説明

板金属に対して直流電気浴を洗浄するための方法及び装置

本発明は、窒素含有有機添加物、可溶性亜鉛塩及び場合によりFe、Ni、Co及びSn塩から選択される他の金属塩を含有する、酸性又はアルカリ性の亜鉛又は亜鉛合金浴の機能的層をメッキするために使用される方法に関し、その際、再生のための前記浴の組成物を、イオン交換樹脂を有する適切な装置を介して運搬して、シアニドイオンを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の内容
本発明は、電解質の寿命を延長するため、かつあらゆる所望でない分解生成物を取り出すためにイオン交換を使用して、板金属に対して、直流電気浴、特にアルカリ性の亜鉛−ニッケル合金浴を清浄するための方法及び装置に関する。
【0002】
発明の背景
亜鉛−ニッケル被覆は、腐食を受ける場合に高品質の表面保護を要求する、全ての適用において使用される。適用の通常の分野は、エンジンベイにおいて、ブレーキシステムに対して、及びランディングギアベイにおいて使用される構成成分のための自動車製造である。この理由に関して、アルカリ性の亜鉛−ニッケル電解質は、例えば以下の電解質組成:
【表1】

を有する、US 4,889,02において公表されているように、より最近使用されている。
【0003】
電解質中のアミンは、ニッケルイオンのための錯化剤として作用する。錯化剤は、金属の分離において使用される多数の直流電流法及び化学的方法の構成成分である。亜鉛−ニッケル電解質は、通常、不溶性ニッケル陽極によって作動する。亜鉛含有率は、好適な亜鉛イオン源の添加によって一定に維持され、かつニッケル含有率は、ニッケルイオン源の添加によって一定に維持される。亜鉛−ニッケル電解質の色は、しかしながら、操作のある時間後に、青紫から茶色に変化する。
【0004】
操作のある時間後に、ニトリル(いわゆる、ニトリルと同様にイソニトリルを含有しうる有機的に結合させたシアニド)及びシアニドイオンは、亜鉛−ニッケル電解質中で、陽極酸化によって、アミン含有錯化剤から形成される。シアニド汚染の問題は、電解質の連続置換、及び同様に電解質の操作費用に著しく影響を及ぼす特別な排水処理を要求する。数日後、又は数週間後に、変色における顕著な増加、及び2つの相への分離がある。その上の相は暗褐色である。この相は、加工物が被覆される場合に、多数の問題、例えば被覆の厚さの不均一な分布又は膨れを生じる。この第二の茶色の相の連続的な除去又はスキミングが、従って完全に必須である。この操作は、時間及びお金の顕著な量を要求する。第二相の形成の原因は、アルカリ溶液中のニッケル陽極上のアミンが、ニトリル(有機的に結合させたシアニド)に変形させる概念である。これは、しかしながら、アミンの分解のために、新たな錯化剤が、方法費用を同様に増加する添加を維持するべきであることを意味する。
【0005】
いくつかの方法は、シアニドの濃度を低下することが先行技術に記載されている。
【0006】
活性炭の洗浄方法は、電気メッキにおいて、ニッケル電解質中での有機不純物を除去するために使用される通常の方法である。使用される活性炭の量は、予備試験で決定される。活性炭洗浄のために最も頻繁に使用される量は、2〜5g/lである。活性炭は、50〜60℃の温度で添加される。添加してすぐに、電解質を激しく撹拌する。半時間後に、被吸収性物質を、活性炭によって吸収し、そして濾過する。この方法の欠点は、しかしながら、全ての有機構成成分が、それによって電解質から取り除かれることである。亜鉛−ニッケル電解質のために、これは、分解生成物だけでなく、全ての有機構成成分、例えば光沢剤及び錯化剤も取り除かれることを意味している。
【0007】
公表EP 1 344 850 A1は、イオン交換膜を使用して陽極からアルカリ電解質を分離することによるシアニドの形成を低減する装置を特徴とする。この分離は、ニッケル陽極上のアミンの反応を妨げ、かつ従ってあらゆる所望でない副生成物も妨げる。生じる副生成物、廃棄の問題、第二相の形成及びメッキされた亜鉛−ニッケル層の品質に及ぼす不利な影響は、それによっても妨げられる。従って、もはや、前記浴を置き換えること、及び形成された第二相をスキミングすることに対して多くの時間及びお金を費やすことは必要でない。前記亜鉛−ニッケル電解質は、陰極液として作用する。前記イオン交換膜を使用して分離させた陽極構成成分中での媒体は陽極電解質として公知であり、この場合硫酸又はリン酸を使用することができる。この方法の欠点は、全ての一般の金属被覆浴のために使用されることもできない、高価な、維持のかかるイオン交換膜の使用である。
【0008】
公表EP 0 601 504 B1は、ポリマー吸収体樹脂を使用する金属の分離のための直流電気浴の洗浄を記載している。活性炭処理と同様に、欠点は、分解生成物だけでなく、全ての有機構成成分、例えば光沢剤及び錯化剤も取り除かれることである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】イオン交換体再生装置を示す図。
【図2】ハルセル機構を示す図。
【図3】イオン交換体と炭酸ナトリウムの凍結との組合せを使用する製造及び再生効果を示す図。
【図4】種々の亜鉛−ニッケル電解質の層の厚さ分布の比較を示した図。
【0010】
発明の詳細
本発明の意図は、金属被覆法の間に形成されたシアニド及びニトリルを、電解質から選択的に除去することである。驚くべきことに、シアニドイオンを結合することができるイオン交換樹脂を使用することによって、シアニドイオンだけでなく、前記浴からのニトリルも除去することが可能である。この特定の目的のためのイオン交換樹脂の使用は、先行技術において公知ではない。
【0011】
アミン被覆錯化剤(例えばポリエチレンアミン)を有するアルカリ性の亜鉛−ニッケル電解質において、ニトリル化合物が、操作中に形成される。分解生成物の欠点は、電解質の寿命を延ばす場合に、又は分解生成物を増加する場合に、油状及び蝋状の第二相を形成することである。分解生成物の形成は、高価な錯化剤の損失、及び非常に毒性のあるシアニドの形成が原因である。アミン含有錯化剤から、ニトリル(R−CN、これは常にイソニトリルを含有する、R−CN)が、最初に酸化反応において陽極で形成され、そしてさらに反応してシアニドイオン(CN-)を形成する。
【0012】
前記問題は、低下された効率、及び板状層の品質の低下を導く。ここで、前記効率は、金属の定義された量をメッキするために導入された合計の電流の百分率部である。低下された効率を和らげるために、電流密度を通常増加するが、しかしながら、同様に、ニトリル(R−CN)及びシアニドに対する錯化剤の分解速度が加速される。試験は、第二相が大量のシアニド、金属及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含有することを示している。したがって、前記分解生成物は、ニトリルによって影響され、又はそれらは濃度が増加するために連続するようにともに存在し、かつ第二相を形成すると想定されうる。方法的観点から、第二相を分離することはこんな意である。それというのも、前記浴中の液体が絶えず動いているからである。したがって、これは、この相中でもある錯化された金属イオン及び他の高価な添加剤の一定の損失も意味する。したがって、本発明の目的は、シアニド及び場合により結合シアニド(ニトリル)を電解質から選択的に取り除くことである。
【0013】
有機的に結合させたシアニド中の還元は、方法溶液において見出された合計の有機炭素の含有率における変化において顕著である。これは、しかしながら、他の重要な有機構成成分、例えば光沢剤又は有機錯化剤が電解質中で失われることも意味する。光沢剤が電解質から取り除かれた場合に、これは、板状層の光学的品質に著しく影響を及ぼす。シアニド及びニトリル化合物の含有率における減少は、続いて効率を増加する。
【0014】
本発明に加えて、シアニド及び有機的に結合させたシアニドは、イオン交換樹脂を使用して除去されるべきである。
【0015】
イオン交換樹脂は、毒性物質又は干渉性のアニオンもしくはカチオンを排水から除去するために使用される。この方法の利点は、沈殿又は化学的破壊を要求しないことである。それというのも干渉性物質は、変化されることなしに排水から除去されうるからである。イオン交換樹脂は高分子有機物質である。固く不溶性の構造は、容易に交換可能な対イオンをその上に有する。該対イオンは、容易に移動可能であり、かつ交換可能な対イオン、通常水素イオン又はヒドロキシルイオンである。直流電気法浴の再生は、従って、電解質の寿命を干渉カチオン又はアニオンを除去することによって延ばすために好適な方法である。前記イオン交換樹脂は、容器中で電解質溶液と接触させられる。前記方法は、交換体からの対イオンと同様に電解質溶液からの荷電イオンとの平衡が変化すると同時に完了する。追加のイオンがイオン交換体樹脂を使用して電解質から除去されるべきである場合に、その時新しい樹脂が添加されるべきである。該樹脂は、一度平衡を確立するために濾過される。
【0016】
カラム法は、研究室もっとも一般的に使用される方法である。ここで、イオン交換体樹脂はカラム中に充填される。すべての必要な操作が、そして製造されているパック中で実施される。2つの異なる作業技術は、区別され、すなわち液層を増加する、及び低減する操作である。液層低減で、電解質流は、カラムを通ってトップから下がり、液層の増加で底部から上昇する。カラムを充填することは、直接操作である。その電流型での前記樹脂は、最初にすべて、蒸留水を含有するビーカーに移され、樹脂を膨張させる。この操作は、カラムを粉砕から避けるために、及びカラムを樹脂膨張のように高密度に充填されるべきことから回避するために重要である。2時間は、通常、膨張のために樹脂に十分である。前記樹脂は、そしてカラム中で半固体状に凝固する一方で、すでに層状である樹脂がすべての時間で水で覆われていることを確実にする。あらゆる過剰な水は、絶えずカラムから取り除かれる。最終的に、一度樹脂が濾過されれば、詰め綿の一部は、パックのトップを横切っておかれる。次の副次的方法は、イオン交換体カラムの操作サイクルの間に実施されるべきである:
1.装填(イオン交換体)
2.交換体パックの洗浄
3.再生
4.交換体パックの洗浄。
【0017】
操作間の洗浄は、イオン交換体カラム中の試薬のあらゆる残留物を除去するために必要である。再生方法中に、前記交換体パックは、その元の状態(充填されていない状態)に変化される。イオン変化中に変化されたイオンが再度回復されるべきである場合に、それは、イオン交換体によって、好適な液体で溶出することによって除去される。本発明によって、前記方法溶液は、イオン交換樹脂を介して流れ、それによってシアニドが相互反応を介して固定基上にとられ、かつヒドロキシドアニオンは電解質に対して放出される。驚くべきことに、ニトリル化合物を、この方法で除去することもできる。
【0018】
シアニドイオンを結合することができるそれぞれのイオン交換樹脂は、本発明の構成の範囲内で使用されうる。シアニドイオンを結合するための好適なイオン交換樹脂は、例えばLudwig Hartinger: Handbuch der Abwasser− und Recyclingtechnik, 2ed. 1991 352〜361頁において記載されており、参照をもって本明細書に開示されたものとする。5.2.3.3.4段落及び表5−1にしたがって、アニオンのようなシアニドは、強アルカリアニオン交換樹脂を使用して変化されうる。かかる樹脂は、第四級アンモニウム基を有するポリアクリルアミドから作られた樹脂を含有する。かかる樹脂材料は、市販されており、かつ例えばRobert Kunin, Ion Exchange Resins, reprint 1985の表13(89頁)において記載されており、参照をもって本明細書に開示されたものとする。好適な第四級の強塩基樹脂は、Amberlite IRA−400(Rohm&Haas Co.),Amberlite IRA−401(Rohm&Haas Co.),Amberlite IRA−410(Rohm&Haas Co.),Dowex 1(Nalcite SBR)(Dow Chemical Co.),Dowex 2(Nalcite SAR)(Dow Chemical Co.)を含む。
【0019】
すべてのかかる樹脂は、ニトリルを結合することもできる。
【0020】
実施例の方法によって、試験を、イオン交換樹脂Lanxess Deutschland GmbH社製のLewatit MonoPlus M600及びMonoPlus M500を使用して実施した。これらの樹脂は、官能基として第四級アミンを有する極めてアルカリ性のアニオン交換体である。そのマトリックスは、架橋されたポリスチレンである。その嵩密度は、680g/lであり、有効な粒度は0.62mmである。
【0021】
図1は、本発明の一実施態様によって増加させた液層でのカラム方法を示す。カラム(4)の底部において、ガラス、セラミックもしくはプラスチックのフリットであり、又は噴霧レジスタ(spray register)もしくは噴霧孔もしくはふるい(6)があり、方法溶液はイオン交換樹脂(5)を通って均等に流れることができる。該イオン交換樹脂(5)はカラム中に埋め込まれる。カラムの頂部末端で、ガラス、セラミックもしくはプラスチックフリット又はふるい(3)がある。これは、樹脂を上昇から妨げ、方法溶液のみを通すころを確実にするためである。金属の分離のための直流電気浴のために使用される収集容器(1)は、ホースポンプ(2)を使用してカラムを介して運ばれた汚れた方法溶液である。一度該方法溶液を、カラムを介して通した後に、容器(1)と同一であってよい容器(7)中に収集される。金属化方法のために使用される装置は、図1及び3において示されたように、イオン交換樹脂(5)、及び容器(1)と同一であってよい、イオン交換樹脂(5)を通過する、亜鉛又は亜鉛合金浴のための収取装置(7)を含む、イオン交換装置(4)に亜鉛又は亜鉛合金浴を取るために連結された、亜鉛又は亜鉛合金浴を取るための容器(1)、連結されたポンプ系(2)を含む。
【0022】
イオン交換装置(4)におけるイオン交換樹脂(5)は、噴霧レジスタ、噴霧孔又はふるい上にあってよい。
【0023】
前記容器(1)は、一般に直流電流の亜鉛又は亜鉛合金浴と同等であり、かつ少なくとも1つの陽極、陰極(被覆されるべき基材)及び電圧源からなる。
【0024】
さらに、―図3において示されるように―溶液を凍結し、かつ炭酸ナトリウム固体を分離するために、容器(1)及びイオン交換装置(4)との間の凍結装置(8)もあってよい。該凍結装置(8)は、有利には10℃未満、より有利には2〜5℃である温度まで溶液を冷却するための冷却装置(9)、及び結晶化した炭酸ナトリウムを分離するための出口(10)を含む。炭酸塩からきれいな亜鉛又は亜鉛合金浴を取るための凍結装置(8)及びイオン交換体(4)との間に容器があってもよい。
【0025】
水酸化ナトリウム溶液を使用して、Lewatit MonoPlus M600及びM500を再生することはできなかった。強アニオンは、結合したシアニドアニオンを変換するために必要とされる。本発明によって、その提案は、それらの塩化物型に戻るイオン交換樹脂を変形させることである。強酸、例えば塩酸(HCl)は、これが、毒性のある水素シアニドをすぐに形成するため使用することができない。前記樹脂の再生試験中に、塩化ナトリウムを、シアニドを樹脂から分離し、かつ塩化物型に戻る該樹脂を変形させるために使用した。塩化ナトリウムでの再生溶液を、水酸化ナトリウム0.5質量%を有するアルカリ性の範囲(pH値>10)中に移動した。それというのも、シアニドは、このpH値未満で急速に分解し、かつ毒性のある水素シアニドを形成するからである。再生試験を、塩化ナトリウムの3つの異なる濃度(6、12及び18質量%、第2表〜第7表)を使用して試験した。再生操作を、5m/時間の直線的速度で実施した。塩化ナトリウム溶液1リットルを、再生のために使用し、そしてイオン交換パックを介して運搬した。それぞれ250mlの容量を有する試料留分の4つの部分を取り、種々の電解質パラメータの含有率を解析し、比較し、そして評価した。解析のデータを、樹脂に結合し、そして再生法によって溶出することができたシアニドの量を算出するために使用した。
【0026】
第2表に関して:NaCl6質量%を有する再生溶液1lの合計容量を、シアニド(有機ニトリルを含有する)をLewatit MonoPlus M600を含有するカラムから溶出するために使用した。試料1は、最初に、シアニドをカラムから溶出するために使用した再生溶液250mlの解析であり、試料2が、第二の250ml部分、試料3は、第3の250ml部分、かつ試料4は第4の250ml部分であり、合計溶出液は1lである。溶出液1l中の合計シアニドの量は、1.525mgである。同様に、第3表〜第7表による他の再生サイクルに関して実施した。
【0027】
その結果は、これが、カラムを再生するための高い塩化物イオン含有率を有する溶液を使用するために有利であることを示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
温度を上昇した(ビーカー中での流量温度55℃、イオン交換時カラム中での平均温度35℃)試験は、再生媒体が要求する著しく低下した収集温度を達成することを示している。使用した溶液は、18質量%の濃度の塩化ナトリウム濃度を有した。
【0035】
【表8】

【0036】
再生されるべきエージングされた電解質は、可能である場合、元の状態(新しいバッチ)にできるだけ近くあるべきである。アルカリ性の亜鉛―ニッケル電解質の新しいバッチは、通常、1A/dm2の電流密度に関して70%の効率を有する。電気メッキ中に、再生効果を評価するために、ハルセル試験を使用することができ、ファラデーの法則を使用する電解質の効率を決定するための選択肢がある。電解質の層の厚さ分布に基づいて、再生効果がイオン交換樹脂を使用してどれだけ良好か評価することができる。ハルセルを、電流密度に依存する板状層の特性に対する前記浴パラメータ(例えば温度、pH値、電解質組成物、添加物の損失又は余剰、清浄度、他の金属からの不純物)の効果を決定するために使用する。
【0037】
ハルセルにおいて陰極が、陽極に対して斜めである(図2を参照)ために、陰極に対する電流密度の分布がある。これは、シグナル実験における電流密度の効果を試験することを可能にさせる。当然、前記電流密度は、陽極に近い縁で、陽極から離れた縁よりも高くなる(図2)。被覆された表面の品質、すなわち組成、厚さ、均一及び他の性質は、従って主に電解質の組成及びメッキ条件に依存する。重要な質の要因は、電解質の組成及び高品質の被覆を確実にするために監視される電流パラメータである。電解質の組成は、この場合に重要な役割を果たす。電解質中のそれぞれ個々の添加物は、電解質及び板状層の性質に影響する。所望の層品質を得るために、電解質構成成分の濃度は、一定の限度内である必要がある。電解質の大部分は、無機構成成分に加えて、さらに有機タイプの添加物を含有する。これらの有機構成成分は、板状であるべき層の性質に影響するために設計される。これは、例えば光沢、レベリング、硬度、柔軟性及び均一電着性を含む。前記ハルセル試験を、板状層及び亜鉛―ニッケル組成物の外観を試験するために使用した。試験を、イオン交換樹脂を使用して再生した新しく、縁上で、及び電解質上で、ハルセルで実施した。この試験を、元の状態(新しいバッチ)にどれだけ効率的に近くなるかの示度を与えるために設計する。前記ハルセルを、どれだけ損失がイオン交換方法中にメッキ速度に影響を及ぼすかを確立するために使用することができる。前記添加物は、しかしながら、該添加物を一定の濃度及び組成で使用する場合に効率的に働くだけである。
【0038】
質的に、被覆された板の明度を視覚的に評価することによって、TOC(Total Organic Carbon(合計有機炭素))含有率における低減は、第8表及び第9表において示されるように、ニトリル濃度の低減、及びアミン含有錯化剤の低減によってである。
【0039】
前記イオン交換法を、有利には、さらに前記方法の効率を上げ、エイジングされていない電解質のメッキ性能を適合するための炭酸ナトリウムの凍結の組み合わせで実施することができる。電解質溶液を、イオン交換樹脂カラム(図3を参照)での処理前又は処理後に、冷却装置を介して提供することができる。冷却中に、分離されうる炭酸ナトリウム相が形成される。古い電解質を、有利には、最初に凍結装置中で処理し、そしてイオン交換樹脂装置で処理する。
【0040】
操作的実施例
試験を、電解質上で、第1表に従って亜鉛−ニッケル剛毅をメッキするために実施した。
【0041】
この試験のために、樹脂100mlを、完全に脱塩した水中で、2時間膨潤させ、そしてカラム中で半固体状に凝固させた。充填法の前に、Lewatit MonoPlus M600を、水酸化ナトリウム溶液2質量%を使用して、OH-型に樹脂を変化するために再生した。Lewatit MonoPlus M500のために、これを、水酸化ナトリウム溶液3質量%を使用して行った。充填法を、製造業者によって指示された値によって実施した。実際、通常、時間毎の総容積(BV/時間)における装填法を示す。この値は同様に、カラムに埋め込まれた樹脂の埋め込まれた量に関する。充填は、通常、10BV/時間をとる。使用した樹脂の量(100ml)に基づいて、その体積流量率は1000ml/時間である。これは、1.51ml/時間の速度を示し、そして製造業者によって規定された値の範囲内である。試験を実施する前に、参照試料を、再生されるべき亜鉛−ニッケル電解質から取った(表における試料0がエージングされた電解質に対応する)。イオン交換樹脂の選択制を試験するために実施した予備試験において、アルカリ性の亜鉛−ニッケル電解質1000mlを、イオン交換カラムに運搬し、その際試料分250mlを、15分毎に取った(第8表及び第9表における試料1〜4)。
【0042】
そして種々の構成の含有率を、試料分中で試験し、そして互いに比較した。該試料の金属含有率、水酸化ナトリウム含有率、炭酸ナトリウム含有率、硫酸ナトリウム含有率、錯化剤含有率、TOC含有率、及び合計シアニド含有率を試験した。
【0043】
第8表及び第9表は試験の結果を示す。
【0044】
【表9】

【0045】
【表10】

【0046】
第8表及び第9表における値は、金属含有率濃度が、実質的に一定であり、かつ著しく変化しないことを示す。ニッケル濃度は、未変化のままであり、かつ変動しない。水酸化ナトリウム濃度は、最初にわずかに低下する。これに関する理由は、樹脂を完全にOH-型に再生法中に変化させることができなかったことである。前記樹脂は、従って、まだヒドロキシドイオンを吸収することができた。水酸化ナトリウム濃度は、しかしながら、再度試料0の大きさと同様の等級の大きさをとり、そして実質的に同様のままである。炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの含有率は、実質的に未変化のままである。
【0047】
シアニドにおける明らかな低減、及びTOCにおけるさらにより低い著しい低減がある。前記試験は、樹脂Lewatit MonoPlus M600が、干渉シアニドを方法溶液から保持することを示す。該試験は、樹脂の吸収能力が、達せられなかったことを意味し、かつシアニド含有率が60分後でさえ落ちたことも意味する。Lewatit MonoPlus M500との比較において、シアニド濃度が、最初に、最初の留分(試料1)における亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及び錯化剤の濃度における低減によって伴うことが明らかである。ニッケル濃度は、実質的に全体の試験期間にわたって一定のままである。
【0048】
ハルセル試験を、板状層及び亜鉛−ニッケル組成の外観を試験するために実施した。試験を、イオン交換樹脂を使用して再生した新しく、縁上で、及び電解質上で、ハルセルで実施した。この試験を、元の状態(エイジングされていない電解質)にどれだけ効率的に近くなるかの示度を与えるために設計する。前記ハルセルを、どれだけ損失がイオン交換方法中にメッキ速度に影響を及ぼすかを確立するために使用することができる。
【0049】
該ハルセルを、表1のように電解質250mlで充填した。ニッケル陽極を、陽極として使用した。一度ハルセルプレートを浄化した後、1アンペアの電流を適用した。被覆時間は15分であった。
【0050】
低い電流密度範囲(図2を参照)は、均一な及び明るいメッキの結果を示す。イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus M600を使用して処理した電解質を、全体の電流密度スペクトルを越えて均一な及び明るい表面を明らかにした。該表面の評価は、明るいとして分類される。したがって、シアニドをアルカリ性の亜鉛−ニッケル電解質から除去するために使用されるイオン交換法は、著しく板状層の外観を改良する。より重要なことには、しかしながら、前記外観が、堆積物の外観の原因である有機ではない添加物が、メッキ浴からイオン交換法によって除去されないことを示す、悪化されたあらゆる方法ではないことが見出されている。
【0051】
これは、TOC含有率の低減が有機錯化剤及び有機的に結合したシアニド(ニトリル)の低減によってであることの結論を導く。同様の結果を、Lewatit MonoPlus M500イオン交換樹脂で処理した電解質を使用して得た。
【0052】
図2において示された高い及び低い電流密度範囲は、層の厚さ及び亜鉛−ニッケル層の合金組成を決定するための測定点として作用する。ハルセル中での被覆法後に、その層の厚さを、X線蛍光測定装置を使用して、2つの測定点A(高い電流密度範囲)及びB(低い電流密度範囲)で測定した。5回の測定を、それぞれの測定点で取った。電気メッキにおいて、X線蛍光解析は、層の厚さの早い及び非破壊の測定のために使用した標準測定法である。この測定方法を使用して、層の厚さ並びにニッケル及び亜鉛の量を確認することができた。そして層の厚さ分布に基づいて、電解質パラメータに対して、イオン交換法の効果に関する結論を描くことができた。再生法を使用して得られるべき基礎又は関連する値は、新たに含まれる電解質の層の厚さの分布である[第10表]。
【0053】
新しい及びエージングされた電解質のための層の厚さ分布の比較[第11表]は、どれだけ効率レベルが早いか、及びそれによって電解質の分離速度も寿命増加として低下することも示す。バッチに関する同様のマトリックスを維持するために、第11表のように古い電解質同様にイオン交換法による損失のための金属イオンの量を補充する必要がある。最初の濃度(試料0)はこのために必要である。
【0054】
【表11】

【0055】
【表12】

【0056】
エージングされた電解質の再生及び補充[第12表及び第13表]後にハルセル試験は、板状層の厚さが、測定点A及びBで、相当に高く、かつエージングされた電解質[第11表]と比較して、エージングされていない電解質に近いことを示す。その結果は、ニッケル及び亜鉛組成が層において変化していないことも示す。したがって、シアニド及び有機的に結合したシアニドを除去することが、アルカリ性の亜鉛−ニッケル電解液の分離速度を加速すること、及び前記浴の質が、イオン交換系を使用することによって、エージングされたメッキ浴と比較して著しく増加されることをあげることができる。
【0057】
【表13】

【0058】
【表14】

【0059】
電解液の効率を、さらに、炭酸ナトリウムを凍結することによって増加することができる。凍結方法後に炭酸ナトリウムの低い濃度でエージングさせた電解質における層の厚さ[第14表]と、凍結されていない高濃度炭の酸ナトリウムでエージングさせた電解質[第11表]との比較は、炭酸ナトリウム濃度における減少が少なくとも分離速度に影響することを示す。金属組成は影響されないことの証明がなかった。電解質の効率の試験は、一度炭酸ナトリウムを凍結した後に、電解質の効率において7%の増加を示した。炭酸ナトリウムの凍結及びイオン交換体を使用するシアニド及びニトリルの除去による亜鉛−ニッケル電解質の再生は、特に有利である。
【0060】
【表15】

【0061】
マクロスローイングパワー測定を使用して、どれだけ効率的にイオン交換法がエージングされた電解質を元の状態(エージングされていない電解質)にもっていくかを評価することもできた。電解質250mlを、第1表のようにハルセル中に再び充填した。前記ハルセルプレートは、15分間亜鉛メッキした。イオン交換体及び凍結法の結果のスローイングパワー及び再生効果を評価することを可能にするために、種々の電解質のスローイングパワー性能を評価した。それを行うために、被覆されるべき、かつプレートの低い縁から30mmであったハルセルプレートを、センチメートルの間隔で測定した。その測定を、X線蛍光測定法を使用して行った。前記プレートの層の厚さ分布から、電解質に対する再生法の効果を決定することができた。測定された層の厚さは、前記プレートの長さ[図4]を越えて適用した。金属化の15分後に、ハルセルプレートの全体の長さを越えて、Lewatit MonoPlus M500及びLewatit MonoPlus M600で再生させた電解質が、エージングさせた浴を使用して達成されることができた厚さよりも著しく高い層の厚さを作り出したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有有機添加物、可溶性亜鉛塩及び場合により他の金属塩を含有する酸性又はアルカリ性の亜鉛もしくは亜鉛合金メッキ浴から亜鉛又は亜鉛合金の機能的層を堆積するために使用される方法であって、以下の工程:
(i)前記構成成分を含有する亜鉛又は亜鉛合金浴を提供する工程、
(ii)亜鉛又は亜鉛合金層を、公知の方法によって被覆されるべき基材上に電気的に堆積する工程、
(iii)前記亜鉛又は亜鉛合金浴の少なくとも一部を除去し、そして特にシアニドイオンを分離するために設計されたイオン交換樹脂を含有する装置を介して除去される部分を運搬する工程、
(iv)運搬された部分を前記亜鉛又は亜鉛合金浴に戻す工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記他の金属塩が、Fe、Ni、Co及びSn塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の方法工程:(v)使用した構成成分を前記亜鉛又は亜鉛合金浴から補充する工程も予定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記亜鉛又は亜鉛合金浴の一部の除去及びその戻しが、連続法又は不連続法であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記亜鉛又は亜鉛合金浴が、光沢剤、表面活性剤及び窒素含有錯化剤から選択される有機添加物を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記窒素含有錯化剤が、ポリアルキレンアミンを含有する群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
亜鉛−ニッケル合金をメッキするために使用される直流電気浴であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂が、強アルカリのアニオン交換樹脂からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂が、官能基として第四級アミンを有するイオン交換樹脂からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂を、塩化ナトリウム溶液との接触を介して、そして水酸化ナトリウムを使用する調整によって再生することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記塩化ナトリウム溶液が、5〜35質量%の塩化ナトリウム濃度で存在することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記塩化ナトリウム溶液の温度が、イオン交換カラム上での再生中に10〜70℃であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、追加の工程iii b)10℃未満である温度で炭酸ナトリウムの分離のために前記亜鉛又は亜鉛合金浴を冷却する工程、を含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法を実施するために使用される装置であって、亜鉛又は亜鉛合金浴を取るための容器(1)、連結ポンプ系(2)であって、イオン交換体(5)及びイオン交換樹脂(5)を介して運搬される亜鉛又は亜鉛合金浴のための、前記容器(1)と同一であってよい収集装置(7)を有する、亜鉛又は亜鉛合金浴を取るためのイオン交換装置(4)に連結された、連結ポンプ系(2)を含む、装置。
【請求項15】
前記イオン交換装置(4)中の前記イオン交換樹脂(5)が、噴霧レジスタ、噴霧孔又はふるい上にあることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記容器(1)と前記イオン交換装置(4)との間に、溶液を冷却し、かつ炭酸ナトリウム固体を分離するための凍結装置(8)があることを特徴とする、請求項14又は15に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−509401(P2012−509401A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536794(P2011−536794)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008408
【国際公開番号】WO2010/057675
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(300081877)アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D−10553 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】