説明

柔軟電極構造、および柔軟電極構造を有する電極を備えるトランスデューサ

【課題】 比較的安価で、伸縮可能であり、電気抵抗の分布が小さい柔軟電極構造を提供する。また、当該柔軟電極構造を電極に用いて、比較的安価で、高性能なトランスデューサを提供する。
【解決手段】 柔軟電極構造は、エラストマーと導電性炭素粉末とを含む柔軟導電層23Yと、柔軟導電層23Yの表面に配置され、柔軟導電層23Yよりも体積抵抗率が小さい配線部24Yと、を備え、配線部24Yは、柔軟導電層23Yの面方向における電気抵抗のばらつきが小さくなるように配置される。トランスデューサ1は、エラストマーまたは樹脂製の誘電層20と、誘電層20を介して配置されている複数の電極01X〜06X、01Y〜06Yと、を備える。複数の電極01X〜06X、01Y〜06Yは、当該柔軟電極構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟なトランスデューサ等の電極に好適な柔軟電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー等の高分子材料を利用して、柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサの開発が進められている。トランスデューサとしては、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、誘電層、表側電極、裏側電極、検出部、表側配線、および裏側配線を備える静電容量型センサが開示されている。表側電極は、帯状を呈し複数列並んで配列されている。裏側電極も、同様に、帯状を呈し複数列並んで配列されている。表側電極と裏側電極とが誘電層を介して対向することにより、複数の検出部が形成されている。静電容量型センサに荷重が加わると、荷重が加わった部分に対応する検出部の厚さ、すなわち、表側電極と裏側電極との間の距離が変化する。これにより、検出部の静電容量が変化する。静電容量型センサは、当該静電容量の変化に基づいて、面圧分布を検出する。
【0004】
同文献に開示された静電容量型センサにおいては、誘電層は、エラストマーからなる。よって、誘電層の弾性変形を規制しないように、表側電極、裏側電極(以下、適宜まとめて「電極」と称す)は、各々、エラストマー分のポリマーとカーボンブラックとを含むカーボンペーストから形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−43881号公報
【特許文献2】特開2005−317638号公報
【特許文献3】特開2010−21371号公報
【特許文献4】特開2010−153821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物体の電気抵抗は、次の式(1)から算出される。
r=ρL/S・・・(1)
式(1)中、rは電気抵抗、ρは体積抵抗率、Lは長さ、Sは断面積(厚さ×幅)である。式(1)から明らかなように、断面積が一定の場合、物体の長さLが長いほど、電気抵抗rは大きくなる。上述した静電容量型センサにおいて、電極は帯状を呈している。このため、配線が接続される接続部から遠くなるほど、電極の電気抵抗は大きくなる。したがって、接続部からの距離に起因して、検出部における電極の電気抵抗が異なるおそれがある。この場合、検出部ごとに静電容量の検出値が変わってしまい、面圧分布の測定精度が低下するおそれがある。
【0007】
また、カーボンブラックの体積抵抗率は、銀等の金属と比較して、大きい。このため、カーボンペーストから電極を形成すると、接続部からの距離の違いによる電気抵抗のばらつきが、大きくなる。したがって、検出部ごとに静電容量の検出値が変化するという上記問題が、より顕著になる。
【0008】
一方、配線材料として、バインダーに銀粉末が充填された銀ペーストが知られている。銀ペーストから形成される銀配線の電気抵抗は、小さい。このため、長さ方向の電気抵抗のばらつきは、それほど問題にならない。しかし、銀粉末は、カーボンブラックと比較して高価である。このため、銀ペーストから大きな面積を占める電極を形成すると、コストが高くなる。また、銀ペーストには、銀粉末が高充填されている。このため、銀ペーストから形成された電極は、柔軟性に乏しい。したがって、大きく伸長されると、クラックが発生し、著しく電気抵抗が増加してしまう。また、電極が誘電層の伸縮に追従できず、誘電層の動きを阻害するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、比較的安価で、伸縮可能であり、電気抵抗の分布が小さい柔軟電極構造を提供することを課題とする。また、当該柔軟電極構造を電極に用いることにより、比較的安価で、高性能なトランスデューサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明の柔軟電極構造は、エラストマーと導電性炭素粉末とを含む柔軟導電層と、該柔軟導電層の表面に配置され、該柔軟導電層よりも体積抵抗率が小さい配線部と、を備え、該配線部は、該柔軟導電層の面方向における電気抵抗のばらつきが小さくなるように配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の柔軟電極構造において、柔軟導電層は、エラストマーと導電性炭素粉末とを含む。したがって、本来なら、配線の接続部からの距離が長くなるほど、電気抵抗は大きくなる。しかし、本発明の柔軟電極構造によると、柔軟導電層の表面に、柔軟導電層よりも体積抵抗率が小さい配線部が配置される。配線部は、柔軟導電層の面方向における電気抵抗のばらつきが小さくなるように配置される。これにより、柔軟導電層の部位により、電気抵抗が異なるという問題が解消されると共に、柔軟電極構造全体として高い導電性を実現することができる。このように、本発明の柔軟電極構造によると、比較的安価な導電性炭素粉末を用いて、柔軟で導電性が高く、面方向における電気抵抗が略均一な電極を、実現することができる。
【0012】
ここで、配線部の体積抵抗率は、1×10−5Ω・cm以下であることが望ましい。また、柔軟導電層の柔軟性が高いと、誘電層等の基材の変形に対する追従性が向上する。例えば、柔軟導電層の伸び率は、150%以上であることが望ましい。本明細書においては、引張り試験(JIS K6251(2004))により測定された切断時伸びの値を、伸び率として採用する。
【0013】
配線部の体積抵抗率は、柔軟導電層の体積抵抗率よりも小さい。例えば、バインダーに金属粉末や導電性炭素粉末を高充填した導電ペーストから、配線部を形成することができる。したがって、配線部は、柔軟導電層と比較して、柔軟性に劣る場合がある。しかし、本発明の柔軟電極構造によると、配線部は、柔軟導電層の表面に配置される。このため、配線部の柔軟性が低く、伸長された際、仮に配線部の一部にクラックが発生して導通が断たれたとしても、接触する柔軟導電層を通して導通を確保することができる。つまり、配線部が断線しても、導通経路の一部が柔軟導電層に迂回することにより、電極としての導電性は確保される。したがって、本発明の柔軟電極構造は、耐久性に優れる。
【0014】
ちなみに、上記特許文献2には、カーボンペースト製の回路の上に銀ペースト製の配線回路を形成した配線板が開示されている。また、上記特許文献3には、銀ペースト製の配線を、カーボン粉末を含む導電ペースト製の保護膜で被覆した配線板が開示されている。これらは、配線の構造についての技術である。すなわち、配線板において、銀配線のマイグレーションを抑制して、隣り合う配線間の絶縁性を確保しているにすぎない。したがって、電極における電気抵抗のばらつきを抑制するという思想はない。
【0015】
また、特許文献4には、導電層と、該導電層を被覆するエラストマー製の保護層と、を備える導電膜が開示されている。保護層は、導電層を保護、補強する。保護層に、カーボンブラックを含有させてもよいという記載があるが、これは当該導電膜を配線として使用した場合に、マイグレーションを抑制するためである。このように、特許文献4にも、電極における電気抵抗のばらつきを抑制するという思想はない。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記配線部の面積は、前記柔軟導電層の面積よりも小さい構成とする方がよい。
【0017】
本構成によると、配線部が柔軟性に乏しくても、柔軟導電層の伸縮を規制しにくい。また、配線部にコストの高い金属粉末を使用する場合、面積が小さい分だけ、金属粉末の使用量を低減することができる。これにより、コストを削減することができ、より安価な電極を実現することができる。
【0018】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記柔軟導電層は、帯状を呈し、前記配線部は、該柔軟導電層の少なくとも長手方向に延在する構成とする方がよい。
【0019】
柔軟導電層が帯状を呈する場合、上述したように、配線の接続部からの距離が長くなるほど、電気抵抗は大きくなる。つまり、柔軟導電層の長手方向において、電気抵抗のばらつきが大きくなる。本構成によると、配線部が柔軟導電層の少なくとも長手方向に延在する。このため、柔軟導電層の長さが長い場合でも、配線部との距離を短くすることができる。これにより、柔軟導電層の少なくとも長手方向における電気抵抗のばらつきを、抑制することができる。
【0020】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記配線部は、バインダーおよび金属粉末を含む構成とする方がよい。
【0021】
一般に、金属の体積抵抗率は小さい。よって、本構成によると、柔軟導電層よりも体積抵抗率の小さな配線部を、容易に形成することができる。また、バインダーと金属粉末とを含む導電ペーストを用いると、印刷法等を利用して、薄膜状の配線部を、様々な形状に、容易に形成することができる。
【0022】
金属粉末としては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等の粉末から、適宜選択すればよい。金属粉末は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。なかでも銀は、体積抵抗率が小さいため好適である。したがって、金属粉末としては、銀粉末や銀合金粉末を用いるとよい。
【0023】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記柔軟導電層および前記配線部は、いずれも印刷法で形成される構成とする方がよい。
【0024】
印刷法によると、柔軟導電層、配線部の厚さが薄い場合や面積が大きい場合でも、容易に形成することができる。また、印刷法においては、塗布する部分と塗布しない部分との塗り分けが、容易である。このため、柔軟導電層、配線部が、細線や複雑な形状であっても、容易に形成することができる。印刷法としては、例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。なかでも、高粘度の塗料が使用でき、塗膜厚さの調整が容易あるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。
【0025】
(6)本発明のトランスデューサは、エラストマーまたは樹脂製の誘電層と、該誘電層を介して配置される複数の電極と、を備え、複数の該電極は、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成の本発明の柔軟電極構造を有する。
【0026】
本発明のトランスデューサの電極は、上記本発明の柔軟電極構造を有する。したがって、電極は、比較的安価であり、高い導電性を有する。また、電極の面方向において、電気抵抗のばらつきが小さい。このため、本発明のトランスデューサによると、電極の電気抵抗の分布に起因した検出精度の低下等が小さい。また、電極が誘電層の変形に追従して伸長された場合、仮に配線部の一部にクラックが発生して導通が断たれたとしても、接触する柔軟導電層を通して導通を確保することができる。つまり、配線部が断線しても、導通経路の一部が柔軟導電層に迂回することにより、導通は確保される。したがって、本発明のトランスデューサは、耐久性に優れる。
【0027】
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、複数の前記電極は、前記誘電層の表側に配置される複数の表側電極と、該誘電層の裏側に配置される複数の裏側電極と、からなり、該誘電層を介して該表側電極の前記柔軟導電層と該裏側電極の前記柔軟導電層とが対向することにより形成される複数の検出部を備え、該表側電極および該裏側電極の各々において、前記配線部は、少なくとも該検出部に重なるように配置され、該検出部の静電容量の変化から面圧分布を検出可能な静電容量型センサである構成とするとよい。
【0028】
本構成の静電容量型センサにおいて、検出部は、表側電極と裏側電極との交差部分を利用して配置される。そして、配線部は、少なくとも該検出部に重なるように配置される。このため、いずれの検出部においても、配線部との距離が小さい。つまり、検出部ごとの電気抵抗の差は小さい。したがって、検出部の位置に起因した静電容量の検出値のばらつきは小さい。よって、本構成の静電容量型センサにおいては、面圧分布の測定精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第一実施形態の静電容量型センサの上面透過図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】同静電容量型センサにおける表側電極01Yおよび表側配線01yの上面図である。
【図4】同静電容量型センサの製造方法における積層工程の模式図である。
【図5】第二実施形態の静電容量型センサの断面図である。
【図6】第三実施形態の静電容量型センサの断面図である。
【図7】第四実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図である。
【図8】第五実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図である。
【図9】第六実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図である。
【図10】第七実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図である。
【図11】本発明の柔軟電極構造からなる電極例の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の柔軟電極構造およびトランスデューサの実施の形態について説明する。
【0031】
<第一実施形態>
[静電容量型センサの構成]
本発明のトランスデューサの一例として、静電容量型センサの実施形態を説明する。本発明の柔軟電極構造については、同静電容量型センサの電極として具現化されている。まず、本実施形態の静電容量型センサの構成について説明する。図1に、本実施形態の静電容量型センサの上面透過図を示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。図3に、同静電容量型センサにおける表側電極01Yおよび表側配線01yの上面図を示す。図1においては、表裏方向(厚さ方向)に積層される部材を透過して示す。また、検出部の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、裏側電極01X〜06Xに対応している。下二桁の「△△」は、表側電極01Y〜06Yに対応している。
【0032】
図1、図2に示すように、本実施形態の静電容量型センサ1は、センサ本体2と、演算部3と、を備えている。センサ本体2は、誘電層20と、表側部材21と、裏側部材22と、を備えている。
【0033】
誘電層20は、ウレタンフォーム製であって、矩形シート状を呈している。表側部材21は、誘電層20の表側(上側)に配置されている。裏側部材22は、誘電層20の裏側(下側)に配置されている。表側部材21と裏側部材22とは、誘電層20を挟んで積層されている。
【0034】
表側部材21は、ベースフィルム210と、カバーフィルム211と、表側電極01Y〜06Yと、表側配線01y〜06yと、表側コネクタ212と、を備えている。ベースフィルム210は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であって、シート状を呈している。カバーフィルム211も同様に、PET製であって、シート状を呈している。ベースフィルム210およびカバーフィルム211は、XY方向(前後左右方向)に延在している。ベースフィルム210の形状と、カバーフィルム211の形状とは、同じである。ベースフィルム210とカバーフィルム211とは、表側電極01Y〜06Yおよび表側配線01y〜06yを挟んで積層されている。
【0035】
表側電極01Y〜06Yは、ベースフィルム210とカバーフィルム211との間に、合計6本配置されている。表側電極01Y〜06Yは、各々、帯状を呈している。表側電極01Y〜06Yは、各々、Y方向(前後方向)に延在している。表側電極01Y〜06Yは、X方向(左右方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。図3に一例を示すように、表側電極01Y〜06Yは、各々、柔軟導電層23Yと、配線部24Yと、を有している。表側電極01Y〜06Yは、本発明の柔軟電極構造を有している。
【0036】
柔軟導電層23Yは、帯状を呈している。柔軟導電層23Yは、アクリルゴムおよびカーボンブラックを含んで形成されている。柔軟導電層23Yの体積抵抗率は約1Ω・cmであり、伸び率は150%である。配線部24Yは、柔軟導電層23Yの前端から後端に伸びる直線状を呈している。配線部24Yは、柔軟導電層23Yの表面(上面)中央に配置されている。配線部24Yは、柔軟導電層23Yの長さ方向(前後方向)における電気抵抗のばらつきが小さくなるように、配置されている。配線部24Yは、ポリエステル樹脂および銀粉末を含んで形成されている。配線部24Yの体積抵抗率は約1×10−6Ω・cmであり、伸び率は1%未満である。
【0037】
表側配線01y〜06yは、ベースフィルム210とカバーフィルム211との間に、合計6本配置されている。表側配線01y〜06yは、各々、線状を呈している。表側コネクタ212は、表側部材21の左前隅に配置されている。表側コネクタ212は、演算部3に電気的に接続されている。表側配線01y〜06yは、各々、表側電極01Y〜06Yの前端部と、表側コネクタ212と、を接続している。図3に一例を示すように、表側配線01y〜06yは、各々、柔軟導電層23yと、配線部24yと、を有している。
【0038】
柔軟導電層23yは、線状を呈している。柔軟導電層23yは、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Yと同様に、アクリルゴムおよびカーボンブラックを含んで形成されている。つまり、柔軟導電層23Yと柔軟導電層23yとは、連続して形成されている。配線部24yは、線状を呈している。配線部24yの幅は、柔軟導電層23yの幅よりも、若干小さくなっている。配線部24yは、表側電極01Y〜06Yの配線部24Yと同様に、ポリエステル樹脂および銀粉末を含んで形成されている。つまり、配線部24Yと配線部24yとは、連続して形成されている。
【0039】
裏側部材22は、ベースフィルム220と、カバーフィルム221と、裏側電極01X〜06Xと、裏側配線01x〜06xと、裏側コネクタ222と、を備えている。裏側部材22の構成は、表側部材21の構成と同じである。簡単に説明すると、ベースフィルム220は、PET製であって、シート状を呈している。カバーフィルム221も、PET製であって、シート状を呈している。ベースフィルム220とカバーフィルム221とは、裏側電極01X〜06Xおよび裏側配線01x〜06xを挟んで積層されている。
【0040】
裏側電極01X〜06Xは、ベースフィルム220とカバーフィルム221との間に、合計6本配置されている。裏側電極01X〜06Xは、各々、帯状を呈している。裏側電極01X〜06Xは、各々、X方向(左右方向)に延在している。裏側電極01X〜06Xは、Y方向(前後方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。裏側電極01X〜06Xは、各々、柔軟導電層23Xと、配線部24Xと、を有している。裏側電極01X〜06Xは、本発明の柔軟電極構造を有している。
【0041】
柔軟導電層23Xは、帯状を呈している。柔軟導電層23Xの構成は、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Yと同じである。配線部24Xは、柔軟導電層23Xの左端から右端に伸びる直線状を呈している。配線部24Xは、柔軟導電層23Xの裏面(下面)中央に配置されている。配線部24Xは、柔軟導電層23Xの長さ方向(左右方向)における電気抵抗のばらつきが小さくなるように、配置されている。配線部24Xの構成は、表側電極01Y〜06Yの配線部24Yと同じである。
【0042】
裏側配線01x〜06xは、ベースフィルム220とカバーフィルム221との間に、合計6本配置されている。裏側配線01x〜06xは、各々、線状を呈している。裏側コネクタ222は、裏側部材22の左後隅に配置されている。裏側コネクタ222は、演算部3に電気的に接続されている。裏側配線01x〜06xは、各々、裏側電極01X〜06Xの左端部と、裏側コネクタ222と、を接続している。裏側配線01x〜06xは、各々、柔軟導電層23xと、配線部24xと、を有している。
【0043】
柔軟導電層23xは、線状を呈している。柔軟導電層23xは、裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23Xと同様に、アクリルゴムおよびカーボンブラックを含んで形成されている。つまり、柔軟導電層23Xと柔軟導電層23xとは、連続して形成されている。配線部24xは、線状を呈している。配線部24xの幅は、柔軟導電層23xの幅よりも、若干小さくなっている。配線部24xは、裏側電極01X〜06Xの配線部24Xと同様に、ポリエステル樹脂および銀粉末を含んで形成されている。つまり、配線部24Xと配線部24xとは、連続して形成されている。
【0044】
センサ本体2において、検出部A0101〜A0606は、表側電極01Y〜06Yと、裏側電極01X〜06Xと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A0606は、合計36個(=6個×6個)配置されている。検出部A0101〜A0606は、誘電層20の略全面に亘って、略等間隔に配置されている。検出部A0101〜A0606は、各々、表側電極01Y〜06Yの一部と、裏側電極01X〜06Xの一部と、誘電層20の一部と、ベースフィルム210、220の一部と、を備えている。検出部A0101〜A0606を包囲する矩形状の領域において、面圧分布が検出される。
【0045】
演算部3は、電源回路30と、CPU(Central Processing Unit)31と、RAM(Random Access Memory)32と、ROM(Read Only Memory)33と、出力部34と、を備えている。演算部3は、表側コネクタ212、裏側コネクタ222に、電気的に接続されている。
【0046】
電源回路30は、検出部A0101〜A0606に、正弦波状の交流電圧を印加する。ROM33には、予め、検出部A0101〜A0606における静電容量と面圧との対応を示すマップが、格納されている。RAM32には、表側コネクタ212、裏側コネクタ222から入力されるインピーダンス、位相が、一時的に格納される。CPU31は、RAM32に格納されたインピーダンス、位相を基に、検出部A0101〜A0606の静電容量を算出する。そして、静電容量から、センサ本体2における面圧分布を算出する。出力部34は、CPU31が算出した面圧分布を出力する。
【0047】
[静電容量型センサの製造方法]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の製造方法について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1の製造方法は、表側部材作製工程と、裏側部材作製工程と、積層工程と、を有している。
【0048】
表側部材作製工程においては、表側部材21を作製する。まず、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Y、表側配線01y〜06yの柔軟導電層23yを形成するためのカーボンペーストを、調製する。また、表側電極01Y〜06Yの配線部24Y、表側配線01y〜06yの配線部24yを形成するための銀ペーストを、調製する。次に、調製したカーボンペーストを、スクリーン印刷機を用いて、ベースフィルム210の上面に印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、柔軟導電層23Y、23yを形成する。続いて、調製した銀ペーストを、スクリーン印刷機を用いて、形成した柔軟導電層23Y、23yの上面に印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、配線部24Y、24yを形成する。次に、形成した表側電極01Y〜06Y、表側配線01y〜06yの上方から、カバーフィルム211を被覆する。最後に、表側配線01y〜06yと表側コネクタ212とを接続して、表側部材21を作製する。
【0049】
裏側部材作製工程においては、表側部材作製工程と同様にして、裏側部材22を作製する。まず、調製したカーボンペーストを、ベースフィルム220の下面(図2における方位で示す。印刷時には上向きに配置する。)にスクリーン印刷して、裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23X、裏側配線01x〜06xの柔軟導電層23xを形成する。続いて、調製した銀ペーストを、形成した柔軟導電層23X、23xの下面にスクリーン印刷して、裏側電極01X〜06Xの配線部24X、裏側配線01x〜06xの配線部24xを形成する。次に、形成した裏側電極01X〜06X、裏側配線01x〜06xの下方から、カバーフィルム221を被覆する。最後に、裏側配線01x〜06xと裏側コネクタ222とを接続して、裏側部材22を作製する。
【0050】
積層工程においては、表側部材21、誘電層20、および裏側部材22を積層する。図4に、本工程の模式図を示す。図4は、図2(図1のII−II断面)に対応している。図4に示すように、本工程においては、下から順に、裏側部材22、誘電層20、表側部材21を積層する。この際、誘電層20は、表裏各々の部材21、22におけるベースフィルム210、220の間に挟持される。誘電層20は、表側電極01Y〜06Yおよび裏側電極01X〜06Xの形成領域に対応するように、配置される。そして、対向する表側部材21および裏側部材22の周縁部を貼り合わせることにより、本実施形態の静電容量型センサ1を、製造する。
【0051】
[静電容量型センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の動きについて説明する。まず、静電容量型センサ1に荷重が加わる前(初期状態)に、検出部A0101〜A0606ごとに、静電容量Cを算出する。すなわち、検出部A0101から検出部A0606までを、あたかも走査するように、静電容量Cを算出する。算出された静電容量Cは、RAM32に格納される。続いて、静電容量型センサ1に荷重が加わった後に、検出部A0101〜A0606ごとに、静電容量Cを算出する。算出された静電容量Cは、RAM32に格納される。
【0052】
それから、CPU31が、静電容量Cの変化量ΔCから、センサ本体2に加わる面圧を算出する。具体的には、ROM33には、予め静電容量Cと面圧との対応を示すマップが、格納されている。静電容量Cをマップに代入して、任意の検出部A0101〜A0606の面圧を算出する。そして、当該面圧を、出力部34から出力する。
【0053】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、表側電極01Y〜06Yは、各々、柔軟導電層23Yと、配線部24Yと、を有している。配線部24Yは、柔軟導電層23Yの長さ方向に延在している。このため、柔軟導電層23Yの前端から後端に亘って、配線部24Yまでの距離は略等しい。よって、柔軟導電層23Yの長さ方向において、電気抵抗のばらつきは小さい。また、裏側電極01X〜06Xも、柔軟導電層23Xと、配線部24Xと、を有しており、表側電極01Y〜06Yと同様の作用効果を奏する。
【0054】
また、配線部24Y、24Xは、全ての検出部A0101〜A0606に重なるように配置されている。このため、検出部A0101〜A0606ごとの電気抵抗のばらつきは小さい。したがって、静電容量型センサ1においては、表側電極01Y〜06Yおよび裏側電極01X〜06Xの電気抵抗の分布に起因した、検出精度の低下が小さい。つまり、面圧分布の測定精度が高い。
【0055】
また、柔軟導電層23Y、23Xは、伸縮可能である。よって、誘電層20の変形を規制しにくい。一方、配線部24Y、24Xの柔軟性は、柔軟導電層23Y、23Xと比較して低い。このため、表側電極01Y〜06Y、裏側電極01X〜06Xが、誘電層20の変形に追従して伸長された場合、配線部24Y、24Xの一部にクラックが発生して導通が断たれるおそれがある。しかし、配線部24Y、24Xは、柔軟導電層23Y、23Xの上面または下面に配置されている。したがって、仮に断線したとしても、接触する柔軟導電層23Y、23Xを通して導通は確保される。このように、静電容量型センサ1は、耐久性に優れる。なお、本実施形態において、配線部24Y、24Xの面積は、各々、柔軟導電層23Y、23Xの面積よりも小さい。よって、配線部24Y、24Xが柔軟性に乏しくても、柔軟導電層23Y、23Xの伸縮を規制しにくい。また、配線部24Y、24Xは、比較的高価な銀粉末を使用して形成されている。しかし、配線部24Y、24Xの面積は小さいため、柔軟導電層23Y、23Xの上面または下面全体に配線部24Y、24Xを配置する場合と比較して、銀粉末の使用量を減らすことができる。これにより、製造コストを低減することができる。
【0056】
本実施形態の静電容量型センサ1は、誘電層20を挟んで、表側部材21と裏側部材22とを積層して、製造される。このため、製造が容易である。また、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Y、裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23Xを、誘電層20に直接印刷しない。このため、発泡体等の印刷に不向きな材料であっても、誘電層20として採用することができる。したがって、誘電層20の材料選択の自由度が高い。また、柔軟導電層23Y、23Xは、カーボンペーストから、スクリーン印刷法により形成されている。配線部24Y、24Xは、銀ペーストから、スクリーン印刷法により形成されている。したがって、柔軟導電層23Y、23Xや配線部24Y、24Xが、細線、薄膜、大面積であっても、容易に形成することができる。
【0057】
<第二実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサと、の主な相違点は、表側部材21、裏側部材22において、ベースフィルム210、220が配置されていない点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0058】
図5に、本実施形態の静電容量型センサの断面図を示す。図5に示す断面は、図1のII−II断面に相当する。図5中、図2と対応する部位については、同じ符合で示す。前出図1および図5に示すように、センサ本体2は、誘電層20と、表側部材21と、裏側部材22と、を備えている。
【0059】
表側部材21は、カバーフィルム211と、表側電極01Y〜06Yと、表側配線01y〜06yと、表側コネクタ212と、を備えている。表側電極01Y〜06Yは、カバーフィルム211の下面に形成されている。表側配線01y〜06yは、カバーフィルム211の下面に形成されている。表側電極01Y〜06Yは、誘電層20とカバーフィルム211との間に、合計6本配置されている。表側電極01Y〜06Yは、各々、柔軟導電層23Yと、配線部24Yと、を有している。柔軟導電層23Yは、誘電層20の上面に接触するように配置されている。
【0060】
裏側部材22は、カバーフィルム221と、裏側電極01X〜06Xと、裏側配線01x〜06xと、裏側コネクタ222と、を備えている。裏側電極01X〜06Xは、カバーフィルム221の上面に形成されている。裏側配線01x〜06xは、カバーフィルム221の上面に形成されている。裏側電極01X〜06Xは、誘電層20とカバーフィルム221との間に、合計6本配置されている。裏側電極01X〜06Xは、各々、柔軟導電層23Xと、配線部24Xと、を有している。柔軟導電層23Xは、誘電層20の下面に接触するように配置されている。
【0061】
本実施形態の静電容量型センサは、次のようにして製造される。まず、表側部材作製工程において、銀ペーストをカバーフィルム211の下面(図5における方位で示す。印刷時には上向きに配置する。)にスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、表側電極01Y〜06Yの配線部24Y、表側配線01y〜06yの配線部24yを形成する。続いて、カーボンペーストを、カバーフィルム211の下面に、配線部24Y、24yを被覆するようにスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Y、表側配線01y〜06yの柔軟導電層23yを形成する。それから、表側配線01y〜06yと表側コネクタ212とを接続して、表側部材21を作製する。
【0062】
次に、裏側部材作製工程において、銀ペーストをカバーフィルム221の上面にスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、裏側電極01X〜06Xの配線部24X、裏側配線01x〜06xの配線部24xを形成する。続いて、カーボンペーストを、カバーフィルム221の上面に、配線部24X、24xを被覆するようにスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23X、裏側配線01x〜06xの柔軟導電層23xを形成する。それから、裏側配線01x〜06xと裏側コネクタ222とを接続して、裏側部材22を作製する。
【0063】
次に、積層工程において、下から順に、裏側部材22、誘電層20、表側部材21を積層する。この際、誘電層20は、表側電極01Y〜06Yおよび裏側電極01X〜06Xの形成領域に対応するように、配置される。つまり、誘電層20は、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Yと、裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23Xと、の間に挟持される。そして、対向する表側部材21および裏側部材22の周縁部を貼り合わせることにより、本実施形態の静電容量型センサを、製造する。
【0064】
本実施形態の静電容量型センサは、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の静電容量型センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型センサによると、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Y、および裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23Xが、誘電層20の上面または下面に、直接配置されている。このため、誘電層20の変形に対して、表側電極01Y〜06Y、裏側電極01X〜06Xが追従しやすい。換言すると、誘電層20の変形が、規制されにくい。また、ベースフィルム210、220を使用しないため、部品点数を削減することができる。
【0065】
<第三実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサと、の相違点は、誘電層20を挟んで表側部材21、裏側部材22を配置するのではなく、誘電層20の上面、下面に、各々、表側電極01Y〜06Yおよび表側配線01y〜06y、裏側電極01X〜06Xおよび裏側配線01x〜06xを、直接形成した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0066】
図6に、本実施形態の静電容量型センサの断面図を示す。図6に示す断面は、図1のII−II断面に相当する。図6中、図2と対応する部位については、同じ符合で示す。前出図1および図6に示すように、センサ本体2は、誘電層20と、表側電極01Y〜06Yと、表側配線01y〜06yと、表側コネクタ212と、裏側電極01X〜06Xと、裏側配線01x〜06xと、裏側コネクタ222と、を備えている。
【0067】
誘電層20は、シリコーンゴム製であり、シート状を呈している。表側電極01Y〜06Yは、誘電層20の上面に、合計6本配置されている。表側配線01y〜06yも同様に、誘電層20の上面に、合計6本配置されている。表側電極01Y〜06Yは、各々、柔軟導電層23Yと、配線部24Yと、を有している。柔軟導電層23Yは、誘電層20の上面に形成されている。
【0068】
裏側電極01X〜06Xは、誘電層20の下面に、合計6本配置されている。裏側配線01x〜06xも同様に、誘電層20の下面に、合計6本配置されている。裏側電極01X〜06Xは、各々、柔軟導電層23Xと、配線部24Xと、を有している。柔軟導電層23Xは、誘電層20の下面に形成されている。
【0069】
本実施形態の静電容量型センサは、次のようにして製造される。まず、カーボンペーストを、誘電層20の上面にスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Y、表側配線01y〜06yの柔軟導電層23yを形成する。続いて、銀ペーストを、形成した柔軟導電層23Y、23yの上面にスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、表側電極01Y〜06Yの配線部24Y、表側配線01y〜06yの配線部24yを形成する。その後、表側配線01y〜06yと表側コネクタ212とを接続する。
【0070】
次に、カーボンペーストを、誘電層20の下面(図6における方位で示す。印刷時には上向きに配置する。)にスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23X、裏側配線01x〜06xの柔軟導電層23xを形成する。続いて、銀ペーストを、形成した柔軟導電層23X、23xの下面にスクリーン印刷する。そして、加熱により塗膜を硬化させて、裏側電極01X〜06Xの配線部24X、裏側配線01x〜06xの配線部24xを形成する。その後、裏側配線01x〜06xと裏側コネクタ222とを接続する。このようにして、本実施形態の静電容量型センサを、製造する。
【0071】
本実施形態の静電容量型センサは、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の静電容量型センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型センサによると、表側電極01Y〜06Yの柔軟導電層23Y、および裏側電極01X〜06Xの柔軟導電層23Xが、誘電層20の上面または下面に、直接形成されている。このため、表側電極01Y〜06Yと裏側電極01X〜06Xとの位置決めが容易である。したがって、所望の位置に、正確に、検出部A0101〜A0606を配置することができる。また、誘電層20の変形に対して、表側電極01Y〜06Y、裏側電極01X〜06Xが追従しやすい。換言すると、誘電層20の変形が、規制されにくい。また、ベースフィルム210、220およびカバーフィルム211、221を使用しないため、部品点数を削減することができる。
【0072】
<第四〜第七実施形態>
第四〜第七実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサと、の相違点は、表側電極01Y〜06Y、裏側電極01X〜06Xにおける配線部24Y、24Xの配置形態である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0073】
図7に、第四実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図を示す。図7に示すように、配線部24Yは、幹部240Yと、六本の枝部241Yと、からなる。幹部240Yは、柔軟導電層23Yの前端から後方に伸びる直線状を呈している。幹部240Yは、柔軟導電層23Yの上面左側に配置されている。六本の枝部241Yは、各々、幹部240Yから右方に分岐して配置されている。六本の枝部241Yは、各々、前後方向に等間隔に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。本実施形態によると、柔軟導電層23Yの長さ方向および幅方向における電気抵抗のばらつきが、小さくなる。
【0074】
図8に、第五実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図を示す。図8に示すように、配線部24Yは、幹部240Yと、六本の枝部241Yと、からなる。幹部240Yは、柔軟導電層23Yの前端から後方に伸びる直線状を呈している。幹部240Yは、柔軟導電層23Yの上面中央に配置されている。六本の枝部241Yは、各々、幹部240Yから左右両方に分岐して配置されている。六本の枝部241Yは、各々、前後方向に等間隔に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。本実施形態によると、柔軟導電層23Yの長さ方向および幅方向における電気抵抗のばらつきが、小さくなる。
【0075】
図9に、第六実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図を示す。図9に示すように、配線部24Yは、柔軟導電層23Yの前端から後方に進む矩形波状を呈している。本実施形態によると、柔軟導電層23Yの長さ方向および幅方向における電気抵抗のばらつきが、小さくなる。
【0076】
図10に、第七実施形態の静電容量型センサにおける表側電極01Yの上面図を示す。図10に示すように、配線部24Yは、枠状を呈している。配線部24Yは、柔軟導電層23Yの周縁部に沿って配置されている。本実施形態によると、柔軟導電層23Yの長さ方向および幅方向における電気抵抗のばらつきが、小さくなる。
【0077】
<その他>
以上、本発明の柔軟電極構造およびトランスデューサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態においては、表側電極、裏側電極の柔軟導電層を、アクリルゴムおよびカーボンブラックを含むカーボンペーストから形成した。しかし、柔軟導電層を構成するエラストマーの種類は、特に限定されない。アクリルゴムの他、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム等が好適である。
【0079】
また、導電性炭素粉末の種類も、特に限定されない。導電性炭素粉末としては、カーボンブラックの他、グラファイト粉末等を用いることができる。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。なかでも、導電性が高いという観点から、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが好適である。グラファイト粉末としては、リン片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛粉末や、人造黒鉛粉末が挙げられる。なかでも、導電性が高いという観点から、リン片状黒鉛粉末が好適である。
【0080】
柔軟導電層の伸び率は、150%以上であることが望ましい。柔軟導電層の伸縮性を確保するという観点から、比較的少量の導電性炭素粉末を配合して、導電性を発現できることが望ましい。例えば、導電性炭素粉末の配合量は、柔軟導電層の体積を100vol%とした場合の75vol%以下であることが望ましい。50vol%以下であるとより好適である。
【0081】
なお、柔軟導電層には、上記エラストマーおよび導電性炭素粉末に加えて、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、硬化剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤、分散剤、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0082】
上記実施形態においては、表側電極、裏側電極の配線部を、ポリエステル樹脂および銀粉末を含む銀ペーストから形成した。しかし、配線部は、柔軟導電層よりも体積抵抗率が小さければよく、その材質は特に限定されない。例えば、金属線材、金属箔等から、配線部を形成してもよい。また、上記実施形態のように、配線部を、バインダーに金属粉末や導電性炭素粉末を配合した導電ペーストから形成してもよい。金属としては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等が好適である。また、バインダーの種類は、特に限定されない。柔軟導電層と同じ、あるいは異なるエラストマーでもよく、樹脂でもよい。樹脂としては、ポリエステル樹脂の他、エポキシ樹脂、変性ポリエステル樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等)、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類(セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)等)が挙げられる。配線部の体積抵抗率は、1×10−5Ω・cm以下であることが望ましい。
【0083】
また、配線部の配置形態は、特に限定されない。配線部は、柔軟導電層を単独で使用した場合と比較して、柔軟導電層の面方向における電気抵抗のばらつきが小さくなるように、配置すればよい。例えば、柔軟導電層の表面全体を被覆するように配置してもよい。しかし、製造コストを低減し、柔軟導電層の伸縮を規制しにくくするという観点から、配線部の面積は、柔軟導電層の面積よりも小さい方が望ましい。配線部の配置形態としては、上記実施形態の他、曲線状、蛇行状、ジグザグ状等であってもよい。また、上記実施形態の静電容量型センサにおいて、表側電極と裏側電極とで異なる配置形態を採用してもよい。
【0084】
上記実施形態においては、静電容量型センサを構成する表側配線、裏側配線も、表側電極、裏側電極と同じように、柔軟導電層と配線部とから構成した。しかし、表側配線、裏側配線の構成は、特に限定されない。例えば、配線部のみで構成してもよい。また、公知の金属配線等であってもよい。
【0085】
トランスデューサを構成する誘電層としては、エラストマーまたは樹脂を用いればよい。エラストマーには、ゴムおよび熱可塑性エラストマーが含まれる。例えば、静電容量を大きくするという観点では、比誘電率が高いものが望ましい。具体的には、常温における比誘電率が3以上、さらには5以上のものが望ましい。例えば、エステル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基、アミド基、スルホン基、ウレタン基、ニトリル基等の極性官能基を有するエラストマー、あるいは、これらの極性官能基を有する極性低分子量化合物を添加したエラストマーが好適である。エラストマーは架橋されていても、されていなくてもよい。また、誘電層に使用するエラストマーまたは樹脂のヤング率を調整することにより、静電容量型センサの検出感度や検出レンジを調整することができる。例えば、小さな荷重を検出する場合には、ヤング率が小さい発泡体を用いるとよい。
【0086】
好適なエラストマーとしては、例えばシリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム等が挙げられる。また、好適な樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン(架橋発泡ポリスチレンを含む)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ポリエチレン(PE)および/またはエチレンプロピレンゴム(EPR)により変性したポリプロピレン(変性PP)を用いてもよい。また、これらの樹脂の二種以上を含むポリマーアロイまたはポリマーブレンドを用いてもよい。
【0087】
上記第三実施形態以外においては、誘電層を表側基材および裏側基材で挟んで、静電容量型センサを構成した。ここで、表側基材、裏側基材におけるベースフィルム、カバーフィルムの材質は、特に限定されない。上記実施形態におけるPETの他、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる屈曲性を有する樹脂フィルムを用いることができる。また、上記第三実施形態においては、電極を被覆するように、カバーフィルムを配置してもよい。
【0088】
上記実施形態においては、本発明の柔軟電極構造を、帯状の電極として具現化した。しかし、本発明の柔軟電極構造を有する電極の形状(柔軟導電層の形状)は、特に限定されない。なお、本明細書において「帯状」とは、細長い形状を意味する。したがって、必ずしも幅が長さ方向に一定でなくてもよい。例えば、長さ方向の所定の部分の幅が広くなっていても、反対に所定の部分の幅が狭くなっていてもよい。また、側部は直線状でも、曲線状でもよい。
【0089】
例えば、電極の形状は、矩形状の他、円形状、楕円形状等であってもよい。図11に、本発明の柔軟電極構造からなる電極例の上面図を示す。電極25は、柔軟導電層250と配線部251とを有する。柔軟導電層250は円形状を呈している。配線部251は、柔軟導電層250の表面中心から、放射状に配置されている。配線部は、本形態の他、渦巻き状等に配置してもよい。円形状、楕円形状の電極は、例えばスピーカ、アクチュエータ等に使用する場合に好適である。
【0090】
本発明の柔軟電極構造を有する電極の形成方法は、特に限定されない。例えば、エラストマー分のポリマーと導電性炭素粉末とを含む組成物を、金型成形や押出成形により加圧、加熱して、柔軟導電層を形成すればよい。あるいは、エラストマー分のポリマーと導電性炭素粉末とを含む導電ペーストを塗布、硬化して、柔軟導電層を形成すればよい。そして、柔軟導電層の表面に金属線等を配置して、配線部を形成すればよい。あるいは、導電ペーストから、配線部を形成してもよい。導電ペーストを塗布するには、公知の種々の方法を採用すればよい。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。
【0091】
トランスデューサは、ある種類のエネルギーを他の種類のエネルギーに変換する装置である。トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が含まれる。したがって、本発明のトランスデューサは、上記実施形態の静電容量型センサに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0092】
1:静電容量型センサ(トランスデューサ)
2:センサ本体 20:誘電層 21:表側部材 22:裏側部材
23X、23Y、23x、23y:柔軟導電層
24X、24Y、24x、24y:配線部 25:電極
210、220:ベースフィルム 211、221:カバーフィルム
212:表側コネクタ 222:裏側コネクタ 240Y:幹部 241Y:枝部
250:柔軟導電層 251:配線部
3:演算部 30:電源回路 31:CPU 32:RAM 33:ROM
34:出力部
01X〜06X:裏側電極 01Y〜06Y:表側電極 01x〜06x:裏側配線
01y〜06y:表側配線 A0101〜A0606:検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと導電性炭素粉末とを含む柔軟導電層と、
該柔軟導電層の表面に配置され、該柔軟導電層よりも体積抵抗率が小さい配線部と、
を備え、
該配線部は、該柔軟導電層の面方向における電気抵抗のばらつきが小さくなるように配置されることを特徴とする柔軟電極構造。
【請求項2】
前記配線部の面積は、前記柔軟導電層の面積よりも小さい請求項1に記載の柔軟電極構造。
【請求項3】
前記柔軟導電層は、帯状を呈し、
前記配線部は、該柔軟導電層の少なくとも長手方向に延在する請求項1または請求項2に記載の柔軟電極構造。
【請求項4】
前記配線部は、バインダーおよび金属粉末を含む請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の柔軟電極構造。
【請求項5】
前記柔軟導電層および前記配線部は、いずれも印刷法で形成される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の柔軟電極構造。
【請求項6】
エラストマーまたは樹脂製の誘電層と、該誘電層を介して配置される複数の電極と、を備え、
複数の該電極は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の柔軟電極構造を有するトランスデューサ。
【請求項7】
複数の前記電極は、前記誘電層の表側に配置される複数の表側電極と、該誘電層の裏側に配置される複数の裏側電極と、からなり、
該誘電層を介して該表側電極の前記柔軟導電層と該裏側電極の前記柔軟導電層とが対向することにより形成される複数の検出部を備え、
該表側電極および該裏側電極の各々において、前記配線部は、少なくとも該検出部に重なるように配置され、
該検出部の静電容量の変化から面圧分布を検出可能な静電容量型センサである請求項6に記載のトランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−251896(P2012−251896A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125147(P2011−125147)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】