説明

栓体及び内視鏡

【課題】処置具栓の簡単な取り外し及び再利用防止を行う。
【解決手段】口金17の口金係合部25に、処置具栓21を着脱自在に取り付ける。処置具栓21は、栓本体30と栓取付フック31〜34を備える。各栓取付フック31〜34は口金係合部25に係止し、処置具栓21は口金17に取り付けられる。内視鏡の使用後に、処置具栓21を口金17から取り外す場合には、取り外し用具40を処置具栓21の挿通孔30aに挿入する。栓取付フック31〜34が取り外し用具40の押動部40aにより押されて、係合爪31aが取付解除位置に変位し、処置具栓21と口金17との係止が解除される。これと同時に、係止爪30fと用具係止爪40bが係止し、取り外し用具40が処置具栓21から抜けなくなる。処置具栓21の挿通孔30aが取り外し用具40により塞がれるため、処置具栓21の再利用が不能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に取り付けられる再使用不可能な栓体、及びこの栓体を備える内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療分野においては、体内を観察する内視鏡検査が行われている。この内視鏡検査では、患者の体内に内視鏡の挿入部を挿入し、手元側のモニタにて体内を観察する。観察中に病変部を発見した場合には、病変部に対して各種の処置を行う。具体的には、鉗子、切開具などの各種処置具を、内視鏡の操作部に設けられた処置具導入口から挿入する。挿入された処置具は、挿入部内の処置具チャンネルを通り、挿入部先端から突出する。この突出させた処置具により、病変部の切除、採取等の各種の処置を行っている。
【0003】
体内の内圧の変化等によって、体内の体液、汚物、体内洗浄用の生理食塩水等が処置具チャンネル内を通って、口金から外部に漏れ出ることがある。これを防止するために、口金には処置具栓が取り付けられる。処置具栓は、処置具が挿通可能な弁を有し、この弁は処置具栓が挿通していない状態では閉じられている。このような処置具栓としては、使用により体液等が付着するため、感染防止の観点から使用毎に新たなものと交換する必要がある。そのため、再使用が不可能なディスポタイプのものが一般的に用いられる。
【0004】
特許文献1には、処置具栓を口金から取り外すとともに再利用不能にするときに、破壊用治具を用いて処置具栓を破壊することが記載されている。この場合に、破壊用治具を、処置具栓の栓本体側面に設けられた破壊リングに連結させる。そして、破壊用治具を用いて破壊リングに力を加えることにより、栓本体に形成された栓本体破壊部を破壊する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−346197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、破壊用治具を破壊リングに連結させる工程に加えて、破壊用治具により破壊リングに力を加えて栓本体破壊部を破壊する工程を行う必要があり、作業性が悪い。また、栓本体には、体液等が付着しているため、栓本体破壊部を破壊するときに破片とともに体液等が飛び散り、衛生上の問題があった。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、簡単に取り外すことができ、再使用が不可能な栓体及びこれを備えた内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の内視鏡用栓体は、内視鏡の口部に係合部を介して着脱自在に取り付けられる内視鏡用栓体であって、孔が形成された筒状の栓本体と、栓本体の内部に配され、係合部に係合して栓本体を口部に取り付ける取付位置と取り付けを解除する取付解除位置との間で変位可能で、孔から栓本体の内部に取り外し用具が挿入された状態で、取り外し用具に押動されて取付解除位置に変位する栓取付フックと、栓本体の内部に設けられ、栓本体に挿入された取り外し用具に係止し、この取り外し用具を栓本体から取り外し不能にする栓係止部と、を備えている。

【0009】
栓本体の孔に挿入され、栓取付フックを押動して取付位置から取付解除位置に変位させる押動部と、押動部が栓取付フックを押動して取付位置から取付解除位置に変位させた後に、栓係止部に係止する用具係止部とを有する取り外し用具を備えることが好ましい。
【0010】
栓取付フックは、取付位置に向けて付勢されていることが好ましい。また、栓取付フックは、栓本体の周方向に離間して複数設けられていることが好ましい。
【0011】
栓係止部は、取り外し用具の挿入方向に対し内側に向かい斜めに突出する係止爪であり、用具係止部は、取り外し用具の挿入方向とは反対方向に対し外側に向かい斜めに突出する係止爪であることが好ましい。また、栓係止部は、栓本体に一体に形成されていることが好ましい。孔は処置具が挿通される挿通孔であり、取り外し用具によって挿通孔が塞がれることが好ましい。挿通孔には、処置具が挿通されるスリットを有するスリット弁が配されていることが好ましい。
【0012】
本発明の内視鏡は、体内に挿入される挿入部と、この挿入部の基端が接続される操作部と、操作部に設けられる口部と、口部に取り付けられる上記の内視鏡用栓体と、を備えている。なお、口部は、処置具が挿通される処置具チャンネルに連結される口金であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取り外し用具を栓本体の孔に挿入すると、栓本体内の栓取付フックが取付解除位置まで変位する。これにより、内視鏡用栓体が口部から取り外し可能となり、簡単に栓体を口部から取り外すことができる。また、挿入した取り外し用具は栓係止部による栓本体との係止によって、栓本体から分離することができない。したがって、新たに口部に再装着することができなくなる。また、処置具を挿通することもできないため、栓体の再利用を防止される。
【0014】
取り外し用具の先端による押動によって、栓取付フックを取付解除位置状態にして、口部から栓本体を取り外すため、栓本体を破損させることなく簡単に取り外すことができる。したがって、栓本体の破損時の衝撃などによって、体液等の飛び散りがないので、衛生的であり、感染などが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】内視鏡の斜視図である。
【図2】口金固定部と処置具栓とを示す斜視図である。
【図3】口金と栓取付フックと栓本体とを分解して示す分解斜視図である。
【図4】口金に処置具栓を取り付けた状態を示す斜視断面図である。
【図5】口金と栓取付フックと栓本体とを分解して示す分解斜視断面図である。
【図6】フック凹部の上段部分を示す断面図である。
【図7】口金に処置具栓を取り付けた状態を示す断面図である。
【図8】処置具栓を口金に取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図9】処置具を処置具栓に挿通した状態を示す断面図である。
【図10】取り外し用具を処置具栓の挿通孔に挿入し、栓取付フックによる係止を解除した状態を示す断面図である。
【図11】処置具栓を口金から取り外した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、内視鏡10は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を備え、例えば気管に挿入する気管支鏡として用いられる。挿入部11は、気管内に挿入される。操作部12は、挿入部11の基端に連設されている。ユニバーサルコード13は、複合タイプのコネクタ13aを介して、図示しないプロセッサ装置や光源装置などに接続される。
【0017】
挿入部11は、その先端側から基端側に向かって順に、先端硬性部11aと、湾曲自在な湾曲部11bと、可撓性を有する可撓管部11cとに区分けされている。先端硬性部11aの先端面には、鉗子等の処置具14の出口である処置具出口15の他に、図示は省略するが観察窓や照明窓が設けられている。観察窓の奥にはイメージセンサ(図示せず)などが配置され、照明窓の奥には光ファイバケーブル(図示せず)が配置されている。イメージセンサの信号線や光ファイバケーブルは、挿入部11、ユニバーサルコード13、及びコネクタ13a内を通って、プロセッサ装置、光源装置にそれぞれ接続される。
【0018】
挿入部11内には、処置具14を挿通するための処置具チャンネル16が配されている。処置具チャンネル16の一端は処置具出口15に接続し、他端は操作部12に設けられた口金固定部20に接続している。また、処置具チャンネル16は、処置具出口15から血液等の体液や体内汚物等の固形物などを吸引するための経路としても用いられる。操作部12内には、処置具チャンネル16から分岐した吸引チャンネル(図示せず)が配されている。この吸引チャンネルは操作部12に設けられた吸引ボタン19に接続している。
【0019】
吸引ボタン19は、操作部12外において負圧源(図示せず)に接続している。吸引ボタン19は、押圧操作またはその押圧操作の解除により、吸引通路と負圧源の連通及び遮断を切り替える。
【0020】
図2に示すように、操作部12には口金固定部20が形成されている。この口金固定部20には、口金17(図7参照)が固定される。図3及び図4に示すように、口金17には処置具栓21が取り付けられる。処置具栓21は、処置具14(図1参照)により処置を行う際に、体内の体液、汚物、体内洗浄用の生理食塩水等が処置具チャンネル16(図1参照)内を通って口金17から外部に漏れ出ることを防止する。
【0021】
図3に示すように、口金17の上端部には処置具導入口18が設けられている。図4及び図5に示すように、口金17は、略円筒状に形成される。口金17の内部には、一端が処置具導入口18に接続され、他端が処置具チャンネル16に接続される内部管路(挿通孔)22が形成されている。図7に示すように、口金17の外周面にはパッキン収納溝17aが形成されている。このパッキン収納溝17aにはパッキン24が収納されている。パッキン24は、口金固定部20の内周面と口金17の外周面との間の隙間からの体液等の漏れを防止する。
【0022】
図5に示すように、口金17の上端部には、口金係合部25と受け部26とが形成されている。口金係合部25は口金17の上端に形成され、係合フランジから構成されている。口金係合部25には、処置具栓21が係合して着脱自在に取り付けられる。受け部26は口金係合部25の下方に離して設けられる円板から構成されている。この受け部26は、処置具栓21の下面を受ける。
【0023】
図3に示すように、処置具栓21は、略円筒形状の栓本体30と、栓取付フック31〜34とを備える。栓本体30は、合成樹脂などの弾性材料で形成されている。この栓本体30には、処置具14が挿通される挿通孔30aが形成されている。図3〜図5に示すように、挿通孔30aには、下側から順に、フック凹部30b,30c,30d,30e、栓係止部としての係止爪30f、スリット弁取付溝30gが形成されている。フック凹部30b〜30eには、栓取付フック31〜34が収納される。
【0024】
図6に示すように、フック凹部30b〜30eは、円周方向に90°ピッチで4個形成されている。このフック凹部30b〜30eは、図6のように、筒芯方向から見たときに、外側から筒芯に向かうに従い次第に幅が狭くなる扇形に形成されている。また、図5に示すように、このフック凹部30b〜30eは、筒芯方向に2段の段付き状に形成され、その段部面35により、各栓取付フック31〜34の鍔部31c〜34cを受ける。
【0025】
栓取付フック31〜34は、フック凹部30b〜30eに配される。栓取付フック31〜34は、筒芯方向から見たときにフック凹部30b〜30eに対応した形状となっている。具体的には、筒芯方向から見て、外面から内面に向かうに従い横幅が小さくなる扇形状である。
【0026】
図3に示すように、栓取付フック31〜34は、係合爪31a〜34aと、挟持部31b〜34bと、鍔部31c〜34cと、受動部31d〜34dと、本体部31e〜34eを有する。本体部31e〜34eは、筒芯方向に沿って配置される円弧状に湾曲した板状部材であり、これの上部内側には、挟持部31b〜34bと受動部31d〜34dが内側(栓本体30の筒芯側)に向かって突出している。また、本体部31e〜34eの上下方向の略中央には外側に向かって、鍔部31c〜34cが突出している。さらに、本体部31e〜34eの下部内側には、係合爪31a〜34aが内側に向かって突出している。
【0027】
図4に示すように、係合爪31aは、口金17の口金係合部25の下面25aに係止する。挟持部31bは、口金係合部25の上面25bに係止する。これら係合爪31aと挟持部31bとによって、口金17の口金係合部25が上下方向から挟持され、これにより口金17に栓本体30が取り付けられる。なお、他の係合爪32a〜34a、挟持部32b〜32dも同様に口金係合部25に係止している。図3に示すように、挟持部31b〜34bの上側には、受動部31d〜34dが筒芯に向けて内側に突出している。
【0028】
図6に示すように、鍔部31c〜34cは、上から見たときに、各フック凹部30b〜30eの両側面(栓本体30の半径方向に延びている)に保持されており、且つ鍔部31c〜34cはフック凹部30b〜30eと同形状であり、フック凹部30b〜30eと嵌合している。このため、鍔部31c〜34cは、両側部で保持されているため上下方向に回転することはできない。一方、係合爪31a〜34a、挟持部31b〜34b、受動部31d〜34d、本体部31e〜34eは、各フック凹部30b〜30eの両側面に隙間ができるようにフック凹部30b〜30eよりも少し幅が狭く形成してある。
【0029】
これにより、鍔部31c〜34cと本体部31e〜34eとの接合部分を中心として、鍔部31c〜34cに対して、本体部31e〜34e、係合爪31a〜34a、挟持部31b〜34b、受動部31d〜34dを揺動させることができる。したがって、栓取付フック31〜34は、口金係合部25に係合して処置具栓21を口金17に取り付ける取付位置(図4及び図7参照)と、この取り付けを解除する取付解除位置(図10参照)との間で変位可能になる。しかも、フック凹部30b〜30eに保持された鍔部31c〜34cによって、栓取付フック31〜34は取付位置に保持される。そして、処置具栓21の口金17の取り付け時などでは、口金係合部25が係合爪31a〜34aを乗り越えた後に栓取付フック31〜34の復元力によって、取付位置に戻るように付勢される。
【0030】
なお、栓取付フック31〜34の数は適宜変更可能であり、1個以上あればよい。また、図7〜図11では、奥側の栓取付フック32の図示を省略している。
【0031】
係止爪30fは、挿通孔30aの全周に渡り円環状に形成されており、処置具の挿入方向で内側に向かい傾斜して突出している。この係止爪30fには、取り外し用具40の用具係止爪40bが係止する。なお、係止爪30fは必ずしも円環状ではなくてもよく、周方向に分断されたものであってもよい。
【0032】
スリット弁取付溝30gは、挿通孔30aの全周に渡り形成された周溝である。この取付溝30gには、スリット弁36が収納される。スリット弁36は必要に応じて取付溝30gに接着される。スリット弁36はゴム製であり、中央部に切込みからなるスリット36aが形成されている。このスリット36aは通常の状態では互いの接触面が弾性により密着しており、閉止弁として機能する。これにより、栓本体30から体液などが漏れ出ることを防止する。また、処置具14が挿通されると、処置具14の周面にスリット36aの接触面が密着するため、同様にして体液などの漏出を防止する。このスリット弁36は明確に分かるように厚みを強調して描いている。
【0033】
図7に示すように、取り外し用具40は、円板状の用具本体40cに、押動部40aを突出させて構成されている。押動部40aは円柱状に形成されており、挿通孔30aに挿入可能な直径となっている。押動部40aの外周面には、係止爪40bが形成されている。係止爪40bは、取り外し用具40の挿入方向とは反対方向に対し外側に向かい斜めに突出するように形成されている。
【0034】
押動部40aの先端部はテーパに形成されている。押動部40aは、処置具栓21の挿通孔30aに挿通したときに、栓取付フック31〜34の受動部31d〜34dに達する長さで形成されている。この押動部40aの先端が受動部31d〜34dに当接して下方に押されると、図10に示すように、栓取付フック31〜34の本体部31e〜34eを含む係合爪31a〜34a、挟持部31b〜34b、受動部31d〜34dが、鍔部31c〜34cに対して回転変位し、係合爪31a〜34aと口金係合部25との係止が解除されて、取付解除状態になる。
【0035】
また、この取付解除状態まで取り外し用具40が処置具栓21内に押し込まれると、栓本体30の係止爪30fを係止爪40bが乗り越えて、両者が係止する。このとき、スリット弁36はゴム製であるので容易に開拡変形して押動部40aの周面に密着する。なお、スリット弁36の厚みが、取り外し用具40と押動部40aとの間で両者の係止の阻害要因となることがないように、スリット弁36はできるだけ薄く形成されている。また、スリット弁36を薄く形成する他に、押動部40aの周面に、二点鎖線で表示したスリット弁収納溝40dを形成してもよい。さらには、図示は省略したが、挿通孔30aの周面と押動部40aの外周面との間に隙間を設けてもよい。
【0036】
図8に示すように、使用に際しては、処置具栓21の挿通孔30aに口金17の口金係合部25が入り込むようにして、処置具栓21を口金17に取り付ける。図7に示すように、処置具栓21が口金17に取り付けられると、口金係合部25の下面25aに係合爪31a〜34aが係止し、上面25bに挟持部31b〜34bが係止する。この状態では、栓取付フック31〜34の上端面がフック凹部30b〜30eに押さえられており、栓取付フック31〜34は変位することがなく、口金17への係止状態が保持される。
【0037】
次に、上記実施形態の作用について説明する。先ず、図8に示すように、口金17の口金係合部25を、下方から挿通孔30aに挿入する。各栓取付フック31〜34は、挿通孔30aに挿入された口金係合部25に押圧されて、取付解除位置まで回転した後に取付位置に復帰し、図7に示すように、各係合爪31a〜34aが口金係合部25に係合される。この係合により、処置具栓21が口金17に取り付けられる。
【0038】
オペレータは、プロセッサ装置、光源装置等の電源をオンして、検査準備を行い、この検査準備が完了した後、内視鏡10の挿入部11を患者の気管内に挿入する。光源装置からの光は、挿入部11内の光ファイバケーブル、先端硬性部11aの照明窓を通って、気管内を照射する。先端硬性部11aに内蔵されたイメージセンサは、気管内を撮影して撮像信号を出力する。この撮像信号は、挿入部11内の信号出力用ケーブル、ユニバーサルコード13を介してプロセッサ装置に入力され、モニタ(図示せず)に表示される。オペレータは、モニタを通じて気管内を観察する。このとき、体液等が処置具チャンネル16を通って口金17の内部管路22に入ってくるが、スリット弁36のスリット36aはスリット弁36の弾性力によって閉じているから、体液等の漏出が防止される。
【0039】
気管内の観察中に病変部を発見した場合には、図9に示すように、処置具14を、挿通孔30aから挿入し、スリット36a、内部管路22、処置具チャンネル16を順に挿通させ、処置具出口15から突出させる。この処置具出口15から突出された処置具14により病変部を処置する。スリット36aは、処置具14を挿通させた状態では、スリット弁36の弾性力によって、スリット内周面が処置具14の外周面に密着した状態になり、体液等の漏出が防止される。
【0040】
処置具14によって病変部を処理した後、内視鏡10から処置具14を抜き取る。処置具14を抜き取った後に、内視鏡10の挿入部11を気管から抜き取る。この状態では、処置具栓21が口金に取り付けられたままとなっている。処置具栓21には、体液等が付着しているため、感染防止の観点から処置具栓21を口金17から取り外す必要がある。
【0041】
内視鏡10から処置具栓21を取り外す場合には、先ず、図10に示すように、取り外し用具40を、処置具栓21の挿通孔30aに挿入する。取り外し用具40を挿入すると、各栓取付フック31〜34が押動部40aにより押動されて取付解除位置に回転し、処置具栓21と口金17との係合が解除される。これと同時に、取り外し用具40の用具係止爪40bが、処置具栓21の係止爪30fを乗り越え、取り外し用具40が処置具栓21に係止される。
【0042】
次に、図11に示すように、処置具栓21を口金17から抜き出して取り外す。この状態では、係止爪30fによって用具係止爪40bが係止され、取り外し用具40が取り外し不能に処置具栓21に係止される。これにより、処置具栓21を再利用しようとしても、挿通孔30aが取り外し用具40で塞がれた状態となっているため、使用することができない。また、取り外し用具40により係合爪33aの係止を解除することができ、処置具栓21を破損させることなく口金17から容易に取り外すことができる。したがって、破壊操作を伴う処置具栓21の取り出しのように勢い余って処置具栓21が外されることがないので、破損による体液等の飛び散りが防止される。
【0043】
口金17から取り外された処置具栓21は、取り外し用具40とともに廃棄される。取り外し用具40には、処置具栓21を取り外すときに体液等が付着するが、処置具栓21とともに廃棄されるので、再利用されることがなく、衛生的である。
【0044】
なお、上記実施形態では、栓取付フック31〜33を回転可能に設けているが、横方向等にスライド可能に設け、スライドにより処置具栓の取付及び取付解除を行ってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、処置具栓21の係止爪30fによって取り外し用具40の用具係止爪40bを係止することで、取り外し用具40を取り外し不能に係止しているが、取り外し用具40を係止するための栓係止部は適宜変更が可能である。例えば、処置具栓21と取り外し用具40との一方に凹部を、他方に凹部に係合する突起を形成してもよく、さらには、圧入により両者を係止させてもよい。
【0046】
上記実施形態では、取り外し用具40により、挿通孔30aの入口のほぼ全範囲を塞いでいるが、少なくとも処置具14を挿通させることができないように塞げばよい。
【0047】
また、上記実施形態では、処置具チャンネル16に通じる口金17に装着される処置具栓21を例に挙げて説明を行っているが、例えば吸引チャンネル、送気送水チャンネルなどの内視鏡の内部に配設される各種のチャンネルや管路に通じる口部に装着される栓体に本発明を適用することができる。
【0048】
さらに、上記各実施形態では、気管に挿入する内視鏡を例に挙げて説明を行っているが、例えば大腸に挿入される大腸内視鏡等の各種医療用内視鏡や、工業用途などの他の用途に使用される内視鏡などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 内視鏡
16 処置具チャンネル
17 口金
21 処置具栓
30 栓本体
30a 挿通孔
30f 係止爪
31〜34 栓取付フック
36 スリット弁
40 取り外し用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の口部に係合部を介して着脱自在に取り付けられる内視鏡用栓体において、
孔が形成された筒状の栓本体と、
前記栓本体の内部に配され、前記係合部に係合して栓本体を口部に取り付ける取付位置と取り付けを解除する取付解除位置との間で変位可能で、前記孔から栓本体の内部に取り外し用具が挿入された状態で、取り外し用具に押動されて前記取付解除位置に変位する栓取付フックと、
栓本体の内部に設けられ、栓本体に挿入された取り外し用具に係止し、この取り外し用具を栓本体から取り外し不能にする栓係止部と、を備えることを特徴とする内視鏡用栓体。
【請求項2】
前記栓本体の孔に挿入され、前記栓取付フックを押動して前記取付位置から前記取付解除位置に変位させる押動部と、
前記押動部が前記栓取付フックを押動して前記取付位置から前記取付解除位置に変位させた後に、前記栓係止部に係止する用具係止部とを有する取り外し用具を備えることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用栓体。
【請求項3】
栓取付フックは、取付位置に向けて付勢されていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡用栓体。
【請求項4】
前記栓取付フックは、前記栓本体の周方向に離間して複数設けられていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内視鏡用栓体。
【請求項5】
前記栓係止部は、取り外し用具の挿入方向に対し内側に向かい斜めに突出する係止爪であり、前記用具係止部は、取り外し用具の挿入方向とは反対方向に対し外側に向かい斜めに突出する係止爪であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の内視鏡用栓体。
【請求項6】
前記栓係止部は、前記栓本体に一体に形成されていることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の内視鏡用栓体。
【請求項7】
前記孔は処置具が挿通される挿通孔であり、前記取り外し用具によって前記挿通孔が塞がれることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の内視鏡用栓体。
【請求項8】
前記挿通孔には、処置具が挿通されるスリットを有するスリット弁が配されていることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の内視鏡用栓体。
【請求項9】
体内に挿入される挿入部と、この挿入部の基端が接続される操作部と、前記操作部に設けられる口部と、前記口部に取り付けられる請求項1から8いずれか1項記載の内視鏡用栓体と、を備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項10】
前記口部は、処置具が挿通される処置具チャンネルに連結される口金であることを特徴とする請求項9記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−81758(P2013−81758A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174635(P2012−174635)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】