栓体及び内視鏡
【課題】破壊を伴わずに処置具栓の再使用を不可能にする。
【解決手段】処置具栓21の略円筒形状の栓本体29を、光透過性を有する弾性材料で形成する。栓本体29に、口金20が挿入される口金挿入穴29aを形成する。栓本体29の内周面に、口金20の外周面に形成されたフランジ25に係合する係合爪35を形成する。栓本体29の内周面と外周面との間に、光硬化性材料からなる光硬化部31を設ける。光硬化部31の硬化前は、口金挿入穴29aの拡径変形が可能であるため、口金挿入穴29aの挿入・抜き出し時に係合爪35がフランジ25を乗り越えることができる。光硬化部31の硬化後は、光硬化部31により口金挿入穴29aの拡径変形が規制される。口金挿入穴29aへの口金20の挿入・抜き出し時に係合爪35がフランジ25を乗り越えることができなくなるので、処置具栓21の再使用が不可能になる。
【解決手段】処置具栓21の略円筒形状の栓本体29を、光透過性を有する弾性材料で形成する。栓本体29に、口金20が挿入される口金挿入穴29aを形成する。栓本体29の内周面に、口金20の外周面に形成されたフランジ25に係合する係合爪35を形成する。栓本体29の内周面と外周面との間に、光硬化性材料からなる光硬化部31を設ける。光硬化部31の硬化前は、口金挿入穴29aの拡径変形が可能であるため、口金挿入穴29aの挿入・抜き出し時に係合爪35がフランジ25を乗り越えることができる。光硬化部31の硬化後は、光硬化部31により口金挿入穴29aの拡径変形が規制される。口金挿入穴29aへの口金20の挿入・抜き出し時に係合爪35がフランジ25を乗り越えることができなくなるので、処置具栓21の再使用が不可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の取付部に取り付けられる再使用不可能な栓体、及びこの栓体を備える内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療分野において、患者の体内に内視鏡の挿入部を挿入して、患部の観察だけではなく患部に対して各種の処置を行っている(特許文献1参照)。具体的には、鉗子、切開具などの各種処置具を、内視鏡の操作部に設けられた処置具導入部(口部)から挿入部内の処置具挿通チャンネルに挿通させて、挿入部先端から突出させることにより、患部の観察や切除、採取等の各種の処置が行われる。
【0003】
処置具導入部には、処置具が挿通可能な処置具栓が装着されている(特許文献2〜4参照)。この処置具栓は、体内の内圧の変化等によって、体内の体液、汚物、空気等が処置具挿通チャンネル内を逆流して、処置具導入部から外部に洩れ出ることを防止している。このため、処置具栓には、使用により体液等が付着する。処置具栓としては、感染防止の観点から使用毎に新たなものと交換するように、再使用が不可能なディスポタイプのものが一般的に用いられる。
【0004】
特許文献2〜4には、栓体の一部を破断させることで処置具導入部から取り外し可能になる処置具栓が開示されている。これらの処置具栓では、処置具導入部から取り外される際に破壊が伴うので、再使用が不可能になる。その結果、使用済みの処置具栓が誤って再使用されることが防止される。
【0005】
また、特許文献5には、ディスポタイプの内視鏡カバーの再使用を防止する内視鏡装置が開示されている。この内視鏡装置では、内視鏡カバーに設けられたIDタグからID情報を内視鏡に設けられたタグリーダで読み取り、この読取結果を電子カルテサーバに逐次格納する。そして、新たにタグリーダで読み取られたID情報と、電子カルテサーバに格納済みのID情報とを比較することで、内視鏡カバーが使用済みか否かの判定を行い、カバーが使用済みの場合には警告表示を行う。したがって、この特許文献5の記載のものでは、処置具栓にIDタグを設けることにより、処置具栓の再使用を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/035607パンフレット
【特許文献2】特開2008−043774号公報
【特許文献3】特開2006−346197号公報
【特許文献4】特開2006−043131号公報
【特許文献5】特開2006−288823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2〜4の鉗子栓は、処置具導入部から取り外される際に破壊が伴うので、この破壊により生じた破片が処置具挿通チャンネル内に入り込むおそれがある。この場合には、処置具挿通チャンネル内の洗浄・消毒処理に支障をきたすおそれがある。また、特許文献2〜4の処置具栓では、内視鏡からの取り外し時に破壊し易いように、切り込みなどの脆弱部を形成しておく必要がある。このため、処置具栓を処置具導入部に取り付ける際や内視鏡検査時等に、誤って脆弱部を破壊してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献5では、処置具栓にIDタグを設け、このIDタグから読み取った固有識別情報に基づいて処置具栓の再使用の有無を判定するので、処置具栓を破壊する必要はなくなる。しかしながら、処置具栓にIDタグを、内視鏡にタグリーダをそれぞれ設ける必要がある。また、タグリーダで読み取ったID情報と、電子カルテサーバに格納済みのID情報とを比較する回路等が必要になる。その結果、製造コストが増加する。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、破壊を伴わずに再使用が不可能になる内視鏡用の栓体、及びこの栓体を備える内視鏡を低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡の栓体は、内視鏡の取付部に取り付けられる内視鏡の栓体であって、弾性材料からなる筒状の栓本体と、この栓本体に形成され、取付部に嵌合し、この取付部からの栓本体の挿脱方向移動を阻止する取付受け部と、栓本体に内蔵され、取付受け部の挿脱方向移動を許容する硬化前状態と、取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態に不可逆的に硬化する経時硬化性を有する硬化部とを備えている。
【0011】
取付部は、内視鏡内の処置具挿通チャンネルに通じる略筒状の口金であり、栓体は、処置具が挿通される処置具挿通穴を有し、口金に嵌合する口金受け部を取付受け部として有することが望ましい。
【0012】
口金は外側端部に口金嵌合部を有し、口金嵌合部は、外周面から外側に向けて突出する口金側円環状突出部と、外周面に形成される口金側周溝とを有する。口金受け部は、栓本体の内周面に形成され、口金側円環状突出部に嵌合する栓本体側周溝と、栓本体の内周面に形成され、口金側周溝に嵌合する栓本体側円環状突出部とを有することが望ましい。
【0013】
硬化部は、栓本体に配される筒状の硬化部本体と、硬化部本体から栓本体側円環状突出部に向けて突出する挿脱規制円環状突出部とを有し、口金側円環状突出部の外径よりも、挿脱規制円環状突出部の内径が小さいことが望ましい。
【0014】
栓本体は光透過性を有し、硬化部は、栓本体を透過した光の照射を受けて硬化する光硬化性を有することが望ましい。そして、栓本体は遮光性の包装体に収納されており、使用時に包装体から取り出されて口金に装着されることが望ましい。
【0015】
硬化部は、内視鏡による施術時間を経過後に、取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態になることが望ましい。
【0016】
栓本体は、処置具挿通穴を外側から塞ぐ弁部材と、弁部材を栓本体に連結する連結部材と、弁部材が嵌合する弁部材受け部とを有することが望ましい。
【0017】
本発明の内視鏡は、体内に挿入される挿入部と、挿入部の基端に接続される操作部と、操作部の外表面に設けられ、挿入部内を挿通するチャンネルに通じる取付部と、取付部に装着される上記の栓体とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弾性材料からなる筒状の栓本体内に、経時硬化性を有する硬化部を設け、この硬化部が不可逆的に硬化して、取付部からの栓本体の挿脱方向移動を阻止するので、硬化部が硬化した後は栓体の内視鏡への再装着が不可能になる。これにより、栓体の破壊を伴わずに、使用済みの栓体の再使用が防止される。その結果、破壊により生じた破片がチャンネル内に入り込むなどのトラブルの発生が防止される。また、栓体に切り込みなどの脆弱部を形成する必要もなくなり、栓体を口部に取り付ける際に誤って脆弱部を破壊することもなくなる。さらに、栓体の改良だけで栓体を破壊することなくその再使用を防止することができ、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】内視鏡を示す斜視図である。
【図2】処置具導入部及び処置具栓を示す斜視図である。
【図3】口金に処置具栓を取り付けた状態の断面を示す斜視図である。
【図4】口金及び処置具栓を分解して示す斜視図である。
【図5】処置具栓を収納する包装体を示す正面図である。
【図6】処置具栓の装着開始前の状態を示す断面図である。
【図7】処置具栓の装着時に、その係合爪が口金のフランジに当接してからフランジを乗り越えるまでの状態を示す断面図である。
【図8】処置具栓の係合爪が口金のフランジを乗り越えて、係合爪とフランジとが係合している状態を示す断面図である。
【図9】光硬化部が硬化前の状態であり、処置具栓を口金から取り外すために、処置具栓に対して引っ張り操作がなされたときの状態を示す断面図である。
【図10】光硬化部の硬化により、処置具栓の再度の装着が規制される状態を示す断面図である。
【図11】処置具栓の取り外し前に硬化した光硬化部により、処置具栓の取り外しが規制されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
図1に示すように、内視鏡10は、例えば気管に挿入する気管支鏡であり、気管内に挿入される挿入部11と、操作部12と、ユニバーサルコード13と、を備えている。操作部12は、挿入部11の基端部に連設されている。ユニバーサルコード13の一端部は操作部12に接続され、他端部は複合タイプのコネクタ13aを介して図示しないプロセッサ装置や光源装置などに接続されている。
【0021】
挿入部11は、その先端側から基端側に向かって順に、先端硬性部11aと、湾曲自在な湾曲部11bと、可撓性を有する可撓管部11cとに区分されている。先端硬性部11aの先端面には、鉗子等の処置具14の出口である処置具出口15や、図示は省略するが撮像窓や照明窓が設けられている。撮像窓の奥にはイメージセンサ(図示せず)などが配置され、照明窓の奥には光ファイバケーブル(図示せず)が配置されている。イメージセンサの信号線や光ファイバケーブルは、挿入部11、ユニバーサルコード13、及びコネクタ13a内を通って、プロセッサ装置、光源装置にそれぞれ接続する。
【0022】
挿入部11内には、処置具14を挿通するための処置具挿通チャンネル16が配設されている。処置具挿通チャンネル16の一端は処置具出口15に接続し、他端は操作部12に設けられた処置具導入部17に接続している。また、処置具挿通チャンネル16は、処置具出口15から血液等の体液や体内汚物等の固形物などを吸引するための経路としても用いられる。操作部12内には、処置具挿通チャンネル16から分岐した吸引チャンネル(図示せず)が配設されており、この吸引チャンネルは操作部12に設けられた吸引ボタン18に接続している。
【0023】
吸引ボタン18は、操作部12外において負圧源(図示せず)に接続している。吸引ボタン18は、押圧操作またはその押圧操作の解除により、吸引チャンネルと負圧源との連通/遮断を切り替える。
【0024】
図2ないし図4に示すように、処置具導入部17には、本発明の取付部に相当する口金20が設けられている。この口金20には、処置具14が挿通可能なディスポタイプの処置具栓(栓体)21が装着されている。処置具栓21は、処置具14により処置を行う際に体内の体液、汚物、空気等が処置具挿通チャンネル16内を逆流して口金20から外部に漏れることを防止する。
【0025】
口金20は、処置具挿通チャンネル16に通じる内部管路23を有している。口金20は、処置具導入部17の開口部17aの内部に固定された口金本体部20aと、開口部17aの手前側に突出した口金先端部20bとを有する。口金本体部20aの外周面にはパッキン24が嵌着されている。このパッキン24は、処置具導入部17の内周面との間の隙間から、体液等が漏れるのを防止する。以下、開口部17aの手前側の方向を単に「手前方向」といい、この手前方向と反対側の口金20の奥方向を単に「奥方向」という。また、口金20及び処置具栓21の各部の手前方向側の端部、端面をそれぞれ前端部、前端面といい、各部の奥方向側の端部、端面をそれぞれ奥端部、奥端面という。
【0026】
口金先端部20bは、その外径が口金本体部20aの外径よりも一回り小さく形成されており、口金側周溝を構成している。この口金先端部20bの先端には、処置具栓21と係合するフランジ25が形成されている。このフランジ25は口金側円環状突出部として機能する。これら口金側周溝と口金側円環状突出部により、口金嵌合部が構成される。
【0027】
処置具栓21は、略円筒形状の栓本体29と、この栓本体29に設けられた略円筒状の光硬化部31とを備えている。栓本体29は、例えば透明ゴムなどの光透過性を有する弾性材料で形成されている。栓本体29は、その奥端部に開口した口金挿入穴29aと、その前端部に開口したキャップ取付穴29bとを有している。
【0028】
口金挿入穴29aとキャップ取付穴29bとは、栓本体29の内部に設けられた仕切り壁33により仕切られている。この仕切り壁33には、処置具14を挿入する小穴33aが形成されている。この小穴33aは、処置具14の外径よりも小径に形成されている。
【0029】
栓本体29の内壁面の奥端部には、その周方向に沿って、フランジ25に係合する環状の係合爪35が形成されている。この係合爪35は、栓体側円環状突出部として機能する。この係合爪35の内径は、口金先端部20bの外径以上でかつフランジ25の外径よりは小さく形成されている。口金挿入孔29aは、口金側円環状突出部であるフランジ25に嵌合する栓本体側周溝として機能する。そして、栓体側円環状突出部と栓本体側周溝とにより、取付受け部としての口金受け部が構成される。この口金受け部と口金嵌合部とが嵌合することにより、口金20に栓本体29が取り付けられる。
【0030】
栓本体29には、接続ベルト38を介してキャップ39が一体的に設けられている。このキャップ39の前端面には処置具14の入口となる凹部39aが形成され、奥端面にはキャップ取付穴34に嵌合する嵌合部39bが形成されている。凹部39aの底面には、キャップ取付穴29b内まで達するスリット40が形成されている。
【0031】
スリット40は、処置具14が未挿通の状態では、キャップ39の弾性力によって密着状態になって水密・気密状態を保持する。また、スリット40は、処置具14を挿通させた状態では、キャップ39の弾性力によって、スリット内周面が処置具14の外周面に密着した状態になり、体液等の逆流による漏れを防止する。スリット40及び小穴33aは、口金挿入穴29aに口金先端部20bが挿入されたときに、内部管路23と同軸上に配置される。このため、処置具14は、スリット40、小穴33a、及び内部管路23を通って処置具挿通チャンネル16内に挿入される。
【0032】
光硬化部31は、栓本体29の外壁面と内壁面との間に設けられている。光硬化部31は、筒状の硬化部本体31aと、挿脱規制円環状突出部31bとを有する。挿脱規制円環状突出部31bは、硬化部本体31aの奥端部から係合爪35に向けて突出している。挿脱規制円環状突出部31bの内径は、口金側円環状突出部であるフランジ25の外径よりも小さい。これにより、光硬化部31が硬化すると、この挿脱規制円環状突出部31bをフランジ25が乗り越えて挿入されることや、逆にフランジ25が入っている場合には抜けることがなくなる。
【0033】
光硬化部31は、例えば紫外光など各種波長の光の照射を受けて硬化する光硬化樹脂で形成されている。光硬化部31は、光硬化前の状態では固体状態、液体状態のいずれの状態であってもよく、前者の場合には可撓性を有している。また、光硬化部31は固体状態の場合には栓本体29と一体形成され、液体状態の場合には栓本体29内に注入される。光硬化部31は、光硬化したときに栓本体29の弾性変形、特に口金挿入穴29aの拡径変形を規制する。
【0034】
光硬化部31を形成する光硬化性樹脂としては、光の照射を受けて徐々に硬化し、所定時間で硬化が完了するものが用いられる。なお、ここでいう所定時間とは、例えば、1回の内視鏡検査が終了するまでの時間よりは長いが、検査後の内視鏡の洗浄・消毒処理が終了するまでの時間よりは短い時間(数時間程度)である。なお、内視鏡検査の種類や観察部位の種類に応じて検査終了時間が異なるため、これらの種類に応じて光硬化性樹脂の種類を変えてもよい。また、洗浄・消毒処理の内容によって洗浄・消毒処理時間が変わるので、処理内容に応じて光硬化樹脂の種類を変えてもよい。
【0035】
図5に示すように、処置具栓21は、メーカからの出荷時には遮光性の包装体42内に収納されている。これにより、未使用の処置具栓21の光硬化部31が光硬化することが防止される。なお、包装体42は、滅菌処理が施されている。
【0036】
次に、上記構成の処置具栓21の作用、特に口金20への処置具栓21の装着及び取り外し処理について説明する。最初に処置具栓21を包装体42から取り出す。これにより、栓本体29を通して光硬化部31に光が照射されるため、光硬化部31が徐々に硬化する。
【0037】
次いで、図6に示すように、口金先端部20bの中心に対して口金挿入穴29aの中心を位置決めし、この状態で、処置具栓21を口金先端部20bに向けて押し付ける押付操作を開始する。これにより、口金先端部20b及びフランジ25が口金挿入穴29a内に挿入される。
【0038】
図7に示すように、栓本体29の内周面がフランジ25により押圧されることで、口金挿入穴29aはフランジ25の挿入に伴い次第に拡径変形する。押付操作を継続すると、さらに口金挿入穴29aが拡径変形して、係合爪35の内径がフランジ25の外径よりも大きくなる。これにより、係合爪35がフランジ25を乗り越える。
【0039】
図8に示すように、係合爪35がフランジ25を乗り越えると、口金挿入穴29aは元の形状に復元する。これにより、係合爪35がフランジ25に係合する。以上で処置具栓21の装着が完了する。
【0040】
処置具栓21の装着を含む内視鏡検査の準備が完了した後、挿入部11が患者の体内に挿入される。そして、先端硬性部11aが体内の所望の位置に到達したときに、処置具14が処置具栓21から処置具挿通チャンネル16に挿入されて各種の処置が施される。処置具14による処置が完了した後、処置具栓21が取り外される。
【0041】
最初に、栓本体29に対して手前方向に引っ張り操作がなされる。処置具栓21の装着時と同様に、栓本体29の内周面がフランジ25により押圧されることで口金挿入穴29aが拡径変形し、これに伴い係合爪35の内径も増加する。係合爪35の内径がフランジ25の外径よりも大きくなると、係合爪35がフランジ25を乗り越える。これにより、係合爪35とフランジ25との係合が解除される。
【0042】
図9に示すように、引っ張り操作を継続すると、口金挿入穴29a内から口金先端部20b及びフランジ25が抜き出される。また、これと同時に、口金挿入穴29aは元の形状に復元する。以上で処置具栓21の取り外しが完了する。
【0043】
処置具栓21を包装体42から取り出してから所定時間が経過すると、光硬化部31が完全に硬化する。これにより、口金挿入穴29aの拡径変形が規制される。このため、図10に示すように、口金先端部20b及びフランジ25を口金挿入穴29a内に挿入しようとしても、口金挿入穴29aの拡径変形が規制されているため、係合爪35がフランジ25を乗り越えることができない。このため、口金挿入穴29a内への口金20の挿入が係合爪35により阻止されるので、処置具栓21を口金20に装着することができなくなる。その結果、処置具栓21の再使用が防止される。
【0044】
処置具栓21の破壊を伴わずに処置具栓21の再使用を防止することができるので、破壊により生じた破片が処置具挿通チャンネル16内に入り込むなどのトラブルの発生を防止することができる。また、処置具栓21に切り込みなどの脆弱部を形成する必要もなくなるので、処置具栓21の取付時や内視鏡検査時などに、誤って脆弱部を破壊して処置具栓21が使用不能になることが防止される。
【0045】
また、上記特許文献5に記載のように、処置具栓21及び内視鏡10にそれぞれIDタグ、タグリーダを設けるとともに、ID情報の比較を行う回路などを設ける必要がなく、処置具栓21の改良だけでその再使用を防止することができる。その結果、従来よりも低コストに非破壊で処置具栓21の再使用を防止することができる。
【0046】
上記実施形態では、光硬化部31が完全に硬化する前に口金20から処置具栓21を取り外しているが、この取り外しの前に光硬化部31が光硬化した場合でも、処置具栓21の再使用はできなくなる。
【0047】
図11に示すように、係合爪35がフランジ25に係合している状態で光硬化部31が完全に硬化すると、この光硬化部31は、係合爪35をフランジ25に係合した状態で保持する。このため、処置具栓21を破壊しない限り、この処置具栓21を口金20から取り外すことができなる。その結果、処置具栓21は口金20からの取り外しの際に破壊されてしまうので、処置具栓21の再使用が防止される。なお、この場合には、破壊により生じた破片が処置具挿通チャンネル16内に入り込むおそれがあるので、光硬化部31が完全に硬化する前に処置具栓21の取り外しを行うことが好ましい。
【0048】
上記実施形態では、処置具導入部17の口金20に装着される処置具栓21を例に挙げて説明を行ったが、処置具導入部17の開口部17aに直に装着される処置具栓に対しても本発明を適用することができる。
【0049】
上記実施形態では、処置具挿通チャンネル16に通じる口金20に装着される処置具栓21を例に挙げて説明を行ったが、例えば吸引チャンネル、送気送水チャンネルなどの内視鏡10の内部に配設される各種のチャンネルや管路に通じる口部に装着される栓体に本発明を適用することができる。
【0050】
上記実施形態では、光硬化部31として光硬化樹脂を例に挙げて説明を行ったが、光の照射を受けて徐々に硬化する各種の光硬化性材料で形成されていてもよい。また、上記実施形態では、栓本体29が透明ゴムで形成されているが、光透過性を有する各種の弾性材料で形成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、口金挿入穴29aの拡径変形を規制するために、栓本体29内に光硬化性の光硬化部31を設けているが、光硬化部31の代わりに、例えば湿気を吸収して硬化する材料で形成された硬化部など、経時硬化性を有する各種の硬化部を設けてもよい。なお、硬化部を湿気を吸収して硬化する材料で形成する場合には、栓本体に通気用の小孔を形成する。
【0052】
上記実施形態では、気管に挿入する内視鏡10を例に挙げて説明を行ったが、例えば大腸に挿入される大腸内視鏡等の各種医療用内視鏡や、工業用途などの他の用途に使用される内視鏡などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 内視鏡
16 処置具挿通チャンネル
17 処置具導入部
20 口金
21 処置具栓
29 栓本体
29a 口金挿入穴
31 光硬化部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の取付部に取り付けられる再使用不可能な栓体、及びこの栓体を備える内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療分野において、患者の体内に内視鏡の挿入部を挿入して、患部の観察だけではなく患部に対して各種の処置を行っている(特許文献1参照)。具体的には、鉗子、切開具などの各種処置具を、内視鏡の操作部に設けられた処置具導入部(口部)から挿入部内の処置具挿通チャンネルに挿通させて、挿入部先端から突出させることにより、患部の観察や切除、採取等の各種の処置が行われる。
【0003】
処置具導入部には、処置具が挿通可能な処置具栓が装着されている(特許文献2〜4参照)。この処置具栓は、体内の内圧の変化等によって、体内の体液、汚物、空気等が処置具挿通チャンネル内を逆流して、処置具導入部から外部に洩れ出ることを防止している。このため、処置具栓には、使用により体液等が付着する。処置具栓としては、感染防止の観点から使用毎に新たなものと交換するように、再使用が不可能なディスポタイプのものが一般的に用いられる。
【0004】
特許文献2〜4には、栓体の一部を破断させることで処置具導入部から取り外し可能になる処置具栓が開示されている。これらの処置具栓では、処置具導入部から取り外される際に破壊が伴うので、再使用が不可能になる。その結果、使用済みの処置具栓が誤って再使用されることが防止される。
【0005】
また、特許文献5には、ディスポタイプの内視鏡カバーの再使用を防止する内視鏡装置が開示されている。この内視鏡装置では、内視鏡カバーに設けられたIDタグからID情報を内視鏡に設けられたタグリーダで読み取り、この読取結果を電子カルテサーバに逐次格納する。そして、新たにタグリーダで読み取られたID情報と、電子カルテサーバに格納済みのID情報とを比較することで、内視鏡カバーが使用済みか否かの判定を行い、カバーが使用済みの場合には警告表示を行う。したがって、この特許文献5の記載のものでは、処置具栓にIDタグを設けることにより、処置具栓の再使用を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/035607パンフレット
【特許文献2】特開2008−043774号公報
【特許文献3】特開2006−346197号公報
【特許文献4】特開2006−043131号公報
【特許文献5】特開2006−288823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2〜4の鉗子栓は、処置具導入部から取り外される際に破壊が伴うので、この破壊により生じた破片が処置具挿通チャンネル内に入り込むおそれがある。この場合には、処置具挿通チャンネル内の洗浄・消毒処理に支障をきたすおそれがある。また、特許文献2〜4の処置具栓では、内視鏡からの取り外し時に破壊し易いように、切り込みなどの脆弱部を形成しておく必要がある。このため、処置具栓を処置具導入部に取り付ける際や内視鏡検査時等に、誤って脆弱部を破壊してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献5では、処置具栓にIDタグを設け、このIDタグから読み取った固有識別情報に基づいて処置具栓の再使用の有無を判定するので、処置具栓を破壊する必要はなくなる。しかしながら、処置具栓にIDタグを、内視鏡にタグリーダをそれぞれ設ける必要がある。また、タグリーダで読み取ったID情報と、電子カルテサーバに格納済みのID情報とを比較する回路等が必要になる。その結果、製造コストが増加する。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、破壊を伴わずに再使用が不可能になる内視鏡用の栓体、及びこの栓体を備える内視鏡を低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡の栓体は、内視鏡の取付部に取り付けられる内視鏡の栓体であって、弾性材料からなる筒状の栓本体と、この栓本体に形成され、取付部に嵌合し、この取付部からの栓本体の挿脱方向移動を阻止する取付受け部と、栓本体に内蔵され、取付受け部の挿脱方向移動を許容する硬化前状態と、取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態に不可逆的に硬化する経時硬化性を有する硬化部とを備えている。
【0011】
取付部は、内視鏡内の処置具挿通チャンネルに通じる略筒状の口金であり、栓体は、処置具が挿通される処置具挿通穴を有し、口金に嵌合する口金受け部を取付受け部として有することが望ましい。
【0012】
口金は外側端部に口金嵌合部を有し、口金嵌合部は、外周面から外側に向けて突出する口金側円環状突出部と、外周面に形成される口金側周溝とを有する。口金受け部は、栓本体の内周面に形成され、口金側円環状突出部に嵌合する栓本体側周溝と、栓本体の内周面に形成され、口金側周溝に嵌合する栓本体側円環状突出部とを有することが望ましい。
【0013】
硬化部は、栓本体に配される筒状の硬化部本体と、硬化部本体から栓本体側円環状突出部に向けて突出する挿脱規制円環状突出部とを有し、口金側円環状突出部の外径よりも、挿脱規制円環状突出部の内径が小さいことが望ましい。
【0014】
栓本体は光透過性を有し、硬化部は、栓本体を透過した光の照射を受けて硬化する光硬化性を有することが望ましい。そして、栓本体は遮光性の包装体に収納されており、使用時に包装体から取り出されて口金に装着されることが望ましい。
【0015】
硬化部は、内視鏡による施術時間を経過後に、取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態になることが望ましい。
【0016】
栓本体は、処置具挿通穴を外側から塞ぐ弁部材と、弁部材を栓本体に連結する連結部材と、弁部材が嵌合する弁部材受け部とを有することが望ましい。
【0017】
本発明の内視鏡は、体内に挿入される挿入部と、挿入部の基端に接続される操作部と、操作部の外表面に設けられ、挿入部内を挿通するチャンネルに通じる取付部と、取付部に装着される上記の栓体とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弾性材料からなる筒状の栓本体内に、経時硬化性を有する硬化部を設け、この硬化部が不可逆的に硬化して、取付部からの栓本体の挿脱方向移動を阻止するので、硬化部が硬化した後は栓体の内視鏡への再装着が不可能になる。これにより、栓体の破壊を伴わずに、使用済みの栓体の再使用が防止される。その結果、破壊により生じた破片がチャンネル内に入り込むなどのトラブルの発生が防止される。また、栓体に切り込みなどの脆弱部を形成する必要もなくなり、栓体を口部に取り付ける際に誤って脆弱部を破壊することもなくなる。さらに、栓体の改良だけで栓体を破壊することなくその再使用を防止することができ、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】内視鏡を示す斜視図である。
【図2】処置具導入部及び処置具栓を示す斜視図である。
【図3】口金に処置具栓を取り付けた状態の断面を示す斜視図である。
【図4】口金及び処置具栓を分解して示す斜視図である。
【図5】処置具栓を収納する包装体を示す正面図である。
【図6】処置具栓の装着開始前の状態を示す断面図である。
【図7】処置具栓の装着時に、その係合爪が口金のフランジに当接してからフランジを乗り越えるまでの状態を示す断面図である。
【図8】処置具栓の係合爪が口金のフランジを乗り越えて、係合爪とフランジとが係合している状態を示す断面図である。
【図9】光硬化部が硬化前の状態であり、処置具栓を口金から取り外すために、処置具栓に対して引っ張り操作がなされたときの状態を示す断面図である。
【図10】光硬化部の硬化により、処置具栓の再度の装着が規制される状態を示す断面図である。
【図11】処置具栓の取り外し前に硬化した光硬化部により、処置具栓の取り外しが規制されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
図1に示すように、内視鏡10は、例えば気管に挿入する気管支鏡であり、気管内に挿入される挿入部11と、操作部12と、ユニバーサルコード13と、を備えている。操作部12は、挿入部11の基端部に連設されている。ユニバーサルコード13の一端部は操作部12に接続され、他端部は複合タイプのコネクタ13aを介して図示しないプロセッサ装置や光源装置などに接続されている。
【0021】
挿入部11は、その先端側から基端側に向かって順に、先端硬性部11aと、湾曲自在な湾曲部11bと、可撓性を有する可撓管部11cとに区分されている。先端硬性部11aの先端面には、鉗子等の処置具14の出口である処置具出口15や、図示は省略するが撮像窓や照明窓が設けられている。撮像窓の奥にはイメージセンサ(図示せず)などが配置され、照明窓の奥には光ファイバケーブル(図示せず)が配置されている。イメージセンサの信号線や光ファイバケーブルは、挿入部11、ユニバーサルコード13、及びコネクタ13a内を通って、プロセッサ装置、光源装置にそれぞれ接続する。
【0022】
挿入部11内には、処置具14を挿通するための処置具挿通チャンネル16が配設されている。処置具挿通チャンネル16の一端は処置具出口15に接続し、他端は操作部12に設けられた処置具導入部17に接続している。また、処置具挿通チャンネル16は、処置具出口15から血液等の体液や体内汚物等の固形物などを吸引するための経路としても用いられる。操作部12内には、処置具挿通チャンネル16から分岐した吸引チャンネル(図示せず)が配設されており、この吸引チャンネルは操作部12に設けられた吸引ボタン18に接続している。
【0023】
吸引ボタン18は、操作部12外において負圧源(図示せず)に接続している。吸引ボタン18は、押圧操作またはその押圧操作の解除により、吸引チャンネルと負圧源との連通/遮断を切り替える。
【0024】
図2ないし図4に示すように、処置具導入部17には、本発明の取付部に相当する口金20が設けられている。この口金20には、処置具14が挿通可能なディスポタイプの処置具栓(栓体)21が装着されている。処置具栓21は、処置具14により処置を行う際に体内の体液、汚物、空気等が処置具挿通チャンネル16内を逆流して口金20から外部に漏れることを防止する。
【0025】
口金20は、処置具挿通チャンネル16に通じる内部管路23を有している。口金20は、処置具導入部17の開口部17aの内部に固定された口金本体部20aと、開口部17aの手前側に突出した口金先端部20bとを有する。口金本体部20aの外周面にはパッキン24が嵌着されている。このパッキン24は、処置具導入部17の内周面との間の隙間から、体液等が漏れるのを防止する。以下、開口部17aの手前側の方向を単に「手前方向」といい、この手前方向と反対側の口金20の奥方向を単に「奥方向」という。また、口金20及び処置具栓21の各部の手前方向側の端部、端面をそれぞれ前端部、前端面といい、各部の奥方向側の端部、端面をそれぞれ奥端部、奥端面という。
【0026】
口金先端部20bは、その外径が口金本体部20aの外径よりも一回り小さく形成されており、口金側周溝を構成している。この口金先端部20bの先端には、処置具栓21と係合するフランジ25が形成されている。このフランジ25は口金側円環状突出部として機能する。これら口金側周溝と口金側円環状突出部により、口金嵌合部が構成される。
【0027】
処置具栓21は、略円筒形状の栓本体29と、この栓本体29に設けられた略円筒状の光硬化部31とを備えている。栓本体29は、例えば透明ゴムなどの光透過性を有する弾性材料で形成されている。栓本体29は、その奥端部に開口した口金挿入穴29aと、その前端部に開口したキャップ取付穴29bとを有している。
【0028】
口金挿入穴29aとキャップ取付穴29bとは、栓本体29の内部に設けられた仕切り壁33により仕切られている。この仕切り壁33には、処置具14を挿入する小穴33aが形成されている。この小穴33aは、処置具14の外径よりも小径に形成されている。
【0029】
栓本体29の内壁面の奥端部には、その周方向に沿って、フランジ25に係合する環状の係合爪35が形成されている。この係合爪35は、栓体側円環状突出部として機能する。この係合爪35の内径は、口金先端部20bの外径以上でかつフランジ25の外径よりは小さく形成されている。口金挿入孔29aは、口金側円環状突出部であるフランジ25に嵌合する栓本体側周溝として機能する。そして、栓体側円環状突出部と栓本体側周溝とにより、取付受け部としての口金受け部が構成される。この口金受け部と口金嵌合部とが嵌合することにより、口金20に栓本体29が取り付けられる。
【0030】
栓本体29には、接続ベルト38を介してキャップ39が一体的に設けられている。このキャップ39の前端面には処置具14の入口となる凹部39aが形成され、奥端面にはキャップ取付穴34に嵌合する嵌合部39bが形成されている。凹部39aの底面には、キャップ取付穴29b内まで達するスリット40が形成されている。
【0031】
スリット40は、処置具14が未挿通の状態では、キャップ39の弾性力によって密着状態になって水密・気密状態を保持する。また、スリット40は、処置具14を挿通させた状態では、キャップ39の弾性力によって、スリット内周面が処置具14の外周面に密着した状態になり、体液等の逆流による漏れを防止する。スリット40及び小穴33aは、口金挿入穴29aに口金先端部20bが挿入されたときに、内部管路23と同軸上に配置される。このため、処置具14は、スリット40、小穴33a、及び内部管路23を通って処置具挿通チャンネル16内に挿入される。
【0032】
光硬化部31は、栓本体29の外壁面と内壁面との間に設けられている。光硬化部31は、筒状の硬化部本体31aと、挿脱規制円環状突出部31bとを有する。挿脱規制円環状突出部31bは、硬化部本体31aの奥端部から係合爪35に向けて突出している。挿脱規制円環状突出部31bの内径は、口金側円環状突出部であるフランジ25の外径よりも小さい。これにより、光硬化部31が硬化すると、この挿脱規制円環状突出部31bをフランジ25が乗り越えて挿入されることや、逆にフランジ25が入っている場合には抜けることがなくなる。
【0033】
光硬化部31は、例えば紫外光など各種波長の光の照射を受けて硬化する光硬化樹脂で形成されている。光硬化部31は、光硬化前の状態では固体状態、液体状態のいずれの状態であってもよく、前者の場合には可撓性を有している。また、光硬化部31は固体状態の場合には栓本体29と一体形成され、液体状態の場合には栓本体29内に注入される。光硬化部31は、光硬化したときに栓本体29の弾性変形、特に口金挿入穴29aの拡径変形を規制する。
【0034】
光硬化部31を形成する光硬化性樹脂としては、光の照射を受けて徐々に硬化し、所定時間で硬化が完了するものが用いられる。なお、ここでいう所定時間とは、例えば、1回の内視鏡検査が終了するまでの時間よりは長いが、検査後の内視鏡の洗浄・消毒処理が終了するまでの時間よりは短い時間(数時間程度)である。なお、内視鏡検査の種類や観察部位の種類に応じて検査終了時間が異なるため、これらの種類に応じて光硬化性樹脂の種類を変えてもよい。また、洗浄・消毒処理の内容によって洗浄・消毒処理時間が変わるので、処理内容に応じて光硬化樹脂の種類を変えてもよい。
【0035】
図5に示すように、処置具栓21は、メーカからの出荷時には遮光性の包装体42内に収納されている。これにより、未使用の処置具栓21の光硬化部31が光硬化することが防止される。なお、包装体42は、滅菌処理が施されている。
【0036】
次に、上記構成の処置具栓21の作用、特に口金20への処置具栓21の装着及び取り外し処理について説明する。最初に処置具栓21を包装体42から取り出す。これにより、栓本体29を通して光硬化部31に光が照射されるため、光硬化部31が徐々に硬化する。
【0037】
次いで、図6に示すように、口金先端部20bの中心に対して口金挿入穴29aの中心を位置決めし、この状態で、処置具栓21を口金先端部20bに向けて押し付ける押付操作を開始する。これにより、口金先端部20b及びフランジ25が口金挿入穴29a内に挿入される。
【0038】
図7に示すように、栓本体29の内周面がフランジ25により押圧されることで、口金挿入穴29aはフランジ25の挿入に伴い次第に拡径変形する。押付操作を継続すると、さらに口金挿入穴29aが拡径変形して、係合爪35の内径がフランジ25の外径よりも大きくなる。これにより、係合爪35がフランジ25を乗り越える。
【0039】
図8に示すように、係合爪35がフランジ25を乗り越えると、口金挿入穴29aは元の形状に復元する。これにより、係合爪35がフランジ25に係合する。以上で処置具栓21の装着が完了する。
【0040】
処置具栓21の装着を含む内視鏡検査の準備が完了した後、挿入部11が患者の体内に挿入される。そして、先端硬性部11aが体内の所望の位置に到達したときに、処置具14が処置具栓21から処置具挿通チャンネル16に挿入されて各種の処置が施される。処置具14による処置が完了した後、処置具栓21が取り外される。
【0041】
最初に、栓本体29に対して手前方向に引っ張り操作がなされる。処置具栓21の装着時と同様に、栓本体29の内周面がフランジ25により押圧されることで口金挿入穴29aが拡径変形し、これに伴い係合爪35の内径も増加する。係合爪35の内径がフランジ25の外径よりも大きくなると、係合爪35がフランジ25を乗り越える。これにより、係合爪35とフランジ25との係合が解除される。
【0042】
図9に示すように、引っ張り操作を継続すると、口金挿入穴29a内から口金先端部20b及びフランジ25が抜き出される。また、これと同時に、口金挿入穴29aは元の形状に復元する。以上で処置具栓21の取り外しが完了する。
【0043】
処置具栓21を包装体42から取り出してから所定時間が経過すると、光硬化部31が完全に硬化する。これにより、口金挿入穴29aの拡径変形が規制される。このため、図10に示すように、口金先端部20b及びフランジ25を口金挿入穴29a内に挿入しようとしても、口金挿入穴29aの拡径変形が規制されているため、係合爪35がフランジ25を乗り越えることができない。このため、口金挿入穴29a内への口金20の挿入が係合爪35により阻止されるので、処置具栓21を口金20に装着することができなくなる。その結果、処置具栓21の再使用が防止される。
【0044】
処置具栓21の破壊を伴わずに処置具栓21の再使用を防止することができるので、破壊により生じた破片が処置具挿通チャンネル16内に入り込むなどのトラブルの発生を防止することができる。また、処置具栓21に切り込みなどの脆弱部を形成する必要もなくなるので、処置具栓21の取付時や内視鏡検査時などに、誤って脆弱部を破壊して処置具栓21が使用不能になることが防止される。
【0045】
また、上記特許文献5に記載のように、処置具栓21及び内視鏡10にそれぞれIDタグ、タグリーダを設けるとともに、ID情報の比較を行う回路などを設ける必要がなく、処置具栓21の改良だけでその再使用を防止することができる。その結果、従来よりも低コストに非破壊で処置具栓21の再使用を防止することができる。
【0046】
上記実施形態では、光硬化部31が完全に硬化する前に口金20から処置具栓21を取り外しているが、この取り外しの前に光硬化部31が光硬化した場合でも、処置具栓21の再使用はできなくなる。
【0047】
図11に示すように、係合爪35がフランジ25に係合している状態で光硬化部31が完全に硬化すると、この光硬化部31は、係合爪35をフランジ25に係合した状態で保持する。このため、処置具栓21を破壊しない限り、この処置具栓21を口金20から取り外すことができなる。その結果、処置具栓21は口金20からの取り外しの際に破壊されてしまうので、処置具栓21の再使用が防止される。なお、この場合には、破壊により生じた破片が処置具挿通チャンネル16内に入り込むおそれがあるので、光硬化部31が完全に硬化する前に処置具栓21の取り外しを行うことが好ましい。
【0048】
上記実施形態では、処置具導入部17の口金20に装着される処置具栓21を例に挙げて説明を行ったが、処置具導入部17の開口部17aに直に装着される処置具栓に対しても本発明を適用することができる。
【0049】
上記実施形態では、処置具挿通チャンネル16に通じる口金20に装着される処置具栓21を例に挙げて説明を行ったが、例えば吸引チャンネル、送気送水チャンネルなどの内視鏡10の内部に配設される各種のチャンネルや管路に通じる口部に装着される栓体に本発明を適用することができる。
【0050】
上記実施形態では、光硬化部31として光硬化樹脂を例に挙げて説明を行ったが、光の照射を受けて徐々に硬化する各種の光硬化性材料で形成されていてもよい。また、上記実施形態では、栓本体29が透明ゴムで形成されているが、光透過性を有する各種の弾性材料で形成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、口金挿入穴29aの拡径変形を規制するために、栓本体29内に光硬化性の光硬化部31を設けているが、光硬化部31の代わりに、例えば湿気を吸収して硬化する材料で形成された硬化部など、経時硬化性を有する各種の硬化部を設けてもよい。なお、硬化部を湿気を吸収して硬化する材料で形成する場合には、栓本体に通気用の小孔を形成する。
【0052】
上記実施形態では、気管に挿入する内視鏡10を例に挙げて説明を行ったが、例えば大腸に挿入される大腸内視鏡等の各種医療用内視鏡や、工業用途などの他の用途に使用される内視鏡などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 内視鏡
16 処置具挿通チャンネル
17 処置具導入部
20 口金
21 処置具栓
29 栓本体
29a 口金挿入穴
31 光硬化部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の取付部に取り付けられる内視鏡の栓体であって、
弾性材料からなる筒状の栓本体と、
前記栓本体に形成され、前記取付部に嵌合し、前記取付部からの前記栓本体の挿脱方向移動を阻止する取付受け部と、
前記栓本体に内蔵され、前記取付受け部の挿脱方向移動を許容する硬化前状態と、前記取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態に不可逆的に硬化する経時硬化性を有する硬化部と、
を有することを特徴とする内視鏡の栓体。
【請求項2】
前記取付部は、前記内視鏡内の処置具挿通チャンネルに通じる略筒状の口金であり、
前記栓体は、処置具が挿通される処置具挿通穴を有し、前記口金に嵌合する口金受け部が前記取付受け部であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡の栓体。
【請求項3】
前記口金は外側端部に口金嵌合部を有し、前記口金嵌合部は、外周面から外側に向けて突出する口金側円環状突出部と、外周面に形成される口金側周溝とを有し、
前記口金受け部は、前記栓本体の内周面に形成され、前記口金側円環状突出部に嵌合する栓本体側周溝と、前記栓本体の内周面に形成され、前記口金側周溝に嵌合する栓本体側円環状突出部とを有することを特徴とする請求項2記載の内視鏡の栓体。
【請求項4】
前記硬化部は、前記栓本体に配される筒状の硬化部本体と、前記硬化部本体から前記栓本体側円環状突出部に向けて突出する挿脱規制円環状突出部とを有し、
前記口金側円環状突出部の外径よりも、前記挿脱規制円環状突出部の内径が小さいことを特徴とする請求項3記載の内視鏡の栓体。
【請求項5】
前記栓本体は光透過性を有し、前記硬化部は、前記栓本体を透過した光の照射を受けて硬化する光硬化性を有することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の内視鏡の栓体。
【請求項6】
前記栓本体は遮光性の包装体に収納されており、使用時に包装体から取り出されて前記取付部に装着されることを特徴とする請求項5記載の内視鏡の栓体。
【請求項7】
前記硬化部は一定時間を経過後に、前記取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態になり、前記一定時間は1回の内視鏡検査が終了する時間より長く、検査後の内視鏡の洗浄・消毒処理が完了するまでの時間よりは短いことを特徴とする請求項6記載の内視鏡の栓体。
【請求項8】
前記栓本体は、前記処置具挿通穴を外側から塞ぐ弁部材と、前記弁部材を前記栓本体に連結する連結部材と、前記弁部材が嵌合する弁部材受け部とを有することを特徴とする請求項7項記載の内視鏡の栓体。
【請求項9】
体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端に接続される操作部と、前記操作部の外表面に設けられ、前記挿入部内を挿通するチャンネルに通じる取付部と、前記取付部に装着される請求項1から8いずれか1項記載の栓体と、
を備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項1】
内視鏡の取付部に取り付けられる内視鏡の栓体であって、
弾性材料からなる筒状の栓本体と、
前記栓本体に形成され、前記取付部に嵌合し、前記取付部からの前記栓本体の挿脱方向移動を阻止する取付受け部と、
前記栓本体に内蔵され、前記取付受け部の挿脱方向移動を許容する硬化前状態と、前記取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態に不可逆的に硬化する経時硬化性を有する硬化部と、
を有することを特徴とする内視鏡の栓体。
【請求項2】
前記取付部は、前記内視鏡内の処置具挿通チャンネルに通じる略筒状の口金であり、
前記栓体は、処置具が挿通される処置具挿通穴を有し、前記口金に嵌合する口金受け部が前記取付受け部であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡の栓体。
【請求項3】
前記口金は外側端部に口金嵌合部を有し、前記口金嵌合部は、外周面から外側に向けて突出する口金側円環状突出部と、外周面に形成される口金側周溝とを有し、
前記口金受け部は、前記栓本体の内周面に形成され、前記口金側円環状突出部に嵌合する栓本体側周溝と、前記栓本体の内周面に形成され、前記口金側周溝に嵌合する栓本体側円環状突出部とを有することを特徴とする請求項2記載の内視鏡の栓体。
【請求項4】
前記硬化部は、前記栓本体に配される筒状の硬化部本体と、前記硬化部本体から前記栓本体側円環状突出部に向けて突出する挿脱規制円環状突出部とを有し、
前記口金側円環状突出部の外径よりも、前記挿脱規制円環状突出部の内径が小さいことを特徴とする請求項3記載の内視鏡の栓体。
【請求項5】
前記栓本体は光透過性を有し、前記硬化部は、前記栓本体を透過した光の照射を受けて硬化する光硬化性を有することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の内視鏡の栓体。
【請求項6】
前記栓本体は遮光性の包装体に収納されており、使用時に包装体から取り出されて前記取付部に装着されることを特徴とする請求項5記載の内視鏡の栓体。
【請求項7】
前記硬化部は一定時間を経過後に、前記取付受け部の挿脱方向移動を規制する硬化後状態になり、前記一定時間は1回の内視鏡検査が終了する時間より長く、検査後の内視鏡の洗浄・消毒処理が完了するまでの時間よりは短いことを特徴とする請求項6記載の内視鏡の栓体。
【請求項8】
前記栓本体は、前記処置具挿通穴を外側から塞ぐ弁部材と、前記弁部材を前記栓本体に連結する連結部材と、前記弁部材が嵌合する弁部材受け部とを有することを特徴とする請求項7項記載の内視鏡の栓体。
【請求項9】
体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端に接続される操作部と、前記操作部の外表面に設けられ、前記挿入部内を挿通するチャンネルに通じる取付部と、前記取付部に装着される請求項1から8いずれか1項記載の栓体と、
を備えることを特徴とする内視鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39358(P2013−39358A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160322(P2012−160322)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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