説明

果実の軟化に関係があるB−D−N−アセチルヘキソサミニダーゼのポリヌクレオチド配列、および果実の貯蔵寿命を延長するためのその使用

本発明は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はさらに、センス方向またはアンチセンス方向にβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA構築物、RNAi構築物、上記構築物を含む組換えベクター、および本発明において開示される組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明はさらに、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼタンパク質の蓄積が減少し、果実の貯蔵寿命が延長された、上記ポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック植物、植物細胞、トランスジェニック子孫および種子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の軟化(softening)に関係がある酵素である、植物由来のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
果実および野菜の収穫後の損失は、すぐに傷んでしまうことであり、大量の生産物が消費者に届いていない事実があるので、発展途上国における重大な懸念である。果実および野菜の2番目に大きな生産国であるインドでは、この損失が全生産量の35%〜40%を占める。損失は1年間に4000億ルピーと推定され、経済に直接影響を及ぼしている。果実および野菜作物の収穫後の劣化を決定づける主要な要因は、軟化の速度(これは貯蔵寿命に影響を与える)、廃棄、収穫後の病原体による感染、収穫の頻度であり、これらは輸送および貯蔵を制限する。これらは全てコストに直接影響を与える。分子ベースで軟化を理解するための試みは、細胞壁の代謝に焦点がおかれており、トマトがこれらの研究のための主なモデルシステムとされている。しかし、トランスジェニックトマト果実において、セルロース、ヘミセルロース、およびペクチン多糖類に作用する数種のタンパク質の発現を低下させることでは、果実の軟化を防ぐためには不十分であることが証明されており[Brummell DA、Harpster MH (2001) Plant Mol Biol. 47:311〜340およびGiovannoni J (2001) Annual Review of Plant Physiology and Plant Molecular Biology 52:725〜749]、したがって、これらの細胞壁成分の修飾だけが果実の硬度を決定する要因ではないことが示唆されている。
【0003】
N-糖タンパク質は、植物の細胞壁の構成要素の1種であり、遊離のN-グリカンもまた、トマト果実に存在することが報告されている。さらに、遊離のN-グリカンがトマト果実の熟成を誘導することが知られており、ツニカマイシンでのN-グリコシル化のブロックによって果実の熟成が遅遅し、このことは、N-糖タンパク質のプロセシングが熟成プロセスにおいて重要であることを示唆している[Priem B、Gitti R、Bush CAおよびGross KC (1993) Plant Physiol. 102:445〜458]。植物を供給源とするほとんどの糖タンパク質には、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性の結果としての分泌経路(secretary pathway)における末端GlcNAc残基の除去によって生じる相当量の低マンノース(paucimannosidic)N-グリカンが含まれる(Strasser R、Bondili JS、Schoberer J、Svoboda B、Liebminger E、Glossl J、Altmann F、Steinkellner HおよびLukas Mach (2007) Plant Physiology 145:5〜16)。さらに、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼは、トマトおよびトウガラシの熟成の間、一貫して活性の増大を示し、バナナ、マンゴー、パパイヤなどにも存在する(Jagadeesh BHおよびPrabha TN (2002) Phytochemistry、61(3):295〜300ならびにJagadeesh BH、Prabha TNおよびSrinivasan K (2004) Plant Science 166(6):1451〜1459)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Brummell DA、Harpster MH (2001) Plant Mol Biol. 47:311〜340
【非特許文献2】Giovannoni J (2001) Annual Review of Plant Physiology and Plant Molecular Biology 52:725〜749
【非特許文献3】Priem B、Gitti R、Bush CAおよびGross KC (1993) Plant Physiol. 102:445〜458
【非特許文献4】Strasser R、Bondili JS、Schoberer J、Svoboda B、Liebminger E、Glossl J、Altmann F、Steinkellner HおよびLukas Mach (2007) Plant Physiology 145:5〜16
【非特許文献5】Jagadeesh BHおよびPrabha TN (2002) Phytochemistry、61(3):295〜300
【非特許文献6】Jagadeesh BH、Prabha TNおよびSrinivasan K (2004) Plant Science 166(6):1451〜1459
【非特許文献7】Wesley SV、Helliwell CA、Smith NA、Wang MB、Rouse DT、Liu Q、Gooding PS、Singh SP、Abbott D、Stoutjesdijk PA、Robinson SP、Gleave AP、Green AGおよびWaterhouse PM (2001) Plant J 27:581〜590
【非特許文献8】Orzaez DF、Mirabel S、Wieland WH and Granell A (2006) Plant Physiol 140:3-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トマト(Solanum lycopersicum)およびトウガラシ(Capsicum annuum)の、果実の軟化に関係がある酵素であるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの精製および特徴付けに関する。本発明はまた、トマトのβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ遺伝子およびトウガラシのβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ遺伝子の同定、単離およびクローニングにも関する。本発明はさらに、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼタンパク質の蓄積が減少し、果実の貯蔵寿命が延長されたトランスジェニック植物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0007】
本発明の別の態様は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、トランスジェニック植物においてヘキソサミニダーゼの発現を抑制するためのRNAi構築物を提供し、この構築物は、配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、前記センスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖とを含み、このアンチセンスポリヌクレオチド鎖とセンスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、植物において果実の軟化を遅延させるための方法を提供し、この方法は、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換する段階を含み、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドはアンチセンス方向にある。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、植物において果実の軟化を遅延させるための方法を提供し、この方法は、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階であって、上記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする、段階と、得られた植物を、非トランスジェニック植物と比較したヘキソサミニダーゼレベルの低下についてスクリーニングする段階とを含む。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、植物において果実の軟化を遅延させるための方法を提供し、この方法は、配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、このセンスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖とを含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階であって、このアンチセンスポリヌクレオチド鎖とセンスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成する、段階と、得られた植物を、非トランスジェニック植物と比較したヘキソサミニダーゼレベルの低下についてスクリーニングする段階とを含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、トランスジェニック植物、その種子または子孫が提供され、この植物におけるヘキソサミニダーゼの発現は、果実の軟化を遅延させるように制御されている。
【0013】
本発明の上記および他の特徴、態様、ならびに利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面に関してさらによく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】以下を示す図である。 A)トマト果実の熟成の間のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性。データは平均値±SEM、n=4である。MG-緑熟期(matured green)、B-催色期(breaker)、P-桃熟期(pink)、RR-完熟期(red ripe)。 B)トマトから精製したβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼタンパク質の6%非変性PAGE分析。 C)トウガラシから精製したβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼタンパク質の6%非変性PAGE分析。 D)N-グリカン基質に対するトマトのβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性。N-グリカン1およびN-グリカン2は、二分岐のN結合コア五糖(core pentasaccharide)であり、それぞれ二分岐のアシアロ、アガラクトである。 E)トウガラシ果実の生長段階および熟成段階の間のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性。活性は8段階で調べた(S1〜S8)。 F)トマトの精製したタンパク質の2DE分析。スポット1、2、および3をSlHEX1として同定した。 G)トウガラシの精製したタンパク質の2DE分析。スポット1、2、および3をCaHEXO1として同定した。
【図2】以下を示す図である。 A)定量的リアルタイム逆転写酵素PCR(qRT PCR)分析によって決定したトマト果実の熟成の間のSlHEX1遺伝子の発現。データは平均値±SEM、n=3である。 B)ペプチドベースの抗体を使用したウェスタンブロッティングによって決定したSlHEX1のタンパク質レベル発現。
【図3】以下を示す図である。 A)β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性に対する、アグロインジェクション(agroinjection)によるトマト果実におけるSlHEX1の一過性のサイレンシングおよび過剰発現の影響。5RH1および3RH1は、それぞれ、SlHEX1の5’配列および3’配列から設計されたRNAi構築物である。7FH1はSlHEX1の過剰発現を示す。 B)ノーザンブロッティングによる遺伝子のサイレンシングの確認。Cは対照である。(空のベクターを注入した) C)ウェスタンブロッティングによる遺伝子のサイレンシングの確認。「+Ve」は精製されたタンパク質を示す。 D)アグロインジェクションの15日後の、RNAiをアグロインジェクションした果実の硬度の定量的測定。データは、平均値±SEM、n=30、P<0.0001である。
【図4】以下を示す図である。 A)SlHEX1の細胞内局在化。C末端GFP融合タンパク質を、アグロインジェクションによってトマト果実において一過性に発現させた。GFPシグナルを細胞壁において観察した。 B)qRT PCR分析によって決定される、熟成欠損変異株rin、norおよびNrにおけるSlHEX1の、野生型(Ailsa craig)と比較した相対的発現。データは平均値±SEM、n=3である。 C)qRT PCRによって決定される、遺伝子のACC誘導性。データは平均値±SEM、n=3である。
【図5】以下を示す図である。 A)qRT PCR分析と酵素アッセイとによってそれぞれ決定した、SlHEX1過剰発現株のTO果実におけるSlHEX1の転写レベルおよびβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性。Cは対照(野生型)である。データは平均値±SEM、n=3である。 B)qRT PCR分析と酵素アッセイとによってそれぞれ決定した、SlHEX1 RNAi/アンチセンス株におけるSlHEX1の転写レベルおよび酵素活性。データは平均値±SEM、n=3である。 C)SlHEX1を抑制したT0株およびSlHEX1を過剰発現させたTO株に由来する果実の、様々な熟成段階での、5mmの圧縮解析。データは平均+s.e.m.、n=15である。OR-過剰熟成期(over ripe)(桃熟期+10日)。 D)低速度撮影写真によって記録した、収穫後の果実の劣化の進行。トランスジェニック植物に由来する果実(TO)および野生型植物に由来する果実を、桃熟期で収穫し、室温(55%〜60%の相対湿度で22℃〜24℃)で保存した。収穫後の時間は日数で特定する。 E)トルイジンブルー色素で染色した桃熟期の果実および完熟期の果実の切片。
【図6】RNAi株を作製するために使用した組換えベクター(p5RH1およびp3RH1)の図を示す。
【図7】過剰発現株を作製するために使用した組換えベクター(pOVH1)の図を示す。
【図8】アンチセンス株を作製するために使用した組換えベクター(pAH1)の図を示す。
【図9】一過性の過剰発現の実験および細胞内局在化実験に使用した組換えベクター(p7FH1)の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、トマトおよびトウガラシの、果実の軟化に関係があるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼに関する。本発明は、特に、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼをコードするポリヌクレオチド配列に関し、植物におけるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの発現のRNAiおよびアンチセンスを介した抑制によって果実の軟化が遅延し、過剰発現によって果実の軟化が促進される。
【0016】
本発明の発明者らは、果実の軟化における調節の役割などの、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの有用な生理学的機能に焦点をおいていた。本発明は、そのような要件を考慮して行われ、その目的は、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを低下させることにより、果実の貯蔵寿命を延長するために果実の軟化を遅延させる方法を提供することである。
【0017】
本発明は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、DNA構築物、組換えベクター、および組換え宿主細胞を提供する。本発明はさらに、本発明において開示されるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼのポリヌクレオチド配列を使用して、植物において果実の軟化を遅延させる方法を提供する。さらに、本発明は、植物においてβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼを抑制することにより、果実の貯蔵寿命が延長されたトランスジェニック植物、その子孫および種子も提供する。
【0018】
アンチセンス技術およびRNAi技術を使用してβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ遺伝子の発現を抑制することによって得られる生じるトランスジェニック植物は、非トランスジェニック果実よりも約1.5倍〜2倍硬い果実を生じた。さらに、RNAi技術によって生じたトランスジェニック果実は、収穫後45日までは軟化の兆候を示さず、これは非トランスジェニック果実よりもおよそ30日長い。アンチセンス技術によって得られるトランスジェニック果実は、収穫後35日まで軟化の兆候を示さず、これは、非トランスジェニック果実よりもおよそ20日長い。これらの結果は驚くべきことであり、予想以上である。加えて、トランスジェニック植物におけるこの遺伝子の抑制は、栄養生長、開花、および果実の生長、熟成までの日数、および収穫量に対して負の影響を及ぼさなかった。
【0019】
一実施形態において、本発明は、トマトおよびトウガラシの果実の果皮に由来するβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ酵素の精製および生化学的な特徴付け、ならびにトマトおよびトウガラシに由来する対応する遺伝子のcDNAおよびゲノムDNAのクローニングを提供する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、野生型株および様々なトマトの熟成欠損変異株における、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現の研究に関する。さらに、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼタンパク質のエチレン誘導性と細胞壁への局在化とを決定した。さらに、この遺伝子の機能的特徴付けは、アグロバクテリウムを介した一過性形質転換実験および安定形質転換実験によって行った。
【0021】
この酵素は、トマト果実の熟成の間にその特異的活性の約3.5倍の増強を示した(図1A)。同様に、トウガラシにおいても、この酵素は果実の熟成の間に最も高い活性を示した(図1E)。β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼは、トウガラシおよびトマト果実から、硫酸アンモニウム沈殿、それに続く、DEAE Sepharoseによるイオン交換クロマトグラフィー、ConA Sepharoseによるアフィニティークロマトグラフィー、およびSephadex G-100カラムによるゲル濾過クロマトグラフィーを行うことによって、果実の果皮から抽出された全タンパク質から電気泳動的に均一となるまで精製された。精製された酵素は、SDS-PAGE上では80kDaの1種類のポリペプチドであった。しかし、このタンパク質の天然の大きさは、非変性PAGEでは300kDaであった(図1B、C)。β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼは、これがConA Sepharoseカラムに結合することができ、PAS染色では陽性であったので、糖タンパク質である。トマトヘキソサミニダーゼおよびトウガラシヘキソサミニダーゼの生化学的な特性決定は、pNP-N-アセチルβ-Dグルコサミニド(pNP-GlcNAc)基質を使用して行われた。pNP-GlcNAcの加水分解についての最適pHおよび最適温度は、トマトヘキソサミニダーゼおよびトウガラシヘキソサミニダーゼのいずれについても、それぞれpH6.0および45℃であり、この酵素は、広いpH範囲(トマトについてはpH4.0〜pH8.0、トウガラシについてはpH3.0〜pH9.0)で、活性を有意に失うことなく安定であった。トマトヘキソサミニダーゼは、37℃では60分間にわたり、その活性の90%を保持することができたが、42℃では60分間のインキュベーションの後に50%が不活化された。トウガラシヘキソサミニダーゼは、42℃では60分間安定である。Kmは、トマトヘキソサミニダーゼについては0.225mMであり、トウガラシヘキソサミニダーゼについては0.141mMであった。β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼのN-グリカンをプロセシングする機能は、反応混合物100μl中の0.5μgの精製されたタンパク質とともに、10μgのN-グリカン基質を37℃で12時間インキュベートすることによって決定された。次いで、試料をPVDFメンブレンに通して濾過してタンパク質を取り除き、10μlの濾過試料をCarbopac PA-1(4×250mm)カラムに入れ、GlcNAcの放出を、高速陰イオン交換クロマトグラフィーによって決定した(図1D)。精製されたトマトタンパク質の二次元ゲル電気泳動(2DE)により、異なる等電点を有する4種類のポリペプチドの存在が明らかになった。質量スペクトル(LC-MS/MS)分析により、スポット番号1、2および3が同じであることが明らかになり、これを、トマト(Solanum lycopersicum)β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1(SlHEX1)と命名する(図1F)。さらに、精製されたトウガラシタンパク質の2DEによって、類似するポリペプチドの分離パターンが明らかにされた(図1G)。スポット1、2、および3は類似するポリペプチドを示し、トウガラシ(Capsicum annum)β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1(CaHEXO1)と命名する。
【0022】
質量スペクトル分析によって得られたペプチド配列と、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびコメのβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼのマルチ配列アラインメント(multiple sequence alignment)によって同定された保存されているモチーフとに基づいて、本発明者らは、cDNA末端の迅速増幅により、トマトからSlHEX1を、トウガラシからCaHEXO1をクローニングするために使用された縮重遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを設計した。トマトの果実の果皮から全RNAを単離し、ポリAテール特異的オリゴヌクレオチド(RACEアダプタープライマー-5’ GGCCACGCGTCGACTAGTACTTTTTTTTTTTTTTTTT 3’-配列番号6)を使用して逆転写させてcDNAを作製した。ペプチドKLNVLHWHに対応する遺伝子特異的縮重プライマー(5’ AARYTIAATGTTYTICAYTGGCA 3’-配列番号7)と、RACEアダプタープライマー由来のネステッド(nested)プライマー(5’ GGCCACGCGTCGACTAGTAC 3’-配列番号8)により、pGEM-T Easyベクターにクローニングし、配列決定したDNA断片を増幅させることができた。BlastX(www.ncbi.nlm.nih.gov)によって得られた配列の分析により、SlHEX1の部分配列として同定した。この遺伝子は、グリコシルヒドロラーゼファミリー20(CaZyファミリー)に属する。さらに、RACE PCR(Invitrogen)を実施して、この遺伝子の5’末端配列を決定した。同様の手法を使用して、トウガラシのCaHEXO1遺伝子をクローニングした。
【0023】
定量的リアルタイムPCR(qRT PCR)分析により、桃熟期の果実および完熟期の果実におけるトマトSlHEX1の転写物は、緑熟期の果実と比較して約6倍多く出現することが明らかになった(図2A)。SlHEX1タンパク質に対するペプチドベースの抗体を使用したウェスタンブロッティング分析によって決定されたタンパク質の蓄積パターンは、mRNAの発現と類似していた(図2B)。果実の熟成の間の、天然のSlHEX1遺伝子の発現パターンは、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性と関係がある。
【0024】
SlHEX1についてのRNAi構築物を開発するために、それぞれのUTRを含むこの遺伝子の600bpの5’コード領域または3’コード領域を、pHANNIBAL(Wesley SV、Helliwell CA、Smith NA、Wang MB、Rouse DT、Liu Q、Gooding PS、Singh SP、Abbott D、Stoutjesdijk PA、Robinson SP、Gleave AP、Green AGおよびWaterhouse PM (2001) Plant J 27:581〜590)中に、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にクローニングした。最後に、この構築物のNotI断片をバイナリーベクターpART27にクローニングし、これをp5RH1(SlHEX1の5’末端配列から設計されたベクター)およびp3RH1(SlHEX1の3’末端配列から設計されたベクター)と命名した(図6)。ゲートウェイ(gateway)ベクターPK7FWG2,0またはpBI121ベクターのいずれかにおいて過剰発現構築物を開発した(p7FH1およびpOVH1と命名した、図7および図9)。さらに、これらのバイナリーベクターをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)株EHA 105にエレクトロポレーションによって導入し、対数増殖期中期まで増殖させた。使用することができる他のアグロバクテリウム株は、LBA 4404、GV3101などである。増殖させたアグロバクテリウム細胞を収集し、浸潤媒体(infiltration media)に再懸濁させ、緑熟期のトマト果実の果皮にアグロインジェクションした。注入された果実を、桃熟期での注入の3〜5日後に収穫し、RNAiを注入した果実における転写物のレベルおよびタンパク質のレベルの、空のベクターを注入した果実と比較した低下について分析した。リアルタイムPCRおよびウェスタンブロット分析は、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの低下を示し、これは、抑制された果実におけるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性の消失を生じた(図3A、C)。RNAiを注入した果実における酵素活性のこの低下の原因が、SlHEX1遺伝子の発現のサイレンシングであるかどうかを決定するために、本発明者らは、ノーザンハイブリダイゼーションによって、サイレンシングされた果実における遺伝子特異的低分子干渉(siRNA)の発生を調べた。本発明者らは、RNAiを注入した果実において、SlHEX1に特異的な21ntの低分子RNAを検出することができた(図3B)。これらの観察によって、重ねて、SlHEX1遺伝子の発現と酵素活性との間での相関関係が確認された。この遺伝子はまた、トマト果実において一過性に過剰発現させた。過剰発現のために、果実を、緑熟期にアグロインジェクションし、桃熟期に収穫した。この時点では、SlHEX1遺伝子の過剰発現により、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性の増強が生じた(図3A)。果実の熟成におけるSlHEX1のさらなる理解を得るために、その転写物の蓄積を、トマトの熟成欠損変異株rin、nor、およびNrの果実において決定した。変異体果実は通常の熟成プロセスを受けないので、野生型に対する比較は、同等の熟成段階ではなく、同じ生活年齢(chronological age)で行った。qRT PCR分析によって、桃熟期および完熟期の両方で、rinにおいては78%までのSlHEX1転写レベルの低下が、norにおいては89%までのSlHEX1転写レベルの低下が明らかにされた。しかし、Nrの果実の場合、転写レベルは、桃熟期では63%まで、完熟期では88%までの低下した(図4B)。これらの突然変異株は全て、熟成に関係があるエチレンの生合成またはエチレンの認知のいずれかに影響を及ぼし、最終的には果実の軟化が少なかった。これらの変異株におけるSlHEX1の発現の消失は、熟成に関係する軟化、およびエチレンによるその調節におけるその役割を強く示唆している。SlHEX1遺伝子の発現は、0.1mM ACCで処理されたトマトの実生においては約4倍にアップレギュレーションされており、これにより、そのエチレン調節が確認された(図4C)。さらに、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性の、果実の硬度を熟成に関係して失わせる傾向は、Texture Analyzer(TA-XT plus,Stable Microsystem,UK)を使用した果実の硬度の定量的測定によって、SlHEX1 RNAi果実の軟化速度を分析することによって決定された。アグロインジェクションされた果実を、桃熟期に収穫し、60%〜65%の相対湿度、室温(22℃〜24℃)で保存した。完全な(intact)RNAiを注入した果実および空のベクターを注入した果実の5mmの圧縮解析を、収穫の10日後に行い、これは、果実の硬度において統計学的に有意な差異を示した。RNAiを注入した果実は、対照の果実よりも約1.6倍硬かった(図3D)。その機能と作用部位についての詳細な知識を得るために、SlHEX1タンパク質の細胞内位置を決定した。このために、GFPを、gatewayベクターpK7FWG2,0を使用してこのタンパク質のC末端と融合させ、この融合タンパク質を、アグロインジェクションによってトマト果実において一過性に発現させた。注入は緑熟期で行い、桃熟期で収穫した。注入を行った果実の果皮を低温保持装置で切片とし、適切なフィルターを有する蛍光顕微鏡下で観察した。GFPシグナルを細胞の細胞壁領域で検出し、これにより、細胞壁の糖タンパク質に作用することができる細胞壁におけるその局在化を確認した(図4A)。
【0025】
本発明者らは、SlHEX1遺伝子を、トマトにおいて、安定に形質転換された抑制株および過剰発現株を開発するために使用した。2種類のRNAi構築物(p5RH1およびp3RH1)を、この遺伝子のそれぞれ600bpの5’領域および3’領域を使用して、pHANNIBALの中で開発した(図6)。アンチセンス構築物および過剰発現構築物を、GUSコード配列を除去した後のpBI121の中で作製した(pAH1およびpOVH1と命名した、図7および図8)。
【0026】
これらのバイナリーベクターをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)株EHA 105にエレクトロポレーションによって導入した。その後、形質転換されたアグロバクテリウムを対数増殖期中期まで増殖させ、植物の形質転換に使用した。14日齢のトマトの実生の双葉をアグロバクテリウムと同時培養し、組織培養技術によって再生させた。SlHEX1遺伝子の発現およびβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性は、過剰発現株においては32倍にまで増大した(図5A)。遺伝子の発現および酵素活性は、RNAi株においては99%まで抑制されたが、アンチセンス株の場合には、抑制は55%〜83%の範囲であった(図5B)。SlHEX1トランスジェニック果実は、原則的に通常のクリマクテリック型(climacteric)の熟成を受け、商業化に不可欠な官能特性と品質特性を有する。トランスジェニックトマト果実の硬度は、様々な熟成段階で測定し、対照の果実と比較した(図5C)。RNAi株およびアンチセンス株の果実の硬度は、緑熟期および催色期では野生型と類似していたが、桃熟期での約1.4倍から、過剰熟成期では、RNAi株において約2倍、アンチセンス株においては約1.2倍〜1.5倍にまで増大した。トランスジェニックSlHEX1の構成的過剰発現によって、緑熟期の段階でもなお果実の軟化の増強が生じた。これらの果実は、緑熟期および桃熟期では、それぞれ、野生型よりも約10%および約30%軟らかかった。トランスジェニック植物におけるSlHEX1の過剰発現および抑制は、野菜の生長、開花、および果実の生長、熟成までの日数、および収穫量には影響はなかった。
【0027】
圧縮解析に加えて、熟成の間に果実の硬度が失われること、およびその結果として果実がだめになること(spoilage)は、果実の皮のしわの程度を見ることによって、定性的に決定することができた。このために、55%〜60%の相対湿度の中で22℃〜24℃で保存された野生型果実およびトランスジェニック果実が、果実の軟化の明らかな兆候を見るために試験され、10日〜15日おきに写真撮影された。熟成は、野生型果実およびRNAi果実のいずれにおいても、これらの収穫後の貯蔵条件下では正常であったが、野生型果実は、収穫後45日まで軟化の兆候を示さなかったRNAi果実と比較して、収穫の13日〜15日後にどんどん劣化し始めた(図5D)。本発明者らはさらに、細胞分離が少なく、ぎっしり詰まった(compact)細胞壁が明らかにされているトランスジェニック果実の熟成の間の細胞壁の変化を、野生型と比較してRNAi果実において研究した(図5E)。
【0028】
トウガラシにおいて、同様の手法を使用して、本発明者らは、CaHEXO1の発現を一過性にサイレンシングし、それにより対照と比較して果実の軟化の遅延が生じた。
【0029】
トマトおよびトウガラシに加えて、本発明は、果実の軟化が遅延するトランスジェニック植物の作出を包含し、この植物は、トマト、トウガラシ、マンゴー、バナナ、パパイヤ、シトラス、パイナップル、グアバ、アボカド、イチゴ、リンゴ、ザクロ、および他の植物からなる群から選択される。
【0030】
本発明の一実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供することであり、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、
a.配列番号3に示されるアミノ酸配列と90%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
b.配列番号5に示されるアミノ酸配列と90%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
c.配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
d.配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
e.(a)、(b)、(c)、または(d)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、
f.配列番号1に示されるヌクレオチド配列、
g.配列番号2に示されるヌクレオチド配列、
h.配列番号4に示されるヌクレオチド配列、および
i.(f)、(g)、または(h)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
からなる群から選択される。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態は、トマト由来のポリヌクレオチド配列を提供し、このポリヌクレオチドは、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態は、トウガラシ由来のポリヌクレオチド配列を提供し、このポリヌクレオチドは、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA構築物を提供し、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されている。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部分を含むDNA構築物を提供し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるとおりであり、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列は、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にある。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部分を含むDNA構築物を提供し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号2に示されるとおりであり、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列は、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にある。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部分を含むDNA構築物を提供し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号4に示されるとおりであり、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列は、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にある。
【0037】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明において開示されるDNA構築物を含む組換えベクターを提供する。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部分を含む組換えベクターを提供し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるとおりであり、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列は、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にある。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部分を含む組換えベクターを提供し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号2に示されるとおりであり、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列は、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にある。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部分を含む組換えベクターを提供し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号4に示されるとおりであり、このポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列は、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にある。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明の中で開示される組換えベクターを含む組換え宿主細胞に関する。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態は、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞に関し、このポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号4からなる群から選択される。
【0043】
本発明の一実施形態は、本発明の宿主細胞に関し、この宿主細胞は、アグロバクテリウム、大腸菌(E.coil)および酵母からなる群から選択される。
【0044】
一実施形態において、本発明は、植物において果実の軟化を遅延させるための方法を提供し、前記方法は、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を、本発明の組換えベクターで形質転換する段階を含み、前記ベクターは、SlHEX1またはCaHEXO1のポリヌクレオチド配列の一部分を、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向に含む。
【0045】
一実施形態において、本発明は、植物において果実の軟化を遅延させるための方法を提供し、前記方法は、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を本発明の組換えベクターで形質転換する段階を含み、前記ベクターは、SlHEX1またはCaHEXO1のポリヌクレオチド配列をアンチセンス方向に含む。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、植物において果実を早い時期に軟化させるための方法を提供し、前記方法は、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を本発明の組換えベクターで形質転換する段階を含み、前記ベクターは、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列SlHEX1またはCaHEXO1をセンス方向に含む。
【0047】
本発明の一実施形態は、本発明において開示される方法によって作出されたトランスジェニック植物に関し、前記植物におけるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの発現は、果実の軟化を生じるように調節されており、この植物は、トマト、トウガラシ、およびパパイヤなどからなる群から選択される。
【0048】
本発明の一実施形態は、本発明において開示される方法によって作出されたトランスジェニック植物に関し、前記植物におけるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの発現は、果実の軟化を生じるように調節されており、この植物はトマトである。
【0049】
本発明の一実施形態は、本発明において開示される方法によって作出された、一過性に形質転換された植物に関し、前記植物におけるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの発現は、果実の軟化を生じるように調節されており、この植物はトウガラシである。
【0050】
本発明の一実施形態は、本発明において開示される方法によって作出されたトランスジェニック植物の種子または子孫に関し、前記植物におけるβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの発現は、果実の軟化を生じるように調節されている。
【0051】
本発明の一実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約88%の同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0052】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と約90%の同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0053】
本発明の別の実施形態は、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むRNAi構築物を提供し、これらのヌクレオチドは、その長さの中にヘアピン構造だけを形成し、第2のループを形成しないように選択され、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0054】
本発明の別の実施形態は、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むRNAi構築物を提供し、これらのヌクレオチドは、その長さの中にヘアピン構造だけを形成し、第2のループを形成しないように選択され、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号4に示されるとおりである。
【0055】
本発明において開示されるRNAi構築物は、植物において転写後にヘアピン構造を形成する。
【0056】
本発明において開示されるRNAi構築物は、ヘアピン核酸である。本発明において開示されるRNAi構築物は、植物において転写後にヘアピン構造を形成し、第2のループ構造は形成しない。別の実施形態は、植物において転写後にヘアピン構造を形成する、本発明において開示されるポリヌクレオチド配列を含むRNAi構築物を提供する。
【0057】
本発明の一実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0058】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供され、このポリヌクレオチドは、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0059】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供され、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号4に示されるとおりである。
【0060】
本発明の別の実施形態において、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが提供される。
【0061】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されている。
【0062】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドは、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されている。
【0063】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号4に示されるとおりであり、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されている。
【0064】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA構築物が提供され、上記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列はセンス方向にある。
【0065】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドは、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列はセンス方向にある。
【0066】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号4に示されるとおりであり、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列はセンス方向にある。
【0067】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA構築物が提供され、上記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列はアンチセンス方向にある。
【0068】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドは、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されており、このポリヌクレオチド配列はアンチセンス方向にある。
【0069】
本発明の別の実施形態において、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを含むDNA構築物が提供され、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号4に示されるとおりであり、このポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されており、上記ポリヌクレオチド配列はアンチセンス方向にある。
【0070】
本発明の別の実施形態において、トランスジェニック植物においてヘキソサミニダーゼの発現を抑制するためのRNAi構築物が提供され、この構築物は、配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、前記センスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖とを含み、このアンチセンスポリヌクレオチド鎖とセンスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成する。
【0071】
本発明の別の実施形態において、トランスジェニック植物においてヘキソサミニダーゼの発現を抑制するためのRNAi構築物が提供され、このRNAi構築物はヘアピン核酸である。
【0072】
本発明の別の実施形態において、トランスジェニック植物においてヘキソサミニダーゼの発現を抑制するためのRNAi構築物が提供され、この構築物は、配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、前記センスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖とを含み、このアンチセンスポリヌクレオチド鎖とセンスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成し、前記センス鎖は、100ヌクレオチドから600ヌクレオチドを含む。
【0073】
本発明の別の実施形態において、本発明において開示されるDNA構築物を含む組換えベクターが提供される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、本発明において開示される組換えベクターを含む組換え宿主細胞が提供される。
【0075】
本発明の別の実施形態において、アグロバクテリウム、大腸菌、および酵母からなる群から選択される宿主細胞が提供される。
【0076】
本発明の別の実施形態において、植物において果実の軟化を遅延させるための方法が提供され、この方法は、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換する段階を含み、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードし、このポリヌクレオチドはアンチセンス方向にある。
【0077】
本発明の別の実施形態において、植物において果実の軟化を遅延させるための方法が提供され、この方法は、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換する段階が含まれる。ここでは、上記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号4からなる群から選択される。
【0078】
本発明の別の実施形態において、植物において果実の軟化を遅延させるための方法が提供され、この方法は、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階であって、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする、段階と、得られた植物を、前記非トランスジェニック植物と比較したヘキソサミニダーゼレベルの低下についてスクリーニングする段階とを含む。
【0079】
本発明の別の実施形態において、植物において果実の軟化を遅延させるための方法が提供され、この方法は、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階を含み、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号4からなる群から選択される。
【0080】
本発明の別の実施形態において、植物において果実の軟化を遅延させるための方法が提供され、この方法は、配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、このセンスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖とを含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階であって、このアンチセンスポリヌクレオチド鎖とセンスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成する、段階と、得られた植物を、前記非トランスジェニック植物と比較したヘキソサミニダーゼレベルの低下についてスクリーニングする段階を含む。
【0081】
本発明の別の実施形態において、RNAi構築物を使用して植物において果実の軟化を遅延させるための方法が提供され、このRNAi構築物はヘアピン核酸である。
【0082】
本発明の別の実施形態においては、本発明において開示される方法によって作出されたトランスジェニック植物が提供され、この植物におけるヘキソサミニダーゼの発現は、果実の軟化を遅延させるように制御されている。
【0083】
本発明において開示されるトランスジェニック植物は、トマト、トウガラシ、パパイヤ、マンゴー、バナナ、モモ、洋ナシ、シトラス、パイナップル、グアバ、アボカド、イチゴ、リンゴ、およびザクロを包含する。
【0084】
本発明において開示されるトランスジェニック植物は、トマトまたはトウガラシである。
【0085】
本発明の別の実施形態において、本発明において開示されるトランスジェニック植物のトランスジェニック種子または子孫が提供される。
【実施例】
【0086】
本明細書に記載する以下の実施例は、例示する目的のためのものにすぎず、これを踏まえた様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解されよう。
【0087】
(実施例1)
トマト由来のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびトウガラシ由来のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼの酵素アッセイおよび精製
トマトの種子およびトウガラシの種子を、予め滅菌した土で発芽させ、15日齢で、実生を、25/23℃の温度、70%の湿度および14/10時間の明/暗レジメン(light/dark regime)の温室に植え替えた。花に開花時にタグをつけ、果実を様々な熟成段階で収穫した。
【0088】
酵素反応は、10mM Tris-Cl、pH6.0中のpNP-GlcNAc(0.4mM)を使用して、37℃で15分間行った。反応は、20mM Na2CO3を添加することによって停止させた。これによって生じた色を405nmで記録し、放出されたpNPの量を検量線を使用して決定した。
【0089】
凍結させた果実の果皮を液体窒素中で粉末にし、4分の1量の抽出緩衝液(0.25M NaClおよび1mM PMSFを含む100mM Tris-Cl、pH7.0)に懸濁させ、4℃で一晩抽出した。4層のチーズクロスに通して濾過した後、この抽出液を10,000gで遠心分離して、破片を全て沈殿させた。このようにして得た上清について30%〜80%硫酸アンモニウム沈殿を行った。この沈殿後に得られたペレットを再構成させ、25mM Tris-Cl、pH7.0に対して、1度の交換によって透析した。次いで、この試料をDEAE Sepharose pH7.0でクロマトグラフィーし、NaClの漸増勾配を用いて溶出させた。この酵素は、120mMの塩濃度で溶出させた。活性を含む試料をプールし、これについてConA Sepharoseカラムによるアフィニティークロマトグラフィーを行い、α-D-メチルマンノピラノシドの漸増勾配で溶出させた。この酵素は、100mMの濃度で溶出し、これをプールし、0%〜90%の硫酸アンモニウム飽和度によって濃縮した。このようにして得られたペレットを25mM Tris-Cl、pH7.0の中に溶解させ、Sephadex G100のゲル濾過カラムに直接入れた。画分を空隙容量後に回収し、酵素活性についてアッセイし、12.5%SDS-PAGE上で分解した。この酵素を多く含む画分をCentriconYM30(Millipore)を使用して濃縮し、4℃で保存した。
【0090】
(実施例2)
2DE、SDS-PAGE、LC-MS/MS、およびウェスタンブロッティング
精製したタンパク質を、希釈緩衝液(200mM Tris-Cl pH8.5、40%グリセロール、8%SDS、0.4mM PMSF、および50mM DTT)で希釈し、5分間沸騰させ、9倍容量の100%冷アセトンで沈殿させた。250μlの2DE再膨潤緩衝液(2DE rehydration buffer)(9M尿素、4%CHAPS、2%チオウレア、20mM DTT、0.8%IPG緩衝液、および微量のブロモフェノールブルー)中の20μgの精製されたタンパク質試料を用いた12時間の13cmの長さのイモビリンドライストリップ(immobiline dry strip)(pH4.0〜7.0)の受動的再膨潤(passive rehydration)後に、等電点電気泳動を、IPGphorシステム(Amersham biosciences)を使用して、20℃で40,000Vhr行った。フォーカスしたストリップを、10ml平衡化緩衝液(50mM Tris-Cl pH8.8、6M尿素、30%グリセロール、および2%SDS)中の1%(w/v)DTTで還元させ、続いて、同じ緩衝液中の2.5%(w/v)ヨードアセトアミドでアルキル化させた。SDS-PAGE上での二次元分離のために、次いで、このストリップを12.5%ポリアクリルアミドゲルにロードした。電気泳動したタンパク質をクマシーブルー染色によって染色し、ゲルの画像をFluorS画像化システム(Bio-Rad、CA)でデジタル化した。実験用の分子の質量とpIは、標準的な分子量マーカータンパク質を使用して、デジタル化した2DE画像から計算した。スポットをゲルから切り出し、エレクトロスプレーイオントラップタイムオブフライト型(electrospray ion trap time-of-flight)質量スペクトル(LC-MS/MS)(Q-Star Pulsar i、Applied Biosystems)によって分析した。スペクトルを、Mascot配列マッチングソフトウェア(www.matrixscience.com)によって、Viridiplantae(緑色植物)データベースに対して分析した。
【0091】
ウェスタンブロット分析のために、Bio-Radタンパク質アッセイキットによって定量し、12.5%SDS-PAGE上で分解した50μgのタンパク質を、Hybond-C(Amersham biosciences)メンブレンに、150mAの一定電流で2時間〜3時間かけて電気的に移動させた。このメンブレン上の非特異的部位を、TBS中のBlottoによって1時間ブロックし、一次抗体(1:2500)とともに、4℃で一晩インキュベートした。免疫検出は、二次抗体として、西洋わさびペルオキシダーゼに結合させた抗ウサギ抗血清を用いて1時間、このブロットを化学発光基質(Pierce Biotechnology)に曝すことによって行った。
【0092】
精製したタンパク質のSDA-PAGE分析により、80kDの1つのタンパク質バンドが明らかになり、このタンパク質の天然の分子量が300kDであることが明らかになった。2DEゲル精製したタンパク質は、80kDaの様々なスポットに分離した。これは、LC-MS/Ms分析によって確認した代表的なβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼであることが明らかになった。
【0093】
(実施例3)
高速陰イオン交換クロマトグラフィー
標準糖(GlcNAc、Sigma)は、脱イオン水中に調製し、試料の分析の前後に100nmoleの濃度で注入した。グラジエントポンプ(gradient pump)(GP40)、陰イオン交換カラム(Carbopac PA-1、4x250mm)、アルゴンで溶離液を加圧するための溶離液脱気モジュール(eluant degas module)(EDM-2)を備えたHPAE-PADシステム(Dionex DX 500 BioLC)を、単糖の分析に使用した。分離した単糖は、金電極とAg/AgCl参照電極を備えたED40検出器によって検出した。得られたクロマトグラフィーデータを統合し、PCによるoracle 2データ収集システム(Indtech Analytical、Bombay)を使用してプロットした。10pgのN-グリカン基質を、100μlの反応混合物中の0.5μgの精製したタンパク質とともに、37℃で12時間インキュベートした。その後、この試料を、PVDFメンブレンに通して濾過してタンパク質を取り除き、10μlの濾過試料をカラムに入れた。
【0094】
トマトの酵素は、様々なN-グリカンから末端GlcNAc残基を切断することができ、これによってそのN-グリカンプロセシング能力を確認した。
【0095】
(実施例4)
トマトのβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびトウガラシのβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼのクローニングと配列分析
縮重遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを、質量スペクトル(LC-MS/MS)分析によって得たペプチドタグと、マルチ配列アラインメントによって同定したモチーフとに基づいて設計し、cDNA末端の迅速増幅(RACE)に使用した。全RNAを、桃熟期のトマト果実の果皮から単離し、ポリAテール特異的オリゴヌクレオチド(RACEアダプタープライマー)を使用して逆転写させてcDNAを作製した。ペプチドKLNVLHWHに対応している遺伝子特異的縮重プライマー(5’ AARYTIAATGTTYTICAYTGGCA 3’-配列番号7、RはA/Gであり、YはC/Tであり、Iはイノシンである)と、RACEアダプタープライマー由来のネストプライマーによってDNA断片を増幅させることができ、これをpGEM-T Easyベクター(Promega)にクローニングし、配列決定した。グリコシルヒドロラーゼファミリー20(CaZyファミリー)のSlHEX1の部分配列として同定された、blastx(www.ncbi.nlm.nih.gov)による誘導された配列の分析。さらに、RACE PCR(Invitrogen)を、この遺伝子の5’末端配列を決定するために行った。同様のアプローチを使用して、トウガラシCaHEXO1をクローニングした。タンパク質配列は逆翻訳(back translation)によって推測した。他の種に由来する関連するタンパク質の配列を得、ClustalW分析と系統発生学的分析(MEGA4)を行った。
【0096】
トマトSlHEX1(1876bp)をpGEM-T Easyベクターにクローニングし、組換えベクターをpGHTと命名した。同様に、トウガラシCaHEXO1(1725bp)をpGEM-T Easyベクターにクローニングし、組換えベクターをpGHCと命名した。
【0097】
(実施例5)
細胞内局在化
C末端GFP融合タンパク質を作製するために、終結コドンを含まないコード配列を、attBを張り付けたプライマー(5’ GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTATGAGAGGAGAGAAAACATTCTCC 3’ - 配列番号9および5’ GGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTGCTAGTAAATGAATGACCTGTGTTAC 3’ - 配列番号10)を使用してPCR増幅させた。attBが隣接しているPCR産物を、その後、エントリーベクターpDONR221(Invitrogen)に、BP組換え反応を行うことによってクローニングした。さらに、LR組換え(reacombination)反応を、エントリークローンとGateway発現ベクターpK7FWG2,0との間で行った。この組換えバイナリーベクターを、トマト果実における融合タンパク質のアグロバクテリウムを介した一過性発現に使用した。アグロインジェクションした果実の果皮を低温保持装置(Lieca CM1510S)の上に載せ、凍結させた。その後、10μm〜15μmの薄片を切り取って、スライド上に置いて蛍光顕微鏡下で観察した。
【0098】
これによって、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼが細胞壁に局在化することを確認した。
【0099】
(実施例6)
アグロバクテリウムによる一過性形質転換
アグロインジェクションは、一部変更を加えて、以前に記載されたとおりに(Orzaez DF、Mirabel S、Wieland WH and Granell A (2006) Plant Physiol 140:3-11)行った。アグロインジェクションのために、アグロバクテリウムの前培養物(3mL)を、抗生物質を含むYEP(1%酵母エキス、1%ペプトン、および0.5%NaCl)培地中で28℃で48時間増殖させて個々のコロニーを形成させた。これを、抗生物質を含む50mL誘導培地(0.5%ビーフエキス、0.1%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.5%スクロース、2mM MgSO4、20mMアセトシリンゴン、10mM MES、pH5.6)に移し、一晩増殖させた。翌日、ODが1に達した時点で、培養物を遠心分離によって回収し、浸潤媒体(10mM MgCl2、10mM MES、200mMアセトシリンゴン、pH5.6)中に再懸濁させ、4時間穏やかに撹拌しながら室温でインキュベートした。0.5mmの針を有する1mLの注射器をアグロインジェクションに使用した。針を花柱の先端に近い果実の果皮に、深さ1mm〜2mmまで刺し、浸潤溶液を果実中にゆっくりと注入した。最多で500mLの溶液を注入することができた。催色期を過ぎると、果実は注入には適さなかった。
【0100】
(実施例7)
RNAの単離および定量的リアルタイム逆転写酵素PCR(qRT PCR)
RNAを、LiCl法に従った単離し、ナノドロップ(ND 100)を使用して定量化した。全RNA(5μg)を、superscript II(Invitrogen)を使用して逆転写させ、qRT PCR反応で使用する前に5倍に希釈した。qRT PCRを、サイバーグリーンとともにワンステップリアルタイムRT PCR(One Step Real Time RT PCR)(Applied Biosystems)を使用して行った。この増幅に使用したオリゴヌクレオチドプライマーは以下である:SlHEX1標的の増幅には、RTH1F - 5’ TATGTTCTGGTGGCCCG 3’(配列番号11)とRTH1R - 5’ TCTGCTCCTCCGTGAAAG 3’(配列番号12)、内因性対照アクチンについては、RTTAL - 5’ TTATCACCATTGGTGCTGAG 3’(配列番号13)とRTTAR - 5’ CGATGTTTCCATACAGATCCTT 3’(配列番号14)。相対的な遺伝子の発現を、2-△△Ct法を使用して分析した。
【0101】
(実施例8)
低分子RNAの単離とノーザンブロッティング
全RNAには、低分子量RNAが多く含まれていた。LiClでの沈殿後のRNAを70%エタノールで洗浄し、ペレットを風乾させた。次いで、このペレットを1mlのDEPC水に溶解させ、65℃で5分間加熱し、次いで氷上に2分間置いた。高分子量のRNAを沈殿させるために、ポリエチレングリコール(分子量8000)とNaClとを、それぞれ5%および0.5Mの最終濃度になるように添加した。氷上で30分間インキュベートした後、RNAを13,000rpmで30分間遠心分離した。上清を3倍容量のエタノールと1/10容量の3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)とで沈殿させ、試験管を一晩、-20℃に置いた。翌日、低分子量RNAを、13,000rpmで10分間の遠心分離によって回収した。このペレットを乾燥させ、50μlのDEPC水に溶解させた。低分子量RNAを、0.5×TBEを含む15%ウレアPAGE(urea PAGE)で70Vで4時間〜5時間、分解させた。次いで、このゲルを0.5×TBEを使用して、100Vの定圧で1時間、ナイロンメンブレンに電気的に移動させた。このナイロンメンブレンをUVで架橋させ、50%ホルムアミド、7%SDS、および50mM Na2HPO4およびNaH2PO4、pH7.2の中で35℃でプレハイブリダイズさせた。4時間後、変性させたプローブを添加し、ハイブリダイゼーションを35℃で14時間〜16時間行った。このブロットを、2×SSCおよび1%SDSを使用して、室温で2分間洗浄し、次いで、0.5×SSCと0.1%SDSとで洗浄し、フィルムに曝した。
【0102】
この分析により、RNAi技術によって生産されたトランスジェニック果実における遺伝子特異的siRNAの作製を確認した。
【0103】
(実施例9)
ベクターおよびトマトの形質転換
RNAi構築物を開発するために、UTRを含む遺伝子の500bp〜600bpの5’コード領域または3’コード領域を、pHANNIBAL中に、イントロンによって隔てられてセンス方向およびアンチセンス方向にクローニングした。SlHEX1の5’末端配列に由来するRNAi構築物を開発するために、センス方向でのクローニングについては、以下のプライマーを使用してPCR増幅を行った:5’ CCGCTCGAGAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACGC 3’(配列番号15)または5’ CCGCTCGAGGAGAAAAAAATGAGAGGAGAGAAAAC 3’(配列番号16)と、5’ GGAATTCCAGCCTTAACAAGTGATCGACTCCG 3’(配列番号17)。同様に、アンチセンス方向でのクローニングについては、以下のプライマーを使用してPCRを行った:5’ GCTCTAGAAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACGC 3’(配列番号18)または5’ GCTCTAGAGAGAAAAAAATGAGAGGAGAGAAAAC 3’(配列番号19)と、5’ CCCAAGCTTCAGCCTTAACAAGTGATCGACTCCG 3’(配列番号20)。SlHEX1の5’末端配列に由来するRNAi構築物を開発するために、以下のプライマーを使用してPCR増幅を行った:5’ CCGCTCGAGCCGTGTGATTGTGTCATCTGC 3’(配列番号21)と5’ GGAATTCGTAAGAAATTCCCAGATTCATTTGC 3’(配列番号22)。同様に、アンチセンス方向でのクローニングについては、以下のプライマーを使用してPCRを行った:5’ GCTCTAGACCGTGTGATTGTGTCATCTGC 3’(配列番号23)と5’ CGGGATCCGTAAGAAATTCCCAGATTCATTTGC 3’(配列番号24)。最後に、この構築物のNotI断片を、バイナリーベクターpART27にクローニングした。アンチセンス構築物と過剰発現構築物とは、GUSコード配列を除去した後のpBI121ベクターの中に調製した。PCR増幅により、過剰発現ベクターおよびアンチセンスベクターの調製のためのXbal制限酵素部位を、cDNA配列の中に、開始コドンの前と終結コドンの後ろとにそれぞれ組み込んだ。センス鎖の増幅ついては、以下のプライマーを使用してPCRを行った:5’ GCTCTAGAATGAGAGGAGAGAAAACATTCTCC 3’(配列番号25)と5’ TCAGCTAGTAAATGAATGAACTG 3’(配列番号26)。アンチセンス方向でのクローニングについては、以下のプライマーを使用してPCRを行った:5’ ATGAGAGGAGAGAAAACATTCTCC 3’(配列番号27)と5’ GCTCTAGAGTAAGAAATTCCCAGATTCATTTGC 3’(配列番号28)。その後、PCR産物を、pBI121のXbaI/Ecl136II部位に連結させた。
【0104】
トランスジェニックトマト植物を、トマトの双葉のアグロバクテリウムを介した形質転換によって作製した。切り取り後、外植片を、カルス誘導およびシュート形成ホルモンとしてのゼアチン(10μg/ml)を含有するMS培地(Sigma)(シュート形成培地)上に置き、組織培養条件(24℃、相対湿度65%、14/10時間の明暗サイクル)下で1日維持した。1日後、これらの外植片を形質転換に使用した。アグロバクテリウムは、YEP培地中で増殖させて形質転換を行った。アグロバクテリウム細胞をペレットにし、アセトシリンゴンを含む液体MS培地に懸濁させた。この細胞懸濁液を外植片に添加し、共培養した。共培養後、外植片をMS(シュート形成培地)に移し、28℃で維持した。2日後、外植片を、セフォタキシムを含むシュート形成培地に移し、組織培養条件下で維持した。次いで、外植片をさらに、セフォタキシムおよびカナマイシンを含むシュート形成培地に移した。外植片を、この培地中で2カ月〜3カ月半の間、定期的に交換しながら維持した。次いで、シュート(3cm〜4cmの長さ)を、ホルモンIAA(10μg/ml)および抗生物質(セフォタキシムとカナマイシン)を含む発根培地に移し、1カ月〜2カ月間維持した。発根した植物から葉を収集してDNA抽出(CTAB法)を行い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施して、推定される形質転換体を決定した。このアグロバクテリウムを介した遺伝子導入法によって、7%〜10%の再生および形質転換率が得られた。PCR陽性植物を、ハードニングの後に温室に移した。
【0105】
(実施例10)
テクスチャ分析
果実硬度は、TA-XT Plus(Stable Microsystems、UK)を使用して決定した。個々の果実を、1mm s-1でローディングした75mm幅のP75圧縮プレートを用いて分析した。これらの果実を5mmの鉛直変位まで圧縮した。硬度は、5gの加えられた力に対する応答力(response force)と定義した。これらの値について、有意差を見出すためのスチューデントt検定を行った。
【0106】
テクスチャ分析により、トランスジェニック果実の果実硬度は非トランスジェニック果実と比較して2倍増大することが明らかになった。
【0107】
(実施例11)
実生のACC処理
MS培地の中で発芽させ、生長させた15日齢のトマトの実生(Pusa ruby)を、ACC処理に使用した。MS培地由来の実生を、0.1mM ACCを含む液体MSに移し、この処理の30分後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、12時間後、および16時間後に収集した。実生は液体窒素の中で直ちに凍結させ、RNAを上記のように単離した。さらに、RNAをcDNAに逆転写させ、qRT-PCRに使用した。発現は、対照の実生(0時間)と比較して計算した。
【0108】
この実験により、エチレンによるSlHEX1遺伝子のアップレギュレーションを確認した。
【0109】
(実施例12)
染色および顕微鏡検査
切片を、凍結ミクロトーム(cryostat microtome)(Leica 1050)の中で切り取り、ポリ-l-リジンをコーティングしたスライド上で乾燥させた。これらのスライドを、pH6.8の0.1Mリン酸緩衝液中の0.05%トルイジンブルー(Sigma)の水溶液に2分間浸し、milliQ水で2分間洗浄した。染色した切片を、カバースライド下のmilliQ水に載せ、Nikon 80i Nikon 80iエピフルオレセント/ファージコントラスト/明視野顕微鏡(Nikon 80i epiflouresent/phage contrast/Bright field microscope)を使用して40×の倍率で写真撮影した。
【0110】
トマト果実の細胞壁の染色、それに続いて行った顕微鏡検査により、非トランスジェニック果実と比較して、トランスジェニック果実における、少ない細胞分離とぎっしり詰まった細胞壁とが明らかになった。
【0111】
配列番号1 トマト(Solanum lycopersicum)のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1の完全なゲノム配列(2510nt)
【0112】
【化1A】

【0113】
【化1B】

【0114】
配列番号2 トマト(Solanum lycopersicum)のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1の完全なcDNA配列(1876nt)
【0115】
【化2】

【0116】
配列番号3 トマト(Salanum lycopersicum)のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1のアミノ酸配列(575aa)
【0117】
【化3】

【0118】
配列番号4 トウガラシ(Capsicum annuum)のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1の完全なcDNA配列(1725nt)
【0119】
【化4】

【0120】
配列番号5 トウガラシ(Capsicum annuum)のβ-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ1のアミノ酸配列(574aa)
【化5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号2、または配列番号4に示されるとおりである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項5】
請求項1から3に記載のポリヌクレオチドを含むDNA構築物であって、前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列に作動可能に連結されている、DNA構築物。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチド配列がセンス方向にある、請求項5に記載のDNA構築物。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド配列がアンチセンス方向にある、請求項5に記載のDNA構築物。
【請求項8】
トランスジェニック植物においてヘキソサミニダーゼの発現を抑制するためのRNAi構築物であって、前記構築物は、
配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、
前記センスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖と
を含み、前記アンチセンスポリヌクレオチド鎖とセンスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成する、RNAi構築物。
【請求項9】
前記RNAi構築物がヘアピン核酸である、請求項8に記載のRNAi構築物。
【請求項10】
前記センス鎖が100ヌクレオチドから600ヌクレオチドを含む、請求項8に記載のRNAi構築物。
【請求項11】
請求項5から9に記載のDNA構築物を含む組換えベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の組換えベクターを含む組換え宿主細胞。
【請求項13】
アグロバクテリウム、大腸菌、および酵母からなる群から選択される、請求項12に記載の組換え宿主細胞。
【請求項14】
植物において果実の軟化を遅延させるための方法であって、植物の細胞、組織、またはそれらのいずれかの部分を、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換する段階を含み、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードし、前記ポリヌクレオチドはアンチセンス方向にある、方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号4からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
植物において果実の軟化を遅延させるための方法であって、ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階であって、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%の同一性を有するポリペプチドをコードする、段階と、得られた植物を、前記非トランスジェニック植物と比較したヘキソサミニダーゼレベルの低下についてスクリーニングする段階とを含む方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号4からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
植物において果実の軟化を遅延させるための方法であって、配列番号2または配列番号4に示される配列に由来する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチド鎖と、前記センスポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド鎖とを含むRNA干渉(RNAi)構築物を発現させることにより、トランスジェニック植物におけるヘキソサミニダーゼのレベルを非トランスジェニック植物におけるそのレベルと比較して低下させる段階であって、前記アンチセンスポリヌクレオチド鎖と前記センスポリヌクレオチド鎖は二本鎖を形成する、段階と、得られた植物を、前記非トランスジェニック植物と比較したヘキソサミニダーゼレベルの低下についてスクリーニングする段階とを含む方法。
【請求項19】
前記RNAi構築物がヘアピン核酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項14から19に記載の方法によって作出されるトランスジェニック植物であって、前記植物におけるヘキソサミニダーゼの発現が、果実の軟化を遅延させるように制御されている、トランスジェニック植物。
【請求項21】
トマト、トウガラシ、パパイヤ、マンゴー、バナナ、モモ、洋ナシ、シトラス、パイナップル、グアバ、アボカド、イチゴ、リンゴ、およびザクロからなる群から選択される、請求項20に記載のトランスジェニック植物。
【請求項22】
トマトまたはトウガラシである、請求項20に記載のトランスジェニック植物。
【請求項23】
請求項18から22に記載のトランスジェニック植物のトランスジェニック種子または子孫。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−527564(P2011−527564A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517316(P2011−517316)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000388
【国際公開番号】WO2010/004583
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510314828)
【出願人】(510314839)
【出願人】(510314840)
【出願人】(510314851)
【出願人】(510314862)
【Fターム(参考)】