説明

果実の成型栽培装置

【課題】 複数の圧迫板で囲んだ領域の中で果実を肥大させる成型栽培装置において、果実が領域内で一杯に肥大した後も、圧迫板で囲んだ領域を広げ、さらに肥大させて果実を完熟させる。
【解決手段】 成型栽培装置の圧迫板の外周を開放状態にして、果実に対向する面の裏面を複数の支持部品で支え、支持部品を果実から遠ざける方向に移動して圧迫板で囲んだ領域を広げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイカ等の果実を六面体状などに成型して栽培する果実の成型栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の果実の成型栽培装置は、例えば特許文献1の図1のように、果実を六面体の容器で覆い容器内で肥大させていた。特許文献1の図1では、2個の枠体に取り付けた1枚の底板、4枚の側板、2枚の天板によって内部に空間を有する容器を形成し、果実を容器内で肥大させ容器の内壁に沿った形状に果実の表面を造形していた。
【特許文献1】特許第3583386号の図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の図1では底板や側板や天板は枠体に取り付けていて、内部の空間を枠体の大きさ以上に広げることは不可能な構造である。このため、もし果実が肥大して果実の表面が内壁に沿った形状になり造形が完了したなら、果実がまだ完熟していなくても果実のつるを切り果実を容器から取り出す必要があった。もし造形が完了し果実が容器内に一杯に肥大したまま果実を容器内に放置すると、果実はさらに肥大しようとして容器内で圧迫され果肉が傷み腐敗する場合があった。このため、完熟した造形済の果実を得るためには造形が完了する時期と完熟する時期が同じでなくてはならず、両方の時期とも人為的に操作できないため完熟した造形済の果実を得ることは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明は、少なくとも2個以上の圧迫板を備え、圧迫板で囲んだ領域の中で果実を肥大させる成型栽培装置において、圧迫板の外周を開放状態にして、果実に対向する面の裏面を複数の支持部品で支え、支持部品を果実から遠ざける方向に移動して圧迫板で囲んだ領域を広げることができる成型栽培装置である。
【0005】
また、上記課題を解決するため本発明は、成型栽培装置の四隅に支柱を立て、支持部品を支柱で保持するとともに、圧迫板に複数の穴を開け、その穴に上板、または下板、または上板と下板の両方の支持部品を貫通させて、上板、または下板、または上板と下板の両方を保持する、上記記載の成型栽培装置である。
【0006】
また、上記課題を解決し作業を容易にするため、本発明は、上板を保持する支持部品の長さは、長くても圧迫板を保持する支持部品の長さより短いことを特徴とする、上記記載の成型栽培装置である。
【0007】
さらに本発明は、図形を切りぬいた透明な板を圧迫板と果実の表面の間に差し込んで果実を肥大させる、上記記載の成型栽培装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、圧迫板を支える支持部品を果実から遠ざける方向に移動して、圧迫板で囲んだ領域を広げることができるため、もし果実が肥大して果実の表面が圧迫板に沿った形状に造形されても果実がまだ完熟していないと判断した場合は、支持部品を移動して圧迫板で囲んだ領域を広げ、果実の肥大を継続させることができる。果実が広げた領域内で表面が圧迫板に沿った形状でさらに肥大し、果実の表面の色等から完熟したと判断した場合は、つるを切って果実を成型栽培装置から取り出し、完熟し造形された果実を得ることができる。
【0009】
また、果実の完熟を目的とせず、果実を観賞用に栽培する場合は、果実が肥大して果実の表面が圧迫板に沿った形状に造形されても、支持部品を移動して圧迫板で囲んだ領域を広げ、果実の肥大を継続させる。これによって、収穫時期を遅らせることができる。収穫時期を調整できることは、市場価格の高い時期に出荷することや収穫の労働力の負担の平準化を行える。
【0010】
特許文献1の図1では側板を側板の外周で支える構造であったが、本発明では圧迫板の果実に対向する面の裏面の外周でない内部を複数の支持部品で支える構造なので、同じ面積の板であっても、本発明の圧迫板を支える支点間の間隔は側板を外周で支える場合の支点間の間隔より短くなり、果実の圧力による板の割れが起こりにくい。このため、側板を外周で支える構造に比較して、本発明では圧迫板の厚さを薄くして安価にすることができる。また、同じ厚さの板を使用する場合でも面積をより大きくできる。
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明のきっかけになった観察結果を最初に説明する。
【0012】
黒い平板のような遮光物を果実の表面の一部に密着させ、果実を生育すると、遮光物を密着させて光が届かないよう生育した果実の表面と遮光物で光を遮らないで生育した表面との間に色むらが発生する。しかし、直径6mmの光沢メッキした鉄棒を厚さ3mmの透明な平板の果実に対向する面の裏面に密着させ、この平板の表面を果実に密着させて果実を生育したところ、鉄棒の直下の果実の表面と鉄棒で光を遮らなかった果実の表面の間に色むらは発生しなかった。この理由は、遮光物である鉄棒が透明な平板によって果実の表面から3mm離れており、鉄棒の直下の果実表面にも透明な平板を通して回り込むように光が届くため、鉄棒で光を遮らなかった果実の表面と同じように色づくためと思われる。
【0013】
この観察から、鉄棒のような遮光物を透明な平板を介して果実の表面に届く光を遮るように密着させて果実を生育しても、果実の表面には色むらのような美観的な影響は現れないことが分かった。
【0014】
さらに、特許文献1の図1では枠体に取り付けた底板や側板や天板で六面体の容器を構成し、この容器で果実の周囲を覆っていた。しかし、六面体の6枚の平板を互いに結合せず、六面体の辺に相当する箇所が約20mm開放状態にあるように、6枚の平板を組み立てて、6枚の平板で囲んだ領域のなかで果実を生育し肥大させたところ、ほぼ六面体の果実が造形された。この理由は、六面体の果実といえども果実の表面を直角に生育することはできず、果実の六面体の辺に相当する箇所は20mm程度の半径で湾曲しているから、六面体の辺に相当する果実の部分に平板がなくても、ほぼ六面体の果実を造形させることができるのである。
【0015】
この観察から、6枚の平板を平板の外周で互いに結合していなくて、平板の外周が開放状態でも、ほぼ六面体の果実は造形できることが分かった。以上の二つの観察から、平板を平板の周囲で支えないで内部で支えて平板の外周を開放状態にするという方法を発明した。平板の外周を開放状態にすることで、果実の肥大中でも平板を移動させることが可能になった。
【実施例】
【0016】
実施例の図において、圧迫板や上板は透明なので背後の物体は透けて見えるが、図が煩雑になるのを防ぐため背後に見える像は図示していない。
図1は本発明の第1の実施例で、六面体状の果実を造形する成型栽培装置の斜視図である。第1の実施例は図1の部品と図5の部品で構成される。図2〜図8は図1の成型栽培装置を分解して部品を個別に表示した図と組立てを説明する図である。図1の構成とともに図2〜図8を説明する。
【0017】
図1において1a、1b、1c、1dは支柱で、1本の支柱に4個の貫通穴を設け、棒状の支持部品2a、2b、2c、2dと支持部品3a、3b、3c、3dを貫通穴に通して保持する。支持部品2a、2b、2c、2d、3a、3b、3c、3dは全て同じ径である。支柱に設けた貫通穴の穴径を支持部品の径よりやや大きくし、支持部品が動かないようにナット14を取り付ける。支柱と支持部品を取り出して図示したのが図2の斜視図である。図2から分かるように支持部品を動かせば支柱で囲まれる四角形の大きさを自由に変化できる。支柱の材質は小さい果実を栽培する場合は木材や樹脂で作り、大きい果実を栽培する場合はより強靭な金属の角棒や角管で作る。支持部品の材質は金属で両端にナットを取り付けるためのネジ山を刻んでいる。なお本発明の実施例の図ではネジ山は全て省略してあり図示していない。
【0018】
図1の4a、4b、4c、4dは圧迫板で、4枚の圧迫板は全て同一の部品を使用している。圧迫板4aに4個の連結部7a、7b、7c、7dを設け、連結部には支持部品2a等の径より少し大きい穴を設け、この穴に支持部品を通して圧迫板を保持する。また、圧迫板4aには支持部品の径より少し大きい穴8を2個開け、後に説明するように穴8に下板5の支持部品または上板6aと6bの支持部品を通して下板5または上板6aと6bを保持する。
圧迫板4a、4b、4c、4dは果実が肥大するときに加わる圧力に十分耐えるように3mm〜5mmの厚さの透明な樹脂で作り、連結部7a、7b、7c、7dを一体成型する。連結部7a、7b、7c、7dを取り付けた面の反対側の面が果実を圧迫する面となり、果実を圧迫する面は平坦に作る。
【0019】
図1で圧迫板4aと4bは穴8が上側になるように、また果実を圧迫する面が互いに対向するように配置する。圧迫板4aは、連結部7aと7bの穴に貫通させた支持部品2aと、連結部7cと7dの穴に貫通させた支持部品2bで保持し、同様に圧迫板4bは連結部7a、7b、7c、7dの穴に貫通させた支持部品2cと2dで保持する。圧迫板4cと4dは穴8が下側になるように、また果実を圧迫する面が互いに対向するように配置する。圧迫板4cは連結部7cと7dの穴に貫通させた支持部品3aと、連結部7aと7bの穴に貫通させた支持部品3bで保持し、同様に圧迫板4dは連結部7a、7b、7c、7dの穴に貫通させた支持部品3cと3dで保持する。
【0020】
図1において、下板5は厚さ約2mmのほぼ正方形の板で材質は金属である。支持部品9aと9bは支持部品2a等と同じ径を持つ棒状の金属で、両端にナットを取り付けるためのネジ山を刻んでいる。図3は下板5と支持部品9aと9bの結合方法を説明するために下板5を裏側から見た斜視図である。下板5は4箇所のかしめ用の打ち抜きを行い、切片10によって図3のように支持部品9aと9bを固定する。図1において下板5の支持部品9aと9bを取り付けた面の反対側の面が果実を支える面となる。果実を支える面を上向きにして、支持部品9aと9bの両端を圧迫板4cと4dの穴8に貫通させて下板5を圧迫板4cと4dに取り付ける。図4は下板5を取り付けた後の成型栽培装置の上面図である。穴8の穴径は支持部品9aと9bの径よりやや大きいので、支持部品が動かないようにナットを取り付ける。なお、下板5には支持部品9aと9bを固定するための打ち抜き穴があるが、下板5が支えるのは果実の底面なので、果実の表面が打ち抜き穴で凹凸になっても外観上問題はない。
【0021】
図5は、上板6aと6bと支持部品12の斜視図である。上板6aと6bは同一の部品である。図5において、上板6aに2個の連結部11を設け、連結部11には支持部品12の径より少し大きい穴を開け、この穴に支持部品12を通して上板6aを保持する。上板6aと6bには果実のつるを通すための半円形の切り欠き13があり、2枚の上板の切り欠きを突き合わせるように配置してできるほぼ円形の穴につるを通す。上板6aと6bは果実が肥大するときに加わる圧力に十分耐えるように3mm〜5mmの厚さの透明な樹脂で作り、連結部11を一体成型する。連結部11を設けた面の反対側の面が果実を圧迫する面となり、圧迫する面は平坦に作る。支持部品12は支持部品2a等と同じ径を持つ2本の棒状の金属で、両端にナットを取り付けるためのネジ山を刻んでいる。
【0022】
上板6aと6bと支持部品12を成型栽培装置に組み込むときは、同時に果実も成型栽培装置に収める。その方法を説明すると、支持部品12を図5のように上板6aに差し込んだ後、果実のつるを上板6aの切り欠き13を通し、果実を圧迫する面が果実の表面に接するように上板6aを果実の上に置く。次に上板6bの切り欠き13を上板6aの切り欠き13に突き合わせる向きに上板6bを支持部品12に差し込む。この状態で、果実を上板6aと6bの下にして、果実と上板6aと6bと支持部品12を図4のように上面が開いた成型栽培装置に上から収める。その時に圧迫板4aと4bの間隔と圧迫板4cと4dの間隔が大きく開いていると収める作業が容易になる。
図6は、支持部品2a、2b、2c、2dと支持部品3a、3b、3c、3dと支持部品9aと9bを動かして、圧迫板4aと4bの間隔と圧迫板4cと4dの間隔を大きく開けた、成型栽培装置の上面図である。図6の下には収める前の果実15と果実のつると上板6aと6bと支持部品12も図示している。図6で分かるように、支持部品12の長さが圧迫板4aと4bの間隔より短ければ作業が容易になる。圧迫板4aと4bの間隔は支持部品3a、3b、3c、3dの長さより少し短いので、支持部品12の長さは長くても支持部品3a、3b、3c、3dの長さより短くする。作業を容易にするためには支持部品3a、3b、3c、3dの長さを十分長くして、余裕をもって果実15と上板6aと6bと支持部品12を成型栽培装置に収めるようにするのが好ましい。
【0023】
果実と上板6aと6bと支持部品12を成型栽培装置に納めたら、支持部品12の両端を圧迫板4aと4bの穴8に貫通させる。穴8の穴径は支持部品12の径よりやや大きいので、貫通させた後支持部品12が動かないようにナット14を取り付ける。図7と図8は図6の上板6aと6b等を成型栽培装置に全て納めた後、支持部品2a、2b、2c、2dと支持部品3a、3b、3c、3dと支持部品9aと9bと支持部品12のナット14を調整して、圧迫板4aと4bの間隔と圧迫板4cと4dの間隔を目的の造形の大きさに合わせて狭くした成型栽培装置の上面図である。図7は造形の大きさが小さい場合で、図8は造形の大きさが大きい場合である。なお図7と図8には果実は省略して図示していない。
【0024】
図7と図8に示すように、支持部品を移動し、圧迫板4aと4bの間隔と圧迫板4cと4dの間隔を調整し、造形する六面体の縦と横の寸法を調整できる。六面体の高さを調整する場合は、下板5の上にあらかじめ目的の六面体の高さになるような厚みの樹脂製の板を敷いておきその上に果実を設置する。あるいは図9のように、圧迫板に穴を2個ずつ2列の合計4個設け、上板と下板を保持する支持部品を穴に貫通させる際にどちらかの列を選択して上板と下板の取り付け高さを調整する。
【0025】
造形済の果実を収穫する場合は、果実のつるを切った後に果実を成型栽培装置に収めた手順の逆を行い、成型栽培装置から果実を取り出す。
【0026】
このように本発明では圧迫板4a、4b、4c、4dの外周を開放状態にして圧迫板の外周を結合していない。このためそれぞれの圧迫板を支える支持部品2aと2b、2cと2d、3aと3b、3cと3dを果実から遠ざける方向に移動して、圧迫板で囲んだ領域を広げることができる。このため、果実が肥大して果実の表面が圧迫板に沿った形状に造形されても、圧迫板で囲んだ領域を広げれば果実の肥大を継続させることができる。
【0027】
圧迫板4aの連結部7a、7b、7c、7dに設けた穴の径は支持部品2aと2bの径より少し大きいので、圧迫板4aがずれる可能性がある。このため、止め輪を支持部品2aと2bにはさんで圧迫板4aのずれを防ぐ。同様に、圧迫板4b、4c、4dのずれを防ぐために支持部品2cと2dと支持部品3a、3b、3c、3dに止め輪をはさみ、上板6aと6bのずれを防ぐために支持部品12に止め輪をはさむ。また、ナット14は蝶ナットを使用すればより組立作業が容易になる。また、圧迫板4の連結部7a、7b、7c、7dは一体成型で作る方法以外に、たとえばタップネジで突起物を圧迫板4に埋め込み支持部品を保持してもよいし、パイプ状の部品を接着剤やひもで圧迫板4に固定しパイプに支持部品を通して保持してもよい。第1の実施例では一つの圧迫板に連結部を4個設け、2個の支持部品で保持した例であったが、果実の圧力が大きい場合は連結部の数を増すとともに、支持部品の数を増して果実の圧力で部品が壊れないようにする。同様に上板や下板も連結部の数や支持部品の数を増して果実の圧力で部品が壊れないようにする。
【0028】
図10と図11は果実が肥大する場合に成型栽培装置に加わる圧力を説明するための模式図である。図10は成型栽培装置を圧迫板4a側から見た模式図で、図11は成型栽培装置を圧迫板4c側から見た模式図である。
【0029】
図11の圧迫板4aを押す果実16の圧力は、圧迫板4aに加わり、圧迫板4aに密着して取り付けられた支持部品2aと2bに加わる。同時に、図11で分かるようにナット14を通して支持部品12にも加わる。支持部品2aと2bに加わる圧力は支柱1aと1dに加わり、最終的にはナット14を通して支持部品3a、3b、3c、3dに加わる。図11から分かるように、圧迫板4aに加わる圧力を二つの支持部品12と支持部品2aと支持部品2bの4箇所の支点で受け止めているため、各支点の間の間隔は、圧迫板4aの縦または横の寸法より短い。同様に、図10の圧迫板4cを押す果実16の圧力を、支持部品9aと9bと支持部品3aと支持部品3bの4箇所の支点で受け止めているため、各支点の間の間隔は、圧迫板4cの縦または横の寸法より短い。
図10と図11の下板5を押す果実16の圧力は、下板5に加わり、下板5に密着して取り付けられた支持部品9aと9bに加わり、圧迫板4cと4dに加わり、最終的には連結部7a、7b、7c、7dを通して支持部品3a、3b、3c、3dに加わる。図11から分かるように、下板5に加わる圧力を受け止める支持部品9aと支持部品9bの支点の間隔は下板5の縦または横の寸法より短い。
図10と図11の上板6aを押す果実16の圧力は、上板6aに加わり、上板6aに密着して取り付けられた支持部品12に加わり、圧迫板4aと4bに加わり、最終的には連結部7a、7b、7c、7dを通して支持部品2a、2b、2c、2dに加わる。図10から分かるように、上板6aに加わる圧力を受け止める支持部品12の支点の間隔は、上板6aの縦または横の寸法の長い方の寸法より短い。
【0030】
このように、本発明では、圧迫板や下板や上板の、外周でない内部を複数の支持部品で支える構造なので、支持部品の支点の間隔は、各々の板の縦や横の寸法より短く、これらの板を外周で支える場合の支点間の間隔より短くなり、果実の圧力による板の割れが起こりにくい。
【0031】
次に第2の実施例を図12で説明する。第2の実施例は円柱状の果実を造形する成型栽培装置で、図12は第2の実施例の圧迫板17の斜視図である。第2の実施例の成型栽培装置は、第1の実施例の圧迫板4a、4b、4c、4dの代わりに圧迫板17と同じ部品を4個使用し、その他の構成部品は第1の実施例と共通である。
圧迫板17の内壁は凹凸のない曲面でこの面で果実を圧迫する。圧迫板17の内壁の曲面を円筒を縦に4分割した形状に成型し、4個の圧迫板17を円筒状に組み合わせて内部に円柱状の領域を作り、内部で果実を肥大させて円柱状の果実を造形する。圧迫板17の果実を圧迫する面の裏面には穴を開けた連結部18を設け、連結部18の穴に支持部品を通して圧迫板17を保持する。圧迫板17の上部には支持部品を通すための穴19が開けてある。連結部18の穴に図2の支柱1a、1b、1c、1dに取り付けられた支持部品2a、2b、2c、2dと支持部品3a、3b、3c、3dを通し、第1の実施例の圧迫板4a、4b、4c、4dと同様に4個の圧迫板17を保持する。圧迫板17は透明な樹脂で作り、連結部18を一体成型する。
下板5の支持部品9aと9bを穴19に通して下板5を保持し、上板6aと6bの支持部品12を穴19に通して上板6aと6bを保持する。下板5で円柱状の果実の底面を造形し、上板6aと6bで円柱状の果実の天面を造形する。上板6aと6bの形状は四角形であるため、造形する果実が大きく、果実が上板からはみ出し円柱状の形状に歪が生じる場合は、上板の形状を半円形に変更する。
【0032】
第2の実施例でも、4個の圧迫板17の外周を開放状態にして圧迫板の外周を結合していない。このためそれぞれの圧迫板を支える支持部品2aと2b、2cと2d、3aと3b、3cと3dを果実から遠ざける方向に移動して、圧迫板で囲んだ領域を広げることができる。このため、果実が肥大して果実の表面が圧迫板に沿った形状に造形されても、圧迫板で囲んだ領域を広げれば、果実の肥大を継続させることができる。
【0033】
次に第3の実施例を説明する。第3の実施例は円柱を横に倒した形状に果実を造形する成型栽培装置で、図13は第3の実施例の圧迫板20と横板21の斜視図である。第3の実施例は下板と上板は用いず、2個の圧迫板20と2個の横板21と、第1の実施例の図2の支柱1a、1b、1c、1dと支持部品2a、2b、2c、2dと支持部品3a、3b、3c、3dで構成される。
2個の圧迫板20は同一の部品で2個の横板21も同一の部品である。圧迫板20の内壁は凹凸のない曲面でこの面で果実を圧迫する。圧迫板20の内壁の曲面は、縦に2分割した円筒を横に倒した形状に成型し、2個の圧迫板20を組み合わせて内部に円柱を横に倒した形状の領域を作り、内部で果実を肥大させる。果実を圧迫する面の裏面に穴を開けた連結部22を設け、圧迫板20の上部には果実のつるを通すための半円状の切り欠きを設ける。圧迫板20は透明な樹脂で作り、連結部22を一体成型する。横板21は平らな板に連結部23を設け、連結部23を設けた面の反対側の面で果実を圧迫する。横板21も透明な樹脂で作り、連結部23を一体成型する。2個の圧迫板20の連結部22の穴に図2の支持部品2aと2bと、支持部品2cと2dを通し、果実を圧迫する面が対向するように取り付ける。2個の横板21の連結部23に支持部品3aと3bと、支持部品3cと3dを通し、果実を圧迫する面が対向するように取り付ける。圧迫板20で円柱を横に倒した形状の果実の曲面を造形し、横板21で果実の平らな側面を造形する。
【0034】
本発明を適用してできる果実の造形は、六面体状や円柱状などにとどまらない。圧迫板や上板や下板や横板を色々な形状に変化し、内壁で作る領域の形状を変えれば任意の形の果実が造形できる。また、果実が重い場合は、第1の実施例のように下板を圧迫板の穴で保持しないで図14のように下板を支える横支柱24を2個用いる。横支柱24の材質は金属の角棒または角管で、側面に下板の支持部品を通すための穴を開ける。図14の例では、穴は3個開けている。横支柱24は図14のように支持部品で支柱に保持され、側面の穴に下板の支持部品を通して下板を保持する。また、上下に生育する圧力が大きい果実の場合はさらに横支柱を追加して上板も横支柱で保持する。第1の実施例では下板を金属の板で作ったが、たとえばスイカのように果実の底面の形状で完熟の状況を判断できる種類もある。そのような果実を成型する場合は果実の底面を見るための穴を下板の中央に開けるか、下板の材料を透明な樹脂にする。
【0035】
その他の適用可能な応用として、第1の実施例の圧迫板と果実の表面の間に図形を切りぬいた透明な樹脂製の板を差し込んで果実を肥大させれば、切りぬいた図形と同じ形状の凸型の図形が果実の表面に造形でき、観賞用としての果実に付加価値を追加できる。第2の実施例のように圧迫板が湾曲している場合は、PET等の軟質樹脂製の図形を切りぬいた板を圧迫板の湾曲に沿って貼り付ける。図形を切りぬいた透明な板を交換すれば、色々な図形を選択でき、汎用的な成型栽培装置にすることができる。
【0036】
本発明の実施例で、必要に応じてナットと支柱の間またはナットと圧迫板の間にスプリングを挿入することが好ましい。スプリングを使用する利点は、スプリングの圧縮の程度を目視で確認し果実の表面に加わっている圧力を推定でき、もし圧力が過大と判断すればナットを緩めて支持部品をずらし、圧力を弱めて果肉が圧力で痛むことを避けることができること、果実が肥大し造形したときに収穫が遅れた場合でも過大な圧力が果実に加わることを避けることができること、成型栽培装置の支柱等の各部に加わる力をできるだけ均等にすることができること、などである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】成型栽培装置の第1の実施例の斜視図
【図2】第1の実施例の支柱と支持部品を取り出して図示した斜視図
【図3】下板5に支持部品9aと9bを結合した状態で裏側から見た斜視図
【図4】下板5を取り付けた後の成型栽培装置の上面図
【図5】上板6aと6bと支持部品12の斜視図
【図6】圧迫板の間隔を大きく開けた成型栽培装置の上面図と成型栽培装置に収める前の果実と上板6aと6bの上面図
【図7】造形の大きさが小さい場合の成型栽培装置の上面図
【図8】造形の大きさが大きい場合の成型栽培装置の上面図
【図9】圧迫板の斜視図
【図10】成型栽培装置を圧迫板4a側から見た模式図
【図11】成型栽培装置を圧迫板4c側から見た模式図
【図12】成型栽培装置の第2の実施例の圧迫板の斜視図
【図13】成型栽培装置の第3の実施例の圧迫板と横板の斜視図
【図14】横支柱を支柱に取り付けた状態の斜視図
【符号の説明】
【0038】
1−−支柱
2、3、9、12−−支持部品
4、17、20−−圧迫板
5−−下板
6−−上板
7、11、18、22、23−−連結部
8、19−−穴
10−−切片
13−−切り欠き
14−−ナット
15、16−−果実
21−−横板
24−−横支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個以上の圧迫板を備え、圧迫板で囲んだ領域の中で果実を肥大させる成型栽培装置において、圧迫板の外周を開放状態にして、果実に対向する面の裏面を複数の支持部品で支え、支持部品を果実から遠ざける方向に移動して圧迫板で囲んだ領域を広げることができる成型栽培装置。
【請求項2】
成型栽培装置の四隅に支柱を立て、支持部品を支柱で保持するとともに、圧迫板に複数の穴を開け、その穴に上板、または下板、または上板と下板の両方の支持部品を貫通させて、上板、または下板、または上板と下板の両方を保持する、1項記載の成型栽培装置。
【請求項3】
上板を保持する支持部品の長さは、長くても圧迫板を保持する支持部品の長さより短いことを特徴とする、1項または2項記載の成型栽培装置。
【請求項4】
図形を切りぬいた透明な板を圧迫板と果実の表面の間に差し込んで果実を肥大させる、1項または2項または3項記載の成型栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−72175(P2009−72175A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274416(P2007−274416)
【出願日】平成19年9月22日(2007.9.22)
【出願人】(507350255)
【Fターム(参考)】