架空送電線
【課題】引留クランプによる線条把持力が向上する架空送電線を提供する。
【解決手段】複数の丸型素線11を撚り合わせてなる撚り線部10と、撚り線部10の外周部に複数のセグメント型素線21を撚り合わせてなるセグメント層20と、を備える架空送電線1Aである。セグメント素線21の撚り線部10側の面は、撚り線部10の外接円C1よりも内側に凸である。
【解決手段】複数の丸型素線11を撚り合わせてなる撚り線部10と、撚り線部10の外周部に複数のセグメント型素線21を撚り合わせてなるセグメント層20と、を備える架空送電線1Aである。セグメント素線21の撚り線部10側の面は、撚り線部10の外接円C1よりも内側に凸である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線に関する。
【背景技術】
【0002】
中心のテンションメンバに複数の丸型素線を撚り合わせ、その外周に断面略楔形状のセグメント型素線を撚り合わせた多層撚り線構造の架空送電線が知られている(例えば、特許文献1参照)。図11は従来の架空送電線101の断面形状である。図11に示すように、架空送電線101の外周部には、セグメント型素線121を撚り合わせることにより、断面略円形のセグメント層120が形成されている。
【0003】
架空送電線を鉄塔等に引き留めるときには、圧縮やボルト締め、楔方式等の引留クランプにより架空送電線を把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−177962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図11の構造の架空送電線101では、セグメント型素線121に作用する締め付け力が隣接する他のセグメント型素線121に作用する圧縮力となり、中心部の丸型素線111の撚り線部110に伝達されにくい。このため、セグメント層120の内部の丸型素線111を把持するのに充分な線条把持力を得にくいという問題がある。
【0006】
一方、線条把持力を上げるために、セグメント層120が変形するほど圧縮力を大きくすると、素線の潰れや損傷が大きくなり、破断しやすくなるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、引留クランプによる線条把持力が向上する架空送電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、を備える架空送電線において、前記セグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、鋼線と、前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、を備える架空送電線において、前記セグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、を備える架空送電線において、最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、鋼線と、前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、を備える架空送電線において、最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の架空送電線であって、前記セグメント層の外周部に複数の丸型素線を撚り合わせた撚り線部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、セグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層を備える架空送電線において、セグメント層の内側の面が、セグメント層の内側の層の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引留クランプによる線条把持力が向上する架空送電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る架空送電線1Aの断面図である。
【図2】セグメント型素線21を示す断面図である。
【図3】セグメント型素線21の他の形態を示す断面図である。
【図4】セグメント型素線21の他の形態を示す断面図である。
【図5】セグメント型素線21の他の形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る架空送電線1Bを示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る架空送電線1Cを示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る架空送電線1Dを示す断面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る架空送電線1Eを示す断面図である。
【図10】セグメント型素線41の断面図である。
【図11】従来の架空送電線101の断面形状である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る架空送電線1Aの断面図である。図1に示すように、架空送電線1Aは、複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10と、複数のセグメント型素線21が撚り合わされたセグメント層20とから概略構成される。
丸型素線11やセグメント型素線21は同じ材質からなり、例えばアルミニウム線、アルミ合金等である。丸型素線11とセグメント型素線21とは異なる撚りピッチで撚り合わされている。
【0017】
図2は1本のセグメント型素線21を示す断面図である。図2に示すように、セグメント型素線21は、断面略台形形状であり、幅が狭い側が架空送電線1Aの中心側に、幅が広い側が架空送電線1Aの外側に配置されている。セグメント型素線21は側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21と接触し、断面略円形のセグメント層20を形成している。セグメント型素線21は、架空送電線1Aの外側の面23が断面円弧状であり、セグメント層20の外形を略円筒形に形成している。
【0018】
図1、図2において、撚り線部10の外接円C1を破線で示す。図1、図2に示すように、セグメント型素線21は、架空送電線1Aの中心側の面24が断面円弧状であり、外接円C1よりも架空送電線1Aの中心側に若干凸の円弧状となっている。
【0019】
このような構造の架空送電線1Aでは、図示しない引留クランプにより把持すると、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、中心側の面24が外接円C1よりも内側に入り、撚り線部10を強く押圧する。このため、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0020】
なお、セグメント型素線21と内側の丸型素線11とは逆向きに撚られるので、セグメント型素線21の中心側の面24と丸型素線11とが強く当たる箇所は飛び飛びに生じる。
【0021】
セグメント型素線21は、図3ないし図5に示すような形状であっても良い。
図3のセグメント型素線21は、セグメント型素線21の中心側の面24が断面円弧状ではなく、平坦である。図3に示すように、撚り線部10の外接円C1よりも面24がHだけ架空送電線1Aの内側に入り込んでいることで、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。なお、Hは、セグメント型素線21の中央部分において面24が外接円C1の内方に出ている距離である。
【0022】
図4のセグメント型素線21は、中心側の面24に外接円C1から高さHだけ架空送電線1Aの内側に突出する突条24aを設けたものである。突条24aの数は図4に示すように1本であってもよいし、図5に示すように複数本の突条24aを設けてもよい。突条24aが高さHだけ外接円C1の内側に入り込んでいることで、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0023】
<第2実施形態>
図6は本発明の第2の実施形態に係る架空送電線1Bを示す断面図である。図6に示すように、架空送電線1Bは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有している。テンションメンバ2の外周部に複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10が設けられ、撚り線部10の外周部に複数のセグメント型素線21が撚り合わされたセグメント層20が設けられている。
【0024】
丸型素線11やセグメント型素線21は第1実施形態と同様の材料からなる。鋼線3、丸型素線11及びセグメント型素線21は、それぞれ異なる撚りピッチで撚り合わされている。
【0025】
本実施形態においても、セグメント型素線21は、架空送電線1Bの中心側の面24が断面円弧状であり、撚り線部10の外接円C2よりも架空送電線1Bの中心側に凸の円弧状となっている。このため、図示しない引留クランプにより架空送電線1Bを把持すると、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、中心側の面24が外接円C2よりも内側に入り、撚り線部10を押圧する。このため、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0026】
なお、中心側の面24が外接円C2よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
【0027】
<第3実施形態>
図7は本発明の第3の実施形態に係る架空送電線1Cを示す断面図である。図7に示すように、架空送電線1Cは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有している。本実施形態においては、テンションメンバ2の外周部に複数のセグメント型素線21が撚り合わされたセグメント層20が設けられている。そして、セグメント層20の外周部に、複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10が設けられている。
【0028】
丸型素線11、セグメント型素線21、鋼線3は第2実施形態と同様の材料からなる。鋼線3、丸型素線11及びセグメント型素線21は、それぞれ異なる撚りピッチで撚り合わされている。
【0029】
本実施形態においては、セグメント型素線21は、架空送電線1Cの中心側の面24が断面円弧状であり、テンションメンバ2の外接円C3よりも架空送電線1Cの中心側に凸の円弧状となっている。このため、図示しない引留クランプにより架空送電線1Cが把持されると、セグメント型素線21は丸型素線11を介して架空送電線1Cの中心方向に圧縮力を受ける。そして、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、架空送電線1Cの中心側の面24がテンションメンバ2の外接円C3よりも内側に入り、テンションメンバ2を押圧する。このため、引留クランプによるテンションメンバ2の把持力を向上させることができる。
【0030】
なお、中心側の面24が外接円C3よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
【0031】
<第4実施形態>
図8は本発明の第4の実施形態に係る架空送電線1Dを示す断面図である。図8に示すように、架空送電線1Dは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有している。本実施形態においては、テンションメンバ2の外周部に複数のセグメント型素線21が撚り合わされた内側セグメント層20が設けられている。そして、内側セグメント層20の外周部に、さらに複数のセグメント型素線31が撚り合わされた外側セグメント層30が設けられている。
【0032】
セグメント型素線31は側面32,32で隣接する他のセグメント型素線31と接触し、断面略円形のセグメント層30を形成している。セグメント型素線31は、架空送電線1Dの中心側の面34の曲率半径が、セグメント型素線21の外側の面23の曲率半径と一致している。
【0033】
本実施形態においても、図示しない引留クランプにより架空送電線1Dが把持されると、セグメント型素線21は外側のセグメント型素線31を介して架空送電線1Dの中心方向に圧縮力を受ける。そして、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、架空送電線1Cの中心側の面24がテンションメンバ2の外接円C3よりも内側に入り、テンションメンバ2を押圧する。このため、引留クランプによるテンションメンバ2の把持力を向上させることができる。
【0034】
なお、中心側の面24は外接円C3よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
また、素線31の中心側の面34も、前記図4中符号24aで示した突条と同様の突条を設けるなど、素線21の面24と同様に形成すれば、素線31、21の係合が強まり、引留クランプによる把持力の向上に寄与する。
【0035】
<第5実施形態>
図9は本発明の第5の実施形態に係る架空送電線1Eを示す断面図である。図9に示すように、架空送電線1Eは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有し、テンションメンバ2の外周部に複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10が設けられている。本実施形態においては、撚り線部10の外周部に、嵌合式のセグメント型素線41が撚り合わされたセグメント層40が設けられている。
【0036】
図10はセグメント型素線41の断面図である。図10に示すように、セグメント型素線41は、一方の側面42に突起42aが、他方の側面42に凹部42bが設けられている。突起42aは隣接するセグメント型素線41の凹部42bと、凹部42bは隣接するセグメント型素線41の突起42aと嵌合することでセグメント層40が形成されている。
【0037】
セグメント型素線41は、架空送電線1Eの中心側の面54が断面円弧状であり、撚り線部10の外接円C4よりも架空送電線1Eの中心側に凸の円弧状となっている。このため、架空送電線1Eを図示しない引留クランプにより把持すると、セグメント型素線41が側面42,42で隣接する他のセグメント型素線41を押圧するとともに、中心側の面44が外接円C4よりも内側に入り、撚り線部10を押圧する。このため、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0038】
なお、中心側の面44が外接円C4よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B,1C,1D,1E 架空送電線
2 テンションメンバ
3 鋼線
10 撚り線部
11 丸型素線
20,30,40 セグメント層
21,31,41 セグメント型素線
22,32,42 側面
23,33,43 外側の面
24,34,44 中心側の面
24a 突条
42a 突起
42b 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線に関する。
【背景技術】
【0002】
中心のテンションメンバに複数の丸型素線を撚り合わせ、その外周に断面略楔形状のセグメント型素線を撚り合わせた多層撚り線構造の架空送電線が知られている(例えば、特許文献1参照)。図11は従来の架空送電線101の断面形状である。図11に示すように、架空送電線101の外周部には、セグメント型素線121を撚り合わせることにより、断面略円形のセグメント層120が形成されている。
【0003】
架空送電線を鉄塔等に引き留めるときには、圧縮やボルト締め、楔方式等の引留クランプにより架空送電線を把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−177962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図11の構造の架空送電線101では、セグメント型素線121に作用する締め付け力が隣接する他のセグメント型素線121に作用する圧縮力となり、中心部の丸型素線111の撚り線部110に伝達されにくい。このため、セグメント層120の内部の丸型素線111を把持するのに充分な線条把持力を得にくいという問題がある。
【0006】
一方、線条把持力を上げるために、セグメント層120が変形するほど圧縮力を大きくすると、素線の潰れや損傷が大きくなり、破断しやすくなるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、引留クランプによる線条把持力が向上する架空送電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、を備える架空送電線において、前記セグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、鋼線と、前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、を備える架空送電線において、前記セグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、を備える架空送電線において、最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、鋼線と、前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、を備える架空送電線において、最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の架空送電線であって、前記セグメント層の外周部に複数の丸型素線を撚り合わせた撚り線部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、セグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層を備える架空送電線において、セグメント層の内側の面が、セグメント層の内側の層の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引留クランプによる線条把持力が向上する架空送電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る架空送電線1Aの断面図である。
【図2】セグメント型素線21を示す断面図である。
【図3】セグメント型素線21の他の形態を示す断面図である。
【図4】セグメント型素線21の他の形態を示す断面図である。
【図5】セグメント型素線21の他の形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る架空送電線1Bを示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る架空送電線1Cを示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る架空送電線1Dを示す断面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る架空送電線1Eを示す断面図である。
【図10】セグメント型素線41の断面図である。
【図11】従来の架空送電線101の断面形状である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る架空送電線1Aの断面図である。図1に示すように、架空送電線1Aは、複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10と、複数のセグメント型素線21が撚り合わされたセグメント層20とから概略構成される。
丸型素線11やセグメント型素線21は同じ材質からなり、例えばアルミニウム線、アルミ合金等である。丸型素線11とセグメント型素線21とは異なる撚りピッチで撚り合わされている。
【0017】
図2は1本のセグメント型素線21を示す断面図である。図2に示すように、セグメント型素線21は、断面略台形形状であり、幅が狭い側が架空送電線1Aの中心側に、幅が広い側が架空送電線1Aの外側に配置されている。セグメント型素線21は側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21と接触し、断面略円形のセグメント層20を形成している。セグメント型素線21は、架空送電線1Aの外側の面23が断面円弧状であり、セグメント層20の外形を略円筒形に形成している。
【0018】
図1、図2において、撚り線部10の外接円C1を破線で示す。図1、図2に示すように、セグメント型素線21は、架空送電線1Aの中心側の面24が断面円弧状であり、外接円C1よりも架空送電線1Aの中心側に若干凸の円弧状となっている。
【0019】
このような構造の架空送電線1Aでは、図示しない引留クランプにより把持すると、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、中心側の面24が外接円C1よりも内側に入り、撚り線部10を強く押圧する。このため、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0020】
なお、セグメント型素線21と内側の丸型素線11とは逆向きに撚られるので、セグメント型素線21の中心側の面24と丸型素線11とが強く当たる箇所は飛び飛びに生じる。
【0021】
セグメント型素線21は、図3ないし図5に示すような形状であっても良い。
図3のセグメント型素線21は、セグメント型素線21の中心側の面24が断面円弧状ではなく、平坦である。図3に示すように、撚り線部10の外接円C1よりも面24がHだけ架空送電線1Aの内側に入り込んでいることで、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。なお、Hは、セグメント型素線21の中央部分において面24が外接円C1の内方に出ている距離である。
【0022】
図4のセグメント型素線21は、中心側の面24に外接円C1から高さHだけ架空送電線1Aの内側に突出する突条24aを設けたものである。突条24aの数は図4に示すように1本であってもよいし、図5に示すように複数本の突条24aを設けてもよい。突条24aが高さHだけ外接円C1の内側に入り込んでいることで、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0023】
<第2実施形態>
図6は本発明の第2の実施形態に係る架空送電線1Bを示す断面図である。図6に示すように、架空送電線1Bは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有している。テンションメンバ2の外周部に複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10が設けられ、撚り線部10の外周部に複数のセグメント型素線21が撚り合わされたセグメント層20が設けられている。
【0024】
丸型素線11やセグメント型素線21は第1実施形態と同様の材料からなる。鋼線3、丸型素線11及びセグメント型素線21は、それぞれ異なる撚りピッチで撚り合わされている。
【0025】
本実施形態においても、セグメント型素線21は、架空送電線1Bの中心側の面24が断面円弧状であり、撚り線部10の外接円C2よりも架空送電線1Bの中心側に凸の円弧状となっている。このため、図示しない引留クランプにより架空送電線1Bを把持すると、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、中心側の面24が外接円C2よりも内側に入り、撚り線部10を押圧する。このため、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0026】
なお、中心側の面24が外接円C2よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
【0027】
<第3実施形態>
図7は本発明の第3の実施形態に係る架空送電線1Cを示す断面図である。図7に示すように、架空送電線1Cは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有している。本実施形態においては、テンションメンバ2の外周部に複数のセグメント型素線21が撚り合わされたセグメント層20が設けられている。そして、セグメント層20の外周部に、複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10が設けられている。
【0028】
丸型素線11、セグメント型素線21、鋼線3は第2実施形態と同様の材料からなる。鋼線3、丸型素線11及びセグメント型素線21は、それぞれ異なる撚りピッチで撚り合わされている。
【0029】
本実施形態においては、セグメント型素線21は、架空送電線1Cの中心側の面24が断面円弧状であり、テンションメンバ2の外接円C3よりも架空送電線1Cの中心側に凸の円弧状となっている。このため、図示しない引留クランプにより架空送電線1Cが把持されると、セグメント型素線21は丸型素線11を介して架空送電線1Cの中心方向に圧縮力を受ける。そして、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、架空送電線1Cの中心側の面24がテンションメンバ2の外接円C3よりも内側に入り、テンションメンバ2を押圧する。このため、引留クランプによるテンションメンバ2の把持力を向上させることができる。
【0030】
なお、中心側の面24が外接円C3よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
【0031】
<第4実施形態>
図8は本発明の第4の実施形態に係る架空送電線1Dを示す断面図である。図8に示すように、架空送電線1Dは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有している。本実施形態においては、テンションメンバ2の外周部に複数のセグメント型素線21が撚り合わされた内側セグメント層20が設けられている。そして、内側セグメント層20の外周部に、さらに複数のセグメント型素線31が撚り合わされた外側セグメント層30が設けられている。
【0032】
セグメント型素線31は側面32,32で隣接する他のセグメント型素線31と接触し、断面略円形のセグメント層30を形成している。セグメント型素線31は、架空送電線1Dの中心側の面34の曲率半径が、セグメント型素線21の外側の面23の曲率半径と一致している。
【0033】
本実施形態においても、図示しない引留クランプにより架空送電線1Dが把持されると、セグメント型素線21は外側のセグメント型素線31を介して架空送電線1Dの中心方向に圧縮力を受ける。そして、セグメント型素線21が側面22,22で隣接する他のセグメント型素線21を押圧するとともに、架空送電線1Cの中心側の面24がテンションメンバ2の外接円C3よりも内側に入り、テンションメンバ2を押圧する。このため、引留クランプによるテンションメンバ2の把持力を向上させることができる。
【0034】
なお、中心側の面24は外接円C3よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
また、素線31の中心側の面34も、前記図4中符号24aで示した突条と同様の突条を設けるなど、素線21の面24と同様に形成すれば、素線31、21の係合が強まり、引留クランプによる把持力の向上に寄与する。
【0035】
<第5実施形態>
図9は本発明の第5の実施形態に係る架空送電線1Eを示す断面図である。図9に示すように、架空送電線1Eは、複数本の鋼線3を撚り合わせたテンションメンバ2を中心に有し、テンションメンバ2の外周部に複数の丸型素線11が撚り合わされた撚り線部10が設けられている。本実施形態においては、撚り線部10の外周部に、嵌合式のセグメント型素線41が撚り合わされたセグメント層40が設けられている。
【0036】
図10はセグメント型素線41の断面図である。図10に示すように、セグメント型素線41は、一方の側面42に突起42aが、他方の側面42に凹部42bが設けられている。突起42aは隣接するセグメント型素線41の凹部42bと、凹部42bは隣接するセグメント型素線41の突起42aと嵌合することでセグメント層40が形成されている。
【0037】
セグメント型素線41は、架空送電線1Eの中心側の面54が断面円弧状であり、撚り線部10の外接円C4よりも架空送電線1Eの中心側に凸の円弧状となっている。このため、架空送電線1Eを図示しない引留クランプにより把持すると、セグメント型素線41が側面42,42で隣接する他のセグメント型素線41を押圧するとともに、中心側の面44が外接円C4よりも内側に入り、撚り線部10を押圧する。このため、引留クランプによる撚り線部10の把持力を向上させることができる。
【0038】
なお、中心側の面44が外接円C4よりも内側に入っていればよく、第1実施形態と同様に平坦であってもよいし、あるいは1本又は複数本の突条を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B,1C,1D,1E 架空送電線
2 テンションメンバ
3 鋼線
10 撚り線部
11 丸型素線
20,30,40 セグメント層
21,31,41 セグメント型素線
22,32,42 側面
23,33,43 外側の面
24,34,44 中心側の面
24a 突条
42a 突起
42b 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、
前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、
を備える架空送電線において、
前記セグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項2】
鋼線と、
前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、
を備える架空送電線において、
前記セグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項3】
複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、
前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、
を備える架空送電線において、
最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項4】
鋼線と、
前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、
を備える架空送電線において、
最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項5】
前記セグメント層の外周部に複数の丸型素線を撚り合わせた撚り線部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の架空送電線。
【請求項6】
セグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層を備える架空送電線において、
セグメント層の内側の面が、セグメント層の内側の層の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項1】
複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、
前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、
を備える架空送電線において、
前記セグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項2】
鋼線と、
前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなるセグメント層と、
を備える架空送電線において、
前記セグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項3】
複数の丸型素線を撚り合わせてなる撚り線部と、
前記撚り線部の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、
を備える架空送電線において、
最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記撚り線部側の面は、前記撚り線部の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項4】
鋼線と、
前記鋼線の外周部に複数のセグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層と、
を備える架空送電線において、
最も内側のセグメント層を形成するセグメント素線の前記鋼線側の面は、前記鋼線の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【請求項5】
前記セグメント層の外周部に複数の丸型素線を撚り合わせた撚り線部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の架空送電線。
【請求項6】
セグメント型素線を撚り合わせてなる複数のセグメント層を備える架空送電線において、
セグメント層の内側の面が、セグメント層の内側の層の外接円よりも内側に凸であることを特徴とする架空送電線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−100546(P2011−100546A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252554(P2009−252554)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]