説明

林業素材の含水率計測装置

【課題】格別の機器を用いることなく、作業現場において集材した林業素材の水分含有率を簡易に測定する。
【解決手段】伐採,枝払い,玉切りにより所定の長さの丸太材をプロセッサ1によりその直径と長さを計測して、この丸太材の体積を測定し、かつフォークグラップル10により丸太材を把持して持ち上げることによって、重量センサ16によりその重量を測定するようになし、管理施設Pに設けたデータベース61から、またはサーバ30から情報源34にアクセスして、伐採現場での同種の林業素材の全乾比重の推測値に関するデータを取得するようになし、これら丸太材の体積と重量とから、この丸太材の比重を算出し、これと全乾比重とに基づいて、丸太材の含水率を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木を伐採して、林業素材を造材する作業現場等において、この林業素材の含水率を計測する林業素材の含水率計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹木を伐採した後、枝払いを行い、さらに所定の長さ毎に玉切りすることにより丸太材からなる林業素材の造材が行われ、この丸太材を製材することによって、建築資材等として用いられる。この林業素材を効率的に造材するために、プロセッサやハーベスタからなる高性能林業機械が用いられる。また、枝条や端板等の残材はバイオマス資源等として活用され、さらに林業機械を用いて間伐を行うこともできる。
【0003】
広範囲にわたる現場において、丸太材の造材を行うために、例えば特許文献1に開示されているプロセッサが用いられる。プロセッサはクローラ式の走行手段を備えた自走式のものがあり、伐倒された樹木を枝払いして、玉切りすることができ、このように、プロセッサにより造材された丸太材は所定の位置に集材される。さらに、例えばフォークグラップルにより荷役を行って、造材された丸太材を運搬機械に積載して、最終的には製材工場や合板工場、さらにはパルプ工場等に搬送される。
【0004】
ところで、造材直後の生材は水分が含まれていることから、この林業素材は乾燥が必要となる。生材の含水率は、各種の条件によって大きく変化するものであり、具体的には樹木の水分含有率は40%〜300%若しくはそれ以上といった極めて大きなばらつきがある。この水分含有率を下げるために、人工乾燥または天然乾燥を行うことになるが、例えば建築用材として使用する場合には、水分含有率を20%程度とするのが適切であるとされている。
【0005】
森林内で伐採された木材は集材所に集材されるが、樹木の生育場所、例えば平地であるか、高所であるか、日照時間、さらには外気温等によって、集材されている樹木の水分含有量は、数倍乃至数十倍といった大きな差が生じていることもある。これら水分含有率が異なる木材を同じ条件で乾燥させると、乾燥度合いが異なることになり、製品としての木材における品質が低下してしまうことになる。従って、集積所において、運搬機械に搬送される前の段階で各々の丸太材の水分含有率を知ることが望ましい。
【0006】
ここで、木材中の水分含有率の測定を行う方式として、例えば特許文献2に開示されている水分測定装置がある。この特許文献2に開示されている水分測定装置は、マイクロ波水分計によるものであって、木材を挟んでマイクロ波の送信アンテナと受信アンテナとを配置し、送信アンテナ側からマイクロ波を放射して、木材を透過させて受信アンテナにより受信させる構成としたものである。そして、マイクロ波は木材中の水分により減衰を受けることになることから、受信アンテナからの出力レベルが低下する。従って、送信アンテナによるマイクロ波の送信レベルと受信アンテナによる受信レベルとを比較することによって、木材の水分含有率を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−35453号公報
【特許文献2】特開2001−124707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、伐採の作業現場での水分測定は、必ずしも正確なものである必要はなく、例えば含水率を数段階にグループ分けるといった程度のもので所期の目的が達成される。従って、マイクロ波の送信アンテナ,受信アンテナや、マイクロ波の受信レベルを解析する装置等といった複雑で高価な機構を有する水分測定装置を作業現場に搬入して、送信アンテナ及び受信アンテナを木材にセットし、木材の水分を測定するという煩雑な作業を行うのは、伐採・集材といった作業現場での丸太材等における水分含有率に基づく仕分け作業のためには、必ずしも適切なものではない。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、格別の機器を用いることなく、作業現場において集材した林業素材の水分含有率を簡易に測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明は、林業機械を用いて伐採し、かつ枝払いを行った後に、玉切りにより所定の長さの丸太材とした林業素材の含水率を測定するための含水率計測装置であって、前記林業素材の直径と長さに基づいて、この林業素材の体積を測定する体積測定手段と、前記林業素材を把持して持ち上げることによって、この林業素材の重量を測定する重量測定手段と、前記伐採現場での同種の林業素材の全乾比重の推測値に関するデータを取得する全乾比重取得手段と、前記体積測定手段により測定した前記林業素材の体積と、前記重量測定手段により測定した重量とから、この林業素材の比重を算出する手段とからなり、前記林業素材の比重と前記全乾比重とに基づいて、この林業素材の含水率を測定することをその特徴とするものである。
【0011】
立木を伐採し、枝払い及び玉切りを行うことによって、林業素材としての丸太材が造材される。このために、ハーベスタやプロセッサを用いることができる。ハーベスタは立木の伐採から丸太材の造材までの処理を単一の機械で行うことができ、またプロセッサは倒木後の処理を行うものである。これらハーベスタやプロセッサを用いるにしろ、その他の林業機械を用いるにしろ、所定の長さの丸太材とした後に、その水分含有率を測定することになる。
【0012】
丸太材となった林業素材は、その体積及び重量が計測可能である。体積については、丸太材の長さと、両端の直径とにより概略計測可能である。また、丸太材の重量はこの丸太材を持ち上げることにより計測できる。集材所に丸太材が集積されることから、この集材所で、若しくは集材所に搬入前に水分含有率を測定すると、集材所では丸太材を水分含有率毎に分類して集材することができる。そして、集材所からは、丸太材からなる林業素材を運搬機械に積載して搬送される。運搬機械は、傾斜地を走行する際には、クローラ式の走行手段を備えたものから構成し、走行条件の良い道路等を走行する場合には、ホイール式の走行手段を設けたものから構成される。また、集積所に集積された丸太材を運搬機械に積載する荷役を行うための機械としては、一般に、フォークグラップルが用いられる。フォークグラップルは、丸太材をクランプして持ち上げて、所定の位置に載置するためのものである。フォークグラップルは、例えば、油圧ショベル等のように作業手段を設けたクローラ式車両において、作業手段のアタッチメントとして装着することができる。
【0013】
フォークグラップルは丸太材を抱持するようにしてクランプする機構を備えており、この丸太材を抱持することによって、その外径を測定することは可能である。従って、丸太材の前後の端部乃至その近傍位置をクランプさせれば、丸太材の両端の直径を測定することができる。また、丸太材の長さは玉切り時に設定されている。従って、丸太材の体積を測定できる。なお、丸太材の直径を測定するには、フォークグラップルのクランプによるのではなく、実測によっても可能である。フォークグラップルの作業手段にロードセル等の荷重センサを設け、フォークグラップルで丸太材を持ち上げたときにおける荷重の増加を測定することによって、丸太材の重量が測定できる。このようにして、丸太材の体積と重量とから測定対象とする林業素材の比重を測定することができる。
【0014】
同じ樹種の木材における各生産地の全乾比重に関するデータを取得する。ここで、同種の木材であっても、条件によっては全乾比重が異なってくる。例えば、樹木が生育している場所の高度や温度等の気象条件、さらに季節等によっても、全乾比重に差が生じる。作業現場が予め定まっており、前述した各種の条件に基づいた全乾比重のデータが予めフォークグラップル等に記録されておれば、そのデータを利用することができる。また、管理センタにこの種のデータを記録しておけば、通信手段を介して全乾比重のデータを取得できる。
【0015】
しかしながら、林業素材の生産現場は様々な地域となり、日本国内、さらには全世界的な森林において、樹種毎の全乾比重に関するデータをフォークグラップルや管理センタに設けた記録手段に保管しておくのは、情報量が膨大になることから、必ずしも合理的ではない。このために、フォークグラップルに衛星測位システム(GNSS)に基づく位置情報の取得手段と、通信手段とを備えておけば、森林組合,森林管理局や森林管理署等から各地における樹種毎の全乾比重に関するデータを取得することができる。勿論、作業現場自体のデータを取得できない場合もあるが、その場合には気候的、高度的に近似する場所の森林の全乾比重のデータを取得すれば良い。
【0016】
全乾比重は、含水率を0としたときの木材の比重である。従って、全乾比重と実測比重とに基づいて、測定対象の丸太材の水分含有率を測定することができる。そして、集材所では丸太材を水分含有率毎に分類分けして集積することができる。フォークグラップルは荷役機械であり、運搬機械に丸太材を積載するに当って、同程度の水分含有率となっている丸太材を揃えて運搬機械に積載して搬送すれば、製材所等で乾燥処理を行う際に、同じ条件で乾燥させることができ、乾燥むらの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
集材現場において、格別の機器を用いることなく、作業現場に集材した林業素材の水分含有率を簡易に測定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の一形態を示す林業生産システムの全体構成図である。
【図2】丸太材に造材するために用いられるプロセッサの正面図である。
【図3】プロセッサにおけるフォークグラップルの正面図である。
【図4】樹木から丸太材の造材を行うについての説明図である。
【図5】作業機械の動作管理システムの概略構成図である。
【図6】丸太材の直径測定を行っている状態を示す動作説明図である。
【図7】丸太材の含水率の測定を行う際の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に樹木の伐採を行ってから、集材して搬送するまでの作業を行う林業生産システムの概略構成を示す。伐採現場Aにおいて、立木を伐採して、枝払い及び玉切りを行うが、このための林業機械としては、ハーベスタやプロセッサが用いられる。本実施の形態では、プロセッサ1を用いるものとする。適宜の手段を用いて、チェーンソーにより立木を伐倒するが、倒木は葉枯らし乾燥等のために、一定の期間だけ森林における伐採現場Aにおける伐倒地に放置しておく。プロセッサ1は倒木を枝払いすると共に玉切りを行って丸太材とするために用いられるものである。
【0020】
プロセッサ1の具体的な構成を図2及び図3に示す。プロセッサ1は自走式作業機械であって、旋回が可能な構成となっている。即ち、クローラ式の下部走行体2に旋回装置3を介して上部旋回体4が設置されている。上部旋回体4には、オペレータが搭乗して機械を操作する運転室5が設置され、また作業手段6が装備されている。作業手段6は、上部旋回体4に対して俯仰動作が可能なブーム7と、ブーム7の先端に上下方向に回動可能に連結したアーム8とを有するものであり、アーム8の先端にはリンク機構9を介してアタッチメントが連結して設けられる。これらブーム7,アーム8及びリンク機構9はそれぞれ油圧シリンダで駆動されるものであり、また下部走行体2による走行、さらには旋回装置3による上部旋回体4の旋回動作も油圧モータで駆動されるようになった油圧駆動式走行機械である。
【0021】
プロセッサ1における作業手段は、樹木の幹を把持して持ち上げるために、一対のフォーク10a,10aからなるフォークグラップル10を有するものであり、このフォーク10aは回動支点11を介して支持部材12に回動可能に連結されている。フォーク10aを開閉駆動するために、油圧シリンダ(図示せず)が設けられており、支持部材12は連結部材13を介してアーム7の先端に連結されている。フォークグラップル10には、枝払い用カッタ14及びチェーンソー15が設けられている。また、フォークグラップル10で把持した樹木の送り手段(図示せず)を備えており、この送り手段で樹木Tを移動させる間に、枝払い用カッタ14で枝払いを行い、チェーンソー15により所定の長さ毎に玉切りすることにより丸太材の造材が行われる。
【0022】
ここで、図4に示したように、伐倒された樹木Tは、枝払いを行った後、切断線C1〜C5に沿って玉切りすることによって長さL毎の丸太材T1〜T4となるように切断される。なお、E1,E2の部分は根元側及び先端側の端材である。そして、各丸太材T1〜T4における両端の断面の直径は、それぞれR1〜R5となる。
【0023】
プロセッサ1により造材された丸太材はクローラ式の運搬機械20またはホイール式の運搬機械21により集材所Bに移送され、この集材所Bにおいて分類分けして集積される。ここで、伐採現場Aの大半は走行が困難な傾斜地であることから、運搬は主にクローラ式の運搬機械20により行われるが、走行条件の良い道路を走行する場合には、走行速度の速いホイール式の運搬機械21を用いるのが有利である。また、丸太材への造材は、伐採現場である伐採現場Aで行うか、または集材所Bに搬入した後に行われる。集材所で丸太材に造材する場合には、集材所Bにプロセッサ1を配備しておくが、プロセッサ1を設けない場合であっても、荷役用としてのフォークグラップルを集材所Bに配備するのが望ましい。集材所Bに集材されている丸太材は、製材所等の複数の出荷先F1・・・Fnに出荷される。この丸太材の出荷はホイール式の運搬機械21、具体的にはトラック等に積載されて、一般道路を搬送することになる。
【0024】
ここで、プロセッサ1や、運搬機械20,21等の作業機械の動作を管理するために、管理施設Pが設けられている。管理施設Pに設けたサーバ30には、自走する作業機械であるプロセッサ1や、運搬機械20,21等の現在位置を把握しておく必要があるので、衛星測位システム(GNSS)を構成するGPS衛星31を利用する。また、サーバ30とプロセッサ1,運搬機械20,21等との間を通信回線で情報の授受を行うために、通信衛星32を利用する。そして、管理施設Pと出荷先F1・・・Fnとの間でネットワーク回路33を構築して、注文や出荷情報等、各種の顧客情報についての通信を行う。
【0025】
次に、図5に作業機械の動作管理システムの概略構成を示す。ここで、このシステムでは、プロセッサ1は、樹木の枝払い及び玉切りだけでなく、後述するように、丸太材の水分含有率を測定するために、丸太材の重量及び体積が測定される。従って、プロセッサ1には、GPS衛星21から位置情報を取得するためのGPS装置40と、通信衛星32との間で通信するための通信装置41とを備えており、これらGPS装置40,通信装置41はアンテナを備えている。また、プロセッサ1にはCPU42aとメモリ42bとを備えた情報処理端末(パーソナルコンピュータ)42と表示装置43とが搭載されている。そして、プロセッサ1には丸太材の重量及び体積を測定するための機構を備えている。
【0026】
まず、丸太材の重量は、プロセッサ1のフォークグラップル10により丸太材を把持して持ち上げるようになし、この時の重量を測定するものである。このために、設けられているのが、重量センサ16である。この重量センサ16は図3に示したように、フォークグラップル10の支持部材12と連結部材13との間に設けられている。また、測定対象となる丸太材について、その体積が測定されるために、丸太材の長さLとその直径とを測定する。フォークグラップル10には、送り手段を備えているので、この送り手段による玉切り位置間の送り量を測長装置44により測定することによって、丸太材の長さLが測定することができる。
【0027】
また、図6において、符号Mで示した丸太材の断面の面積を検出するために、フォークグラップル10のフォーク10a,10aで丸太材Mを把持し、このときにおけるフォーク10a,10a間の角度θが測定される。これによって、丸太材Mの直径を測定することができる。このために、両回動支点11に角度センサ45が設けられている。
【0028】
以上のように、側長装置44及び角度センサ45からの信号が情報処理装置42のCPU42aに取り込まれて、これらの情報に基づいて対象となる丸太材の体積が測定されることになる。
【0029】
ここで、丸太材の体積を演算するために、中央断面式(フーバー式),平均断面式(スマリアン式),末口二乗法(日本農林規格)等がある。丸太材の体積をVとし、この丸太材の長さをL、そして長さLの小数点以下を切り捨てたものをL´とし、また丸太材の中央部分の断面積をg、元口(基端側端部)の断面積をg1,末口(先端側端部)の断面積をg2とし、また末口直径をdとしたときにおいて、中央断面式では、V=g×L、平均断面式では、V=(g1+g2)×1/2となり、末口二乗法にあっては、長さが6m未満の場合には、V=d×L/10000、長さが6m以上の場合には、V={d+(L´‐4)/2}×L/10000となる。
【0030】
また、運搬機械20,21にも、フォークグラップル1と同様、GPS装置50及び通信装置51が設けられ、またCPU52aとメモリ52bとを備えた情報処理装置52と表示装置53とが設けられている。そして、運搬機械20,21には、積載重量を測定するセンサ54が設けられている。
【0031】
さらに、管理施設Pに設けたサーバ30は通信装置60と、データベース61とを備え、さらに情報処理端末62が設けられている。データベース61には、各地の樹種毎の全乾比重に関するデータを含む各種のデータが記録されており、出荷先F1・・・Fnについての管理や出荷に関する顧客情報も記録されている。そして、情報処理端末62にはCPU62aを備えており、また通信装置60との間のインターフェース62b、入力装置62cを有するものであり、さらには表示装置63が設けられている。
【0032】
本発明の実施の一形態における林業生産システムは、概略以上のように構成されるものであって、森林Aで樹木を伐採して、集材所Bにおいて、樹種やサイズ、さらには水分含有率毎に分類分けして集材することによって、出荷先F1・・・Fnへの丸太材の出荷時における品質管理が確保され、顧客にとって好都合となる。特に、水分含有率が揃った丸太材を出荷することによって、受入先となる顧客の側では、どの程度の乾燥が必要となるのかを知ることができ、また同時に出荷された丸太材はほぼ同時に所期の要求に沿った程度に乾燥されることになるので、製材等を行うに当って至便となる。
【0033】
前述したように、丸太材は水分含有率に基づいて数グループに分類分けされる。丸太材の水分含有率の測定は、丸太材の重量及び体積を測定して、この測定結果と丸太材の全乾比重とに基づいて行われる。このためには、伐採地における樹木の全乾比重に関するデータを取得する必要がある。フォークグラップル1の現在位置はGPS衛星31からの位置情報をフォークグラップル1のGPS装置40で取得される。また、サーバ30のデータベース61には地域毎で、樹種毎の全乾比重、つまり含水率を0としたときの木材の比重に関するデータが記録されている。ただし、地域毎で、樹種毎の全乾比重に関するデータの情報量は極めて大きいことから、全国の全ての地域の全乾比重データをデータベース61に記録しておくのは情報容量や情報処理のための作業等の点で有利ではなく、また無駄も多い。そこで、森林組合,森林管理局や森林管理署等から各地に樹種毎の全乾比重に関するデータが記録されておれば、ネットワーク回路33を介してこれらの情報源34からサーバ30に情報を取り込むことができるようにする。
【0034】
従って、図7に示したように、ステップ1に示したように、プロセッサ1の伐採作業を開始するに当っては、まずGPS装置40により取得した伐採現場の位置情報をサーバ30に送信する(ステップ2)。次いで、サーバ30からは当該の伐採作業現場における伐採対象とする樹種についての全乾比重のデータを取得する。このために、フォークグラップル1の通信装置と管理施設Pのサーバ30の通信装置60間で通信を行って、サーバ30に全乾データの有無を確認する(ステップ3)。また、現在の伐採現場で伐採する樹木の樹種について、サーバ30にデータが存在する場合には、この全乾データを取得する(ステップ4)。サーバ30に全乾データが存在しない場合には、サーバ30から情報源34にアクセスして、そのデータを取得する。情報源34にもデータが存在しないときには、近似した地域等のデータを取得する(ステップ5)。これによって、伐採対象となる樹種についての全乾データ(または全乾データの近似値)をサーバ30で取得して、フォークグラップル1の通信装置41から情報処理装置42に取り込まれる。
【0035】
次いで、伐採されて、枝払い及び玉切りされた丸太材の体積及び重量を測定する(ステップ6)が、これらのデータは既に説明したように、フォークグラップル1側で検出されている。従って、情報処理端末42により下記の演算式による演算を行うことによって、丸太材の含水率U(%)が測定される。即ち、U(%)=(W−W0)/W0×100の演算を行う。ここで、Wは丸太材の重量、W0は丸太材全体の乾燥させたときの重量であり、そしてW0=γ0×Vであって、γ0はこの丸太材の全乾比重、Vは丸太材の体積である。
【0036】
以上により丸太材を造材した後の水分含有率が測定される(ステップ7)。同一の地域で同時期に伐採されたものは、ほぼ同じ水分含有率となるが、例えば伐採地の高度や傾斜の向き等によっては、必ずしも水分含有率が一定となる訳ではないので、水分含有率の実測はできるだけこまめに行うことが望ましい。そして、集材所Bの大きさに応じて、水分含有率の差に応じてグループ分けして丸太材を集材することが、管理の上で望ましい。ただし、集材所Bが狭い場合には、1本ずつの丸太材の水分含有率を測定して、運搬機械20,30に積載するようにしても良い。そして、丸太材とその水分含有率とに関するデータは管理所Pのサーバ30に送信される(ステップ7)。以上の作業を順次繰り返して、作業終了に至る(ステップ9)。
【0037】
そして、運搬機械20,30にはセンサ54が設けられており、搬出された丸太材の本数及び総重量に関するデータも取得されるので、これらの情報もサーバ30に取り込むようになし、また運搬機械20,30の位置情報もGPS装置50から取得できるので、出荷先F1・・・Fnに出荷する運搬機械30の運行管理や出荷管理も可能となる。
【0038】
前述した実施の形態では、伐採した樹木の枝払い及び玉切りを行うプロセッサ1を用いて丸太材の重量及び体積の測定を行うようにしたものとして説明したが、丸太材を運搬機械20,30に積載する荷役を行うために、枝払い用カッタ14やチェーンソー15を備えないフォークグラップルを油圧ショベルの作業手段におけるアタッチメントとしたものを作業現場に搬入することも可能である。このように、荷役機械としてフォークグラップルを用いる場合には、重量センサ16はフォークグラップルに持たせ、プロセッサ1には重量センサを設けなくても良い。
【0039】
そして、プロセッサ1を用いて行う樹木の枝払い,玉切りは森林Aで伐採して倒木した状態のものに対して行うことができるが、また枝払い前の樹木を集材所Bに搬送して、この集材所Bで枝払い及び玉切りの作業を行うこともできる。ここで、枝払いにより切断された枝条や、玉切りにより生じた端材E1,E2は残材として、バイオマス原料や、破砕して燃料として使用することができる。さらに、肥料等としても活用することができる。そこで、集材所Bまたはこの集材所Bの近傍位置で丸太材を造材すると、残材を集約できるようになり、これらの残材を活用する上で有利である。なお、森林管理のためには、適宜の間伐が必要となるが、この間伐材もバイオマスや燃料等としても活用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 プロセッサ 10 フォークグラップル
10a フォーク 11 回動支点
14 枝払い用カッタ 15 チェーンソー
16 重量センサ 20,21 運搬機械
30 サーバ 31 GPS 衛星
32 通信衛星 33 ネットワーク回路
34 情報源 40,50 GPS 装置
41,51,60 通信装置 42,52 情報処理端末
61 データベース A 森林
B 集材所 P 管理施設

【特許請求の範囲】
【請求項1】
林業機械を用いて伐採し、かつ枝払いを行った後に、玉切りにより所定の長さの丸太材とした林業素材の含水率を測定するための含水率計測装置であって、
前記林業素材の直径と長さに基づいて、この林業素材の体積を測定する体積測定手段と、
前記林業素材を把持して持ち上げることによって、この林業素材の重量を測定する重量測定手段と、
前記伐採現場での同種の林業素材の全乾比重の推測値に関するデータを取得する全乾比重取得手段と、
前記体積測定手段により測定した前記林業素材の体積と、前記重量測定手段により測定した重量とから、この林業素材の比重を算出する手段とからなり、
前記林業素材の比重と前記全乾比重とに基づいて、この林業素材の含水率を測定する
ことを特徴とする林業素材の含水率計測装置。
【請求項2】
前記林業素材を運搬機械に搭載する荷役作業を行うために、自走式の車両にフォークグラップルを有する荷役作業手段を装着した荷役作業機械を用い、少なくともこの荷役作業手段に装着する構成としたことを特徴とする請求項1記載の林業素材の含水率計測装置。
【請求項3】
前記荷役作業手段は、前記フォークグラップルによる林業素材の直径を測定するものであることを特徴とする請求項2記載の林業素材の含水率計測装置。
【請求項4】
前記全乾比重取得手段は、前記荷役作業機械に設置した衛星測位システムと、この衛星測位システムに基づく位置情報から、その位置での樹木の全乾比重を取得する通信手段とから構成したことを特徴とする請求項2または請求項3記載の林業素材の含水率計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−29429(P2013−29429A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165839(P2011−165839)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)