説明

染色用レンズ保持具

【課題】加熱炉内の風の影響を受けることなく加熱炉内で眼鏡用レンズを保持できる染色用レンズ保持具を提供する。
【解決手段】眼鏡用レンズ2を収容する閉じた空間を形成可能な外殻部4を備える。眼鏡用レンズ2を前記外殻部4の内部でレンズ面2a,2bが上下方向を指向するとともに水平方向への移動が規制されるように支える載置部5を備える。外殻部4は、レンズ用出入口6が形成された本体7と、レンズ用出入口6に接続された蓋体8とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料が付着した眼鏡用レンズを熱風炉で加熱するときに使用する染色用レンズ保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用レンズに着色する方法の一つに昇華染色法がある。この昇華染色法は、先ず、昇華性染料を昇華させて眼鏡レンズに付着させ、その後、眼鏡用レンズを加熱炉内で加熱して眼鏡レンズに前記染料を浸透させることにより実施する。
従来の前記加熱炉は、炉内の温度を所定の温度に保つために、高温の空気を炉内で循環させる構造のものが多い。
【0003】
ところで、眼鏡用として使用されるプラスチックレンズは、たとえば特許文献1に記載されているように、アニールのために加熱炉で加熱されることがある。特許文献1に開示されているプラスチックレンズの製造方法は、プラスチックレンズをアニール用のレンズ保持具に保持された状態で加熱炉に装填して実施される。このレンズ保持具は、プラスチックレンズの熱変形を抑えるためのもので、プラスチックレンズを収容可能なリング状に形成されている。
【0004】
このレンズ保持具の内周部には、レンズ面が上下方向を指向する状態でプラスチックレンズの外周部を支承するレンズ載置部が設けられている。このレンズ載置部には、作業者がプラスチックレンズを把持するときに指を挿入できるように切り欠きが形成されることがある。この場合のレンズ載置部は、プラスチックレンズの外周部を複数の支持点で支持することになる。
このようなレンズの熱変形を抑制するレンズ保持具は、染料が付着した眼鏡用レンズを加熱炉内で加熱する場合にも使用することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−108622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、染料が付着した眼鏡用レンズを加熱炉で加熱すると、染料の浸透時に浸透斑が生じてしまうことがあった。この主な原因は、高温の空気が加熱炉の炉内を流れ、レンズ面に当たるからである。すなわち、レンズ面には、加熱炉内の高温な空気が当たった相対的に温度が高い部位と、前記空気が当たらない相対的に温度が低い部位とが生じる。このようにレンズ面の温度が不均等になるために、上述したように浸透斑が形成されると考えられる。
【0007】
また、レンズの外周部を複数の支持点で支承する構造のレンズ保持具を使用した場合(特許文献1参照)は、レンズ保持具に接触している部位と、そうでない部位とでレンズの温度が異なり、レンズに温度勾配が生じる。このような場合は、染料の浸透する条件が均等ではなくなるために、上述したように浸透斑が生じることになる。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、加熱炉内の風の影響を受けることなく加熱炉内で眼鏡用レンズを保持できる染色用レンズ保持具を提供することを第1の目的とする。また、前記染色用レンズ保持具において、眼鏡用レンズに温度勾配が生じることがないようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る染色用レンズ保持具は、眼鏡用レンズを収容する閉じた空間を形成可能な外殻部と、前記眼鏡用レンズを前記外殻部の内部でレンズ面が上下方向を指向するとともに水平方向への移動が規制されるように支える載置部とを備え、前記外殻部は、レンズ用出入口が形成された本体と、前記レンズ用出入口に接続された蓋体とによって構成されているものである。
【0010】
本発明は、前記発明において、前記本体は、前記レンズ用出入口が上方に向けて開口するすり鉢状に形成され、前記載置部は、前記本体の内周部に階段状に形成された複数の平面視円環状の段部によって構成されているものである。
【0011】
本発明は、前記発明において、前記外殻部は、前記本体に前記蓋体を開閉自在に連結する連結部をさらに備えているものである。
【0012】
本発明は、前記発明において、前記本体と前記蓋体とのうち少なくとも蓋体には、前記外殻部の内部と外部とを連通する連通口が形成されているとともに、この連通口の開口面積を変更可能な蓋部材が取付けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る染色用レンズ保持具は、眼鏡用レンズが載置部に載置され、本体のレンズ出入口に蓋体が接続されることによって、加熱炉で加熱可能な状態になる。加熱炉内の熱は、前記染色用レンズ保持具を介して眼鏡用レンズに伝達される。加熱時に加熱炉内を流れる空気は、染色用レンズ保持具の外殻部で遮られるために、眼鏡用レンズに当たることはない。
したがって、加熱炉内の風の影響を受けることなく眼鏡用レンズを加熱炉内で加熱することが可能な染色用レンズ保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る染色用レンズ保持具の構成を説明するための断面図である。
【図2】本発明に係る染色用レンズ保持具の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】外殻部の本体を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は(A)図におけるB−B線断面図である。
【図4】外殻部の蓋体を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は(A)図におけるB−B線断面図である。
【図5】連結用ピンの正面図である。
【図6】眼鏡用レンズを保持している状態を示す染色用レンズ保持具の断面図である。
【図7】他の実施の形態による外殻部の本体を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は(A)図におけるB−B線断面図である。
【図8】他の実施の形態による外殻部の蓋体を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は(A)図におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る染色用レンズ保持具の一実施の形態を図1〜図6によって詳細に説明する。
本発明に係る染色用レンズ保持具の具体的な実施の形態を説明する前に、先ず、図1によって染色用レンズ保持具の基本的な構成について説明する。
【0016】
図1に示す染色用レンズ保持具1は、染料(図示せず)を付着させた眼鏡用レンズ2を保持し、図示していない加熱炉内に装填するためのものである。前記染料は、昇華染色法や転写法などによってレンズ面2a,2bに付着されている。本発明に係るレンズ保持具1は、一方のレンズ面のみに染料が付着している眼鏡用レンズや、両方のレンズ面にそれぞれ染料が付着している眼鏡用レンズを保持することができるものである。
【0017】
この染料は、加熱炉内で眼鏡用レンズ2が加熱されることによって、レンズ面2a,2b内に浸透し、レンズ2を染色する。
前記加熱炉は、炉内に高温の空気を循環させる、いわゆる熱風炉と呼称されているもので、レンズ保持具1を載せるための支持台3を備えている。この支持台3は、多数のレンズ保持具1を載せることができる大きさに形成されている。
【0018】
レンズ保持具1は、眼鏡用レンズ2を収容する閉じた空間Sを形成可能な外殻部4と、眼鏡用レンズ2を外殻部4の内部で支える載置部5とを備えている。
前記外殻部4は、レンズ用出入口6が形成された本体7と、前記レンズ用出入口6に接続された蓋体8とによって構成されている。本体7と蓋体8とは、図1に示すように上下方向に分割可能に形成する他に、図示してはいないが、水平方向に分割可能に形成することができる。
【0019】
前記載置部5は、眼鏡用レンズ2のレンズ面2a,2bが上下方向を指向するとともに、水平方向への移動が規制されるように眼鏡用レンズを支えるように構成されている。なお、載置部5は、眼鏡用レンズ2を凹面(レンズ面2a)が上方を指向する状態で支える構成に限定されることはなく、眼鏡用レンズ2の凸面(レンズ面2b)が上方を指向する状態で支える構成を採ることが可能である。
【0020】
この染色用レンズ保持具1に眼鏡用レンズ2を保持させるためには、先ず、本体7から蓋体8を外してレンズ用出入口6を露出させる。次に、染料が付着している眼鏡用レンズ2をレンズ用出入口6に上方から挿入し、載置部5に載置させる。しかる後、蓋体8を本体7に接続し、レンズ用出入口6を閉塞する。このように本体7に蓋体8が接続されることによって、眼鏡用レンズ2が閉じた空間S内に収容され、加熱炉で加熱可能な状態になる。
【0021】
眼鏡用レンズ2を上述したように収容したレンズ保持具1は、加熱炉の支持台3の上に載せられる。加熱時において、加熱炉内の熱は、レンズ保持具1を介して眼鏡用レンズ2に伝達される。加熱時に加熱炉内を流れる空気は、レンズ保持具1の外殻部4で遮られるために、眼鏡用レンズ2に当たることはない。
したがって、加熱炉内の風の影響を受けることなく眼鏡用レンズ2を加熱炉内で加熱することが可能な染色用レンズ保持具1を提供することができる。
【0022】
次に、本発明に係る染色用レンズ保持具の具体的な実施の形態を図2〜図4によって詳細に説明する。これらの図において、前記図1によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図2に示すレンズ保持具1の外殻部4は、本体7の上に蓋体8が重ねられる構造のもので、詳細は後述するが、前記本体7に前記蓋体8を開閉自在に連結する連結部11を備えている。この実施の形態による本体7と蓋体8とは、金属または耐熱性を有するプラスチックによって形成されている。本体7と蓋体8を形成する金属材料としては、たとえばアルミニウム合金が挙げられる。また、前記耐熱性を有するプラスチックとしては、たとえばフッ素樹脂がある。
【0023】
この実施の形態による前記本体7は、図3に示すように、レンズ用出入口6が上方に向けて開口するすり鉢状に形成されている。この本体7の内周部は、上方に向かうにしたがって内径が次第に大きくなるように階段状に形成されている。このため、本体7には、図3(A)に示すように、平面視において、多数の円環状の段部12が同心円状に形成されている。この実施の形態においては、このように本体7の内周部に階段状に形成された複数の平面視円環状の段部12によって、載置部5が構成されている。
【0024】
この載置部5を構成する各段部12は、図3(B)に示すように、平面視円環状の水平な載置面12aと、この載置面12aの外周縁から上方に延びる円筒面12bとによって構成されている。各段部12の円筒面12bの高さは一定である。また、段部12の内径(本体7における円筒面12bが形成されている部分の内径)は、眼鏡用レンズ2が挿入可能な大きさに形成されている。
【0025】
最も上に位置する段部12の内径は、最も大きな外径の眼鏡用レンズ2を載せることができるような大きさに形成されている。その他の段部12の内径は、上から下に向かうにしたがって一定寸法ずつ小さくなるように形成されている。この実施の形態による載置部5においては、最も上に位置する段部12の内径はφ90に形成され、その他の段部12の内径は、上から下に向かうにしたがってφ2ずつ小さくなるように形成されている。最も下に位置する段部12の内径はφ50である。このように形成された載置部5においては、φ60〜φ80に形成されている一般的な眼鏡用レンズ2の全てを保持することができる。なお、図3は、載置部5の構成を理解し易いように、段部12の数を減らした状態で描いてある。
【0026】
本体7の上端部には、連結部11の一部を構成する一対の支持片13,14が一体に形成されている。これらの支持片13,14は、所定の間隔をおいて互いに対向するように形成されている。また、これらの支持片13,14には、連結用ピン15(図5および図6参照)が挿通される貫通孔16が穿設されている。この貫通孔16は、両支持片13,14を水平方向に貫通するように形成されている。前記連結用ピン15は、図6に示すように、軸部15aと頭部15bとによって構成されている。軸部15aには、図示してはいないが、支持片13,14から抜けることを防ぐために脱落防止構造が採られている。この脱落防止構造としては、軸部15aに螺着するナットや割ピンなどが挙げられる。
【0027】
この実施の形態による蓋体8は、図4に示すように、下方に向けて開口するすり鉢状に形成されている。蓋体8のすり鉢状の部分は、前記本体7のすり鉢状の部分と同一の形状、寸法に形成されている。この蓋体8の内周部には、多数の段部21が形成されている。これらの段部21は、前記本体7の載置部5と同一となるように形成されている。すなわち、蓋体8の内周部は、下方に向かうにしたがって内径が次第に大きくなるように階段状に形成されている。このため、蓋体8には、下方から見て多数の円環状の段部21が同心円状に形成されている。
【0028】
蓋体8の各段部21は、図4(B)に示すように、下方から見て円環状の水平な面21aと、この面21aの外周縁から下方に延びる円筒面21bとによって構成されている。各段部21の円筒面21bの高さは一定である。各段部21の内径は、下から上に向かうにしたがって一定寸法ずつ小さくなるように形成されている。なお、図4は、段部21の数を減らした状態で描いてある。
【0029】
このように蓋体8に多数の段部21を形成することによって、蓋体8を本体7の上に重ねた状態で眼鏡用レンズ2の上方に隙間が形成されるようになる。このため、眼鏡用レンズ2の上端部が蓋体8に接触することを防ぐことができる。
蓋体8の下端部には、前記本体7の支持片13,14と協働して連結部11を構成する連結片22が一体に形成されている。この連結片22は、前記一対の支持片13,14どうしの間に挿入できる大きさに形成されている。また、この連結片22には、前記連結用ピン15が挿通される貫通孔23が穿設されている。蓋体8は、前記連結用ピン15を前記支持片13,14と連結片22とに挿通させることによって、この連結用ピン15を介して本体7に開閉自在に連結される。
【0030】
この実施の形態によるレンズ保持具1に眼鏡用レンズ2を保持させるためには、先ず、図6中に二点鎖線で示すように、蓋体8の回動端部を上方に持ち上げて蓋体8を開き、本体7の上端部に開口しているレンズ用出入口6を露出させる。そして、眼鏡用レンズ2をレンズ用出入口6に上方から挿入し、載置部5の所定の段部12に載置させる。このように眼鏡用レンズ2を載置部5に載せることによって、眼鏡用レンズ2の外周部が全周にわたって段部12に支承される。
【0031】
この状態においては、眼鏡用レンズ2の外周面が段部12の円筒面12bと対向するようになるから、眼鏡用レンズ2の水平方向への移動が規制される。すなわち、レンズ保持具1を僅かに傾斜させたとしても、眼鏡用レンズ2がレンズ保持具1内で大きく遊動することはない。
眼鏡用レンズ2が載置部5に載置された後、図6中に実線で示すように、蓋体8を閉じ、本体7の上端部に重ねる。このように蓋体8が閉じられることによって、眼鏡用レンズ2の周囲に閉空間Sが形成される。このため、レンズ保持具1で眼鏡用レンズ2の周囲全域を覆うことができるから、加熱時に加熱炉内を流れる空気が眼鏡用レンズ2に当たることを確実に防ぐことができ、むらが生じないように染色を行うことができる。
【0032】
この実施の形態による前記本体7は、レンズ用出入口6が上方に向けて開口するすり鉢状に形成されている。また、この実施の形態による前記載置部5は、前記本体7の内周部に階段状に形成された複数の平面視円環状の段部12によって構成されている。このため、眼鏡用レンズ2は、複数の段部12のうち、外周部と対応する位置にある段部12に支承される。眼鏡用レンズ2が段部12に支承されている状態において、眼鏡用レンズ2の外周部は、周方向の全域にわたって段部12に接触する。この結果、この実施の形態によれば、加熱時に眼鏡用レンズ2の外周部が均等に加熱されるから、より一層むらが生じ難い染色用レンズ保持具1を提供することができる。
【0033】
この実施の形態による外殻部4は、前記本体7に前記蓋体8を開閉自在に連結する連結部11を備えている。このため、蓋体8を開くことによってレンズ用出入口6が露出するから、眼鏡用レンズ2を外殻部4に対して出し入れする作業を容易に行うことができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
本発明に係る染色用レンズ保持具は、図7および図8に示すように、外殻部内を換気可能に構成することができる。
図7および図8において、前記図1〜図6によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0035】
図7に示す本体7と、図8に示す蓋体8は、図2〜図6に示したものとは後述する換気構造31,32を除いて同一となるように形成されている。
図7に示す本体7の換気構造31は、本体7の底壁7aに形成された連通口33と、前記底壁7aの下部に連結用ピン34によって取付けられた蓋部材35とによって構成されている。一方、図8に示す蓋体8の換気構造32は、蓋体8の上壁8aに形成された連通口36と、前記上壁8aの上部に連結用ピン37によって取付けられた蓋部材38とによって構成されている。
【0036】
前記本体7の連通口33は、本体7の内部と外部とを連通するように本体7の底壁7aに穿設されている。前記蓋体8の連通口36は、蓋体8の内部と外部とを連通するように蓋体8の上壁8aに穿設されている。
前記蓋部材35,38は、それぞれ円板によって形成されており、ピン34,37によって本体7や蓋体8に回動自在に取付けられている。
蓋部材35,38は、図7(A)および図8(A)に示すように、前記連通口33,36の穴径より大きく形成されている。蓋部材35,38を形成する材料は、本体7や蓋体8を形成する材料と同一のものを用いることができる。
【0037】
前記連結用ピン34,37は、前記底壁7aや上壁8aを上下方向に貫通しており、蓋部材35,38を回動自在に支持している。このピン34,37によって支持された蓋部材35,38は、図7(A)および図8(A)中に実線で示す閉塞位置と、これらの図において二点鎖線で示す開放位置との間で回動することができる。蓋部材35,38が閉塞位置に位置している状態においては、連通口33,36が蓋部材35,38によって閉塞される。蓋部材35,38が開放位置に位置している状態においては、連通口33,36が開放され、本体7や蓋体8の内部と外部とが連通される。蓋部材35,38が前記閉塞位置と前記開放位置との間に位置している状態においては、連通口33,36の開口面積を変えることができ、連通口33,36を通る空気の量を調整することができる。
【0038】
この実施の形態によるレンズ保持具1は、外殻部4内に眼鏡用レンズ2を収容した後に本体7の連通口33と蓋体8の連通口36とを開口面積が所定の大きさとなるように開くことができる。このため、この実施の形態によれば、外殻部4内を換気可能な状態で加熱炉によって加熱することができる。この結果、加熱中に外殻部4内の圧力が過度に上昇したり、眼鏡用レンズ2の周囲に染色を妨げるようなガスが滞留することを防ぐことができるから、さらに良好な染色結果を得ることができる。なお、この実施の形態においては本体7と蓋体8の両方にそれぞれ換気構造31,32を設ける例を示したが、換気構造は、本体7と蓋体8とのうち、少なくとも蓋体8にあればよい。
【0039】
また、上述した第1、第2の実施の形態に示す蓋体8は、連結部11を除く他の部分が本体7と同一となるように形成されている。このため、加熱炉内で空気が流動することがないか、流動したとしても無視できる程度であるような場合は、眼鏡用レンズ2を本体7と蓋体8との両方に支持させて加熱炉に装填することができる。この場合は、連結部11の連結用ピン15を引き抜いて蓋体8を本体7から外し、この蓋体8を上下方向に反転させて使用する。
【符号の説明】
【0040】
1…染色用レンズ保持具、4…外殻部、5…載置部、7…本体、8…蓋体、11…連結部、12,21…段部、15…連結用ピン、33,36…連通口、35,38…蓋部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡用レンズを収容する閉じた空間を形成可能な外殻部と、
前記眼鏡用レンズを前記外殻部の内部でレンズ面が上下方向を指向するとともに水平方向への移動が規制されるように支える載置部とを備え、
前記外殻部は、レンズ用出入口が形成された本体と、前記レンズ用出入口に接続された蓋体とによって構成されていることを特徴とする染色用レンズ保持具。
【請求項2】
請求項1記載の染色用レンズ保持具において、前記本体は、前記レンズ用出入口が上方に向けて開口するすり鉢状に形成され、
前記載置部は、前記本体の内周部に階段状に形成された複数の平面視円環状の段部によって構成されていることを特徴とする染色用レンズ保持具。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の染色用レンズ保持具において、前記外殻部は、前記本体に前記蓋体を開閉自在に連結する連結部をさらに備えていることを特徴とする染色用レンズ保持具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか1つに記載の染色用レンズ保持具において、前記本体と前記蓋体とのうち少なくとも蓋体には、前記外殻部の内部と外部とを連通する連通口が形成されているとともに、この連通口の開口面積を変更可能な蓋部材が取付けられていることを特徴とする染色用レンズ保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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