説明

架線拡幅工具および架線拡幅保持方法

【課題】遠隔操作棒を用いた高所作業車等からの遠隔操作により、菱形配置されてなる架線を把持して、上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する作業を安全にかつ確実に実施することができる架線拡幅具および架線拡幅保持方法を提供する。
【解決手段】本発明の架線拡幅工具1は、第1の拡幅ロッド10と、第2の拡幅ロッド30と、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを連結する連結具50とで構成される。第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30のいずれか一方が、菱形配置されてなる4本の架線のうち左右1対の架線の間を把持して拡幅し、その状態を保持するとともに、他方が、上下1対の架線の間を把持して拡幅し、その状態を保持するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に架線された電線を切り分ける際に、菱形配置されてなる架線を把持して拡幅する架線拡幅工具よび架線拡幅工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架線工事において、複数の既設架線にバイパスケーブル線などを接続する切分工事を行うに際しては、既設架線に電源を供給した状態で絶縁遠隔操作工具(以下、単に遠隔操作棒という)によって遠隔操作しながら配線する工法(以下、ホットスティック工法と称する)を採用することが好ましい。なぜならば、切分工事を行う配線箇所の電源供給側回路を遮断した状態で工事を行うと、その工事中において広範囲の電力需要者に停電の影響が及ぶからである。上記ホットスティック工法を採用するためには、比較的間隔の狭い複数本の既設架線を互いに拡幅して、切分工具の取り付けや取り外しを容易に行える状況にする必要がある。
【0003】
そこで、従来は、三角装柱配線などの平行架線配線箇所において、ホットスティック工法で切分工具を使用するために、上側に2本と下側に1本の互いに平行な3本の既設架線や、略水平方向あるいは略鉛直方向に配された互いに平行な3本の既設架線に対して、これらの既設架線を把持して架線間隔を拡幅保持する架線拡幅具および架線拡幅保持方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に開示された架線拡幅具は、略水平方向あるいは略鉛直方向に配された互いに平行な3本の架線の相互の間隔を拡幅するためのものであり、1本の本体ロッドのほぼ中央部に中線把持部材が回転自在に取り付けられ、この中線把持部材に対して架線を拡幅すべき間隔に相当する距離だけ離間した本体ロッドの両端側の一方に外線把持部材が取り付けられ、他方に外線把持部材または外線保持部材が取り付けられ、本体ロッドの一端部に、遠隔操作工具が着脱自在に係合される係合部が設けられている。中線把持部材は、3本の架線のうちの真ん中に位置する架線を把持するものであり、外線把持部材は、外側に位置する架線を保持した後に把持するものであり、外線保持部材は、外側に位置する架線を保持した後に把持するものである。
【0005】
そして、特許文献1では、このような架線工具を用いて、架線拡幅具の中線把持部材を真ん中の架線に対してこれを把持することにより支持される状態に取り付け、本体ロッドを中線把持部材を支点として回動させることにより、本体ロッドの一端の外線把持部材および他端の外線把持部材または外線保持部材を、外側の2本の各架線に保持状態に係合させ、本体ロッドの一端の係合部に遠隔操作工具を係合させたのち、その遠隔操作工具の引っ張り操作または押圧操作することによって本体ロッドを3本の架線に対してほぼ直交する相対配置となるまで回動させて、外側の2本の架線を真ん中の架線から離間方向に拡幅させ、少なくとも1つの外部把持部材を外部操作してこの外部把持部材で架線を把持させることにより、3本の架線を拡幅状態に保持させる架線拡幅保持方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2に開示された架線拡幅具は、上側に2本、下側に1本の平行架線を互いに拡幅した状態で保持するためのものであり、これら3本の平行架線を互いに拡幅した状態で保持する両端に架線把持具を備えると共に伸縮機構を有する拡幅用横ロッドと、上端に拡幅用横ロッドの軸部に着脱可能に結合される連結具を、下端に架線把持具を夫々備えると共に、伸縮機構を有する拡幅用縦ロッドとからなり、拡幅用横ロッドの両端の架線把持具は、架線を受入れた状態で2本の架線によって拡幅用横ロッドが支持されるように構成されている。
【0007】
そして、特許文献1では、このような架線工具を用いて、まず、上側の2本の架線を拡幅用横ロッドの両端の架線把持具の把持部に挿入し、この2本の架線により拡幅用横ロッドを支持させ、次いで、拡幅用縦ロッドの連結部を拡幅用横ロッドの軸部に結合し、下側の架線を拡幅用縦ロッドの架線把持具の把持部に挿入し、これと相前後して3つの架線把持具を把持状態にした後に、拡幅用横ロッドおよび拡幅用縦ロッドをそれぞれ伸長することにより、3本の架線をこれら相互の間隔を拡幅した状態で保持する架線拡幅保持方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−15877号公報
【特許文献2】特開平9−289715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、最近では、上記の架線形態のほかに、中位位置に2本、下位位置に1本の電線、上位位置に1本の吊線(左右1対の架線と上下1対の架線)で構成される菱形配置された互いに平行な4本の架線からなる架線形態が活用されるようになってきている。この架線形態は、前述の上側に2本と下側に1本の互いに平行な3本の架線からなる架線形態に対して、さらにその上位位置に3本の架線を拘束する吊線が追加された形態のものであり、電力供給の安全性を維持するために考案されたものである。
【0009】
上記の特許文献1および特許文献2に開示された架線拡幅具および架線拡幅保持方法は、略水平方向または略鉛直方向に配された互いに平行な3本の架線、あるいは上側に2本と下側に1本の互いに平行な3本の架線の間隔を拡幅する用途に限定され、このような新しい架線形態、すなわち、水平方向に2本、鉛直方向に2本の架線が菱形配置された互いに平行な4本の架線からなる架線形態に対して、各架線間の間隔を拡幅する用途には適用できない。
【0010】
しかも、特許文献2に開示された架線拡幅具の拡幅用横ロッドは、外套管の内部に出入自在に設けられた内挿管を、一対のベベルギアの組み合わせによって回転されるネジ棒とナットの螺合によって移動させるように構成されており、外套管と内挿管の各々の外端部にそれぞれ架線把持具を有している。また、拡幅用縦ロッドは、一端部に上述と同様の把持具を有し、他端部側に連結具、一対のベベルギア、回転操作用のネジ、内挿管を移動させるためのネジ棒などを有している。このように、特許文献2に開示された架線拡幅具は、特に外套管と内挿管を備え、そのため、多くの部品点数を有した複雑な構造になっているため、コスト高になるだけでなく、構成の複雑化に伴い耐久性に乏しいものとなっている。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたものであり、遠隔操作棒を用いた高所作業車等からの遠隔操作により、菱形配置されてなる架線を把持して、上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する作業を安全にかつ確実に実施することができる架線拡幅具および架線拡幅保持方法を提供することを目的とする。また、このような架線拡幅具を簡単な構造で耐久性に優れのものとして、安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る架線拡幅具は、中間部位に連結部が設けられた直管状の第1のロッド本体と、前記第1のロッド本体内に回転可能に支持され、中間部位を境として一方側に右ネジが、他方側に左ネジがそれぞれ形成された駆動軸と、前記第1のロッド本体の中間部位を境とした一方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の右ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた一方側の掴線移動体と、前記第1のロッド本体の中間部位を境とした他方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の左ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた他方側の掴線移動体と、前記第1のロッド本体の一端に設けられ、前記駆動軸を回転させて前記一方側および他方側からなる1対の掴線移動体を、互いに離間または接近する方向に移動させる操作部と、を備えた第1の拡幅ロッドを有すると共に、中間部位に被連結部が設けられた直管状の第2のロッド本体と、前記第2のロッド本体内に回転可能に支持され、中間部位を境として一方側に右ネジが、他方側に左ネジがそれぞれ形成された駆動軸と、前記第2のロッド本体の中間部位を境とした一方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の右ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた一方側の掴線移動体と、前記第2のロッド本体の中間部位を境とした他方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の左ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた他方側の掴線移動体と、前記第2のロッド本体の一端に設けられ、前記駆動軸を回転させて前記一方側および他方側からなる1対の掴線移動体を、互いに離間または接近する方向に移動させる操作部と、を備えた第2の拡幅ロッドを有し、前記第1の拡幅ロッドの連結部は、前記第2の拡幅ロッドの被連結部に、第1の拡幅ロッドと第2の拡幅ロッドとが直交状態で、着脱可能に連結されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成の架線拡幅具によれば、第1の拡幅ロッド、第2の拡幅ロッドのそれぞれが、直管状の第1のロッド本体と、第1のロッド本体内に回転可能に支持され駆動軸と、第1のロッド本体の長手方向のみに移動可能に案内支持され、駆動軸の一方側に形成された右ネジに螺合するナット体と架線を着脱可能に把持する把持具とを備えた一方側の掴線移動体と、第1のロッド本体の長手方向のみに移動可能に案内支持され、駆動軸の他方側に形成された左ネジに螺合するナット体と架線を着脱可能に把持する把持具とを備えた他方側の掴線移動体と、駆動軸を回転させて1対の掴線移動体を互いに離間または接近する方向に移動させる操作部と、を備えて構成されるため、1対の掴線移動体の把持具にそれぞれ架線を把持した状態で、操作部を操作して駆動軸を回転させることにより、簡単にかつ安全に把持具に把持された1対の架線を離間させることができ、1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持することができる。
【0014】
しかも、第1の拡幅ロッドの中間部位に設けられた連結部が、第2の拡幅ロッドの中間部位に設けられた被連結部に、第1の拡幅ロッドと第2の拡幅ロッドとが直交状態で、着脱可能に連結されるように構成されているため、菱形配置された左右1対の架線または上下1対の架線のうちいずれか一方の1対の架線を、第1の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具に把持させた後、1対の掴線移動体を離間方向に移動させて1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持するとともに、残る他方の1対の架線を、第2の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具に把持させた後、1対の掴線移動体を離間方向に移動させて1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持することができる。
【0015】
また、このような架線拡幅具は、従来の架線拡幅具のような外套管と内挿管を備え、多くの部品点数が必要な複雑な構造を有するものではないため、安価に提供することができるとともに、耐久性に優れのものとすることができる。
【0016】
本発明の請求項2に係る架線拡幅具は、請求項1記載の架線拡幅工具において、前記第1の拡幅ロッドの連結部は連結具を備え、前記連結具は、前記第1の拡幅ロッドの連結部に該連結具を着脱可能に装着する連結具基台と、該連結具基台に取り付けられ、前記第2の拡幅ロッドの被連結部を受け入れて着脱可能に把持するロッド把持具を備えて構成されるものである。
【0017】
上記構成の架線拡幅具によれば、第1の拡幅ロッドの連結部が、連結具を備えて構成されるものであり、しかも、この連結具が、第1の拡幅ロッドの連結部に該連結具を着脱可能に装着する連結具基台と、この連結具基台に取り付けられ、第2の拡幅ロッドの被連結部を受け入れて着脱可能に把持するロッド把持具を備えているため、連結具基台により第1の拡幅ロッドに装着された連結具を用いて、ロッド把持具により第2の拡幅ロッドの被連結部を把持することにより、簡単に第1の拡幅ロッドと第2の拡幅ロッドとを連結することができる。
【0018】
本発明の請求項3に係る架線拡幅具は、請求項2に記載の架線拡幅工具において、前記連結具のロッド把持具は、前記第2の拡幅ロッドの被連結部を受け入れる開口部を有するU字形受け具と、該U字形受け具の開口部を開閉する開閉部材と、該開閉部材を閉止状態で固定するロックピンを備えて構成されるものである。
【0019】
上記構成の架線拡幅具によれば、U字形受け具の開口部に第2の拡幅ロッドの被連結部を受け入れ、開閉部材を閉じて、ロックピンにより開閉部材を閉止状態で固定することにより、ロッド把持具により簡単にかつ確実に第2の拡幅ロッドを把持することができる。ロックピンにより第2の拡幅ロッドが連結具のU字形受け具に把持された状態が維持されるため、第2の拡幅ロッドが連結具から脱落するのを確実に防止することができる。
【0020】
本発明の請求項4に係る架線拡幅保持方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の架線拡幅工具を用いて、左右1対の架線および上下1対の架線が菱形配置されている架線の相互間隔を拡張し、その状態を保持する架線拡幅保持方法であって、左右1対の架線または上下1対の架線のいずれか1対の架線を、第1の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具のそれぞれに把持させた後、第1の拡幅ロッドの操作部を操作して駆動軸を回転させることにより、前記1対の掴線移動体を離間方向に移動させ、前記1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持し、次いで、第1の拡幅ロッドの連結部に、前記第2の拡幅ロッドの被連結部を連結し、第1の拡幅ロッドに対して直交方向に第2の拡幅ロッドを配置し、次いで、左右1対の架線または上下1対の架線のうちの残りの1対の架線を、第2の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具のそれぞれに把持させた後、第2の拡幅ロッドの操作部を操作して駆動軸を回転させることにより、1対の掴線移動体を離間方向に移動させ、前記残り1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持することを特徴とするものである。
【0021】
上記構成の架線拡幅保持方法によれば、先ず、菱形配置された左右1対の架線または上下1対の架線のうちいずれか一方の1対の架線を、第1の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具に把持させる。次いで、1対の掴線移動体を離間方向に移動させて1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持するとともに、第1の拡幅ロッドの連結部に第2の拡幅ロッドの被連結部を連結し、第1の拡幅ロッドに対して直交方向に第2の拡幅ロッドを配置した後、最後に、残る他方の1対の架線を、第2の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具に把持させた後、1対の掴線移動体を離間方向に移動させて1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持する。このような簡単な操作で、安全にかつ確実に菱形配置された4本の架線の拡幅保持作業を実施することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の架線拡幅具および架線拡幅保持方法によれば、遠隔操作棒用いた高所作業車等からの遠隔操作により、菱形配置されてなる架線を把持して、上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する作業を安全にかつ確実に実施することができる。また、このような架線拡幅具を簡単な構造を有する耐久性に優れのものとして、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の架線拡幅工具に係る最良の実施の形態について、図1〜図4に基づき詳細に説明する。図1は、本発明に係る架線拡幅具の概要を説明するための斜視図であり、図2は、この架線拡幅具の拡幅ロッドを説明するための正面図であり、(a)が第1の拡幅ロッドの外観形状を、(b)が第2の拡幅ロッドの外観形状を示すものである。また、図3は、その内部構造を説明するための一部を切り欠いて示すものであり、(a)が操作部周辺の正面断面構造を、(b)が掴線移動体部周辺の正面断面構造を示すものであり、(c)が掴線移動体部周辺の側面断面構造を示すものである。なお、図3(a)〜(c)において括弧内に記した数字は、第2の拡幅ロッドにおける構成要素(部材)の符号を示している。また、図4は、この架線拡幅具の連結具を説明するためのもので、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。なお、下記に開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、実施の形態で開示された内容ではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解されるべきである。
【0024】
本発明の架線拡幅工具1は、図1に示されるように、第1の拡幅ロッド10と、第2の拡幅ロッド30と、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを連結する連結具50とで構成される。第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30は、いずれか一方が、中位位置に2本の電線A、B、下位位置に1本の電線C、上位位置に1本の吊線Dで構成される菱形配置されてなる4本の架線(左右1対の架線および上下1対の架線)のうち略水平方向に位置する2本の架線(左右1対の架線)の間を把持して拡幅し、その状態を保持するとともに、他方が、略垂直方向に位置する2本の架線(上下1対の架線)の間を把持して拡幅し、その状態を保持するものである。
【0025】
第1の拡幅ロッド10は、直管状のロッド本体11(第1のロッド本体)の軸方向の中間部位に連結具50が着脱可能に装着される連結具装着部12(連結部の一部)と、該連結具装着部12の両側方部位にロッド本体11の軸方向に移動可能に案内支持され、それぞれに架線を着脱可能に把持する架線把持具17、20(把持具)が設けられた1対の掴線移動体16、19と、ロッド本体11の一方の端部に配設されて2つの掴線移動体16、19を互いに離間または接近方向に移動させる操作部22とを有するものである。
【0026】
そして、本実施の形態に係る架線拡幅具1は、さらに、第1の拡幅ロッド10の連結部として、その連結具装着部12に、第2の拡幅ロッド30を直交状態で着脱可能に把持する連結具50を備えている。すなわち、第1の拡幅ロッドの連結部は、連結具装着部12と、この連結具装着部12に装着固定され、第2の拡幅ロッド30との間を連結する連結具50とで構成されている。
【0027】
第1の拡幅ロッド10は、具体的には図2(a)、図3(c)に示されるように、軸方向にスリット状の溝11aが形成され、中間部位に連結具装着部12が設けられた直管状のロッド本体11と、このロッド本体11内に回転可能に支持され、中間部位を境として一方側に右ネジ13a(図中左側)が、他方側に左ネジ13bが(図中右側)それぞれ形成された駆動軸13と、ロッド本体11の中間部位を境とした一方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、駆動軸13の右ネジ13aに螺合するナット体18を備えると共に、架線を着脱可能に把持する架線把持具17を備えた一方側の掴線移動体16と、ロッド本体11の中間部位を境とした他方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、駆動軸13の左ネジ13bに螺合するナット体21を備えると共に、架線を着脱可能に把持する架線把持具20を備えた他方側の掴線移動体19と、ロッド本体11の一端に設けられ、駆動軸13を回転させて一方側の掴線移動体16と他方側の掴線移動体19からなる1対の掴線移動体16、19を、互いに離間または接近する方向に移動させる操作部22と、を備えて構成される。連結具50については、後に詳しく説明する。
【0028】
ロッド本体11は、一定の幅寸法を有するスリット状の溝11aが軸方向に沿って形成された直管状のものであり、中間部位にロッド本体11の溝11aを覆うように連結具装着部12が設けられている。また、ロッド本体11内には、ロッド本体11の軸芯に沿って駆動軸13が配され、その両端部が駆動軸支持基台部14によって回転可能に支持されている。なお、スリット状の溝11aは、連結具装着部12に近接した部分およびロッド本体11の両端部に近接した部分を除いた範囲に形成され、この溝11aのロッド本体11軸方向の寸法により、掴線移動体16、19の軸方向の移動範囲が規制されている。
【0029】
連結具装着部12は、ロッド本体11の中間部位の外周面を覆う筒状基材12aと、この筒状基材12aの軸方向の両端部に外方(軸に垂直な方向)に突出する鍔部12bとが一体に形成されたものであり、ロッド本体11の中間部位に接着固定されている。両鍔部12bの内法寸法は、後述する連結具50の連結具基台51およびロッド把持具52の軸方向寸法(外寸)と同一に設定されており、この連結具装着部12に連結具50が装着固定された状態において連結具50の軸方向への動きが規制されるように構成されている。
【0030】
掴線移動体16、19は、それぞれロッド本体11内に位置して駆動軸13の右ネジ13a、左ネジ13bに螺合するナット体18、21と、このナット体18、21に連設されてロッド本体11外に位置し、架線を把持する架線把持具17、20とで構成されている。架線把持具17、20は、同一形状のものが連結具装着部12を挟んで左右対処に配置されている。
【0031】
架線把持具17は、図3(b)、(c)に示されるように、上方においてロッド本体11を外方から摺接する形で挿通するロッド挿通孔17bが設けられた架線把持基部17aと、この架線把持基部17aの下方に架線を受け入れるC字形受け具17cを備えて構成され、架線把持基部17aのロッド本体11の溝11aに臨む位置から連結部17dを介してロッド本体11内に位置するナット体18に接続されている。ここで、連結部17dは、ロッド本体11の溝11aに摺接する形で係合している。また、C字形受け具17cは、中央に架線を受け入れる架線収容空間が形成され、この架線収容空間の側方が架線を受け入れるために開口された側面視略C字形形状(ないしはコ字形形状)に形成されている。架線把持具20は、架線把持具17と同じ形状を有するものであるため、ここでは説明を省略する。
【0032】
架線把持具17のC字形受け具17cの下辺部17eには貫通ネジ孔が設けられ、この貫通ネジ孔に螺合する形で、上方端に架線押圧片17gを有し、下方端に操作リング17hを有する架線把持ボルト17fが取り付けられている。操作リング17hを右回転操作すれば、架線把持ボルト17fが架線収容空間の方向に向かって前進し、操作リング17hを左回転操作すれば、架線把持ボルト17fが架線収容空間から離反する方向に向かって後退する。したがって、架線収容空間に架線を受け入れた状態で操作リング17hを右回転操作することにより、架線を架線把持基部17aの下面と架線押圧片17gの上面との間で挟み込んで、しっかりと把持することができる。
【0033】
そして、第1の拡幅ロッド10のロッド本体11の一方の端部には、駆動軸13を回転させて、2つの掴線移動体16、19を互いに離間または接近する方向に移動させる操作部22が設けられている。また、駆動軸13の操作部22側の端部には、操作部22の第1のベベルギア24aに螺合する駆動軸側ベベルギア15が固設され、ロッド本体11の操作部22側の端部には、駆動軸側ベベルギア15と、操作部22の第1のベベルギア24a、第2のベベルギア25aを収容するギアケース23が取り付けられている。
【0034】
操作部22は、図3(a)に示されるように、駆動軸13の軸芯に対して垂直な方向に位置する直交操作軸24と、駆動軸13の軸芯の延長線上に位置する延伸操作軸25とを備え、それぞれ操作部22のギアケース23に側壁面23aおよび端壁面23bに穿設された貫通孔に回転可能に支持されている。そして、直交操作軸24のギアケース23内に臨む端部には第1のベベルギア24aが固設され、この第1のベベルギア24aが駆動軸13の操作部22側端部に固設された駆動軸ベベルギア15に螺合している。また、延伸操作軸25のギアケース23内に臨む端部には第2のベベルギア25aが固設され、この第2のベベルギア25aが直交操作軸24の端部に固設された第1のベベルギア24aに螺合している。
【0035】
また、直交操作軸24および延伸操作軸25のギアケース23外に突出する端部にはそれぞれ操作リング24b、25bが取り付けられている。直交操作軸24の操作リング24bを回転させることにより、この回転力が第1のベベルギア24aから駆動軸側ベベルギア15に伝達され、駆動軸13を回転させることになる。また、延伸操作軸25の操作リング25bを回転させることにより、この回転力が第2のベベルギア25aから第1のベベルギア24aに、第1のベベルギア24aから駆動軸側ベベルギア15に伝達され、駆動軸13を回転させることになる。このように、操作部22は、2つの操作リング24b、25bのいずれを回転させても駆動軸13を回転させることができるように構成されており、架線拡幅保持作業の状況に応じていずれか一方を選択して回転させればよく、架線拡幅保持作業の作業性、安全性の向上が図られている。
【0036】
そして、直交操作軸24または延伸操作軸25の操作リング24b、25bを回転(直交操作軸24の操作リング24bの場合は左回転、延伸操作軸25の操作リング25bの場合は右回転)させ、駆動軸13を操作部22側から見て右回転させることにより、右ネジ13aに螺合するナット体18を有する掴線移動体16と、左ネジ13bに螺合するナット体21を有する掴線移動体19とが互いに離間する方向に移動する。また、直交操作軸24または延伸操作軸25の操作リング24b、25bを回転(直交操作軸24の操作リング24bの場合は右回転、延伸操作軸25の操作リング25bの場合は左回転)させ、駆動軸13を操作部22側から見て左回転させることにより、右ネジ13aに螺合するナット体18を有する掴線移動体16と、左ネジ13bに螺合するナット体21を有する掴線移動体19とが互いに接近する方向に移動する。
【0037】
この1対の掴線移動体16、19のロッド本体11の軸方向に沿った移動は、架線把持基部17aに設けられたロッド挿通孔17bがロッド本体11に摺接するとともに、架線把持基部17aとナット体18、21との連結部17dがロッド本体11の溝11aに摺接しているため、非常にスムースな動作となる。
【0038】
1対の掴線移動体16、19の架線把持具17(C字形受け具17c)における架線把持中心間の間隔は、第1の拡幅ロッド10の中間部位に設けられた連結具装着部12を挟んだ状態で、最短150mmまで接近させることができ、最長730mmまで拡張することができるように、ロッド本体11に形成された溝11aや、連結具装着部12、掴線移動体16、19の軸方向寸法が設定されている。
【0039】
連結具50は、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着され、第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を把持することによって第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを互いに直交する角度で連結するものである。連結具50は、図4に示されるように、第1の拡幅ロッドの連結具装着部12(連結部)に連結具を着脱可能に装着する連結具基台51と、この連結具基台51に取り付けられ、第2の拡幅ロッドの連結具把持部32(被連結部)を受け入れて着脱可能に把持するロッド把持具52とで構成され、さらに、ロッド把持具52は、第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を受け入れる開口部(ロッド把持空間)を有するU字形受け具53と、このU字形受け具53の開口部を開閉する開閉部材54と、この開閉部材54を閉止状態で固定するロックピン55を備えて構成される。ロッド把持具52については、後に詳しく説明する。
【0040】
連結具基台51は、U字形受け具53の把持基部53aとの間に形成されるロッド装着空間に連結具50を第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着固定するものであり、ロッド装着空間に臨む連結具基台51のロッド装着面51aは、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12を収容するため、連結具装着部12の外周面と同径の半円周面に形成されている。
【0041】
また、後述するU字形受け具53の把持基部53aのロッド装着空間に臨むロッド装着面53dも、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12を収容するため、連結具装着部12の外周面と同径の半円周面に形成されている。
【0042】
そして、連結具基台51のロッド装着面51aとU字形受け具53のロッド装着面53dとの間に形成されたロッド装着空間に第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12を受け入れた状態で、連結具基台51とU字形受け具53との間に架け渡されたボルト56とナット57で締め付けることにより、連結具50を第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着固定することができる。
【0043】
次に、第2の拡幅ロッド30は、基本的な構成が上述した(連結具50が装着されていない状態の)第1の拡幅ロッド10と同じであり、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に代えて、同じ位置に連結具被把持部32(被連結部)が設けられている。すなわち、第2の拡幅ロッド30は、直管状のロッド本体31(第2のロッド本体)の軸方向の中間部位に連結具50により把持される連結具被把持部32と、該連結具被把持部32の両側方部位にロッド本体31の軸方向に移動可能に案内支持され、それぞれに架線を着脱可能に把持する架線把持具37、40(把持具)が設けられた1対の掴線移動体36、39と、ロッド本体31の一方の端部に配設されて2つの掴線移動体36、39を互いに離間または接近方向に移動させる操作部42とを有するものである。
【0044】
第2の拡幅ロッド30は、具体的には図2(b)に示されるように、軸方向にスリット状の溝31aが形成され、中間部位に連結具被把持部32が設けられた直管状のロッド本体31と、このロッド本体31内に回転可能に支持され、中間部位を境として一方側に右ネジ33a(図中左側)が、他方側に左ネジ33bが(図中右側)それぞれ形成された駆動軸33と、ロッド本体31の中間部位を境とした一方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、駆動軸33の右ネジ33aに螺合するナット体38を備えると共に、架線を着脱可能に把持する架線把持具37を備えた一方側の掴線移動体36と、ロッド本体31の中間部位を境とした他方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、駆動軸33の左ネジ33bに螺合するナット体41を備えると共に、架線を着脱可能に把持する架線把持具40を備えた他方側の掴線移動体39と、ロッド本体31の一端に設けられ、駆動軸33を回転させて一方側の掴線移動体36と他方側の掴線移動体39からなる1対の掴線移動体36、39を、互いに離間または接近する方向に移動させる操作部42と、を備えて構成される。
【0045】
ロッド本体31は、一定の幅寸法を有するスリット状の溝31aが軸方向に沿って形成された直管状のものであり、中間部位にロッド本体31の溝31aを覆うように連結具被把持部32が設けられている。また、ロッド本体31内には、ロッド本体31の軸芯に沿って駆動軸33が配され、その両端部が駆動軸支持基台部34によって回転可能に支持されている。なお、スリット状の溝31aは、連結具被把持部32に近接した部分およびロッド本体31の両端部に近接した部分を除いた範囲に形成され、この溝31aのロッド本体31軸方向の寸法により、掴線移動体16、19の軸方向の移動範囲が規制されている。
【0046】
連結具被把持部32は、ロッド本体31の中間部位の外周面を覆う筒状基材32aと、この筒状基材32aの軸方向の両端部に外方(軸に垂直な方向)に突出する鍔部32bとが一体に形成されたものであり、ロッド本体31の中間部位に接着固定されている。両鍔部32bの内法寸法は、後述する連結具50のロッド把持具52(把持腕部53b)の軸方向寸法(外寸)と同一に設定されており、ロッド把持具52この連結具被把持部32を把持した状態において連結具50(ロッド把持具52)の軸方向への動きが規制されるように構成されている。
【0047】
掴線移動体36、39は、それぞれロッド本体31内に位置して駆動軸33の右ネジ33a、左ネジ33bに螺合するナット体38、41と、このナット体38、41に連設されてロッド本体31外に位置し、架線を把持する架線把持具37、40とで構成されている。架線把持具37、40は、同一形状のものが連結具被把持部32を挟んで左右対処に配置されている。架線把持具37は、上方においてロッド本体31を外方から摺接する形で挿通するロッド挿通孔37bが設けられた架線把持基部37aと、この架線把持基部37aの下方に架線を受け入れるC字形受け具37cを備えて構成され、架線把持基部37aのロッド本体31の溝31aに臨む位置から連結部37dを介してロッド本体31内に位置するナット体38に接続されている。ここで、連結部37dは、ロッド本体31の溝31aに摺接する形で係合している。また、C字形受け具37cは、中央に架線を受け入れる架線収容空間が形成され、この架線収容空間の側方が架線を受け入れるために開口された側面視略C字形形状(ないしはコ字形形状)に形成されている。架線把持具40は、架線把持具37と同じ形状を有するものであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
架線把持具37のC字形受け具37cの下辺部37eには貫通ネジ孔が設けられ、この貫通ネジ孔に螺合する形で、上方端に架線押圧片37gを有し、下方端に操作リング37hを有する架線把持ボルト37fが取り付けられている。操作リング37hを右回転操作すれば、架線把持ボルト37fが架線収容空間の方向に向かって前進し、操作リング37hを左回転操作すれば、架線把持ボルト37fが架線収容空間から離反する方向に向かって後退する。したがって、架線収容空間に架線を受け入れた状態で操作リング37hを右回転操作することにより、架線を架線把持基部37aの下面と架線押圧片37gの上面との間で挟み込んで、しっかりと把持することができる。
【0049】
そして、第2の拡幅ロッド30のロッド本体31の一方の端部には、駆動軸33を回転させて、2つの掴線移動体36、39を互いに離間または接近する方向に移動させる操作部42が設けられている。また、駆動軸33の操作部42側の端部には、操作部42の第1のベベルギア44aに螺合する駆動軸側ベベルギア35が固設され、ロッド本体31の操作部42側の端部には、駆動軸側ベベルギア35と、操作部42の第1のベベルギア44a、第2のベベルギア45aを収容するギアケース43が取り付けられている。
【0050】
操作部42は、駆動軸33の軸芯に対して垂直な方向に位置する直交操作軸44と、駆動軸33の軸芯の延長線上に位置する延伸操作軸45とを備え、それぞれ操作部42のギアケース43に側壁面43aおよび端壁面43bに穿設された貫通孔に回転可能に支持されている。そして、直交操作軸44のギアケース43内に臨む端部には第1のベベルギア44aが固設され、この第1のベベルギア44aが駆動軸33の操作部42側端部に固設された駆動軸ベベルギア35に螺合している。また、延伸操作軸45のギアケース43内に臨む端部には第2のベベルギア45aが固設され、この第2のベベルギア45aが直交操作軸44の端部に固設された第1のベベルギア44aに螺合している。
【0051】
また、直交操作軸44および延伸操作軸45のギアケース43外に突出する端部にはそれぞれ操作リング44b、45bが取り付けられている。直交操作軸44の操作リング44bを回転させることにより、この回転力が第1のベベルギア44aから駆動軸側ベベルギア35に伝達され、駆動軸33を回転させることになる。また、延伸操作軸45の操作リング45bを回転させることにより、この回転力が第2のベベルギア45aから第1のベベルギア44aに、第1のベベルギア44aから駆動軸側ベベルギア35に伝達され、駆動軸33を回転させることになる。このように、操作部42は、2つの操作リング44b、45bのいずれを回転させても駆動軸33を回転させることができるように構成されており、架線拡幅保持作業の状況に応じていずれか一方を選択して回転させればよく、架線拡幅保持作業の作業性、安全性の向上が図られている。
【0052】
そして、直交操作軸44または延伸操作軸45の操作リング44b、45bを回転(直交操作軸44の操作リング44bの場合は左回転、延伸操作軸45の操作リング45bの場合は右回転)させ、駆動軸33を操作部42側から見て右回転させることにより、右ネジ33aに螺合するナット体38を有する掴線移動体36と、左ネジ33bに螺合するナット体41を有する掴線移動体39とが互いに離間する方向に移動する。また、直交操作軸44または延伸操作軸45の操作リング44b、45bを回転(直交操作軸44の操作リング44bの場合は右回転、延伸操作軸45の操作リング45bの場合は左回転)させ、駆動軸33を操作部42側から見て左回転させることにより、右ネジ33aに螺合するナット体38を有する掴線移動体36と、左ネジ33bに螺合するナット体41を有する掴線移動体39とが互いに接近する方向に移動する。
【0053】
この1対の掴線移動体36、39のロッド本体31の軸方向に沿った移動は、架線把持基部37aに設けられたロッド挿通孔37bがロッド本体31に摺接するとともに、架線把持基部37aとナット体38、41との連結部37dがロッド本体31の溝31aに摺接しているため、非常にスムースな動作となる。
【0054】
1対の掴線移動体36、39の架線把持具37(C字形受け具37c)における架線把持中心間の間隔は、第2の拡幅ロッド30の中間部位に設けられた連結具被把持部32を挟んだ状態で、最短150mmまで接近させることができ、最長730mmまで拡張することができるように、ロッド本体31に形成された溝31aや、連結具被把持部32、掴線移動体36、39の軸方向寸法が設定されている。
【0055】
本実施の形態においては、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12と第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32とが、図2(a)、(b)に示されるように、同じ外観形状をなすものであり、したがって、連結具装着部12に連結具50を装着しない状態での第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30もまた、同じ形状、同じ構造を有するものである。このように構成することにより、同じ形状、構造を有する2本の拡幅ロッドを、連結具50を装着する第1の拡幅ロッド10として、あるいは、連結具50に把持される第2の拡幅ロッド30として、いずれにも使用することができ、安価に架線拡幅工具を構成することができる。
【0056】
また、前述したように、連結具50を構成するロッド把持具52は、第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を受け入れる開口部(ロッド把持空間)を有するU字形受け具53と、このU字形受け具53の開口部を開閉する開閉部材54と、この開閉部材54を閉止状態で固定するロックピン55を備えて構成される。U字形受け具53は、図4に示されるように、中央に第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を受け入れるロッド把持空間が形成され、把持基部53aの両側方から外方に向けて突出する把持腕部53bが側面視略U字形形状に形成されている。この把持基部53aと把持腕部53b、および開閉部材54のロッド把持空間に臨む面がロッド把持面54cとなる。そして、この把持腕部53bの一方に、ロッド把持空間の外方側(U字形受け具53の開口部)を開閉する開閉部材54が揺動軸54a回りに揺動可能に取り付けられている。
【0057】
開閉部材54は、側面視略三日月形の形状を有するものであり、ロッド把持空間に臨む側面が連結具被把持部32の外周面とほぼ同径の半円周面に形成されるとともに、ロッド把持空間の反対側の側面に、ロックピン55が作動した時(開閉部材側に進出した時)にロックピン55の先端部が係合する係合溝(不図示)が設けられている。すなわち、開閉部材54は、把持腕部53bのロッド把持空間を臨む側方位置に取り付けられた揺動軸54aに軸支され、ロックピン55が反開閉部材側に退避している状態(解除されている状態)では、ロックピンの先端部が係合溝から退避しているため、揺動軸54a回りに揺動可能な状態にあって、開閉部材54の上辺部54bが開口部を開放するとともに、下辺部54cがロッド把持空間内に突出した状態になっている(図4(a)において実線で表示)。
【0058】
遠隔操作棒からの操作により第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32がロッド把持空間に受け入れられると、収容されようとする連結具被把持部32が開閉部材54の下辺部54cを押圧して、これに連動して開閉部材54の上辺部54bがロッド把持空間を閉止することになる(図4(a)において一点鎖線で表示)。このような状態でロックピン55を作動状態にすることにより、開閉部材54(の上辺部54b)により連結具被把持部32をしっかりと把持することができる。
【0059】
ロックピン55は、開閉部材54に向けて出没可能な軸部55aと、この軸部55aを開閉部材54方向に付勢する付勢部材(不図示)と、軸部55aから外方に向けて突出するピン55bと、軸部55aを回動自在に支持し、上面にピン55bを受け入れるピン溝55dが形成された軸支持部55cと、軸部55aの後端部に軸部55aを回動操作するための操作リング55eを備えて構成されている。ロッド把持空間に第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32が受け入れられておらず、開閉部材54が揺動自在な状態では、ピン55bは軸支持部55cの上面に当接した位置にある。
【0060】
ロッド把持空間に第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32が受け入れ、遠隔操作棒により操作リング55eを操作し、ピン55bをピン溝55dに重なり合う位置に軸部55aを回動させることにより、軸部55aが付勢力により開閉部材53方向に移動して、ピン55bがピン溝55dに係合することになる。このような操作により、軸部55aの先端部が開閉部材54に設けられた係合溝(不図示)に係合し、開閉部材54の揺動を阻止することになり、ロックピン55が開閉部材54を閉止状態に維持して、開閉部材54(の上辺部54b)によりロッド把持空間に受け入れられた第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32をしっかりと把持することができる。
【0061】
また、連結具50は、連結具基台51とU字形受け具53の把持基部53aとで形成されるロッド装着軸(連結具50が連結具装着部12に装着された状態での第1の拡幅ロッド10の軸芯)と、U字形受け具53の把持腕部53bで形成されるロッド把持軸(連結具被把持部32が把持された状態での第2の拡幅ロッド30の軸芯)とが互いに直交する位置関係になるよう構成されている。このため、第1の拡幅ロッド10の軸芯が略水平方向に保持されたた状態では、第2の拡幅ロッド30の軸芯が略垂直方向に維持されることになる。
【0062】
このような連結具50を用いて、U字形受け具53の把持腕部53b(ロッド把持空間)に第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を受け入れ、開閉部材54を閉じて、ロックピン55により開閉部材54を閉止状態で固定することにより、第2の拡幅ロッド30を把持する。このような構造を有する連結具50により、連結具50が第1の拡幅ロッド10に確実に装着固定され、第2の拡幅ロッド30が連結具50のU字形受け具53により確実に把持された状態となり、ロックピン55により第2の拡幅ロッド30が連結具50から脱落するのを防止することができる。
【0063】
なお、連結具50は、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12と第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32とを着脱可能に連結し、その連結状態において第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とが直交する状態として、架線拡幅保持作業中にぶれたり、一方の拡幅ロッド10、30が離脱したりすることなく連結状態を維持できる構造を有するものであればよく、上述した構造は一例に過ぎず、他の構造を有するものであってもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態において、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12と第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を同じ形状として、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30を同じ形状、同じ構造を有するもので構成したが、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12と第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32の形状あるいは構造、材質等をそれぞれ異なるものとして、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを別々のもので構成してもよい。
【0065】
次に、本発明の架線拡幅工具を用いて、中位位置に2本、下位位置に1本の平行電線と、これらに平行に上位位置に1本の吊線が菱形配置されてなる架線を上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する架線拡幅保持方法に関する2つの実施の形態について説明する。図5は、本発明に係る架線拡幅具を用いた架線拡幅保持方法の実施の形態1における操作手順を説明するための図であり、図6は、実施の形態2における操作手順を説明するための図である。
【0066】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る架線拡幅保持方法は、(1)第1の拡幅ロッド10の架線把持具17、20により中位位置にある2本の電線A、Bを把持して、掴線移動体16、19の離間方向の移動によりこれらの2本の架線の間を拡幅する工程(図5(a)参照)と、(2)連結具50により第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを連結する工程(図5(b)参照)と、(3)第2の拡幅ロッド30の架線把持具37、40により下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを把持して、掴線移動体36、39の離間方向の移動によりこれらの2本の架線の間を拡幅する工程(図5(c)参照)とで構成される。
【0067】
これら一連の工程(1)〜(3)は、作業者が高所作業車の作業用ワゴンに搭乗し、遠隔操作棒を用いた操作により行われる。なお、連結具50は、上記工程(1)〜(3)に先立って、地上で、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着されており、連結具50の開閉部材54は第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を受け入れ可能な開放状態に設定されている。
【0068】
(1)の工程では、先ず、遠隔操作棒を用いて第1の拡幅ロッド10を略水平方向に保持して、2つの掴線移動体16、19のそれぞれのC字形受け具17cの開口部に中位位置にある2本の電線A、Bを挿入する。次に、別の遠隔操作棒を用いてC字形受け具17cの下辺部17eに螺合された架線把持ボルト17fを回動させて押圧方向に前進させ、C字形受け具17cの開口部に挿入されている電線A、Bを把持する。そして、さらに別の遠隔操作棒を用いて操作部22の一方の操作リング24b、25b(作業性の良い方)を回動させて、架線把持具17、20に把持された2本の電線A、Bの間を拡幅する。このような操作により、中位位置にある2本の電線A、Bの間隔が、当初200mm程度であったものが、約700mmの間隔に拡幅される。
【0069】
次に、(2)の工程では、先ず、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着された連結具50のU字形受け具53の開口部に第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を挿入する。そして、連結具50の開閉部材54が閉止した状態で別の遠隔操作棒を用いてロックピン55を作動させ、開閉部材54の閉止状態を維持した状態で第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を把持させる。このような操作により、連結具50によって第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とが互いに直交する角度で連結され、第2の拡幅ロッド30は略垂直方向に保持された状態となる。
【0070】
続いて、(3)の工程では、第2の拡幅ロッド30が略垂直方向に保持された状態で、遠隔操作棒を用いて2つの掴線移動体36、39のそれぞれのC字形受け具37cの開口部に下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを挿入する。次に、別の遠隔操作棒を用いてC字形受け具37cの下辺部37eに螺合された架線把持ボルト37fを回動させて押圧方向に前進させ、C字形受け具37cの開口部に挿入されている電線Cと吊線Dを把持する。そして、さらに別の遠隔操作棒を用いて操作部42の一方の操作リング44b、45b(作業性の良い方)を回動させて、架線把持具37、40に把持された電線Cと吊線Dの間を拡幅する。このような操作により、下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dの間隔が、当初200mm程度であったものが、約700mmの間隔に拡幅される。
【0071】
上述したように、本実施の形態1の架線拡幅保持方法では、先ず、中位位置にある2本の電線A、Bの間が拡幅され、次に、下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとの間が拡幅される。このような本実施の形態1の架線拡幅保持方法によれば、先に中位位置にある2本の電線A、Bの間が拡幅されることにより、次の位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとの拡幅作業を行うに当たっての作業空間が広く確保することができるため、遠隔操作棒用いた高所作業車等からの遠隔操作により、菱形配置されてなる架線を上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する架線拡幅保持作業を安全にかつ確実に実施することができる。
【0072】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る架線拡幅保持方法は、(1)第1の拡幅ロッド10の架線把持具17、20により下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを把持して、掴線移動体16、19の離間方向の移動によりこれらの2本の架線の間を拡幅する工程(図6(a)参照)と、(2)連結具50により第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを連結する工程(図6(b)参照)と、(3)第2の拡幅ロッドの架線把持具37、40により中位位置にある2本の電線A、Bを把持して、掴線移動体36、39の離間方向の移動によりこれらの2本の架線の間を拡幅する工程(図6(c)参照)とで構成される。
【0073】
これら一連の工程(1)〜(3)は、実施の形態1の場合と同様、作業者が高所作業車の作業用ワゴンに搭乗し、遠隔操作棒を用いた操作により行われる。なお、連結具50は、上記工程(1)〜(3)に先立って、地上で、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着されており、連結具50の開閉部材54は第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を受け入れ可能な開放状態に設定されている。
【0074】
(1)の工程では、先ず、遠隔操作棒を用いて第1の拡幅ロッド10を略垂直方向に保持して、2つの掴線移動体16、19のそれぞれのC字形受け具17cの開口部に下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dを挿入する。次に、別の遠隔操作棒を用いてC字形受け具17cの下辺部17eに螺合された架線把持ボルト17fを回動させて押圧方向に前進させ、C字形受け具17cの開口部に挿入されている電線Cと吊線Dとを把持する。そして、さらに別の遠隔操作棒を用いて操作部22の一方の操作リング24b、25b(作業性の良い方)を回動させて、架線把持具17、20に把持された電線Cと吊線Dの間を拡幅する。このような操作により、下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとの間隔が、当初200mm程度であったものが、約700mmの間隔に拡幅される。
【0075】
次に、(2)の工程では、先ず、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着された連結具50のU字形受け具53の開口部に第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を挿入する。そして、連結具50の開閉部材54が閉止した状態で別の遠隔操作棒を用いてロックピン55を作動させ、開閉部材54の閉止状態を維持した状態で第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を把持させる。このような操作により、連結具50によって第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とが互いに直交する角度で連結され、第2の拡幅ロッド30は略水平方向に保持された状態となる。
【0076】
続いて、(3)の工程では、第2の拡幅ロッド30が略水平方向に保持された状態で、遠隔操作棒を用いて2つの掴線移動体36、39のC字形受け具37cの開口部に中位位置にある2本の電線A、Bを挿入する。次に、別の遠隔操作棒を用いてC字形受け具37cの下辺部37eに螺合された架線把持ボルト37fを回動させて押圧方向に前進させ、C字形受け具37cの開口部に挿入されている電線A、Bを把持する。そして、さらに別の遠隔操作棒を用いて操作部42の一方の操作リング44b、45b(作業性の良い方)を回動させて、架線把持具37、40に把持された2本の電線A、Bの間を拡幅する。このような操作により、中位位置にある2本の電線A、Bの間隔が、当初200mm程度であったものが、約700mmの間隔に拡幅される。
【0077】
上述したように、本実施の形態2の架線拡幅保持方法では、先ず、下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとの間が拡幅され、次に、中位位置にある2本の電線A、Bの間が拡幅される。このような本実施の形態2の架線拡幅保持方法によれば、第1の拡幅ロッド10を一点支持で垂下させ、略垂直方向に安定的に保持させた状態で、先に上位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとの間の拡幅作業を実施するため、比較的容易にこの拡幅作業を行うことができ、遠隔操作棒用いた高所作業車等からの遠隔操作により、菱形配置されてなる架線を上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する架線拡幅保持作業を安全にかつ確実に実施することができる。
【0078】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1の架線拡幅保持方法に代えて、(1)まず、第2の拡幅ロッド30を略水平方向に保持して、2つの掴線移動体36、39の架線把持具37、40で中位位置にある2本の電線A、Bを把持し、操作部42を回転操作することにより架線把持具37、40に把持された2本の電線A、Bの間を拡幅するとともに、(2)次に、第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着された連結具50により把持させて、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを互いに直交する角度で連結し、(3)続いて、第1の拡幅ロッド10を略垂直方向に保持して、2つの掴線移動体16、19の架線把持具17、20で下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを把持し、操作部22を回転操作することにより架線把持具17、20に把持された電線Cと吊線Dとの間を拡幅することとしてもよい。
【0079】
また、上記の実施の形態2の架線拡幅保持方法に代えて、(1)まず、第2の拡幅ロッド30を略垂直方向に保持して、2つの掴線移動体36、39の架線把持具37、40で下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを把持し、操作部42を回転操作することにより架線把持具37、40に把持された電線Cと吊線Dとの間を拡幅し、(2)次に、第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着された連結具50により把持させて、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを互いに直交する角度で連結し、(3)続いて、第1の拡幅ロッド10を略水平方向に保持して、2つの掴線移動体16、19の架線把持具17、20で中位位置にある2本の電線A、Bを把持し、操作部22を回転操作することにより架線把持具17、20に把持された2本の電線A、Bの間を拡幅することとしてもよい。
【0080】
このような架線拡幅保持方法では、先に第2の拡幅ロッド30により2本の架線(中位位置にある2本の電線A、B、あるいは下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線D)の間を拡幅した後、(2)の工程で、連結具50が装着された第1の拡幅ロッド10を遠隔操作棒により吊り下げて、所定の位置で停止状態にある第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を連結具50のU字形受け具53の開口部に挿入する。そして、連結具50の開閉部材54が閉止した状態で別の遠隔操作棒を用いてロックピン55を作動させ、開閉部材54の閉止状態を維持した状態で第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を把持させる。このような操作により、連結具50によって第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とが互いに直交する角度で連結されることになる。
【0081】
このような架線拡幅保持方法によれば、上記の実施の形態1、2の架線拡幅保持方法に対して、(2)の工程での操作が異なるだけで、特に作業性に問題が生じることはない。したがって、本形態の架線拡幅保持方法によっても、遠隔操作棒用いた高所作業車等からの遠隔操作により、菱形配置されてなる架線を上下方向および左右方向に互いに拡幅した状態で保持する架線拡幅保持作業を安全にかつ確実に実施することができる。
【0082】
また、上記実施の形態1の架線拡幅保持方法に代えて、(1)まず、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着された連結具50により第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を把持させて、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを互いに直交する角度で連結し、(2)次に、第1の拡幅ロッド10を略水平方向に保持して、2つの掴線移動体16、19の架線把持具17、20で中位位置にある2本の電線A、Bを把持し、操作部22を回転操作することにより架線把持具17、20に把持された2本の電線A、Bの間を拡幅し、(3)続いて、第2の拡幅ロッド30を略垂直方向に保持して、2つの掴線移動体36、39の架線把持具37、40で下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを把持し、操作部42を回転操作することにより架線把持具37、40に把持された電線Cと吊線Dとの間を拡幅することとしてもよい。
【0083】
さらに、上記実施の形態1の架線拡幅保持方法に代えて、(1)まず、第1の拡幅ロッド10の連結具装着部12に装着された連結具50により第2の拡幅ロッド30の連結具被把持部32を把持させて、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを互いに直交する角度で連結し、(2)次に、第1の拡幅ロッド10を略垂直方向に保持して、2つの掴線移動体16、19の架線把持具17、20で下位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとを把持し、操作部22を回転操作することにより架線把持具17、20に把持された電線Cと吊線Dとの間を拡幅し、(3)続いて、第2の拡幅ロッド30を略水平方向に保持して、2つの掴線移動体36、39の架線把持具37、40で中位位置にある2本の電線A、Bを把持し、操作部42を回転操作することにより架線把持具37、40に把持された2本の電線A、Bの間を拡幅することとしてもよい。
【0084】
このような別形態の架線拡幅保持方法によれば、地上において(1)の第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とを連結具50により互いに連結する作業ができるため、この連結作業を安全に実施することができ、効率的である。また、第1の拡幅ロッド10と第2の拡幅ロッド30とが連結具50により連結されているため、これらで構成される架線拡幅工具を所定の位置に吊り下げ移動するのに多少重量的には重くなるが、それぞれの構成部材がアルミニウム合金や樹脂材料などの軽量部材で構成されているため、作業上の支障はさほど生じない。また、組み上げられた架線拡幅工具を所定の位置に位置決めするのに多少時間がかかることもあるが、中位位置にある電線Cと上位位置にある吊線Dとの間の空間から、架線拡幅工具を所定の位置に位置決めすることができる。
【0085】
上記のいくつかの実施の形態において、架線拡幅作業の対象として、中位位置に2本、下位位置に1本の平行電線と、これらに平行に上位位置に1本の吊線とが菱形配置されてなる架線を例に挙げ、本発明の架線拡幅工具を用いた架線拡幅保持方法について説明してきたが、本発明の架線拡幅工具は、この他、上位位置に2本、下位位置に1本の平行電線が逆三角形状に配置されてなる架線にも適用することができる。この場合、略垂直方向に保持した第1の拡幅ロッド10または第2の拡幅ロッド30の上方側に位置する架線把持具での架線把持作業を省略し、下方側に位置する架線把持具での下位位置にある電線だけを把持した後、拡幅することになる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る架線拡幅具の概要を説明するための斜視図である。
【図2】本発明に係る架線拡幅具の拡幅ロッドを説明するための正面図であり、(a)は第1の拡幅ロッドの外観形状を示し、(b)は第2の拡幅ロッドの外観形状を示すものである。
【図3】本発明に係る架線拡幅具の拡幅ロッドの内部構造を説明するための一部を切り欠いて示す正面図であり、(a)は操作部周辺の正面断面構造を、(b)は掴線移動体部周辺の正面断面構造を示すものであり、(c)は掴線移動体部周辺の側面断面構造を示すものである。
【図4】本発明に係る架線拡幅具の連結具を説明するためのもので、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図5】本発明に係る架線拡幅具を用いた架線拡幅保持方法の実施の形態1における操作手順を説明するための図である。
【図6】本発明に係る架線拡幅具を用いた架線拡幅保持方法の実施の形態2における操作手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0087】
1 架線拡幅工具
10 第1の拡幅ロッド
11 ロッド本体(第1のロッド本体)
12 連結具装着部(連結部)
13 駆動軸
13a 右ネジ
13b 左ネジ
16 掴線移動体(一方側の掴線移動体)
17 架線把持具(把持具)
18 ナット体
19 掴線移動体(他方側の掴線移動体)
20 架線把持具(把持具)
21 ナット体
22 操作部
31 ロッド本体(第2のロッド本体)
32 連結具装着部(被連結部)
33 駆動軸
33a 右ネジ
33b 左ネジ
36 掴線移動体(一方側の掴線移動体)
37 架線把持具(把持具)
38 ナット体
39 掴線移動体(他方側の掴線移動体)
40 架線把持具(把持具)
41 ナット体
42 操作部
50 連結具
51 連結具基台
52 ロッド把持具
53 U字形受け具
54 開閉部材
55 ロックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部位に連結部が設けられた直管状の第1のロッド本体と、
前記第1のロッド本体内に回転可能に支持され、中間部位を境として一方側に右ネジが、他方側に左ネジがそれぞれ形成された駆動軸と、
前記第1のロッド本体の中間部位を境とした一方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の右ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた一方側の掴線移動体と、
前記第1のロッド本体の中間部位を境とした他方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の左ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた他方側の掴線移動体と、
前記第1のロッド本体の一端に設けられ、前記駆動軸を回転させて前記一方側および他方側からなる1対の掴線移動体を、互いに離間または接近する方向に移動させる操作部と、を備えた第1の拡幅ロッドを有すると共に、
中間部位に被連結部が設けられた直管状の第2のロッド本体と、
前記第2のロッド本体内に回転可能に支持され、中間部位を境として一方側に右ネジが、他方側に左ネジがそれぞれ形成された駆動軸と、
前記第2のロッド本体の中間部位を境とした一方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の右ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた一方側の掴線移動体と、
前記第2のロッド本体の中間部位を境とした他方側に、その長手方向のみに移動可能に案内支持され、前記駆動軸の左ネジに螺合するナット体を備えると共に、架線を着脱可能に把持する把持具を備えた他方側の掴線移動体と、
前記第2のロッド本体の一端に設けられ、前記駆動軸を回転させて前記一方側および他方側からなる1対の掴線移動体を、互いに離間または接近する方向に移動させる操作部と、を備えた第2の拡幅ロッドを有し、
前記第1の拡幅ロッドの連結部は、前記第2の拡幅ロッドの被連結部に、第1の拡幅ロッドと第2の拡幅ロッドとが直交状態で、着脱可能に連結されるように構成されている
ことを特徴とする架線拡幅工具。
【請求項2】
前記第1の拡幅ロッドの連結部は連結具を備え、
前記連結具は、前記第1の拡幅ロッドの連結部に該連結具を着脱可能に装着する連結具基台と、該連結具基台に取り付けられ、前記第2の拡幅ロッドの被連結部を受け入れて着脱可能に把持するロッド把持具を備えて構成される請求項1記載の架線拡幅工具。
【請求項3】
前記連結具のロッド把持具は、前記第2の拡幅ロッドの被連結部を受け入れる開口部を有するU字形受け具と、該U字形受け具の開口部を開閉する開閉部材と、該開閉部材を閉止状態で固定するロックピンを備えて構成される請求項2に記載の架線拡幅工具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の架線拡幅工具を用いて、左右1対の架線および上下1対の架線が菱形配置されている架線の相互間隔を拡張し、その状態を保持する架線拡幅保持方法であって、
左右1対の架線または上下1対の架線のいずれか1対の架線を、第1の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具のそれぞれに把持させた後、第1の拡幅ロッドの操作部を操作して駆動軸を回転させることにより、前記1対の掴線移動体を離間方向に移動させ、前記1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持し、
次いで、第1の拡幅ロッドの連結部に、前記第2の拡幅ロッドの被連結部を連結し、第1の拡幅ロッドに対して直交方向に第2の拡幅ロッドを配置し、
次いで、左右1対の架線または上下1対の架線のうちの残りの1対の架線を、第2の拡幅ロッドの1対の掴線移動体の把持具のそれぞれに把持させた後、第2の拡幅ロッドの操作部を操作して駆動軸を回転させることにより、1対の掴線移動体を離間方向に移動させ、前記残り1対の架線間の間隔を拡張してその状態を維持する
ことを特徴とする架線拡幅保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−226896(P2010−226896A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72814(P2009−72814)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)