説明

架橋ゴムの製造方法

【課題】不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを効率よく架橋して、耐熱性の向上した架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを、光重合開始剤の存在下で、活性光線の照射により架橋反応させることを特徴とする、架橋ゴムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴムの製造方法に関する。さらに詳しくは、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを効率よく架橋して、耐熱性の向上した架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムの架橋方法としては硫黄架橋、キノイド架橋、フェノール樹脂架橋等が知られているが、これらの方法は、高温で長時間の加熱が必要であって、生産効率に欠けるなどの問題がある。また、薄膜を作製する場合、高温による架橋方法では、架橋後に薄膜化しなければならず、均一・均質な薄膜を得ることが困難である。
従来技術として、例えば(1)少なくともキノイド、有機過酸化物、アクリルモノマーの三者を共存させて架橋反応を行わせることを特徴とするブチルゴムの架橋方法(特許文献1参照)や、(2)有機過酸化物と、電子吸引基を含有する多官能性モノマーとの存在下で、かつ、キノイド又は硫黄よりなる他の架橋剤の非存在下で、未架橋ブチルゴムの架橋反応を行わせることを特徴とするブチルゴムの架橋方法(特許文献2参照)が開示されている。
しかしながら、これらの方法はいずれも高温加熱が必要であり、ゴム架橋体の薄膜製造には適さない。
さらに、特許文献3では、紫外線照射による架橋を行っているが、ゴム成分として天然ゴムを用いており、その不飽和二重結合の多さから、耐熱性が求められる用途には適していない。また、加熱溶融させて耐熱性の高い粘着シートを得ようとする場合は、塗工性等を考慮すると天然ゴムは適していない。このような用途にはスチレン−共役ジエンブロックポリマーが適しており、その耐熱性向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−74934号公報
【特許文献2】特許第3197068号公報
【特許文献3】特開平7−157733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたものであり、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを効率よく架橋して、耐熱性の向上した架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、共役ジエン系未架橋ゴムを、光重合開始剤の存在下で、活性光線を照射することにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを、光重合開始剤の存在下で、活性光線の照射により架橋反応させることを特徴とする架橋ゴムの製造方法、
[2]活性光線が紫外線である、上記[1]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[3]不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムがイソプレン単位を含み、かつ光重合開始剤が水素引き抜き型である、上記[1]又は[2]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[4]イソプレン単位を含む共役ジエン系未架橋ゴムが、イソプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合ゴム、及びこれらの不完全水素添加物並びにブチルゴムの中から選ばれる少なくとも1種である、上記[3]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[5]水素引き抜き型光重合開始剤が、ベンゾフェノン類、チオキサントン類又はアントラキノン類である、上記[3]又は[4]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[6]不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムがブタジエン単位を含み、かつ光重合開始剤が分子内開裂型である、上記[1]又は[2]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[7]ブタジエン単位を含む共役ジエン系未架橋ゴムが、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合ゴム、及びこれらの不完全水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種である、上記[6]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[8]分子内開裂型光重合開始剤が、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル類又はアルキルフェノン類である、上記[6]又は[7]項に記載の架橋ゴムの製造方法、及び
[9]支持体上に設けられた、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムと光重合開始剤を含む塗膜に、活性光線を照射して未架橋ゴムを架橋反応させる、上記[1]〜[8]項のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の架橋ゴムの製造方法によれば、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを効率よく架橋して、耐熱性の向上した架橋ゴムを与えることができる。
また、本発明の架橋ゴムの製造方法によれば、一般的な塗布方式で薄膜形成後に活性光線を照射することで架橋ゴムが得られる。また、均一な薄膜が得られやすく、生産効率もよい。更に得られた架橋ゴムは、未架橋ゴムに比べて耐熱性などに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の架橋ゴムの製造方法は、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを、光重合開始剤の存在下で、活性光線の照射により架橋反応させて架橋ゴムを製造する方法である。
光重合開始剤は、水素引き抜き型と分子内開裂型の2種類に大別されることが知られている。本発明者は、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムの活性光線による架橋反応、特に紫外線による架橋反応について検討を重ねた結果、意外にも、光重合開始剤の種類によって、架橋反応の進行度が大きく異なることを見出した。
すなわち、前記共役ジエン系未架橋ゴムが、イソプレン単位を含む場合には、光重合開始剤として水素引き抜き型を使用する(以下、A法という。)ことが肝要であり、これにより架橋反応が効果的に進行するが、分子内開裂型を使用すると、架橋反応はほとんど進行しない。
一方、前記共役ジエン系未架橋ゴムが、ブタジエン単位を含む場合には、光重合開始剤として分子内開裂型を使用する(以下、B法という。)ことが肝要であり、これにより架橋反応が効果的に進行するが、水素引き抜き型を使用すると、架橋反応がほとんど進行しない。
なお、前記活性光線としては、装置や操作性、経済性などの観点から、紫外線が好ましく用いられる。
【0008】
[A法]
このA法は、イソプレン単位を含む未架橋ゴムを、水素引き抜き型光重合開始剤の存在下で、活線光線の照射により架橋反応させて、架橋ゴムを製造する方法である。
(イソプレン単位を含む未架橋ゴム)
イソプレン単位を含む未架橋ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合ゴム、及びこれらの不完全水素添加物並びにブチルゴムの中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
これらの中で、不飽和結合の含有量が適度であり、得られる架橋ゴムの耐熱性などの観点から、スチレン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合ゴム及びブチルゴムが好適である。
イソプレン単位を含む未架橋ゴムにおける分子内の不飽和結合含有量としては、架橋性及び得られる架橋ゴムの物性(耐熱性など)等の観点から、0.5〜98モル%であることが好ましく、1.0〜95モル%であることがより好ましい。
【0009】
(水素引き抜き型光重合開始剤)
水素引き抜き型光重合開始剤には、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類などがある。ベンゾフェノン類としては、例えばベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)−ベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン類としては、例えばチオキサントン、2−クロロチオキサントン、3−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等が挙げられ、アントラキノン類としては、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等が挙げられる。
これらの水素引き抜き型光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
[B法]
このB法は、ブタジエン単位を含む未架橋ゴムを、分子内開裂型光重合開始剤の存在下で、活性光線の照射により架橋反応させて架橋ゴムを製造する方法である。
(ブタジエン単位を含む未架橋ゴム)
ブタジエン単位を含む未架橋ゴムとしては、例えばブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合ゴム、及びこれらの不完全水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
これらの中で、不飽和結合の含有量が適度であり、得られる架橋ゴムの耐熱性などの観点から、スチレン−ブタジエン共重合ゴム及びスチレン−ブタジエン−スチレン共重合ゴムが好適である。
ブタジエン単位を含む未架橋ゴムにおける分子内の不飽和結合含有量としては、架橋性及び得られる架橋ゴムの物性(耐熱性など)等の観点から、0.5〜98モル%であることが好ましく、1.0〜95モル%であることがより好ましい。
【0011】
(分子内開裂型光重合開始剤)
分子内開裂型光重合開始剤には、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、アルキルフェノン類などがある。ベンゾイン類としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられ、ベンジルケタール類としては、例えばベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。
アセトフェノン類としては、例えばジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等が挙げられ、アルキルフェノン類としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
【0012】
アシルホスフィンオキサイド類としては、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−メトキシ−フェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシ−フェニル−ホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル−エトキシ−フェニル−ホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−エトキシ−フェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジメトキシ−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジシクロヘキシル−ホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル−ジシクロヘキシル−ホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジシクロヘキシル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ビス(2−メチルプロピル)ホスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイル−ビス(4−ペンチルオキシフェニル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
オキシムエステル類としては、例えば1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、前記の分子内開裂型光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、共役ジエン系未架橋ゴムが、イソプレン単位とブタジエン単位の両方を含む場合には、前述した水素引き抜き型光重合開始剤及び分子内開裂型光重合開始剤を併用することができる。
さらに、前記の水素引き抜き型光重合開始剤や分子内開裂型光重合開始剤は、例えばトリイソプロパノールアミン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノンなどの光重合開始助剤を併用してもよい。
前記光重合開始剤の使用量は、固形分として、前述した共役ジエン系未架橋ゴム100質量部(固形分)に対して、通常0.001〜30質量部、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜7質量部の範囲で選定される。光重合開始剤の使用量が0.001質量部未満では、十分な架橋を行うことができず、一方30質量部を超えると、紫外線照射時に主骨格の分解が促進されたりする。
【0014】
[塗膜形成用コーティング剤]
本発明においては、前述した共役ジエン系未架橋ゴムと、光重合開始剤を、所定の割合で含む、塗膜形成用コーティング剤を調製する。
このコーティング剤には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、充填剤、着色剤などの従来公知の各種添加剤を適宜配合してもよく、また、必要に応じてポリイソブチレン、ポリブテンなどの従来公知のポリマー成分を含有させてもよい。なお、この塗膜形成用コーティング剤の調製においては、無溶媒で行ってもよいし、必要に応じて適当な溶媒を適宜含有させることができる。
【0015】
[架橋ゴム層の形成]
前記のようにして調製した塗膜形成用コーティング剤を、無溶媒の場合にはホットメルト化し、支持体の一方の面に塗布し、冷却固化して塗膜層を形成させる。また、当該コーティング剤が、溶媒で希釈されて液状である場合には、支持体の一方の面に、従来公知の塗布手段、例えばナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、グラビアコーターなどにより塗布し、乾燥させることにより、塗膜層を形成させる。
前記の塗膜層を形成させる支持体としては、基材や工程シートなどを用いることができる。基材としては特に制限はなく、プラスチック基材、紙基材、不織布基材、ガラス基材、金属系基材、セラミックス系基材などの中から、形成される架橋ゴム層の用途に応じて適宜選択すればよい。また、架橋ゴムシートを所望する場合には、工程シートを用いることができる。
前記塗膜層の厚さは特に制限はなく、通常0.001〜1000μm、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.01〜300μmである。
【0016】
本発明においては、このようにして支持体上に形成された塗膜層に活性光線を照射して、共役ジエン系未架橋ゴムを架橋させ、架橋ゴム層を形成させる。活性光線としては、前述したように紫外線が好ましく用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョン製Hランプ、キセノンランプなどで得られる。この活性光線の照射量としては、例えば紫外線の場合には、光量で100〜5000mJ/cm2程度である。
前記紫外線は、塗膜層側から照射してもよいし、基材や工程シート側から照射してもよいが、基材や工程シート側から照射する場合には、基材や工程シートは、紫外線透過性を有することが肝要である。
【0017】
[架橋ゴム層の性状]
このようにして形成された架橋ゴム層は、下記の方法で測定されるゲル分率が、通常10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。
<ゲル分率の測定>
サイズ100mm×100mm、厚さ約20μmの架橋ゴムシートからなるテストピースを、ステンレス製金網[質量(Ag)]で挟み込み質量(Bg)を測定する。次いで、これを60mlのトルエン中に浸漬し、23℃にて120時間放置する。続いて金網付きテストピースを取り出し、120℃、3時間加熱乾燥して、乾燥後の質量(Cg)を測定し、下記の式
ゲル分率(質量%)=[(C−A)/(B−A)]×100
によりゲル分率を算出する。
また、本発明においては、23℃における未架橋ゴム層の貯蔵弾性率E1'及び23℃における架橋ゴム層の貯蔵弾性率E2'の上記E1'に対する下記の式で算出される変化率(以下、23℃貯蔵弾性率の変化率という。)を求めた。
23℃貯蔵弾性率の変化率(%)=[(E1'−E2')/E1']×100
23℃貯蔵弾性率の変化率は、15%以上が好ましく、20〜50%がより好ましい。
なお、23℃における、未架橋ゴム層及び架橋ゴム層の貯蔵弾性率E1'及びE2'は、動的弾性率測定装置[TAインスツルメント社製、装置名「DMA Q800」]を用いて、周波数1Hzにて測定する。
【0018】
本発明の架橋ゴムの製造方法によれば、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを効率よく架橋して、耐熱性の向上した架橋ゴムを与えることができる。
本発明の方法で得られた架橋ゴムは、例えば粘着剤、剥離剤、熱可塑性エラストマーの改質剤などとして有用である。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた架橋ゴムシートのゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'は、明細書本文に記載の方法に従って測定した。また、未架橋ゴムシートのゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'は、架橋ゴムシートのゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'と同様の方法で測定した。未架橋ゴムシートと架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率は、明細書本文に記載の計算式より算出した。
また、各例における未架橋ゴムシートは、光重合開始剤を添加することなく、光重合開始剤を添加した場合と同様な操作を行い、作製した。
【0020】
実施例1
ゴムとしてブチルゴム[JSR社製、製品名「JSR BUTYL365」、不飽和結合量2.0モル%]100質量部(固形分)と、水素引き抜き型光重合開始剤としてベンゾフェノン3質量部(固形分)を混合してコーティング剤を得た。このコーティング剤を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン処理された剥離シート上に乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布した。その塗膜側の面から、室温で紫外線を照射した(UVA領域にて光量200mJ/cm2)。剥離シートから架橋体を剥離することで架橋ゴムシートを得た。この架橋ゴムシートを用いてゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定をすると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃貯蔵弾性率は0.617MPaであった。
【0021】
また、光重合開始剤を分子内開裂型の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACURE184」]とした以外は、前記と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定をすると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出したところ、ゲル分率は0%であり、貯蔵弾性率E'は0.620MPa、貯蔵弾性率の変化率は0.4%であった。
【0022】
実施例2
実施例1において、ゴムをスチレン−イソプレン共重合ゴム[日本ゼオン社製、製品名「Quintac 3520」、不飽和結合量89.6モル%]とした以外は、実施例1と同様に架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定をすると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃貯蔵弾性率は1.360MPaであった。
【0023】
また、光重合開始剤を分子内開裂型の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACURE184」]とした以外は、前記と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定をすると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出したところ、ゲル分率は0%であり、貯蔵弾性率E'は1.365MPa、貯蔵弾性率の変化率は0.3%であった。
【0024】
実施例3
実施例1において、ゴムをスチレン−ブタジエン共重合ゴム[クレイトンポリマー社製、製品名「Kraton D1101」、不飽和結合量74.9モル%]とし、光重合開始剤を分子内開裂型の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACURE184」]とした以外は、実施例1と同様に架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定をすると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃貯蔵弾性率は28.905MPaであった。
【0025】
また、光重合開始剤を水素引き抜き型のベンゾフェノンとした以外は、前記と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定をすると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出したところ、ゲル分率は0%であり、貯蔵弾性率E'は29.124MPa、貯蔵弾性率の変化率は0.7%であった。
【0026】
【表1】

【0027】
[注]
A−1:ブチルゴム[JSR社製、製品名「JSR BUTYL365」]
A−2:スチレン−イソプレン共重合体[日本ゼオン社製、製品名「Quintac 3520」]
A−3:スチレン−ブタジエン共重合体
[クレイトンポリマー社製、製品名「Kraton D1101」]
B−1:ベンゾフェノン[東京化成工業社製]
B−2:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACURE184」]
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の架橋ゴムの製造方法は、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを効率よく架橋して、耐熱性の向上した架橋ゴムを与えることができる。この架橋ゴムは、例えば粘着剤、剥離剤、熱可塑性エラストマーの改質剤などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムを、光重合開始剤の存在下で、活性光線の照射により架橋反応させることを特徴とする架橋ゴムの製造方法。
【請求項2】
活性光線が紫外線である、請求項1に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項3】
不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムがイソプレン単位を含み、かつ光重合開始剤が水素引き抜き型である、請求項1又は2に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項4】
イソプレン単位を含む共役ジエン系未架橋ゴムが、イソプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合ゴム、及びこれらの不完全水素添加物並びにブチルゴムの中から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項5】
水素引き抜き型光重合開始剤が、ベンゾフェノン類、チオキサントン類又はアントラキノン類である、請求項3又は4に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項6】
不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムがブタジエン単位を含み、かつ光重合開始剤が分子内開裂型である、請求項1又は2に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項7】
ブタジエン単位を含む共役ジエン系未架橋ゴムが、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合ゴム、及びこれらの不完全水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項8】
分子内開裂型光重合開始剤が、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル類又はアルキルフェノン類である、請求項6又は7に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項9】
支持体上に設けられた、不飽和結合を有する共役ジエン系未架橋ゴムと光重合開始剤を含む塗膜に、活性光線を照射して未架橋ゴムを架橋反応させる、請求項1〜8のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法。

【公開番号】特開2010−180370(P2010−180370A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27022(P2009−27022)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】