柱補強ブロックおよび柱補強方法
【課題】 侵食された既設柱を簡単かつ安価に補強することのできる、柱補強ブロックおよび柱補強方法を提供する。
【解決手段】 柱補強ブロック10は、上端面に雌ネジ部材48が設けられており、既設柱12の外面を覆うようにして配設される半割り筒状の2つの分割片14と、雌ネジ部材48に対応する孔74を有し、2つの分割片14の上端面を跨ぐようにして配設される連結部材16と、連結部材16の孔74に挿通され、かつ、分割片14の雌ネジ部材48に螺合される雄ネジ部材18とを備えている。そして、既設柱12を補強する際には、既設柱12の外面において2つの分割片14が連結部材16を介して一体化される。
【解決手段】 柱補強ブロック10は、上端面に雌ネジ部材48が設けられており、既設柱12の外面を覆うようにして配設される半割り筒状の2つの分割片14と、雌ネジ部材48に対応する孔74を有し、2つの分割片14の上端面を跨ぐようにして配設される連結部材16と、連結部材16の孔74に挿通され、かつ、分割片14の雌ネジ部材48に螺合される雄ネジ部材18とを備えている。そして、既設柱12を補強する際には、既設柱12の外面において2つの分割片14が連結部材16を介して一体化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園や歩道に設置された照明灯の支柱等を補強する、柱補強ブロックおよび柱補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公園や歩道に設置された照明灯の多くは、図12に示すように、地中に埋設された基礎上に立設された支柱1によって支持されている。この支柱1は、通常は鋼管によって形成されており、しかも、屋外に設置されていることから、地中の水分や雨水等によって侵食(発錆、腐蝕)され易く、最悪の場合には、侵食された部分2から支柱1が倒れるおそれがあった。
【0003】
そこで、従来では、定期点検の周期を短くして、侵食されかかった部分に防錆処理(塗装等)を施したり、また、図12に示すように、侵食された部分2にFRP等のような補強ブロック3を巻き付けて補修したりしていた。
【0004】
なお、これらの防錆処理や補修措置は、既に公知であるが、これらを開示した文献が見つからないため、先行技術文献の開示は省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、一般的な防錆処理や応急的な補修措置によって、支柱1の侵食に対処していたが、これらの処理または措置では、侵食された支柱1を更正することができず、「支柱が倒れる」といった事故を確実に防止することが困難であった。また、侵食された支柱1を新しいものに交換するとなると、その数が膨大であることから、交換工事に莫大なコストを要することとなり、現実的ではない。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる課題は、侵食された既設柱を簡単かつ確実に補強することのできる、柱補強ブロックおよび柱補強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明は、「基礎26上に立設された既設柱12を補強するための柱補強ブロック10であって、上端面に雌ネジ部材48が設けられており、前記既設柱12の外面を覆うようにして配設される半割り筒状の2つの分割片14と、前記雌ネジ部材48に対応する孔74を有し、前記2つの分割片14の上端面を跨ぐようにして配設される連結部材16と、前記連結部材16の前記孔74に挿通され、かつ、前記分割片14の前記雌ネジ部材48に螺合される雄ネジ部材18とを備える、柱補強ブロック10」である。
【0008】
本発明では、半割り筒状の2つの分割片14で既設柱12の外面を覆うことができ、しかも、2つの分割片14を連結部材16で連結して一体化させることができるので、分割片14をコンクリート等のような高強度材料で形成することによって、侵食された既設柱12を簡単に補強することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「柱補強ブロック10」において、「分割片14は、基礎26の上面から突出したアンカーボルト28が挿通される孔68を有するベースプレート54を備える」ことを特徴とする。
【0010】
本発明では、基礎26に既設柱12を固定するアンカーボルト28およびアンカーナット34をそのまま利用して、分割片14を固定することができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「柱補強ブロック10」において、「分割片14の主要材料はコンクリートである」ことを特徴とする。
【0012】
本発明は、柱補強ブロック10における分割片14を安価なコンクリートによって形成したものである。
【0013】
請求項4に記載した発明は、「基礎26上に立設された既設柱12を補強するための柱補強方法であって、(a)前記既設柱12を前記基礎26上で支持しているアンカーボルト28からアンカーナット34を取り外し、(b)前記既設柱12の外面を覆うようにして2つの分割片14を配設するとともに、前記2つの分割片14の下端部を、前記アンカーボルト28および前記アンカーナット34を用いて前記既設柱12と共に前記基礎26に固定し、(c)前記2つの分割片14の上端部どうしを、連結部材16を用いて連結する、柱補強方法」である。
【0014】
この発明では、基礎26に既設柱12を固定するアンカーボルト28およびアンカーナット34をそのまま利用して、分割片14を固定するようにしているので、少ない部品で簡単に施工できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載した発明によれば、既設柱の侵食された部分だけを簡単かつ確実に補強することができ、健全部をそのまま生かすことができるので、既設柱の全体を交換する場合に比べて、コストを大幅に低減できる。また、分割片14の主要材料としてコンクリートを用いると、その表面を平滑に仕上げることが可能であり、人が手で触れた場合でもケガをすることはなく、また、周囲の環境に調和した外観を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明が適用された柱補強ブロック10を示す斜視図であり、図2は、柱補強ブロック10を示す部分断面図であり、図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【0017】
柱補強ブロック10(図1〜図3)は、公園や歩道に設置された照明灯の支柱等(以下、「既設柱」という。)12を補強するものであり、2つの分割片14と、分割片14どうしを連結する連結部材16と、連結部材16と分割片14とを接合する雄ネジ部材18とによって構成されている。
【0018】
ここで、既設柱12は、図8に示すように、鋼管等からなる支柱本体20と、支柱本体20の下端部に固着されたベースプレート22と、支柱本体20とベースプレート22とが成すコーナ部に配設された補強板24とを備えており、ベースプレート22には、基礎26の上面から突出したアンカーボルト28が挿通される孔30が形成されている。また、支柱本体20の側面には、電気配設を保守/点検するための窓32が開口されている。そして、アンカーボルト28とアンカーナット34とによって既設柱12が基礎26に固定されており、ベースプレート22、補強板24、アンカーボルト28およびアンカーナット34を含む固定部Aが水切コンクリート36(図7)で密閉されている。
【0019】
このような既設柱12では、その根元部が侵食され易く、根元部より上方の鋼管は健全であることが多いのが実情である。したがって、侵食された根元部だけを補強すれば、既設柱12の全体を交換する必要はなく、経済的である。そこで、侵食された根元部だけを簡単かつ確実に補強するために、本発明の柱補強ブロック10が用いられる。
【0020】
柱補強ブロック10を構成する各分割片14は、図1および図2に示すように、高強度コンクリートによって成形された半割り筒状の本体部38を有しており、本体部38の上端部には、その外径をやや縮径することによって薄肉部40が形成されている。また、本体部38の長手方向中央部には、支柱本体20の窓32に対応する窓42(図9)が開口されており、本体部38の内部には、補強鉄筋44が埋設されている。補強鉄筋44は、図4に示すように、複数の縦筋44aと複数の横筋44bとを接合することによって構成されており、本体部38の上部に埋設される上側部分と、下部および中央部に埋設される下側部分とに分割されている。そして、下側部分には、分割片14の窓42(図9)に対応する切欠き46が設けられている。
【0021】
また、本体部38の上端面には、図2に示すように、複数(この実施例では6個)の雌ネジ部材48が設けられており、本体部38の上端部内面には、図2に示すように、鋼板等の高強度材料からなる半割りリング状の保護材50が設けられており、本体部38における窓42の周辺部には、図5に示すように、蓋体43を取り付けるための雌ネジ部材52が設けられている。さらに、本体部38の下端部には、ベースプレート54が取り付けられており、本体部38の下端部側面には、既設柱12の補強板24が収容される溝56(図2)が形成されている。
【0022】
各ベースプレート54は、図6に示すように、既設柱12における支柱本体20を通す半円状の凹部58を有するプレート本体60を備えており、プレート本体60の中央部には、既設柱12の補強板24が収容される溝62が凹部58と連通して形成されている。また、プレート本体60における凹部58の周辺部には、複数(この実施例では4個)の空気抜孔64が形成されており、また、この周辺部には、複数(この実施例では6本)の差筋66が立設されている。さらに、プレート本体60の所定箇所には、アンカーボルト28(図8)が挿通される孔68が設けられている。
【0023】
分割片14を製造する際には、まず、成形型(図示省略)の内部に、補強鉄筋44、雌ネジ部材48、保護材50、雌ネジ部材52およびベースプレート54をセットし、この成形型にコンクリートを流し込む。そして、このコンクリートを成形型内で養生させ、養生が完了すると、得られた分割片14を成形型から離型する。したがって、補強鉄筋44、雌ネジ部材48、保護材50、雌ネジ部材52およびベースプレート54は、それらの一部または全部がコンクリート内に埋め込まれることによって、本体部38と一体化されることになる。
【0024】
なお、分割片14の主要材料としては、コンクリートに代えて、プラスチックや金属等を用いてもよいが、簡単かつ安価に製造できる点において、コンクリートを用いることが望ましい。
【0025】
各連結部材16は、2つの分割片14の上端部どうしを連結して、これらを一体化させるものであり、図1〜図3に示すように、ステンレス等のような高強度材料からなる半割りリング状の連結板部70と、連結板部70の外周縁から下方へ延びて分割片14の上端部外周に配設される垂下部72とによって構成されている。そして、連結板部70の所定箇所には、分割片14に設けられた各雌ネジ部材48に対応する複数(この実施例では6個)の孔74が形成されている。
【0026】
柱補強ブロック10を用いて既設柱12を補強する際には、図7〜図10に示すように、「掘削工程(図7)」、「下準備工程(図8)」、「分割片取付け工程(図9)」および「仕上げ工程(図10)」をこの順に実行する。
【0027】
「掘削工程」では、図7に示すように、既設柱12における固定部Aの周辺地盤を掘削し、水切コンクリート36を破砕機等で破砕することによって、固定部Aの全体を露出させる。また、既設柱12における窓32(図8)を閉塞していた蓋体33を取り外す。
【0028】
「下準備工程」では、図8に示すように、既設柱12を支持しているアンカーボルト28からアンカーナット34を取り外すとともに、既設柱12における支柱本体20の外周に、スポンジパッキン76を取り付ける。このとき、既設柱12が倒れるのを防止するために、既設柱12を仮支持しておくことが望ましい。
【0029】
「分割片取付け工程」では、図9に示すように、既設柱12の外面を覆うようにして2つの分割片14を配設するとともに、分割片14におけるベースプレート54の孔68(図6)にアンカーボルト28を挿通させる。そして、アンカーボルト28にアンカーナット34を螺合することによって、分割片14および既設柱12を基礎26に一緒に固定する。
【0030】
「仕上げ工程」では、図10に示すように、2つの分割片14の上端部どうしを、連結部材16を用いて連結する。つまり、雄ネジ部材18を連結部材16に設けられた孔74に挿通し、この雄ネジ部材18を分割片14に設けられた雌ネジ部材48に螺合する(図2)。そして、分割片14どうしの隙間や、分割片14と既設柱12との隙間にコーキング材を充填する。また、雌ネジ部材52(図5)と雄ネジ部材78(図5、図10)とによって、分割片14に設けられた窓42に蓋体43を装着する。さらに、接合部Aを、水切コンクリート36を用いて密閉するとともに、水切コンクリート36の周辺地盤を埋め戻す。
【0031】
なお、上述の実施例では、分割片14の本体部38、連結部材16および蓋体43に石目模様の塗装を施した場合を示しているが(図1)、これに代えて、他の模様の塗装を施してもよいし、単一色の塗装を施してもよい。また、補強鉄筋44に代えて、図11に示すような補強網80を用いるようにしてもよい。補強網80は、ステンレス等のような耐食性を有する高強度材料によって略長方形に形成されており、補強網80の長手方向中央部の側部には、窓42(図9)に対応する切欠け82が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用された柱補強ブロックを示す斜視図である。
【図2】本発明が適用された柱補強ブロックを示す部分断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】補強鉄筋を示す正面図である。
【図5】蓋体の取付構造を示す図である。
【図6】ベースプレートを示す平面図および正面図である。
【図7】「掘削工程」を示す図である。
【図8】「下準備工程」を示す図である。
【図9】「分割片取付け工程」を示す図である。
【図10】「仕上げ工程」を示す図である。
【図11】補強網を示す正面図である。
【図12】従来の柱ブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10… 柱補強ブロック
12… 既設柱
14… 分割片
16… 連結部材
18… 雄ネジ部材
20… 支柱本体
24… 補強板
26… 基礎
28… アンカーボルト
34… アンカーナット
36… 水切コンクリート
38… 本体部
42… 窓
43… 蓋体
44… 補強鉄筋
48… 雌ネジ部材
54… ベースプレート
80… 補強網
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園や歩道に設置された照明灯の支柱等を補強する、柱補強ブロックおよび柱補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公園や歩道に設置された照明灯の多くは、図12に示すように、地中に埋設された基礎上に立設された支柱1によって支持されている。この支柱1は、通常は鋼管によって形成されており、しかも、屋外に設置されていることから、地中の水分や雨水等によって侵食(発錆、腐蝕)され易く、最悪の場合には、侵食された部分2から支柱1が倒れるおそれがあった。
【0003】
そこで、従来では、定期点検の周期を短くして、侵食されかかった部分に防錆処理(塗装等)を施したり、また、図12に示すように、侵食された部分2にFRP等のような補強ブロック3を巻き付けて補修したりしていた。
【0004】
なお、これらの防錆処理や補修措置は、既に公知であるが、これらを開示した文献が見つからないため、先行技術文献の開示は省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、一般的な防錆処理や応急的な補修措置によって、支柱1の侵食に対処していたが、これらの処理または措置では、侵食された支柱1を更正することができず、「支柱が倒れる」といった事故を確実に防止することが困難であった。また、侵食された支柱1を新しいものに交換するとなると、その数が膨大であることから、交換工事に莫大なコストを要することとなり、現実的ではない。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる課題は、侵食された既設柱を簡単かつ確実に補強することのできる、柱補強ブロックおよび柱補強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明は、「基礎26上に立設された既設柱12を補強するための柱補強ブロック10であって、上端面に雌ネジ部材48が設けられており、前記既設柱12の外面を覆うようにして配設される半割り筒状の2つの分割片14と、前記雌ネジ部材48に対応する孔74を有し、前記2つの分割片14の上端面を跨ぐようにして配設される連結部材16と、前記連結部材16の前記孔74に挿通され、かつ、前記分割片14の前記雌ネジ部材48に螺合される雄ネジ部材18とを備える、柱補強ブロック10」である。
【0008】
本発明では、半割り筒状の2つの分割片14で既設柱12の外面を覆うことができ、しかも、2つの分割片14を連結部材16で連結して一体化させることができるので、分割片14をコンクリート等のような高強度材料で形成することによって、侵食された既設柱12を簡単に補強することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「柱補強ブロック10」において、「分割片14は、基礎26の上面から突出したアンカーボルト28が挿通される孔68を有するベースプレート54を備える」ことを特徴とする。
【0010】
本発明では、基礎26に既設柱12を固定するアンカーボルト28およびアンカーナット34をそのまま利用して、分割片14を固定することができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「柱補強ブロック10」において、「分割片14の主要材料はコンクリートである」ことを特徴とする。
【0012】
本発明は、柱補強ブロック10における分割片14を安価なコンクリートによって形成したものである。
【0013】
請求項4に記載した発明は、「基礎26上に立設された既設柱12を補強するための柱補強方法であって、(a)前記既設柱12を前記基礎26上で支持しているアンカーボルト28からアンカーナット34を取り外し、(b)前記既設柱12の外面を覆うようにして2つの分割片14を配設するとともに、前記2つの分割片14の下端部を、前記アンカーボルト28および前記アンカーナット34を用いて前記既設柱12と共に前記基礎26に固定し、(c)前記2つの分割片14の上端部どうしを、連結部材16を用いて連結する、柱補強方法」である。
【0014】
この発明では、基礎26に既設柱12を固定するアンカーボルト28およびアンカーナット34をそのまま利用して、分割片14を固定するようにしているので、少ない部品で簡単に施工できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載した発明によれば、既設柱の侵食された部分だけを簡単かつ確実に補強することができ、健全部をそのまま生かすことができるので、既設柱の全体を交換する場合に比べて、コストを大幅に低減できる。また、分割片14の主要材料としてコンクリートを用いると、その表面を平滑に仕上げることが可能であり、人が手で触れた場合でもケガをすることはなく、また、周囲の環境に調和した外観を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明が適用された柱補強ブロック10を示す斜視図であり、図2は、柱補強ブロック10を示す部分断面図であり、図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【0017】
柱補強ブロック10(図1〜図3)は、公園や歩道に設置された照明灯の支柱等(以下、「既設柱」という。)12を補強するものであり、2つの分割片14と、分割片14どうしを連結する連結部材16と、連結部材16と分割片14とを接合する雄ネジ部材18とによって構成されている。
【0018】
ここで、既設柱12は、図8に示すように、鋼管等からなる支柱本体20と、支柱本体20の下端部に固着されたベースプレート22と、支柱本体20とベースプレート22とが成すコーナ部に配設された補強板24とを備えており、ベースプレート22には、基礎26の上面から突出したアンカーボルト28が挿通される孔30が形成されている。また、支柱本体20の側面には、電気配設を保守/点検するための窓32が開口されている。そして、アンカーボルト28とアンカーナット34とによって既設柱12が基礎26に固定されており、ベースプレート22、補強板24、アンカーボルト28およびアンカーナット34を含む固定部Aが水切コンクリート36(図7)で密閉されている。
【0019】
このような既設柱12では、その根元部が侵食され易く、根元部より上方の鋼管は健全であることが多いのが実情である。したがって、侵食された根元部だけを補強すれば、既設柱12の全体を交換する必要はなく、経済的である。そこで、侵食された根元部だけを簡単かつ確実に補強するために、本発明の柱補強ブロック10が用いられる。
【0020】
柱補強ブロック10を構成する各分割片14は、図1および図2に示すように、高強度コンクリートによって成形された半割り筒状の本体部38を有しており、本体部38の上端部には、その外径をやや縮径することによって薄肉部40が形成されている。また、本体部38の長手方向中央部には、支柱本体20の窓32に対応する窓42(図9)が開口されており、本体部38の内部には、補強鉄筋44が埋設されている。補強鉄筋44は、図4に示すように、複数の縦筋44aと複数の横筋44bとを接合することによって構成されており、本体部38の上部に埋設される上側部分と、下部および中央部に埋設される下側部分とに分割されている。そして、下側部分には、分割片14の窓42(図9)に対応する切欠き46が設けられている。
【0021】
また、本体部38の上端面には、図2に示すように、複数(この実施例では6個)の雌ネジ部材48が設けられており、本体部38の上端部内面には、図2に示すように、鋼板等の高強度材料からなる半割りリング状の保護材50が設けられており、本体部38における窓42の周辺部には、図5に示すように、蓋体43を取り付けるための雌ネジ部材52が設けられている。さらに、本体部38の下端部には、ベースプレート54が取り付けられており、本体部38の下端部側面には、既設柱12の補強板24が収容される溝56(図2)が形成されている。
【0022】
各ベースプレート54は、図6に示すように、既設柱12における支柱本体20を通す半円状の凹部58を有するプレート本体60を備えており、プレート本体60の中央部には、既設柱12の補強板24が収容される溝62が凹部58と連通して形成されている。また、プレート本体60における凹部58の周辺部には、複数(この実施例では4個)の空気抜孔64が形成されており、また、この周辺部には、複数(この実施例では6本)の差筋66が立設されている。さらに、プレート本体60の所定箇所には、アンカーボルト28(図8)が挿通される孔68が設けられている。
【0023】
分割片14を製造する際には、まず、成形型(図示省略)の内部に、補強鉄筋44、雌ネジ部材48、保護材50、雌ネジ部材52およびベースプレート54をセットし、この成形型にコンクリートを流し込む。そして、このコンクリートを成形型内で養生させ、養生が完了すると、得られた分割片14を成形型から離型する。したがって、補強鉄筋44、雌ネジ部材48、保護材50、雌ネジ部材52およびベースプレート54は、それらの一部または全部がコンクリート内に埋め込まれることによって、本体部38と一体化されることになる。
【0024】
なお、分割片14の主要材料としては、コンクリートに代えて、プラスチックや金属等を用いてもよいが、簡単かつ安価に製造できる点において、コンクリートを用いることが望ましい。
【0025】
各連結部材16は、2つの分割片14の上端部どうしを連結して、これらを一体化させるものであり、図1〜図3に示すように、ステンレス等のような高強度材料からなる半割りリング状の連結板部70と、連結板部70の外周縁から下方へ延びて分割片14の上端部外周に配設される垂下部72とによって構成されている。そして、連結板部70の所定箇所には、分割片14に設けられた各雌ネジ部材48に対応する複数(この実施例では6個)の孔74が形成されている。
【0026】
柱補強ブロック10を用いて既設柱12を補強する際には、図7〜図10に示すように、「掘削工程(図7)」、「下準備工程(図8)」、「分割片取付け工程(図9)」および「仕上げ工程(図10)」をこの順に実行する。
【0027】
「掘削工程」では、図7に示すように、既設柱12における固定部Aの周辺地盤を掘削し、水切コンクリート36を破砕機等で破砕することによって、固定部Aの全体を露出させる。また、既設柱12における窓32(図8)を閉塞していた蓋体33を取り外す。
【0028】
「下準備工程」では、図8に示すように、既設柱12を支持しているアンカーボルト28からアンカーナット34を取り外すとともに、既設柱12における支柱本体20の外周に、スポンジパッキン76を取り付ける。このとき、既設柱12が倒れるのを防止するために、既設柱12を仮支持しておくことが望ましい。
【0029】
「分割片取付け工程」では、図9に示すように、既設柱12の外面を覆うようにして2つの分割片14を配設するとともに、分割片14におけるベースプレート54の孔68(図6)にアンカーボルト28を挿通させる。そして、アンカーボルト28にアンカーナット34を螺合することによって、分割片14および既設柱12を基礎26に一緒に固定する。
【0030】
「仕上げ工程」では、図10に示すように、2つの分割片14の上端部どうしを、連結部材16を用いて連結する。つまり、雄ネジ部材18を連結部材16に設けられた孔74に挿通し、この雄ネジ部材18を分割片14に設けられた雌ネジ部材48に螺合する(図2)。そして、分割片14どうしの隙間や、分割片14と既設柱12との隙間にコーキング材を充填する。また、雌ネジ部材52(図5)と雄ネジ部材78(図5、図10)とによって、分割片14に設けられた窓42に蓋体43を装着する。さらに、接合部Aを、水切コンクリート36を用いて密閉するとともに、水切コンクリート36の周辺地盤を埋め戻す。
【0031】
なお、上述の実施例では、分割片14の本体部38、連結部材16および蓋体43に石目模様の塗装を施した場合を示しているが(図1)、これに代えて、他の模様の塗装を施してもよいし、単一色の塗装を施してもよい。また、補強鉄筋44に代えて、図11に示すような補強網80を用いるようにしてもよい。補強網80は、ステンレス等のような耐食性を有する高強度材料によって略長方形に形成されており、補強網80の長手方向中央部の側部には、窓42(図9)に対応する切欠け82が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用された柱補強ブロックを示す斜視図である。
【図2】本発明が適用された柱補強ブロックを示す部分断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】補強鉄筋を示す正面図である。
【図5】蓋体の取付構造を示す図である。
【図6】ベースプレートを示す平面図および正面図である。
【図7】「掘削工程」を示す図である。
【図8】「下準備工程」を示す図である。
【図9】「分割片取付け工程」を示す図である。
【図10】「仕上げ工程」を示す図である。
【図11】補強網を示す正面図である。
【図12】従来の柱ブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10… 柱補強ブロック
12… 既設柱
14… 分割片
16… 連結部材
18… 雄ネジ部材
20… 支柱本体
24… 補強板
26… 基礎
28… アンカーボルト
34… アンカーナット
36… 水切コンクリート
38… 本体部
42… 窓
43… 蓋体
44… 補強鉄筋
48… 雌ネジ部材
54… ベースプレート
80… 補強網
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に立設された既設柱を補強するための柱補強ブロックであって、
上端面に雌ネジ部材が設けられており、前記既設柱の外面を覆うようにして配設される半割り筒状の2つの分割片と、前記雌ネジ部材に対応する孔を有し、前記2つの分割片の上端面を跨ぐようにして配設される連結部材と、前記連結部材の前記孔に挿通され、かつ、前記分割片の前記雌ネジ部材に螺合される雄ネジ部材とを備える、柱補強ブロック。
【請求項2】
前記分割片は、前記基礎の上面から突出したアンカーボルトが挿通される孔を有するベースプレートを備える、請求項1に記載の柱補強ブロック。
【請求項3】
前記分割片の主要材料はコンクリートである、請求項1または2に記載の柱補強ブロック。
【請求項4】
基礎上に立設された既設柱を補強するための柱補強方法であって、
(a)前記既設柱を前記基礎上で支持しているアンカーボルトからアンカーナットを取り外し、
(b)前記既設柱の外面を覆うようにして2つの分割片を配設するとともに、前記2つの分割片の下端部を、前記アンカーボルトおよび前記アンカーナットを用いて前記既設柱と共に前記基礎に固定し、
(c)前記2つの分割片の上端部どうしを、連結部材を用いて連結する、柱補強方法。
【請求項1】
基礎上に立設された既設柱を補強するための柱補強ブロックであって、
上端面に雌ネジ部材が設けられており、前記既設柱の外面を覆うようにして配設される半割り筒状の2つの分割片と、前記雌ネジ部材に対応する孔を有し、前記2つの分割片の上端面を跨ぐようにして配設される連結部材と、前記連結部材の前記孔に挿通され、かつ、前記分割片の前記雌ネジ部材に螺合される雄ネジ部材とを備える、柱補強ブロック。
【請求項2】
前記分割片は、前記基礎の上面から突出したアンカーボルトが挿通される孔を有するベースプレートを備える、請求項1に記載の柱補強ブロック。
【請求項3】
前記分割片の主要材料はコンクリートである、請求項1または2に記載の柱補強ブロック。
【請求項4】
基礎上に立設された既設柱を補強するための柱補強方法であって、
(a)前記既設柱を前記基礎上で支持しているアンカーボルトからアンカーナットを取り外し、
(b)前記既設柱の外面を覆うようにして2つの分割片を配設するとともに、前記2つの分割片の下端部を、前記アンカーボルトおよび前記アンカーナットを用いて前記既設柱と共に前記基礎に固定し、
(c)前記2つの分割片の上端部どうしを、連結部材を用いて連結する、柱補強方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−16487(P2007−16487A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199162(P2005−199162)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】
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