼圧延設備では、上流側の圧延機列とその下流側の圧延機列との間に走間切断機が設置されており、下流側でのミスロール発生時に、設備を保護すべく圧延材を該下流側へ送ることを停止するため、前記走間切断機により、前記上流側の圧延機列からの圧延材を連続切断して短い長さのコブル材にし、これらを圧延ライン外へ排出するコブリング(Cobbling)処理が行なわれる。本願発明は、条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビレット等の鋼片を圧延して線材、棒鋼などの条鋼を製造する連続圧延式の条鋼圧延設備には、上流側の圧延機列とその下流側の圧延機列との間に走間切断機(走間せん断機)が設置されている。この条鋼製造での連続圧延では、圧延途中において圧延材の先端部分及び後端部分に温度低下部や形状不良部が生じていると圧延材誘導に支障がでるため、前記走間切断機により、走行中の圧延材の先端部分及び後端部分を所定長さのクロップとして切り捨て処理するいわゆるクロップ処理が行なわれる。
【0003】
前記走間切断機は、その主たる機能である前記のクロップ処理、またサンプル切断処理の他に、当該走間切断機の下流側でのミスロール発生時(圧延材の誘導不良、破断あるいは座屈を生じる状況)に、設備を保護すべく圧延材を該下流側へ送ることを停止するため、上流側の圧延機列からの圧延材を連続切断(コブリング)して短い長さのコブル材にし、これらを圧延ライン外へ排出するいわゆるコブリング(Cobbling)処理を行なうものである。
【0004】
この種の走間切断機(フライングシャー)には、主として、ロータリー式とクランク式とがある。図8はロータリー式走間切断機を説明するための図であって、その(a)は基本構造を示す図、その(b)は切断刃による圧延材の切断の様子を模式的に示す図である。
【0005】
ロータリー式走間切断機は、図8(a)に示すように、パスラインの上下に配置された一対の回転刃物軸(下回転刃物軸50A、上回転刃物軸50B)を中心として、下回転刃物軸50Aに装着された切断刃ホルダに取り付けられた下切断刃51A,51Aと、上回転刃物軸50Bに装着された切断刃ホルダに取り付けられた上切断刃51B,51Bとが旋回する構造のものである。
【0006】
ロータリー式走間切断機では、切断刃(ブレード)の刃数を1枚刃(上下で合計2枚)だけでなく、2枚刃(上下で合計4枚)、3枚刃などと複数刃とすることが可能である。ロータリー式走間切断機では、切断刃枚数を増加することでコブリング処理でのコブル材の長さ(連続切断時の切断材長さ)を短くできる利点があるものの、大断面積の圧延材を切断する場合、圧延材に対して切断刃が接触する切断開始時の切断刃の角度(切断開始角度)が大きくなり、圧延材の切断面が押し潰されて変形し、切断面の形状が悪くなるという欠点がある。
【0007】
図8(a)は広く採用されている2枚刃タイプであり、コブリング処理によるコブル材長さは1枚刃の場合の半分となる。2枚刃の場合、切断刃のホームポジションから切断開始位置までの角度が小さくなり、大きな加速トルクが必要になり駆動モータの容量が大きくなる。また、2枚刃の場合、φ80mm以上というような大断面積の圧延材になると、図8(b)に示すように、切断刃の切断開始角度が大きくなり、切断開始時の切断刃が当該圧延材に対して傾くことになり、圧延材の切断面が押し潰されたようになってしまう。圧延材の切断断面の形状が悪いと、下流圧延機への圧延材の誘導に支障をきたしミスロールを引き起こすことになる。なお、切断刃の回転半径を大きくすれば前記切断開始角度を小さくできるが、切断機自体が大型化し、経済的でない。
【0008】
なお、ロータリー式走間切断機としては、例えば、後記の特許文献1、特許文献2に示すものが知られている。
【0009】
一方、クランク式走間切断機は、図9に模式的に示されているように、下側の切断刃ホルダに取り付けられた1枚の下切断刃61Aと上側の切断刃ホルダに取り付けられた1枚の上切断刃61Bとを有している。そして、クランク軸の運動により、これらの切断刃61A,61Bは、その刃先が常に圧延材へ向くようにその姿勢が保持されて、図9に示すように、切断時に圧延材に対して垂直(側面視にて圧延材と直角をなす)、あるいはほぼ垂直をなすようになっている。したがって、クランク式走間切断機では、φ80mm以上というような大断面積の圧延材であっても、図9に示すように、切断面が変形して潰れることなく、良好な切断面とすることができる。よって、クランク式走間切断機では、切断面の形状不良に起因するミスロールを引き起こすことがない。
【0010】
なお、ロータリー式走間切断機としては、例えば、後記の特許文献3に示すものが知られている。
【0011】
さて、走間切断機(ロータリー式、クランク式)での切断刃ホルダの駆動方式には、フライホイールを連続回転させておきクラッチ・ブレーキによって切断刃ホルダの加減速を行う方式と、切断刃ホルダの駆動機構に直結された電動モータによって切断刃ホルダの加減速を行う方式とがある。いずれの駆動方式でも、切断刃は切断による速度ダウンを考慮し、切断刃速度は圧延材(被切断材)の走行速度より高めに設定される(これをリード率という)。
【0012】
リード率は、圧延材の走行速度が低いほど大きくなり、切断完了時の切断刃速度の水平方向成分が圧延材速度(圧延材走行速度)と一致するように決め、切断開始時の切断刃速度の水平方向成分が概ね圧延材速度の例えば50%程度(最悪でも50%以上確保を目安にしている。)増しを目安に設定される。圧延材速度によらず、切断に必要なエネルギーは変わらないので、切断刃速度が遅くなると切断エネルギーも小さくなってしまい、切断時(圧延材に当接する切断開始時から切断完了時まで)の速度ダウン量が大きくなる。そのためリード率を高く設定する必要がある。したがって、同じ圧延材(被切断材)であっても、圧延材速度が遅いほどリード率は高く設定される。
【0013】
コブリングを行う場合は、切断指令で切断刃を加速させ、そのまま減速せず切断刃を連続回転させることにより、圧延材を連続切断する。切断長さは、切断刃の枚数が1枚では、連続回転時の周速が材料速度と同じ場合、コブル材長さは、R×2πとなる(R:切断刃の回転半径)。実際には、切断刃周速が圧延材速度より大きめに設定されるため、切断から次切断までの時間が短くなり、その分コブル材長さは短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実公平2−32331号公報
【特許文献2】特公平3−14569号公報
【特許文献3】特公平7−12574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
走間切断機のコブリング処理によるコブル材は、再利用のためスクラップとして電気炉に投入される際にはコブル材長さに制約があることから、その長さを極力短くするよう要望される場合がある(例えば、コブル材長さを2000mm程度から1000mm程度にまで短くする)。コブル材が長いとこれを短くするために別工程で切断を行なう必要があり、走間切断機によるコブリング処理によって所定の短い長さのコブル材が得られるようにすれば、前記別工程が省略できることとなる。
【0016】
そこで、本願発明の課題は、条鋼圧延設備において下流側でのミスロール発生時に走間切断機によって上流側の圧延機列からの圧延材を連続切断して短い長さのコブル材にするコブリング処理を行なうに際し、大断面積の圧延材についてコブル材長さを短くできるようにした、条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0018】
請求項1の発明は、条鋼圧延設備における上流側の圧延機列とその直ぐ下流側の圧延機列との間に設置された走間切断機により、当該走間切断機下流側でのミスロール発生時に、前記上流側の圧延機列からの圧延材を連続切断するコブリング処理を行なうに際し、前記上流側の圧延機列による圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速することを特徴とする条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法である。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法において、前記コブリング処理に際し、ミスロール発生に伴い前記上流側の圧延機列からの圧延材を第1回目切断し、この第1回目切断後に前記上流側の圧延機列による圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速し、この圧延速度減速状態で、第2回目以降の切断を行なうことを特徴とするものである。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法において、前記走間切断機がクランク式走間切断機であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法では、条鋼圧延設備における上流側の圧延機列とその直ぐ下流側の圧延機列との間に設置された走間切断機により、コブリング処理を行なうに際し、前記上流側の圧延機列による圧延速度を通常圧延時の圧延速度よりも減速するようにしている。これにより、通常圧延時の圧延材速度(S)に比べて、コブリング処理時の圧延材速度(S’)が遅くなることでリード率を高く設定することになり、走間切断機の切断刃が空転中(切断完了位置から次回の切断開始位置までの移動)の該切断刃の周速は、圧延材速度(S’)に対して速く(大きく)設定される。その結果、切断刃空転時間が短くなり、その間の圧延材走行距離も短くなる。したがって、コブル材長さを短くすることができる。よって、走間切断機としてクランク式走間切断機を用いることで、大断面積の圧延材について、切断面の形状不良を生じることなく、コブル材長さを短くすることができる。
【0022】
また、本願発明の条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法では、コブリング処理に際し、走間切断機下流側でのミスロール発生に伴い走間切断機上流側の圧延機列からの圧延材を第1回目切断し、この第1回目切断後に上流側の圧延機列による圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速し、この圧延速度減速状態で、第2回目以降の切断を行なうようにしている。これにより、第1回目切断を走間切断機上流側の圧延機列による圧延速度を減速することなくそのままで行うことで、ミスロール発生に伴う走間切断機下流側での処理(走間切断機下流側の圧延機列でのループ調整や冷却床への圧延材取り込み等)に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明方法が適用される条鋼圧延設備の一例を概略的に示す図である。
【図2】図1におけるクランク式走間切断機の構成を概略的に示す側面断面図である。
【図3】本発明方法を説明するための図である。
【図4】本発明方法を説明するための図である。
【図5】本発明方法を説明するための図である。
【図6】切断刃による切断開始角、切断完了角の説明図である。
【図7】コブリング処理時における切断パターンを示す図である。
【図8】ロータリー式走間切断機を説明するための図であって、その(a)は基本構造を示す図、その(b)は切断刃による圧延材の切断の様子を模式的に示す図である。
【図9】クランク式走間切断機における切断刃による圧延材の切断の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明方法が適用される条鋼圧延設備の一例を概略的に示す図である。
【0025】
図1に示す条鋼圧延設備は、棒鋼、線材、形鋼などの条鋼を製造する設備であり、同図に示すように、上流側から、加熱炉1、粗圧延機列2、中間圧延機列3、及び仕上圧延機列4が順に設置されている。鋼片は、加熱炉1で所定温度に加熱され、次いで前記圧延機列2,3,4で連続的に圧延を施された後、例えば棒鋼を製造する場合には冷却床へ導かれ、棒鋼となる。そして、この実施形態では、粗圧延機列2と中間圧延機列3との間に、走間切断機としてクランク式走間切断機10が設置されている。20は、クランク式走間切断機10によって切断されたコブル材などを収容するコブル材バックである。なお、各圧延機列2,3,4での圧延機の配列は、図1では図示の便宜上、H−H方式(水平−水平ロール孔型配列方式)として図示してあるが、実際にはH−V方式(水平−垂直ロール孔型配列方式)が採用されている。
【0026】
図2は図1におけるクランク式走間切断機の構成を概略的に示す側面断面図である。
【0027】
図2において、11は床面に立設されたクランク軸支持ケーシングである。12Aは下側クランク軸である。下側クランク軸12Aは、その一方の軸端部(図示せず)がクランク軸支持ケーシング11の下部に固定された軸受13Aに回転可能に支持されるとともに、他方の軸端部(図示せず)が前記クランク軸支持ケーシング11と対向して設けられた図示しない他のクランク軸支持ケーシングの下部に固着された軸受に回転可能に支持されている。
【0028】
前記下側クランク軸12Aには、アーム部14Aaを有する下側切断刃ホルダ14Aが自転可能に装着されており、この下側切断刃ホルダ14Aに下側切断刃15Aがボルト締めされている。さらに、前記アーム部14Aaの先端部に回転可能に取り付けられたピン17Aと、前記クランク軸支持ケーシング11の下端部に回転可能に取り付けられたピン18Aとが、下側レバー16Aによって連結されている。そして、下側クランク軸12Aが駆動されると、前記ピン17A,18A、及び下側レバー16Aにより、下側切断刃ホルダ14Aは、前記ピン18Aを支点として反時計回りに旋回運動する。これにより、下側切断刃15Aは、その刃先が常に上方へ向くようにその姿勢が保持されて切断時に圧延材に対して垂直(側面視にて圧延材と直角)をなすようになっている。
【0029】
また、12Bは、前記下側クランク軸12Aと180°位相の異なる上側クランク軸である。上側クランク軸12Bは、その一方の軸端部(図示せず)が前記クランク軸支持ケーシング11の上部に固定された軸受13Bに回転可能に支持されるとともに、他方の軸端部(図示せず)が前記した他のクランク軸支持ケーシングの上部に固着された軸受に回転可能に支持されている。
【0030】
前記上側クランク軸12Bには、アーム部14Baを有する上側切断刃ホルダ14Bが自転可能に装着されており、この上側切断刃ホルダ14Bに上側切断刃15Bがボルト締めされている。さらに、前記アーム部14Baの先端部に回転可能に取り付けられたピン17Bと、前記クランク軸支持ケーシング11の上端部に回転可能に取り付けられたピン18Bとが、上側レバー16Bによって連結されている。そして、上側クランク軸12Bが駆動されると、前記ピン17B,18B、及び上側レバー16Bにより、上側切断刃ホルダ14Bは、ピン18Bを支点として時計回りに旋回運動する。これにより、上側切断刃15Bは、その刃先が常に下方へ向くようにその姿勢が保持されて切断時に圧延材に対して垂直(側面視にて圧延材と直角)をなすようになっている。
【0031】
また、図示しないが、クランク軸12A,12Bの駆動機構について説明すると、下側クランク軸12Aには、その前記他方の軸端部の先端部分に入力軸と噛合する歯車が装着されている。同様に、上側クランク軸12Bには、その前記他方の軸端部の先端部分に前記入力軸と噛合する歯車が装着されている。そして、1台のモータによる駆動力を前記入力軸、前記歯車を介して下側クランク軸12Aと上側クランク軸12Bとにそれぞれ伝達して、これらのクランク軸12A,12Bを回転駆動し、前記切断刃15A,15Bによって圧延材を切断するようになっている。
【0032】
図3〜図5は本発明方法を説明するための図である。
【0033】
図3に示すように、粗圧延機列2の最終圧延機を圧延材先端部分が通過すると、クランク式走間切断機10により圧延材Wの先端部分が予め設定された所定長さ切断され、クロップとしてコブル材バック20に収容される(クロップ処理)。なお、クロップ処理に際し、当該圧延機列からの圧延材Wの通過あるいは圧延材先端位置は、圧延ラインに配置されたHMD(熱塊検出器)やHMPD(熱塊位置検出器)によって検出されるようになっている。
【0034】
そして、圧延が進行し、クランク式走間切断機10の下流側においてミスロールが発生すると(図4参照)、図5に示すように、クランク式走間切断機10によるコブリング処理(圧延材の連続切断)を行う。なお、ミスロールの発生は、例えば、圧延ラインの所定位置に配置されたHMDやHMPDによって所定時間内に圧延材先端の通過が検出されないことをもって検知することができる。
【0035】
コブリング処理について説明すると、クランク式走間切断機10の下流側でミスロールが発生すると、まず、粗圧延機列2による圧延速度を減速することなくそのままで、粗圧延機列2からの走行している圧延材Wを切断する(第1回目切断)。このように、第1回目切断を粗圧延機列2による圧延速度を減速することなくそのままで行うことで、クランク式走間切断機10の下流側でのミスロール発生に伴う処理(下流側の圧延機列3,4でのループ調整や冷却床への圧延材取り込み等)に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0036】
次に、前記第1回目切断の完了後、粗圧延機列2による圧延速度を直ちにすばやく減速する。すなわち、粗圧延機列2の圧延速度をそれまでの通常圧延時の速度から減速し、例えば、粗圧延機列2出側の圧延材速度を0.7m/sから0.3m/sに減速する。そして、この圧延速度減速状態で、クランク式走間切断機10による第2回目以降の切断を行い、これにより、φ80mm以上というような大断面積の圧延材について、切断面の形状不良を生じることなく、コブル材長さを従来に比べて半減した例えば1000mm程度にまで短くすることができる。なお、コブル材としては、前記第2回目の切断で1本目のコブル材となし、以後、第3回目の切断で2本目のコブル材となすというようになる。
【0037】
この場合、第2回目以降の圧延材切断における切断刃の切断速度(切断刃回転速度)は、圧延速度(圧延材速度)に適した速度に設定する。減速された圧延材速度に対して極端に切断刃回転速度が速いと、切断によってコブル材を下流側に引きちぎることになって、コブル材が大きく飛散して危険となるおそれがある。切断刃回転速度は、切断完了時の切断刃周速の水平方向の速度成分が圧延材速度と同一か、やや速くなるよう設定することが適切である。
【実施例】
【0038】
次に、本発明方法に関し、シミュレーションにより効果検証を実施した結果について説明する。ここでは、クランク式走間切断機によるコブリング処理を、圧延材速度が通常圧延時の0.7m/sとした場合(比較例)と、これよりも減速し、0.3m/sとした場合(実施例)とについて実施した。この場合、切断刃の切断完了時の水平方向の速度成分と圧延材速度とを一致させるようにしてシミュレーションによる実施を行った。
【0039】
切断対象の棒鋼用圧延材(被切断材)の仕様は、鋼種:炭素鋼、直径:φ100mm、圧延材温度:950℃、である。また、クランク式走間切断機の主たる仕様は、最大切断荷重:157.1トン、切断抵抗:20kgf/mm、機械総GD(モータ軸換算):10000kg・m、切断刃の回転半径:355mm、である。
【0040】
図6は切断刃による切断開始角、切断完了角の説明図、図7はコブリング処理時における切断パターンを示す図である。
【0041】
図6において、θsは切断開始角、θeは切断完了角である。Psは切断刃による切断開始位置、Peは切断刃による切断完了位置である。また、図7に示すように、切断刃の回転速度は、切断刃が切断開始位置Psに達して圧延材の切断が開始されるとしだいに減少し、切断完了位置Peにて切断が完了するとしだいに増加してもとの一定速度に戻る。図7におけるt1が切断時間(回転速度減少期間)、t2が回転速度復帰時間(回転速度増加期間)、t3が一定回転速度時間であり、コブリング時間tは、t=t1+t2+t3となる。
【0042】
【表1】

【0043】
結果を表1に示す。表1に示すように、圧延材速度が通常圧延時の0.7m/sとした場合(比較例)では、コブリング処理によるコブル材の長さは1629mmであった。これに対して、圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速し、圧延材速度を0.3m/sとした場合(実施例)には、コブル材の長さを1000mmにすることができるという結果が得られた。
【0044】
なお、前記の実施形態、また実施例では、走間切断機としてクランク式走間切断機を用いるようにしたが、本発明方法では、走間切断機としてロータリー式走間切断機を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…加熱炉 2…粗圧延機列 3…中間圧延機列 4…仕上圧延機列
10…クランク式走間切断機
11…クランク軸支持ケーシング
12A…下側クランク軸 13A…軸受
14A…下側切断刃ホルダ 14Aa…アーム部 15A…下側切断刃
16A…下側レバー 17A,18A…ピン
12B…上側クランク軸 13B…軸受
14B…上側切断刃ホルダ 14Ba…アーム部 15B…上側切断刃
16B…上側レバー 17A,18B…ピン
20…コブル材収容バック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
条鋼圧延設備における上流側の圧延機列とその直ぐ下流側の圧延機列との間に設置された走間切断機により、当該走間切断機下流側でのミスロール発生時に、前記上流側の圧延機列からの圧延材を連続切断するコブリング処理を行なうに際し、前記上流側の圧延機列による圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速することを特徴とする条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法。
【請求項2】
前記コブリング処理に際し、ミスロール発生に伴い前記上流側の圧延機列からの圧延材を第1回目切断し、この第1回目切断後に前記上流側の圧延機列による圧延速度を通常圧延時の速度よりも減速し、この圧延速度減速状態で、第2回目以降の切断を行なうことを特徴とする請求項1記載の条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法。
【請求項3】
前記走間切断機が、クランク式走間切断機であることを特徴とする請求項1又は2記載の条鋼圧延設備における圧延材のコブリング処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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