説明

染毛剤組成物

【課題】頭皮や皮膚への着色を生じにくく、毛髪への染色性に優れ、更にはエアゾール状染毛剤とした場合における良好な安定性と吐出時の良好な泡液性を有する染毛剤組成物の提供。
【解決手段】(A)酸性染料、(B)炭化水素油、(C)ポリエーテル変性シリコーン及び(D)γ-カプロラクトンを含有し、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有重量の関係が、(B)/(C)=0.1〜15、かつ〔(B)+(C)〕/(D)=0.01〜2である染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮や皮膚への着色を生じにくく、毛髪への染色性に優れ、エアゾール状染毛剤として好適な染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透溶剤を配合した酸性染毛剤は、毛髪への浸透性は良好であるが、染毛の際、同時に頭皮や肌を着色してしまうという問題点があった。そこで、水溶性高分子等により組成物を増粘させ、塗布時のたれ落ちを防止することで皮膚への着色を低減していたが、本質的な改善はできなかった。また、起泡剤として非イオン界面活性剤を配合したエアゾール状染毛剤とし、泡状に吐出することにより塗布時のたれ落ちを防止する技術も提案されている(特許文献1、2等)。しかし、これらの技術は、単に頭皮等へのたれ落ちを防止して染毛剤と接触しにくくするのみであり、皮膚や頭皮への染色性自体が改善されたわけではなかった。
【0003】
一方、染毛剤の皮膚染色性自体を低減する技術として、有機溶剤と共に、炭化水素油及びポリエーテル変性シリコーンを併用した染毛剤組成物や、特定のラクトン化合物を使用した染毛剤組成物も提案されている(特許文献3〜6)。しかし、その効果は十分なものではなく、皮膚染色性をより一層低減することが望まれていた。
【0004】
また、更には、染毛剤組成物をエアゾール形態とした場合のエアゾール容器内での内液の安定性や、吐出時の泡の良好な延び等、染毛操作上望ましい泡液性の向上も望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61-210023号公報
【特許文献2】特開平7-33629号公報
【特許文献3】特開2002-205927号公報
【特許文献4】特開2002-241245号公報
【特許文献5】特開2002-241246号公報
【特許文献6】特開2002-241247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、頭皮や皮膚への着色を生じにくく、毛髪への染色性に優れ、更にはエアゾール状染毛剤とした場合における良好な安定性と吐出時の良好な泡液性を有する染毛剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酸性染料に、炭化水素油、ポリエーテル変性シリコーン及びγ-カプロラクトンを併用することにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)酸性染料
(B)炭化水素油
(C)ポリエーテル変性シリコーン
(D)γ-カプロラクトン
を含有し、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有重量の関係が、(B)/(C)=0.1〜15、かつ〔(B)+(C)〕/(D)=0.01〜2である染毛剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の染毛剤組成物は、頭皮や皮膚への着色を生じにくく、毛髪への染色性に優れ、更にはエアゾール状染毛剤とした場合における良好な安定性と吐出時の良好な泡液性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
成分(A)の酸性染料としては、水溶性酸性染料であれば特に制限されず、例えば赤色2号(C.I.16185)、赤色3号(C.I.45430)、赤色102号(C.I.16255)、赤色104号の(1)(C.I.45410)、赤色105号の(1)(C.I.45440)、赤色106号(C.I.45100)、黄色4号(C.I.19140)、黄色5号(C.I.15985)、緑色3号(C.I.42053)、青色1号(C.I.42090)、青色2号(C.I.73015)、赤色201号(C.I.15850)、赤色227号(C.I.17200)、赤色230号の(1)(C.I.45380)、赤色231号(C.I.45410)、赤色232号(C.I.45440)、だいだい色205号(C.I.15510)、だいだい色207号(C.I.45425)、黄色202号の(1)(C.I.45350)、黄色203号(C.I.47005)、緑色201号(C.I.61570)、緑色204号(C.I.59040)、緑色205号(C.I.42095)、青色202号(C.I.42052)、青色205号(C.I.42090)、かっ色201号(C.I.20170)、赤色401号(C.I.45190)、赤色502号(C.I.16155)、赤色503号(C.I.16150)、赤色504号(C.I.14700)、赤色506号(C.I.15620)、だいだい色402号(C.I.14600)、黄色402号(C.I.18950)、黄色403号の(1)(C.I.10316)、黄色406号(C.I.13065)、黄色407号(C.I.18820)、緑色401号(C.I.10020)、緑色402号(C.I.42085)、紫色401号(C.I.60730)、黒色401号(C.I.20470)、アシッドブラック52(C.I.15711)、アシッドブルー1(C.I.42045)、アシッドブルー3(C.I.42051)、アシッドブルー62(C.I.62045)、アシッドブラウン13(C.I.10410)、アシッドグリーン50(C.I.44090)、アシッドオレンジ3(C.I.10385)、アシッドオレンジ6(C.I.14270)、アシッドレッド14(C.I.14720)、アシッドレッド35(C.I.18065)、アシッドレッド73(C.I.27290)、アシッドレッド184(C.I.15685)、ブリリアントブラック1(C.I.28440)等が挙げられる。
【0011】
これらの酸性染料は、2種以上を併用することもでき、その含有量は、十分な染色効果と手肌の汚れの少なさの点から、全組成(エアゾール状染毛剤の場合には内液の全組成)中に0.005〜5重量%、特に0.01〜2重量%が好ましい。
【0012】
成分(B)の炭化水素油としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等が挙げられ、これらのうち流動パラフィン、流動イソパラフィンが好ましく、なかでも分子量200〜1000の範囲のものが好ましい。炭化水素油は、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、頭皮や肌に対する着色抑制効果の点、及びべたつき感を生じさせない点から、全組成中の0.05〜20重量%、更に0.1〜10重量%、特に0.1〜5重量%が好ましい。
【0013】
成分(C)のポリエーテル変性シリコーンは、ジメチルポリシロキサンの主鎖にポリオキシアルキレン基、好ましくはポリオキシエチレン基が結合したものであり、HLBが1〜6、特に2〜5であるものが好ましい。特に、エアゾール状染毛剤である場合には、吐出液の泡液性が、HLBが大きくなるにつれ悪化するため、好ましい泡液性を得るためには、HLBが上記範囲内であることが好ましい。またポリオキシエチレン基のほかにポリオキシプロピレン基を有していてもよい。具体的には、シリコーンKF6005、同KF6015、同KF6017、同KF945A、同KF353A、同KF352A(以上、信越化学工業社)、SILWET L-720、同L-7001、同L-7002(以上、日本ユニカー社)、シリコーンSH-3775(東レ・ダウコーニング社)等が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンは、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、塗布時の感触、系の安定性、及び洗い落ちの点から、全組成中の0.001〜30重量%、更に0.01〜10重量%、特に0.1〜2重量%が好ましい。
【0014】
なお、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有重量の関係は以下のとおりである。組成物の相溶性及び適度な粘性、エアゾール状染毛剤としたときの吐出液の良好な泡液性、並びに内液の良好な安定性の点から、(B)/(C)は0.1〜15とされ、好ましくは0.1〜7、特に0.1〜5とされる。また、毛髪に対する染毛性及び皮膚に対する着色防止効果を両立する点から、〔(B)+(C)〕/(D)は0.01〜2とされ、好ましくは0.05〜1.5、特に0.1〜1.2とされる。
【0015】
成分(D)のγ-カプロラクトンは、酸性染料の毛髪への浸透を促進すると共に、皮膚への染着を防止するために用いられる。γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の側鎖を有しないか側鎖が短いラクトンでは染毛性能が十分ではなく、またγ-オクタン酸ラクトンのような長い側鎖を持つラクトンでは水溶性が低いため、染毛性が低く、また皮膚染色性が高くなる。成分(D)の含有量は、全組成中の0.1〜50重量%、更に1〜30重量%、特に5〜20重量%含有させるのが好ましい。
【0016】
更に本発明の染毛剤組成物には、安定性や、塗布時の伸ばしやすさなどの剤としての使用性向上のため、アニオン性又はノニオン性の水溶性高分子を配合することが好ましい。アニオン性高分子としては、キサンタンガム、ウェランガム、ラボールガム、ジェランガム、カルボキシビニルポリマー、グアーガム、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の1,9-デカジエンによる部分架橋物等が挙げられ、ノニオン性高分子としては、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体が挙げられ、特にキサンタンガム、ラボールガムが好ましい。これらの水溶性高分子は2種以上を併用することもでき、全組成中の0.01〜10重量%、更に0.1〜5重量%、特に0.5〜3重量%含有させるのが好ましい。
【0017】
本発明の染毛剤組成物のpHは、染毛の均一さ及び手肌への刺激抑制の観点から、水で10倍に希釈したとき、2〜5であるのが好ましく、更には2〜4.5、特に2.5〜4が好ましい。pH調整剤としては、有機酸、無機酸及びそれらの塩を使用でき、特に有機酸及びその塩が好ましい。有機酸としては、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、レブリン酸、酪酸、シュウ酸等が挙げられ、無機酸としては、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。また、これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩(例えばトリエタノールアミン塩)等が挙げられる。pH調整剤は2種以上を併用することもでき、その使用量は全組成中の0.01〜10重量%、更に0.1〜7重量%、特に1〜5重量%が好ましい。
【0018】
また、本発明の染毛剤組成物には、更なる染色性の向上を得るために、芳香族アルコール系浸透促進剤を併用することもできる。芳香族アルコール系浸透促進剤としては、ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、1-フェニルエチルアルコール、o-メトキシフェノール、p-メチルベンジルアルコール等が挙げられ、特に、ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコールが好ましい。芳香族アルコール系浸透促進剤は、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、毛髪に対する染毛性及び皮膚に対する着色防止効果の点から、全組成中の0〜10重量%、更には0.05〜5重量%、特に0.5〜3重量%が好ましい。
【0019】
更に、本発明の染毛剤組成物には、これらの芳香族アルコール系浸透促進剤又は成分(D)の溶解性を高めるために、低級アルコール又はポリオールを含有させることができる。具体的には、炭素数2〜4のもの、例えば、エタノール、2-プロパノ−ル、1-プロパノール,1-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの低級アルコール又はポリオールは2種以上を併用することもでき、またその含有量は、全組成中の0.1〜30重量%、特に0.1〜15重量%が好ましい。
【0020】
本発明の染毛剤組成物には、毛髪のコンディショニング効果を向上させるため、エステル油、成分(C)以外のシリコーン誘導体、高級アルコール、脂肪酸等を含有させることができる。エステル油としては、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸グリセリル等が挙げられる。シリコーン誘導体としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等が挙げられる。これらは2種以上を併用することもでき、各含有量は、全組成中の0.1〜20重量%、更に0.5〜10重量%、特に1〜5重量%が好ましい。本発明の染毛剤組成物は、以上の各成分を配合し、残部を水性媒体とすることにより調製される。
【0021】
本発明の染毛剤組成物は、そのまま使用することもできるが、成分(E)として噴射剤を組み合わせ、エアゾール状染毛剤とすることが好ましい。成分(E)の噴射剤としては、通常のエアゾール化粧料で使用される公知の液化ガス又は圧縮ガスであればよく、例えば液化天然ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、イソペンタン、炭酸ガス、窒素ガス、空気、これらの混合物等が挙げられる。また、HFC-152a等の代替フロンを使用することもできる。これらの噴射剤は、高い起泡性を得、適度な噴射速度を得るため、エアゾール状染毛剤中に1〜20重量%、特に3〜15重量%配合することが好ましい。また、充填後のエアゾール缶の内圧が0.3〜0.7MPa(25℃)となるように調整充填することが好ましい。
【実施例】
【0022】
実施例1〜2及び比較例1〜5
表1に示す配合組成の酸性染毛剤を製造し、「染毛性」及び「皮膚着色性」を評価した。
【0023】
(1) 染毛性
染毛剤組成物1gを白い山羊毛(1g)のトレスに均一に塗布した後、30℃で15分間放置した。その後お湯で水洗し、シャンプーで2回洗浄し、リンス処理を1回行った後、乾燥させた。測色機(色彩色差計CR-400/ミノルタ製)にて測色した。値が高いほど染毛性に優れることを示す。
【0024】
(2) 皮膚着色性
ヒト上腕部1cm2あたり1gの染毛剤組成物を均一に塗布した後、30℃で15分間放置した。その後お湯で水洗し、シャンプーで2回洗浄し、測色機にて測色した。値が低いほど皮膚着色性が低いことを示す。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例3〜4及び比較例6〜8
表2に示す配合組成のエアゾール状酸性染毛剤を製造し、「染毛性」、「皮膚着色性」、「吐出液延び性」、「容器内液残存性」及び「容器内安定性」を評価した。
【0027】
(1) 染毛性
前記と同じ方法により評価した。
【0028】
(2) 皮膚着色性
前記と同じ方法により評価した。
【0029】
(3) 吐出液延び性
10cm、15gの日本人毛に、2gのエアゾール噴射液を塗布し、くしで延ばす。剤の塗布距離を測定した。
○:10cm(毛先まで延びる)
△:3cm以上10cm未満
×:3cm未満
【0030】
(4) 容器内液残存性
内液と噴射剤を充填した容器内で、内液と噴射剤を混ぜた後噴射する。噴射剤を全量使用した時点での、内液残存割合を評価した。
○:10%未満
△:10%以上50%未満
×:50%以上
【0031】
(5) 容器内安定性
45℃3ヶ月保存後の内液の状態を確認した。
○:安定
×:不安定(油剤分離又は内液固化)
【0032】
【表2】

【0033】
実施例5〜8及び比較例9〜12(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有比率の影響)
表3に示す配合組成のエアゾール状酸性染毛剤を製造し、前記と同様にして「染毛性」、「皮膚着色性」、「吐出液延び性」、「容器内液残存性」及び「容器内安定性」を評価した。
【0034】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)酸性染料
(B)炭化水素油
(C)ポリエーテル変性シリコーン
(D)γ-カプロラクトン
を含有し、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有重量の関係が、(B)/(C)=0.1〜15、かつ〔(B)+(C)〕/(D)=0.01〜2である染毛剤組成物。
【請求項2】
成分(B)が、流動パラフィン又は流動イソパラフィンである請求項1記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の染毛剤組成物及び(E)噴射剤を含むエアゾール染毛剤組成物。

【公開番号】特開2006−63015(P2006−63015A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247649(P2004−247649)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】