説明

柔軟剤組成物

【課題】衣料に対する柔軟性付与効果に優れ、且つその優れた柔軟性付与効果が、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な条件下でも、変動せずに安定に発現する柔軟剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)特定のモノマー単位(a1)、(a2)を特定のモル比で含有するポリマー又はその酸塩、(b)重量平均分子量が10万〜2000万であり、且つN質量%が0.40〜5.0であるカチオン化多糖、及び(c)分子内に炭素数15〜21の炭化水素基を1〜3個含有する3級アミン、その酸塩又は4級化物から選ばれる1種以上の化合物を、特定条件で含有する柔軟剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭での洗濯において、衣料に柔軟性を付与するために、様々な柔軟剤組成物が開示されている。例えば、特許文献1にはカチオン化デンプンを含有し、改善された布地手触り及び/又は柔軟化を提供する布地ケア組成物が開示されている。特許文献2にはアミン布地柔軟活性剤とアミン布地柔軟活性剤の陽イオン電荷密度を増強するための材料を含有する、洗濯操作のすすぎサイクルに用いるアミン布地柔軟剤組成物が開示されている。陽イオン電荷密度を増強するための材料の一つとして、カチオンポリマーが開示されている。特許文献3及び特許文献4には特定のカチオン化ポリマーを含有する柔軟性能に優れた柔軟剤組成物が開示されている。特許文献5には、カチオンポリマー、特定のアミン化合物、その塩又は4級化物、及びカルシウムイオン等を特定量含有する濯ぎ水中で繊維製品を濯ぎ処理し、洗浄水や濯ぎ水の量が少なく、濯ぎが十分に行われない状態であっても優れた柔軟効果を付与できる繊維製品の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−515040号公報
【特許文献2】特開2001−512187号公報
【特許文献3】特開2008−144316号公報
【特許文献4】特表2000−503735号公報
【特許文献5】特開2009−299210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の洗濯機は大容量化が進み、かつ洗濯機の節水設計などのエコロジー対応がなされている。一方、消費者においても洗濯衣料を大量に詰め込み洗濯することによって、洗濯槽内の水の量に対して、洗濯物の重量が増えることが起こっている(低浴比)。低浴比環境で柔軟剤を使用すると、洗浄工程から持ち越される洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)がすすぎ工程に多く持ち越される。すすぎ水中の残留洗剤成分の量が増えることで、すすぎ水に投入した柔軟剤組成物中の柔軟基剤の衣料への吸着量が阻害され、柔軟性能が下がることが確認されている。また、洗濯衣料の量や種類は常に一定ではなく、消費者の生活行動によって、その量や種類は変化する。洗濯衣料の量や種類が変化すると、洗浄工程からすすぎ工程に持ち越される洗剤成分の量が変化する。すすぎ水中の洗剤成分の量が変化すると、衣料の量に対して一定量の柔軟剤を使用しても、仕上がった衣料の柔らかさも変わり、一定の柔らかさが得られないという課題がある。特許文献2〜4には、すすぎ工程の持ち越される洗剤成分による柔軟性の低下の課題が示唆されているが、すすぎ水中の陰イオン界面活性剤等の量が変化した場合の衣料の仕上がりが変わるという課題やその解決手段の示唆はない。また、特許文献5のように、洗浄水や濯ぎ水の量が少なく、濯ぎが十分に行われない状態であっても優れた柔軟効果を付与できる効果に加え、更に濯ぎ条件にかかわらず一定の柔軟効果を衣料に付与できることも、使用者の嗜好の多様化に応えるためには望ましい。
【0005】
本発明の課題は、衣料に対する柔軟性付与効果に優れ、且つその優れた柔軟性付与効果が、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な条件下でも、変動せずに安定に発現する柔軟剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)成分/(b)成分=0.1〜20であり、且つ(C)成分と、(a)成分及び(b)成分の合計の質量比が(c)成分/[(a)成分+(b)成分]=5〜30である柔軟剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で示されるモノマー単位(a1)及び下記一般式(2)で示されるモノマー単位(a2)を(a1)/{(a1)+(a2)}=0.52〜1.0のモル比で含有するポリマー又はその酸塩
【0007】
【化1】

【0008】
〔一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは−COO−R6−、−CONR7−R8−を示す。R4、R5はそれぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜3の炭化水素基、又は水素原子を示す。R6、R8は、それぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜4のアルキレン基、R7は水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
【0009】
【化2】

【0010】
〔一般式(2)中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはアリール基、−O−CO−R13、−COO−R14、又は−CONR15−R16を示す。R13、R14、R16は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基基を示し、R15は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
(b)成分:重量平均分子量が10万〜2000万であり、且つN質量%が0.40〜5.0であるカチオン化多糖
(c)成分:分子内に炭素数15〜21の炭化水素基を1〜3個含有する3級アミン、その酸塩又は4級化物から選ばれる1種以上の化合物
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衣料に対する柔軟性付与効果に優れ、且つその優れた柔軟性付与効果が、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な条件下でも、変動せずに安定に発現する柔軟剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(a)成分>
(a)成分は、下記一般式(1)で示されるモノマー単位(a1)及び下記一般式(2)で示されるモノマー単位(a2)を(a1)/{(a1)+(a2)}=0.52〜1.0のモル比で含有するポリマー又はその酸塩である。
【0013】
【化3】

【0014】
〔一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは−COO−R6−、−CONR7−R8−を示す。R4、R5はそれぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜3の炭化水素基、又は水素原子を示す。R6、R8は、それぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜4のアルキレン基、R7は水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
【0015】
【化4】

【0016】
〔一般式(2)中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはアリール基、−O−CO−R13、−COO−R14、又は−CONR15−R16を示す。R13、R14、R16は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基を示し、R15は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
【0017】
一般式(1)で表される化合物のうち、本発明の効果をより享受できる点で、R1は水素原子、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。R2、R3基は水素原子が好ましい。R4、R5は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は2−ヒドロキシエチル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。R6、R8はエチレン基、プロピレン基が好ましい。R7は水素原子が好ましい。
【0018】
一般式(1)中のXが−COO−R6−である化合物としては、特に制限されるものではないが、直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート、置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
具体的には、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
また、一般式(1)で表される化合物のうち、一般式(1)中のXが−CONR7−R8−である化合物としては、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ここで(メタ)アクリルアミドとはアクリル酸ミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0021】
一般式(1)で示される化合物は、その酸塩を用いることができる。酸塩としては、塩酸塩、硫酸などの無機酸との中和塩、炭素数1〜8のカルボン酸、炭素数1〜8のスルホン酸等の各種有機酸の中和塩が挙げられる。
【0022】
また、モノマー単位(a2)の由来となる、一般式(2)で表される化合物としては、例えば、ラウリルアクリレート等のアクリル酸アルキル(炭素数1〜22)エステル、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキル(炭素数1〜22)エステル、スチレン、アクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレートの好適な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、又はベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリレートの好適な例としては、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、キシリル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
、直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリルアミド、置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリルアミド、、N−(メタ)アクリロイルモルホリン又は(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0026】
直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリルアミドの好適な例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、又はN−イソブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0027】
置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリルアミドの好適な例としては、フェニル(メタ)アクリルアミド、トルイル(メタ)アクリルアミド、キシリル(メタ)アクリルアミド、又はベンジル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
N−(メタ)アクリロイルモルホリン又は(メタ)アクリルアミドも好ましいビニルモノマーの一例である。
【0029】
(a)成分は、モノマー単位(a1)由来の構成単位とモノマー単位(a2)由来の構成単位を、(a1)/{(a1)+(a2)}=0.52〜1.0のモル比含有する高分子化合物である。柔軟性能の観点から、このモル比は、好ましくは0.60〜1.0、より好ましくは0.80〜0.95である。
【0030】
(a)成分は、モノマー単位(a1)、(a2)以外のモノマー単位として、共重合可能な不飽和結合含有モノマー〔モノマー(a3)〕に由来するモノマー単位〔モノマー単位(a3)〕を本発明の効果を損なわない範囲で有しても良い。かかるモノマー(a3)としては、例えば、ビニルアルコール;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜100)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの重合度が1〜50)、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート(ブチレングリコールの重合度が1〜50)等のポリアルキレン(アルキレン基の炭素数1〜8;直鎖もしくは分岐鎖)オキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有するビニル化合物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル化合物等が例示される。これらのモノマー(a3)の共重合量は、モノマー全量に対して40モル%未満、好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは10モル%未満である。従って、(a)成分は、全モノマー単位中、モノマー単位(a1)及びモノマー単位(a2)の合計が、60モル%以上、更に70モル%以上、更に90モル%以上であることが好ましく、上限は100モル%であってもよい。
【0031】
また、(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜1,000,000、更に3,000〜500,0000、特に5,000〜200,000が好ましい。MwとMnの比Mw/Mnは、1.0〜40、更に1.5〜35が好ましい。
【0032】
尚、本発明の(a)成分のMw、Mw/Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、水、アルコール(エタノール等)、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びこれらの溶媒を組み合わせた液の何れかを使用し、ポリエチレンオキシド又はポリスチレン換算の分子量とする。
【0033】
その際、測定対象のポリマーが、モノマー単位(a1)の割合が大きく親水性であると考えられる場合は、(1%酢酸/エタノール):水=3:7(質量比)の混合溶媒で調製したLiBrの50mmol/L溶液を溶媒として、極性溶媒用GPCカラム「α−M(東ソー(株)製)」を2本直列して用い、ポリエチレングリコール換算の分子量により算出する(測定法A)。一方、後述の実施例で比較のポリマーとして用いたa’−1のようなモノマー単位(a2)の割合が大きく、ポリマーが疎水性であると考えられる場合は、ファーミンDM20(花王(株)製)の1mmol/L−CHCl3溶液にて、有機溶媒用GPCカラム「K−804(昭和電工(株)製)」を2本直列して用い、ポリスチレン換算の分子量により算出する(測定法B)。
【0034】
<(b)成分>
本発明の(b)成分はカチオン化多糖であり、その主骨格を形成する多糖類としては、塊茎類、豆科植物類、穀物及び穀粒類を含む様々な供給源から選択することができる。カチオン化多糖の主骨格を形成する多糖類としては、特に制限されるものではないが、セルロース、澱粉、デキストラン、ローカストビーンガム、グアーガム、プルラン、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、又はカードラン等が挙げられ、セルロース、澱粉が挙げられる。澱粉として好ましくはコーンスターチ、小麦スターチ、ライススターチ、ワクシーコーンスターチ、オート麦スターチ、キャッサバスターチ、ワクシー大麦スターチ、ワクシーライススターチ、グルテン状ライススターチ、スイートライススターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ、オート麦スターチ、サゴスターチ、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましくはセルロース及び澱粉から選ばれる多糖類である。
【0035】
本発明において、多糖類にカチオン基を導入する方法は特に限定されず、例えば、多糖類とアミノアルキル化試薬又は四級アンモニウムアルキル化試薬を、20〜80℃、1〜24時間反応させることにより得られる。アミノアルキル化試薬又は四級アンモニウムアルキル化試薬の例としては、2−ジアルキルアミノエチルクロライド等のアミノアルキル化試薬、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−エポキシ−プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウムアルキル化試薬が挙げられる。
【0036】
本発明のカチオン化多糖は、1つ以上の追加の変性を受けてもよい。例えば、これらの変性には、架橋、エステル化反応、リン酸化反応、加水分解、アルキレンオキサイド付加が挙げられ、多糖類へのカチオン基の導入前後の何れ段階で行っても良い。
【0037】
本発明の(b)成分であるカチオン化多糖は、N質量%が0.40〜5.0である。本願で規定するN質量%は(b)成分の全質量に対して、アミノ基(pHによってカチオン性基になりうる)、アミノ基の酸塩及び第4級アンモニウム基由来の窒素原子の含有量(質量%)であり、具体的には以下のように算出する。
【0038】
<N質量%の算出方法>
カチオン化多糖0.1gを精秤し、0.1質量%水溶液になる様にイオン交換水に溶解させる。このカチオン化多糖水溶液10.0gを精秤し(ag)、5倍に希釈した後にトルイジンブルーを3滴加えて、1/400Nポリビニル硫酸カリウム(PVSK)水溶液で滴定する。滴定の終点は、青色が紫色ないし赤色に変わることで確認できる。滴定に要したPVSK量から、次式によりN質量(%)を求める。
【0039】
【数1】

【0040】
また、本発明の(b)成分であるカチオン化多糖は、重量平均分子量が10万〜2000万である。(b)成分の重量平均分子量(プルラン換算)は、以下の方法で測定される値である。
【0041】
<重量平均分子量測定法>
ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の測定条件で測定した。
装置;東ソー(株)製HLC−8120
GPCカラム;東ソー(株)製TSKgelα−M(1本)
溶離液;ジメチルスルホキシド(50mM臭化カリウム)
流速;0.5mL/min
カラム温度;50℃
検出器;RI
試料濃度;5mg/mL
注入量;100μL
分子量換算用検量線;昭和電工製単分散プルランを使用。
試料の分子量:標準プルラン基準の相対値
【0042】
本発明では、洗濯工程のすすぎ段階で処理を行う場合に、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な洗濯条件下で使用しても、衣料に対する優れた柔軟性付与効果の変動が少ない点から、(b)成分のN質量%は0.40〜5.0であり、0.60〜4.0、更に0.65〜3.0、特に0.65〜2.5が好ましい。同様の観点から、本発明では、(b)成分の重量平均分子量は10万〜2000万であり、25万〜1500万、更に30万〜1000万が好ましい。
【0043】
なお、本発明で用いるカチオン化多糖類は市販のものを用いることも出来る。例えば、Sensomer CI-50(Nalco社)、CATO 308(National Starch & Chemical Company)、ポイズC-150L(花王株式会社)が挙げられる。
【0044】
<(c)成分>
(c)成分は分子内に炭素数15〜21の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基を1〜3個含有する3級アミン、その酸塩又は4級化物から選ばれる1種以上の化合物であり、衣料等に対する柔軟基剤として機能し得る。好ましくは、下記一般式(4)で表される3級アミン、その酸塩又は4級化物から選ばれる1種以上の化合物である。洗濯工程のすすぎ段階で処理を行う場合に、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な洗濯条件下で使用しても、衣料に対する優れた柔軟性付与効果の変動が少ない点から、4級化物が好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
〔式中、R20は炭素数15〜21の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、R21は炭素数1〜6のアルキレン基であり、R22、R23はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基若しくはアミノ基を含んでいても良い炭素数1〜3の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基、又は式R20−D−R22で表される基であり、Dはエステル基(−COO−又は−OCO−)及びアミド基(−CONH−又は−NHCO−)から選ばれる基である。〕
【0047】
一般式(4)中のR21は、好ましくはエチレン基又はプロピレン基である。Dは−COO/又は−CONH−が好ましい。ヒドロキシ基若しくはアミノ基を含んでいても良い炭素数1〜3の炭化水素基の例としてメチル基、エチル基、プロピル基、2−ヒドロキシエチル基又は3−アミノプロピル基が挙げられる。
【0048】
一般式(4)の化合物は、R20−D−R22で表される基を2個又は3個有することが好ましく、2個有することがより好ましい。従って、一般式(4)中のR22、R23は、両方がR20−D−R22で表される基であるか、又は一方がR20−D−R22で表される基であり、他方がそれ以外の基であることが好ましく、一方がR20−D−R22で表される基であり、他方がそれ以外の基であることがより好ましい。
【0049】
上記一般式(4)の好ましい例として、例えば一般式(4−1)〜(4−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化6】

【0051】
〔式中、Rはそれぞれ独立に炭素数15〜21、好ましくは炭素数15〜19の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、i、jはそれぞれ独立に2又は3の数であり、R’はメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基又は式R−COO(CH2i−で表される基である。〕
【0052】
本発明の(c)成分として、上記一般式(4)で表される化合物及び/又はその酸塩と、その4級化物とを併用する場合は、柔軟効果の点から、一般式(4)で表される化合物及び/又はその酸塩と一般式(4)で表される化合物の4級化物との質量比は、〔一般式(4)記載の化合物及び/又はその酸塩〕/〔一般式(4)記載の化合物の4級化物〕=1/1〜1/99が好ましい。
【0053】
本発明の(c)成分のうち、4級化物、例えば一般式(4)で表される化合物の4級化物は、3級アミンを、アルキル化剤を用いて4級化反応させることにより製造することができる。アルキル化剤としては、ジアルキル硫酸(アルキル基の炭素数1〜3)、ハロゲン化アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)等が挙げられる。
【0054】
また、アルキル化剤を用いた4級化反応は、溶媒存在下(例えば、エタノール)でも合成できるが、柔軟効果の観点及び/又は不純物の生成を抑える観点から、無溶媒下で合成するのがより好ましい。
【0055】
(c)成分は、無機又は有機の酸で中和した塩(酸塩)であってもよい。また、酸塩として使用する場合は、濯ぎ水に配合する前にアミノ基を酸剤により中和したものを用いることもでき、柔軟剤組成物を調製して用いる場合は組成物に(c)成分を配合した後、アミノ基を酸剤で中和してもよい。中和のための酸としては塩酸、硫酸、リン酸、グリコール酸、ヒドロキシカルボン酸、炭素数1〜12の脂肪酸又は炭素数1〜3のアルキル硫酸、芳香族スルホン酸が好ましく、特に塩酸、硫酸、グリコール酸、パラトルエンスルホン酸が好ましい。中和に用いるこれらの酸剤は、単独で用いても複数で用いてもよい。
【0056】
<柔軟剤組成物>
本発明の柔軟剤組成物は、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)成分/(b)成分=0.1〜20であり、洗濯工程のすすぎ段階で処理を行う場合に、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な洗濯条件下で使用しても、衣料に対する優れた柔軟性付与効果の変動が少ない点から、0.1〜15が好ましく、より好ましくは0.1〜10であり、さらに好ましくは0.1〜7である。
【0057】
また、本発明の柔軟剤組成物は、洗濯工程のすすぎ段階で処理を行う場合に、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な洗濯条件下で使用しても、衣料に対する柔軟性付与効果の変動が少ない点から、(c)成分と、(a)成分及び(b)成分の合計の質量比は、(c)成分/[(a)成分+(b)成分]=5〜30であり、好ましくは6〜25であり、より好ましくは6〜20であり、さらに好ましくは、7〜18である。特に好ましくは0.1〜1.3である。
【0058】
(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計含有量が少ないと、1回当たりの洗濯に多量に使用しなければならず、合計含有量が多いと柔軟剤組成物の使用量は少なくて済むが計量しにくくなるため、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計含有量は組成物中10〜26質量%が好ましく、より好ましくは11〜23質量%である。また、洗濯工程のすすぎ段階で処理を行う場合に、すすぎ水中の洗剤成分(特に陰イオン界面活性剤)の量が異なる多様な洗濯条件下で使用しても、衣料に対する優れた柔軟性付与効果の変動が少ない点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計含有量は組成物中11〜23質量%が好ましい。
【0059】
本発明の柔軟剤組成物は、安定化剤として一般的に知られている、ステアリン酸等の脂肪酸、ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤等の非イオン界面活性剤、エチレングリコール等の溶剤、EDTA等のキレート剤、BHT等の酸化防止剤、塩化ベンザルコニウム等の殺菌剤、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防腐剤、塩化カルシウム等の電解質又は紫外線吸収剤等の化合物を含有することが出来る。また、色素や香料も適宜含有することが出来る。液体組成物の場合、本発明の柔軟剤組成物は水を含有する。また、液体組成物の場合、本発明の柔軟剤組成物の20℃におけるpHは2〜7、更に2〜6が好ましい。本発明の柔軟剤組成物は、衣料等の繊維製品用として好適であり、中でも衣料用柔軟剤組成物として好適である。
【0060】
本発明は洗浄工程から持ち越された洗剤成分のすすぎ水中の含有量が変化しても、一定の柔軟効果を示す柔軟剤組成物であり、濯ぎ水中の陰イオン界面活性剤濃度が、濯ぎ工程の開始時点で0.1〜50ppmである場合に有効である。
【0061】
濯ぎ水中の陰イオン界面活性剤濃度が10ppm以上となると、従来の衣料用柔軟剤組成物では、衣料に対する柔軟付与効果が、徐々に低下する傾向にある。とりわけ、15ppm以上になると著しく衣料に対する柔軟付与効果が低下する。本発明の柔軟剤組成物は、濯ぎ水中の陰イオン界面活性剤濃度が15ppm未満であっても、15ppmを超えても、一定の柔らかさで衣料が仕上がる柔軟剤組成物を得ることができる。
【実施例】
【0062】
下記成分を用い、下記方法で表1、2に示す組成の衣料用液体柔軟剤組成物を調製した。
【0063】
以下において、DMAEMAはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、LMAはラウリルメタクリレートである。
〔(a)成分〕
a−1:下記合成例1で得られたポリマー、DMAEMA/LMA=9/1(モル比)〔(a1)/{(a1)+(a2)}のモル比が0.90〕、重量平均分子量11000
a−2:下記合成例2で得られたポリマー、DMAEMA/LMA=7/3(モル比)〔(a1)/{(a1)+(a2)}のモル比が0.70〕、重量平均分子量7800
a―3:下記合成例3で得られたポリマー、DMAEMA100モル%〔(a1)/{(a1)+(a2)}のモル比が1.0〕、重量平均分子量11200
【0064】
〔(a’)成分(比較化合物)〕
a’−1:下記合成例4で得られたポリマー、DMAEMA/LMA=5/5(モル比)〔(a1)/{(a1)+(a2)}のモル比が0.50〕、重量平均分子量9500
a’−2:和光純薬工業株式会社 ポリエチレンイミン(重量平均分子量10000:カタログ値)
a’−3:ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、Nalco社製 マーコート100(重量平均分子量100000:カタログ値)
a’−4:下記合成例5で得られたポリマー、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドのホモポリマー、重量平均分子量153000
【0065】
〔(b)成分〕
b−1:カチオン化セルロース(N質量%は1.0質量%、重量平均分子量40万、ダウケミカル社製LR−400)
b−2:カチオン化セルロース(N質量%は2.2質量%、重量平均分子量60万、花王(株)製ポイズC−60H)
b−3:下記合成例6で得られたカチオン化澱粉(N質量%は0.67質量%、重量平均分子量97.2万)
b−4:カチオン化セルロース(N質量%は1.2質量%、重量平均分子量150万、花王(株)製ポイズC−150L)
b−5:カチオン化グアーガム(N質量%は1.4質量%、重量平均分子量901万、大日本製薬(株)製ラボールガムCG−M7L)
b−6:カチオン化澱粉(N質量%は1.3質量%、重量平均分子量20万、ナルコ製)
b−7:下記合成例7で得られたカチオン化セルロース(N質量%は3.7質量%、重量平均分子量50万)
【0066】
〔(b’)成分(比較化合物)〕
b’−1:カチオン化澱粉(N質量%0.34質量%、重量平均分子量135万、日本食品化工)
b’−2:下記合成例8で得られたカチオン化澱粉(N質量%1.1質量%、重量平均分子量9.1万)
【0067】
c−1:下記合成例9で得られたアミン塩混合物
c−2:下記合成例10で得られた第4級アンモニウム塩混合物
【0068】
〔任意成分〕
(d−1)ラウリルアルコール1モルあたりエチレンオキシドを平均20モル付加させた非イオン界面活性剤。
(e−1) 塩化カルシウム
【0069】
以下に、(a)成分及び比較のポリマー(一部)の合成例を示す。
〔(a)成分〕
合成例1(a−1の合成)
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(分子量:157.21)42.37g、ラウリルメタクリレート(分子量:254.41)7.62g、エタノール180.0gを均一に混合し、内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で一定時間攪拌した。そこに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65;和光純薬工業(株)製)1.41gをエタノール20.0gに溶解した溶液を添加し、60℃付近まで昇温した。60〜70℃付近で合計8時間保持することで重合・熟成した。そこにエタノール100.0gを加えて希釈した後、室温まで降温した。この反応溶液をイオン交換水4000.0g中に滴下して再沈殿精製し、沈殿物を乾燥してa−1を得た。a−1の重量平均分子量は11000であった(前記測定法A、水/エタノール=7/3系、ポリエチレングリコール換算)。また1H−NMRにより分析したa−1の組成は仕込みモノマー組成どおり(DMAEMA/LMA=9/1(モル比))であった。
【0070】
合成例2(a−2の合成)
合成例1において、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを33.00gに、ラウリルメタクリレート量を22.9gに、はじめに添加するエタノール量を160g、その後添加する2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)量及びエタノール量をそれぞれ2.49g、40gに変更する以外は合成例1と同様にしてa−2を得た。a−2の重量平均分子量は7800であった(前記測定法A、水/エタノール=7/3系、ポリエチレングリコール換算)。また1H−NMRにより分析したa−2の組成は仕込みモノマー組成どおり(DMAEMA/LMA=7/3(モル比))であった。
【0071】
合成例3(a−3の合成)
内容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを一定時間窒素置換した。そこにエタノール46.8gを添加し、撹拌しながら内温が78〜80℃になるまで加熱し、保持した。N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート300.00g、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)7.11g、エタノール114.3gを予め均一に混合し、この溶液を上記フラスコ中に3時間かけて一定速度で滴下した。次に、V−65B 11.85gをエタノール47.4gに溶解した溶液を上記フラスコ中に4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、80℃付近で2時間保持することでa−3(ポリジメチルアミノエチルメタクリレート)のエタノール溶液を得た。a−3の重量平均分子量(前記測定法A、水/エタノール=7/3系、ポリエチレングリコール換算)は11200であった。また1H−NMRにより分析したa−3の組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0072】
合成例4(a’−1の合成)
合成例1において、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを23.54gに、ラウリルメタクリレート量を38.1gに、はじめに添加するエタノール量を200g、その後添加する2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)量及びエタノール量をそれぞれ2.2g、60gに変更する以外は合成例1と同様にしてa’−1(比較化合物)を得た。a’−1の重量平均分子量(前記測定法B、ポリスチレン換算)は9500であった。また1H−NMRにより分析したa’−1の組成は仕込みモノマー組成どおり(DMAEMA/LMA=5/5(モル比))であった。
【0073】
合成例5(a’−4の合成)
還流冷却器、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器にイオン交換水(100質量部)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(40質量部)を仕込み、30分間窒素置換を行った。200rpmで攪拌しながら、2,2−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド(V−50)(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、8時間重合を行った。重合終了後、反応液をイソプロパノール(1000質量部)に徐々に滴下して得られた沈澱物を、更にイソプロパノール(1000質量部)で2回洗浄し、60℃で減圧乾燥してイソプロパノールを除去することにより重合体(a’−4)を得た。得られたa’−4はメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドのホモポリマーであり、重量平均分子量(前記測定法A、水/エタノール=7/3系、ポリエチレングリコール換算)は153000であった。
【0074】
以下に、(b)成分(一部)及び比較の化合物の合成例を示す。
合成例6(b−3の合成)
プロペラ型攪拌羽根、冷却管、温度計がついた500mL容量の4つ口フラスコに苛性ソーダ0.9g、イオン交換水45g、イソプロピルアルコール100gを入れ、25℃に調温した。以下の操作は攪拌条件下で行った。コーンスターチ(三和澱粉工業(株)製)100gを30分かけて投入した。更に苛性ソーダの20%水溶液9.7gと3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド150gとの混合物を4つ口フラスコ内に投入した。投入後50℃まで昇温し、10時間攪拌した。次に36%塩酸水溶液で反応液のpHを7に調製した後、25℃まで冷却した。更に36%塩酸水溶液2.3gを加えたその後40℃まで昇温し、反応液の粘度が50〜100mPa.sになるまで攪拌した。次に5%苛性ソーダ水溶液で反応液のpHを5.0に調製した。この反応物をイソプロピルアルコール/水(質量比50/50)で2回洗浄し、乾燥させた。GPC法にて分子量を測定したところ、重量平均分子量は97.2万であった。また、N質量%は0.67質量%であった。
【0075】
合成例7(b−7の合成)
木材パルプシート(ボレガード社製パルプシート、結晶化度74%)をシュレッダー(株式会社明光商会製、「MSX2000−IVP440F」)にかけてチップ状にした。次に、得られたチップ状パルプを二軸押出機(株式会社スエヒロEPM製、「EA−20」)に2kg/hrで投入し、せん断速度660sec-1、スクリュー回転数300rpm、外部から冷却水を流しながら、1パス処理して粉末状にした。次に、得られた粉末セルロースを、バッチ式媒体攪拌ミル(五十嵐機械社製「サンドグラインダー」:容器容積800mL、5mmφジルコニアビーズを720g充填、充填率25%、攪拌翼径70mm)に投入した。容器ジャケットに冷却水を通しながら、攪拌回転数2000rpm、温度30〜70℃の範囲で、2.5時間粉砕処理を行い、非晶化セルロース(結晶化度0%、重合度600、平均粒径40μm)を得た。この粉末セルロースの反応には更に32μm目開きの篩をかけた篩下品(投入量の90%)を使用した。
【0076】
1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型)に、前記非晶化セルロース(結晶化度0%)100gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液5gを加え、窒素雰囲気下3時間攪拌した。その後、ニーダーを温水により50℃に加温し、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(坂本薬品工業株式会社製、含水量20重量%、純度90%以上)95gを2時間で滴下した。その後、更に50℃で3時間攪拌したところ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によりカチオン化剤は全て消費されていた。その後、酢酸で中和し、生成物をニーダーから取り出し、含水イソプロパノール(含水量15%)及びアセトンで洗浄後、減圧下乾燥して、カチオン化セルロース(b−7)を140gの白色固体として得た。元素分析およびコロイド滴定により、塩素元素含有量は9.4%、N質量%は3.7質量%、重量平均分子量は50万であった。
【0077】
合成例8(b’−2の合成)
1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型)に、粉末セルロース(結晶化度70%、重量平均分子量91000)100gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液5gを加え、窒素雰囲気下3時間攪拌した。その後、ニーダーを温水により50℃に加温し、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(坂本薬品工業株式会社製、含水量20重量%、純度90%以上)95gを2時間で滴下した。その後、更に50℃で3時間攪拌したところ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によりカチオン化剤は全て消費されていた。その後、酢酸で中和し、生成物をニーダーから取り出し、含水イソプロパノール(含水量15%)及びアセトンで洗浄後、減圧下乾燥して、カチオン化セルロース(b’−2)を140gの白色固体として得た。N質量%は1.1質量%であった。また、重量平均分子量は9.1万であった。
【0078】
以下に、(c)成分の合成例を示す。
合成例9(c−1の合成)
ステアリン酸とパルミチン酸を6/4のモル比で混合した脂肪酸とN−(3−アルカノイルアミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミンを1.8/1(前記混合脂肪酸/前記アミン)のモル比で混合し、定法に従って脱水縮合を行った。酸価が9になった時点で反応を止め、縮合物を得た。この縮合物の全アミン価を測定した。この縮合物を70℃に加温し、溶融させた。この縮合物に対して質量で9倍量のイオン交換水(65℃)を加え、攪拌しながら、全アミン価を元に算出した、中和に必要な35%塩酸水溶液を滴下しながら、水中で中和し、10分攪拌した後、30℃に冷却した。次に、この化合物を凍結乾燥し(c)成分に相当する化合物(アミン塩)を95質量%含有する混合物を得た。
【0079】
合成例10(c−2の合成)
ヨウ素価90gI2/100g、酸価201mgKOH/gのナタネ油由来の原料脂肪酸とトリエタノールアミンとを反応モル比1.85/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で脱水縮合反応を行い、縮合物を得た。次に、溶媒不在下で、この縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、4級化を行った後、エタノールで90%に希釈することにより、(c)成分に相当する化合物(第4級アンモニウム塩)を75質量%含有する混合物を得た。
【0080】
<衣料用液体柔軟剤組成物の調製方法>
300mLビーカーに、柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水と(d)成分を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(300r/m)、所要量の(c)成分を添加し、5分攪拌後、35.5%塩酸水溶液を用いてpHを2〜4に調整し、必要に応じて(e)成分を添加した後、出来あがり質量にするのに必要な量の60℃のイオン交換水を添加した。その後10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら20℃に冷却した。冷却後、(a)成分又は(a’)成分、(b)成分又は(b’)成分を添加し、35.5%塩酸水溶液を用いてpHを2.3に調整しながら、10分間撹拌した。
【0081】
<柔軟性の評価方法>
(1)評価用処理布の前処理方法
日立全自動洗濯機NW-6CYを用いて、水量45Lに対し、ラウリルアルコール1モルあたりエチレンオキシドを平均8モル付加させた非イオン界面活性剤を4.5g添加し、よく撹拌した後、市販の木綿タオル24枚を入れ、標準コースで5回洗浄した後、20℃、43%RHの室内で乾燥した(洗剤濃度0.01質量%、水道水45L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。これを評価用処理布の前処理木綿タオルとした。
【0082】
(2)繊維処理用水道水の調製
20℃水道水に、洗剤成分の代表的な化合物であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオペレックスG−25、花王(株)製、以下、LASと表記する)を、水道水中の濃度が12ppm又は18ppmになるように添加し、繊維処理用水道水とした。
【0083】
(3)繊維処理方法
前処理木綿タオル2枚の重量を測定し、表中の柔軟剤組成物を前記前処理木綿タオル1.5kg当たり7gになるように秤量しておく。秤量後、National製 MiniMini(型番:NA−35)に、前述の繊維処理用水道水を4.5L注水し、前処理木綿タオル2枚を投入し、1分間攪拌する。攪拌後、秤量した柔軟組成物を投入し、攪拌しながら5分間処理した。処理後、脱水槽で2分間脱水した。脱水した木綿タオルを25℃、40%RHで12時間乾燥させた。LAS濃度が12ppmの繊維処理用水道水を用いた場合を評価1、18ppmの繊維処理用水道水を用いた場合を評価2とした。
【0084】
(4)柔軟性評価
10人のパネラーに上記処理したタオルの柔軟性を、下記の処理方法で処理した評価基準タオルと触り比べ、同等の柔軟性と判断した評価基準タオルの点数を平均した。つまり、同じ柔軟剤組成物について、上記(3)の繊維処理を、LASを添加しない水道水により行った場合の柔軟性と対比して評価するものであり、基準となるサンプルとして、同じ柔軟剤組成物について、前処理木綿タオル1.5kg当たりの柔軟剤組成物の使用量を0.7gから7gまで0.7gきざみで上記(3)と同様に処理したタオル(合計10枚)を用意し、その柔軟性と、上記(3)の処理を行った2枚のタオルの柔軟性とを対比した。
10点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり7gの使用量で処理したタオル。
9点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり6.3gの使用量で処理したタオル。
8点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり5.6gの使用量で処理したタオル。
7点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり4.9gの使用量で処理したタオル。
6点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり4.2gの使用量で処理したタオル。
5点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり3.5gの使用量で処理したタオル。
4点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり2.8gの使用量で処理したタオル。
3点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり2.1gの使用量で処理したタオル。
2点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり1.4gの使用量で処理したタオル。
1点・・・20℃水道水(LASの添加なし)を用いて、柔軟剤組成物を前処理木綿タオル1.5kg当たり0.7gの使用量で処理したタオル。
評価1又は評価2において平均点6.0以上が満足できる柔軟性である。また、評価1と評価2の差が3.0以下であれば、すすぎ水中の陰イオン界面活性剤の量が異なる条件で処理しても、衣料に対する柔軟性付与効果の変動が少ないと判断できる。この観点から、評価1と評価2の差は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.2以下であり、特に好ましくは0.8以下であり、最も好ましくは0.6以下である。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
表中では、(a’)成分も(a)成分として、また(b’)成分も(b)成分として、(a)/(b)(質量比)、(c)成分/[(a)成分+(b)成分](質量%)、及び(a)+(b)+(c)(質量%)を示した。
【0088】
上記の結果から、本発明の柔軟剤組成物により処理された繊維製品(タオル)は、浴中の陰イオン界面活性剤の量が変化しても柔らかさの変化が少なく、一定の柔らかさを示した。これは、従来の柔軟剤組成物のように単に高い柔軟性を得るためではない効果を奏している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)成分/(b)成分=0.1〜20であり、且つ(c)成分と、(a)成分及び(b)成分の合計の質量比が(c)成分/[(a)成分+(b)成分]=5〜30である柔軟剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で示されるモノマー単位(a1)及び下記一般式(2)で示されるモノマー単位(a2)を(a1)/{(a1)+(a2)}=0.52〜1.0のモル比で含有するポリマー又はその酸塩
【化1】


〔一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは−COO−R6−、−CONR7−R8−を示す。R4、R5はそれぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜3の炭化水素基、又は水素原子を示す。R6、R8は、それぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜4のアルキレン基、R7は水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
【化2】


〔一般式(2)中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはアリール基、−O−CO−R13、−COO−R14、又は−CONR15−R16を示す。R13、R14、R16は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基基を示し、R15は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
(b)成分:重量平均分子量が10万〜2000万であり、且つN質量%が0.40〜5.0であるカチオン化多糖
(c)成分:分子内に炭素数15〜21の炭化水素基を1〜3個含有する3級アミン、その酸塩又は4級化物から選ばれる1種以上の化合物

【公開番号】特開2012−87440(P2012−87440A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237640(P2010−237640)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】