説明

果実の果柄切断機および果柄切断方法、並びに果柄切断装置

【課題】駆動源を必要としない簡単な構成を有し、果実を傷つけることなく確実に果柄を切断可能な果実の果柄切断機および果柄切断方法、並びに果柄切断装置を提供する。
【解決手段】果実の果柄を切断する果実の果柄切断機1であって、平行な一対の支軸20を中心に回動し、刃先22が互いに対向して配置された一対の刃部2と、一対の刃部の下方に配置され、刃先の下側可動範囲を決定する下側ストッパ部3と、一対の刃部の上方に配置され、刃先の上側可動範囲を決定する上側ストッパ部4とを備え、下側ストッパ部3は、一対の刃先22間の開口幅が果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で刃先22を支持するように配置されており、下側ストッパ部3により支持された一対の刃先22間に果柄が挿入され、果柄が上方に引き上げられることにより果実の肩部と接触する一対の刃部2が上方に回動して果柄を切断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の果柄を切断する果実の果柄切断機および果柄切断方法、並びに果柄切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イチゴ、トマト、きゅうり等のように、果柄を介して実が吊下される果実の収穫においては、果実を傷めないために人手による収穫が主であった。しかし近年、農業における労働力不足に加えて、果実の収穫は過酷な作業環境下で長時間労働を強いられることから、作業効率の向上、労働負荷の軽減を目的として収穫作業の機械化に対する要望が高まってきている。
【0003】
このような要望を受けて、画像処理技術やマニピュレーション制御技術などといったロボット技術を活用した果実収穫装置が開発、実用化されている。具体的に果実収穫装置は、主に、果実の位置を検出する画像処理部と、画像処理部で検出された位置に合わせてアームにより把持ハンドを接近させ、把持ハンドで果実を把持、収穫して搬送トレイへ置くマニピュレータとで構成されている。
【0004】
果実収穫装置として、例えば特許文献1(特開2008−206438号公報)には、果実群の下方と正面から果実をそれぞれ撮像する撮像装置を備え、これらの撮像装置で撮像した画像から果実の三次元位置を特定し、この位置に合わせてマニピュレータを作動させて果実を収穫する構成が開示されている。さらにこのマニピュレータは、果実群に向かって左右に並列配置されており、果実との距離に合わせて水平旋回して果実を把持するようになっている。
【0005】
こういった果実収穫装置においては、果実を切断する際に、果実の損傷を防ぐために把持ハンドで果実の直上の茎をつかみ、さらにつかんだ部分の上側で茎を切り取るようになっていた。しかし、結果として、切り取られた果実に余分な茎が残ることとなる。一般に、出荷される果実は、パック等に詰めた際に茎が他の果実に当たって果肉を傷つけないように、あるいは見栄え等の観点から余分な茎は除去されることが望ましい。そこで従来は、余分な茎、すなわち果柄を手作業で切り取っていた。
【0006】
このように、ロボット技術を用いて収穫作業を自動化しても、結果的に新たな手作業が増えてしまい、収穫自動化による効率向上が相殺されてしまうという問題があった。
そこで、特許文献2(特開2008−11819号公報)には、果柄が果実から露出しないように果柄を切断することができる果柄切断装置が開示されている。この装置は、空気または電気などの駆動源により駆動する駆動機構と、該駆動機構に接続された可動刃保持部および可動刃と、可動刃に対向した固定刃とを備える。そして、固定刃と可動刃の間に果柄を挿入し、駆動機構を駆動させて可動刃を固定刃方向へスライドさせて果柄を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−206438号公報
【特許文献2】特開2008−11819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載される果柄切断装置は、駆動機構で可動刃を駆動させる構成となっており、駆動機構を内蔵するため装置が大型化し、また駆動機構の動力エネルギが必要となることからランニングコストが嵩むという問題があった。さらに、可動刃を保持する可動刃ガイドが果実に接触しない位置に配置される構成としており、可動刃と固定刃の間に挿入する果実の位置調整が難しく、所望の長さの果柄が残るように果柄を切断することは困難であった。
【0009】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、駆動源を必要としない簡単な構成を有し、果実を傷つけることなく確実に果柄を切断可能な果実の果柄切断機および果柄切断方法、並びに果柄切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る果実の果柄切断機は、果実の果柄を切断する果実の果柄切断機であって、平行な一対の支軸を中心に回動し、刃先が互いに対向して配置された一対の刃部と、前記一対の刃部の下方に配置され、前記刃先の下側可動範囲を決定する下側ストッパ部と、前記一対の刃部の上方に配置され、前記刃先の上側可動範囲を決定する上側ストッパ部とを備え、前記下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が前記果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で前記刃先を支持するように配置されており、前記下側ストッパ部により支持された前記一対の刃先間に前記果柄が挿入され、前記果柄が上方に引き上げられることにより前記果実の肩部と接触する前記一対の刃部が上方に回動して前記果柄を切断するようにしたことを特徴とする。
【0011】
この果柄切断機によれば、果実の肩部で一対の刃部を押し上げ、これにより刃部を回動させて果柄を切断するようにしたので、刃部を駆動する駆動機構を設けずに済み、装置の小型化が可能で、且つ油圧や空気圧等の駆動源を不要とすることができる。ここで、果柄に近い果実の肩部は、一般に果肉の中でもっとも硬い部分であり、本構成では刃部を押し上げる力しかかからないので、果実を傷めることはない。
また、下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で刃先を支持するように配置されているため、刃部の回動により果実が挟まれて果実に傷がつくことを防止できる。
さらに、上側ストッパ部により上側可動範囲を決定する構成としているため、刃部が必要以上に上方に回動することを防止できる。なお、本発明において果柄とは、果実の柄になっている部分のことをいう。また、果実の肩部とは、果実が吊下された状態で果実の鉛直方向の部位と果柄との間の部分のことをいう。
【0012】
また、上記果柄切断機において、前記一対の刃部は、これらの刃先がそれぞれ前記支軸と同一高さのときに刃先端が互いに一致するように構成され、前記上側ストッパ部は、前記刃先が前記支軸より上方へ回動することを規制するように配置されていてもよい。
【0013】
刃先端が一致する位置が支軸の高さより下側であると、下側ストッパ部で支持される刃先端の位置もより下側に移動する。そうすると、果実の肩部が刃部に接触するとき、刃先がより大きな角度をもって果実の肩部に接触することとなり、果実を傷つける可能性が出てくる。したがって、本構成のように、刃先がそれぞれ支軸と同一高さのときに刃先端が互いに一致するように構成されることにより、下側ストッパ部で支持される刃部をより水平に近い角度とすることができ、刃先で果実が傷つくことを防ぐことができる。
【0014】
また、上記果柄切断機において、前記一対の支軸にそれぞれ連結して前記一対の刃部の回動を左右対称で同期させる機構、例えばギヤ部をさらに備える構成としてもよい。
このように、ギヤ部により一対の刃部の回動を左右対称で同期させることにより、対向する刃先端を正確に一致させることができ、果柄を確実に切断することが可能となる。
【0015】
さらに、上記果柄切断機において、前記果実の種類に応じて、前記刃部の前記果実との接触部位から刃先端までの前記刃部の肉厚方向の高さを調整する調整手段をさらに備える構成としてもよい。
【0016】
このように、刃部の果実との接触部位から刃先端までの刃部の肉厚方向の高さを調整する調整手段を備えることにより、果柄切断後の果柄の長さを自在に設定可能となる。通常、果実はその種類に応じて、出荷時に残しておくべき果柄の長さがおおよそ決まっている。したがって、上記したような調整手段を備えることにより、適切な長さの果柄を残すことができ、果実の商品価値を高くすることができる。
【0017】
本発明に係る果実の果柄切断方法は、果実の果柄を切断する果実の果柄切断方法であって、平行な一対の支軸を中心に回動する一対の刃部が用いられ、前記一対の刃部の各刃先が下側ストッパで支持された状態で、これらの刃先間の隙間に前記果柄が挿入される工程と、前記果柄が上方に引き上げられるに従って前記果実の肩部で前記刃部が押されて上方に回動し、前記果柄を切断する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
この果柄切断方法によれば、果実の肩部で一対の刃部を押し上げ、これにより刃部を回動させて果柄を切断するようにしたので、果柄の切断動作を少ない工程で行うことができ、収穫作業の時間の短縮化が図れる。また、駆動機構を用いる必要がないため、果柄切断作業の簡易化が可能となる。
【0019】
また、本発明に係る果実の果柄切断装置は、果実の果柄を切断する果実の果柄切断装置であって、前記果実の果柄を把持し、前記果実ごと前記果柄を移動させる把持部と、平行な一対の支軸を中心に回動し、刃先が互いに対向して配置された一対の刃部と、前記一対の刃部の下方に配置され、前記刃先の下側可動範囲を決定する下側ストッパ部と、前記一対の刃部の上方に配置され、前記刃先の上側可動範囲を決定する上側ストッパ部とを備え、前記下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が前記果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で前記刃先を支持するように配置されており、前記下側ストッパ部により支持された前記一対の刃先間に前記把持部で把持した前記果柄を挿入し、前記把持部により前記果柄を上方に引き上げることにより前記果実の肩部と接触する前記一対の刃部が上方に回動して前記果柄を切断するようにしたことを特徴とする。
【0020】
この果柄切断装置によれば、果実の肩部で一対の刃部を押し上げ、これにより刃部を回動させて果柄を切断するようにしたので、刃部を駆動する駆動機構を設けずに済み、装置の小型化が可能で、且つ油圧や空気圧等の駆動源を不要とすることができる。
また、下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で刃先を支持するように配置されているため、刃部の回動により果実が挟まれて果実に傷がつくことを防止できる。
さらに、上側ストッパ部により上側可動範囲を決定する構成としているため、刃部が必要以上に上方に回動することを防止できる。なお、本発明において把持部は、油圧または空気圧、あるいは電気等により駆動するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上記載のように本発明によれば、果実の肩部で一対の刃部を押し上げ、これにより刃部を回動させて果柄を切断するようにしたので、刃部を駆動する駆動機構を設けずに済み、装置の小型化が可能で、且つ油圧や空気圧等の駆動源を不要とすることができる。
また、下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で刃先を支持するように配置されているため、刃部の回動により果実が挟まれて果実に傷がつくことを防止できる。
さらに、上側ストッパ部により上側可動範囲を決定する構成としているため、刃部が必要以上に上方に回動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る果柄切断機の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した果柄切断機の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る果柄切断機の作用を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る果柄切断機の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る果柄切断機の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る果柄切断機を説明する。ここで、図1は本発明の実施形態に係る果柄切断機の一例を示す斜視図で、図2は図1に示した果柄切断機の側面図である。
本実施形態の果柄切断機1は、果実の果柄を切断するものである。なお、本実施形態の果柄切断機1が適用できる果実は、イチゴ、ぶどう、さくらんぼ、トマト、きゅうり、ピーマン等のように、果柄を介して実が茎に吊下される果実である。このとき、果実は、果物や野菜(あるいは分類方法により果菜類)を含むものである。また、果柄とは、果実の柄になっている部分のことをいう。
【0025】
この果柄切断機1は、一対の刃部2と、刃部2の下方に配置される下側ストッパ部3と、刃部2の上方に配置される上側ストッパ部4とを備える。
一対の刃部2は、フレーム5に取り付けられた一対の支軸20を中心に、それぞれ自在に回動するようになっている。これらの刃部2の刃先22は、互いに対向して配置されている。そして、支軸20に対して刃先22が所定の角度に位置するときに、一対の刃先端22aが互いに一致するようになっている。好適には、一対の刃部2は、これらの刃先22がそれぞれ支軸20と同一高さのとき、すなわち刃部2の刃面21が水平になったときに、刃先端22aが互いに一致するように構成されるとよい。ここで、「刃先端22aが一致する」とは、2つの刃先端22aが接する状態、および果柄径より小さい間隙を存して非接触で近接する状態を含む。また、刃部2は、板状で且つ刃先端22aが直線状である直線刃を用いることが好ましい。ここで、支軸20には、例えばヒンジ等が用いられる。
【0026】
通常、一対の刃部2は、初期状態において重力により刃先22が下方に位置して、後述する下側ストッパ部3で支持されるようになっているが、確実に刃先22が下方に位置するように、バネ部材7等の弾性部材を設けてもよい。例えば、バネ部材7は刃部2の下面とフレーム5との間に張架され、刃先22に対して下向きの力を強制的に加えるようになっている。
【0027】
下側ストッパ部3は、刃先22の下側可動範囲を決定するものである。具体的には、下側ストッパ部3は、一対の刃先22間の開口幅が果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で刃先22を支持するように、一対の刃部2の下方にそれぞれ配置されている。なお、果実の肩部とは、果実が吊下された状態で果実の鉛直方向の部位と果柄との間の部分のことをいう。
上側ストッパ部4は、刃先22の上側可動範囲を決定するものであり、刃先22が支軸20より上方、すなわち水平方向より上方へ回動することを規制するように配置する。この上側ストッパ部4は、一対の刃部2のそれぞれに個別に設けてもよいし、一対の刃部2の両方を規制するように一つだけ設けてもよい。
【0028】
また、本発明の実施形態に係る果柄切断装置は、上記した果実切断機1に加えて、果実の果柄を把持し、果実ごと果柄を移動させる把持部10(図3参照)をさらに備えている。把持部10は、果実の果柄を掴んで一対の刃先22間に果柄を挿入する位置に移動し、その後果柄を上方に引き上げる動作を行う。この把持部10は、油圧または空気圧、あるいは電気等を用いた駆動機構により上記動作を実行するようにしてもよい。
【0029】
次に、図3を用いて、本実施形態に係る果柄切断機の作用を、果柄切断方法とともに説明する。
果柄切断機1の最初の状態は、重力により刃部2の刃先22が下方に位置し、下側ストッパ部3により支持されている。
図3(A)に示すように果柄挿入工程において、把持部10は、果柄32を把持した状態で刃部2まで移動し、果柄32を刃先22間に挿入する。
次いで、図3(B)に示すように果柄切断工程において、把持部10は果柄32を上方に引き上げる。これにより果実30の肩部33で刃部2が押されて上方に回動する。一対の刃部2が同時に回動し、これに伴い一対の刃先端22a間の開口幅が減少し、水平位置に近くなると刃先端22aが果柄32に切り込み、刃部2の刃面21がほぼ水平になる位置で果実30を切断する。
【0030】
そして、図3(C)に示すように、果実30の果肉部分31から果柄32を切り離す。切り離された果実30を受ける収納ケース内には、緩衝部材を敷設しておくことが好ましい。
なお、果柄切断機1を長時間稼働し、刃先22がなまってしまい果柄32を完全に切断できなかった場合、最終的には果柄32を引き切ることになるが、その際に引く力が加わるのは一対の刃部2に挟まれた果柄32の部分であり、果肉31には無理な力が働かないので果肉31を傷めることはない。
【0031】
上記した果柄切断機1は、果実30を主茎から自動で収穫する果実収穫装置とともに設置し、これらの装置間で把持部10を共通化してもよい。具体的には、果実収穫装置と収納ケースとの間に果柄切断機1を設置する。そして、果実収穫装置にて果実30を収穫した後、把持部10で果柄32をつかんだ状態のまま果柄切断機1に移動し、果柄切断機1で果柄32を切断して収納ケースに果実を収納する。このような一連の作業の流れとすることで、果柄切断機1を設置しない場合と比べても、収穫から収納までの動作時間にほとんど影響を与えずに収穫作業を行うことが可能となる。
【0032】
本実施形態の果柄切断機1によれば、果実30の肩部33で一対の刃部2を押し上げ、これにより刃部2を回動させて果柄32を切断するようにしたので、刃部2を駆動する駆動機構を設けずに済み、装置の小型化が可能で、且つ油圧や空気圧等の駆動源を不要とすることができる。なお、果柄32に近い果実30の肩部33は、一般に果肉31の中でもっとも硬い部分であり、本構成では刃部2を押し上げる力しかかからないので、果実30を傷めることはない。
また、下側ストッパ部3は、一対の刃先22間の開口幅が果実30の肩幅33より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で刃先22を支持するように配置されているため、刃部2の回動により果実30が挟まれて果肉31に傷がつくことを防止できる。
さらに、上側ストッパ部4により上側可動範囲を決定する構成としているため、刃部2が必要以上に上方に回動することを防止できる。
【0033】
さらに、上記果柄切断機1において、一対の刃部2は、これらの刃先22がそれぞれ支軸20と同一高さのときに刃先端22aが互いに一致するように構成され、上側ストッパ部4は、刃先22が支軸20より上方へ回動することを規制するように配置されていてもよい。
刃先端22aが一致する位置が支軸20の高さより下側であると、下側ストッパ部3で支持される刃先端22aの位置もより下側に移動する。そうすると、果実30の肩部33が刃部2に接触するとき、刃先22がより大きな角度をもって果実30の肩部33に接触することとなり、果肉31を傷つける可能性が出てくる。したがって、本構成のように、刃先22がそれぞれ支軸20と同一高さのときに刃先端22aが互いに一致するように構成されることにより、下側ストッパ部3で支持される刃部2をより水平に近い角度とすることができ、刃先22で果肉31が傷つくことを防ぐことができる。
【0034】
ここで、図4および図5を参照して、本発明の実施形態に係る果柄切断機の変形例について説明する。
【0035】
図4に示す果柄切断機1は、果柄切断後に果実30に残される果柄32の長さを調整可能な調整手段を備えた構成となっている。この調整手段は、刃部2の果実30との接触部位から刃先端22aまでの刃部2の肉厚方向の高さを調整するものである。
通常、果実30はその種類に応じて、出荷時に残しておくべき果柄32の長さがおおよそ決まっている。そこで、以下に示す調整手段を備えることによって、適切な長さの果柄32を残すことができ、果実30の商品価値を高くすることができる。
ここで、上記した図1乃至図3においては、刃先22の切削面である傾斜面を果実30と接しない方向(上側)に設置しているため、茎の根元で果柄32を切断することができ、果柄32はほとんど果実30に残らない。
【0036】
図4(A)に示す刃部2は、刃先22の切削面である傾斜面22bを果実30と接する方向(下側)に設置している。なお、この傾斜面22bは平面状に形成されている。
これにより果実30に少しの果柄32を残すことができる。
図4(B)に示す刃部2は、図4(A)と同様に、刃先22の切削面を果実30と接する方向に設置している。さらにこの切削面を、果実30の表面に沿って湾曲させた湾曲面22cとしている。これにより果実30と刃部2の接触面積を増大し、果実30の肩部33に加えられる力を分散することができる。
【0037】
図4(C)に示す刃部2は、刃部2の肉厚を厚くし、刃先22に段差部22dを設けている。そして、段差部22dの上部に刃先端22aを形成し、段差部22dの最下面に果実30の肩部33が接触するようになっている。この段差部22dの高さDを調整することにより、果実30に残す果柄32の長さを調整可能となっている。
図4(D)に示す刃部2は、刃部2の下面に着脱自在な調整部材22eを備えた構成となっている。調整部材22eを取り付けた刃部2において、調整部材22eの下面が果実30の肩部33に接触するようになっている。このように、必要に応じて調整手段22eを取り付けることにより、果実30に残す果柄32の長さを調整可能となっている。なお、調整部材22eは高さが異なるものを複数用意しておくことで、複数段階の果柄長さ調整が可能となる。
【0038】
図5に示す果柄切断機1は、上記した構成に加えて、一対の刃部2の回動を左右対称で同期させるギヤ部40を備えた構成となっている。ギヤ部40は、端部ギヤ41と中間ギヤと42を有する。端部ギヤ41は、一対の支軸20にそれぞれ連結して該支軸20と同時に回転する。この2つの端部ギヤ41間には、偶数個の中間ギヤ42が設けられている。端部ギヤ41と中間ギヤ42とは互いに噛み合うように配置され、これにより一対の刃部2の回動を左右対称で同期させるようになっている。
また、中間ギヤ42を設けない構成としてもよく、この場合、端部ギヤ41同士を互いに噛み合わせて左右対称に同期させるようにする。
このように、ギヤ部40により一対の刃部2の回動を左右対称で同期させることにより、対向する刃先端22aを正確に一致させることができ、果柄32を確実に切断することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 果実切断機
2 刃部
3 下側ストッパ部
4 上側ストッパ部
5 フレーム
7 バネ部材
20 支軸
21 刃面
22 刃先
22a 刃先端
22b 傾斜面
22c 湾曲面
22d 段差部
22e 調整部材
25 緩衝部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の果柄を切断する果実の果柄切断機であって、
平行な一対の支軸を中心に回動し、刃先が互いに対向して配置された一対の刃部と、
前記一対の刃部の下方に配置され、前記刃先の下側可動範囲を決定する下側ストッパ部と、
前記一対の刃部の上方に配置され、前記刃先の上側可動範囲を決定する上側ストッパ部とを備え、
前記下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が前記果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で前記刃先を支持するように配置されており、
前記下側ストッパ部により支持された前記一対の刃先間に前記果柄が挿入され、前記果柄が上方に引き上げられることにより前記果実の肩部と接触する前記一対の刃部が上方に回動して前記果柄を切断するようにしたことを特徴とする果実の果柄切断機。
【請求項2】
前記一対の刃部は、これらの刃先がそれぞれ前記支軸と同一高さのときに刃先端が互いに一致するように構成され、
前記上側ストッパ部は、前記刃先が前記支軸より上方へ回動することを規制するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の果実の果柄切断機。
【請求項3】
前記一対の支軸にそれぞれ連結して前記一対の刃部の回動を左右対称で同期させる機構、例えばギヤ部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の果実の果柄切断機。
【請求項4】
前記果実の種類に応じて、前記刃部の前記果実との接触部位から刃先端までの前記刃部の肉厚方向の高さを調整する調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の果実の果柄切断機。
【請求項5】
果実の果柄を切断する果実の果柄切断方法であって、
平行な一対の支軸を中心に回動する一対の刃部が用いられ、前記一対の刃部の各刃先が下側ストッパで支持された状態で、これらの刃先間の隙間に前記果柄が挿入される工程と、
前記果柄が上方に引き上げられるに従って前記果実の肩部で前記刃部が押されて上方に回動し、前記果柄を切断する工程とを有することを特徴とする果実の果柄切断方法。
【請求項6】
果実の果柄を切断する果実の果柄切断装置であって、
前記果実の果柄を把持し、前記果実ごと前記果柄を移動させる把持部と、
平行な一対の支軸を中心に回動し、刃先が互いに対向して配置された一対の刃部と、
前記一対の刃部の下方に配置され、前記刃先の下側可動範囲を決定する下側ストッパ部と、
前記一対の刃部の上方に配置され、前記刃先の上側可動範囲を決定する上側ストッパ部とを備え、
前記下側ストッパ部は、一対の刃先間の開口幅が前記果実の肩幅より小さく且つ果柄径より大きくなる位置で前記刃先を支持するように配置されており、
前記下側ストッパ部により支持された前記一対の刃先間に前記把持部で把持した前記果柄を挿入し、前記把持部により前記果柄を上方に引き上げることにより前記果実の肩部と接触する前記一対の刃部が上方に回動して前記果柄を切断するようにしたことを特徴とする果実の果柄切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239386(P2012−239386A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108808(P2011−108808)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】