柱状体の補強構造、およびその補強方法
【課題】工期の途中であっても施工箇所を開放することができ、かつ作業(施工)が容易に行える柱状体の補強構造およびその補強方法を提供すること。
【解決手段】中空骨組み状に組み立てられる補強部材3と、補強部材3の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材31と、を備える補強ユニットが、鉄骨ブレース2の全周にわたって配設されることで形成される補強構造である。補強部材3は、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の鋼製リング33を有し、表面部材31は、鋼製リング33に嵌め込まれることにより、鉄骨ブレース2の周方向に沿って補強部材3の外側に連続的に取り付けられる。
【解決手段】中空骨組み状に組み立てられる補強部材3と、補強部材3の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材31と、を備える補強ユニットが、鉄骨ブレース2の全周にわたって配設されることで形成される補強構造である。補強部材3は、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の鋼製リング33を有し、表面部材31は、鋼製リング33に嵌め込まれることにより、鉄骨ブレース2の周方向に沿って補強部材3の外側に連続的に取り付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状体の補強構造、およびその補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱状体とは、構造物の鉄筋コンクリート柱などのことをいう。この鉄筋コンクリート柱の補強に関する技術としては、例えば以下のような技術が知られている。
【0003】
従来、鉄筋コンクリート支持柱躯体の表層部内に定着された複数の拡底式アンカーと、鉄筋コンクリート支持柱躯体の周囲に巻き立てた鉄筋コンクリートとを備え、拡底式アンカーのアンカー棒の頭部をナットなどを用いて前記鉄筋コンクリートに固定する鉄筋コンクリート支持柱の耐震補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、コンクリート構造物の表面に薄肉の補強鋼板を配設するコンクリート構造物の耐震補強構造も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術は、端部を内側に折り曲げられて形成される補強鋼板の当該端部を、接合治具の凹部内に収納し、接合治具と押さえ治具とで前記補強鋼板の端部を挟みこんでボルトで固定することを特徴とするものである。なお、このようにしてコンクリート構造物の周囲に複数の補強鋼板を配設し、コンクリート構造物の表面と補強鋼板との間にモルタルなどを打設する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−332750号公報
【特許文献2】特開2005−54500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、鉄筋コンクリート柱などの既設構造物の耐震補強工事を施工するに当たっては、平日の営業時間終了後から翌日の営業開始時間までが工事可能時間であるなど工事時間帯に制約がある場合が多々あり、また、既設構造物内の床などを傷つけたり汚したりしないように十分な注意を払って施工しなければならない。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、鉄筋コンクリート支持柱躯体の周囲に曲げ補強鉄筋や帯鉄筋を配筋するとともに、鉄筋コンクリート支持柱躯体に拡底式アンカーを打ち込み、そして曲げ補強鉄筋や帯鉄筋を囲むように型枠し、型枠内にコンクリートを打設する。すなわち、特許文献1に記載された技術では、曲げ補強鉄筋や帯鉄筋を配筋するなどの作業を行い、コンクリートを打設し、そしてある程度コンクリートが硬化したあとでなければ、施工箇所を開放することができない。したがって、工事時間帯に制約がある場合には、一連の作業を工事時間内に終了することが難しい場合がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術では、補強鋼板の相互の固定のために、接合治具と押さえ治具とで補強鋼板の端部を挟みこんでボルトなどで固定する必要があり、作業が煩雑である。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、工期の途中であっても施工箇所を開放することができ、かつ作業(施工)が容易に行える柱状体の補強構造およびその補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明に係る柱状体の補強構造は、鉄筋コンクリート柱などの柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強構造に関する。そして、本発明に係る柱状体の補強構造は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の柱状体の補強構造は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る柱状体の補強構造における第1の特徴は、中空骨組み状に組み立てられる補強部材と、当該補強部材の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材と、を備える補強ユニットが、当該柱状体の全周にわたって配設されることで形成され、前記補強部材は、前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有し、前記表面部材は、前記板状体に嵌め込まれることにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付けられることである。
【0012】
尚、柱状体とは、構造物の鉄筋コンクリート柱や、架構の内側に取り付けられたブレースなどのことである。
【0013】
この構成によると、中空骨組み状に組み立てられた補強部材の板状体に対して、複数の表面部材を嵌めこむことによって柱状体の補強がなされていく。表面部材を板状体に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、工期の短縮を図ることができる。また、表面部材の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0014】
また、本発明に係る柱状体の補強構造における第2の特徴は、前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された複数の当該嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材が嵌め込まれ、当該嵌合部材を介して前記表面部材が前記板状体に嵌め込まれることである。
【0015】
この構成によると、表面部材を、嵌合部材を介して板状体に嵌め込むことにより、複数の表面部材で形成される柱状体の補強面のシール性を向上させることができる。また、表面部材と同様に、嵌合部材も嵌めこみ作業により取り付けられるため、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0016】
さらに、本発明に係る柱状体の補強構造における第3の特徴は、前記表面部材は、パネル状に形成され、前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、前記表面部材が前記取付部に嵌め込まれることである。
【0017】
この構成によると、パネル状に形成された表面部材を板状体に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0018】
さらに、本発明に係る柱状体の補強構造における第4の特徴は、中空骨組み状に組み立てられた前記補強部材の端部に位置する前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板が取り付けられ、前記端部に位置する前記板状体と、前記妻板との間に不織布が挟み込まれていることである。
【0019】
この構成によると、妻板と、上記端部に位置する板状体との間の隙間に不織布が挟み込まれていることにより、柱状体と、その周囲に筒状に組み立てられた表面部材との間に自硬化性充填材を注入する際の、エア抜きが可能となる。
【0020】
また、本発明は、その第2の態様によれば、鉄骨ブレースなどの柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強方法に関する。そして、本発明の柱状体の補強方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る柱状体の補強方法における第1の特徴は、前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有する補強部材を、当該柱状体の全周にわたって配設して中空骨組み状に組み立てる補強部材組立工程と、筒状に組み立てられる複数の表面部材を、前記板状体に嵌め込むことにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付ける表面部材取付工程と、を備えていることである。
【0022】
この構成によると、中空骨組み状に組み立てられた補強部材の板状体に対して、複数の表面部材を嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、工期の短縮を図ることができる。また、表面部材の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0023】
また、本発明に係る柱状体の補強方法における第2の特徴は、前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、前記表面部材取付工程は、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された前記板状体の複数の嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材を嵌め込んだ後、当該嵌合部材を介して前記表面部材を前記板状体に嵌め込んで取り付ける工程であることである。
【0024】
この構成によると、表面部材を、嵌合部材を介して板状体に嵌め込むことにより、複数の表面部材で形成される柱状体の補強面のシール性を向上させることができる。また、表面部材と同様に、嵌合部材も嵌めこみ作業により取り付けられるため、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0025】
さらに、本発明に係る柱状体の補強方法における第3の特徴は、前記表面部材は、パネル状に形成され、前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、前記表面部材取付工程は、前記表面部材を前記取付部に嵌め込んで取り付ける工程であることである。
【0026】
この構成によると、パネル状に形成された表面部材を板状体に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0027】
さらに、本発明に係る柱状体の補強方法における第4の特徴は、前記補強部材を中空骨組み状に組み立てた後、当該補強部材の端部に配設された前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板を取り付けるとともに、当該板状体と当該妻板との間に不織布を挟み込むことである。
【0028】
この構成によると、妻板と、上記端部に位置する板状体との間の隙間に不織布を挟み込むことにより、柱状体と、その周囲に筒状に組み立てられた表面部材との間に自硬化性充填材を注入する際の、エア抜きが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る柱状体の補強構造により補強された柱の側面図である。図2は、本発明に係る柱状体の補強構造により補強された鉄骨ブレースの側面図である。
【0031】
図1、2に示すように、本発明に係る柱状体の補強構造、およびその補強方法は、鉄筋コンクリート製の柱102などの柱状体の部分補強(一部補強)や全体補強、鉄骨ブレース2などのブレースの部分補強(一部補強)や全体補強などに広く適用することができるものである。図1(a)は、本発明に係る柱状体の補強構造により部分補強された柱102を示し、図1(b)は、全体補強された柱102を示す。また、図2(a)は、本発明に係る柱状体の補強構造により部分補強された鉄骨ブレース2を示し、図2(b)は、全体補強された鉄骨ブレース2を示す。
【0032】
図1(a)に示すように、柱102は、架構101を構成する鉛直方向に立設された柱であり、例えば鉄筋コンクリートで形成されたものである。そして、柱102の長手方向における中央部を含む中間部分が、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強されている。図1(b)は、柱102の長手方向全体を、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強した状態を示している。尚、柱102は、鋼材からなるものであってもよい。
【0033】
図2(a)に示すように、鉄骨ブレース2は、柱と梁で床や屋根などを支える架構1の内側に斜めに延在させて架設されたブレースであり、例えばH型鋼などの鋼材からなる。そして、鉄骨ブレース2の長手方向における中央部を含む中間部分が、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強されている。図2(b)は、鉄骨ブレース2の長手方向全体を、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強した状態を示している。尚、補強対象であるブレースは、円形や角形の鋼管であってもよい。
【0034】
また、図3は、本発明に係る柱状体の補強構造により補強された、図2(a)に示す鉄骨ブレース2の一部斜視図である。図3(a)は、鉄骨ブレース2の補強後の完成形態が、断面円形となるようにしたものであり、図3(b)は、鉄骨ブレース2の補強後の完成形態が、断面矩形となるようにしたものである。尚、鉄骨ブレース2などの柱状体の補強を、完成後の断面形状が、六角形などの多角形や楕円となるように実施することもできる。以下の説明においては、主に、H型鋼からなる鉄骨ブレース2を、補強後の完成形態が断面円形となるように補強した図3(a)の例について記載する。
【0035】
図4は、図3(a)のA−A断面図である。図5は、図4のB部拡大図である。また、図6は、嵌合部材34および表面部材31の単体の斜視図である。さらに、図8は、中空骨組み状に組み立てられた補強部材3の斜視図である。
【0036】
図4、5、および8に示すように、本実施形態に係る柱状体の補強構造は、中空骨組み状に組み立てられる補強部材3と、補強部材3の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材31と、を備える補強ユニットが、鉄骨ブレース2の全周にわたって配設されるとともに、筒状に組み立てられた表面部材31と鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32が注入されることで形成される。自硬化性充填材32としては、例えば、セメントミルク、モルタル、コンクリートなどのセメント系材料、又は不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂系材料などが使用される。
【0037】
また、補強部材3は、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の鋼製リング33(板状体)と、鋼製リング33を所定の間隔で配置し固定するための全ネジボルト35およびナット37とを備えている。鋼製リング33は、外周に複数の嵌合部33a、および隣り合う嵌合部33aの間に連結用孔33bが設けられた、全体として円弧状の板状体であり、相互に同形の2分割構造である。鋼製リング33の内周は、鉄骨ブレース2の断面形状に合わせてコ字形に形成されている(尚、図2に示したような鉄筋コンクリート製の断面円形の柱102を補強する場合には、鋼製リング33の内周は、柱102の外周形状に合わせて円弧状に形成される)。嵌合部33aは、凹の形状を有し、略中央部が広く、開口部分はそれよりも狭く形成されている。そして、鋼製リング33は、2枚1組で使用され、鉄骨ブレース2の両側から鋼製リング33で鉄骨ブレース2を挟み込んで締め付けて取り付け、端部が相互に重ね合わせられる。重ね合わせられた部分は、連結用孔33bに挿入された全ネジボルト35a(35)、およびナット37で固定される。このようにして、2枚1組の鋼製リング33が、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で配置されることになる。ここで、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って隣り合う鋼製リング33の嵌合部33aは、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って一直線上に位置させられる。尚、鋼製リング33は、必ずしも2分割構造である必要はなく、3分割構造、4分割構造などであってもよい。また、鋼製リング33の相互に重ね合わせられた部分を直接溶接して一体化してもよい。
【0038】
尚、鉄骨ブレース2に当接させた鋼製リング33の内周と、鉄骨ブレース2とをさらに溶接固定してもよい。ここで、連結用孔33bが複数設けられていることにより、この連結用孔33bに挿入され鋼製リング33を互いに連結するための全ネジボルト35の数量を適宜決定することができ、中空骨組み状に組み立てられる補強部材3の強度を自由に設定することが可能となる。
【0039】
尚、ナット37を鋼製リング33の位置調整に使用できなくてもよい場合には、全ネジボルト35の代わりに丸鋼や異形鉄筋を使用して、丸鋼(または異形鉄筋)と鋼製リング33とを溶接で固定してもよい。但し、鉄骨ブレース2に対して鋼製リング33を所定間隔で且つ直角に配置するためには、全ネジボルト35およびナット37を使用したほうが、鋼製リング33の位置調整および角度調整を容易に行うことができるので好ましい。鋼製リング33の材質は、コスト面と強度面とから炭素鋼とすることが好ましいが、ステンレス鋼とすることもできる。また、鋼材に限らず合成樹脂などの材料を使用することもできる。
【0040】
次に、鋼製リング33の嵌合部33aには、断面C字形の嵌合部材34が嵌め込まれ、そして嵌合部材34を介して断面略コ字形の表面部材31が鋼製リング33に嵌め込まれている。筒状に組み立てられた表面部材31と鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32が注入されるが、嵌合部材34を介して表面部材31を鋼製リング33に嵌め込むことにより、複数の表面部材31で形成される鉄骨ブレース2の補強面のシール性を向上させることができ、表面部材31間の隙間から自硬化性充填材32やその水分が漏れ出すことは防止される。
【0041】
図6(a)に示すように、嵌合部材34は、略一様の厚みをもった一様断面の長尺部材であり、その断面形状は、鋼製リング33の嵌合部33aとほぼ同一の形状で角張ったC字形となっている。嵌合部材34の材質は、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、ステンレス鋼等とすることもできる。
【0042】
また、図6(b)に示すように、表面部材31は、略一様の厚みをもった一様断面の長尺部材であり、その断面形状は、鉄骨ブレース2の補強面を形成する平らな面を有し、その両側端部には長手方向に連続する係止用凸部31aと31bとが形成されて対称形をなした略コ字形となっている。表面部材31の材質は、嵌合部材34の材質と同様であり、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、装飾性のあるステンレス鋼等とすることもできる。
【0043】
尚、図5に示すように、表面部材31の係止用凸部31aおよび31bと、嵌合部材34との間に例えば合成ゴムや水膨潤ゴム等のシール材36を介在させることで、補強面のシール性をさらに向上させることができる。
【0044】
ここで、H型鋼からなる鉄骨ブレース2を、補強後の完成形態が断面矩形となるように補強した例について、補強後の完成形態が断面円形の場合と異なる点に関し図7を参照しながら説明する。図7は、図3(b)のC−C断面図である。尚、補強後の完成形態が断面円形の場合と、同じ構成部材については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0045】
図7に示すように、鋼製リング133は、全体としてコ字形の板状体であり、2枚1組で使用され、鉄骨ブレース2の両側から鉄骨ブレース2を挟み込んで締め付けて取り付けられている。そして、鋼製リング133のコーナーに取り付けられる表面部材131は、円弧状の断面形状に形成されている。尚、コーナー部の曲率が小さい場合は、図6(b)に示した表面部材31を曲げて使用できる場合もある。
【0046】
次に、本実施形態に係る鉄骨ブレース2の補強方法(補強工法)について説明する。図9は、図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材3に嵌合部材34が取り付けられた状態の斜視図である。図10は、図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材3の端部を説明するための当該補強部材3の縦断面図である。
【0047】
(補強部材組立工程)
まず、2枚1組の鋼製リング33を、鉄骨ブレース2の両側から挟み込むようにして鉄骨ブレース2に当接させ、端部を相互に重ね合わせる。そして、鋼製リング33の連結用孔33bに全ネジボルト35を挿入し、2枚1組の鋼製リング33が鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で且つ鉄骨ブレース2に対して直角に配置されるよう、ナット37で位置調整した後、2つのナット37で鋼製リング33を挟み込んで締め付け固定する。このようにして、鋼製リング33および全ネジボルト35を鉄骨ブレース2の全周にわたって配設し、補強部材3を補強長さ分、中空骨組み状に組み立てる。この際、鉄骨ブレース2に当接させた鋼製リング33の内周と、鉄骨ブレース2とを溶接固定してもよい。尚、全ネジボルト35は、補強長さを1本でカバーするものである必要はなく、長手方向に分割したものを用いた場合には、端部同士を溶接により固定する。また、前記したように、全ネジボルト35の数量を適宜決定することにより、中空骨組み状に組み立てられる補強部材3の強度を自由に設定できる。
【0048】
また、図10に示すように、中空骨組み状に組み立てられた補強部材3の長手方向両端部に配設される端部鋼製リング33Eには、予めナット37が溶接されており、全ネジボルト35と連結させる構造となっている。そして、端部鋼製リング33Eに隣接させて、妻板39がボルト40およびナットで取り付けられている。妻板39も鋼製リング33と同様に、相互に同形の2枚1組の2分割構造であり、鉄骨ブレース2の両側から挟み込むようにして取り付けられる。また、妻板39と鋼製リング33との間には不織布41が挟み込まれ、端部鋼製リング33Eの段差部分には、厚さ調整板38が挟み込まれている。これにより、鉄骨ブレース2と、その周囲に筒状に組み立てられた表面部材31との間に自硬化性充填材32を注入する際の、エア抜きが可能となる。また、補強部材3の下端側の妻板39には、充填材注入口(不図示)が設けられている。妻板39の材質は、炭素鋼であってもよいし、ステンレス鋼であってもよい。また、鋼材に限らず合成樹脂などの材料を使用することもできる。
【0049】
(表面部材取付工程)
次に、鉄骨ブレース2の周方向に沿って補強部材3の外側に表面部材31を連続的に取り付ける表面部材取付工程を行う。まず、図9に示すように、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って隣り合って所定の間隔で配置された鋼製リング33の複数の嵌合部33aに、図6(a)に示した嵌合部材34を補強部材3の全周にわたって嵌め込んでいく。尚、長尺のシール材36は、予め嵌合部材34に取り付けておく。但し嵌合部材34を鋼製リング33に嵌め込んだ後取り付けてもよい。その後、図4、5に示したように、嵌合部材34を介して表面部材31を鋼製リング33に嵌め込んで、複数の表面部材31を補強部材3の外側に取り付けていき、鉄骨ブレース2の全周にわたって筒状に組み立てていく。
【0050】
(充填材注入工程)
そして、鉄骨ブレース2の全周にわたって筒状に組み立てられた表面部材31と、鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32を注入することにより補強層を形成する充填材注入工程が行われる。自硬化性充填材32の注入は、補強部材3の下端側の妻板39に設けられた充填材注入口から行われる。自硬化性充填材32の注入により、中空骨組み状に組み立てられた補強部材3内部の空気は、補強部材3の上端側の妻板39と鋼製リング33との間から抜けていく。尚、工事時間などの制約があれば、表面部材取付工程が完了した後、施工箇所を開放して、日を改めて充填材注入工程を行ってもよい。
【0051】
本実施形態の補強構造によると、補強部材3の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材31を用いるので、予め補強対象である鉄骨ブレース2の長さや寸法、構造物内への搬入口寸法、施工設備などに応じて、表面部材31の寸法(長さ、幅など)を適宜設定することができ、施工にあたり大型の揚重機などの大規模な設備は必要でなくなる。すなわち、小規模な工事で容易に鉄骨ブレース2を補強することができる。また、表面部材31および嵌合部材34を鋼製リング33に嵌め込んでいくことにより鉄骨ブレース2の補強面を形成するので、作業は容易であり、すなわち施工を迅速に行えるので、工期の短縮を図ることができる。また、表面部材31の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る柱状体の補強構造について説明する。図11は、第2実施形態に係る表面部材51を示すである。図12は、第2実施形態に係る鋼製リング61(板状体)の斜視図である。図13は、中空骨組み状に組み立てられた補強部材23の斜視図である。図14は、図13に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材23に図11に示す表面部材51が取り付けられた状態の斜視図である。また、図15は、自硬化性充填材32が注入された後の図14のD−D断面図である。尚、本実施形態の説明においては、前記第1実施形態と同様の構成部材については同一の符号を付し、適宜その説明を省略することとする。
【0053】
図11(a)は、表面部材51の斜視図である。表面部材51は、正方形(長方形であってもよい)の樹脂製の平板としてパネル状に形成されている。表面部材51の材質は、表面部材31の材質と同様であり、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、装飾性のあるステンレス鋼等とすることもできる。
【0054】
そして、表面部材51の各コーナー付近(四隅近傍部分)には、突起部52がそれぞれ設けられている。図11(b)は、突起部52の断面図であるが、突起部52は、係止片52aを有している。この突起部52が鋼製リング61(図12参照)の取付部63の嵌込用孔63aに嵌め込まれることで、係止片52aが嵌込用孔63aと係止するようになっている。これにより、表面部材51が鋼製リング61(板状体)の取付部63に取り付けられることになる。
【0055】
次に、図12に示すように、本実施形態に係る鋼製リング61は、平板状に形成されている平板部62と、平板部62に対して曲折するように設けられた取付部63とを備えて構成されている。平板部62は、全体として円弧状に形成され、外周近傍に全ネジボルト35が挿入される複数の連結用孔62aが設けられている。
【0056】
取付部63は、略半割りのリング状板材であり、平板部62の外周端に対して溶接などにより固定されている。また、取付部63には複数の嵌込用孔63aが形成されており、表面部材51に設けられている突起部52がこの嵌込用孔63aに嵌め込まれることで、表面部材51が取付部63に取り付けられることになる。
【0057】
前記第1実施形態と同様に、本実施形態における補強部材組立工程においても、まず、2枚1組の鋼製リング61を、鉄骨ブレース2の両側から挟み込むようにして鉄骨ブレース2に当接させ、端部を相互に重ね合わせる。そして、鋼製リング61の平板部62の連結用孔62aに全ネジボルト35を挿入し、2枚1組の鋼製リング61が鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で且つ鉄骨ブレース2に対して直角に配置されるよう、ナット37で位置調整した後、2つのナット37で鋼製リング61を挟み込んで締め付け固定する。このようにして、鋼製リング61および全ネジボルト35を鉄骨ブレース2の全周にわたって配設し、補強部材23を補強長さ分、中空骨組み状に組み立てる(図13参照)。
【0058】
その後、表面部材51を鋼製リング61の取付部63に嵌め込んで、補強部材23の外側にすきまなく表面部材51を取り付ける(図14参照)。そして、鉄骨ブレース2の全周にわたって筒状に組み立てられた表面部材51と、鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32を注入することにより補強層を形成する(図15参照)。
【0059】
本実施形態によると、パネル状に形成された複数の表面部材51を用いることにより、第1実施形態と同様に、施工にあたり大型の揚重機などの大規模な設備は必要でない。すなわち、小規模な工事で容易に施工することができる。また、パネル状に形成された表面部材51を鋼製リング61に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、施工を迅速に行える。また、表面部材51の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0060】
上記第2実施形態においては、鉄骨ブレース2を補強する形態を示したが、図1に示したように、鉄筋コンクリートなどからなる柱102を補強する場合もある。図16は、鋼製リング61の変形例を示す斜視図である。図16に示す鋼製リング61’は、図12に示した鋼製リング61とは異なり、アンカー取付部64がさらに設けられている。そしてアンカー取付部64は、平板部62に対して下方に曲折するように設けられるとともに、アンカー取付部64には柱102に埋設される鉄筋に固定した異形鉄筋などのアンカーが挿通される貫通孔64aが設けられている。このようなアンカー取付部64が設けられていることで、柱102の鉄筋に固定された異形鉄筋などのアンカーで鋼製リング61’を固定することができるため、柱102に対してより強固に一体化される補強構造を容易に実現することができる。尚、アンカー取付部64は、平板部62に対して上方に曲折するように設けてもよい。また、このようなアンカー取付部64を、第1実施形態で示した鋼製リング33、鋼製リング133に設けてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る柱状体の補強構造により補強された柱の側面図である。
【図2】本発明に係る柱状体の補強構造により補強された鉄骨ブレースの側面図である。
【図3】本発明に係る柱状体の補強構造により補強された、図2(a)に示す鉄骨ブレースの一部斜視図である。
【図4】図3(a)のA−A断面図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】嵌合部材および表面部材の斜視図である。
【図7】図3(b)のC−C断面図である。
【図8】中空骨組み状に組み立てられた補強部材の斜視図である。
【図9】図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材に嵌合部材が取り付けられた状態の斜視図である。
【図10】図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材の端部を説明するための当該補強部材の縦断面図である。
【図11】第2実施形態に係る表面部材を示すである。
【図12】第2実施形態に係る鋼製リング(板状体)の斜視図である。
【図13】中空骨組み状に組み立てられた補強部材の斜視図である。
【図14】図13に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材に図11に示す表面部材が取り付けられた状態の斜視図である。
【図15】自硬化性充填材が注入された後の図14のD−D断面図である。
【図16】図12に示す鋼製リングの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1:架構
2:鉄骨ブレース
3:補強部材
31:表面部材
33:鋼製リング(板状体)
34:嵌合部材
102:柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状体の補強構造、およびその補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱状体とは、構造物の鉄筋コンクリート柱などのことをいう。この鉄筋コンクリート柱の補強に関する技術としては、例えば以下のような技術が知られている。
【0003】
従来、鉄筋コンクリート支持柱躯体の表層部内に定着された複数の拡底式アンカーと、鉄筋コンクリート支持柱躯体の周囲に巻き立てた鉄筋コンクリートとを備え、拡底式アンカーのアンカー棒の頭部をナットなどを用いて前記鉄筋コンクリートに固定する鉄筋コンクリート支持柱の耐震補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、コンクリート構造物の表面に薄肉の補強鋼板を配設するコンクリート構造物の耐震補強構造も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術は、端部を内側に折り曲げられて形成される補強鋼板の当該端部を、接合治具の凹部内に収納し、接合治具と押さえ治具とで前記補強鋼板の端部を挟みこんでボルトで固定することを特徴とするものである。なお、このようにしてコンクリート構造物の周囲に複数の補強鋼板を配設し、コンクリート構造物の表面と補強鋼板との間にモルタルなどを打設する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−332750号公報
【特許文献2】特開2005−54500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、鉄筋コンクリート柱などの既設構造物の耐震補強工事を施工するに当たっては、平日の営業時間終了後から翌日の営業開始時間までが工事可能時間であるなど工事時間帯に制約がある場合が多々あり、また、既設構造物内の床などを傷つけたり汚したりしないように十分な注意を払って施工しなければならない。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、鉄筋コンクリート支持柱躯体の周囲に曲げ補強鉄筋や帯鉄筋を配筋するとともに、鉄筋コンクリート支持柱躯体に拡底式アンカーを打ち込み、そして曲げ補強鉄筋や帯鉄筋を囲むように型枠し、型枠内にコンクリートを打設する。すなわち、特許文献1に記載された技術では、曲げ補強鉄筋や帯鉄筋を配筋するなどの作業を行い、コンクリートを打設し、そしてある程度コンクリートが硬化したあとでなければ、施工箇所を開放することができない。したがって、工事時間帯に制約がある場合には、一連の作業を工事時間内に終了することが難しい場合がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術では、補強鋼板の相互の固定のために、接合治具と押さえ治具とで補強鋼板の端部を挟みこんでボルトなどで固定する必要があり、作業が煩雑である。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、工期の途中であっても施工箇所を開放することができ、かつ作業(施工)が容易に行える柱状体の補強構造およびその補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明に係る柱状体の補強構造は、鉄筋コンクリート柱などの柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強構造に関する。そして、本発明に係る柱状体の補強構造は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の柱状体の補強構造は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る柱状体の補強構造における第1の特徴は、中空骨組み状に組み立てられる補強部材と、当該補強部材の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材と、を備える補強ユニットが、当該柱状体の全周にわたって配設されることで形成され、前記補強部材は、前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有し、前記表面部材は、前記板状体に嵌め込まれることにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付けられることである。
【0012】
尚、柱状体とは、構造物の鉄筋コンクリート柱や、架構の内側に取り付けられたブレースなどのことである。
【0013】
この構成によると、中空骨組み状に組み立てられた補強部材の板状体に対して、複数の表面部材を嵌めこむことによって柱状体の補強がなされていく。表面部材を板状体に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、工期の短縮を図ることができる。また、表面部材の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0014】
また、本発明に係る柱状体の補強構造における第2の特徴は、前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された複数の当該嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材が嵌め込まれ、当該嵌合部材を介して前記表面部材が前記板状体に嵌め込まれることである。
【0015】
この構成によると、表面部材を、嵌合部材を介して板状体に嵌め込むことにより、複数の表面部材で形成される柱状体の補強面のシール性を向上させることができる。また、表面部材と同様に、嵌合部材も嵌めこみ作業により取り付けられるため、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0016】
さらに、本発明に係る柱状体の補強構造における第3の特徴は、前記表面部材は、パネル状に形成され、前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、前記表面部材が前記取付部に嵌め込まれることである。
【0017】
この構成によると、パネル状に形成された表面部材を板状体に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0018】
さらに、本発明に係る柱状体の補強構造における第4の特徴は、中空骨組み状に組み立てられた前記補強部材の端部に位置する前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板が取り付けられ、前記端部に位置する前記板状体と、前記妻板との間に不織布が挟み込まれていることである。
【0019】
この構成によると、妻板と、上記端部に位置する板状体との間の隙間に不織布が挟み込まれていることにより、柱状体と、その周囲に筒状に組み立てられた表面部材との間に自硬化性充填材を注入する際の、エア抜きが可能となる。
【0020】
また、本発明は、その第2の態様によれば、鉄骨ブレースなどの柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強方法に関する。そして、本発明の柱状体の補強方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る柱状体の補強方法における第1の特徴は、前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有する補強部材を、当該柱状体の全周にわたって配設して中空骨組み状に組み立てる補強部材組立工程と、筒状に組み立てられる複数の表面部材を、前記板状体に嵌め込むことにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付ける表面部材取付工程と、を備えていることである。
【0022】
この構成によると、中空骨組み状に組み立てられた補強部材の板状体に対して、複数の表面部材を嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、工期の短縮を図ることができる。また、表面部材の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0023】
また、本発明に係る柱状体の補強方法における第2の特徴は、前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、前記表面部材取付工程は、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された前記板状体の複数の嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材を嵌め込んだ後、当該嵌合部材を介して前記表面部材を前記板状体に嵌め込んで取り付ける工程であることである。
【0024】
この構成によると、表面部材を、嵌合部材を介して板状体に嵌め込むことにより、複数の表面部材で形成される柱状体の補強面のシール性を向上させることができる。また、表面部材と同様に、嵌合部材も嵌めこみ作業により取り付けられるため、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0025】
さらに、本発明に係る柱状体の補強方法における第3の特徴は、前記表面部材は、パネル状に形成され、前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、前記表面部材取付工程は、前記表面部材を前記取付部に嵌め込んで取り付ける工程であることである。
【0026】
この構成によると、パネル状に形成された表面部材を板状体に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、施工を迅速に行える。
【0027】
さらに、本発明に係る柱状体の補強方法における第4の特徴は、前記補強部材を中空骨組み状に組み立てた後、当該補強部材の端部に配設された前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板を取り付けるとともに、当該板状体と当該妻板との間に不織布を挟み込むことである。
【0028】
この構成によると、妻板と、上記端部に位置する板状体との間の隙間に不織布を挟み込むことにより、柱状体と、その周囲に筒状に組み立てられた表面部材との間に自硬化性充填材を注入する際の、エア抜きが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る柱状体の補強構造により補強された柱の側面図である。図2は、本発明に係る柱状体の補強構造により補強された鉄骨ブレースの側面図である。
【0031】
図1、2に示すように、本発明に係る柱状体の補強構造、およびその補強方法は、鉄筋コンクリート製の柱102などの柱状体の部分補強(一部補強)や全体補強、鉄骨ブレース2などのブレースの部分補強(一部補強)や全体補強などに広く適用することができるものである。図1(a)は、本発明に係る柱状体の補強構造により部分補強された柱102を示し、図1(b)は、全体補強された柱102を示す。また、図2(a)は、本発明に係る柱状体の補強構造により部分補強された鉄骨ブレース2を示し、図2(b)は、全体補強された鉄骨ブレース2を示す。
【0032】
図1(a)に示すように、柱102は、架構101を構成する鉛直方向に立設された柱であり、例えば鉄筋コンクリートで形成されたものである。そして、柱102の長手方向における中央部を含む中間部分が、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強されている。図1(b)は、柱102の長手方向全体を、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強した状態を示している。尚、柱102は、鋼材からなるものであってもよい。
【0033】
図2(a)に示すように、鉄骨ブレース2は、柱と梁で床や屋根などを支える架構1の内側に斜めに延在させて架設されたブレースであり、例えばH型鋼などの鋼材からなる。そして、鉄骨ブレース2の長手方向における中央部を含む中間部分が、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強されている。図2(b)は、鉄骨ブレース2の長手方向全体を、複数の表面部材31を含む本実施形態に係る柱状体の補強構造により補強した状態を示している。尚、補強対象であるブレースは、円形や角形の鋼管であってもよい。
【0034】
また、図3は、本発明に係る柱状体の補強構造により補強された、図2(a)に示す鉄骨ブレース2の一部斜視図である。図3(a)は、鉄骨ブレース2の補強後の完成形態が、断面円形となるようにしたものであり、図3(b)は、鉄骨ブレース2の補強後の完成形態が、断面矩形となるようにしたものである。尚、鉄骨ブレース2などの柱状体の補強を、完成後の断面形状が、六角形などの多角形や楕円となるように実施することもできる。以下の説明においては、主に、H型鋼からなる鉄骨ブレース2を、補強後の完成形態が断面円形となるように補強した図3(a)の例について記載する。
【0035】
図4は、図3(a)のA−A断面図である。図5は、図4のB部拡大図である。また、図6は、嵌合部材34および表面部材31の単体の斜視図である。さらに、図8は、中空骨組み状に組み立てられた補強部材3の斜視図である。
【0036】
図4、5、および8に示すように、本実施形態に係る柱状体の補強構造は、中空骨組み状に組み立てられる補強部材3と、補強部材3の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材31と、を備える補強ユニットが、鉄骨ブレース2の全周にわたって配設されるとともに、筒状に組み立てられた表面部材31と鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32が注入されることで形成される。自硬化性充填材32としては、例えば、セメントミルク、モルタル、コンクリートなどのセメント系材料、又は不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂系材料などが使用される。
【0037】
また、補強部材3は、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の鋼製リング33(板状体)と、鋼製リング33を所定の間隔で配置し固定するための全ネジボルト35およびナット37とを備えている。鋼製リング33は、外周に複数の嵌合部33a、および隣り合う嵌合部33aの間に連結用孔33bが設けられた、全体として円弧状の板状体であり、相互に同形の2分割構造である。鋼製リング33の内周は、鉄骨ブレース2の断面形状に合わせてコ字形に形成されている(尚、図2に示したような鉄筋コンクリート製の断面円形の柱102を補強する場合には、鋼製リング33の内周は、柱102の外周形状に合わせて円弧状に形成される)。嵌合部33aは、凹の形状を有し、略中央部が広く、開口部分はそれよりも狭く形成されている。そして、鋼製リング33は、2枚1組で使用され、鉄骨ブレース2の両側から鋼製リング33で鉄骨ブレース2を挟み込んで締め付けて取り付け、端部が相互に重ね合わせられる。重ね合わせられた部分は、連結用孔33bに挿入された全ネジボルト35a(35)、およびナット37で固定される。このようにして、2枚1組の鋼製リング33が、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で配置されることになる。ここで、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って隣り合う鋼製リング33の嵌合部33aは、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って一直線上に位置させられる。尚、鋼製リング33は、必ずしも2分割構造である必要はなく、3分割構造、4分割構造などであってもよい。また、鋼製リング33の相互に重ね合わせられた部分を直接溶接して一体化してもよい。
【0038】
尚、鉄骨ブレース2に当接させた鋼製リング33の内周と、鉄骨ブレース2とをさらに溶接固定してもよい。ここで、連結用孔33bが複数設けられていることにより、この連結用孔33bに挿入され鋼製リング33を互いに連結するための全ネジボルト35の数量を適宜決定することができ、中空骨組み状に組み立てられる補強部材3の強度を自由に設定することが可能となる。
【0039】
尚、ナット37を鋼製リング33の位置調整に使用できなくてもよい場合には、全ネジボルト35の代わりに丸鋼や異形鉄筋を使用して、丸鋼(または異形鉄筋)と鋼製リング33とを溶接で固定してもよい。但し、鉄骨ブレース2に対して鋼製リング33を所定間隔で且つ直角に配置するためには、全ネジボルト35およびナット37を使用したほうが、鋼製リング33の位置調整および角度調整を容易に行うことができるので好ましい。鋼製リング33の材質は、コスト面と強度面とから炭素鋼とすることが好ましいが、ステンレス鋼とすることもできる。また、鋼材に限らず合成樹脂などの材料を使用することもできる。
【0040】
次に、鋼製リング33の嵌合部33aには、断面C字形の嵌合部材34が嵌め込まれ、そして嵌合部材34を介して断面略コ字形の表面部材31が鋼製リング33に嵌め込まれている。筒状に組み立てられた表面部材31と鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32が注入されるが、嵌合部材34を介して表面部材31を鋼製リング33に嵌め込むことにより、複数の表面部材31で形成される鉄骨ブレース2の補強面のシール性を向上させることができ、表面部材31間の隙間から自硬化性充填材32やその水分が漏れ出すことは防止される。
【0041】
図6(a)に示すように、嵌合部材34は、略一様の厚みをもった一様断面の長尺部材であり、その断面形状は、鋼製リング33の嵌合部33aとほぼ同一の形状で角張ったC字形となっている。嵌合部材34の材質は、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、ステンレス鋼等とすることもできる。
【0042】
また、図6(b)に示すように、表面部材31は、略一様の厚みをもった一様断面の長尺部材であり、その断面形状は、鉄骨ブレース2の補強面を形成する平らな面を有し、その両側端部には長手方向に連続する係止用凸部31aと31bとが形成されて対称形をなした略コ字形となっている。表面部材31の材質は、嵌合部材34の材質と同様であり、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、装飾性のあるステンレス鋼等とすることもできる。
【0043】
尚、図5に示すように、表面部材31の係止用凸部31aおよび31bと、嵌合部材34との間に例えば合成ゴムや水膨潤ゴム等のシール材36を介在させることで、補強面のシール性をさらに向上させることができる。
【0044】
ここで、H型鋼からなる鉄骨ブレース2を、補強後の完成形態が断面矩形となるように補強した例について、補強後の完成形態が断面円形の場合と異なる点に関し図7を参照しながら説明する。図7は、図3(b)のC−C断面図である。尚、補強後の完成形態が断面円形の場合と、同じ構成部材については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0045】
図7に示すように、鋼製リング133は、全体としてコ字形の板状体であり、2枚1組で使用され、鉄骨ブレース2の両側から鉄骨ブレース2を挟み込んで締め付けて取り付けられている。そして、鋼製リング133のコーナーに取り付けられる表面部材131は、円弧状の断面形状に形成されている。尚、コーナー部の曲率が小さい場合は、図6(b)に示した表面部材31を曲げて使用できる場合もある。
【0046】
次に、本実施形態に係る鉄骨ブレース2の補強方法(補強工法)について説明する。図9は、図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材3に嵌合部材34が取り付けられた状態の斜視図である。図10は、図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材3の端部を説明するための当該補強部材3の縦断面図である。
【0047】
(補強部材組立工程)
まず、2枚1組の鋼製リング33を、鉄骨ブレース2の両側から挟み込むようにして鉄骨ブレース2に当接させ、端部を相互に重ね合わせる。そして、鋼製リング33の連結用孔33bに全ネジボルト35を挿入し、2枚1組の鋼製リング33が鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で且つ鉄骨ブレース2に対して直角に配置されるよう、ナット37で位置調整した後、2つのナット37で鋼製リング33を挟み込んで締め付け固定する。このようにして、鋼製リング33および全ネジボルト35を鉄骨ブレース2の全周にわたって配設し、補強部材3を補強長さ分、中空骨組み状に組み立てる。この際、鉄骨ブレース2に当接させた鋼製リング33の内周と、鉄骨ブレース2とを溶接固定してもよい。尚、全ネジボルト35は、補強長さを1本でカバーするものである必要はなく、長手方向に分割したものを用いた場合には、端部同士を溶接により固定する。また、前記したように、全ネジボルト35の数量を適宜決定することにより、中空骨組み状に組み立てられる補強部材3の強度を自由に設定できる。
【0048】
また、図10に示すように、中空骨組み状に組み立てられた補強部材3の長手方向両端部に配設される端部鋼製リング33Eには、予めナット37が溶接されており、全ネジボルト35と連結させる構造となっている。そして、端部鋼製リング33Eに隣接させて、妻板39がボルト40およびナットで取り付けられている。妻板39も鋼製リング33と同様に、相互に同形の2枚1組の2分割構造であり、鉄骨ブレース2の両側から挟み込むようにして取り付けられる。また、妻板39と鋼製リング33との間には不織布41が挟み込まれ、端部鋼製リング33Eの段差部分には、厚さ調整板38が挟み込まれている。これにより、鉄骨ブレース2と、その周囲に筒状に組み立てられた表面部材31との間に自硬化性充填材32を注入する際の、エア抜きが可能となる。また、補強部材3の下端側の妻板39には、充填材注入口(不図示)が設けられている。妻板39の材質は、炭素鋼であってもよいし、ステンレス鋼であってもよい。また、鋼材に限らず合成樹脂などの材料を使用することもできる。
【0049】
(表面部材取付工程)
次に、鉄骨ブレース2の周方向に沿って補強部材3の外側に表面部材31を連続的に取り付ける表面部材取付工程を行う。まず、図9に示すように、鉄骨ブレース2の長手方向に沿って隣り合って所定の間隔で配置された鋼製リング33の複数の嵌合部33aに、図6(a)に示した嵌合部材34を補強部材3の全周にわたって嵌め込んでいく。尚、長尺のシール材36は、予め嵌合部材34に取り付けておく。但し嵌合部材34を鋼製リング33に嵌め込んだ後取り付けてもよい。その後、図4、5に示したように、嵌合部材34を介して表面部材31を鋼製リング33に嵌め込んで、複数の表面部材31を補強部材3の外側に取り付けていき、鉄骨ブレース2の全周にわたって筒状に組み立てていく。
【0050】
(充填材注入工程)
そして、鉄骨ブレース2の全周にわたって筒状に組み立てられた表面部材31と、鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32を注入することにより補強層を形成する充填材注入工程が行われる。自硬化性充填材32の注入は、補強部材3の下端側の妻板39に設けられた充填材注入口から行われる。自硬化性充填材32の注入により、中空骨組み状に組み立てられた補強部材3内部の空気は、補強部材3の上端側の妻板39と鋼製リング33との間から抜けていく。尚、工事時間などの制約があれば、表面部材取付工程が完了した後、施工箇所を開放して、日を改めて充填材注入工程を行ってもよい。
【0051】
本実施形態の補強構造によると、補強部材3の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材31を用いるので、予め補強対象である鉄骨ブレース2の長さや寸法、構造物内への搬入口寸法、施工設備などに応じて、表面部材31の寸法(長さ、幅など)を適宜設定することができ、施工にあたり大型の揚重機などの大規模な設備は必要でなくなる。すなわち、小規模な工事で容易に鉄骨ブレース2を補強することができる。また、表面部材31および嵌合部材34を鋼製リング33に嵌め込んでいくことにより鉄骨ブレース2の補強面を形成するので、作業は容易であり、すなわち施工を迅速に行えるので、工期の短縮を図ることができる。また、表面部材31の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る柱状体の補強構造について説明する。図11は、第2実施形態に係る表面部材51を示すである。図12は、第2実施形態に係る鋼製リング61(板状体)の斜視図である。図13は、中空骨組み状に組み立てられた補強部材23の斜視図である。図14は、図13に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材23に図11に示す表面部材51が取り付けられた状態の斜視図である。また、図15は、自硬化性充填材32が注入された後の図14のD−D断面図である。尚、本実施形態の説明においては、前記第1実施形態と同様の構成部材については同一の符号を付し、適宜その説明を省略することとする。
【0053】
図11(a)は、表面部材51の斜視図である。表面部材51は、正方形(長方形であってもよい)の樹脂製の平板としてパネル状に形成されている。表面部材51の材質は、表面部材31の材質と同様であり、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、装飾性のあるステンレス鋼等とすることもできる。
【0054】
そして、表面部材51の各コーナー付近(四隅近傍部分)には、突起部52がそれぞれ設けられている。図11(b)は、突起部52の断面図であるが、突起部52は、係止片52aを有している。この突起部52が鋼製リング61(図12参照)の取付部63の嵌込用孔63aに嵌め込まれることで、係止片52aが嵌込用孔63aと係止するようになっている。これにより、表面部材51が鋼製リング61(板状体)の取付部63に取り付けられることになる。
【0055】
次に、図12に示すように、本実施形態に係る鋼製リング61は、平板状に形成されている平板部62と、平板部62に対して曲折するように設けられた取付部63とを備えて構成されている。平板部62は、全体として円弧状に形成され、外周近傍に全ネジボルト35が挿入される複数の連結用孔62aが設けられている。
【0056】
取付部63は、略半割りのリング状板材であり、平板部62の外周端に対して溶接などにより固定されている。また、取付部63には複数の嵌込用孔63aが形成されており、表面部材51に設けられている突起部52がこの嵌込用孔63aに嵌め込まれることで、表面部材51が取付部63に取り付けられることになる。
【0057】
前記第1実施形態と同様に、本実施形態における補強部材組立工程においても、まず、2枚1組の鋼製リング61を、鉄骨ブレース2の両側から挟み込むようにして鉄骨ブレース2に当接させ、端部を相互に重ね合わせる。そして、鋼製リング61の平板部62の連結用孔62aに全ネジボルト35を挿入し、2枚1組の鋼製リング61が鉄骨ブレース2の長手方向に沿って所定の間隔で且つ鉄骨ブレース2に対して直角に配置されるよう、ナット37で位置調整した後、2つのナット37で鋼製リング61を挟み込んで締め付け固定する。このようにして、鋼製リング61および全ネジボルト35を鉄骨ブレース2の全周にわたって配設し、補強部材23を補強長さ分、中空骨組み状に組み立てる(図13参照)。
【0058】
その後、表面部材51を鋼製リング61の取付部63に嵌め込んで、補強部材23の外側にすきまなく表面部材51を取り付ける(図14参照)。そして、鉄骨ブレース2の全周にわたって筒状に組み立てられた表面部材51と、鉄骨ブレース2との間に自硬化性充填材32を注入することにより補強層を形成する(図15参照)。
【0059】
本実施形態によると、パネル状に形成された複数の表面部材51を用いることにより、第1実施形態と同様に、施工にあたり大型の揚重機などの大規模な設備は必要でない。すなわち、小規模な工事で容易に施工することができる。また、パネル状に形成された表面部材51を鋼製リング61に嵌め込んでいくという作業により柱状体の補強面を形成するので、作業は容易であり、施工を迅速に行える。また、表面部材51の嵌め込みが終われば、工期の途中であっても施工箇所を開放することができる。
【0060】
上記第2実施形態においては、鉄骨ブレース2を補強する形態を示したが、図1に示したように、鉄筋コンクリートなどからなる柱102を補強する場合もある。図16は、鋼製リング61の変形例を示す斜視図である。図16に示す鋼製リング61’は、図12に示した鋼製リング61とは異なり、アンカー取付部64がさらに設けられている。そしてアンカー取付部64は、平板部62に対して下方に曲折するように設けられるとともに、アンカー取付部64には柱102に埋設される鉄筋に固定した異形鉄筋などのアンカーが挿通される貫通孔64aが設けられている。このようなアンカー取付部64が設けられていることで、柱102の鉄筋に固定された異形鉄筋などのアンカーで鋼製リング61’を固定することができるため、柱102に対してより強固に一体化される補強構造を容易に実現することができる。尚、アンカー取付部64は、平板部62に対して上方に曲折するように設けてもよい。また、このようなアンカー取付部64を、第1実施形態で示した鋼製リング33、鋼製リング133に設けてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る柱状体の補強構造により補強された柱の側面図である。
【図2】本発明に係る柱状体の補強構造により補強された鉄骨ブレースの側面図である。
【図3】本発明に係る柱状体の補強構造により補強された、図2(a)に示す鉄骨ブレースの一部斜視図である。
【図4】図3(a)のA−A断面図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】嵌合部材および表面部材の斜視図である。
【図7】図3(b)のC−C断面図である。
【図8】中空骨組み状に組み立てられた補強部材の斜視図である。
【図9】図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材に嵌合部材が取り付けられた状態の斜視図である。
【図10】図8に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材の端部を説明するための当該補強部材の縦断面図である。
【図11】第2実施形態に係る表面部材を示すである。
【図12】第2実施形態に係る鋼製リング(板状体)の斜視図である。
【図13】中空骨組み状に組み立てられた補強部材の斜視図である。
【図14】図13に示す中空骨組み状に組み立てられた補強部材に図11に示す表面部材が取り付けられた状態の斜視図である。
【図15】自硬化性充填材が注入された後の図14のD−D断面図である。
【図16】図12に示す鋼製リングの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1:架構
2:鉄骨ブレース
3:補強部材
31:表面部材
33:鋼製リング(板状体)
34:嵌合部材
102:柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強構造であって、
中空骨組み状に組み立てられる補強部材と、当該補強部材の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材と、を備える補強ユニットが、当該柱状体の全周にわたって配設されることで形成され、
前記補強部材は、前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有し、
前記表面部材は、前記板状体に嵌め込まれることにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付けられることを特徴とする、柱状体の補強構造。
【請求項2】
前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、
前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された複数の当該嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材が嵌め込まれ、当該嵌合部材を介して前記表面部材が前記板状体に嵌め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の柱状体の補強構造。
【請求項3】
前記表面部材は、パネル状に形成され、
前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、
前記表面部材が前記取付部に嵌め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の柱状体の補強構造。
【請求項4】
中空骨組み状に組み立てられた前記補強部材の端部に位置する前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板が取り付けられ、
前記端部に位置する前記板状体と、前記妻板との間に不織布が挟み込まれていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の柱状体の補強構造。
【請求項5】
柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強方法であって、
前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有する補強部材を、当該柱状体の全周にわたって配設して中空骨組み状に組み立てる補強部材組立工程と、
筒状に組み立てられる複数の表面部材を、前記板状体に嵌め込むことにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付ける表面部材取付工程と、を備えていることを特徴とする、柱状体の補強方法。
【請求項6】
前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、
前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、
前記表面部材取付工程は、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された前記板状体の複数の嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材を嵌め込んだ後、当該嵌合部材を介して前記表面部材を前記板状体に嵌め込んで取り付ける工程であることを特徴とする、請求項5に記載の柱状体の補強方法。
【請求項7】
前記表面部材は、パネル状に形成され、
前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、
前記表面部材取付工程は、前記表面部材を前記取付部に嵌め込んで取り付ける工程であることを特徴とする、請求項5に記載の柱状体の補強方法。
【請求項8】
前記補強部材を中空骨組み状に組み立てた後、当該補強部材の端部に配設された前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板を取り付けるとともに、当該板状体と当該妻板との間に不織布を挟み込むことを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の柱状体の補強方法。
【請求項1】
柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強構造であって、
中空骨組み状に組み立てられる補強部材と、当該補強部材の外側に連続的に取り付けられて筒状に組み立てられる複数の表面部材と、を備える補強ユニットが、当該柱状体の全周にわたって配設されることで形成され、
前記補強部材は、前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有し、
前記表面部材は、前記板状体に嵌め込まれることにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付けられることを特徴とする、柱状体の補強構造。
【請求項2】
前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、
前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された複数の当該嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材が嵌め込まれ、当該嵌合部材を介して前記表面部材が前記板状体に嵌め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の柱状体の補強構造。
【請求項3】
前記表面部材は、パネル状に形成され、
前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、
前記表面部材が前記取付部に嵌め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の柱状体の補強構造。
【請求項4】
中空骨組み状に組み立てられた前記補強部材の端部に位置する前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板が取り付けられ、
前記端部に位置する前記板状体と、前記妻板との間に不織布が挟み込まれていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の柱状体の補強構造。
【請求項5】
柱状体の表面を覆って補強する柱状体の補強方法であって、
前記柱状体の長手方向に沿って所定の間隔で配置される複数の板状体を有する補強部材を、当該柱状体の全周にわたって配設して中空骨組み状に組み立てる補強部材組立工程と、
筒状に組み立てられる複数の表面部材を、前記板状体に嵌め込むことにより、前記柱状体の周方向に沿って前記補強部材の外側に連続的に取り付ける表面部材取付工程と、を備えていることを特徴とする、柱状体の補強方法。
【請求項6】
前記表面部材は、長手方向を有する長尺体であって、当該長手方向に対して直交する方向の両端部に当該長手方向に沿って連続する係止部を有し、
前記板状体には、外側に複数の嵌合部が形成され、
前記表面部材取付工程は、前記柱状体の長手方向に沿って隣り合って配置された前記板状体の複数の嵌合部に、長手方向を有する長尺体の嵌合部材を嵌め込んだ後、当該嵌合部材を介して前記表面部材を前記板状体に嵌め込んで取り付ける工程であることを特徴とする、請求項5に記載の柱状体の補強方法。
【請求項7】
前記表面部材は、パネル状に形成され、
前記板状体は、平板状に形成されている平板部と、当該平板部に対して曲折するように設けられた前記表面部材の取付部と、を有し、
前記表面部材取付工程は、前記表面部材を前記取付部に嵌め込んで取り付ける工程であることを特徴とする、請求項5に記載の柱状体の補強方法。
【請求項8】
前記補強部材を中空骨組み状に組み立てた後、当該補強部材の端部に配設された前記板状体に隣接させて、当該端部を閉にするための妻板を取り付けるとともに、当該板状体と当該妻板との間に不織布を挟み込むことを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の柱状体の補強方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−1685(P2010−1685A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162653(P2008−162653)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(392008884)芦森エンジニアリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(392008884)芦森エンジニアリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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