説明

松樹皮抽出物含有飲料

【課題】 本発明の目的は、松樹皮抽出物に特有の収斂味が低減され、更には沈殿の発生や褐色変化が抑制されており、呈味及び経時的安定性の双方の点で優れた松樹皮抽出物含有飲料を提供することである
【解決手段】 (A)松樹皮抽出物と共に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合して、松樹皮抽出物含有飲料を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味及び安定性が改善されている松樹皮抽出物含有飲料に関する。より詳細には、本発明は、松樹皮抽出物に特有の収斂味が低減され、保存時の褐変や退色等の色調変化や沈殿発生が抑制されている、松樹皮抽出物含有飲料に関する。更に、本発明は、松樹皮抽出物含有飲料の沈殿防止方法又は呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
松樹皮には、プロアントシアニジン、フラボノイド、有機酸、糖類、エステル類等の有用物質が含まれていることが知られている。この松樹皮から得られる抽出物には、抗酸化作用を初めとする種々の有用生理作用があり、例えば、関節の痛みの緩和、肩こりや疲労の緩和、シミや皺の除去、美肌効果、老化防止、血中コレステロール値の低減、子宮内膜症、月経前症候群の軽減、毛細血管透過性の改善等に有用であることが分かっている。
【0003】
しかしながら、松樹皮抽出物には、上記の様な有用生理活性がある反面、強い収斂味があり、食品に配合する場合には、呈味の劣悪化が問題となっている。更に、松樹皮抽出物を飲料に配合すると、保存中に沈殿物が不可避的に生成したり、飲料が経時的に褐色に変色したりするため、経時的安定性の点でも不都合がある。
【0004】
これまでに、松樹皮抽出物を含む飲料に関しては、松樹皮抽出物と共にアスコルビン酸を配合した処方が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、単に、松樹皮抽出物とアスコルビン酸を併用するだけでは、収斂味の改善が図れないだけでなく、飲料の褐変や退色等の色調変化が生じるため、松樹皮抽出物を含む飲料の上記問題点は解消できないことが分かっている。
【0005】
このような従来技術を背景として、松樹皮抽出物を含む飲料において、松樹皮抽出物の収斂味を低減すると共に、沈殿の発生や色調変化を抑制する技術の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2005−97324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、松樹皮抽出物に特有の収斂味が低減され、更には沈殿の発生や色調変化(褐色変化や退色等)が抑制されており、呈味及び経時的安定性の双方の点で優れた松樹皮抽出物含有飲料を提供することである。更に、本発明の目的は、松樹皮抽出物含有飲料の沈殿防止方法、及び該飲料の呈味改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(A)松樹皮抽出物と共に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を飲料に配合することによって、松樹皮抽出物に特有の収斂味が低減すると共に、保存時の色調変化(褐色変化、退色等)や沈殿発生を抑制できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、更に改良を重ねることによって完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる飲料である:
項1.(A)松樹皮抽出物、(B)アスコルビン酸、その異性体、それらの誘導体及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を含有することを特徴とする、飲料。
項2. (A)成分を10〜50000mg/L、(B)成分を100〜100000mg/L、(C)成分を100〜10000mg/L、及び(D)成分を100〜15000mg/Lの割合で含有する、項1に記載の飲料。
【0009】
また、本発明は、下記に掲げる沈殿防止方法である:
項3. 松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の沈殿防止方法。
【0010】
更に、本発明は、下記に掲げる呈味改善方法である:
項4. 松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の呈味改善方法。
【0011】
また、本発明は、下記に掲げる変色防止方法である:
項5. 松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の変色防止方法。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
I 飲料
本発明の飲料は、(A)松樹皮抽出物と共に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を含有することを特徴とするものである。
(A)松樹皮抽出物
本発明の飲料は、松樹皮抽出物を含有する。本発明に使用される松樹皮抽出物(以下、単に(A)成分と表記することもある)の原料となる松としては、フランス海岸マツ(Pinus maritima, Pinus pinaster)、ニュージーランドマツ(Pinus radiata)、チョウセンマツ(Pinus Koraiensis)、エキナタマツ(Pinus echinata)、アカマツ(Pinus densiflora)、クロマツ(Pinus thunbergii)、ストローブマツ(Pinus strobus)、サトウマツ(Pinus lambertiana)、ゴヨウマツ(Pinus parviflora)、スラッシュマツ(Pinus elliottii)、カリビアマツ(Pinus caribaea)、リギダマツ(Pinus rigida)、テ−ダマツ(Pinus taeda)、ダイオウショウ(Pinus palustris)、タイワンアカマツ(Pinus massoniana)、ハイマツ(Pinus pumila)、バンクスマツ(Pinus Banksiana)等が挙げられる。これらの原料として使用される松の中で、好ましくはフランス海岸マツ、及びニュージーランドマツであり、更に好ましくはフランス海岸マツである。松樹皮抽出物の原料として上記の松の中の1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0013】
松樹皮抽出物は、上記松の樹皮を抽出原料として用いて、冷水、温水、熱水等の水;有機溶媒;又は水と有機溶媒の混合液を抽出溶媒として抽出することにより取得することができる。この抽出に使用される有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。当該抽出溶媒としては、好ましくは水、炭素数1〜5の低級アルコール、該アルコールと水の混合液、及びプロピレングリコールと水の混合液、特に好ましくは水、エタノールと水の混合液、及びプロピレングリコールと水の混合液を挙げることができる。
【0014】
松樹皮抽出物の抽出方法については、特に制限されず、冷浸法、温浸法、パーコーレーション法、その他植物抽出物の製造において一般的に用いられている方法等を広く使用できる。
【0015】
本発明の飲料に配合する(A)成分の好適なものとして、フランス海岸マツの樹皮抽出物である商品名「ピクノジェノール」(ホーファリサーチ社製)が挙げられる。
【0016】
本発明の飲料において、上記(A)成分の配合割合としては、乾燥重量換算で、通常10〜50000mg/L、好ましくは50〜2000mg/L、更に好ましくは100〜1000mg/Lが挙げられる。
【0017】
(B)アスコルビン酸類
本発明の飲料は、アスコルビン酸、その異性体、それらの誘導体及びそれらの塩の中の1種又は2種以上(以下、単に(B)成分と表記することもある)を含有する。
【0018】
ここで、アスコルビン酸の異性体としては、飲料への配合が許容されることを限度として、特に制限されないが、該異性体の一例としては、エリソルビン酸が挙げられる。また、アスコルビン酸の異性体の誘導体としても、飲料への配合が許容される限り特に制限されない。
【0019】
また、アスコルビン酸の誘導体としては、飲料への配合が許容されるものであればよい。該アスコルビン酸の誘導体として、具体的には、アスコルビン酸2,6−ジパルミテート、アスコルビン酸6-ステアレート、アスコルビン酸−2リン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸2-グルコシド、アスコルビン酸グルコサミン、L-デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸6-パルミテート、テトライソパルミチン酸L-アスコルビン、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L-アスコルビルマグネシウム等を例示することができる。これらのアスコルビン酸の誘導体は1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0020】
また、アスコルビン酸及びその誘導体の塩についても、食品への配合が許容されることを限度として、特に制限されるものではない。アスコルビン酸及びその誘導体の塩の一例として、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属との塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム塩、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等を挙げることができる。これらのアスコルビン酸及びその誘導体の塩は1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0021】
上記(B)成分の内で、好ましくはアスコルビン酸、エリソルビン酸及びこれらの塩、更に好ましくはアスコルビン酸ナトリウム、及びエリソルビン酸ナトリウムが挙げられる。
【0022】
本発明の飲料において、上記(B)成分の配合割合としては、通常100〜100000mg/L、好ましくは200〜5000mg/L、更に好ましくは300〜2000mg/Lが挙げられる。
【0023】
(C)シクロデキストリン
本発明の飲料は、シクロデキストリン(以下、単に(C)成分と表記することもある)を含有する。シクロデキストリンとは、6〜8個のグルコピラノース基がα1-4結合によって環化した環状オリゴ糖である。シクロデキストリンとしては、具体的にはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等が挙げられるが、松樹皮抽出物含有飲料の呈味改善及び沈殿抑制をより効果的に実現させるには、β−シクロデキストリンを使用することが好ましい。
【0024】
本発明の飲料において、上記(C)成分の配合割合としては、通常100〜20000mg/L、好ましくは1000〜10000mg/L、更に好ましくは2000〜8000mg/Lが挙げられる。
【0025】
(D)大豆多糖類
本発明の飲料には、更に水溶性大豆多糖類(以下、単に(D)成分と表記することもある)を含有する。
【0026】
本発明において、大豆多糖類とは、脱脂大豆から大豆タンパクを製造する際に得られる不溶性食物繊維(オカラ)から、弱酸性下で熱水抽出、精製、殺菌、乾燥の工程を経て調製される水溶性の多糖類である。当該大豆多糖類は、ガラクトース、アラビノース、及びガラクツロン酸を主たる構成糖とし、更にラムノース、キシロース、フコース及びグルコースを含む水溶性の多糖類である。大豆多糖類の分子構造としては、必ずしも明らかではないが、ラムノガラクツロン及びホモガラクツロンからなる主鎖骨格に、ガラクタンとアラビナンが結合した構造が推定されている。
【0027】
このような大豆多糖類については、例えば、「SM−640」、「SM−660」、「SM-700」、「SM-900」、「SM-920」、「SM-970」、「SM-1200」(商品名、いずれも三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)として市販されている。特に、「SM-1200」は、本発明に好適に使用される。
【0028】
本発明の飲料において、上記(D)成分の配合割合としては、通常10〜20000mg/L、好ましくは50〜5000mg/L、更に好ましくは200〜800mg/Lが挙げられる。
【0029】
本発明の飲料は、(A)〜(D)成分をそれぞれ上記割合で含有することにより、松樹皮抽出物の収斂味を低減する効果と、飲料中に沈殿が生じるのを抑制する効果が良好に奏されるが、(A)〜(D)成分が更に下記の比率を充足することにより、上記効果を一層顕著ならしめることができる:
(A)成分(乾燥重量換算)100重量部に対して、(B)成分が22〜22222重量部、(C)成分が22〜4444重量部、(D)成分が2〜4444重量部;好ましくは、(A)成分(乾燥重量換算)100重量部に対して、(B)成分が44〜1111重量部、(C)成分が222〜2222重量部、(D)成分が11〜1111重量部;更に好ましくは、(A)成分(乾燥重量換算)100重量部に対して、(B)成分が66〜444重量部、(C)成分が444〜1778重量部、(D)成分が111〜178重量部。
【0030】
本発明の飲料には、上記(A)〜(D)成分に加えて、更に必要に応じて、飲料に一般的に配合される添加物を含有してもよい。このような添加物としては、例えば、砂糖、ぶどう糖、果糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類;スクラロース、アスパルテーム、アリテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン等の高甘味度甘味料;各種オリゴ糖;酢酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸等の酸味料;香料;ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類;ナトリウム、マンガン、亜鉛、カルシウム、鉄等のミネラル類;グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニン、アスパラギン酸ナトリウム、バリン、ロイシン、イソロイシン等のアミノ酸及びその塩;グレープフルーツ、リンゴ、オレンジ、レモン、パイナップル、バナナ、ナシ等等の果汁;蔗糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;寒天、ジェランガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギナン、ゼラチン、ポリデキストロース、ペクチン、キサンタンガム、アラビアガム、アルギン酸等の増粘剤;カラメル色素等の着色料;香味料等が例示される。
【0031】
本発明の飲料は、炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、アルコール飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料、ゼリー様飲料、粉末飲料等の如何なる形態のものであってもよい。
【0032】
本発明の飲料は、上記各成分を混合して調製することができ、その調製方法は特に制限されるものではない。
【0033】
本発明の飲料は、無色透明又は有色(茶、緑、黒等)のガラス瓶、ペットボトル、アルミ製容器等の容器に収容されて、飲料製品とすることができる。
【0034】
II 松樹皮抽出物含有飲料の沈殿防止方法、呈味改善方法及び変色防止方法
前述するように、松樹皮抽出物を含有する飲料において、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を組み合わせて配合することにより、松樹皮抽出物含有飲料に不可避的に生じる沈殿の発生を防止することができる。従って、本発明は、他の観点から、松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の沈殿防止方法を提供する。
【0035】
また、松樹皮抽出物を含有する飲料において、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を組み合わせて配合することにより、松樹皮抽出物に特有の収斂味を低減して、松樹皮抽出物含有飲料の呈味を改善することができる。従って、本発明は、更に他の観点から、松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の呈味改善方法を提供する。
【0036】
更に、松樹皮抽出物を含有する飲料において、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を組み合わせて配合することにより、松樹皮抽出物含有飲料の保存時に生じる褐色変化を抑制することができる。従って、本発明は、更に他の観点から、松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の変色防止方法を提供する。
【0037】
当該沈殿防止方法、呈味改善方法及び変色防止方法において、使用される松樹皮抽出物及び(B)〜(D)成分の種類、飲料中の松樹皮抽出物の含有量、(B)〜(D)成分の飲料中への配合量、その他の配合成分、飲料のpH等については、前記「I 飲料」の場合と同様である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の飲料は、松樹皮抽出物の収斂味が低減されており、更には飲料中に沈殿が生じたり、褐変や退色により飲料の色調が変化するのが抑制されている。このような本発明の飲料に備わっている優れた効果は、松樹皮抽出物と共に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を組み合わせて含有することにより得られるものであり、これらの含有成分が一体不可分の関係となって獲得されるものである。
【0039】
本発明によれば、松樹皮抽出物を呈味及び安定性が良好な飲料形態で提供できるので、飲料の摂取という簡便な方法で松樹皮抽出物の有用生理活性を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
試験例1 呈味改善効果及び沈殿抑制効果の評価−1
表1に示す組成の飲料(実施例1及び比較例1−5)を調製し、各飲料の100mlを無色透明のガラス瓶に充填して、殺菌した。得られたガラス瓶入り飲料の収斂味について、下記の基準に従って評価した。更に、得られたガラス瓶入り飲料を50℃又は日光下(屋外に設置したガラスボックス内)で1週間保存し、保存後のガラス瓶内の飲料の沈殿の生成の程度を下記の基準に従って評価した。
<収斂味の程度>
−: 収斂味を殆ど感じない
+: 僅かに収斂味を感じる
++: 収斂味を感じる
+++:強い収斂味を感じる

<沈殿生成の程度(目視評価)>
−: 沈殿の存在は確認できない
+: 沈殿の存在は確認できるが、その量は僅かである
++: 多量ではないが、沈殿の存在は確認できる
+++:多量の沈殿の存在が確認できる。
【0041】
得られた結果を表1に併せて示す。この結果から、松樹皮抽出物含有飲料において、アスコルビン酸、シクロデキストリン及び大豆多糖類を含有することにより、収斂味低減効果と沈殿抑制効果の両効果が得られることが確認された(実施例1参照)。一方、これらの成分全てを含まない場合には、上記の両効果の一方若しくは双方が損なわれてしまうことが明らかとなった(比較例1−5参照)。
【0042】
【表1】

【0043】
試験例2 呈味改善効果及び沈殿抑制効果の評価−2
表2に示す組成の飲料(実施例2−9)を調製し、各飲料の100mlを無色透明のガラス瓶に充填して、殺菌した。得られたガラス瓶入り飲料の「収斂味」及び「保存後の沈殿生成」について、上記試験例1と同様の方法で評価を行った。
【0044】
得られた結果を表2に併せて示す。この結果から、実施例1−9の飲料では、収斂味が低減され、沈殿の生成も抑制されていることが確認された。
【0045】
【表2】

【0046】
試験例3 変色抑制効果の評価
表3に示す組成の飲料(実施例10及び比較例6−9)を調製し、各飲料の100mlを無色透明のガラス瓶に充填して、50℃又は日光下(屋外に設置したガラスボックス内)で10日間保存した。保存後の飲料の色調変化を下記の基準に従って評価した。
<目視による色調変化の評価基準>
−: 保存前に比べて、変色は認められない
+(退色):保存前に比べて、退色が認められる
+: 保存前に比べて、褐色変化が僅かに認められる
++: 保存前に比べて、褐色変化が認められる
+++: 保存前に比べて、褐色変化が著しく認められる。
【0047】
得られた結果を表3に併せて示す。この結果から、松樹皮抽出物含有飲料において、アスコルビン酸、シクロデキストリン及び大豆多糖類を含有することにより、飲料は、変色することなく安定に保持されることが明らかになった。これに対して、比較例6−9の松樹皮抽出物含有飲料では、安定性が低く、50℃又は日光下での保存後に褐色に変色することが確認された。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例11
下記組成の清涼飲料を調製した。
【0050】
松樹皮抽出物
(商品名「ピクノジェノール」(ホーファリサーチ社製)) 45mg
アスコルビン酸 85mg
β−シクロデキストリン 500mg
大豆多糖類
商品名「SM-1200」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)70mg
果糖 適量
トレハロース 適量
砂糖 適量
クエン酸 適量
スクラロース 適量
カラメル色素 適量
香料 適量
水 適量
合計 100ml

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)松樹皮抽出物、
(B)アスコルビン酸、その異性体、それらの誘導体及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、
(C)シクロデキストリン、及び
(D)大豆多糖類
を含有することを特徴とする、飲料。
【請求項2】
(A)成分を10〜50000mg/L、(B)成分を100〜100000mg/L、(C)成分を100〜20000mg/L、及び(D)成分を10〜20000mg/Lの割合で含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の沈殿防止方法。
【請求項4】
松樹皮抽出物を含有する飲料に、(B)アスコルビン酸類、(C)シクロデキストリン、及び(D)大豆多糖類を配合することを特徴とする、松樹皮抽出物含有飲料の呈味改善方法。