説明

染毛剤組成物

【課題】毛髪への染色性に優れる染毛剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)一般式(1)で表される化合物、及び(B)酸性染料を含有させて染毛剤組成物とする。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは1〜4、nは1〜3の整数を示す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪への染色性に優れる染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透促進溶剤であるベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の有機溶剤を含有する酸性染毛剤が、毛髪への浸透性が良好な染毛剤として提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、これらの浸透促進溶剤を使用した場合でも、染毛用の毛髪処理剤組成物の染色性は必ずしも十分なものではなかった。
また、浸透性及び透過性を増大させ、かつ生体膜に対する刺激作用及び全身的毒性が低い浸透促進剤として、チオエーテル結合を有するアルキル基をN位に置換してなるアザシクロアルカン誘導体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、各種のピロリドン誘導体を浸透促進剤とした染毛剤組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−210023号公報
【特許文献2】特開平7−101841号公報
【特許文献3】特公平6−43390号公報
【特許文献4】特開平10−194940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、毛髪への染色性に優れる染毛剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、一般式(1)で示される特定の化合物に、酸性染料を含有させた染毛剤組成物が毛髪への高い染色性を有することを見出した。
すなわち、本発明は(A)一般式(1)で表される化合物、及び(B)酸性染料を含有する染毛剤組成物である。
【0006】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは1〜4、nは1〜3の整数を示す)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、毛髪への染色性に優れる染毛剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(A)一般式(1)で表される化合物としては、一般式(1)において、Rが炭素数2〜4、mが2、nが1〜2を満たす整数で表される化合物が好ましい。より具体的には、1−〔2−(エチルチオ)エチル〕アザシクロペンタン−2−オン、1−〔2−(ブチルチオ)エチル〕アザシクロペンタン−2−オン、1−〔2−(ブチルチオ)エチル〕アザシクロヘプタン−2−オンが挙げられ、なかでも、毛髪染色性と安定性の点から、アザシクロペンタノン類、特に1−〔2−(エチルチオ)エチル〕アザシクロペンタン−2−オン、1−〔2−(ブチルチオ)エチル〕アザシクロペンタン−2−オンが好ましい。
【0009】
一般式(1)で表される化合物の合成法としては、公知の方法を用いることができ、例えば実験化学講座20「有機化合物の合成II」(丸善株式会社発行、日本化学会編、1956)、p.58〜59に記載の方法が挙げられる。例えば、下記式に示すように、1−(n−アルケニル)アザシクロアルカン−2−オン(II)とチオール類とを過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤の存在下、反応に関与しない不活性溶媒(例えばベンゼン、トルエン等)中で温度0〜150℃で2〜18時間程度、窒素ガスの存在下又は窒素ガスの不存在下で処理することにより、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。なお、下式中、Rは前記と同じであり、mは2〜4の整数を意味する。
【0010】
【化2】

【0011】
(A)一般式(1)で表される化合物は、単独で又は混合して用いることができ、その含有量は、毛髪染色性の点から、組成物中に1〜40質量%が好ましく、2〜35質量%が更に好ましく、4〜20質量%が特に好ましい。
【0012】
本発明に用いられる成分(B)の酸性染料としては、水溶性酸性染料であれば特に制限されない。具体的には赤色2号(C.I.16185)、赤色3号(C.I.45430)、赤色102号(C.I.16255)、赤色104号の(1)(C.I.45410)、赤色105号の(1)(C.I.45440)、赤色106号(C.I.45100)、黄色4号(C.I.19140)、黄色5号(C.I.15985)、緑色3号(C.I.42053)、青色1号(C.I.42090)、青色2号(C.I.73015)、赤色201号(C.I.15850)、赤色227号(C.I.17200)、赤色230号の(1)(C.I.45380)、赤色231号(C.I.45410)、赤色232号(C.I.45440)、橙色205号(C.I.15510)、橙色207号(C.I.45425)、黄色202号の(1)(C.I.45350)、黄色203号(C.I.47005)、緑色201号(C.I.61570)、緑色204号(C.I.59040)、緑色205号(C.I.42095)、青色202号(C.I.42052)、青色205号(C.I.42090)、かっ色201号(C.I.20170)、赤色401号(C.I.45190)、赤色502号(C.I.16155)、赤色503号(C.I.16150)、赤色504号(C.I.14700)、赤色506号(C.I.15620)、橙色402号(C.I.14600)、黄色402号(C.I.18950)、黄色403号の(1)(C.I.10316)、黄色406号(C.I.13065)、黄色407号(C.I.18820)、緑色401号(C.I.10020)、緑色402号(C.I.42085)、紫色401号(C.I.60730)、黒色401号(C.I.20470)、アシッドブラック52(C.I.15711)、アシッドブルー1(C.I.42045)、アシッドブルー3(C.I.42051)、アシッドブルー62(C.I.62045)、アシッドブラウン13(C.I.10410)、アシッドグリーン50(C.I.44090)、アシッドオレンジ3(C.I.10385)、アシッドオレンジ6(C.I.14270)、アシッドレッド14(C.I.14720)、アシッドレッド35(C.I.18065)、アシッドレッド73(C.I.27290)、アシッドレッド184(C.I.15685)、ブリリアントブラック1(C.I.28440)等が挙げられる。
【0013】
これらの酸性染料は、単独で又は混合して用いることができ、その含有量は、十分な染色効果を達成する観点から、組成物中に0.02〜5質量%が好ましく、0.02〜4質量%が更に好ましく、0.02〜3質量%が特に好ましい。
【0014】
本発明の染毛剤組成物は、酸成分による毛髪、頭皮及び手肌の荒れの防止、酸性染料の浸透を促進させる観点から、pH2.0〜6.0であることが好ましく、pH2.0〜5.0が更に好ましく、pH2.5〜4.0が特に好ましい。
pHの調整は、例えば、乳酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸、又はリン酸、塩酸等の無機酸等を用いて行うことができる。
【0015】
また、本発明の染毛剤組成物には、更に染色性を向上させる目的で、成分(C)として有機溶剤を含有させることができる。
用いることのできる有機溶剤としては、ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、ベンジルグリセロール、N−ベンジルホルムアミド、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p−アニシルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、メチルカルビトール、エチルカルビトール及びプロピルカルビトール等が挙げられる。これらのうち、芳香族アルコール類縁体が好ましく、特に、ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコールが好ましい。
【0016】
成分(C)は、単独で又は混合して用いることができ、その含有量は、染色効果の点から、組成物中に0〜10質量%が好ましく、0.01〜10質量%が更に好ましく、0.01〜5質量%が特に好ましい。
【0017】
本発明の染毛剤組成物には、使用時のたれ落ち防止、頭皮などへの汚着防止の目的で、成分(D)として水溶性高分子を含有させることができる。
水溶性高分子としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ナトリウム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、変性キサンタンガム、ウェランガム、ラボールガム、ジェランガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の1,9−デカジエンによる部分架橋物、ポリエチレングリコール、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト等が挙げられる。これらのうち、特にヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、変性キサンタンガムが好ましい。
これらの水溶性高分子は1種以上を用いることができ、その含有量は、組成物中に0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0018】
本発明の染毛剤組成物には、成分(A)及び(B)の溶解性を高める目的で、低級アルコール又はポリオールを含有させることができる。具体的には、炭素数2〜4のもの、例えばエタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
これらの低級アルコール又はポリオールは1種以上を用いることができ、その含有量は、組成物中に0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%が特に好ましい。
【0019】
更に、本発明の染毛剤組成物には、前記成分のほか、通常の化粧品等に使用し得る成分、例えば、界面活性剤、カチオン性重合体、油性成分、シリコーン誘導体、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、噴射剤等を、目的に応じて適宜配合することができ、本発明の染毛剤組成物は通常の方法に従って製造することができる。
【0020】
本発明の染毛剤組成物は、成分(A)、(B)、及び必要に応じて添加される成分(C)、(D)、pH調整用の酸、その他の成分以外の残部として水、好ましくは精製水、イオン交換水を含有する。水の染毛剤組成物中の含有量は、他の成分の含有量によって変化する。
【0021】
本発明の染毛剤組成物は、通常、クリーム、エマルジョン、ゲル、溶液、ムース状ないしフォーム状等の剤型で提供されるのが好ましい。クリーム、エマルジョン、ゲルまたは溶液の剤型とするには、例えば、本発明の染毛剤組成物に、通常化粧品分野において用いられる湿潤剤(乳化剤)、可溶化剤、安定化剤、感触向上剤、整髪基剤、香料等を添加し、常法に従って製造すればよい。
ここで用いられる湿潤剤(乳化剤)としては、例えば、アルキルベンゼンスルホネート、脂肪アルコールサルフェート、アルキルスルホネート、アシル化アミノ酸類、脂肪酸アルカノールアミド、エチレンオキシドと脂肪アルコールとの付加生成物等のアニオン性、両性及び非イオン性界面活性剤が挙げられ、また、感触向上剤及び整髪基剤としては、例えば、シリコーン誘導体、高級アルコール、各種非イオン界面活性剤等の油性成分、カチオン界面活性剤が挙げられる。
【0022】
ムース状ないしフォーム状の剤型とするのには、例えば、本発明の染毛剤組成物に、通常の界面活性剤(ノニオン系)を1質量%以下及び増粘剤を0.5〜1質量%添加したものを、フロンガス又はプロパン系ガス等の液化噴射ガス(噴射剤)と共にエアゾール缶に充填し、使用時に泡状(ムース状ないしフォーム状)に噴射されるように調製すればよい。
【0023】
本発明の染毛剤組成物を用いて毛髪等の角質繊維の染色を実施するには、例えば、本発明の染毛剤組成物を角質繊維に、温度15〜50℃で適用し、10〜30分前後の作用時間をおいた後、角質繊維を洗浄し、乾燥すればよい。
【0024】
本発明の染毛剤組成物は、毛髪に適用し、毛髪を洗浄後乾燥させると、毛髪に浸透して毛髪を良好に染色すると共に毛髪をしっとり且つなめらかにする。
【実施例】
【0025】
実施例1〜3、比較例1
表1に示す配合組成の染毛剤組成物をそれぞれ調製し、染色性を評価した。
(1)山羊毛への染色性の評価
後記の表1に記載の組成の染毛剤組成物をそれぞれ調製し、得られた染毛剤組成物50
g中に白い山羊毛(1g)のトレスを入れ、30℃で10分間放置した。その後、水洗した後、シャンプーで2回洗浄し、リンス処理を1回行った後、乾燥させた。得られた染色されたトレスについて、色差計を用いて染色前後の色差を測定することにより山羊毛への染色性を評価した。その結果を表1に示した。なお、色差の測定は、ミノルタ株式会社製の測色色差計CM−2002を用いて、L***表色系(ここで、L*は明度、a*は赤―緑方向の色度、b*は黄―青方向の色度を示す。)の色差を測定することにより行なった。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表される化合物、及び(B)酸性染料を含有する染毛剤組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは1〜4、nは1〜3の整数を示す)。
【請求項2】
(A)一般式(1)において、Rが炭素数2〜4、mが2、nが1〜2を満たす整数で表される化合物である請求項1に記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
(A)一般式(1)で表される化合物が、1−〔2−(エチルチオ)エチル〕アザシクロペンタン−2−オン、1−〔2−(ブチルチオ)エチル〕アザシクロペンタン−2−オン、及び1−〔2−(ブチルチオ)エチル〕アザシクロヘプタン−2−オンの中から選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項1に記載の染毛剤組成物。


【公開番号】特開2006−206451(P2006−206451A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16839(P2005−16839)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】