枝打ち装置及び昇降作業装置
【課題】樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行うことができる枝打ち装置及び、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる昇降作業装置を提供する
【解決手段】
枝打ち装置は、ガイドバー71の部位には枝噛み防止部材90を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持するガイドレール部材74,75、及びコイルバネ97,98を備える。枝噛み防止部材90は、チェーン歯72の刃幅よりも幅が狭い枝打ち方向側の端部を備えている。枝打ち方向側の端部が切断中の枝の切り口に挟まれた状態の下でチェーン歯72の切断動作及びガイドバー71の枝打ち方向への動作が可能にされている。
【解決手段】
枝打ち装置は、ガイドバー71の部位には枝噛み防止部材90を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持するガイドレール部材74,75、及びコイルバネ97,98を備える。枝噛み防止部材90は、チェーン歯72の刃幅よりも幅が狭い枝打ち方向側の端部を備えている。枝打ち方向側の端部が切断中の枝の切り口に挟まれた状態の下でチェーン歯72の切断動作及びガイドバー71の枝打ち方向への動作が可能にされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝打ち装置及び該枝打ち装置を備えて樹幹に沿って昇降動作して、枝打ち作業を行うことができる昇降作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹木の枝打ち作業は、人が枝打ちを手作業で行うか、或いは、枝打ち装置で枝打ちが行われるようにしている。これらの枝打ち装置では、枝打ち手段としてチェーンソー(特許文献1)、リーマ(非特許文献1参照)、丸鋸(特許文献2参照)、或いはレシプロソー等や、或いは一対の刃体が挟み型に設けられた枝打ち装置が使用されている。挟み型の枝打ち装置では、枝打ちの対象の枝を一対の刃体で挟むようにして切断することから、枝噛みの問題は生じない。
【0003】
しかし、枝に対して一方の方向から切断するタイプの枝打ち装置では、枝切りが進むと、枝ぶりにより、例えばチェーンソーの場合には、チェーン歯をガイドするガイドバーを枝の切断面部分間で噛んだりすることがある。このように刃体又は刃体を支持するガイドバーに枝噛みが生じると、刃体が動かなかったり、或いは、枝に対してガイドバーの進方向への移動ができなくなって、結果的に、切断が出来なくなるため、切断作業を中断し、枝噛み状態を作業者は直す必要がある。
【0004】
又、樹幹を昇降自在に自動的に移動する昇降作業装置に枝打ち装置を備えたものにあっては、前述のように切断動作を行っている枝打ち装置に枝噛み状態が生ずると、作業者は樹幹に上って該枝打ち装置の枝噛み状態を枝噛みしていない状態に直す必要があり、枝打ちの作業効率が著しく低下する問題がある。
【0005】
このような枝打ち装置の枝噛みを防止するために、チェーンソーのガイドバーに対して可動できる枝噛み防止部材を取り付けた構成の枝打ち装置が提案されている(特許文献3)。この技術によれば、枝噛み時に、枝噛み防止部材が枝に噛まれても、枝噛み防止部材とガイドバーは、ガイドバーは枝打ちの方向である進行方向とは逆方向に移動自在となっている。このため、枝噛み防止部材が枝により噛み込みされても、ガイドバーは進行方向に進むことができるため、枝を切ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−789834号公報
【特許文献2】特開2001−120084号公報
【特許文献3】特開2009−261375号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】向井、ルーター刃による枝打機の試作、機械化林業 No.439, pp.43-47,1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3は、直線的に枝を切る場合は有効であるが、樹幹の周面の周方向に沿って枝打ち装置を周回させながら枝打ちをする際、平面のガイドバーにより、切断している枝を押し広げながら進行する必要がある。この場合、ガイドバーが樹幹の周方向に移動しようとすると、直線的にしか移動できない前記枝噛み防止部材を介して該枝噛み防止部材に噛み込みしている枝を押すことになるため、前記枝打ち装置を樹幹の周面を周回させるためには、多大な推力を必要とする問題があった。
【0009】
本発明の目的は、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行うことができる枝打ち装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる昇降作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持手段と、前記支持手段により切断動作可能に支持された刃体と、前記刃体に切断動作を付与する駆動手段とを備え、枝打ち時に前記駆動手段により前記刃体が切断動作している状態で、前記支持手段が枝打ち方向へ移動することにより、枝打ちをする枝打ち装置において、前記刃体を基準として反枝打ち方向側に位置する前記支持手段の部位には枝噛み防止部材を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持する支持機構を備え、前記枝噛み防止部材は、前記刃体の刃幅よりも幅が狭い挿入部を備えるとともに該挿入部が切断中の枝の切り口に挟まれた状態の下で前記刃体の切断動作及び前記支持手段の枝打ち方向への動作が可能にされていることを特徴とする枝打ち装置を要旨としている。
【0012】
なお、本明細書において、枝打ち方向とは、枝打ち装置が枝打ちのために移動する方向である。又、本明細書において、樹幹の周面に沿ってとは、周方向に旋回する際に、該周面に平行に移動する場合の他、平行移動ではないが、該周面の周りを概ね円弧状に移動するものを含む趣旨である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記支持機構は、前記枝噛み防止部材の前記円弧状の軌跡が異なる支持機構と取り替え可能に前記支持手段に対して設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記支持機構が、さらに、前記枝噛み防止部材を、枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持していることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記支持機構は、許容されている移動方向に前記枝噛み防止部材が移動した際に、該枝噛み防止部材をその移動した方向とは反対方向に復帰移動させる付勢手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記刃体が該支持手段の周部を周回するチェーン歯であることを特徴とする。
請求項6の発明は、昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降部には、樹幹を囲むように配置される軌道部が設けられ、前記軌道部に対して請求項1、請求項3、請求項4、請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置を要旨としている。
【0017】
請求項7の発明は、昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降機構は、自走する駆動機構と、樹幹の周面の周方向に沿って旋回可能に操舵する操舵機構を含み、前記昇降部に対して請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置を要旨としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行うことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、支持機構は、枝噛み防止部材の前記円弧状の軌跡が異なる他の支持機構と取り替え可能になっているため、径の異なる樹幹に応じて、支持機構を交換することにより、枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、枝を切るときに、枝噛み防止部材をこの移動自在に許容されている方向に移動させることができる。この結果、枝噛み防止部材が移動自在に移動できない場合に比して、枝打ちの進行が妨げられることがなく、枝打ち装置の枝打ちを確実に行うことができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、枝打ち作業時に切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態の枝噛み防止部材が支持手段に対して移動しても、切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態が解除されると、付勢手段により、枝噛み防止部材を移動した方向とは反対方向に復帰移動させ、次の枝打ち作業に対応させることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、チェーンソーを枝打ち装置として使用する場合に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の効果を実現することができる。
請求項6の発明によれば、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる。そして、軌道部において自走する自走機構を備えた枝打ち装置において、請求項1の効果を容易に実現することができる。又、推力の軽減ができるため、自走機構の駆動源の推力を小さなものとすることも可能となる。
【0023】
請求項7の発明によれば、駆動機構の推力の軽減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】枝打ち装置全体を示す斜視図。
【図2】昇降作業装置に具体化した一実施形態を示す略体正面図。
【図3】図2の略体平面図。
【図4】第1車輪位置調整機構、第1上部固定アーム、第1下部揺動アーム及び第1上部駆動輪を示す正面図。
【図5】図4の右側面図。
【図6】第1〜第4車輪位置調整機構の斜視図。
【図7】樹幹に枝打ち装置を装着する動作を説明する斜視図。
【図8】樹幹に枝払い機構を省略した枝打ち装置を装着した状態を示す斜視図。
【図9】(a)はチェーンソー67の概略斜視図、(b)は枝噛み防止部材の移動した状態を示すチェーンソー67の概略斜視図。
【図10】(a)はチェーンソー67の要部斜視図、(b)は要部断面図。
【図11】(a)はチェーンソー67のガイドバーの背面図、(b)は、同じくガイドバーの側面図。
【図12】(a)〜(c)は枝噛み防止部材の作用の説明図。
【図13】第2実施形態を示す斜視図。
【図14】図12の枝打ち装置の操舵機構を示す斜視図。
【図15】(a)及び(b)は、それぞれ図14の操舵機構の部分略体説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した枝打ち装置としての図1に示すチェーンソー67及び自走機構60を備える昇降作業装置の一実施形態を図面に従って説明するが、まず、本実施形態における樹幹11を昇降する昇降作業装置12Aを図2及び図3を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図2及び図3においては、自走機構60及びチェーンソー67は省略されている。
【0026】
昇降作業装置12Aは、昇降部Sと該昇降部Sを昇降させる昇降機構SKとからなる。まず、昇降機構SKについて説明する。昇降機構SKは、図3に示すように、平面視正四角環状の環状機枠13の四隅部に対し対して装着された第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dを備えている。前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bは、図2に示すように前記隅部に対して固定された第1及び第2上部固定アーム22A,22Bを有するとともに、両アーム22A,22Bの先端部に第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが装着されている。
【0027】
前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2下部固定アーム23A,23Bが装着されるとともに、両アーム23A,23Bの先端部に第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが装着されている。前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bには、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bが上下方向の揺動可能に装着されるとともに、両アーム25A,25Bの先端部に第1及び第2下部従動輪20A,20Bが装着されている。前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2上部揺動アーム24A,24Bが上下方向の揺動可能に装着されるとともに、両アーム24A,24Bの先端部に第1及び第2上部従動輪19A,19Bが装着されている。
【0028】
図2に示すように前記第1及び第2上部揺動アーム24A,24B、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bは、コイルバネ26によりそれぞれ樹幹11に接近する方向に付勢されている。図3に示すように前記環状機枠13には、前記第1及び第2下部駆動輪17A,17Bと対応するようにウエイト部13b(後述の制御ボックス68)が設けられている。従って、前記ウエイト部13bによって前記第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが樹幹11の表面に押し付けられるとともに、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが樹幹11の表面に押し付けられ、昇降作業装置12Aが樹幹11から滑り落ちないようにしている。この昇降作業装置12Aが落ちない原理は、すでに特許文献3で公知であるため、その説明は省略する。
【0029】
次に、昇降作業装置12Aの具体的構成を図1、図4〜図8を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図7及び図8においては、自走機構60及びチェーンソー67が省略されている。前記環状機枠13は図7及び図8に示すように、ヒンジ機構27によって水平方向の開閉可能に連結された平面視コ字状の第1及び第2フレーム28,29によって、樹幹11の周囲に脱着可能に構成されている。
【0030】
前記第1及び第2フレーム28,29の前記ヒンジ機構27と反対側の両端部には、該両端部を互いに連結するための連結機構30が設けられている。この連結機構30は、第1フレーム28の端部に形成されたネジ孔28aに対して、第2フレーム29の端部に設けられた蝶ボルト30Aを螺合又は螺退することにより第1フレーム28と、第2フレーム29を連結又は連結解除するように構成されている。
【0031】
次に、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dについて説明する。
各調整機構21A〜21Dは同様に構成されているので、図4〜図6を参照して第1車輪位置調整機構21Aについて説明する。図4に示すように、前記環状機枠13の隅部には、取付台座31を介して案内ロッド32が水平に支持固定されるとともに、この案内ロッド32と平行にボールねじ33が前記取付台座31に回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の先端部は、前記案内ロッド32の先端に固定した連結板34によって回転可能に支持されている。前記案内ロッド32及びボールねじ33には、該ボールねじ33に螺合されたボールねじナットを有する可動支持体35が水平方向の往復移動可能に支持されている。前記可動支持体35には支持軸36が貫通固定されるとともに、この支持軸36に前記第1上部駆動輪15Aを装着した第1上部固定アーム22Aが連結されている。前記支持軸36には、前記第1下部従動輪20Aを装着した第1下部揺動アーム25Aが上下方向の往復揺動可能に装着されるとともに、図5に示すコイルバネ26によって前記樹幹11に接近するように付勢されている。
【0032】
前記環状機枠13の隅部には、ウォーム37が回転軸38によって回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の基端部には前記ウォーム37に噛み合わされたウォームホィール39が連結されるとともに、前記回転軸38には上下二段にプーリ40が嵌合固定されている。そして、前記プーリ40が回転されると、ウォーム37、ウォームホィール39及びボールねじ33が回転されるとともに、前記可動支持体35が水平方向に往復移動されて、前記第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの水平方向の位置が調整されるようにしている。図6に示すように、前記ヒンジ機構27には前記プーリ40を回転するための操作機構41が設けられている。操作機構41とヒンジ機構27に共通の回転軸42には第1及び第2タイミングプーリ43,44が嵌合されるとともに、操作ハンドル45によって回動可能になっている。前記第1タイミングプーリ43と前記第1車輪位置調整機構21Aの上部のプーリ40との間には、第1タイミングベルト46が掛装されるとともに、第1車輪位置調整機構21Aのプーリ40を回転するようになっている。
【0033】
又、前記第1車輪位置調整機構21Aの下部のプーリ40と、第2車輪位置調整機構21Bのプーリ40との間には、第2タイミングベルト47が掛装されるとともに、該プーリ40を回転するようになっている。同様に、前記第2タイミングプーリ44と第3車輪位置調整機構21Cの下部のプーリ40とに掛装された第3タイミングベルト48によって、該プーリ40が回転されるようになっている。さらに、第3車輪位置調整機構21Cの上部のプーリ40と、第4車輪位置調整機構21Dのプーリ40とに掛装されたタイミングベルト49によって該プーリ40が回転されるようになっている。
【0034】
操作ハンドル45が手動により回転されると、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dのそれぞれの可動支持体35が同期して移動されるとともに、図1に示す駆動輪15A,15B、17A,17B及び従動輪19A,19B,20A,20Bの位置が調整される。図4に示すように、第1上部固定アーム22Aの先端部には取付台座51が設けられ、取付台座51に回転軸52が回転自在に支持されている。該回転軸52は、取付台座51に設けられたサーボモータ54により回転駆動されるとともに、その外周面にはウォーム53が嵌合固定されている。そして、前記第1上部駆動輪15Aは、前記回転軸14に嵌合固定されて、かつ前記ウォーム53に噛み合わされたウォームホィール55によって回転されるようになっている。
【0035】
次に、図1を参照して、上記のように構成された昇降機構SKに搭載される昇降部Sについて説明する。
前記環状機枠13を構成する第1及び第2フレーム28,29の上面には、複数の支持ロッド61に対して取付け取り外し可能に支持された上下二段の軌道部としての円形をなす環状リング62を備えている。環状リング62の支持ロッド61に対する取付取り外し可能な方法は、例えば、ビス等の螺退することにより取り外しが可能な締め付け手段を使用することにより可能である。この環状リング62は半円状に分割されるとともに、ヒンジ機構63により前記第1及び第2フレーム28,29の開閉動作に同期して開閉されるようになっている。本実施形態では、前記環状機枠13、軌道部としての環状リング62により昇降部Sが構成されている。
【0036】
次に、前記環状機枠13に装着された自走機構60及びチェーンソー67について説明する。
昇降部Sを構成する前記両環状リング62には、旋回支持体64が自走機構60により、環状リング62に沿って円周方向に枝打ち方向に旋回可能となっている。すなわち、自走機構60は、旋回支持体64に装着された駆動源及び駆動手段としてのサーボモータ65と、サーボモータ65の図示しない出力軸に設けられた歯車と、環状リング62上において、環状リング62の環状形状に沿って設けられたラック(図示しない)とにより構成されている。そして、サーボモータ65により旋回支持体64が環状リング62を枝打ち方向に旋回可能である。なお、旋回支持体64は、環状リング62に対する装着及び取り外しが可能な構成になっている。又、サーボモータ65には枝打ち装置としてのチェーンソー67が装着されている。図1、図9(a)、(b)に示すようにチェーンソー67は、機構部ケース70と、該機構部ケース70から突出して配置された平板状のガイドバー71と、ガイドバー71の外周部を滑走するチェーン歯72等を備えている。機構部ケース70内には前記サーボモータ65からの出力軸に作動連結された機構部(図示しない)が設けられ、サーボモータ65の出力トルクが該機構部を介してチェーン歯72に伝達されることにより該チェーン歯72をガイドバー71の外周部において滑走駆動するようになっている。ガイドバー71は支持手段に相当する。
【0037】
機構部ケース70から露出したガイドバー71には、図9(a)、(b)に示すように四角形状の貫通孔73が形成されている。本実施形態では貫通孔73はガイドバー71の長手方向に沿って長孔状に形成されている。
【0038】
ガイドバー71の樹幹側側面であって、貫通孔73の長手方向の両端(図9において、上下両端)の縁部には、一対のガイドレール部材74,75が取付けられている。上部のガイドレール部材74は、取付板部76と、取付板部76の樹幹側側縁部から垂下して延出されるとともに一定の厚みを有するレール部77を備えている。ガイドレール部材74は、ガイドバー71に対して、ガイドバー71の反樹幹側側面から取付板部76に対し螺合されたビス等の取付固定部材78(図11(a)参照)により取り替え可能に取付けされている。レール部77は、図9(a),(b)に示すように、樹幹11の周面に沿う曲率半径を有するように湾曲されている。又、下部のガイドレール部材75は、取付板部79と、取付板部79の樹幹側側縁部から上方に延出されるとともに一定の厚みを有するレール部80を備えている。ガイドレール部材75は、ガイドバー71に対して、ガイドバー71の反樹幹側側面から取付板部79に対し螺合されたビス等の取付固定部材81(図11(a)参照)を介して取付けされている。レール部80は、図9(a),(b)に示すように、樹幹11の周面に沿う曲率半径を有するように湾曲されている。すなわち、レール部80は、ガイドレール部材74のレール部77と同じ曲率半径を有する。ガイドレール部材74,75間には、枝噛み防止部材90が設けられている。枝噛み防止部材90は、図10(a)に示すように、略四角板状の第1湾曲板91、略四角板状の第2湾曲板92と、第1湾曲板91,第2湾曲板92間の間隔を保持する間隔保持部材93とを備えている。第1湾曲板91、第2湾曲板92及び間隔保持部材93は、前記レール部74,80の曲率半径と同じ曲率半径を有するように湾曲形成されるとともに、第1湾曲板91及び第2湾曲板92は、間隔保持部材93に対してビス等の締め付け手段により取付固定されている。
【0039】
又、第1湾曲板91,第2湾曲板92及び間隔保持部材93の湾曲の曲率中心は、前記環状リング62の中心と一致又は略一致するように設けられている。又、第1湾曲板91,第2湾曲板92及び間隔保持部材93は、その湾曲の曲率が、枝打ちを行う樹幹の周面に沿うようにあらかじめ設定されている。枝噛み防止部材90において、間隔保持部材93の上方及び下方は、第1湾曲板91と第2湾曲板92とにより挟まれた空間を有している。前記空間に前記レール部74,80が挿入されるとともに、第1湾曲板91,第2湾曲板92,間隔保持部材93に対してそれぞれ摺接自在に配置されている。本実施形態では、レール部74,80の長さは、枝噛み防止部材90の後述する待機位置からの枝で打ち方向とは反足す方向への移動量が、このチェーンソー67が通常の枝打ちの対象としている枝で想定されている最大直径よりも若干長い同程度の量となるように、設定されている。
【0040】
又、枝噛み防止部材90は、図9(a)に示すように枝打ち方向側に最も位置した際、第1湾曲板91が貫通孔73の枝打ち方向側側面に当接可能である。なお、本実施形態では、枝打ち方向とは、チェーンソー67において、ガイドバー71が枝打ちのために移動する方向である。この枝打ち方向側に最も位置する位置を以下では、枝打ち方向側位置という。なお、第1湾曲板91が貫通孔73の枝打ち方向側側面に当接する代わりに、間隔保持部材93が貫通孔73の枝打ち方向側側面に当接するように配置してもよい。
【0041】
枝噛み防止部材90が枝打ち方向側位置に位置している状態では、第1湾曲板91が貫通孔73から、反樹幹側に突出しないように、ガイドバー71の反樹幹側側面と面一、或いは、貫通孔73内に位置するように配置されている。
【0042】
第1湾曲板91は、その上下高さが貫通孔73の長手方向の長さ(上下高さ)よりも短くされ、貫通孔73に第1湾曲板91が入った際にも、貫通孔73の側面が許容する範囲で上下方向に移動自在となっている。
【0043】
又、枝噛み防止部材90が枝打ち方向側位置に位置している状態では、第2湾曲板92の枝打ち方向側の端部は、図9(a)に示すように、ガイドバー71の枝打ち方向側の側面から突出しない位置であって、側面と面一となる位置若しくは反枝打ち方向側に若干後退した位置に位置するように配置される。なお、第2湾曲板92の枝打ち方向側の端部の位置は、後述する枝噛み防止部材90が待機位置に位置している際、チェーン歯72が枝に切り込みしたときに、チェーン歯72が形成した直後の枝の切り口に挿入される位置が好ましい。
【0044】
枝噛み防止部材90の厚みは、図10(b)に示すように、刃体(チェーン歯72)の幅よりも若干短くなるように設定されるとともに、枝打ち方向側の端部から反枝打ち方向の端部まで、一定、又は略一定の厚みを備える。枝噛み防止部材90の枝打ち方向側の端部は挿入部に相当する。間隔保持部材93は、図10(a)に示すように、一対の横行部材94,95と上下方向に延びる縦部材96とを備えて、逆F字状に形成されている。なお、間隔保持部材93の形状は、限定されるものではない。上部の横行部材94と、前記レール部74の枝打ち方向側よりの部位間には、引っ張りばねとしてのコイルバネ97が掛け止めされている。又、横行部材94,95間の縦部材96と貫通孔73の枝打ち方向側の側面間には、引っ張りばねとしてのコイルバネ98が単数又は、複数の掛け止めされている。コイルバネ97,98は付勢手段に相当する。
【0045】
コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90は、枝打ち方向側位置であって、かつ、第1湾曲板91が貫通孔73の上部側面に係止する位置に位置(以下、この位置を待機位置という)するようにされている。
【0046】
レール部74,80を備えるガイドレール部材74,75、及びコイルバネ97,98は、支持機構に相当する。又、コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90を枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持している。
【0047】
図1に二点鎖線で示すように、前記環状機枠13の第1フレーム28には、前記サーボモータ54、65を駆動する蓄電池や制御機器を収容した制御ボックス68が設けられている。この制御ボックス68の重量は、図3に示すウエイト部13bの機能を有するものである。そして、前記旋回支持体64が図1に示すように制御ボックス68から最も離隔された状態においても図2において、両駆動輪15A,15B及び駆動輪17A,17Bが樹幹11に適度に押し付けられるようにしている。前述したサーボモータ54,65の起動又は停止動作は、地上から延長コードを用いて遠隔操作されるようになっているが、無線交信により遠隔操作するように構成してもよい。
【0048】
次に、前記のように構成された昇降作業装置12Aの動作について説明する。
図1に示す状態となるように、樹幹11に対して昇降作業装置12Aを取付けし、この状態でサーボモータ54を起動して、回転軸52及びウォーム53を回転する。すると、前記ウォームホィール55及び回転軸14を介して、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bがそれぞれ回転されて、昇降作業装置12Aが樹幹11に沿って上方に移動される。この昇降作業装置12Aの上昇動作と同期して、サーボモータ65が作動されて、チェーンソー67が作動されるとともに、旋回支持体64が環状リング62に沿って円周方向に旋回される。従って、昇降作業装置12Aの上昇の動作が行われると共に、チェーンソー67によって、樹幹11から張り出した枝が枝打ちされる。この枝打ち作業のとき、図12(a)から図12(b)に示すように、チェーンソー67の枝打ち方向側のチェーン歯72が枝11Aに切り込まれると、枝11Aには切り口11Bが形成される。枝打ち方向側のチェーン歯72が切り進むと待機位置に位置する枝噛み防止部材90の枝打ち側の部位が形成された切り口11B内に挿入される。
【0049】
チェーンソー67は、図12(b)に示すように、環状リング62に沿って円周方向に(すなわち、樹幹11の周面に沿って)旋回していく。このとき、枝噛み防止部材90の第1湾曲板91及び第2湾曲板92は、枝ぶりによって枝11Aの切り口11Bにより挟み込まれる。しかし、前記チェーンソー67が樹幹11の周面に沿って旋回することによって、枝噛み防止部材90は、従来技術(特許文献3)の場合と異なり、枝11Aの切り口11Bを押し広げることなく、枝噛み防止部材90はコイルバネ97,98の付勢力に抗して反枝打ち方向側に相対的に円弧状の軌跡を描いて移動する。この円弧状の軌跡は、樹幹11の周面に沿った軌跡となる。なお、この枝打ち時において、昇降作業装置12Aが上昇を伴ってチェーンソー67が旋回している場合には、枝噛み防止部材90は下方への移動も伴う。なお、実際は、枝噛み防止部材90は、前記挟み込みによりその場で押し止められるが、ガイドバー71は枝打ち方向に移動することから相対的に反枝打ち方向側に移動することになる。枝噛み防止部材90の待機位置からの移動量が、このチェーンソー67が通常の枝打ちの対象としている枝で想定されている最大直径よりも長い量となるように設定されていることから、切断が完了するまで挟み込みの状態が継続する。このため、刃体であるチェーン歯72の枝噛みが防止される。
【0050】
枝噛み防止部材90は、切断中の枝11Aの切断面間(切り口11B)に挟まれた状態が解除されると、コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90を移動した方向とは反対方向に復帰移動させる。すなわち、枝噛み防止部材90は待機位置に復帰する。以後同様に、枝打ちが行われ、樹幹11の枝打ち作業が終了すると、サーボモータ65が停止されるとともに、サーボモータ54が逆方向に回転されて、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが逆方向に回転されて、昇降作業装置12Aは、樹幹11に沿って下方に移動される。
【0051】
上記実施形態の昇降作業装置12Aによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の枝打ち装置では、チェーン歯72(刃体)を基準として反枝打ち方向側に位置するガイドバー71(支持手段)の部位には枝噛み防止部材90を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持するガイドレール部材74,75、及びコイルバネ97,98(支持機構)を備える。又、枝噛み防止部材90は、チェーン歯72の刃幅よりも幅が狭い枝打ち方向側の端部(挿入部)を備えている。そして、枝打ち方向側の端部が切断中の枝の切り口11Bに挟まれた状態の下でチェーン歯72の切断動作及びガイドバー71の枝打ち方向への動作が可能にされている。この結果、本実施形態によれば、枝打ち時に、ガイドバー71が樹幹11の周方向に沿って移動すると、切断動作するチェーン歯72により枝が切られてゆくが、枝噛み防止部材90が切断中の枝の切断面間(すなわち、切り口)に挟まれた状態の下においても、チェーン歯72の切断動作及びガイドバー71の枝打ち方向への動作が可能にされている。すなわち、枝噛み防止部材90が枝11Aの切り口で挟まれるため、チェーン歯72或いはガイドバー71が枝の切り口に挟まれることがなくなる。
【0052】
又、枝噛み防止部材90は、樹幹の周面に沿うように円弧状の軌跡を持って往復移動自在に設けられている。このため、ガイドバー71が樹幹の周方向に沿って移動した際に、枝の切り口に接している枝噛み防止部材90は、周方向に沿った状態で、枝によりそのまま停止保持するため、従来の直線的にしか移動できない枝噛み防止部材に比して接している枝を凹圧する推力は少なくてすむ。この結果、チェーン歯72又はガイドバー71に対する枝噛みの発生が防止されて枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0053】
(2) 本実施形態の枝打ち装置では、前記ガイドレール部材74,75をビス等の取付固定部材78(図11(a)参照)により取り替え可能に取付けされている。このことにより、樹幹11の径に応じて曲率半径の異なるレール部77,80を有するガイドレール部材74,75を取付けることも可能となる。この交換により、前記枝噛み防止部材90の第1湾曲板91,第2湾曲板92の湾曲における曲率半径の異なる枝噛み防止部材90も交換可能となっている。
【0054】
又、この場合、環状リング62も支持ロッド61から取り外すことができるため、径の異なる樹幹11に対しては、当該樹幹11の径に応じた大きさの環状リング62に付け替え、チェーンソー67を備える旋回支持体64を新たに付け替えた環状リング62に対して自走可能に装着する。
【0055】
そして、チェーンソー67において、新たに枝打ちを行う樹幹11の径に応じて、すなわち、樹幹周面の曲率に沿って移動できる枝噛み防止部材90、及び、枝噛み防止部材90の移動をガイドするガイドレール部材74,75を交換して取付けることにより、枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0056】
(3) 本実施形態の枝打ち装置では、コイルバネ97,98(支持機構)が、さらに、枝噛み防止部材90を、枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持している。この結果、枝を切るときに、枝噛み防止部材90を移動自在に許容されている方向に移動させることができるとともに、枝噛み防止部材90が移動自在に移動できない場合に比して、枝打ちの進行が妨げられることがなく、枝打ち装置の枝打ちを確実に行うことができる。
【0057】
(4) 本実施形態の枝打ち装置では、コイルバネ97,98(付勢手段)により、許容されている移動方向に枝噛み防止部材90が移動した際に、枝噛み防止部材90をその移動した方向とは反対方向に復帰移動させる。この結果、枝打ち作業時に切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態の枝噛み防止部材90がガイドバー71に対して移動しても、切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態が解除されると、コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90を移動した方向とは反対方向に復帰移動させ、次の枝打ち作業に対応させることができる。
【0058】
(5) 本実施形態の枝打ち装置では、チェーンソーに具体化したことにより、上記(1)から(4)の効果を実現することができる。
(6) 本実施形態の昇降作業装置は、上記(1)〜(5)に記載の枝打ち装置を備えている。この結果、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる。
【0059】
(7) 本実施形態の昇降作業装置は、昇降部Sが、樹幹を囲むように配置される環状リング62(軌道部)と、環状リング62に対してチェーンソー67(枝打ち装置)を自走させる自走機構60を備える。この結果、上記(6)の効果を容易に実現できるとともに、推力の軽減ができるため、自走機構60の駆動源(すなわち、サーボモータ65)の推力を小さなものとすることも可能となる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態を図13〜図15を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同一構成又は相当する構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。特に、本実施形態では、チェーンソー67の取付の対象部材が異なるため、支持ロッド61、環状リング62等は省略されている。本実施形態では、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17B、第1及び第2上部従動輪19A,19B、第1及び第2下部従動輪20A,20Bの進行方向を変更する操舵機構100をそれぞれ設けたものである。
【0061】
この操舵機構100のうち、第2上部駆動輪15A,第2下部従動輪20Aの操舵機構100を代表として、図14、図15(a)、(b)を参照して説明するが、他の操舵機構100についても同様に構成されている。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記取付台座51に連結された回動軸101が図15(a)に示すように回転可能に支持されている。この回動軸101にはホィール102が嵌合されている。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記ホィール102に噛み合わされるウォーム103を支持する回転軸104が支持されている。回転軸104,ウォーム103,ホィール102、及び回動軸101によりウォーム伝動機構が構成されている。図14に示すように前記可動支持体35にはサーボモータ105が取り付けられ、その回転軸106と前記回転軸104との間には、タイミングベルト107を備えたベルト伝動機構108が設けられている。図15(b)に示すように前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記第1下部従動輪20Aを装着した回動支持体110が回転支持軸111によって往復回動可能に装着されている。前記回転支持軸111には図15(b)に示すようにウォームホィール112が取り付けられている。前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記ウォームホィール112に噛み合わされるウォーム113が回転軸114によって回転可能に支持されている。前記回転軸114と前記サーボモータ105の回転軸106との間には、タイミングベルト115を備えたベルト伝動機構116が設けられている。回転軸114,ウォーム113,ウォームホィール112,及び回転支持軸111により、ウォーム伝動機構が構成されている。
【0062】
図13に示すように前記チェーンソー67は、環状機枠13の第1フレーム28側の所定位置に装着されている。第1実施形態の操作ハンドル45に代えて、サーボモータ120が設けられ、前記回転軸42(図6参照)を回転するようになっている。
【0063】
従って、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17B、第1及び第2上部従動輪19A,19B、第1及び第2下部従動輪20A,20Bの各サーボモータ105が駆動されると、ベルト伝動機構108,116及びウォーム伝動機構によって、第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの傾き角度が互い平行状態で変更されて操舵される。このため、昇降作業装置12Aは旋回しながら樹幹11に沿って昇降可能である。
【0064】
本実施形態では、サーボモータ54、ウォーム53、回転軸14は駆動機構に相当する。
本実施形態では、前記ガイドレール部材74,75をビス等の取付固定部材78(図11(a)参照)により取り替え可能に取付けされている。そして、ガイドレール部材74,75がガイドバー71に対して取り替え可能になっていることにより、樹幹11の径に応じて曲率半径の異なるレール部77,80を有するガイドレール部材74,75を取付けることも可能となる。この交換により、前記枝噛み防止部材90の第1湾曲板91,第2湾曲板92の湾曲における曲率半径の異なる枝噛み防止部材90も交換可能となっている。
【0065】
従って、樹幹11の径に応じて、すなわち、樹幹周面の曲率に沿って移動できる枝噛み防止部材90、及び、枝噛み防止部材90の移動をガイドするガイドレール部材74,75を交換して取付けることにより、枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0066】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、昇降作業装置12Aに自走機構60を付設したチェーンソー67を設けたが、昇降作業装置12A及び自走機構60を省略し、枝打ち装置としてチェーンソー67単独で構成してもよい。この場合は、作業員が高所作業車や、リフター等に作業員が搭乗して枝打ち装置としてのチェーンソー67を持って枝打ちを行うことになるが、これでもよい。
【0067】
・ 前記実施形態において、付勢手段の構成を省略してもよい。この場合、枝噛み防止部材を、枝打ち方向へ復帰させる場合は、ソレノイド等を使用して、所定の位置(前記実施形態では貫通孔73において、枝打ち方向側に寄った位置)へ復帰させるようにしてもよい。
【0068】
・ 前記実施形態では、ガイドレール部材74,75を個別に設けたが、ガイドレール部材74,75を互いに一体に連結して構成してもよい。例えば、前記ガイドレール部材74,75のレール部77,80の枝打ち方向側(図)の部位間と、反枝打ち方向側の部位間を連結して枠状に形成したり、いずれか一方の部位間を連結部材にて連結したコ字状に連結して一体に形成する。
【0069】
・ 自走機構の駆動源をサーボモータ65の代わりに内燃機関としてもよい。
・ 前記実施形態の引っ張りばねの代わりに、圧縮ばねに代えてもよい、この場合は、前記各引っ張りばねを設ける場所は、前記実施形態とは反対側の位置に設ければよい。
【0070】
・ 前記実施形態では、枝噛み防止部材90に負荷がかかっていない場合には、コイルバネ97,98により、枝打ち方向側位置であって、第1湾曲板91が貫通孔73の上部側面に係止する位置(最上位置)に位置するようにした。しかし、枝打ち方向側位置は、貫通孔73の枝打ち方向の側面と当接させる位置に限定するものではない。例えば、枝噛み防止部材90に負荷がかかっていない状態では、貫通孔73の枝打ち方向の側面から離間して引っ張りばねで宙づり状態となるようにしてもよい。そして、枝打ち時に、枝噛み防止部材90が反枝打ち方向に移動させるようにしてもよい。
【0071】
・ 前記環状機枠13はを平面視正四角環状に形成しているが、円形環状にしてもよく、或いは、正多角形環状にしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
S…昇降部、SK…昇降機構、11…樹幹、11A…枝、60…自走機構、
62…環状リング(軌道部)、65…サーボモータ(駆動手段、駆動源)、
67…チェーンソー(枝打ち装置)、71…ガイドバー(支持手段)、
72…チェーン歯(刃体)、73…貫通孔、
74,75…ガイドレール部材(支持機構)、
97,98…コイルバネ(支持機構、付勢手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝打ち装置及び該枝打ち装置を備えて樹幹に沿って昇降動作して、枝打ち作業を行うことができる昇降作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹木の枝打ち作業は、人が枝打ちを手作業で行うか、或いは、枝打ち装置で枝打ちが行われるようにしている。これらの枝打ち装置では、枝打ち手段としてチェーンソー(特許文献1)、リーマ(非特許文献1参照)、丸鋸(特許文献2参照)、或いはレシプロソー等や、或いは一対の刃体が挟み型に設けられた枝打ち装置が使用されている。挟み型の枝打ち装置では、枝打ちの対象の枝を一対の刃体で挟むようにして切断することから、枝噛みの問題は生じない。
【0003】
しかし、枝に対して一方の方向から切断するタイプの枝打ち装置では、枝切りが進むと、枝ぶりにより、例えばチェーンソーの場合には、チェーン歯をガイドするガイドバーを枝の切断面部分間で噛んだりすることがある。このように刃体又は刃体を支持するガイドバーに枝噛みが生じると、刃体が動かなかったり、或いは、枝に対してガイドバーの進方向への移動ができなくなって、結果的に、切断が出来なくなるため、切断作業を中断し、枝噛み状態を作業者は直す必要がある。
【0004】
又、樹幹を昇降自在に自動的に移動する昇降作業装置に枝打ち装置を備えたものにあっては、前述のように切断動作を行っている枝打ち装置に枝噛み状態が生ずると、作業者は樹幹に上って該枝打ち装置の枝噛み状態を枝噛みしていない状態に直す必要があり、枝打ちの作業効率が著しく低下する問題がある。
【0005】
このような枝打ち装置の枝噛みを防止するために、チェーンソーのガイドバーに対して可動できる枝噛み防止部材を取り付けた構成の枝打ち装置が提案されている(特許文献3)。この技術によれば、枝噛み時に、枝噛み防止部材が枝に噛まれても、枝噛み防止部材とガイドバーは、ガイドバーは枝打ちの方向である進行方向とは逆方向に移動自在となっている。このため、枝噛み防止部材が枝により噛み込みされても、ガイドバーは進行方向に進むことができるため、枝を切ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−789834号公報
【特許文献2】特開2001−120084号公報
【特許文献3】特開2009−261375号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】向井、ルーター刃による枝打機の試作、機械化林業 No.439, pp.43-47,1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3は、直線的に枝を切る場合は有効であるが、樹幹の周面の周方向に沿って枝打ち装置を周回させながら枝打ちをする際、平面のガイドバーにより、切断している枝を押し広げながら進行する必要がある。この場合、ガイドバーが樹幹の周方向に移動しようとすると、直線的にしか移動できない前記枝噛み防止部材を介して該枝噛み防止部材に噛み込みしている枝を押すことになるため、前記枝打ち装置を樹幹の周面を周回させるためには、多大な推力を必要とする問題があった。
【0009】
本発明の目的は、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行うことができる枝打ち装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる昇降作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持手段と、前記支持手段により切断動作可能に支持された刃体と、前記刃体に切断動作を付与する駆動手段とを備え、枝打ち時に前記駆動手段により前記刃体が切断動作している状態で、前記支持手段が枝打ち方向へ移動することにより、枝打ちをする枝打ち装置において、前記刃体を基準として反枝打ち方向側に位置する前記支持手段の部位には枝噛み防止部材を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持する支持機構を備え、前記枝噛み防止部材は、前記刃体の刃幅よりも幅が狭い挿入部を備えるとともに該挿入部が切断中の枝の切り口に挟まれた状態の下で前記刃体の切断動作及び前記支持手段の枝打ち方向への動作が可能にされていることを特徴とする枝打ち装置を要旨としている。
【0012】
なお、本明細書において、枝打ち方向とは、枝打ち装置が枝打ちのために移動する方向である。又、本明細書において、樹幹の周面に沿ってとは、周方向に旋回する際に、該周面に平行に移動する場合の他、平行移動ではないが、該周面の周りを概ね円弧状に移動するものを含む趣旨である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記支持機構は、前記枝噛み防止部材の前記円弧状の軌跡が異なる支持機構と取り替え可能に前記支持手段に対して設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記支持機構が、さらに、前記枝噛み防止部材を、枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持していることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記支持機構は、許容されている移動方向に前記枝噛み防止部材が移動した際に、該枝噛み防止部材をその移動した方向とは反対方向に復帰移動させる付勢手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記刃体が該支持手段の周部を周回するチェーン歯であることを特徴とする。
請求項6の発明は、昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降部には、樹幹を囲むように配置される軌道部が設けられ、前記軌道部に対して請求項1、請求項3、請求項4、請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置を要旨としている。
【0017】
請求項7の発明は、昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降機構は、自走する駆動機構と、樹幹の周面の周方向に沿って旋回可能に操舵する操舵機構を含み、前記昇降部に対して請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置を要旨としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行うことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、支持機構は、枝噛み防止部材の前記円弧状の軌跡が異なる他の支持機構と取り替え可能になっているため、径の異なる樹幹に応じて、支持機構を交換することにより、枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、枝を切るときに、枝噛み防止部材をこの移動自在に許容されている方向に移動させることができる。この結果、枝噛み防止部材が移動自在に移動できない場合に比して、枝打ちの進行が妨げられることがなく、枝打ち装置の枝打ちを確実に行うことができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、枝打ち作業時に切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態の枝噛み防止部材が支持手段に対して移動しても、切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態が解除されると、付勢手段により、枝噛み防止部材を移動した方向とは反対方向に復帰移動させ、次の枝打ち作業に対応させることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、チェーンソーを枝打ち装置として使用する場合に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の効果を実現することができる。
請求項6の発明によれば、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる。そして、軌道部において自走する自走機構を備えた枝打ち装置において、請求項1の効果を容易に実現することができる。又、推力の軽減ができるため、自走機構の駆動源の推力を小さなものとすることも可能となる。
【0023】
請求項7の発明によれば、駆動機構の推力の軽減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】枝打ち装置全体を示す斜視図。
【図2】昇降作業装置に具体化した一実施形態を示す略体正面図。
【図3】図2の略体平面図。
【図4】第1車輪位置調整機構、第1上部固定アーム、第1下部揺動アーム及び第1上部駆動輪を示す正面図。
【図5】図4の右側面図。
【図6】第1〜第4車輪位置調整機構の斜視図。
【図7】樹幹に枝打ち装置を装着する動作を説明する斜視図。
【図8】樹幹に枝払い機構を省略した枝打ち装置を装着した状態を示す斜視図。
【図9】(a)はチェーンソー67の概略斜視図、(b)は枝噛み防止部材の移動した状態を示すチェーンソー67の概略斜視図。
【図10】(a)はチェーンソー67の要部斜視図、(b)は要部断面図。
【図11】(a)はチェーンソー67のガイドバーの背面図、(b)は、同じくガイドバーの側面図。
【図12】(a)〜(c)は枝噛み防止部材の作用の説明図。
【図13】第2実施形態を示す斜視図。
【図14】図12の枝打ち装置の操舵機構を示す斜視図。
【図15】(a)及び(b)は、それぞれ図14の操舵機構の部分略体説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した枝打ち装置としての図1に示すチェーンソー67及び自走機構60を備える昇降作業装置の一実施形態を図面に従って説明するが、まず、本実施形態における樹幹11を昇降する昇降作業装置12Aを図2及び図3を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図2及び図3においては、自走機構60及びチェーンソー67は省略されている。
【0026】
昇降作業装置12Aは、昇降部Sと該昇降部Sを昇降させる昇降機構SKとからなる。まず、昇降機構SKについて説明する。昇降機構SKは、図3に示すように、平面視正四角環状の環状機枠13の四隅部に対し対して装着された第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dを備えている。前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bは、図2に示すように前記隅部に対して固定された第1及び第2上部固定アーム22A,22Bを有するとともに、両アーム22A,22Bの先端部に第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが装着されている。
【0027】
前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2下部固定アーム23A,23Bが装着されるとともに、両アーム23A,23Bの先端部に第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが装着されている。前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bには、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bが上下方向の揺動可能に装着されるとともに、両アーム25A,25Bの先端部に第1及び第2下部従動輪20A,20Bが装着されている。前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2上部揺動アーム24A,24Bが上下方向の揺動可能に装着されるとともに、両アーム24A,24Bの先端部に第1及び第2上部従動輪19A,19Bが装着されている。
【0028】
図2に示すように前記第1及び第2上部揺動アーム24A,24B、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bは、コイルバネ26によりそれぞれ樹幹11に接近する方向に付勢されている。図3に示すように前記環状機枠13には、前記第1及び第2下部駆動輪17A,17Bと対応するようにウエイト部13b(後述の制御ボックス68)が設けられている。従って、前記ウエイト部13bによって前記第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが樹幹11の表面に押し付けられるとともに、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが樹幹11の表面に押し付けられ、昇降作業装置12Aが樹幹11から滑り落ちないようにしている。この昇降作業装置12Aが落ちない原理は、すでに特許文献3で公知であるため、その説明は省略する。
【0029】
次に、昇降作業装置12Aの具体的構成を図1、図4〜図8を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図7及び図8においては、自走機構60及びチェーンソー67が省略されている。前記環状機枠13は図7及び図8に示すように、ヒンジ機構27によって水平方向の開閉可能に連結された平面視コ字状の第1及び第2フレーム28,29によって、樹幹11の周囲に脱着可能に構成されている。
【0030】
前記第1及び第2フレーム28,29の前記ヒンジ機構27と反対側の両端部には、該両端部を互いに連結するための連結機構30が設けられている。この連結機構30は、第1フレーム28の端部に形成されたネジ孔28aに対して、第2フレーム29の端部に設けられた蝶ボルト30Aを螺合又は螺退することにより第1フレーム28と、第2フレーム29を連結又は連結解除するように構成されている。
【0031】
次に、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dについて説明する。
各調整機構21A〜21Dは同様に構成されているので、図4〜図6を参照して第1車輪位置調整機構21Aについて説明する。図4に示すように、前記環状機枠13の隅部には、取付台座31を介して案内ロッド32が水平に支持固定されるとともに、この案内ロッド32と平行にボールねじ33が前記取付台座31に回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の先端部は、前記案内ロッド32の先端に固定した連結板34によって回転可能に支持されている。前記案内ロッド32及びボールねじ33には、該ボールねじ33に螺合されたボールねじナットを有する可動支持体35が水平方向の往復移動可能に支持されている。前記可動支持体35には支持軸36が貫通固定されるとともに、この支持軸36に前記第1上部駆動輪15Aを装着した第1上部固定アーム22Aが連結されている。前記支持軸36には、前記第1下部従動輪20Aを装着した第1下部揺動アーム25Aが上下方向の往復揺動可能に装着されるとともに、図5に示すコイルバネ26によって前記樹幹11に接近するように付勢されている。
【0032】
前記環状機枠13の隅部には、ウォーム37が回転軸38によって回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の基端部には前記ウォーム37に噛み合わされたウォームホィール39が連結されるとともに、前記回転軸38には上下二段にプーリ40が嵌合固定されている。そして、前記プーリ40が回転されると、ウォーム37、ウォームホィール39及びボールねじ33が回転されるとともに、前記可動支持体35が水平方向に往復移動されて、前記第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの水平方向の位置が調整されるようにしている。図6に示すように、前記ヒンジ機構27には前記プーリ40を回転するための操作機構41が設けられている。操作機構41とヒンジ機構27に共通の回転軸42には第1及び第2タイミングプーリ43,44が嵌合されるとともに、操作ハンドル45によって回動可能になっている。前記第1タイミングプーリ43と前記第1車輪位置調整機構21Aの上部のプーリ40との間には、第1タイミングベルト46が掛装されるとともに、第1車輪位置調整機構21Aのプーリ40を回転するようになっている。
【0033】
又、前記第1車輪位置調整機構21Aの下部のプーリ40と、第2車輪位置調整機構21Bのプーリ40との間には、第2タイミングベルト47が掛装されるとともに、該プーリ40を回転するようになっている。同様に、前記第2タイミングプーリ44と第3車輪位置調整機構21Cの下部のプーリ40とに掛装された第3タイミングベルト48によって、該プーリ40が回転されるようになっている。さらに、第3車輪位置調整機構21Cの上部のプーリ40と、第4車輪位置調整機構21Dのプーリ40とに掛装されたタイミングベルト49によって該プーリ40が回転されるようになっている。
【0034】
操作ハンドル45が手動により回転されると、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dのそれぞれの可動支持体35が同期して移動されるとともに、図1に示す駆動輪15A,15B、17A,17B及び従動輪19A,19B,20A,20Bの位置が調整される。図4に示すように、第1上部固定アーム22Aの先端部には取付台座51が設けられ、取付台座51に回転軸52が回転自在に支持されている。該回転軸52は、取付台座51に設けられたサーボモータ54により回転駆動されるとともに、その外周面にはウォーム53が嵌合固定されている。そして、前記第1上部駆動輪15Aは、前記回転軸14に嵌合固定されて、かつ前記ウォーム53に噛み合わされたウォームホィール55によって回転されるようになっている。
【0035】
次に、図1を参照して、上記のように構成された昇降機構SKに搭載される昇降部Sについて説明する。
前記環状機枠13を構成する第1及び第2フレーム28,29の上面には、複数の支持ロッド61に対して取付け取り外し可能に支持された上下二段の軌道部としての円形をなす環状リング62を備えている。環状リング62の支持ロッド61に対する取付取り外し可能な方法は、例えば、ビス等の螺退することにより取り外しが可能な締め付け手段を使用することにより可能である。この環状リング62は半円状に分割されるとともに、ヒンジ機構63により前記第1及び第2フレーム28,29の開閉動作に同期して開閉されるようになっている。本実施形態では、前記環状機枠13、軌道部としての環状リング62により昇降部Sが構成されている。
【0036】
次に、前記環状機枠13に装着された自走機構60及びチェーンソー67について説明する。
昇降部Sを構成する前記両環状リング62には、旋回支持体64が自走機構60により、環状リング62に沿って円周方向に枝打ち方向に旋回可能となっている。すなわち、自走機構60は、旋回支持体64に装着された駆動源及び駆動手段としてのサーボモータ65と、サーボモータ65の図示しない出力軸に設けられた歯車と、環状リング62上において、環状リング62の環状形状に沿って設けられたラック(図示しない)とにより構成されている。そして、サーボモータ65により旋回支持体64が環状リング62を枝打ち方向に旋回可能である。なお、旋回支持体64は、環状リング62に対する装着及び取り外しが可能な構成になっている。又、サーボモータ65には枝打ち装置としてのチェーンソー67が装着されている。図1、図9(a)、(b)に示すようにチェーンソー67は、機構部ケース70と、該機構部ケース70から突出して配置された平板状のガイドバー71と、ガイドバー71の外周部を滑走するチェーン歯72等を備えている。機構部ケース70内には前記サーボモータ65からの出力軸に作動連結された機構部(図示しない)が設けられ、サーボモータ65の出力トルクが該機構部を介してチェーン歯72に伝達されることにより該チェーン歯72をガイドバー71の外周部において滑走駆動するようになっている。ガイドバー71は支持手段に相当する。
【0037】
機構部ケース70から露出したガイドバー71には、図9(a)、(b)に示すように四角形状の貫通孔73が形成されている。本実施形態では貫通孔73はガイドバー71の長手方向に沿って長孔状に形成されている。
【0038】
ガイドバー71の樹幹側側面であって、貫通孔73の長手方向の両端(図9において、上下両端)の縁部には、一対のガイドレール部材74,75が取付けられている。上部のガイドレール部材74は、取付板部76と、取付板部76の樹幹側側縁部から垂下して延出されるとともに一定の厚みを有するレール部77を備えている。ガイドレール部材74は、ガイドバー71に対して、ガイドバー71の反樹幹側側面から取付板部76に対し螺合されたビス等の取付固定部材78(図11(a)参照)により取り替え可能に取付けされている。レール部77は、図9(a),(b)に示すように、樹幹11の周面に沿う曲率半径を有するように湾曲されている。又、下部のガイドレール部材75は、取付板部79と、取付板部79の樹幹側側縁部から上方に延出されるとともに一定の厚みを有するレール部80を備えている。ガイドレール部材75は、ガイドバー71に対して、ガイドバー71の反樹幹側側面から取付板部79に対し螺合されたビス等の取付固定部材81(図11(a)参照)を介して取付けされている。レール部80は、図9(a),(b)に示すように、樹幹11の周面に沿う曲率半径を有するように湾曲されている。すなわち、レール部80は、ガイドレール部材74のレール部77と同じ曲率半径を有する。ガイドレール部材74,75間には、枝噛み防止部材90が設けられている。枝噛み防止部材90は、図10(a)に示すように、略四角板状の第1湾曲板91、略四角板状の第2湾曲板92と、第1湾曲板91,第2湾曲板92間の間隔を保持する間隔保持部材93とを備えている。第1湾曲板91、第2湾曲板92及び間隔保持部材93は、前記レール部74,80の曲率半径と同じ曲率半径を有するように湾曲形成されるとともに、第1湾曲板91及び第2湾曲板92は、間隔保持部材93に対してビス等の締め付け手段により取付固定されている。
【0039】
又、第1湾曲板91,第2湾曲板92及び間隔保持部材93の湾曲の曲率中心は、前記環状リング62の中心と一致又は略一致するように設けられている。又、第1湾曲板91,第2湾曲板92及び間隔保持部材93は、その湾曲の曲率が、枝打ちを行う樹幹の周面に沿うようにあらかじめ設定されている。枝噛み防止部材90において、間隔保持部材93の上方及び下方は、第1湾曲板91と第2湾曲板92とにより挟まれた空間を有している。前記空間に前記レール部74,80が挿入されるとともに、第1湾曲板91,第2湾曲板92,間隔保持部材93に対してそれぞれ摺接自在に配置されている。本実施形態では、レール部74,80の長さは、枝噛み防止部材90の後述する待機位置からの枝で打ち方向とは反足す方向への移動量が、このチェーンソー67が通常の枝打ちの対象としている枝で想定されている最大直径よりも若干長い同程度の量となるように、設定されている。
【0040】
又、枝噛み防止部材90は、図9(a)に示すように枝打ち方向側に最も位置した際、第1湾曲板91が貫通孔73の枝打ち方向側側面に当接可能である。なお、本実施形態では、枝打ち方向とは、チェーンソー67において、ガイドバー71が枝打ちのために移動する方向である。この枝打ち方向側に最も位置する位置を以下では、枝打ち方向側位置という。なお、第1湾曲板91が貫通孔73の枝打ち方向側側面に当接する代わりに、間隔保持部材93が貫通孔73の枝打ち方向側側面に当接するように配置してもよい。
【0041】
枝噛み防止部材90が枝打ち方向側位置に位置している状態では、第1湾曲板91が貫通孔73から、反樹幹側に突出しないように、ガイドバー71の反樹幹側側面と面一、或いは、貫通孔73内に位置するように配置されている。
【0042】
第1湾曲板91は、その上下高さが貫通孔73の長手方向の長さ(上下高さ)よりも短くされ、貫通孔73に第1湾曲板91が入った際にも、貫通孔73の側面が許容する範囲で上下方向に移動自在となっている。
【0043】
又、枝噛み防止部材90が枝打ち方向側位置に位置している状態では、第2湾曲板92の枝打ち方向側の端部は、図9(a)に示すように、ガイドバー71の枝打ち方向側の側面から突出しない位置であって、側面と面一となる位置若しくは反枝打ち方向側に若干後退した位置に位置するように配置される。なお、第2湾曲板92の枝打ち方向側の端部の位置は、後述する枝噛み防止部材90が待機位置に位置している際、チェーン歯72が枝に切り込みしたときに、チェーン歯72が形成した直後の枝の切り口に挿入される位置が好ましい。
【0044】
枝噛み防止部材90の厚みは、図10(b)に示すように、刃体(チェーン歯72)の幅よりも若干短くなるように設定されるとともに、枝打ち方向側の端部から反枝打ち方向の端部まで、一定、又は略一定の厚みを備える。枝噛み防止部材90の枝打ち方向側の端部は挿入部に相当する。間隔保持部材93は、図10(a)に示すように、一対の横行部材94,95と上下方向に延びる縦部材96とを備えて、逆F字状に形成されている。なお、間隔保持部材93の形状は、限定されるものではない。上部の横行部材94と、前記レール部74の枝打ち方向側よりの部位間には、引っ張りばねとしてのコイルバネ97が掛け止めされている。又、横行部材94,95間の縦部材96と貫通孔73の枝打ち方向側の側面間には、引っ張りばねとしてのコイルバネ98が単数又は、複数の掛け止めされている。コイルバネ97,98は付勢手段に相当する。
【0045】
コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90は、枝打ち方向側位置であって、かつ、第1湾曲板91が貫通孔73の上部側面に係止する位置に位置(以下、この位置を待機位置という)するようにされている。
【0046】
レール部74,80を備えるガイドレール部材74,75、及びコイルバネ97,98は、支持機構に相当する。又、コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90を枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持している。
【0047】
図1に二点鎖線で示すように、前記環状機枠13の第1フレーム28には、前記サーボモータ54、65を駆動する蓄電池や制御機器を収容した制御ボックス68が設けられている。この制御ボックス68の重量は、図3に示すウエイト部13bの機能を有するものである。そして、前記旋回支持体64が図1に示すように制御ボックス68から最も離隔された状態においても図2において、両駆動輪15A,15B及び駆動輪17A,17Bが樹幹11に適度に押し付けられるようにしている。前述したサーボモータ54,65の起動又は停止動作は、地上から延長コードを用いて遠隔操作されるようになっているが、無線交信により遠隔操作するように構成してもよい。
【0048】
次に、前記のように構成された昇降作業装置12Aの動作について説明する。
図1に示す状態となるように、樹幹11に対して昇降作業装置12Aを取付けし、この状態でサーボモータ54を起動して、回転軸52及びウォーム53を回転する。すると、前記ウォームホィール55及び回転軸14を介して、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bがそれぞれ回転されて、昇降作業装置12Aが樹幹11に沿って上方に移動される。この昇降作業装置12Aの上昇動作と同期して、サーボモータ65が作動されて、チェーンソー67が作動されるとともに、旋回支持体64が環状リング62に沿って円周方向に旋回される。従って、昇降作業装置12Aの上昇の動作が行われると共に、チェーンソー67によって、樹幹11から張り出した枝が枝打ちされる。この枝打ち作業のとき、図12(a)から図12(b)に示すように、チェーンソー67の枝打ち方向側のチェーン歯72が枝11Aに切り込まれると、枝11Aには切り口11Bが形成される。枝打ち方向側のチェーン歯72が切り進むと待機位置に位置する枝噛み防止部材90の枝打ち側の部位が形成された切り口11B内に挿入される。
【0049】
チェーンソー67は、図12(b)に示すように、環状リング62に沿って円周方向に(すなわち、樹幹11の周面に沿って)旋回していく。このとき、枝噛み防止部材90の第1湾曲板91及び第2湾曲板92は、枝ぶりによって枝11Aの切り口11Bにより挟み込まれる。しかし、前記チェーンソー67が樹幹11の周面に沿って旋回することによって、枝噛み防止部材90は、従来技術(特許文献3)の場合と異なり、枝11Aの切り口11Bを押し広げることなく、枝噛み防止部材90はコイルバネ97,98の付勢力に抗して反枝打ち方向側に相対的に円弧状の軌跡を描いて移動する。この円弧状の軌跡は、樹幹11の周面に沿った軌跡となる。なお、この枝打ち時において、昇降作業装置12Aが上昇を伴ってチェーンソー67が旋回している場合には、枝噛み防止部材90は下方への移動も伴う。なお、実際は、枝噛み防止部材90は、前記挟み込みによりその場で押し止められるが、ガイドバー71は枝打ち方向に移動することから相対的に反枝打ち方向側に移動することになる。枝噛み防止部材90の待機位置からの移動量が、このチェーンソー67が通常の枝打ちの対象としている枝で想定されている最大直径よりも長い量となるように設定されていることから、切断が完了するまで挟み込みの状態が継続する。このため、刃体であるチェーン歯72の枝噛みが防止される。
【0050】
枝噛み防止部材90は、切断中の枝11Aの切断面間(切り口11B)に挟まれた状態が解除されると、コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90を移動した方向とは反対方向に復帰移動させる。すなわち、枝噛み防止部材90は待機位置に復帰する。以後同様に、枝打ちが行われ、樹幹11の枝打ち作業が終了すると、サーボモータ65が停止されるとともに、サーボモータ54が逆方向に回転されて、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが逆方向に回転されて、昇降作業装置12Aは、樹幹11に沿って下方に移動される。
【0051】
上記実施形態の昇降作業装置12Aによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の枝打ち装置では、チェーン歯72(刃体)を基準として反枝打ち方向側に位置するガイドバー71(支持手段)の部位には枝噛み防止部材90を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持するガイドレール部材74,75、及びコイルバネ97,98(支持機構)を備える。又、枝噛み防止部材90は、チェーン歯72の刃幅よりも幅が狭い枝打ち方向側の端部(挿入部)を備えている。そして、枝打ち方向側の端部が切断中の枝の切り口11Bに挟まれた状態の下でチェーン歯72の切断動作及びガイドバー71の枝打ち方向への動作が可能にされている。この結果、本実施形態によれば、枝打ち時に、ガイドバー71が樹幹11の周方向に沿って移動すると、切断動作するチェーン歯72により枝が切られてゆくが、枝噛み防止部材90が切断中の枝の切断面間(すなわち、切り口)に挟まれた状態の下においても、チェーン歯72の切断動作及びガイドバー71の枝打ち方向への動作が可能にされている。すなわち、枝噛み防止部材90が枝11Aの切り口で挟まれるため、チェーン歯72或いはガイドバー71が枝の切り口に挟まれることがなくなる。
【0052】
又、枝噛み防止部材90は、樹幹の周面に沿うように円弧状の軌跡を持って往復移動自在に設けられている。このため、ガイドバー71が樹幹の周方向に沿って移動した際に、枝の切り口に接している枝噛み防止部材90は、周方向に沿った状態で、枝によりそのまま停止保持するため、従来の直線的にしか移動できない枝噛み防止部材に比して接している枝を凹圧する推力は少なくてすむ。この結果、チェーン歯72又はガイドバー71に対する枝噛みの発生が防止されて枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0053】
(2) 本実施形態の枝打ち装置では、前記ガイドレール部材74,75をビス等の取付固定部材78(図11(a)参照)により取り替え可能に取付けされている。このことにより、樹幹11の径に応じて曲率半径の異なるレール部77,80を有するガイドレール部材74,75を取付けることも可能となる。この交換により、前記枝噛み防止部材90の第1湾曲板91,第2湾曲板92の湾曲における曲率半径の異なる枝噛み防止部材90も交換可能となっている。
【0054】
又、この場合、環状リング62も支持ロッド61から取り外すことができるため、径の異なる樹幹11に対しては、当該樹幹11の径に応じた大きさの環状リング62に付け替え、チェーンソー67を備える旋回支持体64を新たに付け替えた環状リング62に対して自走可能に装着する。
【0055】
そして、チェーンソー67において、新たに枝打ちを行う樹幹11の径に応じて、すなわち、樹幹周面の曲率に沿って移動できる枝噛み防止部材90、及び、枝噛み防止部材90の移動をガイドするガイドレール部材74,75を交換して取付けることにより、枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0056】
(3) 本実施形態の枝打ち装置では、コイルバネ97,98(支持機構)が、さらに、枝噛み防止部材90を、枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持している。この結果、枝を切るときに、枝噛み防止部材90を移動自在に許容されている方向に移動させることができるとともに、枝噛み防止部材90が移動自在に移動できない場合に比して、枝打ちの進行が妨げられることがなく、枝打ち装置の枝打ちを確実に行うことができる。
【0057】
(4) 本実施形態の枝打ち装置では、コイルバネ97,98(付勢手段)により、許容されている移動方向に枝噛み防止部材90が移動した際に、枝噛み防止部材90をその移動した方向とは反対方向に復帰移動させる。この結果、枝打ち作業時に切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態の枝噛み防止部材90がガイドバー71に対して移動しても、切断中の枝の切断面間(切り口)に挟まれた状態が解除されると、コイルバネ97,98により、枝噛み防止部材90を移動した方向とは反対方向に復帰移動させ、次の枝打ち作業に対応させることができる。
【0058】
(5) 本実施形態の枝打ち装置では、チェーンソーに具体化したことにより、上記(1)から(4)の効果を実現することができる。
(6) 本実施形態の昇降作業装置は、上記(1)〜(5)に記載の枝打ち装置を備えている。この結果、樹幹を周回をしながら枝打ち作業を行う場合、枝噛みの発生を抑制して樹幹の周回に要する推力の軽減を行うことができ、円滑に枝打ちを行いながら、上昇することができる。
【0059】
(7) 本実施形態の昇降作業装置は、昇降部Sが、樹幹を囲むように配置される環状リング62(軌道部)と、環状リング62に対してチェーンソー67(枝打ち装置)を自走させる自走機構60を備える。この結果、上記(6)の効果を容易に実現できるとともに、推力の軽減ができるため、自走機構60の駆動源(すなわち、サーボモータ65)の推力を小さなものとすることも可能となる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態を図13〜図15を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同一構成又は相当する構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。特に、本実施形態では、チェーンソー67の取付の対象部材が異なるため、支持ロッド61、環状リング62等は省略されている。本実施形態では、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17B、第1及び第2上部従動輪19A,19B、第1及び第2下部従動輪20A,20Bの進行方向を変更する操舵機構100をそれぞれ設けたものである。
【0061】
この操舵機構100のうち、第2上部駆動輪15A,第2下部従動輪20Aの操舵機構100を代表として、図14、図15(a)、(b)を参照して説明するが、他の操舵機構100についても同様に構成されている。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記取付台座51に連結された回動軸101が図15(a)に示すように回転可能に支持されている。この回動軸101にはホィール102が嵌合されている。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記ホィール102に噛み合わされるウォーム103を支持する回転軸104が支持されている。回転軸104,ウォーム103,ホィール102、及び回動軸101によりウォーム伝動機構が構成されている。図14に示すように前記可動支持体35にはサーボモータ105が取り付けられ、その回転軸106と前記回転軸104との間には、タイミングベルト107を備えたベルト伝動機構108が設けられている。図15(b)に示すように前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記第1下部従動輪20Aを装着した回動支持体110が回転支持軸111によって往復回動可能に装着されている。前記回転支持軸111には図15(b)に示すようにウォームホィール112が取り付けられている。前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記ウォームホィール112に噛み合わされるウォーム113が回転軸114によって回転可能に支持されている。前記回転軸114と前記サーボモータ105の回転軸106との間には、タイミングベルト115を備えたベルト伝動機構116が設けられている。回転軸114,ウォーム113,ウォームホィール112,及び回転支持軸111により、ウォーム伝動機構が構成されている。
【0062】
図13に示すように前記チェーンソー67は、環状機枠13の第1フレーム28側の所定位置に装着されている。第1実施形態の操作ハンドル45に代えて、サーボモータ120が設けられ、前記回転軸42(図6参照)を回転するようになっている。
【0063】
従って、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17B、第1及び第2上部従動輪19A,19B、第1及び第2下部従動輪20A,20Bの各サーボモータ105が駆動されると、ベルト伝動機構108,116及びウォーム伝動機構によって、第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの傾き角度が互い平行状態で変更されて操舵される。このため、昇降作業装置12Aは旋回しながら樹幹11に沿って昇降可能である。
【0064】
本実施形態では、サーボモータ54、ウォーム53、回転軸14は駆動機構に相当する。
本実施形態では、前記ガイドレール部材74,75をビス等の取付固定部材78(図11(a)参照)により取り替え可能に取付けされている。そして、ガイドレール部材74,75がガイドバー71に対して取り替え可能になっていることにより、樹幹11の径に応じて曲率半径の異なるレール部77,80を有するガイドレール部材74,75を取付けることも可能となる。この交換により、前記枝噛み防止部材90の第1湾曲板91,第2湾曲板92の湾曲における曲率半径の異なる枝噛み防止部材90も交換可能となっている。
【0065】
従って、樹幹11の径に応じて、すなわち、樹幹周面の曲率に沿って移動できる枝噛み防止部材90、及び、枝噛み防止部材90の移動をガイドするガイドレール部材74,75を交換して取付けることにより、枝打ち作業を効率的に行うことができる。
【0066】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、昇降作業装置12Aに自走機構60を付設したチェーンソー67を設けたが、昇降作業装置12A及び自走機構60を省略し、枝打ち装置としてチェーンソー67単独で構成してもよい。この場合は、作業員が高所作業車や、リフター等に作業員が搭乗して枝打ち装置としてのチェーンソー67を持って枝打ちを行うことになるが、これでもよい。
【0067】
・ 前記実施形態において、付勢手段の構成を省略してもよい。この場合、枝噛み防止部材を、枝打ち方向へ復帰させる場合は、ソレノイド等を使用して、所定の位置(前記実施形態では貫通孔73において、枝打ち方向側に寄った位置)へ復帰させるようにしてもよい。
【0068】
・ 前記実施形態では、ガイドレール部材74,75を個別に設けたが、ガイドレール部材74,75を互いに一体に連結して構成してもよい。例えば、前記ガイドレール部材74,75のレール部77,80の枝打ち方向側(図)の部位間と、反枝打ち方向側の部位間を連結して枠状に形成したり、いずれか一方の部位間を連結部材にて連結したコ字状に連結して一体に形成する。
【0069】
・ 自走機構の駆動源をサーボモータ65の代わりに内燃機関としてもよい。
・ 前記実施形態の引っ張りばねの代わりに、圧縮ばねに代えてもよい、この場合は、前記各引っ張りばねを設ける場所は、前記実施形態とは反対側の位置に設ければよい。
【0070】
・ 前記実施形態では、枝噛み防止部材90に負荷がかかっていない場合には、コイルバネ97,98により、枝打ち方向側位置であって、第1湾曲板91が貫通孔73の上部側面に係止する位置(最上位置)に位置するようにした。しかし、枝打ち方向側位置は、貫通孔73の枝打ち方向の側面と当接させる位置に限定するものではない。例えば、枝噛み防止部材90に負荷がかかっていない状態では、貫通孔73の枝打ち方向の側面から離間して引っ張りばねで宙づり状態となるようにしてもよい。そして、枝打ち時に、枝噛み防止部材90が反枝打ち方向に移動させるようにしてもよい。
【0071】
・ 前記環状機枠13はを平面視正四角環状に形成しているが、円形環状にしてもよく、或いは、正多角形環状にしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
S…昇降部、SK…昇降機構、11…樹幹、11A…枝、60…自走機構、
62…環状リング(軌道部)、65…サーボモータ(駆動手段、駆動源)、
67…チェーンソー(枝打ち装置)、71…ガイドバー(支持手段)、
72…チェーン歯(刃体)、73…貫通孔、
74,75…ガイドレール部材(支持機構)、
97,98…コイルバネ(支持機構、付勢手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持手段と、前記支持手段により切断動作可能に支持された刃体と、前記刃体に切断動作を付与する駆動手段とを備え、枝打ち時に前記駆動手段により前記刃体が切断動作している状態で、前記支持手段が枝打ち方向へ移動することにより、枝打ちをする枝打ち装置において、
前記支持手段の部位には枝噛み防止部材を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持する支持機構を備え、
前記枝噛み防止部材は、前記刃体の刃幅よりも幅が狭い挿入部を備えるとともに該挿入部が切断中の枝の切り口に挟まれた状態の下で前記刃体の切断動作及び前記支持手段の枝打ち方向への動作が可能にされていることを特徴とする枝打ち装置。
【請求項2】
前記支持機構は、前記枝噛み防止部材の前記円弧状の軌跡が異なる支持機構と取り替え可能に前記支持手段に対して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の枝打ち装置。
【請求項3】
前記支持機構が、さらに、前記枝噛み防止部材を、枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の枝打ち装置。
【請求項4】
前記支持機構は、許容されている移動方向に前記枝噛み防止部材が移動した際に、該枝噛み防止部材をその移動した方向とは反対方向に復帰移動させる付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置。
【請求項5】
前記刃体が該支持手段の周部を周回するチェーン歯であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置。
【請求項6】
昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降部には、樹幹を囲むように配置される軌道部が設けられ、前記軌道部に対して請求項1、請求項3、請求項4、請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置。
【請求項7】
昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降機構は、自走する駆動機構と、樹幹の周面の周方向に沿って旋回可能に操舵する操舵機構を含み、前記昇降部に対して請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置。
【請求項1】
支持手段と、前記支持手段により切断動作可能に支持された刃体と、前記刃体に切断動作を付与する駆動手段とを備え、枝打ち時に前記駆動手段により前記刃体が切断動作している状態で、前記支持手段が枝打ち方向へ移動することにより、枝打ちをする枝打ち装置において、
前記支持手段の部位には枝噛み防止部材を、樹幹の周面に沿って円弧状の軌跡を描いて移動自在に支持する支持機構を備え、
前記枝噛み防止部材は、前記刃体の刃幅よりも幅が狭い挿入部を備えるとともに該挿入部が切断中の枝の切り口に挟まれた状態の下で前記刃体の切断動作及び前記支持手段の枝打ち方向への動作が可能にされていることを特徴とする枝打ち装置。
【請求項2】
前記支持機構は、前記枝噛み防止部材の前記円弧状の軌跡が異なる支持機構と取り替え可能に前記支持手段に対して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の枝打ち装置。
【請求項3】
前記支持機構が、さらに、前記枝噛み防止部材を、枝打ち方向と反枝打ち方向に延びる軸とは直交する上下方向に延びる軸に移動自在に支持していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の枝打ち装置。
【請求項4】
前記支持機構は、許容されている移動方向に前記枝噛み防止部材が移動した際に、該枝噛み防止部材をその移動した方向とは反対方向に復帰移動させる付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置。
【請求項5】
前記刃体が該支持手段の周部を周回するチェーン歯であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置。
【請求項6】
昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降部には、樹幹を囲むように配置される軌道部が設けられ、前記軌道部に対して請求項1、請求項3、請求項4、請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置。
【請求項7】
昇降機構により昇降する昇降部を備え、前記昇降機構は、自走する駆動機構と、樹幹の周面の周方向に沿って旋回可能に操舵する操舵機構を含み、前記昇降部に対して請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の枝打ち装置が設けられていることを特徴とする昇降作業装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−167127(P2011−167127A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34572(P2010−34572)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年2月15日 国立大学法人 岐阜大学主催の「平成21年度 人間情報システム工学専攻 修士論文公聴会」において文書をもって発表
【出願人】(396024901)
【出願人】(507106272)株式会社 生物資源研究所 (4)
【出願人】(504331392)株式会社丸富精工 (11)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年2月15日 国立大学法人 岐阜大学主催の「平成21年度 人間情報システム工学専攻 修士論文公聴会」において文書をもって発表
【出願人】(396024901)
【出願人】(507106272)株式会社 生物資源研究所 (4)
【出願人】(504331392)株式会社丸富精工 (11)
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