説明

【課題】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたもので、本発明の課題は低反発弾性ポリウレタンフォーム等のポリウレタンフォームを使用するにもかかわらず、通気性に優れ、枕の温度上昇やムレを抑制することができるとともに、寝返り時や横臥位で横になった際に頬にソフトな感触を与える枕を提供することである。
【解決手段】
枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向中央部に通気性部を、枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向左右両端部に緩衝部を備えたカバー材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具用枕の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枕本体としてはポリウレタンフォームが広く知られている。ポリウレタンフォームは頭部、頚部にぴったりとフィットし、クッション性において非常に良好であるため汎用されている。しかしその一方、通気性が悪く、夏などの気温の高い季節では頭が蒸れて寝苦しくさせていた。特に近年よく使用されている低反発弾性ポリウレタンフォームにおいては、上記欠点が顕著であった。さらに低反発弾性ポリウレタンフォームは温度上昇に伴い本来の特徴である低反発弾性が低下する等の欠点もあった。
【0003】
頭部の熱や湿気を吸収放散させるものとして、例えば表皮層にポリウレタン無膜フォームを用いるもの(特許文献1)や、樹脂製の筒状チップからなる層を設けることが知られている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これらは通気性に関しては改善されるが、横臥位で寝る際や寝返り時に頬にあたる感触が良くなく、また頬に跡がつきやすいという問題もあった。
【特許文献1】特開平7−67757号公報
【特許文献2】特開2002−78588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたもので、本発明の課題は低反発弾性ポリウレタンフォーム等のポリウレタンフォームを使用するにもかかわらず、通気性に優れ、枕の温度上昇やムレを抑制することができるとともに、寝返り時や横臥位で横になった際に頬にソフトな感触を与える枕を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向中央部に通気性部を、枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向左右両端部に緩衝部を備えたカバー材を設けることにより、通気性に優れるとともに寝返り時や横臥位の際に頬に当たる感触のよい枕と提供することができる。
【0007】
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも枕本体と枕本体を被覆するカバー材とからなる枕において、前記枕本体がポリウレタンフォームであって、前記カバー材はカバー布と通気性部、緩衝部からなり、通気性部はカバー材の枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向中央部に設けられており、緩衝部はカバー材の枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向左右両端部に設けられていることを特徴とする枕である。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、通気性部はカバー布に設けられた通気性部材収容室に通気性部材を充填してなり、緩衝部はカバー布に設けられた緩衝部材収容室に緩衝部材を充填してなることを特徴とする請求項1に記載の枕である。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、カバー布の少なくとも枕本体の上面に対応する側が伸縮性の素材からなり、枕の肩幅方向の伸びが枕の身丈方向の伸びよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の枕である。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、通気性部材が合成樹脂パイプであることを特徴とする請求項2又は3に記載の枕である。
【0011】
さらに、本発明の請求項5に記載の発明は、緩衝部材が合成樹脂発泡粒子であることを特徴とする請求項2乃至4に記載の枕である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の枕は枕本体としてポリウレタンフォームを使用するにもかかわらず、通気性に優れ、枕の温度上昇やムレを抑制することができるとともに、寝返り時や横臥位で横になった際に頬にソフトな感触を与えることができる。また、カバー布に伸縮性の素材を用いることにより、通気性部材、緩衝材の移動が妨げられず、頭部の動きに対する追随性に優れる。さらに、通気性部を枕の肩幅方向に対して垂直に分割すると、寝返りを打った際にも通気性部材が一箇所に偏ることなく、通気性部全面において均等に通気性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の枕の実施の形態の一例を示す斜視図、図2は枕本体の一例を示す斜視図である。図3は図1の長さ方向の断面図である。図4は本発明の枕の実施の形態の一例を示す斜視図であり、図5は図4の長さ方向の断面図である。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の枕は少なくとも枕本体10と枕本体10を被覆するカバー材20とからなる。
枕本体10はポリウレタンフォームからなる。ポリウレタンフォームは枕の機能を果たすものであれば特に問わないが、体圧分散性、感触等の観点から低反発弾性ポリウレタンフォームが好ましく用いられる。低反発弾性ポリウレタンフォームは公知のものからなり、反発弾性率が20%以下、硬さが20〜100N、密度が30〜100kg/m、圧縮残留歪が1〜10%(物性値は何れもJIS K 6400に従う。)のものが好ましい。
【0015】
枕本体10の形状としては枕として機能する形状であればよく、特に限定されないが、図2のような上面に波状の凹凸を設けて首から肩にかけての頚椎のカーブに沿って体圧を支持するような形状が好適である。これにより、頚椎の形や動きに応じて形状を変化させることができ、首から肩にかけての体圧を均一に吸収、分散させて体圧が一点に集中するのを防いでいる。そのため、使用した際に感じる首まわりの圧迫感がなくなり、血行を妨げることもない。また、ポリウレタンフォームの曲面および上面は、凸凹状にプロファイル加工等施されていてもよい。
【0016】
カバー材20は、通気性部22と緩衝部231、232を有する。図1に示すように通気性部22は枕本体の上面に対応する側の中央部に、緩衝部231、232は枕本体の上面に対応する側の左右両端部に配置されていて、各部は枕上面に並んだ状態となっている。
【0017】
通気性部22、緩衝部231、232は各々カバー布21を縫製して形成された通気性部材収容室と緩衝材収容室に通気性部材、緩衝部材を充填し構成されている。通気性部材収容室、緩衝部材収容室は、例えばカバー布21の枕本体10の上面側と同じ大きさの裏布を縫い合わせて形成される。
【0018】
カバー布21は少なくとも枕本体10の上面に対応する側が伸縮性の素材からなり、枕の肩幅方向の伸びが枕の身丈方向の伸びよりも大きいものが使用される。カバー布21の頭部を受ける部分が伸縮性素材であって、肩幅方向の伸びが身丈方向の伸びよりも大きいと、寝返りを打ったときなどに通気性部材、緩衝部材の肩幅方向の移動が比較的自由で、頭部の動きに対する部材の追随性が発揮される。また、伸縮性素材であると感触が柔らかで、特に緩衝部材の肌触りの良さが引き立つ。なお、伸縮性素材としては経編み又は緯編みのジャージ生地、パワーネットのような弾性糸混紡編物、ダブルラッセル生地等の立体編物等の編布、織布、不織布、パイル生地等を単独で又は組み合わせて使用することができる。具体的な素材としては、綿、毛、ウール、レーヨン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン等の繊維を適宜組み合わせてなるが使用できる。伸縮性素材の肩幅方向の伸び率は20〜200%が好ましい(JIS L 1018に従う)。裏布としては、編布、織布、不織布、パイル生地等、通常枕に使用されうるものであれば、特に限定されない。
【0019】
通気性部材収容室、緩衝部材収容室を形成する際に、カバー布21よりも裏布を伸縮性が小さくて厚みのある素材にすると、静止時には通気性部と緩衝部の形状保持ができるとともに、寝返り時等、頭部の位置が動く際には通気性部材や緩衝部材の移動しやすいので好ましい。なお、通気性部材収容室と緩衝部材収容室に開閉部を設けると、通気性部材、緩衝部材の充填量を使用者の好みに合わせ適宜変えることができるので好ましい。
【0020】
通気性部22は、カバー布21の枕本体10の上面に対応する側の枕の肩幅方向中央部に設けられた通気性部材収容室に通気性部材を充填して構成される。通気性部材は蕎麦殻、細石、檜チップ、合成樹脂パイプ等挙げられるが、軽量であって虫の発生や雑菌の繁殖もないので合成樹脂パイプが好ましい。合成樹脂パイプはポリエチレン、ポリプロピレン等汎用の合成樹脂で成形されたものが使用でき、外径5〜8mm、長さ5〜10mm程度の円筒状に構成されたものが好適である。合成樹脂パイプには抗菌性や芳香性を付与してもよい。なお、合成樹脂パイプの充填量は通気性部材収容室の容積の5〜6割程度が好ましいが、使用者の好みに応じて適宜選択することができる。
【0021】
通気性部22は、通気性部材収容室を分割して通気性部材を充填し、図4に示すように枕の肩幅方向に対して垂直に複数個に分割(221、222、223)することが好ましい。枕の肩幅方向に対して垂直に分割されていると、寝返りなどで枕の肩幅方向に頭部が移動する際に、頭部の移動に合わせて通気性部材が一方向に偏ることを防止できる。また、分割すると通気性部材収容室を一つにした場合と比べて、通気性部材の量を少なくすることができ、コスト面においても有利である。
【0022】
緩衝部231、232は、カバー布21の枕本体10の上面に対応する側の枕の肩幅方向左右両端部に設けられた緩衝部材収容室に緩衝部材を充填して構成される。緩衝部材は緩衝効果のある部材であれば特に限定されないが、流動性が高く独特の柔らかな触感を有する合成樹脂発泡粒子(以下、ビーズ)が好ましく用いられる。ビーズは特に限定されないが、好適にはその粒子径が(各発泡粒子の平均直径)が0.1〜2.0mm、より好ましくは0.4〜1.4mm程度のポリスチレンビーズが使用される。また、ビーズには放熱性を付与するために金属被膜を施してもよい。なお、ビーズの充填量は緩衝部材収容室の容積の5〜6割程度が好ましいが、使用者の好みに応じて適宜選択することができる。
【0023】
本件発明の枕は、カバー布21と通気性部22、緩衝部231、232が一体となっているため、カバー布21と通気性部22、緩衝部231、232がずれることがなく、それに伴う違和感は発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の枕の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】枕本体の一例を示す斜視図である。
【図3】図1の枕の肩幅方向の端面図である。
【図4】本発明の枕の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図5】図4の枕の肩幅方向の端面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 枕本体
20 カバー材
21 カバー布
22 通気性部
231 緩衝部
232 緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも枕本体と、枕本体を被覆するカバー材とからなる枕において、
前記枕本体はポリウレタンフォームであり、
前記カバー材は、通気性部と緩衝部を有し、通気性部はカバー材の枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向中央部に設けられており、緩衝部はカバー材の枕本体の上面に対応する側の枕の肩幅方向左右両端部に設けられていることを特徴とする枕。
【請求項2】
通気性部は、カバー布を縫製して形成した通気性部材収容室に通気性部材を充填してなり、緩衝部は、カバー布を縫製して形成した緩衝部材収容室に緩衝部材を充填してなることを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
カバー布の少なくとも枕本体の上面に対応する側が伸縮性の素材からなり、枕の肩幅方向の伸びが枕の身丈方向の伸びよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項4】
通気性部材が合成樹脂パイプであることを特徴とする請求項2又は3に記載の枕。
【請求項5】
緩衝部材が合成樹脂発泡粒子であることを特徴とする請求項2乃至4に記載の枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−330377(P2007−330377A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163460(P2006−163460)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】