説明

杭打機

【課題】簡単な構成で作業装置当接部材の回動を規制することができ、過巻検出装置を確実に作動させることができる杭打機を提供する。
【解決手段】杭打機本体に立設したリーダ14に沿って設けられるガイドパイプ20に作業装置当接部材24を上下動可能に装着し、作業装置当接部材24をリーダ上部のトップシーブブロックから吊持用のワイヤーロープによって吊持した過巻検出装置を備えた杭打機において、作業装置当接部材は、内側に前記ガイドパイプを抱持する断面半円以上の円弧状装着部24aが設けられるとともに、作業装置当接部材とリーダとに、互いに当接することによって作業装置当接部材のガイドパイプを中心とした回動範囲を規制するガイド片28とガイドレール29とからなる回動範囲規制部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、杭打機のリーダに沿って昇降する作業装置の上昇限度を規制するための過巻検出装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機本体の前部に立設したリーダの軸線方向に沿って設けられている左右一対のガイドパイプにガイドさせてウインチからのワイヤでオーガやハンマなどの作業装置を昇降させる杭打機では、作業装置を吊持するワイヤを巻き上げすぎると作業装置がリーダの頂部に設けられているトップシーブに衝突してしまうため、ウインチの過巻を検出するための過巻検出装置を設けている。杭打機のリーダに設けられる過巻検出装置は、前記ガイドパイプの上部に作業装置当接部材を上下動可能に設け、作業装置が上昇して作業装置当接部材を持ち上げるとリミットスイッチが作動して警報を発したり、ウインチの巻き上げを停止させたりするように形成されている。ガイドパイプの断面が円形の場合には、ガイドパイプを抱持する断面半円以上の円弧状装着部を有する作業装置当接部材を用いており、ガイドパイプの断面が角形の場合には、両側のガイドパイプにそれぞれ装着される一対の装着部を有する作業装置当接部材を用いていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−328571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、断面円形のガイドパイプに円弧状の装着部を装着すると、ガイドパイプを軸にして作業装置当接部材が回動してしまうため、ガイドパイプに対する作業装置当接部材の上下位置や作業装置当接部材の形状、重量によっては過巻検出装置が正常に作動しないおそれがあった。また、ガイドパイプを補強するための補強板がガイドパイプの軸線に直角の方向に設けられている場合、回動した作業装置当接部材が接触しないように、補強板の一部を切り欠くことが行われているが、切り欠くことによって補強効果が低下するため、所定の補強効果が得られるように、例えば厚肉の補強板を使用するなどの対策が必要だった。一方、両側に一対の装着部を有する作業装置当接部材の場合は、作業装置当接部材が回動することはなく、過巻検出装置を確実に作動させることはできるが、作業装置当接部材が両側のガイドパイプにわたる大きさになり、重量も嵩むため、リミットスイッチなども含めた構成部品のコスト上昇を招くという不都合があった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構成で作業装置当接部材の回動を規制することができ、過巻検出装置を確実に作動させることができる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、杭打機本体の前部に立設したリーダに沿って設けられるガイドパイプに作業装置当接部材を上下動可能に装着し、該作業装置当接部材をリーダ上部のトップシーブブロックから吊持用のワイヤーロープによって吊持した過巻検出装置を備えた杭打機において、前記作業装置当接部材は、内側に前記ガイドパイプを抱持する断面半円以上の円弧状装着部が設けられるとともに、該作業装置当接部材と前記リーダとに、互いに当接することによって該作業装置当接部材のガイドパイプを中心とした回動範囲を規制する回動範囲規制部材を設けたことを特徴としている。さらに、前記回動範囲規制部材が、前記作業装置当接部材の外側に突設したガイド片と、前記リーダに突設されたガイドレールとで形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の杭打機によれば、回動範囲規制部材、例えばガイド片とガイドレールとによって作業装置当接部材の回動範囲を規制できるので、過巻検出装置を確実に作動させることができるとともに、ガイドパイプの軸線に直角の方向に設けられている補強板の一部を切り欠く必要もなくなるので、補強板によるガイドパイプの補強効果を低下させることもなくなる。また、ガイド片とガイドレールとを設けるだけでよいため、両側のガイドパイプにわたる大きさの作業装置当接部材に比べて構成もシンプルとなり、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の杭打機の一形態例を示す要部の側面図である。
【図2】同じく要部の正面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】作業装置当接部材の回動範囲を説明するための説明図である。
【図5】杭打機の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本形態例に示す杭打機は、下部走行体11と、該下部走行体11の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体12と、該上部旋回体12の前部に設けられたフロントブラケット13に起伏可能に設けられたリーダ14と、該リーダ14を上部旋回体12の後部から支持するバックステー15とを備えており、前記リーダ14には、各種作業装置、例えばオーガを駆動するオーガ駆動装置16などがリーダ14に沿って昇降可能に設けられ、リーダ14の頂部には、ウインチ17によりオーガ駆動装置16を吊持して昇降させるためのワイヤロープ18が掛け回されるトップシーブブロック19が設けられている。
【0010】
前記リーダ14は、前記フロントブラケット13に装着される基本リーダ14aと、該基本リーダ14aに接続される延長リーダ14bとを有しており、リーダ14の少なくとも前部側には、左右一対のガイドパイプ20がリーダ14の軸線方向略全長にわたって設けられている。このガイドパイプ20は、基本リーダ14a及び延長リーダ14bの全長に対応した長さの断面円形のパイプを、ガイドパイプの軸線に平行な方向の取付板(縦桟)21と、ガイドパイプの軸線に直角の方向、即ち水平方向の補強板(横桟)22とによって基本リーダ14a及び延長リーダ14bにそれぞれ取り付けられており、延長リーダ14bを接続する際には、図示しない連結部材によって基本リーダ14a及び延長リーダ14bの各ガイドパイプ20が連続するように形成されている。
【0011】
上端にトップシーブブロック19を装着した最上部の延長リーダ14bには過巻検出装置23が設けられている。この過巻検出装置23は、ガイドパイプ20に上下動可能に装着された作業装置当接部材24と、該作業装置当接部材24を吊持する吊持用ワイヤーロープ25と、トップシーブブロック19に設けられた検出スイッチ26とを備えており、前記吊持用ワイヤーロープ25の上端は、前記検出スイッチ26の作動子26aに連結されている。
【0012】
前記作業装置当接部材24は、内側に、前記ガイドパイプ20の外径より僅かに大きな内径で、断面半円以上の円弧状装着部24aが設けられており、この円弧状装着部24aでガイドパイプ20を抱持することにより、ガイドパイプ20から外れることなく、作業装置当接部材24をガイドパイプ20に沿って上下動可能としている。また、作業装置当接部材24とリーダ14とには、互いに当接することによって作業装置当接部材24のガイドパイプ20を中心とした回動範囲を規制するための回動範囲規制部材27が設けられている。
【0013】
本形態例に示す回動範囲規制部材27は、作業装置当接部材24のリーダ14側外面から前記取付板21と平行な方向に突設されたガイド片28と、前記取付板21の基部に突設されたL字状のガイドレール29とで形成されている。図4(a)に示すように、作業装置当接部材24のガイドパイプ20を中心とした時計回りの回動範囲は、ガイド片28とガイドレール29とが当接することによって規制され、図4(b)に示すように、作業装置当接部材24のガイドパイプ20を中心とした反時計回りの回動範囲は、作業装置当接部材24の一端24bと取付板21とが当接することによって規制される。
【0014】
過巻検出装置23は、作業装置であるオーガ駆動装置16が設定高さより下方にあるときには、作業装置当接部材24の重量によって前記作動子26aが吊持用ワイヤーロープ25を介して引き下げられた状態になっており、ウインチ17の巻き上げによってオーガ駆動装置16が設定高さ以上に上昇してオーガ駆動装置16のガイドギブ16aの上部が作業装置当接部材24に当接し、作業装置当接部材24がガイドギブ16aによって押し上げられると、吊持用ワイヤーロープ25及び作動子26aが上方に移動し、検出スイッチ26が作動して警報を発したり、ウインチ17を自動的に停止させたりする。
【0015】
このとき、リーダ14に水平方向の補強板22が設けられている場合には、作業装置当接部材24が時計回りに回動して補強板22に接触し、作業装置当接部材24の上下動が損なわれることを防止することができる。したがって、従来のように作業装置当接部材24と接触することを防止するために補強板22の一部を切り欠く必要がなくなり、補強板22によるガイドパイプの補強効果を低下させることもなくなる。さらに、従来のような補強板22の切欠きは、通常は最上部に配置される延長リーダ14bの補強板22だけに設ければよいが、作業内容により延長リーダ14bを組み替えて使用する場合には、他の延長リーダ14bの補強板22に切欠きを追加加工しなければならず、大掛かりで手間がかかる作業となる。
【0016】
一方、本形態例に示す回動範囲規制部材27では、L字状のガイドレール29となるアングル材を所定位置に所定の状態で溶接するだけでよいことから、他の延長リーダ14bへのガイドレール29の追加も容易に行うことができる。また、補強板22が設けられていない場合でも、作業装置当接部材24が過度に回動してガイドパイプに対する作業装置当接部材の上下位置が異なってしまうことを防止でき、吊持用ワイヤーロープ25がガイドレール29に巻き付いて過巻検出装置が正常に作動しなくなるようなことも防止できる。
【0017】
なお、本形態例の回動範囲規制部材27では、図4(a)に示したように、作業装置当接部材24の時計回りの回動のみを規制するように形成しているが、ガイド片28やガイドレール29を二重に設けたり、当接する部分を二股形状に形成したりすることにより、作業装置当接部材24の両方向への回動を規制することができる。また、ガイド片28は、板状のほか、棒状であってもよい。さらに、ガイドレール29は、リーダ14の外面から突設してもよく、ガイド片28に当接する部分をガイドパイプ20に平行な棒状とし、適当な間隔で設けた支持部材を介してリーダ14の外面や取付板21に取り付けるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0018】
11…下部走行体、12…上部旋回体、13…フロントブラケット、14…リーダ、14a…基本リーダ、14b…延長リーダ、15…バックステー、16…オーガ駆動装置、16a…ガイドギブ、17…ウインチ、18…ワイヤロープ、19…トップシーブブロック、20…ガイドパイプ、21…取付板、22…補強板、23…過巻検出装置、24…作業装置当接部材、24a…円弧状装着部、24b…一端、25…吊持用ワイヤーロープ、26…検出スイッチ、26a…作動子、27…回動範囲規制部材、28…ガイド片、29…ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機本体の前部に立設したリーダに沿って設けられるガイドパイプに作業装置当接部材を上下動可能に装着し、該作業装置当接部材をリーダ上部のトップシーブブロックから吊持用のワイヤーロープによって吊持した過巻検出装置を備えた杭打機において、前記作業装置当接部材は、内側に前記ガイドパイプを抱持する断面半円以上の円弧状装着部が設けられるとともに、該作業装置当接部材と前記リーダとに、互いに当接することによって該作業装置当接部材のガイドパイプを中心とした回動範囲を規制する回動範囲規制部材を設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記回動範囲規制部材は、前記作業装置当接部材の外側に突設したガイド片と、前記リーダに突設されたガイドレールとで形成されていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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