説明

染毛料塗布具

【課題】簡単な構成にも関らず、少ない回数で、大量の染毛料を、大きな面積により塗布することが出来、被塗布部以外の手指などを汚染しにくい染毛料塗布具を提供する。
【解決手段】櫛歯先端と塗布体上端との距離と、塗布体と櫛歯を持つ壁面の距離とを調整し、塗布体を柔軟なものとしているため、少ない回数で、大量の染毛料を、大きな面積により塗布することが出来るようにした。また、塗布体、函体、蓋体とからなる構造体を、染毛料のカートリッジ体として扱い、使用状況によって適宜交換することが出来るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛料塗布具、特に染毛料を塗布するとき、手指および頭皮を汚すことなく染毛料を塗布することが出来る染毛料塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛料用の塗布体として液体の染毛料の貯蔵部と、貯蔵部から送出される染毛料を塗布する塗布部と、直接頭皮に塗布部が接触しないように櫛体を塗布部周辺に立てた染毛料の塗布具が提案されている(特許文献1〜5)。これらの染毛料の塗布具は貯蔵部と一体となっており、染毛料の貯蔵、塗布量の制御は可能であるが使用済み容器の廃棄の難しさ、長期不使用時に塗布部の乾燥や防菌性に問題があり、染毛料の注ぎ足しや交換などの簡便性にも問題がある。
これらの他、予め染毛料を含ませておいた含浸体と櫛体を接触させた状態で保管しておき、使用時に櫛体のみを引き抜いて塗布を行う塗布具が提案されている(特許文献6)。この方法によれば、染毛料の供給が簡便に行えるとともに、塗布作業も容易に行えるものであるが、一回に塗布可能な染毛料の量が少なく、手指や頭皮などを汚しやすいという問題がある。
上記従来技術と併行して、櫛体の先端部から離し、根元付近に染毛料を含浸させた塗布体を配置し、染毛料の吐出や送出を省略し、簡便に塗布可能とした塗布具が開発されている(特許文献7〜10)。これらの出願では、塗布の際に手指が汚れにくいことを特徴の一つとして挙げているものの、実際には塗布部が被塗布部(即ち髪の毛)以外のものに接触しやすい機構となっており、染毛料による被塗布部以外への汚染は避け難いものがある。
上記の簡便に塗布可能な塗布具の技術に加え、塗布部に相当する部分が櫛歯、あるいはブラシの毛で囲まれ、目的とする被塗布部以外への接触が起きにくい構成としたものが見られる(特許文献11〜13)。これらの出願では、塗布体に相当する部分は多くの櫛体やブラシの植毛で囲まれているため、塗布体が髪に届かず、あるいは、塗布面積が小さいため、広い範囲の髪に接触出来ず、十分な塗布量で塗布出来ないという問題があり、塗布部を交換するため脱着する場合に、櫛体やブラシの植毛が邪魔になり交換に手間取るという問題がある。さらには、これらの塗布具は、櫛体やブラシの植毛と、塗布部の間隔と、塗布のし易さについて考慮されておらず、使用者にとって塗布し易いとは必ずしも言えない。
【特許文献1】実公昭43−4783
【特許文献2】特開平4−61803
【特許文献3】特開平6−70809
【特許文献4】特開平11−169224
【特許文献5】特開2006−6754
【特許文献6】特開平7−303514
【特許文献7】実開昭51−60396
【特許文献8】実登3071310
【特許文献9】特開2001−190335
【特許文献10】特開2004−357740
【特許文献11】実開昭62−128441
【特許文献12】実開平1−32961
【特許文献13】実登3103404
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記した問題点を考慮し、簡単な構成にも関らず、少ない回数で、大量の染毛料を、大きな面積により塗布することが出来、被塗布部以外の手指などを汚染しにくい染毛料塗布具を提供することを目的とする。更には、染毛料を含浸した塗布部を容易に交換可能で、その際、手指などを汚染しない構造体を提示することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願では、塗布具の櫛体先端の方向を「上方」とし、塗布具の基部、即ち塗布体と塗布具本体が固定されている部分の方向を「下方」としている。
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、染毛料塗布具として、(1)染毛料が含浸され、柔軟性を持つ柱状の塗布体が基部に固定され、前記塗布体より上方に伸びる一連の櫛体が、一辺の縁部に備えられた壁部とを持ち、少なくとも前記柱状塗布体の二つの側面と対向して、前記基部に設けられ、前記塗布体と1mm以上7mm以下の間隔を開けて二つの前記壁部が設けられ、前記一連の櫛体の櫛歯先端は一つの仮想面を共有し、前記櫛歯先端の共有する仮想面と、前記塗布体上端との距離が1mm以上10mm以下であることを特徴とする染毛料塗布具を採用する。
この塗布具では、塗布部より上方に伸びている櫛体を含む壁面に、少なくとも二つの対向する面で囲まれているため、髪への塗布以外に手指などが汚れにくくなっている。また、櫛歯先端と塗布体上端との距離と、塗布体と櫛歯を持つ壁面の距離とを調整し、塗布体を柔軟なものとしているため、少ない回数で、大量の染毛料を、大きな面積により塗布することが出来るようになっている。
【0006】
次に(2)前記塗布体が、少なくとも塗布面側が開口している函体に挿入され、前記函体は前記基部に固定されており、さらに、前記函体と嵌合する蓋体によって覆われ得ることを特徴とする(1)に記載の染毛料塗布具を採用する。
この塗布具では、前記塗布体下方は函体に覆われ、前記の塗布体と壁部との間の隙間に、蓋体の一部が入ることが出来るので、函体に覆いかぶさるような蓋体によって、塗布体の上方が覆われるため、不使用時、染毛料の溶剤の揮発を遅らせる、あるいは防止することが可能となる。
【0007】
さらに(3)前記柱状の塗布体上方側面が平面または曲面から構成されることを特徴とする(1)に記載の染毛料塗布具を採用する。
この塗布具では、櫛体先端の共有する面の形状に合わせ、適宜塗布に最適な塗布体の形状を選択することができる。
【0008】
また(4)前記函体と前記基体が着脱可能であることを特徴とする(2)に記載の染毛料塗布具を採用する。
この塗布具では、函体と基体が取り外し可能であるため、塗布体内に含浸された染毛料を使用し尽くした時、取り外すことが可能となる。そして、新たな塗布体が挿入されている函体を装着することもできる。また、使用し尽くす以前に取り外すような場合、前記(2)の通り、蓋体を取り付けることによって、未使用の染毛料を次回使用時まで保持することも可能となる。
【0009】
(5)前記函体と前記蓋体によって、前記塗布体全面が被覆される、(4)に記載の染毛料塗布具に着脱可能な染毛料塗布体カートリッジを採用する。
ここでは、塗布体、函体、蓋体とからなる構造体を、染毛料のカートリッジ体として扱い、使用状況によって適宜交換することが出来るものである。また、櫛体を備える基体はカートリッジ体を交換することによって何度でも染毛料塗布具として使用出来る。
【0010】
そして(6)さらに、封止体によって密封されることを特徴とする(5)に記載の染毛料塗布体カートリッジを採用する。
この密封によって、前記のカートリッジ体内の染毛料の、未使用時の保管をより完全なものとするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のように構成されているので、次の効果を奏する。
染毛料が含浸された塗布体と櫛体が適度な高さの差(1mm以上10mm以下)で、かつ、適度な配置の間隔(1mm以上7mm以下)としており、前記櫛体が、前記塗布体の少なくとも対向する二つの面で挟む形で配置されているので、染毛料の塗布を、幅広にかつ大量に行うことが出来る。櫛体の突出が塗布体に比べ1mm未満である場合には、塗布体が頭皮などに接触する場合があり、また、櫛体が毛髪を梳いて揃えることが出来ず良好な塗布が施せない。櫛体の突出が10mmを超える場合には、毛髪と塗布体が接触せず塗布が出来なくなる。塗布体と櫛体の配置の間隔が狭くなった場合、即ち間隔が1mm未満となった場合には、櫛体が毛髪を梳いて整列させる前に塗布体と接触することになるため、均一な染毛料の塗布が行えない。また配置の間隔が7mmを超える場合には、梳いて整列させた毛髪が再度乱れ、やはり、均一な塗布を行えない(特に短い毛髪の場合)。
また、一連の櫛体が共有する仮想面とは、平面、あるいは、前記基体はるか上方に中心線を持つ円柱の側面などが挙げられる。好ましくは前記基体はるか上方に中心を持つ球面を挙げることができる。中でも使用者個々人の頭部の球面に合わせた曲面であれば、塗布具は大きな部分で使用者の毛髪と接触することが可能である。但し、前記仮想面が平面であっても塗布を施す部分によっては好適に利用できるものである。例えば、部分染めをしたい時など、共有する面が平面であれば、塗布できる部分が使用者に把握しやすく、簡便に部分的な塗布を行うことができる。
ここで、塗布体を柔軟な多孔質体とすることによって、塗布部をより大きな部分で毛髪と接触出来るようになり、さらに多くの染毛料を塗布することが可能となる。多孔質体の具体的な硬度、即ち、JIS K6253タイプAデュロメータの測定値は60以下であり、好ましくは20以上50以下である。60を超える値であると毛髪等に当っても、元の形状を維持し続け、接触部分の拡大は起きず、塗布量の増大も見込めない。
【0012】
前記塗布体が、函体に挿入された上に基体に固定され、さらにここへ蓋体を被せることによって、塗布作業に一時的な中断時(例えば数時間程度)に、染毛料からの溶媒などの蒸発を防止または抑制することが出来る。前記した通り、一連の櫛歯を備えた壁部と塗布部の間には間隔があるため、塗布部の下方端まで伸びる覆いを備えた蓋体を被せることが出来る。ここで、蓋体が函体と嵌着し塗布部を密閉できる場合には、溶媒などの蒸発を完全に防止できるが、密閉構造ではない場合でも大きく蒸発を抑制することが可能である。
【0013】
さらに、この塗布部、函体、及び蓋体を一つのカートリッジ体として、基体に着脱可能とすることによって、塗布作業の中断時、あるいは塗布体に含浸された染毛料を使用し終えた時に、これを容易に交換可能にし、基体部分は何度も使用することが出来る。このことは、資源の無駄防止の観点の他、前記した使用者個々人に合わせた形態とした基体であれば、継続して使用すべき理由が一層増大するものである。
このカートリッジ体を、さらに封止体によって密閉できる構成とすれば、使用中断時に限らず、未使用時に長期間保管可能となり、一層保存に優れたカートリッジ体となり、次々とカートリッジ体を交換することによって長期に亘り使用できるものとなる。
【0014】
そして、柱状の塗布部の上方側面を塗布すべき部分の状態に応じて、平面としたり、曲面とすることが出来る。曲面の例としては、かまぼこ型、ドーム型などの形状を挙げることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
各図、本出願請求の範囲、要約文中及び本明細書中では、前述した通り、この塗布具において櫛歯の立つ方向を「上方」とし、基体の底部、塗布体及び基体の接続している部分の方向を「下方」としている。
【0016】
第一の実施例を図1(a)及び(b)に示す。これらの図に示す通り、基体10の上方に塗布体20が設けられている。本実施例では塗布体20は直方体の形状となっており、ポリエチレン製の球状微粒子樹脂焼結体から形成されている。球状微粒子焼結体は、文字通り球状微粒子が焼結して三次元構造をとっており、構造体の中に連続した開放空間を有しており、この空間内に液体の染毛料を保持することが可能で、毛細管力によって、染毛料を滲出させることも可能である。この塗布体20は基体10に直接接続され、その側面を囲むように、壁部11が設けられ、壁部11上方に一連の櫛歯12、12…が設けられ、一連の櫛歯12、12…の各頂点は、塗布体20の最上面より高い位置に突出している。把持部100は基体10の一端から伸び、一般のブラシ同様の形状となっている。
本実施例では、壁部11と塗布体20の間隔は3mm、塗布体20の最上面と櫛歯12、12、…の各頂点との、基体表面を基準とした高さの差は、約2mmとしている。
【0017】
第二の実施例を図2(a)及び(b)に示す。塗布体20が函体14に収納され、この函体14に係合する蓋体30によって覆われることが出来る点で第一の実施例と異なっている。図2(a)は蓋体を塗布体20に被せた状態の縦断面図を示したものである。函体14の縁に係合部15が設けられており、蓋体側面中ほどに設けられている段部32と、係合している。蓋体30には、取っ手31が設けられており、脱着が容易に出来るようになっている。図2(b)は、上記の蓋体30を取り去って塗布可能な状態とした時の縦断面図である。塗布体20を収容する函体14は、基体10と接合部13によって固定されている。
【0018】
塗布部を含む函体などをカートリッジ体として、基体10と脱着可能とした第三の実施例を図3〜図6に示す。本実施例において、図3に示す通り、カートリッジ体では第二実施例での接合部13の代わりに係止部13bが設けられ、基体10側の係止部と係止され、また、外れ得る点で異なっている。塗布体20を収納する函体14と蓋体30が係合され、一つのカートリッジ体として取り扱うことが出来、手軽に脱着可能である。ここでは、函体14に孔部14aが設けられている。この孔部14aは塗布体20を函体14から取り出す場合や、塗布時に染毛料が消費されるとき空気置換孔として役に立つ。
【0019】
図4は本第三実施例の基体側の部分断面図である。上記のカートリッジ体での説明の通り、基体側には、カートリッジ体の係止部13bと噛み合って係止される係止部13cが設けられている。本実施例では係止部13cは、基体10に開けられた摺動口10aに摺動自在に嵌合されたレバー16上に設けられている。レバー16上方にはバネ受け16aが設けられ、基体10に備えられている固定部10bに固定された、つるまきバネ17によって、函体14の係止部13bを係止出来る位置に、レバー側の係止部13cを持って来るようレバー16を弾発しており、この状態であればカートリッジ体の脱着は出来ない。レバー16を取っ手100側に後退させ、係止部13cの位置をずらすことによってカートリッジ体を脱着することが可能となる。ここでは、スライドするレバー16は係止部13cを持つ突起部13aの壁部側に、嵌合部13dを設けることによって、基体10から脱落しないようになっている。
カートリッジ体を基体10に嵌着し、蓋体30を外した時の図面が図5である。
一連の部材を組み立て順に表した図面が図6となる。
【0020】
上記のカートリッジ体開口部に封止体を貼り付けた、第四の実施例を図7(a)(b)に示す。図3に示すカートリッジ体とは封止体33が存在している点で第三の実施例とは異なっている。これにより、カートリッジ体の長期保存が可能になり、取り扱いが容易になるものである。
【0021】
図8は塗布体20の上方を、かまぼこ状とした第五の実施例の横断面図であり、塗布対象の形状などによって適宜選択されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は主に染毛料のための塗布具、特にブラシ型の櫛体を持つ塗布具に関し、簡便な塗布具として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本出願明細書記載の第一実施例の染毛料塗布具の上方から見た平面図である。(b)はその横から見た平面図である。
【図2】(a)本出願明細書記載の第二実施例の染毛料塗布具の蓋体をした場合の縦断面図である。(b)は蓋体を外した場合の縦断面図である。
【図3】第三実施例のカートリッジ体の組み立て図である。
【図4】第三実施例の基体の部分断面図である。
【図5】第三実施例のカートリッジ体を装着した場合の部分断面図である。
【図6】第三実施例のカートリッジ体を含む染毛料塗布具の組み立て図である。
【図7】(a)、(b)第四実施例のカートリッジ体の図である。
【図8】第五実施例のカートリッジ体の横断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10…基体、11…壁部、12…櫛体、13…係止部、14…函体、16…レバー、
20…塗布体、30…蓋体、33…封止体















【特許請求の範囲】
【請求項1】
染毛料が含浸され、柔軟性を持つ柱状の塗布体が基部に固定され、
前記塗布体より上方に伸びる一連の櫛体が、一辺の縁部に備えられた壁部とを持ち、
少なくとも前記柱状塗布体の二つの側面と対向して、前記基部に設けられ、
前記塗布体と1mm以上7mm以下の間隔を開けて二つの前記壁部が設けられ、
前記一連の櫛体の櫛歯先端は一つの仮想面を共有し、
前記櫛歯先端の共有する仮想面と、前記塗布体上端との距離が
1mm以上10mm以下であることを特徴とする染毛料塗布具。
【請求項2】
前記塗布体が、
少なくとも塗布面側が開口している函体に挿入され、
前記函体は前記基部に固定されており、
さらに、前記函体と嵌合する蓋体によって覆われ得ることを
特徴とする請求項1に記載の染毛料塗布具。
【請求項3】
前記柱状の塗布体上方側面が平面または曲面から構成されることを特徴とする
請求項1に記載の染毛料塗布具。
【請求項4】
前記函体と前記基体が着脱可能であることを
特徴とする請求項2に記載の染毛料塗布具。
【請求項5】
前記函体と前記蓋体によって、
前記塗布体全面が被覆される、請求項4に記載の染毛料塗布具に
着脱可能な染毛料塗布体カートリッジ。
【請求項6】
さらに、封止体によって密封されることを特徴とする
請求項5に記載の染毛料塗布体カートリッジ。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−54877(P2008−54877A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234623(P2006−234623)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】