説明

【課題】首及び頭の形状に合った形状で頭部を保持して冷却することが出来、体に負担がかからず、冷却機能が持続するとともに寝心地も良好である枕の提供。
【解決手段】 本発明に係る枕1は、中央部に凹部7を備える本体3と、上記凹部7に組み込まれる保冷体5とからなる。この凹部7が人の首筋が位置する側の本体側壁8の中央部に開口している。上記保冷体5が、封入用フィルムと、この封入用フィルムに内封されており、媒体によって膨潤された形態を取っていない架橋高分子からなる保冷材とを含む。上記保冷材は、未発泡のポリウレタン樹脂からなり、そのアスカーF硬度が10以上50以下であるのが好ましい。また、凹部7が本体側壁8に開口している開口部の深さが、この本体側壁8の高さの1/3以上であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕に関する。特に、本発明は、人の首筋と頭部との冷却に使用される枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から頭部の冷却には、水枕が用いられてきた。水枕は、氷や水の入れ替えが面倒である。入れ替えは、水を取り扱うための場所や容器等が必要である。この煩わしさを除くために種々の工夫がなされている。例えば、水を不要とするカプセル入り枕の発明が特開2002−330986号公報に記載されている。この枕においては、氷の代わりに冷却されたカプセルが充填されている。
【0003】
また、枕カバーに設けられたポケットに保冷具が収容される枕の発明が特開2001−297号公報に記載されている。この保冷具として、市販のものが用いられ得る。
【0004】
2枚のシート材からなる即冷型冷却包装体の発明が、特開2001−198151号公報に記載されている。この包装体の一方のシート材には、塩水を吸収してゲル化する少なくとも1種の吸水性物質の粉体が収容されており、他方のシート材には水を加えて含水させゲル化した少なくとも1種の吸収性樹脂と防カビ・防腐剤とが収容されている。この2つのシート材を連通させることにより、冷却剤と水とが接触して吸熱溶解反応が生じ、速やかな冷却作用が発揮される。
【0005】
枕芯材(本体)の中央部の低い部分に設けられた凹穴にゲル状材が充填された袋体が填め込まれてなる枕の発明が、特開平7−163448公報に記載されている。このゲル状材としては、高吸水性樹脂と水を混含させたもの、及び連通気泡のポリウレタンフォームに水を入れたものが挙げられている。
【特許文献1】特開2002−330986号公報
【特許文献2】特開2001−297号公報
【特許文献3】特開2001−198151号公報
【特許文献4】特開平7−163448公報
【特許文献5】特開平7−265348号公報
【特許文献6】特開平7−298971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2001−297号公報の枕に用いられる保冷具は単純なシート状であり、厚みが薄い。そのため外気との接触面積が大きく、保冷能力に劣る。そして、特開平7−163448公報の枕に用いられる袋体においては、凹穴の体積が限られているので、保冷能力が不足し、また、袋体の位置が頭部の位置に限られているので、頭部の一部を保冷するにとどまるという問題がある。
【0007】
枕の形状は、起立姿勢と同様の頸椎の形を保持し得る形状が体に負担がかからなくてよいとされている。そのためには枕の形状を一定に保持しつつ、枕に頭部を当てたときの安定性と寝心地とを担保する必要がある。枕の形状を維持するには、復元性を備えることが必要である。上記の枕及び包装体は、従来の水枕と同様に、いずれも頭部が動くままに変形し、形状保持機能を有しない。一方、形状保持能力が大きすぎると形状追随性が悪いため頭部の安定性や寝心地が悪くなる。すなわち、安定性と寝心地をよくするには、可撓性が要求される。
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、適度な硬さ及び反発性を有しているので、首及び頭の形状に合った形状で頭部を保持して冷却することが出来、体に負担がかからず、冷却機能が持続するとともに寝心地も良好である枕の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る枕は、封入用フィルムと、該封入用フィルムに内封されており、媒体によって膨潤させられた形態を取っていない架橋高分子を含むゲル状材とを有する保冷体と、その側壁の中央部で開口した凹部を有しており、上記凹部に上記保冷体が組み込まれるように構成されている本体とを備える。
【0010】
好ましくは、上記ゲル状材は、その融点が10℃以上20℃以下であり、粒径1μm以上50μm以下の粉体状であり、有機化合物からなる潜熱蓄熱材を、合成樹脂皮膜のカプセルに収容した状態で10質量%以上40質量%以下含有する。
【0011】
好ましくは、上記保冷体の温度を5℃に設定した後、26℃の雰囲気下、体温が36℃前後の成人男性が寝たときに頸部が接触する位置の表面温度が、5℃以上25℃以下に少なくとも1時間保持される。
【0012】
好ましくは、上記保冷体の温度を20℃に設定し、直径10mmの圧縮子で試験速度30mm/minで圧縮したときのばね定数が0.1N/mm以上0.7N/mm以下であり、ヒステリシスロスが5%以上50%以下である。なお、厚みが30mm未満の場合は、重ねて測定する。
【0013】
ここで、ばね定数とは、直径10mmの圧縮子を試験速度30mm/minの条件で押入したときの応力/変位の値をいう。また、ヒステリシスロスとは、応力−歪み曲線におけるヒステリシスループの面積割合を示す。ヒステリシスロスの算出方法は、次の通りである。まず、ゲル状材に対して圧縮応力Scを負荷したときと、この応力Scを除荷したときとの両方でゲル状材の撓み量Sの変化を測定する。次いで、圧縮応力Scを増加させたときに得られる上昇曲線の積分値と、圧縮応力Scを減少させたときに得られる下降曲線の積分値とから、ヒステリシスループの面積S −S を算出する。さらに下記数式(1)によって、上記上昇曲線の積分値Sに対するヒステリシスループの面積(S −S )の割合(%)を求める。
(S −S )/S ×100 ・・・(1)
【0014】
好ましくは、上記ゲル状材は、架橋した未発泡のポリウレタン樹脂を含み、アスカーF硬度が10以上50以下である。
【0015】
保冷体はシート状とされてもよい。好ましくは、シート状の保冷体の厚みは、25mm以下である。シート状の保冷体は、巻かれた状態又は折りたたまれた状態で、容器に収納され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の枕に備えられる保冷体は、冷蔵庫内に収納する等して、予め冷却しておくことによって、その後に室温下で放置された場合であっても、5℃以上25℃以下という、適度に冷たいと感じる温度が長時間に亘って保持される。この温度は、頭部及び頸部を冷却して快適な安眠を得るのに適した温度である。しかも、この温度範囲内であれば、凍傷が生じるおそれがないことから、乳幼児及び高齢者の頭部等を冷却するのに安心して用いられ得る。
【0017】
保冷体はゲル状材を含んでおり、このゲル状材自体が形状保持性と弾性とを備えているので、枕に使用された場合に、首筋及び頭の形状に合った形状で頭部が保持され、冷却され得るので、体に負担がかからない。
【0018】
なお、特開平7−265348号公報には、頭部を体温より略5〜10℃低い温度で保冷するための保冷材入りの枕の発明について記載されており、特開平7−298971号公報には、加熱されても略32℃の温度を保つ保冷材入りの枕の発明について記載されている。これらの枕につき上記温度範囲に保冷温度が設定されているのは、夏の暑い夜にある程度の冷たさが感じられる程度であれば、安眠効果が得られるという考えに基づくものであると考えられる。しかし、後述する実施例より明らかであるように、体温より略5〜10℃低い温度で保冷するといった条件では、外気温が25℃を下回らない熱帯夜等において安眠を得るには不十分である。また、特開平7−265348号公報及び特開平7−298971号公報に記載の枕では、保冷材を入れている袋体が細分化されていることから、頭部に触れる部分の保冷材の質量が少なくなり、しかも熱伝導の効率も低下することから冷却効果が持続しないという問題がある。
【0019】
本発明の枕に含まれる保冷体は、5℃に冷却した場合においても圧縮応力及びヒステリシスロスが上記範囲内に維持され、適度な硬さ及び反発性を示す。従って、本発明の枕は、夏場、特に熱帯夜のような暑い環境下において安眠を得る寝具として好適である。
【0020】
潜熱蓄熱材がカプセルに収容されている場合は、温度の変化に従って潜熱蓄熱材に相変化が生じたときにおいても、カプセル自体が固体又は粉体状として維持され得、潜熱蓄熱材を含むゲル状材全体の状態に影響が生じるのが防止される。
【0021】
中央部に凹部を備える本体と、この凹部に組み込まれる保冷体とを備える枕によれば、保冷体により、首筋及び頭の形状に合った形状で頭部を保持した状態で冷却されるので、体に負担がかからない。そして、組み込まれた保冷体による冷却効果が持続する。また、組み込まれる保冷体は複数種類あり、取り替えられ得る。保冷体が選択されることで、体格、その他使用される人及び状況に応じて調節され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0023】
本発明の一実施形態にかかる枕1が図1から図4に示されている。図1は、枕1の斜視図である。図2(a)は、枕1の平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は右側面図である。図3は図2のIII−III線に沿った断面図である。図4は図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【0024】
枕1は、本体3と保冷体5とからなる。本体3は、保冷体5を組み込むための凹部7を備えている。この凹部7は、人の首筋が位置する側の本体側壁8の中央部において、本体奥行き方向に切り欠かれたものである。人の首筋が位置する側は、本体3の一方の長辺側に定められる。保冷体5は、上記凹部7に填るように、ほぼ凹部7の形状に沿う輪郭を有する。保冷体5がこの凹部7に組み込まれる。このように本体3と保冷体5とが組み合わされて、枕1が使用される。本体3と保冷体5とが組み合わされた輪郭の平面形状は、長方形である。この枕1の大きさは、特に制限はないが、通常、横幅Lが400mm以上1000mm以下、奥行きWが300mm以上500mm以下及び上記側壁8の高さHが10mm以上190mm以下である。
【0025】
図2(b)に示されている例では、本体側壁8に開口している凹部7の開口部の深さPは、この本体側壁8の高さHの約83%である。この開口部の深さPが浅すぎる場合は、保冷体5の容積が小さくなり十分な保冷効果が得られない。好ましくは、この開口部の深さPは本体側壁8の高さHの1/3以上である。開口部の深さPは側壁8の高さHと等しくてもよい。後述するように、凹部7の形状は、人の体型を考慮して決まる保冷体5の形状に対応して規定される。この凹部7に組み込まれる保冷体5の形状(主に高さ及び曲面形状)が変えられることが考慮される。すなわち、凹部7は、保冷体5と組み合わされて枕1全体の形状が滑らかになるように形成される。
【0026】
本体3は、人の頭を支持できる硬さを備えるとともに、可撓性と復元性とを備えていることが好ましい。そのため、本体3には、ゴム又は合成樹脂材料が用いられることが好ましい。ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が用いられる。合成樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリブタジエン等の熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上が用いられ得る。本体3の材質は、可撓性及び種々の硬さを調節できるという面から、ポリウレタンの発泡体がより好ましい。なかでも低反発性のポリウレタン発泡体がさらに好ましい。本体3は、これらの材料が射出成形、押出成形等の成形方法で成形されることによって得られる。
【0027】
保冷体5は、その硬さと反発性とが、頭部や頸部が載置される枕として適したものとなるように設定される。保冷体5の可撓性(柔軟性とも表現される)が大きく形状保持能力が小さい場合は特に、凹部7によって保冷体5が所定の形状の範囲に保たれるように形成される。例えば、本体3の材質は、可撓性が小さく形状保持性が高いものが選択される。または、凹部7を構成する周側壁等の表材が部分的に厚くされ、凹部7の形状が変化しにくいようにしてもよい。また、凹部7の周辺部が本体3の材質よりも高弾性率の材質からなるようにしてもよい。
【0028】
凹部7には、後述するように保冷体5が取り替えられて組み込まれる。そのため、凹部7は保冷体5の形状に沿った形状を有する。しかし、別に作られた複数種類の保冷体5の寸法の誤差を吸収する等のために多少の隙間はあってもよい。隙間がない場合でも本体3及び保冷体5が可撓性を有するので、この可撓性の範囲内で保冷体5は、組み込まれ得る。ただし、隙間が大きすぎると頭部の沈み込みが深くなりすぎる等、所定の形状が保てなくなる場合があるので、好ましくない。
【0029】
凹部7は、使用されるときに首筋及び後頭部が載る位置と大きさとを基準にして設けられる。この枕1を使用したとき、人の起立時の首筋から後頭部の形状に一致する曲面が形成される。この曲面形状は、形状保持性を有する本体3に支持された、柔軟性を有する保冷体5によって形成されるものであってもよい。
【0030】
図3及び図4に示されているように、本体3の人の後頭部が位置する部分は、高さが低くなっている。枕1の肩に近い後頸部が位置する部分は、高さが高くなっている。保冷体5が大きい場合は、この形状は、主として保冷体5によって保持される。保冷体5が小さい場合は、主として本体3の形状によって所定の形状が保持される。
【0031】
本体3は、保冷体5が組み込まれた状態で、変形に追随できる可撓性を備えている。人は、頭の向きを変えたり位置をずらしたりする。変形追随性を良くするためには低反発弾性率の材質がよい。この凹部7を含めて本体3は、ある程度の変形追随性がないと使い心地が悪い。そのため、枕1が適度の可撓性と復元性を備え、頭部の重量を頭部表面全体に分散させて支持することができるようにする。
【0032】
本体3は、表面に複数の窪みDを備えていることが好ましい。この窪みDにより、人の頭部等が枕1に当てられたときに頭部等と本体3との密着が防止される。すなわち、頭部等と本体3との間に隙間ができる。この隙間が通気性を備えるため、べたつき感やムレが生じない。この窪みDは、表面に、溝、穴、突起等が設けられることにより形成される。枕1は、表面の長手方向に一致する方向に複数の溝を備えている。この溝の深さ、間隔等は、本体3及び保冷体5の性状に合わせて使い心地がよいように設定され得る。
【0033】
保冷体5は、保冷材9とこの保冷材9が封入される封入用フィルム11とを備えている。保冷体5の表面形状は、起立姿勢における首筋から後頭部までの曲面に合うように形成される。保冷体5は、本体3とは別に作製され、独立している。保冷体5は、1つの本体3に対して複数種類準備され得る。保冷体5のみ本体から取り外されて冷却又は冷凍され得る。本体の凹部7に組み込まれる限り、高さ(厚み)、表面の曲線形状等の形状が異なる保冷体5に取り替えることができる。また、保冷材9の硬さ、保冷性能等の異なるものを複数種類準備してもよい。これらのものを状況に応じて選択することができる。
【0034】
保冷体5の大きさは、通常、横幅Nが100mm以上500mm以下、奥行きMが150mm以上500mm以下及び高さが10mm以上190mm以下である。本体3と組み合わせて、首を支え得るように保冷体5の高さが調節される。保冷体5の高さは、使用する人の後頸部の深さと横臥したときの肩と側頭部との距離により、また好みにより変わる。
【0035】
上記したように、この保冷体5は、本体側壁8の中央部に一定の厚みを備えて填め込まれることで枕1の一部を形成する。保冷体5が本体3と接する三方の側面は、発泡体等からなる本体3により外部から保護されている。この側面に隣接する本体3の発泡体には保温機能があるため保冷体5の側面からの熱伝導が少ない。従って、保冷体5に対して外部からの熱が伝えられる枕1の表面側の面積は相対的に小さくなっている。保冷体5は、この組み合わせ構造により外部からの余分な熱が伝わりにくい。この枕1は、従って、冷却作用が持続する。
【0036】
保冷体5も、頭や首の重さを支えつつある程度の形状保持能力を備えている。この機能によって、人が頭を枕1に置いたとき、首の負担を減らすことができる。この形状保持性が大きすぎると硬くなりすぎる傾向がある。保冷体5が硬すぎると頭や首の位置がずれた場合等に変形追随性が不足する。ある程度の変形追随性がないと使い心地が悪い。保冷体5は、変形に追随できる可撓性を備えている。適度の可撓性と復元性を備え頭部の重量を頭部表面全体に分散させて支持することができるようにする。
【0037】
保冷体5は、通常、表面温度が5℃以上30℃以下の範囲である状態で用いられる。保冷体5の表面温度は10℃以上25℃以下が好ましい。より好ましくは12℃以上20℃以下である。保冷材9として、媒体を含まない高分子からなるゲル状材が用いられている。この媒体を含まない架橋高分子からなるゲル状材は、ゲル状材自体が形状保持性と弾性とを備えている点で、保冷材9として好ましい。ここで、媒体を含まないというのは、媒体によって膨潤させられた形態を取っていないという意味であり、添加物として少量のオイル等を含む場合とは区別される。具体的には、媒体の含有量が、架橋高分子に対して50質量%以下である。
【0038】
このゲル状材は、未発泡のウレタンが架橋されて得られる。ポリウレタン樹脂は、ポリオール、ポリイソシアネート及び架橋剤(硬化剤)が配合され、架橋されて得られる。代表的な硬化方法としては、予めポリオールとポリイソシアネートとを反応させるプレポリマー法、上記成分が同時に配合されるワンショット法が挙げられる。ゲル状材は、アスカーF硬度が10以上50以下であるのが好ましい。アスカーF硬度がこの範囲に調整されるのであれば、この未発泡ポリウレタンはいずれの方法から得られてもよい。本発明において、アスカーF硬度は、JIS−K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠する方法によって測定される。具体的な測定に際して、高分子計器株式会社のアスカーF硬度計が用いられ得る。被測定体の粘着性が強い場合は、硬度計と被測定体の間に被測定体の自由な歪みを妨げないフィルムを介在させて被測定体の硬度が測定される。
【0039】
アスカーF硬度が10未満の場合は、軟らかすぎて安定性に欠ける。この観点から、より好ましくは、アスカーF硬度は、20以上である。さらにはアスカーF硬度は、25以上が好ましい。アスカーF硬度が50を超えると、触感が硬く寝心地が悪くなる。この観からアスカーF硬度が40以下がより好ましい。より好ましくは、アスカーF硬度は35以下である。
【0040】
上記ウレタンプレポリマーの材料となるイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、液状MDI等の変性MDI、水素添加トリレンジイソシアネート(TDI)、水素添加MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートが挙げられる。
【0041】
上記ポリオールとしては、平均官能基数が2から4であり、平均分子量が50から6000のものが用いられる。例えば、低分子量の2価又は3価のアルコール、ポリエーテルポリオール類、縮合ポリエステルポリオール類、重合ポリエステルポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール類等が使用できる。好適なポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブタンジオール等の低分子量アルコール類、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−トリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリアルキレンエーテルポリオール類等が挙げられる。
【0042】
ポリウレタンプレポリマーは、例えば、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)と、ポリオール中に含まれる水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が1.3から5の割合でイソシアネート化合物とポリオールとを配合し、50℃から120℃程度で3から10時間程度反応させることにより合成される。これらの粘度は、常温で低粘度の液状を呈する程度であることが作業性等の面から好ましい。ポリウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基含有量は、通常1質量%から15質量%である。好ましくは、イソシアネート基含有量は、2.5質量%から10質量%である。ポリウレタンプレポリマーの液粘度は、2000から20000CPS(25℃)であるのが作業性の面から好ましい。
【0043】
硬化剤としては、活性水素を有する化合物が用いられる。例えば、ポリオールを含有する硬化剤がウレタンプレポリマーの硬化に好適に用いられる。中でもポリ(オキシエチレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレンプロピレン)ポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールが好適であり、その分子量が300から6000、官能基が2から4のものが好ましい。
【0044】
このゲル状材の硬度の調整は、硬化剤の種類や配合量を変えて架橋度を変化させたり、触媒等の添加剤を使用したりすることによってなされる。触媒としては、トリレンジアミン等のアミン系触媒、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジウラレート等が1種又は2種以上で用いられる。ポリオール、ポリイソシアネート及び硬化剤を含む配合物は、50から150℃で1から120分程度加熱されて架橋される。
【0045】
この未発泡ポリウレタンの組成物に潜熱蓄熱材を配合することがより好ましい。潜熱蓄熱材として、保冷材9の温度が上昇するときに、徐々に融解し、融解するときにこの熱を吸収するものが用いられる。保冷材9用の潜熱蓄熱材としては、融点が5℃以上30℃以下のものが好ましく、特に10℃以上20℃以下が好ましい。n−テトラデカン(融点5.9℃)、n−ペンタデカン(融点9.9℃)、n−ヘキサデカン(融点18.2℃)等のパラフィン;カプロン酸トリデシル(融点7℃)、カプロン酸ペンタデシル(融点16℃)、ラウリン酸メチル(融点5℃)、トリデカン酸メチル(融点20℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、ミリスチン酸エチル(融点12℃)、ペンタデカン酸メチル(融点19℃)、ペンタデカン酸エチル(融点14℃)、パルミチン酸ブチル(融点18℃)、パルミチン酸アミル(融点19℃)等の脂肪族飽和モノカルボン酸エステル;コハク酸ジメチル(融点19℃)、アジピン酸ジメチル(融点9℃)、1,9−ノナンジカルボン酸ジメチル(融点20℃)、1,9−ノナンジカルボン酸ジエチル(融点16℃)、1,10−デカンジカルボン酸ジエチル(融点16℃)、1,11−ウンデカンジカルボン酸ジエチル(融点20℃)等の脂肪族飽和ジカルボン酸エステル;1−デカノール(融点7℃)、1−ウンデカノール(融点16℃)、2,3−ジブロモ−1−ペンタノール(融点13℃)等のアルコール等が挙げられる。なかでも、n−ペンタデカン等のn−パラフィンが、相変化安定性が良好であり蓄熱量が大きいという点でより好ましい。
【0046】
本発明に係る潜熱蓄熱材については、保冷体5の保冷効果が適度なものとなるように、さらには、保冷体5が硬くなり過ぎたり、逆に柔らかくなり過ぎたりしないようにするという観点から、ゲル状材の他の成分との組み合わせや、ゲル状材中での潜熱蓄熱材の含有量を設定する必要がある。
【0047】
このn−パラフィン等の潜熱蓄熱材は、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂等の樹脂皮膜で形成されたカプセルに収容されているのが好ましい。この潜熱蓄熱材含有カプセルが、ウレタンプレポリマーの組成物に配合される。潜熱蓄熱材含有カプセルの具体例としては、「蓄熱材マイクロカプセル固形造粒物」(三菱製紙株式会社総合研究所製)が挙げられる。この「蓄熱材マイクロカプセル固形造粒物」は、主成分としてn−パラフィンを含む混合物がマイクロカプセルに収容されたものである。このn−パラフィンの融点は、15℃程度であるので長時間、快適に低温が維持される。
【0048】
n−パラフィン等の潜熱蓄熱材を含むカプセルは、ゲル状材の総量に対して10質量%以上40質量%以下とするのが好ましい。該カプセルの含有量が10質量%を下回ると、適切な温度を長時間維持することが出来なくなるおそれがある。逆に、40質量%を超えると、ゲル状材の含有量が少なくなり過ぎることから、その形状が保持されなくなったり、ゲル状材の温度が低いときに硬くなり過ぎるおそれがある。該カプセルの含有量は、特に、下限が20質量%、上限が30質量%であるのが好ましい。
【0049】
n−パラフィン等の潜熱蓄熱材は、この潜熱蓄熱材を含むカプセルの総量に対して40質量%以上90質量%以下であるのが好ましい。潜熱蓄熱材の含有量は、特に、下限が50質量%、さらには60質量%、上限が80質量%、さらには60質量%であるのが好ましい。
【0050】
潜熱蓄熱材を含むカプセルの融解熱は、100J/g以上であるのが好ましく、150J/g以上であるのがより好ましく、200J/g以上であるのが特に好ましい。
【0051】
ゲル状材は、例えば所定形状の封入用フィルム11に形成材料を充填し、架橋して得られる。ゲル状材は、また、形成材料を金属の型に流し込んだり、押出機で押出成形した後、架橋して得られるものでもよい。
【0052】
ゲル状材の封入用フィルム11としては、ある程度の外力に対しても破損することなく、ゲル状材が染み出したり、ゲル状材によって変質したりすることがないものであれば特に制限されるものではない。特に、ゲル状材が2液硬化型のポリウレタンやシリコーンゴム等である場合、封入用フィルムからなる袋にポリウレタン等の原材料を注入した状態で架橋、硬化させるときにおいては、硬化後のポリウレタン、シリコーンゴム等だけでなく、これらを形成する原材料についても通過させることがない材質を選択しなければならない。この封入用フィルム11としては、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン-テレフタレート(PET)、ポリブチレン-テレフタレート(PBT)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂からなるフィルムが挙げられる。また、これらの複合フィルム、積層フィルムであってもよく、表面にアルミニウム等を蒸着したフィルムであってもよい。上記例示の封入用フィルムの中では、本発明の保冷体に適した機械的特性が得られやすく、柔軟性、伸縮性、耐久性に優れたポリウレタンを用いるのが好ましい。特に、ゲル状材として熱硬化性ポリウレタンを使用するときは、フィルムにポリウレタンを用いることによって、両者の接着性がよくなり、保冷体の使用時にフィルムからゲル状材が剥離するのが防止される。
【0053】
封入用フィルム11の厚みは、0.01mm以上1.0mm以下であるのが好ましい。0.01mmよりも薄いと封入用フィルム11が破れやすくなり耐久性が劣る恐れがある。この観点から封入フィルムの厚みは、0.02mm以上が好ましい。より好ましくは0.04mm以上である。1mmより厚いと可撓性が乏しく、人の頭が接したときに硬く感じられ寝心地が悪くなる。この観点から封入フィルムの厚みは0.5mm以下であるのが好ましい。より好ましくは0.3mm以下である。
【0054】
引張強さが45〜110MPaであり、伸び率が100〜800%であり、引裂強さが100〜200N/mmであるのが好ましい。なお、封入用フィルム11の引張強さ及び伸び率はJIS K7181に規定の方法により測定したものであり、封入用フィルム11の引裂強さはJIS K7128−3規定の方法により測定したものである。
【0055】
封入用フィルム11の厚みが上記範囲を下回ると、破れやすくなるために耐久性が悪くなるおそれがある。逆に上記範囲を超えると、枕の柔軟性が低下するおそれがある。フィルムの厚みは上特に0.08〜0.15mmであるのが好ましい。また、封入用フィルム11の引張強さ、伸び率、引裂強さが上記範囲に達しなければ、破れやすくなって耐久性が低下するなるおそれがあり、上記範囲を超えると、使用時に身体の形状に沿って自由に変形させることが出来なくなって使用感が低下したり、耐久性が低下したりするおそれがある。
【0056】
上記したように得られた保冷体5は、温度を20℃に設定したときの保冷体5のばね定数は0.1N/mm以上0.7N/mm以下であるのが好ましい。また、ヒステリシスロスが20%以上50%以下であるのが好ましい。ばね定数が0.1N/mmよりも小さいと柔らか過ぎ、逆に0.7N/mmよりも大きいと硬過ぎる。下限は、好ましくは0.2N/mm、さらに好ましくは0.3N/mmであり、上限は、好ましくは0.6N/mm、さらに好ましくは0.5N/mmである。また、ヒステリシスロスは20%よりも小さいと硬過ぎ、逆に50%よりも大きいと柔らか過ぎる。ヒステリシスロスの上限は、30%であるのが好ましい。
【0057】
本発明に係る保冷体5の質量は、これを枕に組み込む観点から250〜1500gの範囲に設定するのが好ましい。250gを下回ると蓄熱量が少なくなって、適温が保持できなくなるおそれがある。1500gを超えると、持ち運びが不便になり、冷やすのに時間がかかったり、ゲル状材の内部まで均一に冷却するのが困難になったりするおそれがある。
【0058】
上記ゲル状材が含まれた保冷体5の製造には、まず人の首筋及び頭の形状に沿うように作られた成形金型が準備される。この金型表面が上記封入用フィルム11で覆われる。この封入用フィルム11は、エア吸引等によって金型表面に密着される。この封入用フィルム11で覆われた金型に保冷材9の本体となるゲル状材用の未発泡ポリウレタン配合物が充填される。上記未発泡ポリウレタン配合物の上に、この配合物よりも架橋度が高く設定された未発泡ポリウレタン配合物が充填される。これらの配合物が50℃以上150℃以下の所定の温度で、1分から120分の所定時間加熱されて架橋され、上記架橋度が高く設定された未発泡ポリウレタン配合物が封入用フィルム11と一体化して、保冷体5が得られる。
【0059】
このようにして得られた保冷体5は、その底面に厚さが2mm以上15mm以下の非柔軟性基盤部13が形成される。この厚さが2mm未満では、封入用フィルム11とゲル状材との接合が不十分になる恐れがある。この観点から非柔軟性基盤部13の厚さは、3mm以上であるのがより好ましく、さらには5mm以上であるのが好ましい。上記厚さが15mmを超えると、ゲル状材の柔軟性が減殺される恐れがある。この観点から、非柔軟性基盤部13の厚さは、12mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下である。この保冷体の封入用フィルム11と保冷材9とは一体性が高いため、封入用フィルム11が破れにくく、保冷体5の形状安定性も高い。
【0060】
この保冷体5の表面には、複数の窪みDを備えるのが好ましい。保冷体5がゲル状材からなる場合、成形用金型により窪みDが形成される。この窪みDにより保冷体5に通気性が備えられる。この保冷体5では、人の頭や首が保冷体に直に接したときに人の発汗によるムレが防止される。この保冷体5には、上記封入用フィルム11の外装として本体3と同様外装カバーを着けることができる。この外装カバーの材質としては、公知のカバーと同様でよい。外装カバーとしては、シルク、綿、羊毛等の天然繊維又はポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の合成繊維が用いられる。これらの繊維からなる不織布、織布、編布等が用いられる。肌触りを良くするという観点から、これらの積層体及び空隙率の大きいものが好ましい。この外装カバーには、天然皮革又は合成皮革が用いられてもよい。ただし、この外装カバーは、上記表面の凹凸形状の機能が失われないように厚み等が考慮される。
【0061】
人の頭部と頸部とが冷やされる場合、入眠時には体温が2時間で1℃下がるのがよいといわれている。枕1が使用されるとき、予め冷蔵庫等で冷やされていた保冷体5が本体3に填め込まれる。この保冷体5が枕1にあずけられた後頭部や首筋を効果的に冷やす。この保冷体5は、上述のように余分な熱が伝わりにくいので保冷性がよい。従って、保冷体5は、長時間にわたって冷却作用を発揮する。
【0062】
図5は、本発明の他の実施形態に係る枕17が示された平面図である。図6は、図5の枕17が示された正面図である。図7は、図5の枕が示された右側面図である。この枕17は、本体19と保冷体21とを備えている。本体19は、人の首筋が位置する側の本体側壁23の中央部に開口する凹部25を備えている。それぞれの図面では、本体27が上側に、この本体に填め込まれる保冷体29がその下側に示されている。図5から図7に示されているように、凹部25は、本体側壁23の中央部でその奥行き方向に開口している。凹部25は、本体19が切り欠かかれて形成されている。凹部25の底となる部分の本体19の厚みは比較的薄い。この部分により、凹部25の左右に位置する本体27が左右に拡がろうとするのが防止される。
【0063】
この保冷体21は、前述の媒体を含まない架橋高分子であるゲル状材からなる保冷材27と、これを封入する封入用フィルム29とからなる。この保冷体21の底面には、非柔軟性基盤部31が備えられている。この保冷材27は、人の首筋から後頭部の形状に合う形状に成形されている。薄く柔軟性のある封入用フィルム29は、十分な外形拘束機能は備えていない。この保冷材27は、保冷材27自体が形状保持機能を備えるので、その形状が封入用フィルム29の支持なしで保持される。この枕17は、保冷体21の保冷材27が柔軟性に富み、人の首筋から後頭部の形状に合う形状を有する。この保冷材27を備える保冷体21により、体に負担がかからないように、首筋及び頭が保持されて冷却される。図示されていないが、本体19及び保冷体21の上面側には多数の窪みが設けられている。この枕によれば、冷却が長持ちするとともに寝心地がよい。
【0064】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る枕40が示された分解斜視図である。この枕40は、本体42と保冷体44とを備えている。本体42は、その中央部に、保冷体44を組み込むための凹部46を備えている。この保冷体44は、図1に示された保冷体5と同様に、保冷材と封入用フィルムとからなる。保冷材の材質は、図3に示された保冷材9と同様の材質である。保冷体44は、シート状である。シート状の保冷体44は保冷効果が維持される時間は塊状の保冷体5よりも短いが、最も重要である入眠前後における保冷効果は発揮される。
【0065】
図9は、図8の枕40の保冷体44が冷蔵される状態が示された分解斜視図である。この図9には、胴部48及び蓋50からなる容器52も示されている。この保冷体44が冷蔵されるには、まず保冷体44が巻かれる。保冷体44はシート状なので、容易に巻かれ得る。次に、この保冷体44が胴部48に入れられる。そして、この胴部48に蓋50がかぶせられる。次に、容器52が冷蔵庫に収納される。容器52が冷蔵庫に一定時間保持されることにより、保冷体44の温度が下がる。冷蔵庫から容器52が取り出され、この容器52から保冷体44が取り出される。この保冷体44が本体42と組み合わされて、使用される。
【0066】
枕40の使用により、保冷体44には、髪の毛、汗、整髪料、香料等が付着する。冷蔵庫には通常、食料品が保存されている。保冷体44が容器52に収納されることにより、保冷体44と食料品との接触が阻止される。容器52はまた、保冷体44から食料品への臭いの移行も阻止する。この容器52は、衛生に寄与する。容器52が冷蔵庫へ容易に収納され得るように、容器52のサイズが決定される。例えば、通常の清涼飲料水のためのボトルと同程度のサイズの容器52が用意される。この保冷体44と容器52との組み合わせは、冷蔵庫の省スペースに寄与する。
【0067】
臭いの移行阻止の観点からは、通気性のない材質(例えば合成樹脂)から容器52が構成されることが好ましい。短時間で保冷体44が冷却されるとの観点からは、通気性のある材質(例えば紙)から容器52が構成されることが好ましい。通気性を備えた容器52では臭いの移行は十分には阻止されないが、保冷体44と食料品との接触は阻止される。容器52に通気口が形成されてもよい。
【0068】
容易に巻かれ得るとの観点から、保冷体44の厚みは25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、15mm以下が特に好ましい。保冷効果の維持の観点から、厚みは5mm以上が好ましい。保冷材が折りたたまれて容器に収納されててもよい。この場合は、ボックス状の容器が用いられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0070】
[実施例1]
天然ゴムを基材とするゴム組成物(天然ゴム100質量部、充填剤115質量部、軟化剤4質量部、亜鉛華5.5質量部、ステアリン酸1.1質量部、発泡剤5質量部、硫黄2質量部、加硫促進剤0.9質量部、老化防止剤0.6質量部)を金型に投入して、150℃、10分加硫発泡させて成形し、凹部を備えた本体を製造した。一方、本体の凹部形状に対応した形状を備えた金型にポリウレタンフィルム(厚さ0.1mm、引張強度20N、引裂強度8N、切断時伸び220%)を敷き、潜熱蓄熱材(粉体状)を含有するマイクロカプセルを10質量%配合し、分散させたポリウレタンプレポリマーを、90℃に加温した金型に30mm程度流し込んだ。その上に硬化型ポリウレタン組成物を5mm充填し、90℃15分で架橋させた後、金型を冷却してゲル状材を取り出し保冷体を得た。質量は1300gとなる。この保冷体を本体に組み合わせて外装カバー(本体用;綿100%)を被せて実施例1の枕を得た。潜熱蓄熱材は、n−パラフィンであり、その融点は16℃であった。潜熱蓄熱材を含有するマイクロカプセルの融解熱は、230J/gであった。
【0071】
[比較例1]
市販の保冷体(ダンロップホームプロダクツ社製、品名「やわらか雪枕」、厚さ30mm、縦190mm、横340mm)を乗せた一般市販の平型枕(発泡ポリウレタン製、550幅mm、奥行380mm、高さ10mm、綿100%製外装カバー付き)を比較例1とした。この保冷体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量%、プロピレングリコール(PG)30質量%、尿素10質量%、純水57質量%、及び、顔料その他の成分1.5質量%の混合物からなるヒドロゲルを含有する。
【0072】
[実施例2〜13]
熱蓄熱材としてのn−パラフィンの融点、又は潜熱蓄熱材を含有するマイクロカプセルの配合量を変えた他は、実施例1と同様にして保冷体を作製し、この保冷体を本体に組み合わせて実施例2〜13の枕を得た。実施例5及び6における保冷体はシート状であり、この保冷体は、袋状にしたシートに、上記ポリウレタンプレポリマー及び潜熱蓄熱材を含有するマイクロカプセルを充填し、硬化型ポリウレタン組成物は充填せずに架橋させて得た。
【0073】
〔枕の評価試験〕
(1)温度変化の測定
上記実施例及び比較例の保冷体を、冷蔵庫内(庫内温度5℃)に8時間以上放置して、保冷体の内部の温度が5℃となるように調節した。次いで、26℃に設定された室内において、体温が略36℃である成人男性が寝たときにこの成人男性の頸部が触れる、この保冷体上の位置の表面温度の変化を測定した。
【0074】
(2)機械的特性の評価
上記実施例及び比較例の保冷体を、20℃に調節した上で、保冷体の圧縮時のばね定数(N/mm)とヒステリシスロス(%)とを測定した。測定に際し、(株)島津製作所製のオートグラフ「AGS−5KNG」を使用した。
【0075】
(3)枕としての特性の評価
20〜40歳台の被験者30名(内、女性10名、男性20名)に、上記実施例、比較例及び対照の保冷体をそれぞれ夜間の睡眠用の枕として実際に使用してもらい、寝心地についての評価を行った。寝心地が良い場合を5点、悪い場合を1点とした5段階評価を行い、被験者全員の平均点を算出した。評価に際して、保冷体(枕)は、それぞれ冷蔵庫内(庫内温度5℃)に8時間以上放置して、ゲル状材の内部の温度が5℃となるように調節したものを使用した。また、睡眠時の室温は26℃に調節した。
【0076】
上記評価試験の結果を、潜熱蓄熱材の融点及び潜熱蓄熱材を含有するマイクロカプセルの含有量とともに、下記表1及び表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1及び表2より明らかなように、特に実施例1〜8の保冷体(枕)はいずれも適度な冷たさが長時間に亘って保持され、硬さ及び反発性が適切な範囲に設定されていることから、寝心地も良好である。これに対し、潜熱蓄熱材の融点が7℃である実施例12では、予め冷却しておく温度が7℃であるために、潜熱を蓄える効果が発揮されず、適度である温度が保持されないという問題がある。また、潜熱蓄熱材の融点が高すぎる実施例13では、早期に保冷体の温度が安眠を得るのに適した温度より高くなってしまうため、入眠支援効果が不十分となって覚醒するという問題があった。
【0080】
これに対し、比較例1の枕は適度な冷たさは保持されるが、復元性がなく(ヒステリシスロスが大きすぎる)、寝心地が悪いという問題があった。実施例9は潜熱蓄熱材を含まず、また実施例10では潜熱蓄熱材の含有量が少なすぎるため、早い段階で、保冷体の温度が安眠を得るのに適した温度より高くなってしまい、入眠支援効果が不十分となって覚醒するという問題が生じた。また、潜熱蓄熱材の含有量が多すぎる実施例11では、圧縮応力及びヒステリシスロスが大きくなりすぎて、枕としては硬くなりすぎ、入眠支援効果及び寝心地が低下するという問題があった。
【0081】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の本質をはずれない範囲での種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、種々の枕に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる枕が示された斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1の平面図であり、図2(b)は図1の正面図であり、図2(c)は図1の側面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態に係る枕が示された平面図である。
【図6】図6は、図5の枕が示された正面図である。
【図7】図7は、図5の枕が示された右側面図である。
【図8】図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る枕が示された分解斜視図である。
【図9】図9は、図8の枕の保冷体が冷蔵される状態が示された分解斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1、17、40・・・枕
3、19、42・・・本体
5、21、44・・・保冷体
7、25、46・・・凹部
8、23・・・側壁
9、27・・・保冷材
11、29・・・封入用フィルム
13、31・・・非柔軟性基盤
52・・・容器
D・・・窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入用フィルムと、該封入用フィルムに内封されており、媒体によって膨潤させられた形態を取っていない架橋高分子を含むゲル状材とを有する保冷体と、
その側壁の中央部で開口した凹部を有しており、上記凹部に上記保冷体が組み込まれるように構成されている本体と
を備える枕。
【請求項2】
上記ゲル状材は、
その融点が10℃以上20℃以下である潜熱蓄熱材を、樹脂皮膜のカプセルに収容した状態で10質量%以上40質量%以下含有する、請求項1に記載の枕。
【請求項3】
上記ゲル状材は、
その融点が10℃以上20℃以下であり、粒径1μm以上50μm以下の粉体状であり、有機化合物からなる潜熱蓄熱材を、合成樹脂皮膜のカプセルに収容した状態で10質量%以上40質量%以下含有する、請求項1に記載の枕。
【請求項4】
上記保冷体の温度を5℃に設定した後、26℃の雰囲気下、体温が36℃前後の成人男性が寝たときに頸部が接触する上記保冷体の位置の表面温度が、5℃以上25℃以下に少なくとも1時間保持される、請求項1に記載の枕。
【請求項5】
上記保冷体の温度を20℃に設定し、直径10mmの圧縮子で試験速度30mm/minで圧縮したときのばね定数が0.1N/mm以上0.7N/mm以下であり、ヒステリシスロスが5%以上50%以下である、請求項1に記載の枕。
【請求項6】
上記ゲル状材が未発泡のポリウレタン樹脂を含み、アスカーF硬度が10以上50以下である、請求項1に記載の枕。
【請求項7】
上記保冷体がシート状である、請求項1に記載の枕。
【請求項8】
上記保冷体が、厚み25mm以下のシート状である、請求項1に記載の枕。
【請求項9】
上記凹部の高さが上記側壁の高さの1/3以上である、請求項1に記載の枕。
【請求項10】
シート状であり、封入用フィルムと、該封入用フィルムに内封されており、媒体によって膨潤させられた形態を取っていない架橋高分子を含むゲル状材とを有する保冷体と、
上記保冷体が巻かれて、又は折りたたまれて収納される容器との組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−51335(P2006−51335A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168385(P2005−168385)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】