説明

架線工事用補助具及び架線工事方法

【課題】被覆電線の切断部を良好な作業性で接続でき、しかも、接続部を見栄え良く仕上げることができる架線工事用補助具を提供すること。
【解決手段】被覆電線9の掴線器2a,2bの間の部分が切断されてなる切断端部の心線9a,9bの被覆部を、一対の把持器4a,4bで把持して、この心線9a,9bの両端に装着された接続スリーブ6と心線9a,9bに生じる撓みを従来よりも小さくする。接続スリーブ6を心線9a,9bに圧着するに伴って、接続スリーブ6及び心線9a,9bが伸びても、この伸びに応じて把持器4a,4bが伸縮器3の軸芯に沿って移動するので、接続スリーブ6と心線9a,9bで形成される接続部に撓みが生じることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配電線等の工事で用いられる架線工事用補助具に関し、特に、活線状態の被覆電線をその張力を保持したまま切断及び接続するために用いられる架線工事用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電線の工事において、工事区間外の停電を回避するため、工事区間の両端部で活線状態の被覆電線を切断し、切断端部の外側をバイパス線で互いに接続する一方、切断端部の内側を接地する作業を行っている。工事区間の作業が終了すると、被覆電線の切断部を接続して、工事区間の配電を復旧している。
【0003】
従来、被覆電線の切断を行うために活線切分工具が用いられており、この活線切分工具としては、被覆電線に固定される一対の掴線器と、この一対の掴線器に両端が夫々接続された伸縮器と、伸縮器の両端部に設けられた振分け器とを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この活線切分工具を用いて被覆電線を切断する場合、被覆電線に間隔をあけて固定した一対の掴線器を伸縮器で引き寄せ、これによって彎曲した被覆電線の掴線器間の部分を切断する。この被覆電線の切断位置の両端部を振分け器で振り分けて離隔した状態で、工事区間の作業が行われる。
【0004】
工事区間の作業が終了すると、以下のようにして切断部を接続する。すなわち、振分け器を操作して被覆電線の両端部を互いに近接する位置に戻し、この両端部の心線に導電性の接続スリーブを被せて、この接続スリーブをプレス工具で心線に圧着する。この後、被覆電線の一方の端部に予め被せていた絶縁保護カバーを移動させて、接続スリーブを絶縁保護カバーで覆って接続が完了する。
【特許文献1】特開2002−27624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の活線切分工具は、被覆電線の切断部を接続するときの作業性が悪く、また、接続部の見栄えが悪いという問題がある。詳しくは、掴線器の間で彎曲した被覆電線の両端部の心線に接続スリーブを被せるので、接続スリーブと被覆電線に撓みが生じる。これに加えて、プレス工具で接続スリーブを圧着するとき、接続スリーブ及び心線が長さ方向に伸びるので、撓みが更に増大する。こうして大きく撓んだ接続スリーブ等に絶縁保護カバーを覆う作業は、絶縁保護カバーが接続スリーブ及び心線の保護機能を奏する程度に厚くて硬いことから、この厚くて硬い絶縁保護カバーを接続スリーブ等の大きな彎曲に沿って曲げて移動させる必要があって困難な作業となる。また、接続スリーブ及び絶縁保護カバー等が大きく撓んだ接続部分は、掴線器を外して張力を受けても、他の部分よりも曲率が大きいままであるので見栄えが悪くなる。この問題は、心線が、銅線と比べて長い圧着しろが必要となるアルミ電線である場合に、前記アルミ電線およびアルミ製の接続スリーブの長さと圧着に伴う伸びが大きくなるので、顕著である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、被覆電線の切断部を良好な作業性で接続でき、しかも、接続部を見栄え良く仕上げることができる架線工事用補助具と架線工事方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の架線工事用補助具は、被覆電線を掴む一対の掴線器
と、軸芯方向に相対移動する本体筒部と移動軸部とからなり、本体筒部および移動軸部の外端のそれぞれに掴線器が接続され、前記一対の掴線器を互いに接続する方向に駆動して、被覆電線の掴線器の間の部分を彎曲させる伸縮器と、前記本体筒部および前記移動軸部にそれぞれ支持されると共に、掴線器の間で切断された被覆電線の切断位置の両端部近傍の被覆部をそれぞれ把持する一対の把持器とを備え、前記一対の把持器の少なくとも一方が前記本体筒部または前記移動軸部に沿って移動可能なように構成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、まず、被覆電線の切断を行う場合、一対の掴線器が被覆電線に間隔をあけて固定され、この一対の掴線器が伸縮器で引き寄せられる。これによって彎曲した被覆電線の掴線器間の部分を切断する。こうして、掴線器の外側の被覆電線の張力を保持した状態で、被覆電線を切断する。この後、被覆電線の切断部の接続を行う場合、切断位置の両端部近傍の被覆部が把持器によって把持され、この把持器の間に位置する心線の両端部を、接続スリーブによって接続する。次いで圧着作業に移行するが、少なくとも一方の把持器が伸縮器(本体筒部、移動軸部)の軸芯に沿って移動可能に形成されているので、接続スリーブを心線に圧着するに伴って接続スリーブ及び心線が伸びても、この伸びに応じて把持器が伸縮器の軸芯に沿って移動して、接続スリーブ及び心線の伸びに対して抵抗力を与えない。したがって、従来のような大きな撓みを生じることなく、接続スリーブで心線の両端部を接続できる。その結果、撓みが小さい接続スリーブ及び心線に沿って円滑に絶縁保護カバーを移動できるから、従来のように大きく撓んだ接続スリーブ等に沿って絶縁保護カバーを移動させるよりも大幅に容易に接続作業を行うことができる。また、接続部の撓みを従来よりも小さくできるので、接続部の見栄えを良好にできる。
【0009】
一実施形態の架線工事用補助具は、一対の把持器が、それぞれ把持する心線の軸芯が同一線上で、かつ伸縮器の軸芯に平行となるように構成されている。
【0010】
上記実施形態によれば、接続スリーブを心線に圧着する作業に移行する際、切断位置の両側に位置する各々の端部近傍の被覆部は、それぞれの軸芯が同一線上に一致するようにそれぞれ把持器によって把持されているので、両心線および接続スリーブは略一直線状態に保持されている。従って、圧着作業により、接続スリーブおよび両心線はその軸芯方向に伸びるが、その際少なくとも一方の把持器が伸縮器(本体筒部、移動軸部)に沿って移動するので、心線および接続スリーブは略一直線状態を維持したまま伸びることができる。
【0011】
一実施形態の架線工事用補助具は、把持器が本体筒部または移動軸部に対し、移動可能かつ固定具によって固定可能に構成されている。
【0012】
上記実施形態によれば、被覆電線の張力を保持する伸縮器の機能を利用して、心線の切断端部に接続スリーブを装着することができる。従来、心線への接続スリーブの装着は、感電防止のために遠隔棒を用いて行っており、遠隔棒を用いて比較的小径の心線に接続スリーブの開口を位置合わせして装着する作業は困難であった。これに対して、本実施形態によれば、把持器に切断位置の端部近傍の被覆部を把持させる操作と、これら把持器の一方を本体筒部に他方を移動軸部に固定する操作と、伸縮機の収縮操作とを行うことにより、容易かつ確実に心線へ接続スリーブを装着することができる。
【0013】
一実施形態の架線工事用補助具は、把持器が伸縮器に対して着脱可能に形成されている。
【0014】
上記実施形態によれば、例えば被覆電線を切断し、切断位置の両端部を振り分けて隔離する場合等のように、把持器が不要である場合に把持器を伸縮器から取り外すことができ
る。したがって、架線工事用補助具を、作業に応じて必要十分な部品構成とすることができる。
【0015】
本発明の他の側面による架線工事用補助具は、被覆電線を掴む一対の掴線器と、軸芯方向に相対移動する本体筒部と移動軸部とからなり、本体筒部および移動軸部の外端のそれぞれに掴線器が接続され、前記一対の掴線器を互いに接続する方向に駆動して、被覆電線の掴線器の間の部分を彎曲させる伸縮器と、前記本体筒部および前記移動軸部にそれぞれ支持されると共に、掴線器の間で切断された被覆電線の切断位置の両端部近傍の被覆部をそれぞれ支持する一対の支持器とを備え、前記一対の支持器は、それぞれの支持する被覆電線の軸芯が同一線上で、かつ伸縮器の軸芯に平行となるように構成され、前記一対の支持器の少なくとも一方は、支持する被覆電線を軸芯方向に移動可能に構成されていることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、まず、被覆電線の切断を行う場合、一対の掴線器が被覆電線に間隔をあけて固定され、この一対の掴線器が伸縮器で引き寄せられる。これによって彎曲した被覆電線の掴線器間の部分を切断する。こうして、掴線器の外側の被覆電線の張力を保持した状態で、被覆電線を切断する。この後、被覆電線の切断部の接続を行う場合、切断位置の両端部近傍の被覆部が支持器によって支持され、この支持器の間に位置する心線の両端部を、接続スリーブによって接続する。次いで圧着作業に移行するが、少なくとも一方の支持器が、被覆電線を軸芯方向に移動可能に形成されているので、接続スリーブを心線に圧着するに伴って接続スリーブ及び心線が伸びても、この伸びに応じて少なくとも一方の被覆電線が軸芯方向に移動して、接続スリーブ及び心線の伸びに対して抵抗力を与えない。したがって、従来のような大きな撓みを生じることなく、接続スリーブで心線の両端部を接続できる。その結果、撓みが小さい接続スリーブ及び心線に沿って円滑に絶縁保護カバーを移動できるから、従来のように大きく撓んだ接続スリーブ等に沿って絶縁保護カバーを移動させるよりも大幅に容易に接続作業を行うことができる。また、接続部の撓みを従来よりも小さくできるので、接続部の見栄えを良好にできる。
【0017】
本発明の架線工事方法は、被覆電線を、所定間隔をおいた2箇所で掴む工程と、上記被覆電線の2箇所の掴んだ部分を互いに引き寄せて、被覆電線を彎曲させる工程と、上記被覆電線の彎曲した部分を切断する工程と、上記被覆電線の切断位置の両端部の間に、互いの心線を接続する接続スリーブを配置する工程と、上記被覆電線の切断位置の両端部の少なくとも一方を、互いの被覆電線の軸芯が同一線上となるように移動させながら、上記接続スリーブを心線に圧着する工程とを備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、まず、被覆電線の切断を行う場合、被覆電線を所定間隔をおいた2箇所で掴み、この掴んだ部分を互いに引き寄せる。これによって彎曲した被覆電線の部分を切断する。こうして、2箇所の掴んだ部分の外側の被覆電線の張力を保持した状態で、被覆電線を切断する。この後、被覆電線の切断部の接続を行う場合、切断位置の両端部の心線を、接続スリーブによって接続する。次いで圧着作業に移行するが、切断位置の両端部の少なくとも一方を、互いの被覆電線の軸芯が同一線上となるように移動させるので、接続スリーブを心線に圧着するに伴って接続スリーブ及び心線が伸びても、この伸びに応じて少なくとも一方の被覆電線が軸芯方向に移動して、接続スリーブ及び心線の伸びに対して抵抗力を与えない。したがって、従来のような大きな撓みを生じることなく、接続スリーブで心線の両端部を接続できる。その結果、撓みが小さい接続スリーブ及び心線に沿って円滑に絶縁保護カバーを移動できるから、従来のように大きく撓んだ接続スリーブ等に沿って絶縁保護カバーを移動させるよりも大幅に容易に接続作業を行うことができる。また、接続部の撓みを従来よりも小さくできるので、接続部の見栄えを良好にできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、心線と、この心線の両端に装着状態で圧着される接続スリーブに生じる撓みを極めて小さくできる。したがって、撓みが小さい接続スリーブ及び心線に沿って円滑に絶縁保護カバーを移動して装着できるから、従来よりも容易に接続作業を行うことができ、また従来よりも接続部の見栄えを良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1実施形態の架線工事用補助具1を被覆電線9に取り付けて、被覆電線9の切断部に接続スリーブを装着する様子を示す正面図である。
【0021】
この架線工事用補助具1は、架空配電線の工事において、被覆電線9の切断及び接続を行うものであり、一対の掴線器2a,2bと、この一対の掴線器2,2に連結具21,21を介して両端が接続された伸縮器3と、この伸縮器3に取り付けられた一対の把持器4a,4bと、この把持器4a,4bの両外側に位置して伸縮器3に取り付けられた一対の振分け器5a,5bを備える。
【0022】
掴線器2a,2bは、被覆電線9を径方向両側から挟む挟持部を有する挟持体22と、この挟持体22に連結された駆動アーム23とを有する。この駆動アーム23の先端には連結具21が接続されており、この連結具21に引張力が作用すると、駆動アーム23が挟持体22の挟持部を互いに近接する方向に駆動して、被覆電線を強固に挟持するように形成されている。
【0023】
伸縮器3は、筒形状を有する本体筒部31と、本体筒部31内に軸芯方向に相対移動に嵌合された小径筒状の移動軸部32を有する。本体筒部31は、FRP(繊維強化プラスチック)製の筒状部34と、この筒状部34の端に固定された駆動部35で構成されている。駆動部35は、アルミ合金製のケーシングと、このケーシングの下面から突出して回転操作される操作部36と、この操作部36に連結されてケーシング内に収容された歯車伝達機構を有する。この歯車伝達機構は、筒状部34内に長手方向に伸びるねじ軸に連結されており、このねじ軸は、移動軸部32の本体筒部31側の端部に設けられた図示しないナット部材に螺合している。移動軸部32は、FRPで形成されている。
【0024】
この伸縮器3を伸縮駆動する際、操作部36に図示しない遠隔操作具が係合され、この遠隔操作具で操作部36が回転操作されることにより、筒状部34内のねじ軸が回転駆動されて、このねじ軸に端部が螺合する移動軸部32が軸方向に駆動される。これにより、本体筒部31から移動軸部32が出没して、伸縮器3が伸張又は収縮するように構成されている。伸縮器3の本体筒部31側の端と移動軸部32側の端には、前記連結具21が掛けられるフック38が夫々設けられている。
【0025】
図2は、伸縮器3の一部と、この伸縮器3に取り付けられた一対の把持器4a,4bと、一対の振分け器5a,5bとを示す正面図である。図3は把持器4a,4bを示す側面図であり、図4は振分け器5a,5bを示す側面図である。
【0026】
図2及び図3に示すように、把持器4a,4bは、伸縮器3に外嵌する移動部としてのカラー41と、このカラー41にボルトで連結された把持部42とで大略構成されている。
【0027】
把持器4a,4bのカラー41は円筒形状を有し、中心軸に沿って貫通穴411が形成されている。この貫通穴411に伸縮器3が挿通されて、カラー41が伸縮器3の軸方向に移動自在に形成されている。一対の把持器4a,4bのうち、一方の把持器4aは伸縮器3の本体筒部31に取り付けられており、他方の把持器4bは伸縮器3の移動軸部32
に取り付けられている。これに応じて、一対の把持器4a,4bが夫々有するカラー41,41の貫通穴411,411は、本体筒部31の径と移動軸部32の径とに対応して互いに異なる径に形成されている。カラー41の下側には、把持器4a,4bを伸縮器3の所望の軸方向位置に固定するための固定具412が設けられている。この固定具412は、遠隔操作具によって回転操作される操作部413と、この操作部413と一体に形成されたネジ本体414を有し、このネジ本体414が、カラー41の外周面と貫通穴411の内周面との間に形成された貫通穴の雌ネジに螺合している。この固定具412は、操作部413を介して回転駆動されるに伴い、貫通穴411の内壁面からネジ本体414の端部が突出し、ネジ本体414の端面が貫通穴441内に挿通された伸縮器3の外周面に圧迫して、伸縮器3の所望の軸方向位置にカラー41を固定するように形成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、カラー41は貫通穴411内に伸縮器3を端部から挿通して取り付けるように形成されているが、例えば中心軸を通る平面に沿って2分割されたような2つの半円筒体で形成し、この2つの半円筒体をヒンジで開閉可能にして、端部を経由することなく側面から伸縮器3に着脱可能にしてもよい。
【0029】
把持器4a,4bの把持部42は、固定掴持部421を上部に有する本体422と、この本体422にスライド可能に保持された可動掴持部423と、本体422の下部に螺合されると共に可動掴持部423に回転自在かつ軸方向に一体移動するように連結されたネジ軸424と、このネジ軸424の下端に一体に固定され、遠隔操作具によって回転操作される操作部425を有する。固定掴持部421と可動掴持部423との間に、被覆電線9又は接続スリーブ6を配置し、ネジ軸424を回転させて螺進させることにより、被覆電線9又は接続スリーブ6を固定掴持部421と可動掴持部423との間に強固に掴持することができる。
【0030】
図2及び図4に示すように、振分け器5a,5bは、一方の側に開口部511aを有する略C字状の支持本体511と、開口部511aを開閉する閉止片512と、支持本体511の下部に設けられて伸縮器3が挿通される貫通穴514を有する。閉止片512には、遠隔操作具によって操作するための係合環513が形成されている。支持本体511の下部には、伸縮器3の所望の軸方向位置や軸回り角度位置に振分け器5を固定するための固定具が設けられており、この固定具を遠隔操作具によって操作するための操作部515,515が両側面に設けられている。
【0031】
上記構成の架線工事用補助具1を用いて、以下のようにして被覆電線9の切断及び接続を行う。まず、一対の掴線器2a,2bを被覆電線9に所定間隔をあけて固定し、この一対の掴線器2a,2bの間に伸張状態の伸縮器3を配置して、伸縮器3の両端のフック38,38に掴線器2の連結具21を係合させる。続いて、伸縮器3の操作部36に遠隔操作具を係合させて回転操作することにより、伸縮器3の本体31内に伸縮筒体32を収縮させる。これにより、掴線器2a,2bが互いに近づく方向に移動して被覆電線9の掴線器2a,2bの間の部分が彎曲する一方、被覆電線9の掴線器2a,2bよりも外側の部分は連結具21,21及び伸縮器3を経由して張力が保持される。
【0032】
次に、一対の振分け器5a,5bの開口部511aを通して支持本体511内に被覆電線9を挿入し、閉止片512を引き下げて開口部511aを閉じて、振分け器5a,5bで被覆電線9を支持する。次に、振分け器5a,5bの間の所定位置において、被覆電線9を遠隔操作切断具によって切断する。この後、片方の振分け器5bの操作部515を遠隔操作具で操作して伸縮器3への固定を解除し、伸縮器3回りに例えば180°回転させることにより、被覆電線9の一方の切断端部を他方の切断端部と逆側に振り分けて離隔する。この状態で、被覆電線9の切断位置に関して一方の側をバイパス配線し、他方の側を接地して、接地側の作業を行う。
【0033】
接地側の作業が終了すると、被覆電線9の切断端部の接続を行う。まず、他方の切断端部を支持する振分け器5bを元の回転位置まで回転させて、他方の切断端部を一方の切断端部と略同一位置に戻す。続いて、被覆電線9の切断端部の被覆材を所定長さにわたって除去して、両切断端部に心線9a,9bを露出させる。この後、図1に示すように、一方の切断端部近傍の被覆部を一方の把持器4aの把持部42で把持する。また、他方の切断端部の心線9bに筒状の接続スリーブ6を装着した後、この心線9bの被覆部を他方の把持器4bの把持部42で把持する。被覆電線9の心線9a,9bと接続スリーブ6は、アルミ合金で形成されている。各把持器4a,4bのカラー41を、固定具412によって伸縮器3の本体筒部31と移動軸部32に夫々固定する。カラー41による把持器4a,4bの固定位置は、一方の把持器4aが把持する側の一方の心線9aの先端が、他方の把持器4bが把持する側の心線9bに装着した接続スリーブ6の開口に対向する位置にする。この後、伸縮器3の操作部36を遠隔操作具で回転操作し、伸縮器3を収縮動作させて、伸縮器3の本体筒部31側の把持器4aで近傍の被覆部が把持された心線9aと、伸縮器3の移動軸部32側の把持器4bで被覆部が把持される心線9bに装着された接続スリーブ6とを互いに接近させる。これにより、接続スリーブ6の一端の開口から心線9aを接続スリーブ6内に挿入する。このように、把持器4a,4bに心線9a、9bの切断端部近傍の被覆部を把持させた後、伸縮器3を収縮させるのみによって、容易かつ確実に心線9aに接続スリーブ6を装着することができる。
【0034】
こうして、心線9aへの接続スリーブ6の装着が完了すると、切断端部に接続スリーブ6が装着された心線9a,9bの切断端部近傍の各々の被覆部が、一対の把持器4a,4bによって接続スリーブ6の両端近傍位置で把持された状態となる。ここで、把持器4a,4bのカラー41の固定具412を操作して伸縮器3への固定を解除して、カラー41を伸縮器3の軸芯に沿って移動自在にする。この状態で、接続スリーブ6の心線9a,9bへの圧着を行う。
【0035】
接続スリーブ6の圧着は、油圧駆動の圧着機を用いて行う。この圧着機は、遠隔操作棒の先端に油圧ヘッドを取り付けて構成され、油圧ヘッドは、固定ダイスと、この可動ダイスに向って油圧ピストンで駆動される可動ダイスとを有する。この圧着機の固定ダイスと可動ダイスの間に接続スリーブ6を挟み込み、油圧ピストンを駆動して可動ダイスを固定ダイス側に移動させる。これにより、接続スリーブ6の可動ダイスと固定ダイスで挟まれた部分を圧縮変形させて、接続スリーブ6内の心線9a,9bに圧着させる。この圧着動作を、接続スリーブ6の長さ方向に複数回繰り返すことにより、接続スリーブ6の全長にわたって心線9a,9bへの圧着部を形成する。この圧着作業において、接続スリーブ6の心線9a,9bへの圧着に伴って、接続スリーブ6及び心線9a,9bに軸方向の伸びが生じる。この心線9a,9b及び接続スリーブ6は、アルミ合金で形成されていることから、接続スリーブ6の長さは銅製の心線に用いる接続スリーブよりも長いので、圧着に伴う伸びも大きい。ここで、心線9a,9bの切断端部近傍の被覆部を把持する把持器4a,4bは、カラー41を介して取り付けられた伸縮器3の軸芯に沿って移動自在であるので、接続スリーブ6及び心線9a,9bの伸びに応じて移動する。これにより、接続スリーブ6及び心線9a,9bは概ね直線状に保持され、従来のように大きな撓みが生じることを防止できる。
【0036】
このように圧着された接続スリーブ6及び心線9a,9bの表面に、絶縁材料で形成された絶縁保護カバー7を嵌挿する。この絶縁保護カバー7は、圧着作業の前に被覆電線9の一端側に装着して退避させておき、圧着作業の後に接続スリーブ6及び心線9a,9bの表面に沿って移動させる。ここで、接続スリーブ6及び心線9a,9bは撓みが小さく、ほぼ一直線状となっているので、絶縁保護カバー7を円滑に移動させることができる。したがって、従来のように大きく撓んだ接続スリーブに沿って絶縁保護カバー7を移動させるよりも、被覆電線9の接続作業を大幅に容易に行うことができる。
【0037】
絶縁保護カバー7を接続スリーブ6及び心線9a,9bの表面に配置した後、伸縮器3の操作部36を操作して伸張駆動する。これに伴い、連結具21,21の張力が減少し、掴線器2a,2bの挟持体22が解除駆動され、掴線器2への被覆電線9への係合が解除される。これにより、掴線器2の連結具21と伸縮器3を経由して保持されていた張力が、接続スリーブ6に保持されて、被覆電線9の接続作業が完了する。この被覆電線9は、接続スリーブ6及び心線9a,9bで形成された接続部の撓みが小さくて、他の部分との曲率の差が小さいので、従来よりも良好な見栄えに仕上げることができる。
【0038】
このように、本実施形態の架線工事用補助具1を用いることにより、架線工事において被覆電線9をその張力を保持したまま切断及び接続することができ、しかも、切断部を接続する際の作業性を従来よりも向上できる上に、接続部の見栄えを向上することができる。
【0039】
図5は、本発明の第2実施形態としての架線工事用補助具11を被覆電線9に取り付けて、被覆電線9の切断部に接続スリーブを装着する様子を示す正面図である。第2実施形態の架線工事用補助具11は、被覆電線を把持する把持器4a,4bに替えて、被覆電線をスライド自在に支持する支持器14a,14bを備える点が第1実施形態と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成成分には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0040】
支持器14a,14bは、図6に示すように、伸縮器3に外嵌するカラー41と、このカラー41にボルトで連結されたガイド部43とで大略構成されている。カラー41は、第1実施形態の把持器4a,4bが有するものと同一の構成を有し、伸縮器3の本体筒部31および移動軸部32に取付けられて、軸方向に移動可能かつ所望の軸方向位置に固定可能に構成されている。ガイド部43は、固定ガイド部431を上部に有する本体432と、この本体432にスライド可能に保持された可動ガイド部433と、本体432の下部に螺合されると共に可動ガイド部433に回転自在かつ軸方向に一体移動するように連結されたネジ軸434と、このネジ軸434の下端に一体に固定され、遠隔操作具によって回転操作される操作部435を有する。固定ガイド部431に対して可動ガイド部433が遠ざかった状態で、この固定ガイド部431と可動ガイド部433との間に被覆電線9を配置する。次いで、ネジ軸434を回転させて螺進させ、可動ガイド部433を固定ガイド部431側に移動させて所定のガイド位置に移動させる。可動ガイド部433がガイド位置に達すると、固定ガイド部431及び可動ガイド部433の内側面と、被覆電線9の被覆部の外周面との間に隙間が確保され、かつ、固定ガイド部431と可動ガイド部433との端部間の隙間が被覆電線9の径よりも小さくなる。こうして、被覆電線9を、支持器14a,14bからの脱落を防止しつつ、軸芯方向に移動可能にガイドすることが可能となる。なお、固定ガイド部431と可動ガイド部433の被覆電線9に臨む面に、例えば、フッ素樹脂皮膜等を配置して、被覆部との摩擦力を低減させてもよい。
【0041】
本実施形態の架線工事用補助具11を用いて被覆電線9の切断を行う場合、第1実施形態の架線工事用補助具1を用いた場合と同様に、掴線器2a,2bによって被覆電線9を彎曲させた後、この被覆電線9の彎曲部分を切断し、切断位置の両端の切断端部を振分け器5a,5bで振り分ける。被覆電線9の接続を行う場合、振分け器5a,5bを元の回転位置に戻して、両方の切断端部を互いに略同一位置に戻す。両切断端部の心線9a,9bを露出させた後、一方の切断端部近傍の被覆部を一方の支持器14aで支持する。また、他方の切断端部の心線9bに接続スリーブ6を装着した後、この心線9bの被覆部を他方の支持器14bで支持する。支持器14a,14bのカラー41を操作して、他方の心線9bに装着されたスリーブ6と、一方の心線9aとを略同一直線上に配置する。この後
、伸縮器3を収縮動作させて、接続スリーブ6内に一方の心線9aを挿入する。この後、圧着機により、接続スリーブ6を心線9a,9bに圧着する。このとき、圧着により接続スリーブ6及び心線9a,9bが軸方向に伸びるが、心線9a,9bの切断端部近傍の被覆部は、支持器14a,14bのガイド部43によって軸方向に移動可能に支持されているので、接続スリーブ6及び心線9a,9bの伸びに応じて移動する。これにより、接続スリーブ6及び心線9a,9bは概ね直線状に保持され、従来のように大きな撓みが生じることなく圧着する。この後、略一直線状の接続スリーブ6及び心線9a,9bに、予め被覆電線9の一端側に装着させていた絶縁保護カバー7を、従来のように彎曲した接続スリーブに沿って移動させる困難を伴うことなく、容易に移動させて嵌挿する。
【0042】
以上のように、本実施形態の架線工事用補助具11によれば、支持器14a,14bにより、被覆電線9の切断位置の切断端部を、互いに軸芯を一致させた状態で移動可能に支持するので、接続スリーブ6及び心線9a,9bの圧着に伴う彎曲を効果的に防止することができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、被覆電線9の心線9a,9bはアルミ合金製であったが、銅製の心線の被覆電線を切断及び接続するために用いることもできる。
【0044】
また、上記実施形態の架線工事用補助具は、配電線の工事に限られず、信号線等の他の被覆電線の工事に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態の架線工事用補助具を被覆電線に取り付けた様子を示す正面図である。
【図2】伸縮器と、この伸縮器に取り付けられた把持器を示す正面図である。
【図3】把持器を示す側面図である。
【図4】振分け器を示す側面図である。
【図5】第2実施形態の架線工事用補助具を被覆電線に取り付けた様子を示す正面図である。
【図6】支持器を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1,11 架線工事用補助具
2a,2b 掴線器
3 伸縮器
4a,4b 把持器
5a,5b 振分け器
6 接続スリーブ
7 絶縁保護カバー
9 被覆電線
9a,9b 心線
14a,14b 支持器
31 本体筒部
32 移動軸部
412 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線を掴む一対の掴線器と、
軸芯方向に相対移動する本体筒部と移動軸部とからなり、本体筒部および移動軸部の外端のそれぞれに掴線器が接続され、前記一対の掴線器を互いに接続する方向に駆動して、被覆電線の掴線器の間の部分を彎曲させる伸縮器と、
前記本体筒部および前記移動軸部にそれぞれ支持されると共に、掴線器の間で切断された被覆電線の切断位置の両端部近傍の被覆部をそれぞれ把持する一対の把持器とを備え、
前記一対の把持器の少なくとも一方が前記本体筒部または前記移動軸部に沿って移動可能なように構成されていることを
特徴とする架線工事用補助具。
【請求項2】
一対の把持器は、それぞれの把持する被覆電線の軸芯が同一線上で、かつ伸縮器の軸芯に平行となるように構成されている請求項1に記載の架線工事用補助具。
【請求項3】
把持器は本体筒部または移動軸部に対し、移動可能かつ固定具によって固定可能に構成されている請求項1または2に記載の架線工事用補助具。
【請求項4】
把持器が伸縮器に対して着脱可能に形成されている請求項1、2または3に記載の架線工事用補助具。
【請求項5】
被覆電線を掴む一対の掴線器と、
軸芯方向に相対移動する本体筒部と移動軸部とからなり、本体筒部および移動軸部の外端のそれぞれに掴線器が接続され、前記一対の掴線器を互いに接続する方向に駆動して、被覆電線の掴線器の間の部分を彎曲させる伸縮器と、
前記本体筒部および前記移動軸部にそれぞれ支持されると共に、掴線器の間で切断された被覆電線の切断位置の両端部近傍の被覆部をそれぞれ支持する一対の支持器とを備え、
前記一対の支持器は、それぞれの支持する被覆電線の軸芯が同一線上で、かつ伸縮器の軸芯に平行となるように構成され、前記一対の支持器の少なくとも一方は、支持する被覆電線を軸芯方向に移動可能に構成されていることを
特徴とする架線工事用補助具。
【請求項6】
被覆電線を、所定間隔をおいた2箇所で掴む工程と、
上記被覆電線の2箇所の掴んだ部分を互いに引き寄せて、被覆電線を湾曲させる工程と、
上記被覆電線の湾曲した部分を切断する工程と、
上記被覆電線の切断位置の両端部の間に、互いの心線を接続する接続スリーブを配置する工程と、
上記被覆電線の切断位置の両端部の少なくとも一方を、互いの被覆電線の軸芯が同一線上となるように移動させながら、上記接続スリーブを心線に圧着する工程と
を備えることを特徴とする架線工事方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51081(P2010−51081A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212232(P2008−212232)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)