説明

【課題】炭素粉を含む枕であって、安眠の促進や健康の増進などの更なる良好な効果を得ることができる枕を提供する。
【解決手段】この枕1は、中央付近に頭部が載せられるような載置凹部10aを有して略平板状をなし、炭素粉(望ましくは黒鉛)を含んで成型される剛体の成型部10を有し、成型部10は、その表面が水性樹脂などによりコーティングされ又はその表面に金の層などの保護層が被着されている。それにより、頭部の熱が拡散して逃げて行くようにすることで安眠を促進し、かつ、遠赤外線によって血液循環を促進して健康を増進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素粉を含み、人体の様々な箇所に当接される枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭素粉が練り込まれた繊維や炭素粉そのものを袋に収容して炭素粉を含むようにした弾体又は軟体の枕が提案されている(例えば特許文献1)。このような炭素粉を含んでなる枕は、炭素粉から放射される遠赤外線により、血液循環を促進し、もって健康増進効果が得られることが知られている。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3074445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、日常的に使う枕は、基本的機能である安眠促進や上記したような健康増進などの更なる良好な効果が得られるものが常に求められている。本願発明者は、炭素粉が遠赤外線を放射する以外にも種々の優れた性質を有していることに着目し、研究の結果、以下に詳述する枕を案出するに至った。
【0005】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、安眠促進や健康増進などの機能を更に向上させた炭素粉を含んでなる枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の枕は、炭素粉を含んで成型されるものであって、略平板状をなす剛体の成型部を有し、該成型部は、その表面がコーティングされ又はその表面に保護層が被着されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の枕は、請求項1に記載された枕において、前記成型部は、中央付近に人体の箇所が載せられる載置凹部を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の枕は、請求項1又は2に記載された枕において、前記炭素粉は、黒鉛であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の枕は、請求項3に記載された枕において、前記炭素粉は、ポーラス状の黒鉛であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の枕は、請求項4に記載された枕において、前記成型部は、フタロシアニンを含有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の枕は、請求項1乃至5のいずれかに記載された枕において、前記成型部は、その表面が水性樹脂によりコーティングされていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の枕は、請求項1乃至6のいずれかに記載された枕において、前記コーティングは、銀を含有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の枕は、請求項1乃至7のいずれかに記載された枕において、前記成型部は、その表面に保護層として金の層が被着されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の枕は、請求項1乃至8のいずれかに記載された枕において、前記成型部は、電極となる2個の導体部を更に有していることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の枕は、請求項1乃至8のいずれかに記載された枕において、前記成型部は、熱伝導棒を差し込むための1個の孔部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の枕によれば、成型部の炭素粉から放射される遠赤外線により、血液循環を促進して健康増進効果が得られると共に、頭部の熱が熱伝導性の良好な炭素粉を含む成型部の全体に拡散して行くので、寝つきを良くし、安眠を促すことができる。また、熱を加えることにより遠赤外線を増大させ、腰部等の血液循環を更に促進し、更なる健康増進効果の増大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の望ましい実施形態に係る枕1の上面図である。図2は枕1の中央を左右方向に切断した断面図である。図3は枕1の中央を前後方向に切断した断面図である。なお、図3は左を前端側としている。後述の図5、図7、図8、図9も同様である。
【0018】
枕1は、炭素粉を含んで成型される剛体の成型部10からなる。成型部10は、表側の中央付近に頭部が載せられるような載置凹部10aを有し、その両側に略平坦な載置隣接部10b、10bを有して略平板状をなしている。具体的には、成型部10は、例えば、前後方向の長さを約20cm、左右方向の長さを約30cm、高さを約4cmとした略四角板状をなしている。載置凹部10aは、左右方向には図2に示すように比較的小さな曲率の円弧状をなし、その幅は例えば約12cmである。前後方向には、頸部を載せやすいように、図3に示すように前端側から徐々に高くなり途中から徐々に低くなる。例えば、前端側と後端側の高さはそれぞれ約2cm、約1cmであり、前端側から約5cmの位置で最も高い約3.5cmになる。また、載置凹部10aが設けられる前端の中央付近は、肩のラインに沿うように、後端側に向かって湾曲している。
【0019】
成型部10に含まれる炭素粉は、木炭又は竹炭等の炭化物を用いることもできるが、黒鉛が望ましい。黒鉛は、熱伝導性や導電性が極めて高いので、後述の頭部の熱を取ったり体内の静電気を除去したりすることにおいて効果が大きい。なお、木炭又は竹炭等の炭化物は、原材料や製法によっては熱伝導性又は導電性が低くなる可能性があるので注意する必要がある。従って、木炭又は竹炭等の炭化物を用いる場合は、処理温度を高くして黒鉛化することが望ましい。
【0020】
更には、ポーラス状の黒鉛を用いることもできる。ポーラス状の黒鉛は、黒鉛を繊維状又は粒子の集合状にして固めることで空隙を有するようにしたものである。ポーラス状の黒鉛の成型部10は、表面及び内部に粗な空隙或いは溝を有している。そのため、吸着による脱臭効果を奏することが可能である。また、粗な空隙や溝により、人体に有害な電磁波を吸収できる。
【0021】
成型部10は、炭素粉を黒鉛とする場合、バインダとして例えば3〜5重量%程度フェノール系樹脂を黒鉛に混合し、この混合物を成型機により圧力を加えて所定の塊(例えば方形もの)に成型し、その後、無酸素状態で2000℃程度の温度環境に1週間程度放置し、それから所望の成型部10の形状に加工することにより得られる。フェノール成分は約1200℃以上で揮発し、成型部10はほぼ100%が炭素粉から形成されるので、優れた導電性を得ることができる。
【0022】
成型部10は、欠損の防止などその保護のために、表面をコーティングする又は表面に保護層を被着させる。コーティングする場合のコーティング剤は、成型部10に染み込むように、例えばアクリル系の水性樹脂を用いる。こうすると、成型部10の表面の導電性を保持したまま、それを保護することができる。また、浴室など水分が触れる箇所で用いる可能性が有る場合は、耐水性のコーティングを行う。コーティング剤は、更に抗菌性を有するように、銀成分を含ませるのが望ましい。抗菌性を有すれば、就寝中に、頭部の雑菌などを減少させることができるので有益である。また、浴室などではレジオネラ菌等が発生し易いので、浴室で用いる場合は特に有益である。なお、コーティングは、成型部10全体の保護のために、実質上全体にされることが望ましい。
【0023】
また、成型部10がポーラス状の黒鉛の場合、フタロシアニンを含有させることが望ましい。フタロシアニンは、臭いの成分の酸化反応を触媒することで、消臭作用を発揮する。成型部10がフタロシアニンを含有することで、空隙に吸着した臭いの成分を別の物質に変えることができるので、脱臭作用の飽和を防ぎつつ、それに加えて消臭作用も奏することができる。このフタロシアニンは、常温でもよく反応し、サイクル反応を行うので寿命が長い。なお、フタロシアニンは、例えば金属フタロシアニンポリカルボン酸(具体的には、テトラカルボン酸コバルトフタロシアニン、テトラカルボン酸鉄フタロシアニン、オクタカルボン酸コバルトフタロシアニン、又はオクタカルボン酸鉄フタロシアニン等)などの化合物として存在する。また、フタロシアニンの化合物は、溶液に溶解又は分散させ、含浸させることにより成型部10に含ませることができる。
【0024】
また、成型部10は、その表面に保護層として金の層を被着させてもよく、例えば、漆により金箔を成型部10に接着させてもよい。金の層は、熱伝導性、導電性、及び抗菌性を有し、また、枕1の美観を更に良くすることができる。なお、摩耗防止のため、金の層の表面をコーティングしてもよい。
【0025】
次に、枕1の使用方法及び作用について説明する。枕1を使用するときは、中央付近の載置凹部10aに頭部を載せる。すると、頭部の熱が熱伝導性の良好な成型部10の全体に拡散し、布団等に逃げて行く。こうして、頭部の熱を自然に取ることにより、寝つきを良くし、安眠を促すことができる。また、頭部の熱を取ると、冷え性に対しても効果が期待できる。
【0026】
また、人体に溜まった静電気は、頭部から成型部10を通って布団等に逃げて行く。よって、疲労蓄積など人体に悪影響のある静電気が除去されることにより、疲労回復、頭髪の衰えや肌荒れの防止などの効果が得られる。
【0027】
また、背景技術の説明でも述べたように、炭素粉から放射される遠赤外線により、血液循環を促進し、もって健康増進効果が得られる。枕1は、実質的に成型部10からなり、そのほとんどが炭素粉であるため、遠赤外線の量は多い。また、理由はまだ定かではないが、炭素粉は脳のα波を増加させる効果があることが本願発明者により確認されており、それによっても安眠や健康増進の効果が期待できる。
【0028】
また、枕1は、実質的に成型部10からなり、そのほとんどが炭素粉であるため、弾力性は殆どなくて硬い。そのため、寝ている間に頭部に接する部分が変形して沈み込まず、頭部の位置を安定して確保できる。反面、その硬さゆえに、寝心地が良くないと懸念される。しかし、本願発明者の実験によれば、成型部10の中央付近の載置凹部の大きさ、深さ、形状を最適化することにより、仰向きは勿論横向きになっても十分な寝心地が確保できる。また、使用によるへたりが根本的になく、耐久性が高い。また、ダニ、シラミ、雑菌などが発生し難いので衛生的である。
【0029】
次に、本発明の望ましい別の実施形態に係る枕2を説明する。この枕2は、腰部の血液循環促進にも使用できるものとして案出されたものである。図4は枕2の上面図であり、図5は右測面図である。図6は枕2の中央を左右方向に切断した断面図である。図7は枕2の中央を前後方向に切断した断面図である。
【0030】
枕2は、炭素を含んで成型される剛体の成型部20と、電極となる2個の導体部21a、21bと、を備える。成型部20は、表側の中央付近に腰部や頭部が当接させ得られる載置凹部20aを有し、その両側に略平坦な載置隣接部20b、20bを有して略平板状をなしている。具体的には、成型部20は、前述の成型部10をやや大きくした略同様な形状をなし、例えば、前後方向の長さを約20cm、左右方向の長さを約40cm、高さを約4cmとした略四角板状をなしている。また、載置凹部20aも、左右方向には図6に示すように比較的小さな曲率の円弧状をなし、その幅は例えば約22cmである。前後方向には図7に示すように前端側から徐々に高くなり途中から徐々に低くなる。例えば、前端側と後端側の高さはそれぞれ約2cm、約1cmであり、前端側から約5cmの位置で最も高い約3.5cmになる。また、載置凹部20aが設けられる前端の中央付近は、腰部又は肩のラインに沿うように、後端側に向かって湾曲している。なお、コストの面から成型部10の形状を簡単にする場合もあり、特にサイズを大きく(例えば、約50cm以上)すると載置凹部20aや前端の中央付近の湾曲が省略される場合が多い。
【0031】
また、成型部20の右側面には、電源コネクタが差し込み可能な差し込み口22を設けており、電源コネクタの接続端子部に差し込み接続できる2個の電源ピンを埋設している。2個の導体部21a、21bは、その間に成型部20の一部が介在するように一方側が成型部20の内部に埋め込まれ、他方側が前述の2個の電源ピンとして露出している。導体部21a、21bは、例えば銅合金であり、露出した電源ピンの部分は、他の部分と別の材質であっても構わない。
【0032】
枕2の他の構造や材質は、枕1と同様である。
【0033】
次に、枕2の使用方法及び作用について説明する。枕2を腰部の血液循環促進に使用するときは、電源コネクタを差し込み口22に嵌合させ、電源コネクタを通電させて2個の導体部21a、21bの間に交流又は直流の電圧をかけるようにする。この電圧は、商用電源の電圧(交流100V)を例えば直流24Vなどに変換したものである。そうすると、2個の導体部21a、21bの間に介在する成型部20の一部には電流が流れ、それが有する抵抗成分により発熱する。その熱は、熱伝導性の良好な成型部20の全体に短時間で伝導する。
【0034】
そして、枕2の中央付近を腰部に当接させる。炭素成型部20の温度が上昇すると、炭素粉から放射される遠赤外線は増大する。従って、この効果的に放射される遠赤外線により、腰部の血液循環の促進が増大され、もって、健康増進効果の増大を図ることができる。なお、複数の枕2を接触させて並設して用いても構わない。
【0035】
枕2は、腰部の血液循環促進にも使用できる枕(腰枕)として案出されたものであるが、肘、膝など横臥した人体の様々な箇所に当接させて使用することができる。例えば、枕2を足裏に当接させ易い足枕の形状として足裏を枕2に当接すると、寝つきの改善、リラックス、健康増進などの足浴の効果を得ることができる。特に、水を使用しないので、患者がベッドで用いるのに好適である。
【0036】
差し込み口22に電源コネクタを嵌合させないで、枕2を枕1と同様に頭部用の枕として使用できることは勿論である。この場合、枕2は、枕1と同様な効果を得ることができる。また、導体部21a、21bや差し込み口22を設けず、裏側から熱を与えることで、成型部20の温度を上昇させてもよい。例えば、加熱手段として、ニクロム線、電気行火、化学変化により発熱する懐炉、などを用い裏側に当接することもできる。
【0037】
次に、本発明の望ましい更に別の実施形態に係る枕3を説明する。この枕3は、前述の枕2を変形したものである。図8は枕3の右測面図であり、図9は枕3の中央を前後方向に切断した断面図である。枕3は、炭素粉を含んで成型される剛体の成型部30に熱伝導棒を差し込むための1個の孔部31を有する。熱伝導棒(図示せず)は熱伝導性に優れた材質からなり、外部機器で発生した熱は、熱伝導棒から成型部30の全体に短時間で伝導する。こうして、枕3は、枕2と同様にして使用することができる。この枕3は、外部機器に発熱させる必要があるが、枕2に比べ成型部の加工が容易である。
【0038】
以上、本発明の望ましい実施形態に係る枕について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、寝心地の更なる改善のため、実施形態に記載した成型部10、20、30の寸法や形状を適宜変更することが可能である。また、美観のために、成型部10、20、30を着色したり図柄を描いたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の望ましい実施形態に係る枕の上面図である。
【図2】同上の枕の中央を左右方向に切断した断面図である。
【図3】同上の枕の中央を前後方向に切断した断面図である。
【図4】本発明の望ましい別の実施形態に係る枕の上面図である。
【図5】同上の枕の右側面図である。
【図6】同上の枕の中央を左右方向に切断した断面図である。
【図7】同上の枕の中央を前後方向に切断した断面図である。
【図8】本発明の望ましい更に別の実施形態に係る枕の右側面図である。
【図9】同上の枕の中央を前後方向に切断した断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1、2、3 枕
10、20、30 炭素粉を含んでなる成型部
10a、20a 成型部の載置凹部
21a、21b 成型部の導体部(枕2)
22 成型部の差し込み口(枕2)
31 成型部の孔部(枕3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粉を含んで成型されるものであって、略平板状をなす剛体の成型部を有し、
該成型部は、その表面がコーティングされ又はその表面に保護層が被着されていることを特徴とする枕。
【請求項2】
請求項1に記載された枕において、
前記成型部は、中央付近に人体の箇所が載せられる載置凹部を有していることを特徴とする枕。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された枕において、
前記炭素粉は、黒鉛であることを特徴とする枕。
【請求項4】
請求項3に記載された枕において、
前記炭素粉は、ポーラス状の黒鉛であることを特徴とする枕。
【請求項5】
請求項4に記載された枕において、
前記成型部は、フタロシアニンを含有することを特徴とする枕。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された枕において、
前記成型部は、その表面が水性樹脂によりコーティングされていることを特徴とする枕。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された枕において、
前記コーティングは、銀を含有することを特徴とする枕。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された枕において、
前記成型部は、その表面に保護層として金の層が被着されていることを特徴とする枕。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された枕において、
前記成型部は、電極となる2個の導体部を更に有していることを特徴とする枕。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載された枕において、
前記成型部は、熱伝導棒を差し込むための1個の孔部を有していることを特徴とする枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−117731(P2007−117731A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268761(P2006−268761)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(593151572)
【Fターム(参考)】