説明

杭打ち器

【課題】杭の頭部に真上から大きな力を加えることができると共に、杭に特別な要件を求めることがなく汎用性が高い杭打ち器を提供する。
【解決手段】杭打ち器1は、一端側が金属製の中実部11となり残余が中空の筒部13となっていると共に、軸方向に直交する断面の外形が単一である長尺棒状の杭打ち器本体10を具備する。中実部11の重さを利用して杭Pに大きな力を加えることができ、労力負担を低減して杭Pを地中に打ち込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で杭を打ち込む際に用いる杭打ち器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭を地中に打ち込む場合、通常は木槌などのハンマーで杭の頭部を繰り返し叩いて、杭の下端側を地中に埋入させる。ところが、ハンマーを振り下ろし正確に杭の頭部に当てるには、ある程度の熟練が必要である。また、杭を鉛直に打ち込むためには、杭の真上から力が加えられる必要があるところ、ハンマーによる打撃によって杭の真上から力を加えることは難しく、杭が傾いてしまいやすい。
【0003】
そこで、従来、図7(a)に示すように、パイプ101内部に仕切り102が設けられると共に、パイプ101の外周面に複数の取手103が設けられた杭打ち器100が提案されている(特許文献1参照)。このような構成により、パイプ101内に杭109を挿し込み、取手103を把持してパイプ101を上下運動させるという簡易な動作で、仕切り102を杭109の頭部に当てて打撃を加えることができると共に、杭109の頭部に真上から力を加えやすい。なお、特許文献1の杭打ち器100は、仕切り102をパイプ101の中央より一方の端部104側に偏った位置に設けることにより、一方の開口104と他方の開口105とで仕切り102までの距離が異なっており、杭109を挿し込む開口104,105を杭の長さに応じて選択するものとなっている。
【0004】
一方、円筒状のハンマー111に杭112を挿通し、ハンマー111を自然落下させることによって杭112を地中に打ち込むものが提案されている(特許文献2参照)。これは、図7(b)に示すように、杭112の下端近傍に円環状に突出した衝撃受け面112sが設けられており、1kg〜15kgの重さを有する円筒状のハンマー111を、杭112を挿通させた状態で上方から自然落下させ、衝撃受け面112sに衝突させることにより、杭112に真上からの力を加えて地中に打ち込むものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の杭打ち器100では、杭109に加えられる衝撃力は、取手103を把持してパイプ101を上下させる作業者の力に依存し、杭109に大きな力を加えにくいという問題があった。一方、特許文献2では、ハンマー111の重量を利用して比較的大きな力を杭112に加えることができるメリットがあるものの、衝撃受け面112sが設けられている特殊な杭112のみを対象とするため、汎用性がないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、杭の頭部に真上から大きな力を加えることができると共に、杭に特別な要件を求めることがなく汎用性が高い杭打ち器、の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる杭打ち器は、「一端側が金属製の中実部となり残余が中空の筒部となっていると共に、軸方向に直交する断面の外形が単一である長尺棒状の杭打ち器本体を」具備している。
【0008】
「軸方向に直交する断面の外形が単一である長尺棒状」としては、断面の外形が円形の丸棒状、または断面の外形が四角形の角棒状とすることができる。また、「一端側が金属製の中実部となり残余が中空の筒部となっている」構成は、例えば、パイプの内径より僅かに小さな外径を有すると共に、軸方向の長さがパイプより短い中実の金属棒をパイプ内に挿入し、それぞれの一端を一致させた状態で両者を圧着・溶着等により一体化することにより得ることができる。或いは、外径の等しいパイプと中実の金属棒のそれぞれの一端を、両者の軸方向が一致するように接合することにより得ることができる。また、或いは、中実の金属棒の一端側をくり抜いて中空とすることにより得ることができる。
【0009】
上記構成の杭打ち器を使用して杭を地中に打ち込む際は、杭打ち器本体を筒部が下方に開放するように把持し、地面に鉛直に立てた杭の頭部側を筒部に挿通させた状態で、杭打ち器本体を上下運動させる。これにより、中実部の下端(筒部側の端部)を杭の頭部に打ち付け、杭の頭部に真上から力を加えて、杭を地中に打ち込むことができる。そして、金属製の中実部は重いため、その重さを利用して杭に大きな力を加えることができ、労力負担を低減して杭を地中に打ち込むことができる。
【0010】
更に、上記構成の杭打ち器は、対象とする杭に対して、筒部に挿通できること以外は他の要件を何ら求めることがないため、汎用性が高い。
【0011】
加えて、杭打ち器本体において中実部と筒部は軸方向に直交する断面の外形が等しく、杭打ち器本体は断面の外形が単一で突出する部分のない棒状であるため、嵩張ることなく杭と一緒に束ねることができる。これにより、上記構成の杭打ち器は、運搬が容易であると共に保管の際にスペースを要しない利点をも有する。
【0012】
本発明にかかる杭打ち器は、上記構成に加え、「前記中実部は、前記筒部側とは反対側の端部に螺子溝を備えており、該螺子溝と螺合する螺子軸を一端に備えると共に、他端に前記螺子溝と同一構成の延設体螺子溝を備える、金属製で中実の延設体を」具備するものとすることができる。
【0013】
上記構成により、杭打ち器本体において中実部の端部に形成されている螺子溝に、延設体の螺子軸を螺合させることにより、杭打ち器本体と延設体とが一体化される。そして、延設体は中実の金属製であるため、延設体を取り付けることによって中実部の長さが延長されたのと同様の構成となり、杭打ち器の重さが増加する。これにより、その重さを利用して、更に大きな力を杭に加えることができる。
【0014】
また、延設体は、杭打ち器本体の中実部に形成された螺子溝と同一構成の延設体螺子溝を備えているため、複数の延設体を杭打ち器本体に連設することが可能となる。すなわち、杭打ち器本体に取り付けられた延設体の延設体螺子溝に、他の延設体の螺子軸を螺合させることにより、複数の延設体を次々に杭打ち器本体に取り付けることができる。これにより、杭を打ち込む地面の硬さや、杭打ち器を使用する作業者の体力などに応じて、延設体の数を変化させ、杭打ち器の重さを調整することができる。
【0015】
そして、延設体の取り付けは螺子溝または延設体螺子溝と螺子軸との螺合によるものであり、杭打ち器本体に対する延設体の着脱は極めて容易である。これにより、杭打ち器の重さの調整を、極めて容易に行うことができる。
【0016】
本発明にかかる杭打ち器は、上記構成に加え、「前記杭打ち器本体の軸方向に直交する方向の断面より外形の大きな底部を有する有底筒状の補助具本体、及び、前記底部から前記補助具本体の開口端とは反対側に延び前記筒部内に挿入可能な軸部を備える接続用補助具を」具備するものとすることができる。
【0017】
上記構成の接続用補助具は、次にように使用することができる。まず、地面に鉛直に立てた杭の頭部側を、有底筒状の補助具本体における筒状の部分に挿通する。これにより、補助具本体の軸部は上方に向かって突出するため、この軸部を、筒部が下方に開放するように把持した杭打ち器本体の筒部に挿通する。このとき、軸部の上端が杭打ち器本体の中実部に達するように軸部の長さを設定すれば、杭打ち器本体を軸部に沿って上下運動させることにより、軸部が中実部によって打ち付けられ、軸部及び底部を介して杭の頭部に衝撃力が加えられるため、この力によって杭を地中に打ち込むことができる。或いは、軸部が杭打ち器本体の中実部に達しない長さの場合であっても、底部は杭打ち器本体の軸方向に直交する方向の断面より外形が大きいため、杭打ち器本体を軸部に沿って上下運動させれば、杭打ち器本体の下端が底部に打ち付けられる。これにより、底部を介して杭の頭部に衝撃力が加えられ、この力によって杭を地中に打ち込むことができる。
【0018】
このように接続用補助具を使用することにより、杭打ち器本体の筒部に挿通できない太さであっても、補助具本体に挿通できる太さの杭を、地中に打ち込むことが可能となる。また、杭打ち器本体の筒部の断面が円形で、杭の断面が四角形である場合など、両者の断面形状が異なる場合に、杭の断面形状に応じた断面形状を有する補助具本体を備える接続用補助具を使用することにより、杭のがたつきを低減して杭を鉛直に打ち込み易いものとなる。従って、接続用補助具を具備することにより、対象とする杭の範囲が広いものとなり、杭打ち器の汎用性がより高められる。そして、補助具本体の断面の形状や大きさの異なる種々の接続用補助具を備えることにより、更に杭打ち器の汎用性を高めることができる。
【0019】
本発明にかかる杭打ち器は、上記構成に加え、「前記筒部内に挿入可能な長尺棒状で、一端に円錐状または角錐状の先鋭部を備えると共に、軸方向に直交する方向に貫通する孔部を他端側に備える仮打ち棒を」具備するものとすることができる。
【0020】
上記構成の仮打ち棒は、先鋭部を地中に挿し込み鉛直に立てた状態で、上端側を杭打ち器本体の筒部に挿通させ、上述と同様に杭打ち器本体を上下運動させることにより、杭の代わりに地中に打ち込むことができる。その後、仮打ち棒を地中から引き抜けば、その引き抜き跡に杭を容易に打ち込むことができる。従って、仮打ち棒を具備することにより、先端が尖っていない杭を地中に打ち込むことが可能となり、より汎用性の高い杭打ち器となる。
【0021】
また、仮打ち棒には、上端側(先鋭部とは反対側)に孔部が設けられているため、ここに剛性の高い棒状部材を挿し込めば、この棒状部材をハンドルとして把持し、容易に仮打ち棒を地中から引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の効果として、杭の頭部に真上から大きな力を加えることができると共に、杭に特別な要件を求めることがなく汎用性が高い杭打ち器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の杭打ち器の(a)縦断面図、及び(b)使用方法の説明図である。
【図2】図1の杭打ち器が備える延設体の構成及び使用方法を説明する縦断面図である。
【図3】図1の杭打ち器が備える仮打ち棒を備えた場合の(a)縦断面図、及び(b)使用方法の説明図である。
【図4】図1の杭打ち器が備える接続用補助具の(a)縦断面図、及び(b)斜視図である。
【図5】図5の接続用補助具の使用方法を説明する縦断面図である。
【図6】接続用補助具の他の例を示す斜視図である。
【図7】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態である杭打ち器1について説明する。杭打ち器1は、図1(a)に示すように、一端側が金属製の中実部11となり残余が中空の筒部13となっていると共に、軸方向に直交する断面の外形が単一である長尺棒状の杭打ち器本体10を具備している。
【0025】
より詳細に説明すると、杭打ち器本体10は、軸方向に直交する断面の外形が円形の金属製のパイプ15に、パイプ15の内径より僅かに小さな外径を有すると共に、軸方向の長さがパイプ15より短い中実の金属棒16を挿入し、パイプ15の一端と金属棒16の一端とを一致させた状態で、両者を一体化することにより形成されている。具体的には、パイプ15の外周面を部分的に内側に向けて押圧することにより、パイプ15の一部を金属棒16に食い込ませて両者を一体化すると共に、端部近傍で両者を溶接することにより、一体化された状態をより強固なものとしている。
【0026】
ここで、パイプ15内部に金属棒16が挿入されて両者が一体化されている部分が中実部11であり、パイプ15のみから構成される部分が筒部13である。従って、上記構成の杭打ち器本体10において、軸方向に直交する断面の外形はパイプ15の軸方向に直交する断面の外形であり、大きさの単一な円形である。
【0027】
杭打ち器1で杭Pを地中に打ち込む際は、図1(b)に示すように、杭打ち器本体10を筒部13が下方に開放するように把持し、地面に鉛直に立てた杭Pの頭部側を筒部13に挿通させた状態で、杭打ち器本体10を上下運動させる(図示、矢印方向)。これにより、中実部11の下端11eを杭Pの頭部に打ち付け、杭Pに真上から力を加えて地中に打ち込むことができる。そして、金属製の中実部11の重さを利用して杭Pに大きな力を加えることができる。
【0028】
更に、本実施形態の杭打ち器1は、図2に示すように、複数の延設体20を取り付けられる構成となっている。すなわち、杭打ち器本体10の中実部11は、筒部13側とは反対側の端部に螺子溝12を備えている。そして、延設体20は金属製で中実の部材であり、螺子溝12と螺合する螺子軸21を一端に備えると共に、他端に螺子溝12と同一構成の延設体螺子溝22を備えている。加えて、本実施形態の延設体20は、螺子軸21を螺子溝12に螺合させた状態で、軸方向に直交する断面の外形が杭打ち器本体10と同一となるよう形成されている。
【0029】
より詳細には、延設体20は、上記のパイプ15と同一の外径を有する金属製で中実の丸棒状部材を、所定長さに切断した部材を用いて形成されている。そして、その一端には螺子軸21が溶接されていると共に、他端にはタップを用いて溶接体螺子溝12が形成されている。ここで、溶接体螺子溝12と杭打ち器本体10の中実部11に形成された螺子溝12とは、同一型のタップを用いて形成されることにより、共に螺子軸21と螺合可能な構成となっている。
【0030】
上記構成により螺子溝12に螺子軸21を螺合させることにより、延設体20が杭打ち器本体10と一体化される。そして、杭打ち器本体10に取り付けられた延設体20の延設体螺子溝22に、他の延設体20の螺子軸21を螺合させることにより、複数の延設体20を次々に杭打ち器本体10に取り付けることができる。例えば、杭を打ち込む地面が硬い場合や、杭を打ち込む作業を行う者が体力に富む場合は、杭打ち器本体10に取り付ける延設体20の数を増加させることにより、杭打ち器本体10及び延設体20の総重量を増加させ、杭の頭部に加えられる力を増加させて効率良く杭を地中に打ち込むことができる。
【0031】
そして、螺子軸21と螺子溝12との螺合及びその解除により、杭打ち器本体10に対する延設体20の着脱は極めて容易である。また、螺子軸21と延設体螺子溝22との螺合及びその解除により、杭打ち器本体10に取り付けられる延設体20の数を、容易に変化させることができる。
【0032】
本実施形態の杭打ち器1は、上記構成に加え、図3に示すように、筒部13内に挿入可能な長尺棒状で、一端に円錐状または角錐状の先鋭部31を備えると共に、軸方向に直交する方向に貫通する孔部32を他端側に備える仮打ち棒30を具備している。
【0033】
このような仮打ち棒30は、中実または中空の長尺棒状の部材を用いて形成することができるが、本実施形態では、円筒状のパイプを使用し、パイプの先端に、単管打ち込みキャップと称される市販の円錐形部材を取り付けて先鋭部31としている。なお、先鋭部は、パイプの端部を圧潰して先端を尖らせることによって形成することもできる。
【0034】
仮打ち棒30は、杭打ち器本体10の筒部13に挿入可能な径を有するものとする必要があるが、筒部13の内径より僅かに小さな外径を有するものとし、筒部13内に摺動可能に嵌挿される構成とすれば、筒部13内でのがたつきがなく、鉛直に地中に打ち込み易いため好適である。なお、仮打ち棒の軸方向に直交する方向の断面の形状については、杭打ち器本体の筒部と同形であることが望ましく、杭打ち器本体の筒部が角筒状である場合は、仮打ち棒も角棒状とすれば、筒部に仮打ち棒を挿入した状態でがたつきが生じにくい。ここで、仮打ち棒角棒状とする場合は、先鋭部を角錐状とする。
【0035】
上記のような仮打ち棒30は、図3(a)に示すように、先鋭部31を地中に挿し込み鉛直に立てた状態で、上端側を杭打ち器本体10の筒部13に挿通させ、杭打ち器本体10を上下運動させることにより、杭の代わりに地中に打ち込むことができる。そして、仮打ち棒30を地中から引き抜けば、引き抜き跡に杭を容易に打ち込むことができる。これにより、例えば、端部が尖っていない杭であっても、容易に地中に打ち込むことが可能となる。
【0036】
ここで、仮打ち棒30を地中から引き抜く際は、仮打ち棒30の上端側(先鋭部31とは反対側の端部側)に設けられている孔部32に、剛性が高く仮打ち棒30の径より長い棒状部材90を挿し込む。そのようにすると、図3(b)に示すように、仮打ち棒30を貫通した棒状部材90の両端側を、それぞれ孔部の開口から外側に突出させることができるため、この部分をハンドルとして把持して引張れば、仮打ち棒30を容易に引き抜くことができる。
【0037】
本実施形態の杭打ち器1は、上記構成に加え、図4に示すように、杭打ち器本体10の軸方向に直交する方向の断面より外形の大きな底部41aを有する有底筒状の補助具本体41、及び、補助具本体41の底部41aから補助具本体41の開口端41eとは反対側に延び筒部13内に挿入可能な軸部42を備える接続用補助具40を具備している。
【0038】
より詳細には、本実施形態では、底部41aは杭打ち器本体10の軸方向に直交する方向の断面の外形より直径の大きな円形であり、補助具本体41は有底円筒状である。また、軸部42は丸棒状であり、底部41aに対して直角に延びている。この軸部42は、杭打ち器本体10の筒部13に挿入可能な径を有するものとする必要があるが、筒部13の内径より僅かに小さな外径を有するものとし、筒部13内に摺動可能に嵌挿される構成とすれば、筒部13内でのがたつきがなく好適である。なお、軸部42の軸方向に直交する方向の断面の形状は、杭打ち器本体の筒部の断面と同形であることが望ましく、筒部の断面が四角形の場合は軸部を角棒状とすれば、筒部に軸部を挿入した状態でがたつきが生じ難く望ましい。
【0039】
上記構成の接続用補助具40は、次のように使用する。まず、地面に鉛直に立てた杭Pの頭部側を、有底筒状の補助具本体41における筒状の部分に挿通させ、上方に向かって突出した軸部42を、筒部13が下方に開放するように把持した杭打ち器本体10の筒部13に挿通させる。このとき、図5(a)に示すように、軸部42の上端が杭打ち器本体10の中実部11に達する場合は、杭打ち器本体10を軸部42に沿って上下運動させることにより(図示、矢印方向)、軸部42が中実部11によって打ち付けられ、軸部42及び底部41aを介して杭Pの頭部に衝撃力が加えられるため、この力によって杭Pを地中に打ち込むことができる。或いは、図5(b)に示すように、軸部42が杭打ち器本体の中実部11に達しない長さの場合であっても、底部41aは杭打ち器本体10の軸方向に直交する方向の断面より外形が大きいため、杭打ち器本体10を接続用補助具40の軸部42に沿って上下運動させれば、杭打ち器本体10の下端が底部41aに打ち付けられる。これにより、底部41aを介して杭Pの頭部に衝撃力が加えられ、この力によって杭Pを地中に打ち込むことができる。従って、杭打ち器本体10の筒部13に挿通できない太さであっても、補助具本体41に挿通できる太さの杭Pを地中に打ち込むことが可能となる。
【0040】
また、杭打ち器本体の筒部と杭とで断面の形状が異なる場合、杭の断面形状に応じた断面形状を有する補助具本体を備える接続用補助具を使用すれば、杭のがたつきを低減して鉛直に杭を打ち込み易いものとなる。例えば、杭の断面形状が四角形である場合は、図6に示すように、有底角筒状の補助具本体41bを備える接続用補助具40bを使用することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態の杭打ち器1によれば、金属製の中実部11の重さを利用して杭に大きな力を加えることができ、労力負担を低減して杭を地中に打ち込むことができる。また、対象とする杭に求められる要件は筒部13に挿通できることだけであるため、対象とする杭の範囲が広く汎用性が高い。
【0042】
また、杭打ち器1は延設体20を複数備えているため、延設体20を取り付けることにより、或いは、取り付ける延設体20の数を変化させることにより、杭打ち器1の重さを調整することができる。加えて、延設体20の着脱は、螺子軸21と螺子溝12、または螺子軸21と延設体螺子溝22との螺合及びその解除によるものであって極めて容易であるため、杭打ち器1の重さの調整を容易に行うことができる。
【0043】
加えて、杭打ち器本体10は軸方向に直交する方向の断面形状が同一で、突出する部分のない棒状であるため、嵩張ることなく杭と一緒に束ねることができ、運搬が容易であると共に保管の際にスペースを要しないものとなっている。また、延設体20も、杭打ち器本体10に取り付けた状態で、軸方向に直交する方向の断面形状が杭打ち器本体10と同一であるため、杭打ち器本体10に取り付けた状態で嵩張ることなく杭と一緒に束ねることができる。
【0044】
更に、杭打ち器1は仮打ち棒30を備えているため、これを杭の代わりに地中に打ち込んでから引き抜くことにより、その引き抜き跡に杭を容易に打ち込むことができる。そのため、端部が尖っていない杭であっても地中に打ち込むことが可能となり、対象となる杭の範囲がより広く汎用性の高いものとなっている。
【0045】
加えて、杭打ち器1は接続用補助具40を備えているため、杭打ち器本体10の筒部13に挿通できない杭であっても地中に打ち込むことができ、対象となる杭の範囲が更に広く、汎用性が極めて高いものとなっている。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0047】
例えば、杭打ち器本体の外周面に、ラバーシートや毛羽立った布材など摩擦係数の大きなシート材を貼着すれば、杭打ち器本体を把持して上下運動させる際に滑りにくく好適である。或いは、杭打ち器本体の外周面に、ダイヤ目、斜目、平目などのローレット加工を施すことによっても、杭打ち器本体を把持して上下運動させる際に滑りにくいものとすることができる。
【0048】
また、仮打ち棒に、杭打ち器本体を上下運動させる際の目安になる印を付けることができる。すなわち、杭打ち器本体を仮打ち棒に沿って上下運動させる際、杭打ち器本体を上昇させ過ぎると、筒部から仮打ち棒が抜け出てしまう。そこで、例えば、仮打ち棒の外周面において、それより高くは杭打ち器本体を上昇させない方が望ましい位置に、赤や黄など目立つく色で周方向に沿って帯状に着色した目印ゾーンを設けておくことができる。これにより、作業者が杭打ち器本体を上下運動させる際、目印ゾーンが見えた段階で、杭打ち器本体を更に上昇させることをやめることができ、筒部から仮打ち棒が抜け出ることを防止することができる。また、接続用補助具の軸部に対しても、同様に目印ゾーンを設けることにより、杭打ち器本体を軸部に沿って上下運動させる際に、筒部から軸部が抜け出ることを防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 杭打ち器
10 杭打ち器本体
11 中実部
12 螺子溝
13 筒部
20 延設体
21 螺子軸
22 延設体螺子溝
30 仮打ち棒
31 先鋭部
32 孔部
40,40b 接続用補助具
41,41b 補助具本体
41a 底部
42 軸部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2002−363985号公報
【特許文献2】実用新案登録第3060122号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が金属製の中実部となり残余が中空の筒部となっていると共に、軸方向に直交する断面の外形が単一である長尺棒状の杭打ち器本体を、具備することを特徴とする杭打ち器。
【請求項2】
前記中実部は、前記筒部側とは反対側の端部に螺子溝を備えており、
該螺子溝と螺合する螺子軸を一端に備えると共に、他端に前記螺子溝と同一構成の延設体螺子溝を備える、金属製で中実の延設体を更に備具備する
ことを特徴とする請求項1に記載の杭打ち器。
【請求項3】
前記杭打ち器本体の軸方向に直交する方向の断面より外形の大きな底部を有する有底筒状の補助具本体、及び、前記底部から前記補助具本体の開口端とは反対側に延び前記筒部内に挿入可能な軸部を備える接続用補助具を、更に具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の杭打ち器。
【請求項4】
前記筒部内に挿入可能な長尺棒状で、一端に円錐状または角錐状の先鋭部を備えると共に、軸方向に直交する方向に貫通する孔部を他端側に備える仮打ち棒を、更に具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の杭打ち器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−184874(P2011−184874A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48671(P2010−48671)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(310002787)
【Fターム(参考)】