説明

架線具

【課題】架線具における本体部材の嵌挿部が支柱に嵌挿された後でも、線状体の緊張度合いを容易に調整することができる架線具を提供することを課題とする。
【解決手段】複数の支柱2・2・・・間に線状体3を架線するための架線具1であって、支柱2に嵌挿される嵌挿部11とネジ部12とを有する本体部材10と、本体部材10のネジ部12が挿入される挿入孔21を有し、挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された状態で挿入孔21の軸心に対して周方向に回転可能に構成される巻付部材20と、本体部材10のネジ部12に螺合されることによって、巻付部材20が回転しないように巻付部材20を固定するナット部材30と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の支柱間に線状体を架線する架線具の技術は種々知られている(特許文献1参照)。
また、複数の支柱間に線状体を架線する架線具として、支柱に嵌挿される嵌挿部と線状体が巻付けられる巻付部とネジ部とを有する本体部材と、本体部材のネジ部に螺合されるナット部材と、を具備するものが公知となっている。
【0003】
このような本体部材とナット部材とを具備する架線具は、例えば、獣が田畑や果樹園に侵入することを防止する電気柵や、家畜が牧場外に逃げ出すことを防止する電気柵に用いられる。
当該架線具は、田畑、果樹園、または牧場の周りに立てられた複数の支柱のそれぞれに本体部材の嵌挿部が嵌挿された状態で、本体部材のネジ部にナット部材が螺合されて、当該複数の支柱のそれぞれに固定される。そして、当該架線具は、それぞれの本体部材の巻付部に電線(線状体)が巻付けられて、複数の支柱間に電線(線状体)を架線する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−104446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら当該架線具の本体部材では、その巻付部と嵌挿部とネジ部とが一体的に構成されるため、本体部材の嵌挿部が支柱に嵌挿された後に作業者によって巻付部への線状体の巻付け回数を変更して、線状体の緊張度合いを調整することが困難である。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、架線具における本体部材の嵌挿部が支柱に嵌挿された後でも、線状体の緊張度合いを容易に調整することができる架線具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、複数の支柱間に線状体を架線するための架線具であって、
前記支柱に嵌挿される嵌挿部と、ネジ部と、を有する、本体部材と、前記本体部材のネジ部が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔に前記本体部材のネジ部が挿入された状態で前記挿入孔の軸心に対して周方向に回転可能に構成される、巻付部材と、前記本体部材のネジ部に螺合されることによって、前記巻付部材が回転しないように前記巻付部材を固定する、ナット部材と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記巻付部材は、前記本体部材のネジ部が挿入された挿入部の開口部が本体部材の嵌挿部に当接可能に構成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、架線具における本体部材の嵌挿部に支柱が嵌挿された後でも、線状体の緊張度合いを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る架線具の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る架線具の使用状態を示した背面図。
【図3】本発明の実施形態に係る架線具を分解した状態を示した斜視図。
【図4】(a)本発明の実施形態に係る架線具の本体部材を示した平面図、(b)同じく底面図、(c)同じく側面図。
【図5】(a)本発明の実施形態に係る架線具の巻付部材を示した正面図、(b)同じく背面図、(c)同じく平面図、(d)同じく側面図、(e)A−A断面図。
【図6】(a)本発明の実施形態に係る架線具のナット部材を示した正面図、(b)同じく平面図、(c)B−B断面図。
【図7】(a)本発明の実施形態に係る架線具の本体部材を支柱に嵌挿する状態を示した平面図、(b)同じく支柱に嵌挿している状態を示した平面図。
【図8】(a)本発明の実施形態に係る架線具に線状体を巻付ける状態を示した平面図、(b)同じく線状体を巻付ける状態を示した平面図。
【図9】本発明の実施形態に係る架線具の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図1から図9を用いて、発明の実施形態に係る架線具1を説明する。
【0013】
架線具1は、図1に示すように、複数の支柱2・2・・・間に線状体3を架線するためのものであり、支柱2に固定される。
例えば、架線具1は、獣が田畑や果樹園に侵入することを防止する柵(電気柵やロープ柵)や、家畜が牧場外に逃げ出すことを防止する柵(電気柵やロープ柵)に用いられるものであり、田畑、果樹園、または牧場の周りに立てられた複数の支柱2・2・・・のそれぞれに固定される。そして、架線具1では、複数の支柱2・2・・・に固定されたそれぞれの架線具1に線状体3が巻付けられて、複数の支柱2・2・・・間に線状体3を架線する(図2参照)。
ここで、線状体3とは、前記複数の支柱2・2・・・間に架線されるものであり、通電されることを意図する電気柵用の電線や、必ずしも通電されることを意図するものではない不導体のロープ状のものを含む。
【0014】
また、架線具1は、図3に示すように、合成樹脂素材からなる部材であり、本体部材10と、巻付部材20と、ナット部材30とを具備する。
【0015】
架線具1の本体部材10は、図4に示すように、支柱2に嵌挿される嵌挿部11と、ナット部材30に螺合されるネジ部12と、を有する。
架線具1の本体部材10における嵌挿部11には、貫通する孔が形成されるようにして支柱2が嵌挿される空間が形成される。架線具1の本体部材10における嵌挿部11は、筒状の部材の側面の一部を開放するような形状に形成されて、平面視または底面視略C字状に形成される(図4(a)または図4(b)参照)。
前記架線具1の本体部材10における嵌挿部11の開放される部分を開放部13と称する。
【0016】
架線具1の本体部材10におけるネジ部12は、本体部材10の嵌挿部11の外側に延出するように、嵌挿部11の外面に設けられる。架線具1の本体部材10におけるネジ部12は、本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2の軸心方向に対して直交するように本体部材10の嵌挿部11の外側に延出する。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12は、その外面に、ナット部材30の雌ネジと螺合可能な雄ネジが形成される。架線具1の本体部材10におけるネジ部12の雄ネジは、ネジ部12の先端部(ネジ部12が延出する方向側の端部)においてネジ部12が延出する方向に対して周方向の外面に形成される。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の基端部14(ネジ部12の嵌挿部11に設けられる側の端部)は、前記ネジ部12が延出する方向に対して周方向に突出して、ネジ部12の他の部分に比べて前記周方向に大きくなるように形成される。また、架線具1の本体部材10のネジ部12の基端部14は、本体部材10の嵌挿部11における幅Wよりも小さくなるように形成される。架線具1の本体部材10の嵌挿部11における幅Wとは、本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2の軸心方向と、本体部材10のネジ部12が延出する方向と、に対して直交する方向における本体部材10の嵌挿部11の幅を示す(図4(a)または図4(b)参照)。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の基端部14は、ネジ部12の基端側から先端側に向けて縮径されるように形成される。
【0017】
架線具1の本体部材10におけるネジ部12は、第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとから構成される。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとは、互いに平行するようにして、本体部材10の嵌挿部11の外側に延出する。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aは、第一ネジ部12aの軸心方向の一端が本体部材10の嵌挿部11の開放部13を構成する一方の端部に連接されて、本体部材10の嵌挿部11の開放部13を構成する一方の端部から外側に延出する。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第二ネジ部12bは、第二ネジ部12bの軸心方向の一端が本体部材10の嵌挿部11の開放部13を構成する他方の端部に連接されて、本体部材10の嵌挿部11の開放部13を構成する他方の端部から外側に延出する。
【0018】
架線具1の本体部材10の嵌挿部11は、ネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとが互いに離れるように第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとを広げて、本体部材10の嵌挿部11の開放部13を構成する一方の端部と開放部13を構成する他方の端部との間を広げるとともに、本体部材10の嵌挿部11の幅Wを広げて本体部材10の嵌挿部11の支柱2が嵌挿される空間を大きくすることができる可撓性を有するように構成される。
このように架線具1の本体部材10が構成されることにより、例えば、前述のように架線具1の本体部材10のネジ部12における広げられた第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとの間に前記ネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとで挟むように支柱2を配置し、本体部材10の嵌挿部11が前記支柱2に接近する方向に係る状態の本体部材10を押込んでいって、本体部材10の嵌挿部11に支柱2を嵌挿することができる(図7参照)。
したがって、架線具1によれば、田畑等に立てられた支柱2の上方の先端が作業者の背丈より高いために、当該支柱2の先端側から、架線具1の本体部材10の嵌挿部11へ支柱2を嵌挿させることが困難な場合であっても、本体部材10の嵌挿部11に支柱2を容易に嵌挿させることができる。
【0019】
架線具1の巻付部材20は、図5に示すように、巻付部材20の外面に線状体3が巻付けられる略筒状の部材であり、本体部材10のネジ部12が挿入される挿入孔21を有する。
架線具1の巻付部材20の挿入孔21は、貫通するようにして構成され、本体部材10のネジ部12が挿入可能に構成される。架線具1の巻付部材20の挿入孔21への本体部材10のネジ部12の挿入は、本体部材10のネジ部12が延出する方向に沿っておこなわれる。
架線具1の巻付部材20は、巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された状態で、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に回転可能に構成される。そして、架線具1の巻付部材20は、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に巻付部材20が回転することによって、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に線状体3が巻付部材20の外面に巻付け可能に構成される(図8(b)参照)。
【0020】
また、架線具1の巻付部材20は、略円筒状に形成される。
架線具1の巻付部材20では、巻付部材20の挿入孔21における一方の開口部が、他方の開口部に比べて大径となるように形成される。架線具1の巻付部材20における挿入孔21の大径の開口部を大径開口部21aと称する。架線具1の巻付部材20における挿入孔21の小径の開口部を小径開口部21bと称する。
架線具1の巻付部材20では、巻付部材20の挿入孔21における大径開口部21a側から、巻付部材20の挿入孔21に、本体部材10のネジ部12が挿入される。そして、架線具1の巻付部材20は、巻付部材20における挿入孔21の大径開口部21aから巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された際に、巻付部材20における挿入孔21の内面の一部が、本体部材10のネジ部12の基端部14(ネジ部12の一部)に当接するように形成される。
【0021】
架線具1の巻付部材20は、巻付けられた線状体3が巻付部材20から脱落することを防止するための溝22を有する。
架線具1の巻付部材20の溝22は、巻付部材20の外周面に設けられる複数の鍔23と鍔23との間に形成される。架線具1の巻付部材20の複数の鍔23・・・は、それぞれ、巻付部材20の外周面に巻付部材20の軸心と同一の軸心を有し、巻付部材20の外周面から外側に突出するようにして形成される。
そして、架線具1では、巻付部材20の鍔23と鍔23との間に形成される溝22に、線状体3が巻付けられることにより、当該巻付けられた線状体3が巻付部材20から脱落することを防止することができる(図8参照)。
なお、本実施形態における架線具1の巻付部材20の鍔23は、巻付部材20の軸心に沿って3つ配置される。
【0022】
架線具1のナット部材30は、図6に示すように、本体部材10のネジ部12に螺合される部材であって、平面視楕円状且つ側面視横長の長方形状に形成される。架線具1のナット部材30は、軸心の中央部に、本体部材10のネジ部12と螺合可能な雌ネジが形成される。
架線具1のナット部材30は、巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された状態で、ナット部材30が本体部材10のネジ部12に螺合されていくことにより、巻付部材20の挿入孔21の内面を本体部材10のネジ部12の基端部14に押圧して、または、巻付部材20の大径開口部21aの端部で本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2を押圧して、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に巻付部材20が回転しないように、巻付部材20を固定する。
ここで、前記前記巻付部材20が回転しないように固定されている状態とは、巻付部材20に巻付けられた線状体3が緊張し又は引っ張られることによっても、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に巻付部材20が回転しない程度に固定されている状態を示す。
【0023】
以上のように構成される架線具1を、支柱2に固定する動作について説明する。
まず、架線具1の本体部材10の嵌挿部11に支柱2を嵌挿させる。なおこの際、架線具1では、前述のようにその本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとの間を介して、本体部材10の嵌挿部11に支柱2を嵌挿することができる。
次に、係る状態の架線具1の本体部材10のネジ部12を、巻付部材20の挿入孔21における大径開口部21a側から、巻付部材20の挿入孔21に挿入する。
そして、巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12を挿入させ、本体部材10のネジ部12とナット部材30とを締める。
さらに、係る状態の架線具1の本体部材10のネジ部12にナット部材30を螺合させていき、巻付部材20の挿入孔21の内面を本体部材10のネジ部12の基端部14に押圧して、または、巻付部材20の大径開口部21aの端部で本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2を押圧して、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に巻付部材20が回転しないように巻付部材20を固定するとともに、架線具1を支柱2に固定する。
【0024】
また、架線具1では、その本体部材10のネジ部12とナット部材30との締め度合いをゆるめて前記巻付部材20による押圧を解除することにより、前記巻付部材20の周方向への回転の固定を解除することができる。
このため、架線具1によれば、その本体部材10の嵌挿部11に支柱2が嵌挿された後でも、前記回転の固定が解除された架線具1の巻付部材20を、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に回転させて、架線具1を中心にして右方または左方の線状体3のうちいずれか一方における巻付部材20の外面に巻付けられた線状態を長くするとともに、前記架線具1を中心にして右方または左方の線状体3のうちいずれか他方の前記線状体3を短くすることができる(図8参照)。
したがって、架線具1によれば、その本体部材10の嵌挿部11に支柱2が嵌挿された後でも、線状体3の緊張度合いを容易に調整することができる。
【0025】
また、図4または図7に示すように、架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aおよび第二ネジ部12bの先端(第一ネジ部12aおよび第二ネジ部12bが延出する方向の端部)には、それぞれ案内部15a・15bが形成される。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aの案内部15aおよび第二ネジ部12bの案内部15bは、前記本体部材10のネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとの間を介して本体部材10の嵌挿部11に支柱2が嵌挿される際の動作、を容易にするためのものである。
【0026】
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aの案内部15aは、第一ネジ部12aの先端部における第二ネジ部12bと対向する側の面を含む角部が切欠かかれるようにして、形成される。また、架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aの案内部15aは、第一ネジ部12aの先端部における第二ネジ部12bと対向する側の面と反対側の面に至ように、第一ネジ部12aの先端部における第二ネジ部12bと対向する側の面を含む角部から斜めに切欠かれるようにして形成される。
架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第二ネジ部12bの案内部15bは、第二ネジ部12bの先端部における第一ネジ部12aと対向する側の面を含む角部が切欠かかれるようにして、形成される。また、架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第二ネジ部12bの案内部15bは、第二ネジ部12bの先端部における第一ネジ部12aと対向する側の面を含む角部から斜めに切欠かれるようにして形成される。
このように、架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aの案内部15aと第二ネジ部12bの案内部15bが形成されることにより、ネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとが平行するように位置した際に、ネジ部12の先端部が略V字状に凹むように構成される。
【0027】
そして、このように架線具1の本体部材10が構成されることにより、本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aの先端と第二ネジ部12bの先端とを支柱2に当接させて(図7(a)参照)、本体部材10の嵌挿部11が前記支柱2に接近する方向に係る状態の本体部材10を押込むことで、ネジ部12における第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとの間を広げて、ネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとで挟むように支柱2を配置することができる(図7(b)参照)。
このようにして、架線具1の本体部材10におけるネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとの間を介して嵌挿部11に支柱2に嵌挿される際の動作、を容易にすることができる。
したがって、架線具1によれば、田畑等に立てられた支柱2の上方の先端が作業者の背丈より高いために、当該支柱2の先端側から、架線具1の本体部材10の嵌挿部11へ支柱2を嵌挿させることが困難な場合であっても、さらに容易に本体部材10の嵌挿部11に支柱2を嵌挿させることができる。
【0028】
架線具1の巻付部材20の3つの鍔23・23・23のうち中央の鍔23Aは、図5または図8に示すように、その外縁の一部が切欠かれて形成される切欠部24を有する。架線具1の巻付部材20における中央の鍔23Aの切欠部24は、前方または後方の鍔23・23と中央の鍔23Aとの間の溝22に線状体3を巻付ける際に、巻付部材20の中央の鍔23Aの切欠部24に線状体3を引っ掛けて、線状体3を固定するためのものである。
架線具1の巻付部材20における中央の鍔23Aの切欠部24は、鍔23Aの周方向において対称となる位置に2つ形成される。このように切欠部24が2つ形成されて、架線具1の巻付部材20における中央の鍔23は、円形状のものが2つに分割されたように構成される。
例えば、図8(a)に示すように、線状体3を、架線具1の巻付部材20における図8(a)に示す下方の鍔23と中央の鍔23Aのとの間の溝22に沿わせた後、中央の鍔23Aにおける2つの切欠部24のうち一方の切欠部24を経由させて、図8(a)に示す上方の鍔23と中央の鍔23Aとの間の溝22に巻付ける。
このように、架線具1の巻付部材20における中央の鍔23Aの切欠部24を経由させて線状体3が巻付部材20に巻付けられることにより、線状体3は、巻付部材20の中央の鍔23Aの切欠部24に引っ掛けられて、巻付部材20に固定される。
そして、このように線状体3が架線具1の巻付部材20の中央の鍔23Aの切欠部24に引っ掛けられて固定された巻付部材20を、例えば図8(b)に示すように、線状体3の巻付け方向と同一方向に回転させることによって、架線具1を中心にして右方の線状体3を長くするとともに、架線具1を中心にして左方の線状体3を短くすることができる。
このため、架線具1によれば、その本体部材10の嵌挿部11に支柱2が嵌挿された後でも、前記回転の固定が解除された架線具1の巻付部材20を、巻付部材20の挿入孔21の軸心に対して周方向に回転させて、架線具1を中心にして右方または左方の線状体3のうちいずれか一方における巻付部材20の外面に巻付けられた線状態を長くするとともに、前記架線具1を中心にして右方または左方の線状体3のうちいずれか他方の前記線状体3を短くすることができる。
したがって、架線具1によれば、その本体部材10の嵌挿部11に支柱2が嵌挿された後でも、より確実に線状体3の緊張度合いを容易に調整することができる。
【0029】
また、架線具1の巻付部材20は、図9に示すように、巻付部材20における挿入孔21の大径開口部21aから巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された際に、本体部材10の嵌挿部11の支柱2が嵌挿される空間に、巻付部材20における挿入孔21の大径開口部21aが至ることができるように、形成される。
このため、架線具1では、巻付部材20の挿入孔21挿入された本体部材10のネジ部12にナット部が螺合される際に、巻付部材20の大径開口部21a側の端部で、本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2を押圧することができる。
したがって、架線具1によれば、巻付部材20の大径開口部21a側の端部で、本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2を押圧して、架線具1を支柱2の所望の位置に確実に固定することができる。
また、架線具1によれば、本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2が細くて、本体部材10の嵌挿部11の内面に支柱2の外面が当接しないような場合であっても、巻付部材20の大径開口部21a側の端部で、本体部材10の嵌挿部11に嵌挿された支柱2を押圧することができる場合には、架線具1を支柱2に固定することができる。
【0030】
また、架線具1の巻付部材20における挿入孔21は、略テーパ状に形成される。
架線具1の巻付部材20における挿入孔21は、図5(e)または図9に示すように、挿入孔21の大径開口部21aから、挿入孔21における軸心方向の中央部よりもやや挿入孔21の小径開口部21b側の部分にかけて縮径するように形成される。
そして、図9に示すように、架線具1の巻付部材20は、巻付部材20における挿入孔21の大径開口部21aから巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された際に、巻付部材20における挿入孔21の縮径する部分の少なくとも一部が、本体部材10のネジ部12の基端部14(ネジ部12の一部)に当接するように形成される。
このため、架線具1では、巻付部材20の挿入孔21挿入された本体部材10のネジ部12にナット部が螺合される際に、本体部材10のネジ部12の第一ネジ部12aと第二ネジ部12bとを互いに近づく方向に次第に締め付けていき、本体部材10の嵌挿部11を、嵌挿部11に嵌挿された支柱2側に締め付けることができる。
したがって、架線具1によれば、本体部材10の嵌挿部11を、嵌挿部11に嵌挿された支柱2側に締め付けて、架線具1を支柱2の所望の位置に確実に固定することができる。
【0031】
また、架線具1は、巻付部材20の挿入孔21挿入された本体部材10のネジ部12にナット部が螺合される際に、巻付部材20の大径開口部21a側の端部が、本体部材10の嵌挿部11に当接可能に構成してもよい。
そして、架線具1の巻付部材20は、図9に示すように、挿入孔21の大径開口部21aの直径が本体部材10の嵌挿部11の幅Wよりも小さく形成される。架線具1の巻付部材20は、巻付部材20における挿入孔21の大径開口部21aから巻付部材20の挿入孔21に本体部材10のネジ部12が挿入された際に、本体部材10の嵌挿部11の一部が、巻付部材20の挿入孔21内に配置可能に形成される。
このように架線具1を構成することにより、本体部材10の嵌挿部11の幅Wが小さくなる方向に本体部材10の嵌挿部11を次第に締め付けていき、本体部材10の嵌挿部11を、嵌挿部11に嵌挿された支柱2側に締め付けることができる。
したがって、架線具1によれば、本体部材10の嵌挿部11を、嵌挿部11に嵌挿された支柱2側に締め付けて、架線具1を支柱2の所望の位置に確実に固定することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 架線具
2 支柱
3 線状体
10 本体部材
11 嵌挿部
12 ネジ部
20 巻付部材
21 挿入孔
30 ナット部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱間に線状体を架線するための架線具であって、
前記支柱に嵌挿される嵌挿部と、ネジ部と、を有する、本体部材と、
前記本体部材のネジ部が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔に前記本体部材のネジ部が挿入された状態で前記挿入孔の軸心に対して周方向に回転可能に構成される、巻付部材と、
前記本体部材のネジ部に螺合されることによって、前記巻付部材が回転しないように前記巻付部材を固定する、ナット部材と、
を具備する、架線具。
【請求項2】
前記巻付部材は、前記本体部材のネジ部が挿入された挿入部の開口部が本体部材の嵌挿部に当接可能に構成される、請求項1に記載の架線具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−244772(P2011−244772A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123294(P2010−123294)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(598077004)株式会社アポロ (4)
【Fターム(参考)】